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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039107
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】成形金型及び打ち抜き方法
(51)【国際特許分類】
   B23D 33/00 20060101AFI20230313BHJP
   B23D 15/02 20060101ALI20230313BHJP
   B23D 33/08 20060101ALI20230313BHJP
   B26F 3/00 20060101ALN20230313BHJP
   B26D 3/08 20060101ALN20230313BHJP
   B26D 7/08 20060101ALN20230313BHJP
   B26F 1/40 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
B23D33/00 K
B23D15/02
B23D33/08 A
B26F3/00 A
B26D3/08 Z
B26D7/08 A
B26F1/40 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146102
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】吉野 雅夫
【テーマコード(参考)】
3C039
3C051
3C060
【Fターム(参考)】
3C039AA02
3C039AA12
3C039AA22
3C039AA32
3C051AA11
3C051BB02
3C051FF27
3C060AA16
3C060AA20
3C060BA03
3C060BB04
3C060BC01
3C060BD01
3C060BH01
3C060CB03
3C060CB14
(57)【要約】
【課題】良好な切断面を得られる成形金型及び打ち抜き方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る成形金型は、母材Tが載せられる下金型3と、下金型3に載せられた母材Tに載せられる上金型2と、上金型2及び下金型3のそれぞれに取り付けられており、母材Tを挟み込んで母材Tに筋入れを行う一対の刃10と、一対の刃10に筋入れされた状態で母材Tに当接することにより、母材Tを折り曲げて母材Tを切断するプッシャー6と、を備える。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材が載せられる下金型と、
前記下金型に載せられた前記母材に載せられる上金型と、
前記上金型及び前記下金型のそれぞれに取り付けられており、前記母材を挟み込んで前記母材に筋入れを行う一対の刃と、
一対の前記刃に筋入れされた状態で前記母材に当接することにより、前記母材を折り曲げて前記母材を切断するプッシャーと、
を備える、
成形金型。
【請求項2】
前記上金型に設けられており、前記母材の上面において上下方向に沿って振動する振動部材を備える、
請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
前記下金型に設けられており、前記母材の下面に接触した状態で変形する変形部材を備える、
請求項1又は2に記載の成形金型。
【請求項4】
一対の前記刃のそれぞれは、平面視において第1方向に延在する2つの第1刃と、平面視において前記第1方向に交差する第2方向に延在する2つの第2刃とを含んでおり、
平面視において、各前記第2刃は、2つの前記第1刃の間に設けられており、
2つの前記第1刃は、各前記第2刃よりも前記第1方向の端部側に延在している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の成形金型。
【請求項5】
上金型及び下金型のそれぞれに取り付けられた一対の刃と、前記上金型に取り付けられたプッシャーとを備えた金型を用いて母材を打ち抜く打ち抜き方法であって、
一対の前記刃が前記母材を挟み込んで前記母材に筋入れを行う工程と、
前記筋入れを行っている状態で前記プッシャーが前記母材に当接することにより、前記母材を折り曲げて前記母材を切断する工程と、
を備える打ち抜き方法。
【請求項6】
一対の前記刃のそれぞれは、平面視において第1方向に延在する2つの第1刃と、平面視において前記第1方向に交差する第2方向に延在する2つの第2刃とを含んでおり、
前記プッシャーは、平面視において2つの前記第1刃よりも前記第2方向の端部側に位置する第1プッシャーと、平面視において2つの前記第2刃よりも前記第1方向の端部側に位置する第2プッシャーとを含んでおり、
前記母材を切断する工程は、
2つの前記第1刃が筋入れを行っている状態で前記第1プッシャーが前記母材に当接することにより、前記第1方向に沿って前記母材を切断する工程と、
2つの前記第2刃が筋入れを行っている状態で前記第2プッシャーが前記母材に当接することにより、前記第2方向に沿って前記母材を切断する工程と、
を含む、
請求項5に記載の打ち抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、母材を成形する成形金型、及び母材の打ち抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形金型及び打ち抜き方法としては種々のものが知られている。特許文献1には、被切断体の打ち抜き方法が記載されている。被切断体は、下型に載せられた状態で上型の切断刃が被切断体に当接することによって切断される。上型は、下方を向く切断刃と、当該切断刃よりも下方に突出する弾性体とを備える。下型は、上方を向く切断刃と、当該切断刃よりも上方に突出する弾性体とを備える。
【0003】
被切断体は下型の弾性体に載せられる。下型の弾性体に載せられた被切断体に上型が接近すると、上型の弾性体、及び上型の切断刃が被切断体に当接する。この当接に伴って、下型の弾性体が被切断体に当接すると共に、下型の切断刃が被切断体に当接する。上型の切断刃と下型の切断刃は、被切断体を挟み込むことによって被切断体を切断する。
【0004】
特許文献2には、合成樹脂板の切断方法が記載されている。この切断方法は、合成樹脂板の切断装置によって実行される。切断装置は、被切断物が載せられる下ワーク押え板と、下ワーク押え板と共に被切断物を挟み込む上ワーク押え板とを備える。上ワーク押え板には上切断刃が設けられており、下ワーク押え板には下切断刃が設けられている。この切断装置では、最初に下切断刃が下から被切断物に入り込み、次に上切断刃が上から被切断物に入り込む。その後、上切断刃及び下切断刃が下方に移動し、上切断刃が被切断物の下端から突出した状態で被切断物が切断される。
【0005】
特許文献3には、プラスチックを主成分とするシートを構成材料とするセルの分割加工方法が記載されている。この方法では、トムソン打ち抜き型で使用する上刃及び下刃によってセルが分割される。下刃のセル側側面から下刃の刃先までの刃物厚み距離が0~0.5mmであり、下刃の刃先から上刃の刃先までの刃物厚み距離が1.0mm以下である。上刃の刃先から下刃の刃先までの上下方向距離が0.005mm~0.2mmとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-285099号公報
【特許文献2】特開2012-101290号公報
【特許文献3】特開2003-291097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、上下一対に配置された刃によって被切断物である母材を切断する場合、良好な切断面を得られないということが生じうる。例えば母材が集電体である場合、良好な切断面が得られないと、集電体の短絡を招来する可能性がある。従って、成形金型では良好な切断面を得ることが求められる。
【0008】
本開示は、良好な切断面を得られる成形金型及び打ち抜き方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る成形金型は、母材が載せられる下金型と、下金型に載せられた母材に載せられる上金型と、上金型及び下金型のそれぞれに取り付けられており、母材を挟み込んで母材に筋入れを行う一対の刃と、一対の刃に筋入れされた状態で母材に当接することにより、母材を折り曲げて母材を切断するプッシャーと、を備える。
【0010】
この成形金型では、上金型及び下金型のそれぞれに取り付けられた一対の刃を備える。一対の刃のそれぞれが上下から母材に当接することにより、母材の上面及び下面に筋入れが行われる。筋入れされた状態では、母材は切断されておらず、母材の途中部分まで上下一対の刃が入り込んでいる。成形金型は、母材に当接して母材を折り曲げるプッシャーを備える。プッシャーは、一対の刃によって筋入れされている母材に当接して当該母材を折り曲げて切断する。従って、一対の刃によって予め筋入れされている状態の母材にプッシャーが当接して母材が切断されることにより、母材にきれいな切断面を形成することができる。すなわち、一対の刃に挟まれた母材がプッシャーの当接によって切断されることにより、良好な切断面を得られる。よって、母材が集電体である場合には集電体の短絡の発生を抑制することができる。
【0011】
成形金型は、上金型に設けられており、母材の上面において上下方向に沿って振動する振動部材を備えてもよい。この場合、上下方向に沿って振動する振動部材が母材の上面に接触することにより、上金型と下金型の間に挟まれた母材に過大な押圧力がかかることを抑制できる。
【0012】
成形金型は、下金型に設けられており、母材の下面に接触した状態で変形する変形部材を備えてもよい。この場合、変形部材が母材の下面に接触することにより、上金型と下金型の間に挟まれた母材に過大な押圧力がかかることを抑制できる。
【0013】
一対の刃のそれぞれは、平面視において第1方向に延在する2つの第1刃と、平面視において第1方向に交差する第2方向に延在する2つの第2刃とを含んでいてもよい。平面視において、各第2刃は、2つの第1刃の間に設けられていてもよい。2つの第1刃は、各第2刃よりも第1方向の端部側に延在していてもよい。この場合、平面視において第1方向に延びる2つの第1刃が第2刃よりも第1方向の端部側に延在している。2つの第1刃、及び2つの第2刃のそれぞれで母材に筋入れをしている状態で母材を切断することにより、平面視における母材の角部をよりきれいに切断することができる。従って、更に良好な切断面を得られる。
【0014】
本開示に係る打ち抜き方法は、上金型及び下金型のそれぞれに取り付けられた一対の刃と、上金型に取り付けられたプッシャーとを備えた金型を用いて母材を打ち抜く打ち抜き方法である。打ち抜き方法は、一対の刃が母材を挟み込んで母材に筋入れを行う工程と、筋入れを行っている状態でプッシャーが母材に当接することにより、母材を折り曲げて母材を切断する工程と、を備える。
【0015】
この打ち抜き方法では、上金型及び下金型のそれぞれに取り付けられた一対の刃のそれぞれが上下から母材に当接することにより、母材の上面及び下面に筋入れが行われる。そして、一対の刃が筋入れを行っている状態でプッシャーが母材に当接することにより、母材が折り曲げられて切断される。従って、予め筋入れされている状態の母材にプッシャーが当接して母材を切断することにより、母材にきれいな切断面が形成される。よって、一対の刃に挟まれた母材をプッシャーが切断することにより、良好な切断面を得られる。その結果、母材が集電体である場合には集電体の短絡の発生を抑制することができる。
【0016】
一対の刃のそれぞれは、平面視において第1方向に延在する2つの第1刃と、平面視において第1方向に交差する第2方向に延在する2つの第2刃とを含んでおり、プッシャーは、平面視において2つの第1刃よりも第2方向の端部側に位置する第1プッシャーと、平面視において2つの第2刃よりも第1方向の端部側に位置する第2プッシャーとを含んでもよい。母材を切断する工程は、2つの第1刃が筋入れを行っている状態で第1プッシャーが母材に当接することにより、第1方向に沿って母材を切断する工程と、2つの第2刃が筋入れを行っている状態で第2プッシャーが母材に当接することにより、第2方向に沿って母材を切断する工程と、を含んでもよい。この場合、第1方向に沿って母材を切断する工程と、第2方向に沿って母材を切断する工程とを別々のタイミングで行うことにより、平面視における母材の角部をきれいに切断することができる。従って、母材の切断面を更に良好にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、良好な切断面を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る成形金型を模式的に示す平面図である。
図2図1の成形金型のA-A線断面図である。
図3図1の成形金型のB-B線断面図である。
図4図1の成形金型の上金型に取り付けられた刃を示す図である。
図5図1の成形金型の下金型に取り付けられた刃を示す図である。
図6】実施形態に係る打ち抜き方法の工程の例を示すフローチャートである。
図7】母材に上金型が当接している状態を示す成形金型の縦断面図である。
図8図7の状態における母材、一対の刃、及びプッシャーを示す縦断面図である。
図9図7の状態における母材、及び一対の刃を示す縦断面図である。
図10図7のプッシャーが母材を折り曲げて切断している状態を示す縦断面図である。
図11図10の状態における母材、一対の刃、及びプッシャーを示す縦断面図である。
図12】母材、及び一対の刃を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る成形金型及び打ち抜き方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0020】
図1は、実施形態に係る成形金型1を示す平面図である。図2は、成形金型1のA-A線断面図である。図3は、成形金型1のB-B線断面図である。図1図3に示されるように、成形金型1は、例えば、母材Tに打ち抜き加工を行って母材Tを成形する打ち抜き金型である。母材Tは、例えば、リチウムイオン電池又は全固体電池の集電体である。
【0021】
例えば、成形金型1は電極の形状となるように集電体である母材Tを打ち抜く。母材Tは、例えば、携帯端末若しくはドローン等の小型機器、又は自動車等の大型機器の全固体電池として用いられる。母材Tの材料は、例えば、SUS(Steel Use Stainless)、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、チタン、又はカーボンである。
【0022】
成形金型1は、上金型2と下金型3とを含んでいる。例えば、成形金型1は、母材Tが載せられる台4と、台4に載せられた母材Tを押さえる押さえ機構5と、母材Tに当接するプッシャー6と、母材Tに筋入れを行うトムソン刃である刃10とを備える。刃10は、上金型2及び下金型3のそれぞれに固定されている。なお、図1では、図示をわかりやすくするために、成形金型1の部品を適宜実線で示している。
【0023】
刃10は、母材Tを切断するものではなく、母材Tに筋入れを行うためのものである。「筋入れ」とは、母材に刃を挿入して母材を切断せず且つ母材に筋を形成することを示している。「筋」とは、例えば、一方向に延びる溝又は凹部を示している。本実施形態において、筋入れは、上下一対の刃10によって行われる。上下一対の刃10が筋入れを行うときに、上下一対の刃10は互いに接触しない。
【0024】
台4は、例えば、下金型3において上方に突出する凸部3bの上に固定されている。台4には、母材Tの下面T2に接触する変形部材9が配置されている。変形部材9は、例えば、柔軟性材料によって構成されている。一例として、変形部材9は、スポンジである。押さえ機構5は、上金型2に設けられる。
【0025】
押さえ機構5は、上から母材Tに当接する当接部8bを上下方向D3に沿って振動する振動部材8を有する。一例として、振動部材8は上下方向D3に伸縮するバネ部材を含んでいる。振動部材8は、母材Tに当接部8bを当接させた状態で上下方向D3に振動する。例えば、平面視(上下方向D3に沿って見た場合)において、振動部材8は成形金型1の中心1bを含む領域に設けられる。
【0026】
押さえ機構5は、例えば、上金型2において下方に突出する凸部2bの内部に固定されている。プッシャー6は、上金型2の内部において上下方向D3に沿って移動可能とされている。成形金型1は、例えば、複数のプッシャー6を備える。複数のプッシャー6のそれぞれは上金型2の内部で上下方向D3に沿って延在している。一例として、成形金型1は6本のプッシャー6を備える。
【0027】
平面視において、2本のプッシャー6が第1方向D1に沿って並んでおり、3本のプッシャー6が第2方向D2に沿って並んでいる。第1方向D1は上下方向D3に交差する方向であり、第2方向D2は第1方向D1及び上下方向D3の双方に交差する方向である。第1方向D1、第2方向D2及び上下方向D3は、例えば、互いに直交している。
【0028】
平面視において第2方向D2に沿って並ぶ3本のプッシャー6のうち、第2方向D2の中央に位置するプッシャー6は、他の2本のプッシャー6よりも成形金型1の第1方向D1の端部側に位置する。これにより、平面視において6本のプッシャー6が六角形状を成すように配置される。
【0029】
上金型2及び下金型3のそれぞれに設けられる一対の刃10は、第1方向D1に延びる第1刃11と、第2方向D2に延びる第2刃12とを含む。例えば、複数のプッシャー6は、平面視において2つの第1刃11よりも第2方向D2の端部側に位置する複数の第1プッシャー6Aと、平面視において2つの第2刃12よりも第1方向D1の端部側に位置する複数の第2プッシャー6Bとを含む。
【0030】
第1刃11及び第2刃12のそれぞれは上金型2及び下金型3のそれぞれに配置されている。例えば、平面視において、第1方向D1に延びると共に第2方向D2に沿って並ぶ一対の第1刃11と、一対の第1刃11の間において第2方向D2に延びる一対の第2刃12とが設けられる。
【0031】
平面視において、一対の第2刃12は、第1方向D1に沿って並んでいる。第1刃11の第1方向D1の端部11bは、第2刃12よりも成形金型1の第1方向D1の端部側に突出している。すなわち、第1刃11の端部11bは、第2刃12から第1方向D1の端部側に突出する突出部とされている。
【0032】
平面視における一対の第1刃11と一対の第2刃12の内側には、第1方向D1及び第2方向D2に延びる矩形状領域Aが形成されており、母材Tは矩形状領域Aの形状に沿うように複数のプッシャー6によって成形される。以下では、第1刃11及び第2刃12について、第1刃11及び第2刃12を識別する必要がない場合には刃10として説明する。
【0033】
図4は上金型2に固定された刃10を示しており、図5は下金型3に固定された刃10を示している。上金型2に固定された刃10の位置、及び下金型3に固定された刃10の位置は、押さえ機構5が母材Tを押圧したときに各刃10が母材Tに筋入れを行う位置に設定されている。
【0034】
図4及び図5に示されるように、例えば、上金型2に固定された刃10の刃先10bは、押さえ機構5の側面5dにおいて下方に向けられている。刃10は、側面5dに対向する第1側面10cと、側面5dとは反対側を向く第2側面10dと、第2側面10dの下端から刃先10bに向かって斜めに延びる傾斜面10fとを有する。刃先10bは第1側面10cの下端に位置する。押さえ機構5が母材Tを押圧していない状態において、上金型2に固定された刃10の刃先10bは押さえ機構5の下面5fよりも上方に位置する。
【0035】
下金型3に固定された刃10の刃先10bは、変形部材9の側面9bにおいて上方に向けられている。下金型3に固定された刃10は、上記同様、第1側面10c、第2側面10d及び傾斜面10fを有し、刃先10bは第1側面10cの上端に位置する。押さえ機構5が母材Tを押圧していない状態において、下金型3に固定された刃10の刃先10bは変形部材9の上面9cよりも下方に位置する。
【0036】
次に、本実施形態に係る母材Tの打ち抜き方法について図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る打ち抜き方法の工程の例を示すフローチャートである。まず、下金型3に母材Tを載置する(母材を載置する工程、ステップS1)。例えば、図2及び図3に示されるように、下金型3に設けられた台4の上部の変形部材9の上面9cに母材Tを載置する。
【0037】
次に、母材Tに対する筋入れを行う(筋入れを行う工程、ステップS2)。具体的には、図7及び図8に示されるように、上金型2を下金型3に向かって下ろして押さえ機構5が母材Tを押圧する。母材Tへの押さえ機構5の押圧に伴って振動部材8及び変形部材9が変形し、当該変形によって押さえ機構5及び変形部材9のそれぞれから一対の刃10が上下に突き出す。そして、突き出した一対の刃10の刃先10bが母材Tに食い込む。
【0038】
図9に示されるように、一対の刃10の刃先10bが母材Tに食い込むことによって、母材Tの上面T1及び下面T2のそれぞれに筋Vが形成される。平面視において筋Vは矩形状(一例として正方形状)に形成される。例えば、刃10の刃先10bの食い込み量Yが所定の値になるように押さえ機構5の押圧が調整される。一例として、母材Tの厚さXは300μm以上且つ500μm以下であり、筋入れのときにおける刃10の食い込み量Yは5μm以上且つ20μm以下である。しかしながら、母材Tの厚さX、及び刃10の食い込み量Yの値は、上記に限定されない。
【0039】
上記のように刃10が母材Tに食い込んでいる状態において、母材Tに対する第1方向D1への折り曲げ及び切断を行う(母材を切断する工程、ステップS3)。このとき、図10及び図11に示されるように、平面視における刃10よりも第2方向D2の端部側に位置する複数(例えば4本)の第1プッシャー6Aが母材Tに当接して、筋Vを境目として母材Tを下方に折り曲げる。すなわち、平面視における筋Vよりも第2方向D2の端部側の母材Tの部分が第1プッシャー6Aによって斜め下方に折れ曲がる。そして、第1方向D1に延びる筋Vを境目として母材Tが第1プッシャー6Aによって切断され、母材Tに第1方向D1に延びる切断線が形成される。
【0040】
次に、母材Tに対する第2方向D2への折り曲げ及び切断を行う(母材を切断する工程、ステップS4)。このとき、平面視における刃10よりも第1方向D1の端部側に位置する複数(例えば2本)の第2プッシャー6Bが母材Tに当接して、筋Vを境目として母材Tを下方に折り曲げる。
【0041】
すなわち、図12に示されるように、平面視における筋Vよりも第1方向D1の端部側の母材Tの部分が第2プッシャー6Bによって斜め下方に折れ曲がる。第2方向D2に延びる筋Vを境目として母材Tが第2プッシャー6Bによって切断される。そして、母材Tに第2方向D2に延びる切断線が形成されて母材Tが矩形状に打ち抜かれる。以上の工程を経て打ち抜き方法の一連の工程が完了する。
【0042】
次に、本実施形態に係る成形金型1及び打ち抜き方法から得られる作用効果について説明する。図9及び図11に示されるように、成形金型1では、上金型2及び下金型3のそれぞれに取り付けられた一対の刃10を備える。一対の刃10のそれぞれが上下から母材Tに当接することにより、母材Tの上面T1及び下面T2に筋入れが行われる(筋Vが形成される)。筋入れされた状態では、母材Tは切断されておらず、母材Tの途中部分まで上下一対の刃10が入り込んでいる。
【0043】
成形金型1は、母材Tに当接して母材Tを折り曲げるプッシャー6を備える。プッシャー6は、一対の刃10によって筋入れされている母材Tに当接して母材Tを折り曲げて切断する。従って、一対の刃10によって予め筋入れされている状態の母材Tにプッシャー6が当接して母材Tが切断されることにより、母材Tにきれいな切断面を形成することができる。すなわち、一対の刃10に挟まれた母材Tがプッシャー6の当接によって切断されることにより、良好な切断面を得られる。よって、母材Tが集電体である場合には集電体の短絡の発生を抑制することができる。
【0044】
本実施形態において、成形金型1は、上金型2に設けられており、母材Tの上面T1において上下方向D3に沿って振動する振動部材8を備える。この場合、上下方向D3に沿って振動する振動部材8が母材Tの上面T1に接触することにより、上金型2と下金型3の間に挟まれた母材Tに過大な押圧力がかかることを抑制できる。
【0045】
本実施形態において、成形金型1は、下金型3に設けられており、母材Tの下面T2に接触した状態で変形する変形部材9を備える。よって、変形部材9が母材Tの下面T2に接触することにより、上金型2と下金型3の間に挟まれた母材Tに過大な押圧力がかかることを抑制できる。
【0046】
本実施形態において、図1に示されるように、一対の刃10のそれぞれは、平面視において第1方向D1に延在する2つの第1刃11と、平面視において第1方向D1に交差する第2方向D2に延在する2つの第2刃12とを含んでいる。平面視において、各第2刃12は、2つの第1刃11の間に設けられており、2つの第1刃11は、各第2刃12よりも第1方向D1の端部側に延在している。よって、平面視において第1方向D1に延びる2つの第1刃11が第2刃12よりも第1方向D1の端部側に延在している。2つの第1刃11、及び2つの第2刃12のそれぞれが母材Tに筋入れをしている状態で母材Tを切断することにより、平面視における母材Tの角部をよりきれいに切断することができる。従って、更に良好な切断面を得られる。
【0047】
本実施形態に係る打ち抜き方法では、上金型2及び下金型3のそれぞれに取り付けられた一対の刃10のそれぞれが上下から母材Tに当接することにより、母材Tの上面T1及び下面T2に筋入れが行われる。そして、一対の刃10が筋入れを行っている状態でプッシャー6が母材Tに当接することにより、母材Tが折り曲げられて切断される。従って、予め筋入れされている状態の母材Tにプッシャー6が当接して母材Tを切断することにより、母材Tにきれいな切断面が形成される。よって、前述した成形金型1の場合と同様、一対の刃10に挟まれた母材Tをプッシャー6が切断することにより、良好な切断面を得られる。
【0048】
本実施形態において、プッシャー6は、平面視において2つの第1刃11よりも第2方向D2の端部側に位置する第1プッシャー6Aと、平面視において2つの第2刃12よりも第1方向D1の端部側に位置する第2プッシャー6Bとを含む。母材Tを切断する工程は、2つの第1刃11が筋入れを行っている状態で第1プッシャー6Aが母材Tに当接することにより、第1方向D1に沿って母材Tを切断する工程と、2つの第2刃12が筋入れを行っている状態で第2プッシャー6Bが母材Tに当接することにより、第2方向D2に沿って母材Tを切断する工程と、を含む。よって、第1方向D1に沿って母材Tを切断する工程と、第2方向D2に沿って母材Tを切断する工程とを別々のタイミングで行うことにより、平面視における母材Tの角部をきれいに切断することができる。従って、母材Tの切断面を更に良好にすることができる。
【0049】
以上、本開示に係る成形金型及び打ち抜き方法の実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨を変更しない範囲において種々の変形が可能である。すなわち、成形金型の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様、並びに、打ち抜き方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0050】
例えば、前述の実施形態では、平面視において六角形状を成すように配置された6本のプッシャー6を備える例について説明した。しかしながら、プッシャーの数及び配置態様は上記の例に限られない。また、前述の実施形態では、第1方向D1に延びると共に第2方向D2に沿って並ぶ一対の第1刃11と、第2方向D2に延びると共に第1方向D1に沿って並ぶ一対の第2刃12とを備える例について説明した。しかしながら、刃の数及び配置態様についても上記の要旨の範囲内で適宜変更可能である。
【0051】
前述の実施形態では、上金型2が振動部材8を備え、下金型3が変形部材9を備える例について説明した。しかしながら、振動部材8及び変形部材9の少なくともいずれかを有しない成形金型であってもよい。また、上金型及び下金型が共に振動部材を備える成形金型であってもよい。このように振動部材及び変形部材の数及び配置態様についても適宜変更可能である。
【0052】
前述の実施形態では、母材Tが携帯端末若しくはドローン等の小型機器、又は自動車等の大型機器の全固体電池として用いられ、母材Tの材料がSUS(Steel Use Stainless)、アルミニウム、ニッケル、鉄、銅、チタン、又はカーボンである例について説明した。しかしながら、本開示に係る成形金型及び打ち抜き方法が適用可能な母材の用途、及び母材の材料は、前述した例に限られず、本開示に係る成形金型及び打ち抜き方法は種々の母材に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…成形金型、1b…中心、2…上金型、2b…凸部、3…下金型、3b…凸部、4…台、5…押さえ機構、5d…側面、5f…下面、6…プッシャー、6A…第1プッシャー、6B…第2プッシャー、8…振動部材、8b…当接部、9…変形部材、9b…側面、9c…上面、10…刃、10b…刃先、10c…第1側面、10d…第2側面、10f…傾斜面、11…第1刃、11b…端部、12…第2刃、A…矩形状領域、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…上下方向、T…母材、T1…上面、T2…下面、V…筋、Y…食い込み量。
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