(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039097
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】車いす
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20230313BHJP
A61G 5/08 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
A61G5/12 701
A61G5/08 702
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146082
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】502327953
【氏名又は名称】三貴ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 朋寛
(57)【要約】
【課題】使用者の体格に応じて着座部の前後方向長を変更でき、該使用者が適正に着座し得る車いすを提案する。
【解決手段】左右一対の座フレーム杆部22,22には、前後方向に沿って案内溝部35,35が夫々形成されると共に、各座フレーム杆部22の後部に固定シート部材51が固結されて差し渡され、各案内溝部35,35に位置変換シート部材61が前後方向へ移動可能に設けられて差し渡されてなり、さらに、位置変換シート部材61を長座位置で移動不能に保持する第一回動位置と、短座位置で移動不能に保持する第二回動位置と、該長座位置と短座位置とに移動可能な第三回動位置とに回動可能に外嵌されたシート位置規制部材33,33が夫々配設される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に沿って配設された左右一対の座フレーム杆部と、
左右の側縁が左右の座フレーム杆部の後部に夫々固結されて、左右の座フレーム杆部に差し渡された固定シート部材と、
左右の座フレーム杆部の少なくとも前部に夫々設けられ、前後方向に沿って延成された案内溝部と、
左右の側縁が左右の案内溝部に前後方向へ移動可能に夫々設けられて、左右の座フレーム杆部に差し渡され、固定シート部材と共に着座部を構成するものであって、該座フレーム杆部の前端寄りに設けられて該着座部の前後方向長を長くする長座位置と該長座位置よりも後方に設けられて該着座部の前後方向長を短くする短座位置とに位置変換可能な位置変換シート部材と、
座フレーム杆部に周方向へ回動可能に外嵌され、位置変換シート部材を、長座位置で移動不能に保持する第一回動位置と、短座位置で移動不能に保持する第二回動位置と、該長座位置と該短座位置とに移動可能な第三回動位置とに回動されるシート位置規制部材と
を備えたものであることを特徴とする車いす。
【請求項2】
位置変換シート部材は、
短座位置で固定シート部材に隣接する主シート部と、前記主シート部から後方へ延成された延出シート部とを備え、
前記延出シート部が、前記短座位置で固定シート部材に重なると共に、長座位置で該延出シート部の少なくとも後側縁が該固定シート部材に重なるものであることを特徴とする請求項1に記載の車いす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
車いすとして、駆動車輪が夫々連結された左右一対のフレームを、略X形のリンクで折り畳みできるように連結されたものが一般的に知られている。かかる構成の車いすは、例えば特許文献1に示すように、前記リンクの上端に連結された左右一対の座フレームに、シート部材の両端が連結されて差し渡されており、該車いすを展開した状態で該シート部材が張設されて、着座部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の車いすは、左右の座フレームに張設されたシート部材により着座部のサイズが定められており、該着座部のサイズは、通常、平均的な体格の使用者に基づいて設定されている。ところが、例えばレンタル用の車いすは、様々な体格の使用者が使用することから、該使用者の体格によっては座り難くなってしまう。すなわち、比較的小柄な使用者の場合には、車いすの着座部に着座した際に、当該使用者の膝裏が座部シート上面に乗載されて座り難くなる。一方、比較的大柄な使用者の場合には、フットレストに足を置くと、大腿部が座部シート上に離れてしまい、座り難くなる。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、様々な体格の使用者が適正に着座し得る車いすを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前後方向に沿って配設された左右一対の座フレーム杆部と、左右の側縁が左右の座フレーム杆部の後部に夫々固結されて、左右の座フレーム杆部に差し渡された固定シート部材と、左右の座フレーム杆部の少なくとも前部に夫々設けられ、前後方向に沿って延成された案内溝部と、左右の側縁が左右の案内溝部に前後方向へ移動可能に夫々設けられて、左右の座フレーム杆部に差し渡され、固定シート部材と共に着座部を構成するものであって、該座フレーム杆部の前端寄りに設けられて該着座部の前後方向長を長くする長座位置と該長座位置よりも後方に設けられて該着座部の前後方向長を短くする短座位置とに位置変換可能な位置変換シート部材と、座フレーム杆部に周方向へ回動可能に外嵌され、位置変換シート部材を、長座位置で移動不能に保持する第一回動位置と、短座位置で移動不能に保持する第二回動位置と、該長座位置と該短座位置とに移動可能な第三回動位置とに回動されるシート位置規制部材とを備えたものであることを特徴とする車いすである。
【0007】
かかる構成にあっては、位置変換シート部材を長座位置と短座位置とに変換することによって、使用者が着座する着座部の前後方向長を変更できることから、使用者の体格に応じて位置変換シート部材を長座位置と短座位置とに選択的に位置させることで、該使用者が座り易くなる。すなわち、比較的小柄な使用者が使用する場合には、位置変換シート部材を短座位置に保持することによって、当該使用者の膝裏が着座部の上面に乗載されることを抑制でき、座り易くできる。一方で、比較的大柄な使用者が使用する場合には、位置変換シート部材を長座位置に保持することによって、当該使用者の大腿部が着座部上に載置され易くなり、座り易くできる。さらに、本発明の構成は、シート位置規制部材を第一回動位置と第二回動位置とに位置させることで、位置変換シートを長座位置と短座位置とで保持できることから、該位置変換シートが着座中に意図せずにずれてしまうことと防止できる。したがって、本発明の構成によれば、使用者の体格に応じて位置変換シート部材を長座位置と短座位置とに変換することによって、該使用者が適正な着座姿勢で安定して着座できる。
【0008】
また、本発明の構成にあっては、位置変換シート部材の位置変換をシート位置規制部材の回動により実施できることから、該位置変換に要する作業を容易に行うことができる。さらに、この作業の際に、例えば部品の組み換え作業や工具の使用などを要しないという利点を有すると共に、部品の紛失を生じないという利点を有する。
【0009】
前述した本発明の車いすにあって、位置変換シート部材は、短座位置で固定シート部材に隣接する主シート部と、前記主シート部から後方へ延成された延出シート部とを備え、前記延出シート部が、前記短座位置で固定シート部材に重なると共に、長座位置で該延出シート部の少なくとも後側縁が該固定シート部材に重なるものである構成が提案される。
【0010】
かかる構成にあっては、位置変換シート部材を短座位置と長座位置とのいずれとした場合にも、該位置変換シート部材と固定シート部材との間に隙間を生じないことから、着座部に着座された使用者の着座姿勢を安定させることができ、一層座り易くできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車いすによれば、使用者の体格に応じて着座部の前後方向長を変換できることから、様々体格の使用者が座り易くでき、比較的長時間に亘って着座しても疲れ難くできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例にかかる車いすを構成する本体フレーム2の斜視図である。
【
図2】本体フレーム2に固定シート部材51と位置変換シート部材61とが配設された状態を示す斜視図である。
【
図3】シート位置規制部材33の、(A)第一回動位置における斜視図と、(B)第二回動位置における斜視図と、(C)第三回動位置における斜視図である。
【
図4】シート位置規制部材33の、(A)第一回動位置における断面
図1と、(B)第一回動位置における断面
図2と、(C)第二回動位置における断面
図1と、(D)第二回動位置における断面
図2と、(E)第三回動位置における断面
図1と、(F)第三回動位置における断面
図2である。
【
図5】位置変換シート部材61の、(A)平面図と、(B)断面図である。
【
図6】固定シート部材51の、(A)平面図と、(B)断面図である。
【
図7】位置変換シート部材61が短座位置にある状態を示す斜視図である。
【
図8】位置変換シート部材61が長座位置にある状態を示す斜視図である。
【
図9】シート位置規制部材33を第三回動位置として、位置変換シート部材61を移動可能とした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる車いすを具体化した実施例を、以下で詳細に説明する。
本実施例の車いすは、
図1,2に示すように、金属製パイプで構成された本体フレーム2を備える。本体フレーム2は、左右一対の側枠10,10を備えており、該側枠10は、前後方向に配設されたベースフレーム部11と、該ベースフレーム部11の後部に接合された上下方向の後脚フレーム部12と、該後脚フレーム部12の上端から上方へ延出された背もたれフレーム部13と、該後脚フレーム部12の上端部から前方へ延出された上フレーム部15とを有する。さらに、左右の上フレーム部15,15には、凹溝状の座フレーム支持部16,16が夫々配設されており、各座フレーム支持部16,16に、前後方向に延成された左右一対の座フレーム杆部22,22が夫々載置される。
【0014】
前記した後脚フレーム部12には、主車輪3が配設されている。この主車輪3は、従来から用いられているものが適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0015】
前記した左右一対の側枠10,10間には、一対の杆材が夫々の中央で回動自在に連結されたクロスフレーム部19が配設されている。このクロスフレーム部19は、その一対の杆材の夫々の下端が、前記した側枠10,10を構成する左右のベースフレーム部11,11に回動可能に連結されると共に、該一対の杆材の夫々の上端が、前記した左右の座フレーム杆部22,22に回動可能に連結されている。
【0016】
本体フレーム2は、クロスフレーム部19によって左右の側枠10,10が連結された構成であり、左右の座フレーム杆部22,22が前記座フレーム支持部16,16に載置されることによって、左右の側枠10,10が左右に所定間隔をおいて離間された状態で保持される。この状態が、使用者の着座可能な使用状態である。こうした使用状態から左右の座フレーム杆部22,22が持ち上げられることによって、該クロスフレーム部19の左右両端が近接し、これに伴って左右の側枠10,10が互いに近接する。これにより、本体フレーム2(すなわち、車いす)が折り畳まれる。
尚、クロスフレーム部19は、従来から用いられているものが適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
前記本体フレーム2の左右の背もたれフレーム部13,13には、柔軟性を有する布製の背もたれシート部材(図示せず)が架け渡され、該背もたれシート部材によって、使用者の背部を支える背もたれ部(図示せず)が構成される。
【0018】
次に、本発明の要部について説明する。
図2に示すように、本実施例の車いすは、左右の座フレーム杆部22,22に、前後方向へ移動不能な固定シート部材51と、前後方向へ移動可能な位置変換シート部材61とが差し渡されたものである。
【0019】
座フレーム杆部22は、
図3,4に示すように、前後方向に開口された長尺円筒形状の主杆部31と、該主杆部31の前後開口に係合された係合端部32,32と、該主杆部31に周方向へ回動可能に外嵌されたシート位置規制部材33とを備える。主杆部31は、上方開口する案内溝部35が該主杆部31の長手方向(前後方向)に亘って形成されており、案内溝部35を介して、主杆部31の内部空隙34が外部と連通される。そして、主杆部31の内部空隙34には、両端が前後の係合端部32,32に支持された断面円形の支持棒部36が該主杆部31の長手方向に亘って配設されている。さらに、主杆部31の前端寄り部位には、図示しない螺子孔が設けられており、該螺子孔に回転案内螺子38が螺合されている。この回転案内螺子38は、主杆部31から下方へ所定長さで突出するように前記螺子孔に螺合されている。
【0020】
前記シート位置規制部材33は、周方向に欠円部を有する断面円弧状の前部円弧嵌部41、後部円弧嵌部42、および案内円弧嵌部43を備え、前後方向に所定間隔をおいて列設された前部円弧嵌部41と後部円弧嵌部42とが案内円弧嵌部43を介して一体的に形成されたものである。前部円弧嵌部41と後部円弧嵌部42とは、周方向で一部が重なるように設けられており、夫々の欠円部が周方向で重なる部分と重ならない部分とが形成されている。そして、案内円弧嵌部43は、前部円弧嵌部41と後部円弧嵌部42との少なくとも一方と周方向で重なるように設けられており、該案内円弧嵌部43の欠円部が、前部円弧嵌部41および後部円弧嵌部42の各欠円部と夫々重なる。こうしたシート位置規制部材33は、前記主杆部31の周方向に回動させることにより、該主杆部31の上方に、前部円弧嵌部41と後部円弧嵌部42との両者(および案内円弧嵌部43)が位置しない第三回動位置(
図4(E),(F)参照)と、前部円弧嵌部41のみが位置する第二回動位置(
図4(C),(D)参照)と、後部円弧嵌部42のみが位置する第一回動位置(
図4(A),(B)参照)とに位置変換することが可能である。尚ここで、
図4(A),(C),(E)は、座フレーム杆部22におけるシート位置規制部材33よりも前方の所定位置における断面図であり、
図4(B),(D),(F)は、該シート位置規制部材33の案内円弧嵌部43を配設した位置における断面図である。
【0021】
さらに、シート位置規制部材33の案内円弧嵌部43には、周方向に沿って長孔45を備え、該長孔45に、主杆部31に螺合された回転案内螺子38が挿通される。これにより、シート位置規制部材33が、主杆部31に対して周方向へ回動可能であると共に、該主杆部31の長方向への移動が規制される。
【0022】
また、本実施例にあって、シート位置規制部材33の前部円弧嵌部41には、前記第一回動位置で主杆部31の案内溝部35に嵌め合わされる嵌合隆部46が、周方向の一側縁に設けられている。これにより、シート位置規制部材33を第一回動位置で位置決めして保つことができる。同様に、後部円弧嵌部42には、前記第二回動位置で主杆部31の案内溝部35に嵌め合わされる嵌合隆部47が、周方向の一側縁に設けられている。これにより、シート位置規制部材33を第二回動位置で位置決めして保つことができる。
【0023】
シート位置規制部材33は、前部円弧嵌部41と後部円弧嵌部42とに径外方へ突成された操作凸部48,49を備える。これら各操作凸部48,49を操作することによって、シート位置規制部材33を比較的容易に回動させることができ、前記第一回動位置、第二回動位置、および第三回動位置へ位置変換し易くなっている。
【0024】
こうした左右の座フレーム杆部22,22には、前記した固定シート部材51が差し渡されている。固定シート部材51は、
図6に示すように、柔軟性を有する布材からなり、座フレーム杆部22,22間に配されるシート主部52と、該シート主部52の左右両端部に設けられた環状端部53,53とを備える。こうした固定シート部材51は、左右の環状端部53,53が左右の座フレーム杆部22,22の各主杆部31,31の後部に外嵌されて、図示しない固定螺子によって該主杆部31,31に夫々固結される。さらに、本実施例の固定シート部材51は、その上面に、面ファスナー部55,55が配設されている。
【0025】
また、左右の座フレーム杆部22,22は、各主杆部31,31に固結された固定シート部材51よりも前方に、前記した位置変換シート部材61が差し渡されている。位置変換シート部材61は、
図5に示すように、柔軟性を有する布材からなり、左右両端部に被案内端部66,66が設けられた主シート部62と、該主シート部62から後方へ延成された延出シート部63とを備える。主シート部62の前記被案内端部66,66は、左右の座フレーム杆部22,22の案内溝部35,35の内部空隙34,34に夫々挿入されて、該内部空隙34,34で前記支持棒部36,36に前後方向へ移動可能に夫々外嵌される。これにより、位置変換シート部材61は、案内溝部35,35に沿って前後方向へ移動可能かつ該案内溝部35,35から離脱不能として、左右の座フレーム杆部22,22に差し渡されている。一方、延出シート部63は、当該位置変換シート部材61を後述の短座位置(
図7参照)とした状態で、前記固定シート部材51と重なり合い、かつ後述の長座位置(
図8参照)とした状態で、後側縁部のみが該固定シート部材51を重なるように、前記主シート部62から後方へ延成されている。そして、延出シート部63の下面には、面ファスナー部67,67が並設されており、各面ファスナー部67,67が前記した固定シート部材51の面ファスナー部55,55と着脱可能に接合され得る。ここで、延出シート部63の面ファスナー部67,67は、前記短座位置で固定シート部材51の面ファスナー部55,55と接合可能であるだけでなく、前記長座位置であっても、固定シート部材51の面ファスナー部55,55の前部と接合可能に設けられている。
【0026】
尚、本実施例の車いすにあって、左右の座フレーム杆部22,22に夫々差し渡された固定シート部材51と位置変換シート部材61とによって、使用者が着座できる着座部6が構成される。
【0027】
こうした位置変換シート部材61は、左右の座フレーム杆部22,22の案内溝部35,35に沿って前後方向へ移動可能であり、主シート部62が固定シート部材51に前方で隣接する短座位置(
図7)と、該主シート部62が該固定シート部材51の前方へ離間する長座位置(
図8)とに位置変換することができる。
【0028】
詳述すると、
図7に示すように、シート位置規制部材33を前記第二回動位置(
図3(B)および
図4(C),(D)参照)として、位置変換シート部材61を前記短座位置に配置する。この状態では、シート位置規制部材33の前部円弧嵌部41が案内溝部35上に配置されることから、位置変換シート部材61が、該前部円弧嵌部41によって前方へ移動不能とされて前記短座位置で保持される。この短座位置では、位置変換シート部材61の延出シート部63が固定シート部材51に重なることから、着座部6の前後方向長が短くなる。
【0029】
位置変換シート部材61を前記短座位置から長座位置へ位置変換する場合には、
図9に示すように、シート位置規制部材33を前記第三回動位置(
図3(C)および
図4(E),(F)参照)とする。この第三回動位置では、案内溝部35がシート位置規制部材33によって閉鎖されないことから、位置変換シート部材61が該案内溝部35に沿って前後方向へ移動可能となる。これにより、位置変換シート部材61を前記短座位置から前方へ移動させて、前記長座位置に配置する(
図8参照)。そして、シート位置規制部材33を第一回動位置(
図3(A)および
図4(A),(B)参照)に回動させる。これにより、シート位置規制部材33の後部円弧嵌部42が案内溝部35上に配置されることから、位置変換シート部材61が、該後部円弧嵌部42によって後方へ移動不能とされて前記長座位置で保持される。この長座位置では、位置変換シート部材61の主シート部62が固定シート部材51の前方で離間されることから、着座部6の前後方向長が長くなる。尚、本実施例にあっては、長座位置で延出シート部63の後端部が固定シート部材51に重なるため、位置変換シート部材61と固定シート部材51との間に隙間が生じないようになっている。
【0030】
また、前記長座位置から短座位置へ位置変換する場合には、前述と同様に、シート位置規制部材33を前記第三回動位置(
図3(C)および
図4(E),(F)参照)として位置変換シート部材61を短座位置へ移動させた後に、シート位置規制部材33を前記第二回動位置に回動させる。これにより、位置変換シート部材61を短座位置で保持できる。
【0031】
このように本実施例の車いすによれば、シート位置規制部材33を第一回動位置、第二回動位置、および第三回動位置に適宜回動させて位置変換シート部材61を短座位置または長座位置に位置変換させることによって、着座部6を前後方向に伸縮させることができるから、使用者に応じて着座部6の前後方向長を変更できる。これにより、比較的小柄な体格の使用者の場合には、位置変換シート部材61を短座位置とすることで座り易くできる一方、比較的大柄な体格の使用者の場合には、位置変換シート部材61を長座位置とすることで座り易くできる。このように使用者の体格に応じて着座部6の前後方向長を伸縮することにより、使用者が適正な着座姿勢で安定して着座することができる。
【0032】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。例えば、前述の実施例における各部の寸法形状は、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
2 本体フレーム
3 主車輪
6 着座部
10 側枠
11 ベースフレーム部
12 後脚フレーム部
13 背もたれフレーム部
15 上フレーム部
16 座フレーム支持部
19 クロスフレーム部
22 座フレーム杆部
24 キャスター
31 主杆部
32 係合端部
33 シート位置規制部材
34 内部空隙
35 案内溝部
36 支持棒部
38 回転案内螺子
41 前部円弧嵌部
42 後部円弧嵌部
43 案内円弧嵌部
45 長孔
46,47 嵌合隆部
48,49 操作凸部
51 固定シート部材
52 シート主部
53 環状端部
55 面ファスナー部
61 位置変換シート部材
62 主シート部
63 延出シート部
66 被案内端部
67 面ファスナー部