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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003905
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/407 20060101AFI20230110BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20230110BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20230110BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20230110BHJP
   B41J 15/04 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B41J3/407
B41J3/36 Z
B41J29/00 G
B65H5/06 F
B41J15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105278
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 槙
(72)【発明者】
【氏名】黒須 皓貴
(72)【発明者】
【氏名】辺見 精孝
(72)【発明者】
【氏名】笠井 遼太郎
【テーマコード(参考)】
2C055
2C060
2C061
3F049
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC03
2C055CC05
2C060BC03
2C060BC71
2C060BC84
2C061AP10
2C061AQ04
2C061AS11
2C061BB26
2C061CJ02
3F049DA12
3F049LA01
3F049LB12
(57)【要約】
【課題】記録媒体の搬送不良を抑制しながらも、加熱効率の向上を図る。
【解決手段】記録ヘッドをチューブTに圧接させて画像を記録する記録装置において、チューブTを記録ヘッドに搬送する搬送部と、チューブTの搬送方向に関して記録ヘッドよりも上流に配置され、接触面73aにおいて搬送部により搬送されるチューブTに接触し、熱伝導性を有する接触部材73と、接触部材73の接触面73aとは反対側に設けられ、接触面73aに接触するチューブTを、接触部材73を介して加熱するヒータ71と、チューブTを、接触面73aに向けて押圧する押圧ユニット90と、を備える。接触面73aは、凹凸処理が施される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドをチューブ状記録媒体に圧接させて画像を記録する記録装置において、
チューブ状記録媒体を前記記録ヘッドに搬送する搬送部と、
チューブ状記録媒体の搬送方向に関して前記記録ヘッドよりも上流に配置され、接触面において前記搬送部により搬送されるチューブ状記録媒体に接触し、熱伝導性を有する接触部材と、
前記接触部材の前記接触面とは反対側に設けられ、前記接触面に接触するチューブ状記録媒体を、前記接触部材を介して加熱するヒータと、
チューブ状記録媒体を、前記接触面に向けて押圧する押圧部と、を備え、
前記接触面は、凹凸処理が施されている、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記ヒータの前記接触部材とは反対側に設けられ、断熱性を有する断熱部材を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
記録ヘッドをチューブ状記録媒体に圧接させて画像を記録する記録装置において、
チューブ状記録媒体を前記記録ヘッドに搬送する搬送部と、
チューブ状記録媒体の搬送方向に関して前記記録ヘッドよりも上流に配置され、凹凸処理が施された接触面において前記搬送部により搬送されるチューブ状記録媒体に接触し、熱伝導性を有する接触部材と、
前記接触部材の前記接触面とは反対側に設けられ、チューブ状記録媒体を、前記接触部材を介して加熱するヒータと、
前記ヒータの前記接触部材とは反対側に設けられ、断熱性を有する断熱部材と、
チューブ状記録媒体を、前記接触面に向けて押圧する押圧部と、
前記記録装置を駆動する電源部と、を備え、
前記電源部は、電池である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
前記接触部材の前記搬送方向に直交する断面において、前記ヒータが前記接触部材の前記接触面とは反対側の裏面の一部に接触し、前記断熱部材は、前記接触部材の前記裏面のうち、前記ヒータが接触している領域よりも広い領域を覆う、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記ヒータは、前記押圧部による押圧方向に関して、前記接触部材の裏面のうち、前記押圧部により押圧されたチューブ状記録媒体が前記接触面に接触する位置と反対側の位置を含むように配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記接触部材は、金属製であり、
前記凹凸処理は、ブラスト処理である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記接触面は、前記搬送方向に直交する断面において前記押圧部による押圧方向に凹んだ形状を有する湾曲面である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記押圧部は、チューブ状記録媒体に接触して押圧する回転可能な回転体を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューブ等の長尺状の記録媒体(以下、チューブという)に印刷処理を実行する際に、記録ヘッドとプラテンとでチューブを挟むと共にチューブを押し潰した状態にして記録を行っている。一方、装置の環境温度が低いことなどに起因してチューブが変形しにくくなることがある。このような問題を解決するために、チューブの搬送路において、記録ヘッドとプラテンとを含む記録部の上流側近傍にヒータを配置した記録装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この記録装置では、チューブがその中を通るように構成されたパイプ状のヒータが記録部の上流側近傍に配置されている。これにより、チューブが記録部に搬送及び供給される直前に加熱され、加熱後、記録部に達する前にチューブの温度が低下することを防止し、記録部においてチューブを変形しやすくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-103844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の記録装置では、チューブはパイプ状のヒータ内を通過する際に加熱されるので、ヒータとチューブとの間に空間(空気の層)が存在することから、加熱効率は低かった。このため、チューブを所望の温度にまで加熱するには比較的大きな電力が必要であり、記録装置を電池駆動することは困難であった。
【0006】
本発明は、記録媒体の搬送不良を抑制しながらも、加熱効率の向上を図ることができる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の記録装置は、記録ヘッドをチューブ状記録媒体に圧接させて画像を記録する記録装置において、チューブ状記録媒体を前記記録ヘッドに搬送する搬送部と、チューブ状記録媒体の搬送方向に関して前記記録ヘッドよりも上流に配置され、接触面において前記搬送部により搬送されるチューブ状記録媒体に接触し、熱伝導性を有する接触部材と、前記接触部材の前記接触面とは反対側に設けられ、前記接触面に接触するチューブ状記録媒体を、前記接触部材を介して加熱するヒータと、チューブ状記録媒体を、前記接触面に向けて押圧する押圧部と、を備え、前記接触面は、凹凸処理が施されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の記録装置は、記録ヘッドをチューブ状記録媒体に圧接させて画像を記録する記録装置において、チューブ状記録媒体を前記記録ヘッドに搬送する搬送部と、チューブ状記録媒体の搬送方向に関して前記記録ヘッドよりも上流に配置され、凹凸処理が施された接触面において前記搬送部により搬送されるチューブ状記録媒体に接触し、熱伝導性を有する接触部材と、前記接触部材の前記接触面とは反対側に設けられ、チューブ状記録媒体を、前記接触部材を介して加熱するヒータと、前記ヒータの前記接触部材とは反対側に設けられ、断熱性を有する断熱部材と、チューブ状記録媒体を、前記接触面に向けて押圧する押圧部と、前記記録装置を駆動する電源部と、を備え、前記電源部は、電池であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の記録装置によれば、記録媒体の搬送不良を抑制しながらも、加熱効率の向上を図り、消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るプリンタにおける開閉カバーを省略した状態の平面図である。
図2】実施形態に係るプリンタの表示部を示す図である。
図3】実施形態に係るプリンタの記録部の周辺を示す平面図である。
図4】実施形態に係るプリンタの制御のための構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係るプリンタにおける電池収容部を示す底面図である。
図6】実施形態に係るチューブ加熱ユニットを示す平面図である。
図7】実施形態に係るヒータユニットを示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A線で切断した状態を示す断面図である。
図8】実施形態に係るヒータユニットを示す断面図である。
図9】実施形態に係る接触部材を示す斜視図である。
図10】チューブの内径とチューブの引抜力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図1図9を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクリボンカセット5を備えた記録装置の一例としてのプリンタ1の外観を示す平面図である。尚、図1においては、プリンタ1のカバーの図示を省略している。本実施形態のプリンタ1は、チューブ状記録媒体(以下、単に、チューブという)を含む記録媒体に記録を行うものであり、ノートタイプコンピュータと同様に持ち運び可能に構成されたものである。
【0012】
[記録装置の概要]
プリンタ1は、大別して、キーボードなどを備えた操作部13と、LCD(液晶ディスプレイ)や表示制御部を備えた表示部14と、記録媒体としてのチューブTを搬送するための搬送ユニットと、チューブTに記録を行う記録部20と、記録部20で記録されたチューブTに切断処理を施す切断部30と、チューブを加熱するためのチューブ加熱ユニット7と、を備えている。チューブ加熱ユニット7は、チューブTを加熱及び押圧するためのヒータユニット70(図7参照)を内部に備えている。チューブ加熱ユニット7は、チューブTを記録部20へ案内するガイドユニットとしての役割も果たす。
【0013】
[操作部]
操作部13は、ファンクションキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー、リターンキー等を備え、ユーザはこれらのキーを操作することで、記録媒体の種類、サイズ、記録条件等を入力して、プリンタ1の記録情報を設定することができる。
【0014】
[表示部]
図2は、図1の表示部14における表示内容を示す図である。表示部14のLCDは、入力モード等を表示する各種情報表示エリア14a、操作部13から入力された文字、数字、記号(以下、「文字等」と略称する。)を表示する文字情報表示エリア14b、文字サイズ等を表示するパラメータ表示エリア14cの3つの表示エリアに分割されており、各種情報表示エリア14a及びパラメータ表示エリア14cは、それぞれ文字情報表示エリア14bの上下に配置されている。
【0015】
各種情報表示エリア14aは、以下の表示を行うことができる。ユーザが、操作部13を介して、英数、ローマ字、ひらがなのどれで入力するかを示す入力モード表示、ユーザが、操作部13を介して、挿入と上書のどちらで入力するかを示す挿入/上書モード表示(編集モード表示)、「記録媒体の種類」の表示、複数ページの記録を一回の記録動作で行うときにページ間のカットをどのように行うかを示す「モード指令」(全切り、半切りモードカット指令の別、及び切断個数)の表示、チューブTをカットする間隔を示す「カット長」と、文字等の位置がセンタリングか左寄せかを示す「文字配置」及びチューブTの左端から先頭の文字等までを示す「余白」を表示するカット長/文字配置/余白表示、現在表示されているページの前に別のページがある場合に表示される前ページ表示、現在表示されているページの後に別のページがある場合に表示される次ページ表示、及び、電源が投入されていることを表示する電源表示、等である。
【0016】
また、パラメータ表示エリア14cは、以下の表示を行うことができる。現在、記録データの何ページ目が表示されているかを数字で表示するページ表示、記録の向きを「横向き/横書き」、「縦向き/縦書き」、「縦向き/横書き」のいずれかで行うかを表示する記録の向き表示、文字等に枠を付ける場合に選択した枠囲みの形を表示する枠囲み表示、選択した文字サイズを表示する文字サイズ表示、記録する行数を表示する行数表示、選択した文字間隔を表示する文字間隔表示、現在表示されている文字等が何ページにわたって記録されるかを表示する連続記録表示、等である。
【0017】
文字情報表示エリア14bには、操作部13を介して入力された文字等(入力された記録データとしての文字データが所定の処理を経て表示された文字等)の文字列が表示される。なお、文字情報表示エリア14bには、ユーザが入力しようとする箇所にカーソルが表示される。
【0018】
[切断部]
図1に示すように、切断部30は、記録部20における搬送ローラ4(図3参照)の搬送方向Dの下流側に配置され、記録媒体としてのチューブTやテープに切断処理を施す。切断部30では不図示のカッタ刃とカッタ受け部材を用いて、記録部20で記録されたチューブTに対して半切り又は全切り処理を行う。切断されたチューブTは、搬送ユニットによって排出される。
【0019】
[記録部]
図3は、記録部20の構成を示す図である。記録部20は、記録媒体としてのチューブTを搬送するための供給ローラ21,22で構成される供給ローラ対2と、チューブTの搬送方向Dにおいて、供給ローラ対2の下流側に配置された記録ヘッド6及びプラテンローラ3と、を備える。さらに、記録ヘッド6及びプラテンローラ3の下流側に配置された搬送ローラ4を備える。記録ヘッド6は、チューブT及びインクリボンRを介してプラテンローラ3と対向するよう設けられる。また、搬送ローラ4は、プラテンローラ3の周方向において、記録ヘッド6とは別の位置でチューブTを介してプラテンローラ3と対向するよう設けられる。記録ヘッド6は、チューブTの搬送方向Dに対して直交する方向に配列される所定数の発熱素子を有し、これを選択的に発熱させることにより、後述するインクリボンR上のインクをチューブTに転写することができる。
【0020】
インクリボンカセット5は、ロール状に巻かれたインクリボンRを格納し、インクリボンRを記録部20へ搬送する。インクリボンRは、プラテンローラ3と記録ヘッド6との間で、搬送されるチューブTの記録ヘッド6側に搬送される。インクリボンRは、インクリボンカセット5の供給リール51から供給され、インクリボンカセット5の巻取リール52に巻き取られる。本実施形態のプリンタ1は、インクリボンカセット5を交換可能に装着することによって、インクリボンRを用いた記録を行うことができる。
【0021】
図3の搬送ローラ4、プラテンローラ3、供給ローラ21,22、及びインクリボンカセット5の巻取リール52のスプールは、後述する共通駆動源としてのメインモータ82で駆動される。尚、供給ローラ21,22(供給ローラ対2)は、チューブTを記録ヘッド6に搬送する搬送部の一例である。また、記録ヘッド6は、後述するサブモータ83によって、プラテンローラ3との間でチューブTを挟持して記録を行う記録位置と、記録位置よりもプラテンローラ3との距離が広い退避位置と、に移動可能に構成されている。
【0022】
チューブTに記録を行うときには、記録ヘッド6は記録位置に移動する。記録ヘッド6は、インクリボンカセット5のインクリボンRを介してチューブTを押圧するとともに、操作部13から入力された記録データに従って記録ヘッド6の発熱素子を選択的に発熱させる。これにより、インクリボンRのインクを溶融してチューブTに転写し、記録を行う。即ち、プリンタ1は、インクリボンRを介して記録ヘッド6をチューブTに圧接させて画像を記録する。また、供給ローラ対2の上流側と、搬送ローラ4の下流側には、チューブTの有無を検出することで、搬送されるチューブTの先端を検出するための不図示の透過一体型センサが配置されている。
【0023】
なお、本実施形態で記録媒体として用いるチューブTの材質の一例としては、PVC(ポリ塩化ビニル)が挙げられる。PVC製のチューブTは、記録部20において記録ヘッド6とプラテンローラ3を通過する際に潰されるが、記録部20を通過した後には、潰された状態から元の管状に復元する。
【0024】
[制御構成]
図4は、本実施形態に係るプリンタ1における制御のための構成を示すブロック図である。電源部81は、プリンタ1に設けられ、操作部13や表示部14、記録ヘッド6、メインモータ82、サブモータ83、ヒータ71、サーミスタ75、外気温センサ85及びCPU(制御部)86等の動作に必要な電力を供給するユニットである。本実施形態では、電源部81は、乾電池を供給源としている。乾電池は、プリンタ1の裏側に設けられた電池収容部1a(図5参照)に収容されている。即ち、本実施形態では、プリンタ1は乾電池のみを電源として駆動可能とされている。尚、本実施形態では、6本の乾電池を使用するようにしているが、これには限られず少なくとも1本の乾電池を使用するようにすればよい。
【0025】
CPU86は、チューブ加熱ユニット7(図1参照)による加熱の制御、記録部20による記録動作の制御、表示部14における表示の制御など、プリンタ1における各部の動作及び処理を制御する。操作部13は、ユーザのキーボード操作により、記録媒体への記録内容や記録JOB数、切断手段による切断パターン等、プリンタ1に対して種々の設定の入力を行う。また、電源部81への電源ON/OFF入力も、操作部13の電源キーから行うようになっている。外気温センサ85は、プリンタ1が設置されている環境の温度を検出するセンサであり、プリンタ1の内部に収容されたヒータ71の熱の影響を受けない位置に設けられている。
【0026】
CPU86は、外気温センサ85の検出温度に基づいて、チューブ加熱ユニット7の制御を行う。本実施形態のプリンタ1におけるチューブ加熱ユニット7の制御としては、高温、中温、低温の3段階の目標温度範囲の設定を設けている。目標温度範囲は、上限温度と下限温度で設定され、本実施形態においては、例えば、低温設定における目標温度範囲を25℃~27℃、中温設定における目標温度範囲を35℃~37℃、高温設定における目標温度範囲を43℃~45℃と設定している。サーミスタ75については、後述する。
【0027】
サブモータ83はチューブTを切断する切断部30の駆動を担っており、本実施形態においては、ステッピングモータを採用している。チューブTの切断動作は、サブモータ83の正逆転駆動により行っている。また、サブモータ83を駆動する際のパルス数を調整することにより、切断手段のカット深さを調整できるようにしている。メインモータ82は、プラテンローラ3、供給ローラ21などの駆動を担っており、本実施形態においてはステッピングモータを採用している。チューブTのフォワードフィード及びバックフィードの切り替えは、ステッピングモータの正回転、逆回転により行っている。また、プリンタ1の搬送速度設定は高速から低速まで3段階で変更することが可能であり、メインモータ82の駆動制御により変更可能となっている。メインモータ82の駆動はインクリボンカセット5の巻取リール52にも連結しており、チューブTへの記録が終了したインクリボンRの回収も、メインモータ82の駆動により行う。
【0028】
記録ヘッド6は、記録部20に設けられている。記録部20の説明において述べたように、記録ヘッド6とプラテンローラ3とでチューブTとインクリボンRとを挟持する。そして、記録ヘッド6の発熱素子の発熱制御を行うことにより、記録を行う。記録ヘッド6の発熱素子を駆動する駆動パルスは、外気温センサ85の検出温度に基づいて、複数段階で変更することが可能となっている。外気温センサ85で検出した温度が低い場合、チューブTの温度が低くなっているためインクリボンRに加える熱量を増やす必要がある。その際、記録ヘッド6の発熱素子の駆動パルス(通電時間)を長くすることにより、低温環境下でも適正な記録を行うことが可能となっている。
【0029】
ところで、プリンタ1の環境温度が低いことなどに起因して、チューブTが変形しにくくなって画像不良を発生する可能性があった。このような問題を解決するために、チューブTの搬送路において、従来から記録部20の上流側にヒータユニットを配置している。従来のヒータユニットは、例えば、金属製のパイプの外面にヒータが取り付けられて構成されたものである。チューブTがヒータユニットにより加熱されるとき、パイプとチューブTとの間には、空気層が介在し、チューブTは、ヒータによって温められた空気層を介して加熱される。一般的に、空気の熱伝導率は0.024[W/m・K]程度であり、本実施形態における接触部材73に用いられるアルミニウム材の熱伝導率236[W/m・K]程度と比較すると、非常に小さい値である。
【0030】
これは即ち、チューブTに熱を伝える場合において、接触部材73から直接にチューブTに熱を伝える場合と、接触部材73とチューブTとの間に空気層が介在する場合とでは、前者と比較して後者の方が、加熱効率が低く、チューブTを加熱するのに多大なエネルギーを要することを意味している。このため、チューブを所望の程度にまで加熱するには比較的大きな電力が必要であり、記録装置を電池駆動することは困難であった。そこで、本実施形態では、チューブTを押圧ユニット80によって接触部材73に押圧すると共に、接触部材73を介してヒータ71により加熱し、更に、接触部材73の接触面73aに凹凸処理を施し、接触部材73及びヒータ71の外側には断熱部材76を設けるようにし、これにより、チューブTの搬送不良を抑制しながらも、加熱効率の向上を図るようにしている。
【0031】
[チューブ加熱ユニット]
図1において、記録部20に対してチューブTの搬送方向の上流側に位置するチューブ加熱ユニット7について、詳細に説明する。図6に示すように、チューブ加熱ユニット7は、ヒータユニット70を有しており、ヒータユニット70の発熱する部分にチューブTを押圧した状態で加熱することで、チューブTを温め、チューブTの剛性を低下させる。これにより、チューブTが変形しやすくなるので、チューブTと記録ヘッド6とが正しく当接し、正常な記録を行うことができるようにする。
【0032】
図7(a)、図7(b)、図8を参照して、ヒータユニット70についての説明を行う。図7(a)は、ヒータユニット70の構成を示す平面図である。図7(b)は、図7(a)のA-A線で切断した状態を示す断面図である。図8は、チューブTの搬送方向に直交する断面で切断した状態を示す断面図である。
【0033】
ヒータユニット70は、ヒータ71と、ヒータ71に電力を供給するためのヒータ配線部72と、ヒータ71で発生させた熱をチューブTに伝えるための接触部材73と、押圧部の一例である押圧ユニット90と、を有して構成されている。接触部材73は、チューブTの搬送方向に関して記録ヘッド6よりも上流に配置され、接触面73aにおいて搬送されるチューブTに接触する。押圧ユニット90は、チューブTを接触部材73に当接させるために、チューブTを接触部材73の接触面73aに向けて押圧する。
【0034】
チューブTは、後述する押圧ローラ91によって、接触部材73に向けて押圧され、接触部材73に接触する。接触部材73に設けられているヒータ71によって金属部材が加熱されると、チューブTは、接触部材73との接触面73aを介して加熱される。接触部材73の底部にあたる部分には、ヒータ71が設けられており、ヒータ71はヒータ配線部72を介して制御基板74(図6参照)に接続される。制御基板74は、図6においてヒータユニット70の上方(プリンタ1の背面側)に配置され、ヒータ71の温度制御を行う。即ち、ヒータ71は、接触部材73の接触面73aとは反対側に設けられ、接触面73aに接触するチューブTを、接触部材73を介して加熱する。チューブTは、ヒータユニット70から熱を受けながら、供給ローラ対2によって、搬送される。本実施形態では、ヒータ71は、押圧ユニット90による押圧方向に関して、接触部材73の裏面のうち、押圧ユニット90により押圧されたチューブTが接触面73aに接触する位置と反対側の位置を含むように配置されている。
【0035】
なお、ヒータ71で発生させた熱によって、チューブTを効率よく加熱するために、接触部材73の材質に関しては、例えば、アルミニウム材や銅材等の金属製で、熱伝導率の高い熱伝導性の材質により形成されることが望ましい。
【0036】
また、接触部材73の形状に関しては、チューブTとの接触面積をより大きく取れる形状が好ましい。そのため、本実施形態では、接触部材73を、図9に示すように、アルミ製の半円筒形状としている。ただし、接触部材73の形状は、半円筒に限定されるものではなく、所定の曲率をもつ曲面であっても良い。即ち、接触面73aは、搬送方向に直交する断面において、押圧ユニット90による押圧方向に凹んだ形状を有する湾曲面であるようにしている。
【0037】
また、接触部材73には、温度を検出するサーミスタ75が取り付けられており、所定のサンプリング間隔で接触部材73の温度をモニタリングできるようになっている。サーミスタ75により検出する接触部材73の温度が、あらかじめ定めた上限温度を上回るまでヒータ71への通電を続け、上限温度を超えるとヒータ71への通電を切る。また、サーミスタ75が検出する接触部材73の温度が、予め定めた下限温度を下回ると、ヒータ71への通電を再開する。これらの制御を繰り返し行い、接触部材73の温度を一定の範囲内に保つ制御を行っている。なお、本実施形態では、サーミスタ75を接触部材73に設ける構成としたが、サーミスタ75をヒータ71に設けて、ヒータ71の温度をモニタリングして制御を行うようにしても良い。
【0038】
本実施形態では、接触部材73の接触面73aに凹凸処理(具体的にはブラスト処理)を施している。但し、凹凸処理はブラスト処理に限らず、例えば、ホーニング処理等の他、金型による型押しや、エッチング処理等の薬剤による処理も適用することができる。本実施形態において、ブラスト処理を施した接触面73aの表面粗さ(Rz)は8.9μmであったが、接触面73aの表面粗さ(Rz)が5.0μm以上100μm以下であれば、チューブTの搬送不良が効果的に抑制できる。なお、本発明で扱う表面粗さ(Rz)は、JIS B 0601-2001で定義される最大高さであり、接触式あるいは非接触式の表面粗さ計を用いて測定することができる。
【0039】
本実施形態では、チューブ加熱ユニット7は、断熱部材76を有している。断熱部材76は、ヒータ71の接触部材73とは反対側に設けられ、断熱性を有している。断熱部材76は、例えば発泡材からなり、メラミン樹脂(熱伝導率:0.035[W/m・K])を適用している。但し、断熱部材76は、メラミン樹脂に限らず、ポリウレタンフォーム、発泡スチロール、発泡シリコン等の発泡系樹脂や、グラスウール、真空材などを適用することができる。断熱部材76の熱伝導率は、接触部材73の熱伝導率より低いことが好ましく、具体的には0.0~0.1[W/m・K]の範囲であることがより好ましい。
【0040】
図8に示すように、接触部材73の搬送方向に直交する断面において、ヒータ71が接触部材73の接触面73aとは反対側の裏面の一部に接触している。断熱部材76は、接触部材73の裏面のうち、ヒータ71が接触している領域よりも広い領域を覆うように設けられている。具体的には、ヒータ71は、接触部材73の半円筒形状の円弧形状の全体よりも狭い領域を覆うように設けられており、断熱部材76は、接触部材73の半円筒形状の円弧形状の全体を覆うように設けられている。また、図7(b)に示すように、チューブTの搬送方向に関して、ヒータ71は、接触部材73の全体よりも短い領域を覆うように設けられており、断熱部材76は、接触部材73の全体を覆うように設けられている。
【0041】
[押圧ユニット]
図7(b)及び図8に示すように、押圧ユニット90は、回転体の一例である押圧ローラ91と、押圧ローラ91を回転可能に保持する保持部材92と、保持部材92を金属部材に向けて付勢する弾性部材93等を有している。押圧ローラ91は、チューブTに接触して接触部材73に対して押圧する。押圧ローラ91を保持する保持部材92は、ヒータユニット70において、回動軸94を中心として回動することができるように設置されている。保持部材92が回動軸94を中心として回動することにより、押圧ローラ91は、保持部材92と共に回転方向R1に移動することが可能となっている。保持部材92は、弾性部材93によって、押圧ローラ91が接触部材73に接近する方向に付勢されている。弾性部材93としては、圧縮コイルばねを適用しているが、他の形状のばねや、ゴムなどの弾性変形するものを適用することができる。また、押圧ローラ91で押圧する方向が鉛直下向きである場合、押圧ローラ91の重量で付勢することも可能である。
【0042】
図8に示すように、押圧ユニット90に設けられた押圧ローラ91は、弾性部材93によって、接触部材73に向けて付勢される。チューブTは、押圧ローラ91によって、接触部材73に向けて押圧され、接触部材73に接触する。本実施形態では、チューブTは押圧ローラ91によって接触部材73に向けて押圧されるので、チューブTを引き抜く際の引抜力を小さく抑えることができる。接触部材73に設けられているヒータ71によって接触部材73が加熱されると、チューブTは、接触部材73との接触部を介して加熱される。
【0043】
このように、チューブTは、チューブ加熱ユニット7で加熱されながら、図3の供給ローラ対2によって搬送される。チューブTは、ヒータ71の熱を伝導する接触部材73に直接接触して加熱されることから、チューブ加熱ユニット7は効率よくチューブTを加熱することができる。
【0044】
図7(a)及び図7(b)において、チューブTにおける接触部材73と当接している領域は、図3の記録部20において、チューブが潰れるときに、折れ曲がる領域である。換言すると、押圧ローラ91がチューブTを押圧する方向は、記録ヘッド6が退避位置から記録位置へ移動してチューブTと当接する方向と、略直交する方向である。
【0045】
プリンタ1の記録部20とチューブ加熱ユニット7をこのように構成することにより、チューブTの、記録部20で折れ曲がる領域を、効率よく加熱して柔らかくすることが可能となる。そのため、気温の低い環境下であっても、チューブTと記録ヘッド6とを正しく当接させて、正常な記録を行うことができる。
【0046】
なお、本実施形態では、図7(b)に示すように、チューブTの搬送方向に関して、ヒータ71を接触部材73のほぼ全域に設けているが、ヒータ71の位置はこれに限定されない。ヒータ71は、接触部材73に接触して接触部材73に熱を伝えることのできる場所であれば、図7(b)に示した場所以外に設置しても、接触部材73を介してチューブTを加熱することが可能である。
【0047】
上述したチューブ加熱ユニット7において、チューブTを加熱して搬送する際は、接触部材73の接触面73aに凹凸処理が施されていることから、チューブTの搬送抵抗を低減することができる。このため、押圧ユニット80はより大きな押圧力でチューブTを接触部材73に押圧することができるので、効果的に接触面積を得ることができ、ヒータ71の加熱温度を低くしても所望の温度で加熱することができるようになる。また、接触部材73及びヒータ71の裏側に断熱部材76が設けられているので、ヒータ71により加熱した熱の放熱を抑制し、これによってもヒータ71の加熱温度を低くしても所望の温度で加熱することができるようになる。これらのことにより、ヒータ71によるチューブTを加熱する際の加熱効率を向上でき、低電力化を図ることができ、消費電力を抑えて、プリンタ1の電池駆動を実現することができる。
【0048】
上述したように本実施形態のプリンタ1によれば、接触部材73の接触面73aに凹凸処理が施されていることから、チューブTの搬送抵抗を低減することができる。このため、押圧ユニット80はより大きな押圧力でチューブTを接触部材73に押圧することができるので、効果的に接触面積を得ることができ、ヒータ71の加熱温度を低くしても所望の温度で加熱することができるようになる。これにより、チューブTの搬送不良を抑制しながらも、加熱効率の向上を図り、消費電力を抑えることができる。
【0049】
また、本実施形態のプリンタ1によれば、接触部材73及びヒータ71の裏側に断熱部材76が設けられているので、ヒータ71により加熱した熱の放熱を抑制し、これによってもヒータ71の加熱温度を低くしても所望の温度で加熱することができるようになる。これにより、加熱効率の向上を図り、消費電力を抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態のプリンタ1によれば、ヒータ71の加熱向上を図ることによって、低電力化を図ることができ、プリンタ1の電池駆動を実現することができる。
【0051】
また、本実施形態のプリンタ1によれば、凹凸処理としてブラスト処理を適用しているので、簡易な処理によって接触面73aに凹凸形状を形成することができる。
【0052】
また、本実施形態のプリンタ1によれば、断熱部材76は、接触部材73の裏面のうち、ヒータ71が接触している領域よりも広い領域を覆うように設けられている。このため、ヒータ71により加熱した熱の放熱をより効果的に抑制することができ、加熱効率の向上を図り、消費電力を抑えることができる。
【0053】
また、本実施形態のプリンタ1によれば、ヒータ71は、押圧ユニット90による押圧方向に関して、接触部材73の裏面のうち、押圧ユニット90により押圧されたチューブTが接触面73aに接触する位置と反対側の位置を含むように配置されている。このため、ヒータ71からの熱を無駄なくチューブTに伝えることができるので、加熱効率の向上を図り、消費電力を抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態のプリンタ1によれば、接触面73aは、搬送方向に直交する断面において、押圧ユニット90による押圧方向に凹んだ形状を有する湾曲面であるようにしている。このため、平面である場合に比べて、接触面73aとチューブTとの接触面積を大きくすることができるので、加熱効率を更に向上することができる。
【0055】
尚、上述した本実施形態におけるプリンタ1では、断熱部材76を設けた場合について説明したが、これには限られず、断熱部材76を省略してもよい。この場合も、接触部材73の接触面73aに凹凸処理が施されていることから、チューブTの搬送不良を抑制しながらも、加熱効率の向上を図り、消費電力を抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態におけるプリンタ1では、電池駆動である場合について説明したが、これには限られず、商用電源を利用するようにしてもよい。
【0057】
(実施例)
上述した実施形態のプリンタ1を利用して、押圧ユニット80によりチューブTを接触部材73に押圧した状態においてチューブTを引き抜く際の引抜力について、チューブTの内径を異ならせて計測した。その結果を図10に示す。
【0058】
(比較例)
接触面73aに凹凸処理を行わない接触部材(表面粗さ(Rz):1.5μm)を用いて、押圧ユニット80によりチューブTを接触部材73に押圧した状態においてチューブTを引き抜く際の引抜力について、チューブTの内径を異ならせて計測した。押圧ユニット80による押圧力は、実施例と同様とした。その結果を図10に示す。
【0059】
図10に示すように、チューブTの内径によらず、実施例の方が比較例よりも引抜力が小さかった。これは、実施例では接触面73aに凹凸処理を施していることから、摺動抵抗が小さくなったためであると推測された。従って、本実施形態の効果であるチューブTの搬送不良を抑制しながらも、加熱効率の向上を図ることができることが確認された。
【符号の説明】
【0060】
1…プリンタ(記録装置)、2…供給ローラ対(搬送部)、6…記録ヘッド、71…ヒータ、73…接触部材、73a…接触面、76…断熱部材、81…電源部、90…押圧ユニット(押圧部)、91…押圧ローラ(回転体)、T…チューブ(チューブ状記録媒体)。
図1
図2
図3
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図10