(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039145
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】軸流ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20230313BHJP
F04D 29/52 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
F04D29/58 M
F04D29/58 P
F04D29/52 B
F04D29/52 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146167
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 嘉久
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC30
3H130BA32A
3H130BA33G
3H130BA33H
3H130CA06
3H130DA02Z
3H130DD02X
3H130DF00X
3H130EB01A
3H130EB02A
3H130EB04A
(57)【要約】
【課題】ファンの性能を低下させることなく、高負荷時においても内部部品の温度上昇を抑制することが可能な軸流ファンを提供する。
【解決手段】軸流ファンは、送風方向Wに風を送るファンであり、送風方向Wに沿って延びる回転軸線Xの周りに回転する動翼4と、動翼4の送風方向Wにおける下流側で、回転軸線X上に位置する円筒状のベース部6と、動翼4およびベース部6が収容される外枠部2と、を備える。ベース部6は、送風方向Wにおける下流側の端部に、送風方向Wの下流側に向かって径を小さくする傾斜部62を有する。傾斜部62には、周方向に所定の間隔を空けて設けられる開口部71と、径方向における開口部71の外側の周部を囲うように、送風方向Wの下流側に向かい回転軸線Xに沿って傾斜部62から突き出るように伸びる空洞リブ72と、が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風方向に風を送る軸流ファンであって、
前記送風方向に沿って延びる回転軸線の周りに回転する動翼と、
前記動翼の前記送風方向における下流側で、前記回転軸線上に位置する円筒状のベース部と、
前記動翼および前記ベース部が収容される外枠部と、
を備え、
前記ベース部は、
前記送風方向における下流側の端部に、前記送風方向の下流側に向かって径を小さくする傾斜部を有し、
前記傾斜部には、
周方向に所定の間隔を空けて設けられる開口部と、
径方向における前記開口部の外側の周部を囲うように、前記送風方向の下流側に向かい前記回転軸線に沿って前記傾斜部から突き出るように伸びる空洞リブと、が設けられている、
軸流ファン。
【請求項2】
前記開口部および前記空洞リブは、前記ベース部の前記送風方向における下流側の端面から前記送風方向の上流側へ離隔した位置に設けられている、
請求項1に記載の軸流ファン。
【請求項3】
前記外枠部の内周面と前記ベース部の外周面との間かつ前記動翼に対して前記送風方向の下流側に設けられる固定ブレードを、さらに有し、
前記開口部および前記空洞リブは、前記固定ブレードよりも前記送風方向における下流側に設けられるとともに、前記回転軸線の方向から見たときに、前記周方向における前記固定ブレードが設けられている周方向範囲内に含まれるように設けられている、
請求項1または2に記載の軸流ファン。
【請求項4】
前記空洞リブは、前記開口部の外側の周部を囲う円弧状に形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の軸流ファン。
【請求項5】
前記開口部は、当該開口部内に前記ベース部の外周壁から前記径方向における内側に向かって伸びる突起部が設けられたラビリンス構造を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の軸流ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、固定子フレーム内に配置された回路基板の電子部品の温度上昇を抑制するように構成されたファンが知られている。特許文献1のファンによれば、固定子フレームの底部の径方向における内側に第1の軸方向貫通孔を形成し、径方向における外側に第2の軸方向貫通孔を形成して、第1の軸方向貫通孔から固定子フレームの内部に流入した空気が回路基板の表面を沿うように流れて第2の軸方向貫通孔から外部に流出することで電子部品を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されるファンの場合、第1の軸方向貫通孔と第2の軸方向貫通孔を介して固定子フレーム内の空気を循環させることで電子部品を冷却することは可能であるが、第1の軸方向貫通孔と第2の軸方向貫通孔を固定子フレームの底部に形成することによりファンの静圧性能が低下することについて考慮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、ファンの性能を低下させることなく、高負荷時においても内部部品の温度上昇を抑制することが可能な軸流ファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る軸流ファンは、
送風方向に風を送る軸流ファンであって、
前記送風方向に沿って延びる回転軸線の周りに回転する動翼と、
前記動翼の前記送風方向における下流側で、前記回転軸線上に位置する円筒状のベース部と、
前記動翼および前記ベース部が収容される外枠部と、
を備え、
前記ベース部は、
前記送風方向における下流側の端部に、前記送風方向の下流側に向かって径を小さくする傾斜部を有し、
前記傾斜部には、
周方向に所定の間隔を空けて設けられる開口部と、
径方向における前記開口部の外側の周部を囲うように、前記送風方向の下流側に向かい前記回転軸線に沿って前記傾斜部から突き出るように伸びる空洞リブと、が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ファンの性能を低下させることなく、高負荷時においても内部部品の温度上昇を抑制することが可能な軸流ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る軸流ファンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る軸流ファン1の斜視図である。
図2は、
図1に示す軸流ファン1の送風方向Wに沿った断面図である。
図1および
図2に示すように、軸流ファン1は、外枠部2と、外枠部2内に収容される動翼4およびベース部6と、を備えている。動翼4とベース部6は、外枠部2内において、動翼4が送風方向Wの上流側に配置され、ベース部6が下流側に配置されている。
【0011】
外枠部2は、風(空気)の吸込口21と送出口22とに連通する円柱状の風洞空間23を形成する。動翼4およびベース部6は、風洞空間23内に収容されている。動翼4の回転に伴って吸込口21から吸い込まれた風は、風洞空間23に沿って送風方向Wに送られ、送出口22から外部に送出される。
【0012】
動翼4は、動翼ケース41の外周面に取り付けられている。動翼ケース41は、カップ状に形成されている。動翼4は、動翼ケース41の外周方向へ等間隔に複数枚(図示の例では5枚)取り付けられている。動翼ケース41は、その開口部を送風方向Wの下流側へ向けて配置されている。送風方向Wの上流側に位置する動翼ケース41の底壁42には、外部の空気が動翼ケース41内に流れ込み可能な開口43が設けられている。
【0013】
動翼ケース41内にはモータ51が収容されている。モータ51は、回転軸52と、永久磁石を有する回転子53と、巻線が巻かれたステータ54により構成されている。動翼ケース41は、モータ51の回転軸52に固定されている。動翼ケース41の内周面には、回転子53の永久磁石が固定されている。動翼ケース41に取り付けられている動翼4は、回転軸52の回転に伴って回転軸線Xの周りに回転する。
【0014】
ベース部6は、円筒状に形成されており、その開口部を送風方向Wの上流側へ向けて配置されている。また、ベース部6は、外枠部2の風洞空間23の径方向における中央部に回転軸線Xに沿うように配置されている。ベース部6は、その開口部を動翼ケース41の開口部に対向させて、動翼ケース41の開口部を塞ぐように設けられている。
【0015】
ベース部6は、円筒部61と、円筒部61に連続する傾斜部62と、を有している。円筒部61は、送風方向Wの上流側に設けられ、径の大きさが一定の円筒状に形成されている。傾斜部62は、送風方向Wの下流側に設けられ、送風方向Wの下流側に向かって、すなわち外枠部2の送出口22に向かって径の大きさが小さくなるテーパ加工が施されている。
【0016】
ベース部6内には、上述したモータ51の送風方向Wにおける下流側の一部が収容されている。モータ51のステータ54は、ベース部6に固定されている。ベース部6内にはさらに、軸流ファン1の動作を制御するための電子部品等が搭載された回路基板55が収容されている。回路基板55は、モータ51のステータ54に固定されている。回路基板55は、電子部品等が搭載されている基板面を送風方向Wの下流側と上流側に向けた状態で固定されている。
【0017】
ベース部6は、固定ブレード63を介して外枠部2に固定されている。固定ブレード63は、ベース部6を外枠部2に連結するための静翼である。図示の例では、固定ブレード63は、7枚設けられている。7枚の固定ブレード63は、周方向に等間隔で設けられている。固定ブレード63は、ベース部6を外枠部2に連結することにより、風洞空間23の径方向における中央部にベース部6を固定する。
【0018】
固定ブレード63は、外枠部2の内周面とベース部6の外周面との間に設けられている。固定ブレード63の径方向における外側端部は、外枠部2の内周面に接続されている。固定ブレード63の径方向における内側端部は、ベース部6の円筒部61の外周面に接続されている。固定ブレード63は、風洞空間23内において、動翼4よりも送風方向Wにおける下流側に設けられている。
【0019】
ベース部6の傾斜部62には、複数の開口部71が設けられている。開口部71は、傾斜部62の周方向に所定の間隔を空けて設けられている。図示の例では、6個の開口部71が周方向において固定ブレード63に対応するように設けられている。
【0020】
開口部71の周部には、傾斜部62から突き出るように伸びる空洞リブ72が設けられている。空洞リブ72は、開口部71の周部における、径方向の外側、すなわち風洞空間23に近い側を囲うように設けられている。空洞リブ72は、傾斜部62から突き出し、送風方向Wの下流側に向かって回転軸線Xに沿うように設けられている。
【0021】
空洞リブ72は、開口部71の周部の外側を囲う周壁として、例えば、円弧状に形成されている。空洞リブ72は、風洞空間23内を送風方向Wへ流れる風から開口部71を隔てる周壁として形成されている。空洞リブ72は、風洞空間23内を送風方向Wへ流れる風が開口部71に向かって径方向の内側へ流れるのを防止する周壁として機能する。傾斜部62に空洞リブ72を設けることにより、風洞空間23内を送風方向Wへ流れる風の流れに影響を与えることなく、開口部71を介して外部からベース部6内に空気を流入させることが可能となる。なお、ベース部6内に流入した空気は、対向して配置されているベース部6と動翼ケース41との隙間56から風洞空間23へと吸い出される。
【0022】
開口部71および空洞リブ72は、ベース部6の送風方向Wにおける下流側の端面64から送風方向Wの上流側へ離隔した位置に設けられている。すなわち、ベース部6の開口部71および空洞リブ72は、ベース部6の端面64から送風方向Wの上流側へ引っ込んだ位置に設けられている。
【0023】
開口部71の内部には、ベース部6の外周壁から径方向における内側へ向かって伸びる突起部73が設けられている。ベース部6の外周壁とは、ベース部6における円筒部61の外周壁であってもよいし、ベース部6における傾斜部62の外周壁であってもよい。図示の例では、傾斜部62の外周壁から伸びる突起部73が設けられている。開口部71は、内部に突起部73が設けられることにより、ラビリンス構造を構成する開口として形成されている。これにより、開口部71を介して外部からベース部6内に粉塵が流入するのを抑制しつつ、空気の流入を可能としている。
【0024】
図3は、軸流ファン1の正面図である。
図3を参照して、開口部71および空洞リブ72と固定ブレード63との位置関係について説明する。
【0025】
図3に示すように、固定ブレード63は、ベース部6の外周部に放射状に設けられた薄板状の部材である。図示の例では、固定ブレード63は、外枠部2とベース部6との間においてそれぞれの固定ブレード方向Bが径方向Rに対して所定の角度θだけ傾斜して取り付けられている。
【0026】
開口部71および空洞リブ72は、回転軸線Xの方向、例えば、軸流ファン1の正面側から見たときに、傾斜している固定ブレード63がベース部6の周方向において存在している周方向範囲C内に含まれるように設けられている。すなわち、開口部71および空洞リブ72は、送風方向Wにおいて固定ブレード63と重なるように固定ブレード63の下流側に配置され、風洞空間23内を送風方向Wへ流れる風から、固定ブレード63によって遮蔽されるように設けられている。なお、傾斜する固定ブレード63の角度θは、軸流ファンによって相違してよい。
【0027】
以上説明したように、本実施形態の軸流ファン1は、送風方向Wに沿って延びる回転軸線Xの周りに回転する動翼4と、動翼4の送風方向Wにおける下流側で、回転軸線X上に位置する円筒状のベース部6と、動翼4およびベース部6が収容される外枠部2と、を備えている。そして、ベース部6は、送風方向Wにおける下流側の端部に、送風方向Wの下流側に向かって径を小さくする傾斜部62を有している。傾斜部62には、周方向に所定の間隔を空けて設けられる開口部71と、径方向における開口部71の外側の周部を囲うように、送風方向Wの下流側に向かい回転軸線Xに沿って傾斜部62から突き出るように伸びる空洞リブ72と、が設けられている。このように、ベース部6の傾斜部62に開口部71と当該開口部71の周囲を囲う空洞リブ72とを設けることにより、風洞空間23内を送風方向Wへ流れる風から開口部71を遮蔽することができる。このため、ベース部6に開口部71を設けることによって生じ得る軸流ファン1の風量・静圧性能の低下を抑制することができる。また、風洞空間23内を流れる風に影響を与えない状態で、開口部71を介して外部からベース部6内に空気を流入することができる。このため、例えば、軸流ファン1の高負荷時において、ベース部6内に流入した空気を回路基板55に当てるように構成することで電子部品等の温度上昇を抑えることができる。これにより、軸流ファン1内部で発生する発熱量を抑えることができる。
【0028】
また、軸流ファン1によれば、空洞リブ72は、径方向における開口部71の外側の周部を囲う円弧状に形成されている。このように空洞リブ72を円弧状とすることにより、さらに風洞空間23内を流れる風に影響を与えずに、開口部71を遮蔽することができ、軸流ファン1の風量・静圧性能の低下を抑制することができる。
【0029】
また、軸流ファン1によれば、開口部71および空洞リブ72は、ベース部6の送風方向Wにおける下流側の端面から送風方向Wの上流側へ離隔した位置に設けられている。このように、開口部71と空洞リブ72をベース部6の下流側端面から距離を空けて設けることにより、開口部71を介して外部からベース部6内に空気をスムーズに流入させることができ、風量・静圧性能の低下をさらに抑制することができる。
【0030】
また、軸流ファン1によれば、開口部71は、開口部71内にベース部6の外周壁から径方向における内側に向かって伸びる突起部73が設けられたラビリンス構造を有する。このように、開口部71内をラビリンス構造とすることにより、開口部71からベース部6内への粉塵の流入を抑制することができる。
【0031】
また、軸流ファン1は、外枠部2の内周面とベース部6の外周面との間で、かつ動翼4に対して送風方向Wの下流側に設けられる固定ブレード63を、さらに有している。そして、開口部71および空洞リブ72は、固定ブレード63よりも送風方向Wにおける下流側に設けられるとともに、回転軸線Xの方向から見たときに、周方向における固定ブレード63が設けられている周方向範囲C内に含まれるように設けられている。このように、回転軸線Xの方向から見て送風方向Wにおける固定ブレード63の下流側に、固定ブレード63と重なるように開口部71と空洞リブ72を設けることにより、風洞空間23内を流れる風に及ぼす影響を少なくし、風量・静圧性能の低下をさらに抑制することができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0033】
1 軸流ファン
2 外枠部
4 動翼
6 ベース部
23 風洞空間
41 動翼ケース
51 モータ
52 回転軸
53 回転子
54 ステータ
55 回路基板
61 円筒部
62 傾斜部
63 固定ブレード
71 開口部
72 空洞リブ
73 突起部
C 周方向範囲
W 送風方向
X 回転軸線