(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039130
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
H05K3/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146136
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 通昌
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英之
(72)【発明者】
【氏名】石川 清大
(72)【発明者】
【氏名】大野 彩美
【テーマコード(参考)】
5E343
【Fターム(参考)】
5E343AA02
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA19
5E343AA36
5E343BB23
5E343BB24
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5E343BB48
5E343CC48
5E343DD33
5E343DD43
5E343EE33
5E343EE34
5E343EE35
5E343EE36
5E343EE37
5E343GG04
(57)【要約】
【課題】層間密着性の良好な配線基板の提供。
【解決手段】実施形態の配線基板1は、絶縁層11及び第1導体層121を備えるベース基板BSと、第1導体層121上に接着層110を介して積層される第1絶縁層111と、第1絶縁層111上に形成される第2導体層122と、を備えている。接着層110と第1絶縁層111との界面、及び、第2導体層122の導体パターンから露出する第1絶縁層111の表面粗さは、第1絶縁層111と第2導体層122との界面の表面粗さよりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層及び第1導体層を備えるベース基板と、
前記第1導体層上に接着層を介して積層される第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に形成される第2導体層と、を備える配線基板であって、
前記接着層と前記第1絶縁層との界面、及び、前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第1絶縁層の表面粗さは、前記第1絶縁層と前記第2導体層との界面の表面粗さよりも大きい。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記接着層と前記第1絶縁層との界面のJISB0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisは1.3μm以上、且つ5μm以下であり、前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第1絶縁層の表面の十点平均粗さRzjisは0.9μm以上、且つ3.2μm以下であり、前記第1絶縁層と前記第2導体層との界面の十点平均粗さRzjisは0.5μm以上、且つ1.3μm以下である。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記ベース基板の前記第1導体層の導体パターンから露出する前記絶縁層と前記接着層との界面の表面粗さは、前記第1絶縁層と前記第2導体層との界面の表面粗さよりも大きい。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、前記ベース基板の前記第1導体層の導体パターンから露出する前記絶縁層と前記接着層との界面のJISB0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisは、0.9μm以上、且つ3.2μm以下である。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記第2導体層上及び前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第1絶縁層上に、第2絶縁層が形成されている。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記接着層は熱硬化性樹脂を含み、前記第1絶縁層は熱可塑性樹脂を含む。
【請求項7】
請求項6記載の配線基板であって、前記第1絶縁層は、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリエステル樹脂(PE)、変性ポリイミド樹脂(MPI)のいずれかを含む。
【請求項8】
請求項6記載の配線基板であって、前記接着層は、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂のいずれかを含む。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1絶縁層は芯材を含み、前記芯材は、PTFE繊維、石英繊維、Dガラス繊維のいずれかを含む。
【請求項10】
請求項1記載の配線基板であって、さらに、前記第1絶縁層及び前記接着層を貫通して前記第2導体層と前記第1導体層とを接続するビア導体を含む。
【請求項11】
請求項1記載の配線基板であって、前記ベース基板は、絶縁層の両面に導体層が形成されたコア基板を有している。
【請求項12】
第1導体層を備えるベース基板を用意することと、
第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する第1絶縁層であって、前記第1面の表面粗さが前記第2面の表面粗さより大きい前記第1絶縁層の、前記第1面及び前記第2面に金属箔を備える金属積層板を用意することと、
前記金属積層板の前記第1面に設けられた前記金属箔を除去して前記第1面を露出させることと、
前記第1導体層と前記第1絶縁層の前記第1面との間に接着層を介在させ、前記ベース基板と前記接着層と前記金属積層板とを一括積層することと、
前記第1絶縁層の前記第2面上に第2導体層を形成することと、を含む、配線基板の製造方法であって、
前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第2面に粗化処理を行うことを含む。
【請求項13】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、前記金属積層板における、前記第1面のJISB0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisは1.3μm以上、且つ5μm以下であり、前記第2面の十点平均粗さRzjisは0.5μm以上、且つ1.3μm以下である。
【請求項14】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、前記粗化処理は、前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第2面がJISB0601-2001に準拠して測定される十点平均粗さRzjisで0.9μm以上、且つ3.2μm以下となるように行うことを含む。
【請求項15】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、前記第2導体層上及び前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第1絶縁層上に、第2絶縁層を形成することをさらに含む。
【請求項16】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、前記第1絶縁層は、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリエステル樹脂(PE)、変性ポリイミド樹脂(MPI)のいずれかを含む。
【請求項17】
請求項12記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記第1絶縁層及び前記接着層を貫通するビアホールを形成し、前記ビアホールに導体を充填してビア導体を形成することを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内層回路基板の内層導体回路が形成される上下面に、銅箔を貼り付けた層間絶縁層を積層し、層間絶縁層の銅箔側に導体回路を形成する、プリント配線板の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のプリント配線板の製造方法では、層間絶縁層と内層回路基板との密着性を良好に確保できない場合があると考えられる。内層回路基板の表面(上下面)と層間絶縁層との剥離などの不良が発生する虞があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、絶縁層及び第1導体層を備えるベース基板と、前記第1導体層上に接着層を介して積層される第1絶縁層と、前記第1絶縁層上に形成される第2導体層と、を備えている。前記接着層と前記第1絶縁層との界面、及び、前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第1絶縁層の表面粗さは、前記第1絶縁層と前記第2導体層との界面の表面粗さよりも大きい。
【0006】
本発明の配線基板の製造方法は、第1導体層を備えるベース基板を用意することと、第1面及び前記第1面と反対側の第2面を有する第1絶縁層であって、前記第1面の表面粗さが前記第2面の表面粗さより大きい前記第1絶縁層の、前記第1面及び前記第2面に金属箔を備える金属積層板を用意することと、前記金属積層板の前記第1面に設けられた前記金属箔を除去して前記第1面を露出させることと、前記第1導体層と前記第1絶縁層の前記第1面との間に接着層を介在させ、前記ベース基板と前記接着層と前記金属積層板とを一括積層することと、前記第1絶縁層の前記第2面上に第2導体層を形成することと、を含んでいる。前記第2導体層の導体パターンから露出する前記第2面に粗化処理を行うことを含む。
【0007】
本発明の実施形態によれば、絶縁層と導体層と、並びに絶縁層同士の密着性が良好な配線基板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図2】
図1に示される一実施形態の配線基板の断面図における部分拡大図。
【
図3】本発明の一実施形態の配線基板の他の例を示す断面図における部分拡大図。
【
図4A】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4B】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4C】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4D】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4E】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す部分拡大図。
【
図4F】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4G】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【
図4H】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す部分拡大図。
【
図4I】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す部分拡大図。
【
図4J】本発明の一実施形態の配線基板の製造方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。実施形態の配線基板は、絶縁層の表面に導体層が設けられたベース基板、及び、ベース基板の導体層上に積層される絶縁層及び導体層によって構成される。実施形態の配線基板の一例として
図1に示される配線基板1は、コア基板100及び、コア基板100の両面のそれぞれに交互に積層される絶縁層11及び導体層12によって構成されるベース基板BSを備えている。コア基板100は、絶縁層101及び絶縁層101の両面に形成される導体層102によって構成されている。図示の例では、コア基板100の厚さ方向における一方の面F1上には、2層の絶縁層11及び2層の導体層12、121が交互に積層され、一方の面F1と反対側の他方の面F2上には、2層の絶縁層11及び2層の導体層12が交互に積層されている。
【0010】
なお、配線基板1の説明では、コア基板100の厚さ方向における中心から遠い側は「上側」、「外側」、又は単に「上」、「外」とも称され、コア基板100の厚さ方向における中心に近い側は「下側」、「内側」、又は単に「下」、「内」とも称される。従って、配線基板1を構成する各要素の説明においては、コア基板100を向く面は「下面」とも称され、コア基板100と反対側を向く面は「上面」とも称される。
【0011】
ベース基板BSにおける、コア基板100の一方の面F1側の最も外側の表面は、導体層121及び導体層121の導体パターンから露出する絶縁層11の上面で構成されている。ベース基板BSの表面を構成する導体層121の上面、及び、導体層121のパターンから露出する絶縁層11の上面は、絶縁層110によって被覆されている。絶縁層110の上側には絶縁層111が形成され、絶縁層111の上側には導体層122が形成されている。導体層122上には、例えばソルダーレジスト層である絶縁層112が形成され得る。すなわち、配線基板1における、ベース基板BSの一方の外側は、絶縁層110、絶縁層111、導体層122、及び、絶縁層112によって構成され得る。詳しくは
図2を参照して後述されるように、配線基板1における、ベース基板BSの上面に、絶縁層110を介して絶縁層111が積層される構造により、ベース基板BSと絶縁層111との密着性が向上し得る。
【0012】
図示される例では、ベース基板BSの、コア基板100の他方の面F2側における最も外側の表面の上側には絶縁層11が積層され、その外側には配線基板1の表面を構成する導体層12及び絶縁層112が形成されている。
【0013】
図示される例では、ベース基板BSの厚さ方向における最外の2つの表面の一方には、2層の絶縁層110、111を介して導体層122が形成されており、他方では、絶縁層11のみを介して導体層12が形成されている。しかしながら、実施形態の配線基板はこの構成に限定されず、ベース基板BSの最外の2つの表面それぞれの上側に、2層の絶縁層を介して最外の導体層が形成される、ベース基板BSを中心として対称な層構造を有してもよい。
【0014】
配線基板1における、絶縁層112及び導体層122それぞれの露出面によって構成される最外の表面は、A面Faと称される。配線基板1における、A面Faと反対側の、絶縁層112及び絶縁層112から露出する導体層12それぞれの露出面によって構成される最外の表面は、B面Fbと称される。すなわち、配線基板1は、配線基板1の厚さ方向と直交する方向に広がる2つの表面としてA面Fa、及びA面Faの反対面であるB面Fbを有している。
【0015】
配線基板1が有する各導体層102、12、121、122は、任意の導体パターンを有するようにパターニングされている。図示の例では、A面Faを構成する最外の導体層122は、配線基板1の使用時において配線基板1に実装され得る部品が有する接続用の端子と電気的及び機械的に接続し得るパターンに形成されている導体パッド122pを有している。すなわち、A面Faを構成する導体パッド122pは外部の部品が配線基板1に搭載される際の接続部として使用され、配線基板1のA面Faは複数の部品が搭載され得る部品実装面であり得る。導体パッド122pには、例えば、はんだなどの接合材(図示せず)を介して外部の部品の電極が電気的及び機械的に接続され得る。外部の部品として、例えばベアチップ半導体などの電子部品が部品実装面に実装され得る。
【0016】
図1に示される例の配線基板1における、A面Faに対して反対側の面であるB面Fbは、例えば任意の電気機器のマザーボードなどの外部要素に配線基板1が実装される場合に、外部要素に接続される接続面であり得る。また、B面Fbは、A面Faと同様に、半導体集積回路装置のような電子部品が実装される部品実装面であってもよい。B面Fbを構成する導体パッド12pは、これらに限定されない任意の基板、電気部品、又は機構部品などと接続され得る。
【0017】
コア基板100の絶縁層101には、コア基板100における一方の面F1を構成する導体層102と他方の面F2を構成する導体層102とを接続するスルーホール導体103が形成されている。絶縁層11、110、111には、絶縁層11、110、111を挟む導体層同士を接続するビア導体13が形成されている。特に、ベース基板BSの最外の表面を構成する導体層121と、絶縁層111上に形成される導体層122とは、絶縁層110及び絶縁層111を連続して貫通するビア導体13によって接続されている。
【0018】
図示の例では、スルーホール導体103は、一方の面F1及び他方の面F2の両側からコア基板100の厚さにおける中央部分に向かって縮径するテーパー形状を有し、各ビア導体13は、配線基板の外側から内側に向かって縮径するテーパー形状を有している。スルーホール導体103は長さ方向(コア基板100の厚さ方向)において径の大きさが略同一に形成されてもよく、あるいは、片方の面から他方の面に向って(例えば、一方の面F1から他方の面F2に向って)縮径するテーパー形状を有してもよい。
【0019】
絶縁層101、11、110、111、112は、それぞれ、絶縁性樹脂を用いて形成され得る。例えば、絶縁層101、11は、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成され得る。例えば、ソルダーレジスト層であり得る絶縁層112は、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成され得る。
【0020】
特に、ベース基板BSの導体層121上に積層され、ベース基板BSと絶縁層111との接着層として機能し得る絶縁層110は、熱硬化性樹脂を含み得る。また、絶縁層110を介してベース基板BSの上側に積層される絶縁層111は、熱可塑性樹脂を含み得る。
【0021】
具体的には、絶縁層110は、熱硬化性樹脂のなかでも比較的、誘電率及び誘電正接の低い熱硬化性ポリイミド樹脂を含み得る。絶縁層110は、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂を含んでもよい。また、絶縁層111は、熱可塑性樹脂のなかでも比較的、誘電率及び誘電正接の低い、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリエステル樹脂(PE)、変性ポリイミド樹脂(MPI)のうちのいずれかを含み得る。なお、絶縁層111は熱可塑性樹脂のみで構成される必要はなく、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の複合材料が用いられてもよい。例えば、ポリフェニレンオキサイド樹脂又はポリブタジエン系樹脂等の熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂又はシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂を使用して相互侵入高分子網目構造樹脂(IPN)とした複合材料も使用され得る。
【0022】
配線基板1を構成する絶縁層110、111が比較的低誘電率の絶縁性樹脂によって構成されることで、配線基板1における高周波信号の伝送が良好に実施され得る。絶縁層110、111に誘電率及び誘電正接が比較的低い絶縁性樹脂が用いられることにより、絶縁層110、111に接する導体層121、122において搬送され得る高周波信号の誘電損失が比較的小さく抑えられ得る。また、さらには、詳しくは
図2を参照して後述するように、絶縁層111の上下面における絶縁層110、112との密着性が良好に確保されていることで、配線基板1における剥離の発生は効果的に抑制され、配線基板1における高周波信号の伝送における信頼性が向上されている。
【0023】
各絶縁層101、11、110、111は、シリカ、アルミナなどの無機フィラーを含んでいてもよい。また、絶縁層101、11、111は補強材(芯材)を含み得る。絶縁層101、11、111に含まれ得る芯材としてはガラス繊維が例示される。特に、上述したように、配線基板1における高周波信号の伝送の誘電損失を抑制する観点から、絶縁層111が含み得る芯材は、比較的低誘電率であるものが好ましく、具体的には、芯材は、PTFE繊維、石英繊維、Dガラス繊維のいずれかを含むことが好ましい。また、ポリパラフェニレンフタルアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサドール繊維(PBO)等のアラミド繊維も含まれ得る。同様に、配線基板1の高周波特性を向上させる観点から、絶縁層101、11、110、111が含み得るフィラーとしては比較的小さい値の誘電率及び誘電正接を有するフィラーが採用されることが好ましい。例えば、酸化ケイ素、又は窒化ホウ素などを含むフィラーが好ましく使用され得る。
【0024】
配線基板1を構成する各導体層102、12、121、122、ビア導体13、及びスルーホール導体103は適切な導電性を有する任意の材料(例えば銅、又はニッケル等)で形成される。配線基板1を構成する各導体層102、12、121、122、ビア導体13、スルーホール導体103は
図1では単層構造で示されているが、2つ以上の金属層を有する多層構造を有し得る。各導体層102、12、121、122は、例えば、金属箔層(好ましくは銅箔)、めっき若しくはスパッタリングなどで形成される金属膜層(好ましくは無電解銅めっき膜)、電解めっき膜層(好ましくは電解銅めっき膜)によって、又はこれらの組み合わせによって構成され得る。
【0025】
続いて、本実施形態の配線基板における、ベース基板BS上に形成される層構成について、
図2を参照して詳述される。
図2は、
図1における、ベース基板BSの最外の導体層121、導体層121上に形成される絶縁層110、絶縁層111、導体層122、及び絶縁層112を含む、一点鎖線で囲われる領域IIの拡大図である。なお、以下の説明において、導体層121は第1導体層121とも称され、絶縁層110は接着層110とも称され、絶縁層111は第1絶縁層111とも称され、導体層122は第2導体層122とも称され、絶縁層112は第2絶縁層112とも称される。
【0026】
図2に示されるように、ベース基板BSの最外層を構成する第1導体層121の上側には、接着層110を介して第1絶縁層111が積層され、第1絶縁層111上には、第2導体層122が形成されている。なお、図示のように、第1導体層121及びビア導体13は、金属膜層12b及び電解めっき膜層12cの2層構造を有しており、第2導体層122は金属箔層12a、金属膜層12b、及び電解めっき膜層12cの3層構造を有している。接着層110は、上述したように、例えば熱硬化性樹脂を用いて形成され、特に、第1導体層121と密着性良く積層される。接着層110は、第1導体層121と良好に密着すると共に第1絶縁層111とも良好に密着し、第1導体層121と第1絶縁層111との間に介在することで、第1導体層121上への絶縁層111の密着性の良好な積層を実現させている。
【0027】
接着層110と第1絶縁層111との界面は密着性向上のために粗面とされている。接着層110と第1絶縁層111との界面の粗さは、例えば、日本工業規格(JIS B0601(2001))に準拠して測定される十点平均粗さRzjisで0.5μm以上、且つ1.3μm以下、とされ得る、金属箔層12aと第1絶縁層111との界面の表面粗さよりも大きい。具体的には、接着層110と第1絶縁層111との界面の表面粗さは、十点平均粗さRzjisで1.3μm以上、且つ5μm以下、とされ得る。なお「界面の表面粗さ」とは、界面を構成する2つの構成要素それぞれの表面の粗さを意味している。接着層110と第1絶縁層111との界面が比較的粗く形成されていることによって、接着層110と第1絶縁層110との密着強度が高まり、接着層110と第1絶縁層111との界面における剥離などの不良の発生が抑制され得る。
【0028】
さらに、第2導体層122の導体パターンから露出する第1絶縁層111の表面の粗さも、第1絶縁層111と第2導体層122(金属箔層12a)との界面の表面粗さよりも大きいものとされる。具体的には、第2導体層122の導体パターンから露出する第1絶縁層111の表面の粗さは、日本工業規格(JIS B0601(2001))に準拠して測定される十点平均粗さRzjisで0.9μm以上、且つ3.2μm以下とされ得る。換言すれば、第2導体層122上、及び第2導体層の導体パターンから露出する第1絶縁層111上に第2絶縁層112が形成される場合には、第1絶縁層111と第2絶縁層112との界面の表面粗さは、十点平均粗さRzjisで0.9μm以上、且つ3.2μm以下とされ得る。これにより、第1絶縁層111と第2絶縁層112とは比較的良好な密着性を有し得る。
【0029】
例えば、第1導体層121、及び/又は、第2導体層122において高周波信号が伝送される場合、第1導体層121と第2導体層122との間に介在する層間絶縁層を、例えば熱可塑性樹脂である第1絶縁層111のみで構成すると、剥離などの不良が発生しやすい場合がある。具体的には、第1絶縁層111と第1導体層121との間における十分な密着強度が得られず、第1絶縁層111と第1導体層121との剥離が生じ得る。このような問題に対して、本実施形態では、第1導体層121と第1絶縁層111との間に、第1導体層121との密着性が比較的良好な、例えば熱硬化性樹脂を含む接着層110を介在させている。加えて、接着層110と第1絶縁層111との界面は比較的大きい粗さに形成されており、接着層110と第1絶縁層111とは良好な強度で密着し得る。さらには、第1絶縁層111の上面(第2絶縁層112との界面)も比較的大きい粗さに形成されており第1絶縁層111と第2絶縁層112とは良好な強度で密着し得る。このような構成により、実施形態の配線基板における剥離の発生が抑制され得る。
【0030】
さらには、第1導体層121の導体パターンから露出する絶縁層11の上面(絶縁層11と接着層110との界面)も粗面とされ得る。具体的には、第1絶縁層111と第2絶縁層112との界面と同様に、第1絶縁層111と第2導体層122との界面の粗さよりも大きい粗さとされ、十点平均粗さRzjisで0.9μm以上、且つ3.2μm以下とされ得る。接着層110と絶縁層11との密着強度が向上し得る。
【0031】
図1及び
図2を参照して上述された、配線基板1において第1導体層121上に形成される、接着層110、第1絶縁層111、及び第2導体層122を含む構成は、第2導体層122の上側にさらに繰り返して形成される場合がある。具体的には、
図3に示されるように、接着層110、第1絶縁層111、及び第2導体層122を含む構成と同様の、接着層110a、第3絶縁層111a、及び第3導体層122aからなる構成が、第2導体層122の上側にさらに積層され得る。
図3に示される例では、第3導体層122a上、及び、第3導体層122aの導体パターンから露出する第3絶縁層111a上には第2絶縁層112が形成されている。第3導体層122aの上側には、接着層110、第1絶縁層111、及び第2導体層122を含む層構造と同様の構成が、さらに任意の数積層されてもよい。
【0032】
次に、
図4A~
図4Jを参照して、
図1に示される配線基板1が製造される場合を例に、実施形態の配線基板の製造方法が説明される。先ず、ベース基板BSが用意される。ベース基板BSの用意では、先ず、
図4Aに示されるように、コア基板100が形成される。コア基板100の形成では、例えば、コア絶縁層101を含む両面銅張積層板が用意される。そしてサブトラクティブ法などによって所定の導体パターンを含む導体層102を絶縁層101の両面に形成すると共に、スルーホール導体103を絶縁層101内に形成することによってコア基板100が用意される。
【0033】
次いで、
図4Bに示されるように、コア基板100の一方の面F1上に絶縁層11が形成され、その絶縁層11上に導体層12が積層される。コア基板100の他方の面F2上にも絶縁層11が形成され、その絶縁層11上に導体層12が積層される。例えば絶縁層11は、フィルム状の絶縁性樹脂を、コア基板100上に熱圧着することによって形成される。導体層12は、絶縁層11に例えばレーザー光によって形成され得る開口13aを充填するビア導体13と同時に、セミアディティブ法などの任意の導体パターンの形成方法を用いて形成される。開口13aは、絶縁層11への炭酸ガスレーザー又はYAGレーザーなどの照射によって形成され得る。
【0034】
続いて、
図4Cに示されるように、導体層12の外側には、上述された絶縁層11及び導体層12の形成と同様の方法で、さらに絶縁層及び導体層の形成が繰り返される。コア基板100の一方の面F1側及び他方の面F2側において、導体層12の上に絶縁層11が積層され、さらに絶縁層11の上に導体層121、12が形成される。ベース基板BSの形成が完了する。
【0035】
各導体層12、121の導体パターンから露出する絶縁層11の上面には、その上側に積層される絶縁層との密着性を向上させるための処理が施され得る。具体的には、CF4又はCF4+O2を用いるプラズマ処理、コロナ放電処理、UV照射処理、アルカリ液処理、サンドブラスト処理などで、導体層12のパターンから露出する絶縁層11の上面に粗化処理が施され得る。例えば、ベース基板BSの最外の導体層12のパターンから露出する絶縁層11の上面は、例えば、日本工業規格(JIS B0601(2001))に準拠して測定される十点平均粗さRzjisで0.9μm以上、且つ3.2μm以下とされ得る。なお、絶縁層11上面への粗化処理は、絶縁層11上への導体層12、121の形成前に施される場合もあり、この場合、絶縁層11の上面の全域が粗面とされ得る。
【0036】
次いで、
図4Dに示されるように、接着層(接着シート)110及び金属積層板111pが用意される。接着層110は、例えば熱硬化性樹脂を含んでおり、熱硬化性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、又はビスマレイミドトリアジン樹脂を含む材料で構成されている。金属積層板111pは、第1面FF及び第1面FFと反対側の第2面FSを有する第1絶縁層111と、第1面FF及び第2面FS上に設けられた金属箔(例えば銅箔)12aを有している。
【0037】
第1絶縁層111は、
図4Dにおける領域Eの拡大図である
図4Eに示されるように、第1面FFと第2面FSとで異なる表面粗さを有している。用意される金属積層板111pは、例えば、未硬化状態の第1絶縁層111の第1面FFと第2面FSとに、粗度の異なる粗面を有する金属箔12aが、粗面を第1絶縁層111側に向けて付着されることで形成されている。第1面FFの表面粗さは、後述される工程における接着層110との密着の観点から望ましい程度の粗さであり、第2面FSの表面粗さは、金属箔12aとの密着の観点から望ましい程度の粗さであり得る。第1面FFの表面粗さは、第2面FSの表面粗さよりも大きい。具体的には、例えば、第1面FFの表面粗さは、十点平均粗さRzjisで1.3μm以上、且つ5μm以下とされ、第2面FSの表面は、十点平均粗さRzjisで0.5μm以上、且つ1.3μm以下とされ得る。
【0038】
次いで、
図4Fに示されるように、金属積層板111pの第1面FFに付着する金属箔12aが、エッチングにより除去される。第1絶縁層111の第1面FFが露出する。金属積層板111pは、金属積層板111pとベース基板BSとの間に半硬化状態の接着層110が介在した状態で、露出する第1面FFをベース基板BS側に向けて配置される。続いて、ベース基板BS、接着層110、及び金属積層板111pは、例えば、加圧プレスによって一括積層される。
【0039】
ベース基板BS、接着層110、及び金属積層板111pの一括積層により、接着層110はベース基板BSの第1導体層121に対して密着性良く積層される。また、接着層110上に積層される第1絶縁層111は、その比較的表面粗さの大きい第1面FFのアンカー効果によって、接着層110に対して比較的強い密着強度で積層される。なお、ベース基板BSの形成後、コア基板100の一方の面F1側において接着層110及び第1絶縁層111が積層される工程中、ベース基板BSの他方の面F2側における最外の表面は、例えばPETなどの適切な保護板により適切に保護され得る。
【0040】
図4Gに示されるように、コア基板100の他方の面F2側において絶縁層11が積層される。他方の面F2側における絶縁層11の積層は、上述の、ベース基板BS、接着層110、及び金属積層板111pの一括積層において実施されてもよい。続いて、コア基板100の一方の面F1側では、接着層110及び第1絶縁層111を貫通する開口13aが形成され、例えば、サブトラクティブ法により、第2導体層122がビア導体13と同時に形成される。第2導体層122は、金属箔を用いるセミアディティブ法(MSAP)を用いて形成されてもよい。コア基板100の他方の面F2側においても、一方の面F1側に応じた方法によって導体層12が形成される。
【0041】
次いで、
図4Hに示すように、第2導体層122の導体パターンから露出する第1絶縁層111の上面に粗化処理が施される。具体的には、例えば、コロナ放電、プラズマ処理などにより第1絶縁層111の粗化処理が施される。例えば、過マンガン酸塩等の酸化剤を含む薬液を使用する湿式処理によっても、第1樹脂絶縁層111の上面が粗化され得る。この処理により、第2導体層122の導体パターンから露出する第1絶縁層111の上面は、例えば、十点平均粗さRzjisで0.9μm以上、且つ3.2μm以下とされ得る。
【0042】
次いで、
図4Iに示すように、例えばソルダーレジスト層である第2絶縁層112が第2導体層122及び第2導体層122の導体パターンから露出する第1絶縁層111の上に形成される。第2絶縁層112は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを含む樹脂層の形成と、適切な開口パターンを有するマスクを用いた露光及び現像とによって、接続パッド122pを露出する開口112aを有するように形成される。
【0043】
図4Jに示されるように、コア基板100の他方の面F2側においても、必要に応じて、導体層12のパターンから露出する絶縁層11の上面に粗化処理が施され、その上に絶縁層112が形成される。開口112aから露出する接続パッド122p、12pには、無電解めっき、半田レベラ、又はスプレーコーティングなどによって、Au、Ni/Au、Ni/Pd/Au、はんだ、又は耐熱性プリフラックスなどからなる表面保護膜(図示せず)が形成されてもよい。以上により、配線基板1の形成が完了する。
【0044】
なお、
図3に示される、接着層110、第1絶縁層111、及び第2導体層122を含む層構造が繰り返して積層される配線基板を製造する場合には、
図4Hに示される工程の後に、さらに、
図4D~4Hに示される工程が繰り返され得る。この、
図4D~4Hに示される工程の繰り返しは任意の回数行われてもよく、接着層110、第1絶縁層111、及び第2導体層122を含む層構造は、任意の数、反復して積層される配線基板が製造され得る。
【0045】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示された構造、形状を備えるものに限定されない。例えば、ベース基板BSはコア基板100を有する態様に限定されない。実施形態の配線基板においては、ベース基板BSは少なくとも絶縁層11及び絶縁層11上に形成される第1導体層121を有していればよい。また、例えば、ベース基板BSは、コア基板100のみで構成されてもよく、この場合、接着層110及び第1絶縁層111は導体層102上に積層され得る。また、第2導体層122及び第2絶縁層112の上側にはさらに、任意の数の導体層及び絶縁層が積層されてもよい。
【0046】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。実施形態の配線基板の製造方法においては、先に説明された製造方法の条件や順序などは適宜変更され得る。現に製造される配線基板の構造に応じて、一部の工程が省略されてもよく、別の工程が追加されてよい。本実施形態の製造方法では、ベース基板BSの用意におけるコア基板100の形成は省略され得る。また、ベース基板BS、接着層110、第1絶縁層111、及び第2導体層122の積層後、第2導体層122の上側に、さらに絶縁層11及び導体層12の積層が、任意の回数繰り返されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 配線基板
100 コア基板
11 絶縁層
110 絶縁層(接着層)
110a 接着層
111 絶縁層(第1絶縁層)
111a 第3絶縁層
BS ベース基板
FF 第1面
FS 第2面
12 導体層
121 導体層(第1導体層)
122 導体層(第2導体層)
122a 第3導体層
112 絶縁層(第2絶縁層)
13 ビア導体
103 スルーホール導体
12a 金属箔(金属箔層)
12b 金属膜層
12c 電解めっき膜層