(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039023
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】食器洗い機
(51)【国際特許分類】
A47L 15/50 20060101AFI20230313BHJP
A47L 15/42 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A47L15/50
A47L15/42 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021145955
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 百合菜
(72)【発明者】
【氏名】後藤 惇
【テーマコード(参考)】
3B082
【Fターム(参考)】
3B082FF01
3B082FF02
3B082FF04
3B082FF07
(57)【要約】
【課題】本開示は、食器かご本体と上棚とで複数段に構成された食器かごを有する食器洗い機において、洗浄槽の大きさに関わらず、食器かご内に飛びやすくて軽い被洗浄物を収納する小かごを形成し、前記被洗浄物を安定して洗浄することを可能にした食器洗い機を提供する。
【解決手段】食器洗い機20内に前方に開口部3を有する洗浄槽2を設け、この洗浄槽2内に食器を載置する食器かご8を配する。食器かご8は、食器かご本体9と、洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の背面に軸支され、食器を載置する凹部を有する食器かご上棚10によって構成され、食器かご上棚10を洗浄槽2の後方面に向かって折り畳んだ状態で、食器かご上棚10の凹部14と洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の背面とで、新たな食器の収容空間を形成可能に構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口部を有する洗浄槽と、
前記洗浄槽内に配した食器を収容する食器かごと、を有し、
前記食器かごは、前記食器かご本体の後方にて、複数の条体で構成される上棚を軸支して構成され、
前記上棚は前記条体を折り曲げて凹部を形成して食器を配置可能とし、
前記上棚を前記食器かご本体の後方に向かって回動させ、前記凹部と前記洗浄槽の後方内側面との間に新たな食器の収容空間を形成し、前記食器を保持する食器洗い機。
【請求項2】
上棚は、前記食器かご本体の後方に向かって回動させた状態で固定できるように構成される請求項1記載の食器洗い機。
【請求項3】
前記食器かごは下かごを備え、前記上棚は前記下かごより平面視で小さい面積で構成される請求項1または2記載の食器洗い機。
【請求項4】
前記食器かごは、前記開口部より前方に引き出し可能に構成される請求項1~3のいずれか1項に記載の食器洗い機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食器類を洗浄する食器洗い機に関するもので、特に食器が載置される食器かごに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の食器洗い機20は
図7のように構成されている(例えば、特許文献1参照)。以下、その構成について説明する。
【0003】
図7に示すように、洗浄槽2は前方に開口部3を有し、この開口部3を扉4により開閉する。また、内部に洗浄水を噴射する洗浄ノズル5を回転自在に設けており、洗浄槽2内に食器類を載置する食器かご8を配置している。洗浄槽2は台枠にて支持されている。
【0004】
洗浄槽2内の洗浄水はヒータによって温水化され、洗浄ポンプ7にて排水口に備えた残菜フィルタから吸い込まれ、洗浄ノズル5に圧送されて噴出口から食器類に向けて噴出し、循環する。これにより食器類は洗浄されるものである。洗浄行程が終了すると、洗浄槽2の下部に設けた排水ポンプによって機外に洗浄水が排水される。
【0005】
洗浄部である洗浄ノズル5は、食器かご本体9および食器かご上棚10に載置された食器などの被洗浄物に洗浄水を噴射して、被洗浄物を洗浄する。このとき、洗浄ノズル5は、主に、洗浄槽2の下方から上方に向かって洗浄水を噴射して、被洗浄物を洗浄するように配置される。
【0006】
なお、洗浄ノズル5は、上記配置構成に限られず、洗浄槽2の構成や形状、食器かごの形状や配置などに応じて、洗浄槽2内の適切な位置に配置することが望ましいとされている。
【0007】
扉4は、洗浄槽2の開口部3を開閉可能に設けられる。扉4は、洗浄槽2の開口部3が前面側の場合は前面側に設けられ、開口部3が上部側の場合は上部側に設けられる。なお、扉4は1枚または2枚以上を組み合わせて構成でもよい。
【0008】
扉4の開き方としては、本体1の前面側(-Y方向)に向かって開く場合、扉4の開放位置が本体上方に位置するように開く構成でもよく、扉4の開放位置が前面下方に位置するように扉4を開く構成でもよい。さらに、左(―X方向)または右(X方向)に向かって扉4が開く場合、扉4の開放位置が左側または、右側の位置に扉4を開く構成でもよい。また、2枚以上の構成の扉4の場合、それぞれが対象に開く、いわゆる観音開きで開く構成でもよく、それぞれが同じ方向に開く構成でもよい。
【0009】
食器かご8は、
図7および8に示すように、食器かご本体9と食器かご上棚10とからなり、食器かご上棚10は食器かご本体9の上方、つまり、洗浄槽2の上方に位置している。また、食器かご本体9は載置される食器類が出し入れしやすいよう、洗浄槽2の前方の開口部3より、前方に引き出し可能になっているものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-301004号公報
【特許文献2】W02020-071005A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、飛ばされやすい軽い被洗浄物を脱落させることなく洗浄する事を可能とする食器洗い機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本開示における食器洗い機は、
前方に開口部を有する洗浄槽と、洗浄槽内に配した食器を収容する食器かごと、を有し、食器かごは、食器かご本体の後方にて、複数の条体で構成される上棚を軸支して構成され、上棚は条体を折り曲げて凹部を形成して食器を配置可能とし、上棚を食器かご本体の後方に向かって回動させ、凹部と洗浄槽の後方内側面との間に新たな食器の収容空間を形成し、食器を保持する。
【発明の効果】
【0013】
本開示における食器かごおよび食器かごを備える食器洗い機によれば、飛ばされやすい軽い被洗浄物を、より確実に収納して、脱落させることなく効果的に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る食器かごを備えた食器洗い機の側断面図
【
図2】本発明の実施の形態に係る食器かごを備えた食器洗い機の概略斜視図
【
図3】本発明の実施の形態に係る食器かご全体の構成を示す概略斜視図
【
図4】本発明の実施の形態に係る食器かご上棚の構成を示す概略斜視図
【
図5】(a)本発明の実施の形態に係る食器かご上棚の開状態の要部側面図(b)本発明の実施の形態に係る食器かご上棚の回動中の要部側面図(c)本発明の実施の形態に係る食器かご上棚の閉状態の要部側面図
【
図6】本発明のその他の実施の形態に係る食器かご上棚の構成を示す概略斜視図
【
図8】従来の食器洗い機に配される小かごを備えた食器かごの構成を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、従来の技術による食器洗い機においては、シリコンカップなどの飛ばされやすい軽い被洗浄物を食器かごに載置すると、洗浄ノズル5からの噴出力が強く、洗浄行程で吹き飛んでしまうため、これらの小物類は洗えないものとされていた。これに対して、
図8に示すような、飛ばされやすい軽い被洗浄物を収納しながら洗浄出来る小かごを備えた食器洗い機が提案されている(特許文献2参照)。
図8は食器かご本体9を構成する食器トレイの前方に取り付けられた、小かごを示す斜視図である。この小かごで形成される収容空間に、飛ばされやすい軽い被洗浄物を収納して洗浄することで、より効果的に被洗浄物を洗浄することができる。
【0016】
しかしながら、前述した
図8のような食器かごを備える食器洗い機では、食器かごの前方に別部材である小かごを取り付けられるだけの余剰空間を必要とする。そのため、発明者らは、小容量の食器洗い機ではこの構成を採用出来ないという課題があることを発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0017】
そこで本開示は、折り畳み可能な食器かご上棚と、洗浄槽内側面とにより、飛ばされやすい軽い被洗浄物を収納する収容空間を形成する構成の食器かごを有し、これらの被洗浄物を脱落させることなく洗浄する事を可能にした食器洗い機を提供する。
【0018】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明
は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0019】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0020】
本発明に係る食器洗い機は、食器洗い機本体内に設けた、前方に開口部を有する洗浄槽と、前記洗浄槽内に配した食器を載置する食器かごとを有し、前記食器かごは、洗浄槽内側面またはかご本体の背面に上棚を軸支して複数段に構成する。食器かご本体は前記開口部より前方に引き出し可能とする。また、前記上棚は凹部を有する複数の食器かごによって構成され、洗浄槽後方面に向かって折り畳み可能としたものである。前記上棚は、略水平方向に支持された状態では、前記凹部により通常食器を載置可能とし、洗浄槽後方面に向かって回動され、略垂直方向に支持された状態では、洗浄槽内側面または食器かご本体の背面と、前記凹部との間に新たな食器の収容空間を形成し、飛ばされやすい軽い被洗浄物を収納して洗浄することができる。
【0021】
また、図面において、実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0022】
(実施の形態1)
[1.全体構成]
図1は、本実施の形態に係る食器洗い機20の構成を示す側断面図である。
図2は、本実施の形態に係る食器洗い機20の構成を示す概略斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態に係る食器かご8全体の構成を示す概略斜視図である。
図4は、本発明の実施の形態に係る食器かご上棚10の構成を示す概略斜視図である。
図5(a)は、食器かご上棚10が略水平方向に支持された状態を示す要部側面図である。
図5(b)は、食器かご上棚10が軸部13を介して回動している状態を示す要部側面図である。
図5(c)は、食器かご上棚10が略垂直方向に固定された状態を示す要部側面図である。
図6は、本発明のその他の実施の形態3に係る食器かご上棚10の構成を示す概略斜視図である。
図7は、従来の食器洗い機20の構成を示す側断面図である。
図8は、従来の食器洗い機20に配される、小かご12を備えた食器かご本体9の構成を示す概略斜視図である。
【0023】
なお、以降では、図中に示す食器洗い機20の正面視において左から右に+X方向、奥行方向を+Y方向、鉛直上方を+Z方向として、説明する。
【0024】
本実施の形態の食器洗い機20は、
図1において少なくとも、本体1と、本体1に収納される洗浄槽2と、食器などの被洗浄物を載置する食器かご本体9と、洗浄槽2の上部に配置される食器かご上棚10と、洗浄部である洗浄ノズル5およびタワーノズル6などを備える。
【0025】
食器かご本体9は、洗浄槽2に対して、-Y方向に引き出し、または、+Y方向に押し込み可能に、洗浄槽2の内側面のレールに配置される。
【0026】
食器かご上棚10は、
図1から
図5に示すように、食器かご本体9の引き出し方向(-Y方向)または押し込み方向(+Y方向)に回動可能な軸部13を介して、洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の背面などに取り付けられる。
【0027】
また食器かご上棚10は、複数の条体で構成され、軸支して複数段に構成される。食器かご上棚10は条体を折り曲げて凹部14を形成しており、凹部14上に食器を配置可能としている。
【0028】
ここで凹部14は
図5(a)のように側面視において、食器かご上棚10が略水平に支持された状態で、逆三角形となるよう形成されている。
【0029】
洗浄ノズル5は、洗浄槽2内に配置され、食器かご8に載置される食器などの被洗浄物に洗浄水を噴射して、被洗浄物を洗浄する。
【0030】
タワーノズル6は洗浄槽2の内側面、特に本実施形態においては食器かご本体9の背面に近い内側面に設けられている。洗浄ノズル5同様、洗浄水を噴射し、載置された食器などの被洗浄物を洗浄可能としている。
【0031】
つまり、本実施の形態の食器洗い機20によれば、洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の背面と、そこに取り付けられた食器かご上棚10とで形成される収容空間内に、飛ばされやすい軽い被洗浄物を収納する。これにより、軽い被洗浄物が飛ばされることなく、より確実に、かつ効率よく、被洗浄物を洗浄できる。
【0032】
特に食器かご上棚10が食器かご本体9の背面に設けられているとき、食器かご上棚10に載置されている被洗浄物は、食器かご本体9の底面から噴射される洗浄ノズル5に加え、洗浄槽2の内側面に設けられたタワーノズル6から噴射される洗浄水によって、より効果的に洗浄可能である。
【0033】
なお、タワーノズル6は洗浄水を噴射する噴射口6aと6bを有する。ここで噴射口6aは上段に、噴射口6bは下段に配置されている。このとき噴射口6aと6bは口が上向きに開けられており、上方向又は斜め上方向に洗浄水を噴射することができる。
【0034】
噴射口6aと6bの他にも、壁を洗浄するために横方向に口が開けられているものや、口が下を向いているもの、噴射口の広さを狭くとり噴射の勢いを強めているものなどがある。
【0035】
以下、食器洗い機20を構成する部材について、
図1から
図5を参照しながら説明する。
【0036】
本体1は、食器洗い機20の外郭を構成し、内部に洗浄槽2を格納する。なお、本体1は、例えばキッチンの調理台の下にビルトイン型で収納されてもよい。また、本体1は、独立して調理台の上に載置できるタイプの食器洗い機の本体を構成してもよい。
【0037】
図3において食器かご本体9は、食器などの被洗浄物を載置する。食器かご本体9は、例えば洗浄槽2の内側面に設けられるレールに沿って、洗浄槽2の前面側(-Y方向)に引き出し、または洗浄槽2の後面側(+Y方向)に押し込み可能に配置される。なお、以降、単に「引き出し方向」と記載する場合、+Y方向および-Y方向のいずれの方向も含む。
【0038】
また、洗浄槽2の上方には食器かご上棚10が配置される。
図1のように、食器かご上棚10は、洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の背面に、食器かご本体9に載置された皿が届かない程度に上方の位置で、取り付けられる。
【0039】
なお食器かご上棚10は、食器かご上棚右101と食器かご上棚左102との2部品から構成されており、これらはそれぞれ個別で回動可能である。
【0040】
[2.食器かご上棚10の細部構成]
以下、
図3~
図5を用いて食器かご上棚10の細部構成について説明する。
【0041】
図4や
図5のように、食器かご上棚10は、複数の条体で構成され、それら条体の凹部には複数のピンを有する。また条体の嵌合により回動可能に軸支され、複数段に構成される。このとき食器かご上棚10は、食器かご上棚10の左右幅において中央付近に設けられた軸部13を介して回動する。この軸部13は、逆U字のように湾曲したフック形状に構成され、このフックに食器かご上棚10の条体が通されて軸支されている。
【0042】
食器かご上棚10はさらに、条体が折り曲げられて凹部14を形成しており、凹部14上に食器を配置可能としている。
【0043】
ここで凹部14は、
図5(a)のように食器かご上棚10が略水平に支持された状態(開状態)において、側面視で逆三角形となるよう形成されている。このとき、回動するかごの一部である凹部14が、洗浄槽2の内側面から固定されて水平に-Y方向へ突出している水平支持ピン16に当接することで、開状態を支持している。また
図5(a)のように側面視において凹部14が形成する逆三角形が2つの斜辺を有するとき、
図4のように斜視においては、凹部14は2つの斜面を有する。
【0044】
凹部14において、先述の逆三角形の2つの斜辺のうち洗浄槽2内側面側(+Y方向側)の斜辺には、斜辺中央付近に被洗浄物を立てかけるための支持ピン大15が設けられている。また凹部14の斜面全体においては、左右方向(X軸方向)一直線上に複数設けられている。この支持ピン大15によって、特にコップなどの被洗浄物を載置するときに、被洗浄物が倒れないように支持することができる。また支持ピン大15を設けることで、左右方向(X軸方向)に被洗浄物が転がっていくことを抑制し、位置決めをすることもできる。これにより被洗浄物を安定して定位置で洗浄可能とする。
【0045】
凹部14において、先述の逆三角形の2つの斜辺のうち洗浄槽2内中央側(-Y方向側)の斜辺には、斜辺端部付近に、被洗浄物を当接させるための支持ピン小17が設けられている。また凹部14の斜面全体においては、左右方向(X軸方向)一直線上に複数設けられている。この支持ピン小17によって、特にコップなどの被洗浄物を載置するときに、被洗浄物を当接させ、被洗浄物が斜辺全体に接した状態で載置されることを抑制することができる。このとき被洗浄物は、
図4のように複数の支持ピン小17のみに当接して支持されるため、斜辺全体に接した状態と比べて設置面積が少なく、角度を付けて載置される。これにより被洗浄物の乾燥を促進させることができる。また被洗浄物の乾燥時に、斜辺の跡がついたまま乾燥することを防ぐことができる。
【0046】
支持ピン大15および支持ピン小17は、凹部14における逆三角形の斜面を形成する条体のうち、左右方向(X軸方向)における中央の条体には設けられていない。そのため、食器かご上棚右101と食器かご上棚左102との凹部14の斜面は、支持ピン大ありの条体151、支持ピン大なしの条体152、支持ピン小ありの条体171、および支持ピン小なしの条体172、の4種類の条体を用いて形成されている。支持ピンなしの条体が設けられる位置は規定されないが、左右方向中央に支持ピンなしの条体を設けることで、被洗浄物を食器かご上棚10に2つ並べて載置されたときに、異なる径の被洗浄物であっても支持ピンが邪魔にならず、同時に洗浄することができる。また大きな径の被洗浄物の場合も、支持ピンが邪魔にならずに載置可能である。
【0047】
凹部14は、
図5(c)のように食器かご上棚10が略垂直に支持された状態(閉状態)において、回動するかごの一部である垂直支持フック18は、洗浄槽2の内側面から固定されて洗浄槽2の中央方向へ突出している垂直支持ピン19に引っ掛けられ、閉状態を支持している。この垂直支持フック18は、S字フックの先端のように湾曲したフック形
状に形成される。また、突出している垂直支持ピン19は逆U字状またはコノ字状に形成され、U字状湾曲部またはコノ字状直角部が、洗浄槽2の中央方向つまり-Y方向または/および+Z方向へ突出している。そのため垂直支持フック18を垂直支持ピン19に引っ掛けることができ、凹部14の閉状態を支持している。本実施の形態では垂直支持ピン19は、-Y方向および+Z方向の間である斜め上方向へと突出している。もちろんこの突出の向きは斜め上方向には規定されず、垂直支持フック18が引っ掛けられる向きであればよい。
【0048】
[3.動作]
本実施の形態の食器かご上棚10は、以下で説明する2つの状態を取ることができる。具体的には、食器かご上棚10は、(1)食器載置可能な水平方向の状態(2)収容空間を形成した小かご状態の2つの状態が選択可能である。
【0049】
以下、
図5(a)から
図5(c)を参照しながら、2つの状態について、より詳しく説明する。
【0050】
[3-1.食器載置可能な開状態]
食器載置可能な開状態とは、食器かご上棚10が略水平に支持された状態を指し、
図5(a)に示すように、軸部13を介して食器かご上棚10が水平方向に開かれた状態である。このとき、食器かご上棚10は洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の一部によって水平方向を保つように固定される。
【0051】
これにより、食器かご上棚10はその上面に備えられた凹部によって、食器を安定した状態で保持しながら洗浄できる。なお実施の形態では、先述のように、洗浄槽2の内側面から水平方向に突出している水平支持ピン16によって開状態を支持している。
【0052】
このように食器かご上棚10が開状態であるとき、被洗浄物は凹部14の斜面にもたれるように立てかけられて載置されるので、傾けられた状態で洗浄することができる。そのためコップや弁当箱等、くぼみの中を洗いたいものを特に洗浄可能である。またZ軸高さ方向での規制が少ないので、多少の高さがあるものも洗浄可能である。
【0053】
また、食器かご上棚10が開状態のとき、特にタワーノズル6の下段に配置された上向きの噴射口6bから噴射される洗浄水によって、食器かご上棚10に載置された被洗浄物を効果的に洗浄可能である。このとき食器かご上棚10より下の位置から噴射するため、伏せ置きされている被洗浄物であっても洗浄可能である。もちろん、洗浄槽2の底面に配置される洗浄ノズルから噴射される洗浄水によっても洗浄される。
【0054】
[3-2.収容空間を形成した閉状態]
収容空間を形成した閉状態とは、食器かご上棚10が略垂直に支持された状態を指し、被洗浄物を格納可能な小かごを形成する。つまり、
図5(b)に示すように、軸部13を介して食器かご上棚10が食器かご引き出し方向に回動され、
図5(c)に示すように、洗浄槽2の内側面と食器かご上棚10の凹部14とで、内側に被洗浄物を収納可能な小かごを形成した状態である。このとき、食器かご上棚10は洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の一部によって垂直方向を保つように固定される。また、洗浄槽2の内側面の代わりに食器かご本体9の背面と小かごを形成してもよい。なお実施の形態では、先述のように、湾曲したフック形状を有する垂直支持フック18と、洗浄槽2の内側面から洗浄槽の中央方向に突出している垂直支持ピン19によって閉状態を支持している。
【0055】
このように食器かご上棚10が閉状態であるとき、被洗浄物は凹部14の内部と洗浄槽2の内側面との間に形成される小かごの中に載置されるので、小かご内のみに動きが規制
される。そのためクッキー型のように小さいものや、シリコンカップのような軽いものも洗浄可能である。また食器かご上棚10と洗浄槽2の内側面との間の距離は狭いため、被洗浄物が落下しにくいよう構成されている。
【0056】
また、食器かご上棚10が閉状態のとき、特にタワーノズル6の上段に配置された上向きの噴射口6aから噴射される洗浄水によって、食器かご上棚10に載置された被洗浄物を効果的に洗浄可能である。このとき噴射口6aから噴射された洗浄水の一部は洗浄槽2の内側面天井に当たるように構成されており、天井からも洗浄水を滴らせて被洗浄物を洗浄することができる。もちろん、洗浄槽2の底面に配置される洗浄ノズルから噴射される洗浄水によっても洗浄される。
【0057】
以上のように、洗浄時に飛ばされるような軽い被洗浄物の有無に応じて、上述の2つの状態から適切な状態を選択して、より確実に被洗浄物を洗浄できる。
【0058】
食器かご上棚10は、食器かご上棚右101と食器かご上棚左102との2部品に分かれているので、それぞれにおいて上述の開状態と閉状態を固定することができる。そのため、例えばコップ二つのみを洗浄したいときは、食器かご上棚右101のみ開状態としてコップを載置し、食器かご上棚左102は閉状態に収納しておくことで、食器かご上棚左102の下のスペースは高さの制限がされず、他の被洗浄物を洗浄するために有効活用できる。
【0059】
また、本実施の形態では特に言及していないが、通常の食器洗い機が備える、洗浄した食器を乾燥させる乾燥部などを備えてもよい。
【0060】
また、本実施の形態の食器かごは、洗浄機能を備えないタイプの食器乾燥機に搭載してもよい。つまり、乾燥部などを備え、空気を送風して、洗浄槽内の食器を乾燥させるタイプの食器乾燥機に搭載してもよい。
【0061】
なお、本開示においては、先述した様々な実施の形態の内の任意の実施の形態を適宜組み合わせることを含む。これらの組み合わせによっても、それぞれの実施の形態が有する効果を、同様に奏することができる。
【0062】
[4.効果等]
以上のように本発明の請求項1に記載の発明によれば、食器洗い機本体内に、前方に開口部を有する洗浄槽と、前記洗浄槽内に食器を載置する食器かごとを有し、前記食器かごは、食器かご本体と、洗浄槽後方で軸支され、食器を載置可能な凹部を有する上棚によって構成され、前記上棚を洗浄槽背面に向かって折り畳み可能としたから、前記上棚の凹部に通常の食器を載置する食器かごとして使用する場合と、前記上棚を折り畳んだ状態で洗浄槽の内側面または食器かご本体の背面と上棚の凹部とで食器の収容空間を形成し、飛びやすくて軽い被洗浄物を収納する小かごとして使用する場合とで使い分けることが可能となる。また、小容量の洗浄槽であっても、飛びやすくて軽い被洗浄物を安定して洗浄することができる。
【0063】
また、請求項2に記載の発明によれば、上棚は、折り畳んだ状態で、食器載置面を略垂直方向に固定可能に構成したから、安定して小かご状態を保持することができる。また、上棚を折り畳んだ状態で固定することによって、食器かご本体内の前記上棚の下に位置する空間にも、上棚が邪魔することなく、高さのある食器なども容易に載置することが可能になる。
【0064】
また、請求項3に記載の発明によれば、上棚は食器かご本体より、平面視で小さい面積
で構成したから、食器かご本体に高さがある食器を載置したい場合にも、上棚が邪魔することなく、容易に食器類を載置することが可能になる。また食器類の高さや大きさによって、食器かご本体と食器かご上棚を使い分けることができる。
【0065】
また、請求項4に記載の発明によれば、上棚を洗浄槽内側面に軸支した場合は食器かご本体のみ、上棚を食器かご本体の背面に軸支した場合は一体として、洗浄槽前方の開口部より引き出し可能に構成され、上棚および食器かご本体に載置する食器類をより簡単に取り出すことができ、使い勝手を向上することができる。
【0066】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、負荷、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0067】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0068】
(実施の形態2)
以下、食器かごの配置に関する他の実施形態を例示する。
【0069】
実施の形態1では、例として食器かご上棚10が食器かご本体9の背面に設けられている場合を説明した。しかしこの例に限らず。食器かご上棚10に載置された被洗浄物が洗浄されればよい。したがって、食器かご上棚10は洗浄槽2内であれば配置は規定されない。例えば食器かご上棚10はX軸方向の内側面に配置されていてもよい。この場合、タワーノズル6も食器かご上棚10付近の内側面に配置されていると、より洗浄効率を高めることができる。また、タワーノズル6とは別に前面側(-Y方向側)やX軸方向の内側面にノズルを新たに設ける構成としてもよい。
【0070】
また食器かご上棚自体の底面積を食器かご本体9程度に大きくし、食器かごを前面側(-Y方向側)のみ回動可能にしてもよい。また実施の形態1同様、食器かご本体の背面側に(+Y方向側)のみ回動可能にしてもよい。この場合、上のスペース全体に被洗浄物を載置することができるため、一度に多くの量の被洗浄物を洗浄することができる。
【0071】
(実施の形態3)
以下、食器かご上棚10の構成に関する他の実施形態を例示する。
【0072】
実施の形態1では、例として凹部14が、食器かご上棚10が略水平に支持された状態で、逆三角形となるよう形成されることを説明した。しかしこの例に限らず、凹部14は食器が載置可能、および収納可能であればよい。したがって凹部14は側面視において、逆三角形でなく長方形や半円などの形状であってもよい。これにより、食器かご上棚10の収納スペースを広くとることや、載置安定性を高めることができる。また、デザイン性を向上させることもできる。
【0073】
また食器かご上棚10は、洗浄槽2の内側面または食器かご本体9の背面に取り付けられていればよい。したがって、食器かご上棚10の取り付け場所は上方の位置ではなく、中央や底面に近いところでもよい。高さを下げるほど、大きさや高さのある被洗浄物を、食器かご上棚10に収納し、洗浄することができる。
【0074】
食器かご上棚10は、食器かご上棚右101と食器かご上棚左102との2部品に分かれており、それぞれにおいて上述の開状態と閉状態を固定可能としているが、この例には限らない。2分割でなく3分割としてもよいし、例えば
図6のように、食器かご上棚10
を2部品に分けることなく一体としてもよい。これにより、食器かご上棚10内には、長さのある被洗浄物を収容することができる。
【0075】
実施の形態1では、支持ピン大15および支持ピン小17は、左右方向(X軸方向)における中央の条体には設けられていない。そのため、食器かご上棚右101と食器かご上棚左102との凹部14の斜面は、支持ピン大ありの条体151、支持ピン大なしの条体152、支持ピン小ありの条体171、および支持ピン小なしの条体172、の4種類の条体を用いて形成されている。しかしこの例には限られず、例えば支持ピンなしの条体をなくし、凹部14における逆三角形の斜面を形成する条体すべてに支持ピンを設けてもよい。この場合、径の小さな被洗浄物を載置しやすくなるほか、X軸方向への被洗浄物の移動を規制しやすくなる。または支持ピンなしの条体を中央ではなく、異なる位置に設けてもよい。
【0076】
また食器かご上棚10は、取り外し可能であってもよい。食器かご上棚10を好きな位置に配置させることができると、被洗浄物の大きさや高さによって使用者の仕様に合わせて変えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本開示は、飛ばされやすい軽い被洗浄物を安定して洗浄乾燥することが要望される食器かご、およびそれを備える食器洗い機や、空気を送風する食器乾燥機などに応用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 本体
2 洗浄槽
3 開口部
4 扉
5 洗浄ノズル(洗浄部)
6 タワーノズル(洗浄部)
6a 噴射口
6b 噴射口
7 洗浄ポンプ
8 食器かご
9 食器かご本体
10 食器かご上棚
101 食器かご上棚右
102 食器かご上棚左
11 食器トレイ
12 小かご
13 軸部
14 凹部
15 支持ピン大
151 支持ピン大ありの条体
152 支持ピン大なしの条体
16 水平支持ピン
17 支持ピン小
171 支持ピン小ありの条体
172 支持ピン小なしの条体
18 垂直支持フック
19 垂直支持ピン
20 食器洗い機