IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソフトバンクモバイル株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

特開2023-3916診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム
<>
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図1
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図2
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図3
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図4
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図5
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図6
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図7
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図8
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図9
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図10
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図11
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図12
  • 特開-診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003916
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】診断装置、診断方法、プログラム及び診断システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 43/00 20220101AFI20230110BHJP
【FI】
H04L12/70 100Z
H04L12/70 100A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105296
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 啓嗣
(72)【発明者】
【氏名】木村 達明
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA11
5K030GA12
5K030HC01
5K030JA10
5K030KA07
5K030LE17
5K030MA01
5K030MB01
5K030MB20
5K030MC07
(57)【要約】
【課題】通信ネットワークにおける故障種別の特定を効率化すること。
【解決手段】通信ネットワークに含まれる複数の通信装置の中から、所定の通信サービスを収容する所定の通信装置群を特定する特定部と、前記特定部で特定された所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々にコマンドを入力することで、前記所定の通信装置群に含まれる各通信装置の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集する収集部と、前記所定のコマンド応答に基づき、前記所定の通信サービスにおける故障種別を判別する判別部と、前記判別部で判別された前記故障種別を出力する出力部と、を有する、診断装置を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークに含まれる複数の通信装置の中から、所定の通信サービスを収容する所定の通信装置群を特定する特定部と、
前記特定部で特定された所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々でコマンドを実行することで、前記所定の通信装置群に含まれる各通信装置の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集する収集部と、
前記所定のコマンド応答に基づき、前記所定の通信サービスにおける故障種別を判別する判別部と、
前記判別部で判別された前記故障種別を出力する出力部と、
を有する診断装置。
【請求項2】
前記通信ネットワークにおける通信サービスを収容する複数の通信装置から収集されたコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルと、該特徴ベクトルに対応する故障種別を示すラベルと、を対応づけた教師データを用いて学習された学習済モデルを有し、
前記判別部は、前記所定のコマンド応答に基づいて生成された所定の特徴ベクトルを前記学習済モデルに入力し、前記学習済モデルから出力される故障種別を示すラベルを取得することで、前記所定の通信サービスにおける故障種別を判別する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記通信ネットワークにおける通信サービスを収容する複数の通信装置から収集された複数のコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルを複数のクラスにクラスタリングし、各々のクラスに対し故障種別を示すラベルが対応づけられたデータベースを記憶する記憶部と、
前記データベースに格納された特徴ベクトルと、当該特徴ベクトルが属するクラスタに対応するラベルとを教師データとしてモデルを学習させることで、前記学習済モデルを生成する学習処理部と、を有する、
請求項2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記判別部により判別された前記所定の通信サービスにおける故障種別が正解又は誤りであるかと、前記所定の通信サービスにおける故障種別が誤りであった場合における正しい故障種別とを受け付ける受付部と、
前記受付部で、前記所定の通信サービスにおける故障種別が正解であることを受け付けた場合に、前記所定のコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルと前記判別部により判別された前記所定の通信サービスにおける故障種別を示すラベルとを対応づけた教師データを生成し、前記受付部で、前記所定の通信サービスにおける正しい故障種別を受け付けた場合に、前記所定のコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルと前記受付部で受け付けた正しい故障種別を示すラベルとを対応づけた教師データを生成する、生成部と、を有する、
請求項3に記載の診断装置。
【請求項5】
決定木を用いて学習させた前記学習済モデルの分岐に用いられる特定コマンドを抽出する抽出部、を有する、
請求項2に記載の診断装置。
【請求項6】
前記収集部は、前記所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々で、少なくとも前記特定コマンドに含まれるコマンドを実行することで、前記所定の通信装置群に含まれる通信装置の動作状態を示す前記所定のコマンド応答を収集する、
請求項5に記載の診断装置。
【請求項7】
通信ネットワークに含まれる複数の通信装置の中から、所定の通信サービスを収容する所定の通信装置群を特定するステップと、
前記特定するステップで特定された所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々にコマンドを入力することで、前記所定の通信装置群に含まれる各通信装置の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集するステップと、
前記所定のコマンド応答に基づき、前記所定の通信サービスにおける故障種別を判別するステップと、
前記判別するステップで判別された前記故障種別を出力するステップと、
を含む、診断装置が実行する診断方法。
【請求項8】
コンピュータに、
通信ネットワークに含まれる複数の通信装置の中から、所定の通信サービスを収容する所定の通信装置群を特定するステップと、
前記特定するステップで特定された所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々でコマンドを実行することで、前記所定の通信装置群に含まれる各通信装置の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集するステップと、
前記所定のコマンド応答に基づき、前記所定の通信サービスにおける故障種別を判別するステップと、
前記判別するステップで判別された前記故障種別を出力するステップと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項9】
通信ネットワークに含まれる複数の通信装置及び診断装置を有する診断システムであって、
前記通信装置は、
前記通信装置の動作状態を管理する管理部と、
前記通信装置の動作状態を示すコマンド応答を前記診断装置に送信する送信部と、を備え、
前記診断装置は、
前記複数の通信装置の中から、所定の通信サービスを収容する所定の通信装置群を特定する特定部と、
前記特定部で特定された所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々でコマンドを実行することで、前記所定の通信装置群に含まれる各々の通信装置の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集する収集部と、
前記所定のコマンド応答に基づき、前記所定の通信サービスにおける故障種別を判別する判別部と、
前記判別部で判別された前記故障種別を出力する出力部と、
を有する、
診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断方法、プログラム及び診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、通信事業者(キャリア)が管理するIP中継網で利用するネットワーク装置及びその通信経路の監視技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-184638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信事業者は、通信ができない等の申告をユーザから受けた場合、通信ネットワークを構成する各通信機器に対して様々なコマンドを投入し、その応答結果を確認することで、故障診断を行っている。しかしながら、近年における通信ネットワークの規模及びサービスの拡大に応じて、通信ネットワークを構成する通信機器の数及び種別が多様化している。更に、通信機器ごとに診断方法も異なっていることから、通信事業者が行う故障診断業務は、非常に煩雑化している。
【0005】
本開示は、このような状況を鑑みてなされたものであって、通信ネットワークにおける故障種別の特定を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る診断装置は、通信ネットワークに含まれる複数の通信装置の中から、所定の通信サービスを収容する所定の通信装置群を特定する特定部と、前記特定部で特定された所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々にコマンドを入力することで、前記所定の通信装置群に含まれる各通信装置の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集する収集部と、前記所定のコマンド応答に基づき、前記所定の通信サービスにおける故障種別を判別する判別部と、前記判別部で判別された前記故障種別を出力する出力部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る診断システムのシステム構成例を示す図である。
図2】診断装置及び通信装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】診断装置の機能ブロック構成例を示す図である。
図4】通信装置の機能ブロック構成例を示す図である。
図5】特徴ベクトルを説明するための図である。
図6】特徴ベクトルに付与されたラベルの一例を示す図である。
図7】故障種別の判別を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】NW構成DBの一例を示している。
図9】コマンド及び確認ルールの一例を示す図である。
図10】特徴ベクトルのクラスタリングを行うことで教師データを生成する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11】クラスタリングによりラベルが付与された特徴ベクトルの一例を示す図である。
図12】特徴ベクトルを可視化した例を示す図である。
図13】決定木を用いた学習済モデルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0009】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る診断システム1のシステム構成例を示す図である。診断システム1は、診断装置10と、複数の通信ネットワークN1~N4と、ユーザネットワークUを含む。
【0010】
通信ネットワークN1~N4は、通信事業者が管理する通信ネットワークである。通信ネットワークN1~N4は、通信事業者が管理する施設に配置される複数の通信装置20-1~20-17により構成されている。通信装置20は、例えば、ルータ、スイッチ、ハブ、ファイアウォール、ONU(Optical Network Unit)等のネットワーク機器である。以下の説明において、複数の通信装置20-1~20-17を区別しない場合、通信装置20と記載する。また、通信ネットワークN1~N4を構成する通信装置20の数に制限はない。また、図1の例では、通信事業者が管理する通信ネットワークとして通信ネットワークN1~N4の4つが図示されているが、通信事業者が管理する通信ネットワークの数に制限はない。以下の説明において、通信ネットワークN1~N4を区別しない場合、通信ネットワークNと記載する。図示しないが、通信ネットワークN(例えば通信ネットワークN4)は、インターネットに接続されていてもよい。
【0011】
ユーザネットワークUは、ユーザが管理する通信ネットワークである。ユーザが管理する通信ネットワークには、例えば、個人ユーザ宅内の無線LAN通信環境や、企業ユーザのネットワーク等が含まれる。図1の例では、ユーザネットワークUのみが図示されているが、ユーザネットワークの数に制限はない。
【0012】
通信ネットワークN1は、ユーザネットワークUと接続することから、アクセスネットワーク(アクセス網)と呼ばれてもよい。一方、通信ネットワークN2~N4は、コアネットワーク(コア網)と呼ばれてもよい。
【0013】
診断装置10は、通信事業者が管理する通信ネットワークN1~N4を構成する複数の通信装置20の動作状態を監視する装置である。より具体的には、診断装置10は、各通信装置20から受信したコマンド応答に基づいて、通信装置20が有する各インタフェースの状態や、通信装置20本体の処理負荷などを監視する。通信装置20が備えるインタフェースとは、ケーブルを接続する物理的なインタフェース、及び/又は、物理的なインタフェース内に作成される論理的なインタフェースを意味する。論理的なインタフェースは、仮想的なインタフェースと呼ばれることもある。
【0014】
ここで、現在行われている、ネットワーク運用業務における通信サービス故障対応業務のフローを説明する。まず、通信サービス故障を検知したユーザは、各ユーザに割り振られたサービスIDをキーに窓口へ申告を行う。通信事業者のオペレータは、サービスIDをキーにユーザの通信サービスを収容する通信ネットワーク(例えばアクセスネットワークや中継ネットワーク等)および通信装置20を確認し、各通信装置20に対して遠隔ログインして、故障診断を行うためのコマンドを実行し、故障被疑箇所を特定する。
【0015】
さらに、故障復旧対応に関する作業者手配や現地における復旧作業指示、正常性確認結果等の情報連携を、故障対応システムを用いて作業者が利用する端末との間で行う。各コマンドには、応答結果をもとに故障診断を行うための確認ルールが存在する。確認ルールは、通信ネットワークごとで確認内容は異なり、それに応じて各通信ネットワークおよび各通信装置20で実行すべきコマンドも異なる。このため、ある故障に対して、故障箇所・原因特定といった故障診断を行うためには、ユーザが収容される全ての通信装置20に関するコマンド応答結果を確認し、その結果をもとに判断する必要がある。また、通信装置20ごとに実行すべきコマンドは大量に存在し、またその応答結果も目視で判断することを前提とした複雑なテキストメッセージである。従って、現状の故障診断業務はオペレータの専門知識に依存した手作業を中心としたものとなっている。
【0016】
(診断システムの概要)
診断装置10は、通信事業者が提供するサービスを利用するユーザから、例えば電話やメール等を介して通信ができない等の申告を受け付けると、申告されたサービスIDをキーに、通信ネットワークN1~N3に含まれる複数の通信装置20の中から、当該ユーザの通信サービスを収容する複数の通信装置20を特定する。例えば図1の例では、ユーザの通信サービスが通る経路は図1の太線に該当し、ユーザの通信サービスを収容する複数の通信装置20は、通信装置20-3、20-4、20-8、20-9及び20-13に該当する。次に、診断装置10は、特定された、当該ユーザの通信サービスを収容する複数の通信装置20に遠隔ログインし、通信装置20の動作状態を確認するコマンドを実行することで、各通信装置20から、各通信装置20の動作状態を示すコマンド応答を収集する。次に、診断装置10は、収集したコマンド応答結果に基づいて、故障種別を判別する。
【0017】
なお、本実施形態において、「故障事象」は、学習に用いる特徴ベクトルを構成するものであり、「故障種別」は、ラベルとして各故障事象に付与され、推定されるものである。言い換えると、「故障事象」は、“実際に生じた”故障の内容を意味しており、「故障種別」は、“推定される”故障の内容を意味する。
【0018】
本実施形態では、診断装置10は、以下の3つの機能のうち少なくとも1以上の機能を提供する。
1.教師あり学習を用いた故障種別の判別機能:コマンド応答データに基づいて生成された特徴ベクトルに故障種別をラベルとして付与することで生成されたラベル付き特徴ベクトルを教師データとして学習済モデルを事前に生成し、ユーザ申告をトリガに収集されたコマンド応答に基づく特徴ベクトルを、学習済モデルに入力することで、故障種別を判別する機能。ラベル付き特徴ベクトルは、過去の故障診断業務により予めで生成されたものである。
2.教師なし学習を用いた教師データ作成補助機能:過去に収集された各通信装置20からの多数のコマンド応答に基づいて生成した特徴ベクトルを、教師なし学習を用いてクラスタリングすることで特徴ベクトルを複数のクラスに分類し、各クラスに対し故障種別を示すラベルを付与することで生成されたラベル付き特徴ベクトルを、教師データとする機能。
教師なし学習を用いた教師データ作成補助機能は、例えば、過去の故障診断業務により予め生成されたラベル付き特徴ベクトルの数が、モデルを学習させるのに十分な数ではない場合に利用することを想定している。なお、クラスタリングとは、複数のデータを、データ間の類似度に基づいて複数のグループにグループ分けすることである。また、各クラスと具体的な故障事象との対応づけは、通信事業者のオペレータ等により予め行われる前提である。
3.投入コマンド最適化機能:ラベル付き特徴ベクトルを用いて決定木を学習させ、学習させた決定木を用いて、通信装置20が備える多数のコマンドの中から、故障種別の特定に有効なコマンドを抽出することで、通信装置20からコマンド応答を効率的に収集可能とする機能。
【0019】
<機能ブロック構成>
図2は、診断装置10及び通信装置20のハードウェア構成例を示す図である。診断装置10及び通信装置20は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)等のプロセッサ11、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)及び/又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置12、有線又は無線通信を行う通信IF(Interface)13、入力操作を受け付ける入力デバイス14、及び情報の出力を行う出力デバイス15を有する。診断装置10の入力デバイス14は、例えば、キーボード、タッチパネル、操作パネル、入力端子、マウス及び/又はマイク等である。出力デバイス15は、例えば、ディスプレイ、出力端子、タッチパネル及び/又はスピーカ等である。
【0020】
(診断装置)
図3は、診断装置10の機能ブロック構成例を示す図である。診断装置10は、記憶部100と、コマンド生成部101と、収集部102と、前処理部103と、判別部104と、出力部105と、受付部106と、生成部107と、学習処理部108と、クラス分類部109とを含む。記憶部100は、診断装置10が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、コマンド生成部101と、収集部102と、前処理部103と、判別部104と、出力部105と、受付部106と、生成部107と、学習処理部108と、クラス分類部109とは、診断装置10のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0021】
記憶部100は、NW(Network)構成DB(Data Base)100a、学習済モデル100b、コマンド応答DB100c及び教師データDB100dを記憶する。
【0022】
NW構成DB100aは、通信ネットワークNを構成する各通信装置20の接続関係、通信装置20の機種、各ユーザの通信サービスを収容する通信装置20、各通信装置20において各ユーザの通信サービスを収容するインタフェース及びポートの識別子を示す情報等を格納する。
【0023】
学習済モデル100bは、複数の通信装置20から収集されたコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルを入力すると、推定される故障種別を示すラベルを出力する能力を有するように学習されたモデルである。学習済モデル100bは、通信ネットワークNにおける通信サービスを収容する複数の通信装置20から収集されたコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルと、該特徴ベクトルに対応する故障種別を示すラベルと、を対応づけた教師データを用いて学習することで生成される。
【0024】
学習済モデル100bには、例えば、決定木(例えばCART、XG Boost等)、SVM(サポートベクターマシン)、ニューラルネットワーク、多層ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰分析など、どのようなモデルが利用されてもよい。
【0025】
コマンド応答DB100cは、通信事業者のオペレータ等が故障事象を特定した際に、ユーザの通信サービスを収容する複数の通信装置20にコマンドを送信することで収集されたコマンド応答を格納する。コマンド応答DB100cには、過去に故障切り分けを行った際に収集されたコマンド応答が大量に格納されている。コマンド応答DB100cは、「教師なし学習を用いた教師データ作成補助機能」で使用することを想定している。
【0026】
教師データDB100dは、ユーザの通信サービスを収容する複数の通信装置20から得られたコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルと、故障種別の正解を示すラベルとを対応づけた、教師データを格納する。前述した学習済モデル100bは、当該教師データDB100eを用いて学習されたものであってもよい。教師データDB100dは、過去の故障診断業務を通じて予め生成されたものであってもよいし、「教師なし学習を用いた教師データ作成補助機能」を利用して生成されたものであってもよい。
【0027】
コマンド生成部101は、通信ネットワークNに含まれる複数の通信装置20の中から、所定の通信サービスを収容する所定の通信装置群を特定し、特定した所定の通信装置群に実行させるコマンドを生成する。所定の通信サービスは、診断装置10が故障種別を調査する対象の通信サービスであり、例えば、故障申告を受けたユーザの通信サービスであってもよい。
【0028】
なお、所定の通信サービスは、どのような通信サービスも含まれるが、例えば、ユーザネットワークUから通信ネットワークNを通ってインターネットに抜ける通信サービス(若しくはその逆)、又は、あるユーザネットワークU(例えばユーザ企業の拠点A)から通信ネットワークNを通って他のユーザネットワークU(例えば同一ユーザ企業の拠点B)に向ける通信サービス(若しくはその逆)などが挙げられる。また、所定の通信装置群は、通信ネットワークNに存在する多数の通信装置20の中から、調査対象の通信サービスを流れるデータが通過する1以上の通信装置20を意味する。
【0029】
収集部102は、コマンド生成部101で特定された所定の通信装置群に含まれる通信装置20の各々で、コマンド生成部101で生成されたコマンドを実行することで、所定の通信装置群に含まれる各通信装置20の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集する。
【0030】
前処理部103は、収集部102で収集された所定のコマンド応答に基づいて特徴ベクトルを生成する。
【0031】
判別部104は、収集部102で収集された所定のコマンド応答に基づき、所定の通信サービスにおける故障種別を判別する。より具体的には、判別部104は、収集部102で収集された所定のコマンド応答に基づいて前処理部103で生成された特徴ベクトルを学習済モデル100bに入力し、学習済モデル100bから出力される故障種別を示すラベルを取得することで、所定の通信サービスにおける故障種別を判別するようにしてもよい。
【0032】
出力部105は、判別部104で判別された故障種別を出力する。例えば、出力部105は、診断装置10又は診断装置10に接続される装置が備えるディスプレイに、故障種別を示す情報を表示させるようにしてもよい。
【0033】
受付部106は、判別部104により判別された、所定の通信サービスにおける故障種別が正解又は誤りであるかと、当該所定の通信サービスにおける故障種別が誤りであった場合における正しい故障種別とを、例えば通信事業者のオペレータ等から受け付ける。
【0034】
生成部107は、受付部106で、所定の通信サービスにおける故障種別が正解であることを受け付けた場合に、収集部102で収集された所定のコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルと判別部104により判別された当該所定の通信サービスにおける故障種別を示すラベルとを対応づけた教師データを生成し、教師データDB100dに格納する。また、生成部107は、受付部106で、所定の通信サービスにおける正しい故障種別を受け付けた場合に、収集部102で収集された所定のコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルと受付部106で受け付けた正しい故障種別を示すラベルとを対応づけた教師データを生成し、教師データDB100dに格納する。
【0035】
学習処理部108は、教師データDB100eを用いてモデルを学習させることで、学習済モデル100bを生成する。
【0036】
クラス分類部109は、コマンド応答DB100cに格納されている複数の通信装置20から収集された複数のコマンド応答に基づいて生成された特徴ベクトルを、教師なし学習を用いて複数のクラスにクラスタリングする処理を行う。また、クラス分類部109は、各特徴ベクトルに、各特徴ベクトルが属するクラスに対応する故障種別を示すラベルを付与してデータベースに格納することで、教師データDB100dを生成する。学習処理部108は、当該教師データDB100dに格納された特徴ベクトルと、当該特徴ベクトルが属するクラスタに対応するラベルとを教師データとしてモデルを学習させることで、学習済モデル100bを生成するようにしてもよい。
【0037】
更に、コマンド生成部101は、決定木を用いて学習させた学習済モデル100bについて、当該学習済モデル100bにおける決定木の分岐に用いられる特定コマンドを抽出する。例えば、コマンド生成部101は、学習済みの決定木における各分岐の判定に用いられている全てのコマンドを、当該特定コマンドとして抽出するようにしてもよい。
【0038】
更に、収集部102は、所定の通信装置群に含まれる通信装置の各々で、少なくともコマンド生成部101で抽出された特定コマンドに含まれるコマンドを実行することで、当該所定の通信装置群に含まれる通信装置の動作状態を示す所定のコマンド応答を収集するようにしてもよい。
【0039】
(通信装置)
図4は、通信装置20の機能ブロック構成例を示す図である。通信装置20は、記憶部200と、通信処理部201と、管理部202と、入力部203と、出力部204とを含む。記憶部200は、通信装置20が備える記憶装置12を用いて実現することができる。また、通信処理部201は、通信装置20が備える通信IF13を用いて実現することができる。また、管理部202と、入力部203と、出力部204とは、通信装置20のプロセッサ11が、記憶装置12に記憶されたプログラムを実行することにより実現することができる。また、当該プログラムは、記憶媒体に格納することができる。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0040】
記憶部200は、ルーティングテーブルや各種の設定情報等、通信装置20の動作に必要な各種の情報を記憶する。通信処理部201は、ルーティングテーブル等に基づいて、受信したデータのルーティングを行う。管理部202は、通信装置20の動作状態(CPU使用率、メモリ使用率、各インタフェースの状態、データの送受信状態など)を管理する。入力部203は、通信装置20が備えるコマンド等の入力を受け付ける。出力部204は、通信装置20の動作状態を示すコマンド応答を診断装置10に送信する。
【0041】
<処理手順>
(特徴ベクトルの構成)
診断装置10は、申告された通信サービスを収容する各通信装置20へログインし、故障診断に必要な一連のコマンド(以下、「コマンド系列」と言う)を実行する。さらに、全ての装置コマンドの応答結果を特徴ベクトルへと変換し、特徴ベクトルを学習済モデル100bに入力することによって故障種別の推定を行う。
【0042】
診断装置10は、申告された通信サービスを収容する各通信装置20から得られるコマンド応答の確認結果を結合し、故障事象ごとに1つの特徴ベクトルを構築する。ここで、各ユーザの通信サービスを収容する通信装置20に対して実行するコマンドの種別は、通信装置20によって異なっており、更に、各ユーザの通信サービスを収容する通信装置20は、ユーザごと異なる。そこで、本実施形態では、特徴ベクトルの次元が、全てのユーザにおいて同一次元となるようにするため、診断装置10が管理する、各ユーザの通信サービスを収容する全ての通信装置20の全ての装置コマンド数を、その次元数とする。例えば、各ユーザの通信サービスを収容する全ての通信装置20の全ての装置コマンドが合計で350コマンドである場合、特徴ベクトルは、350次元のベクトルになる。
【0043】
次に、通信装置20からのコマンド応答は、人間が目視で判断することを前提とした複雑なテキストメッセージで構成されている。しかしながら、診断装置10は、学習済モデル100bを利用して故障種別の判別を行うことから、通信装置20から収集するコマンド応答を、学習済モデル100bで扱えるようにする必要がある。そこで、診断装置10は、各通信装置20のコマンドの応答結果と、事前定義された確認ルールとを照合し、各コマンドの応答内容に対する確認結果を実数に変換することで、特徴ベクトルを生成する。実数は、例えば0(正常)/1(異常)であってもよいし、更に複数の数値に分類されてもよい。
【0044】
図5は、特徴ベクトルを説明するための図である。なお、図5の例では、通信ネットワークN1~N4が図示されているが、図示の便宜上であり、通信ネットワークNの数に制限はない。図5において、「通信ネットワーク」は、各ユーザの通信サービスを収容する全ての通信ネットワークNであり、「通信装置」は、各通信装置20に設置されている、各ユーザの通信サービスを収容する全ての通信装置20である。また、「コマンドID」は、各ユーザの通信サービスを収容する全ての通信装置20の全ての装置コマンドを一意に識別する識別子である。例えば、各ユーザの通信サービスを収容する全ての通信装置20の全ての装置コマンドが合計で350コマンドである場合、Cn=C349になる。
【0045】
1つの特徴ベクトルは、C1~Cnまでのコマンド応答を、事前定義された確認ルールに従って0又は1に変換することで生成される。例えば、C0=0、C1=0、C2=1、・・・、C349=0のように変換された場合、特徴ベクトルは、(C0、C1、C2、・・・・、C349)=(0、0、1、・・・、0)の形になる。
【0046】
(学習済モデルの生成)
学習処理部108は、教師データDB100dから教師データ(すなわちラベル付き特徴ベクトル)を取得し、モデルを学習させることで学習済モデル100bを生成する。図6は、特徴ベクトルに付与されたラベルの一例を示す図である。図6の表の各要素は、9種類のラベルID及び故障種別を示している。ラベル付き特徴ベクトルは、例えば、(ラベルID、C0、C1、C2、・・・・、C350)=(5、0、0、1、・・・、0)といった形式の特徴ベクトルになる。
【0047】
学習処理部108は、事前に設定が必要な各種パラメータをモデルにセットし、教師データを用いて学習を行う。また、学習処理部108は、学習済モデル100bを検証するための検証データを用いて、学習済モデル100bが適切に学習されているか否かを検証する。学習済モデル100bが十分に学習されていない場合、パラメータの変更、学習及び検証を繰り返す。学習済モデル100bに格納されている学習用データの一部が、検証データとして利用されてもよい。
【0048】
(教師あり学習を用いた故障種別の判別)
図7は、診断装置10が、故障種別の判別を行う処理手順の一例を示すフローチャートである。図7の例において、学習済モデル100bは、図6に示す故障種別を示すラベルを出力する能力を有しているものとする。
【0049】
ステップS10で、ユーザから故障申告を受けた場合、コマンド生成部101は、NW構成DB100aを参照し、申告を受けたユーザの通信サービスを収容する複数の通信装置20を特定する。
【0050】
図8は、NW構成DB100aの一例を示す図である。図8の例は、各サービスIDで特定される通信サービスのトラフィックが、各通信ネットワークN1~N4において、どの通信装置20をどの順に通るのかを示している。例えば、サービスID1の通信サービスのトラフィックは、通信ネットワークN1~N4において、A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1及びD2の通信装置20を通ることを示している。なお、図8は一例に過ぎず、各ユーザの通信サービスは、更に多くの通信ネットワークNや通信装置20を通過することもあり得る。また、各通信ネットワークNを構築する通信装置20には異なる機種の通信装置20が含まれていてもよい。また、NW構成DB100aには、各通信装置20において、サービスIDで特定される通信サービスを収容する物理ポート番号(又は仮想ポート番号)及びインタフェース番号等が、サービスIDと対応づけて格納されていてもよい。
【0051】
また、コマンド生成部101は、特定された、ユーザの通信サービスを収容する複数の通信装置20に実行させる、故障診断に必要なコマンド系列を生成する。コマンド生成部101は、通信装置20ごとに予め定められたルールに従ってコマンド系列を生成するようにしてもよい。通信装置20で実行されるコマンド及び確認ルールの一例を図9に示す。
【0052】
ステップS11で、収集部102は、ステップS10で特定された各通信装置20にログインし、生成されたコマンド系列を実行することで、コマンド応答を収集する。
【0053】
ステップS12で、前処理部103は、ステップS11で収集されたコマンド応答に対し前処理を行うことで、特徴ベクトルを生成する。具体的には、前処理部103は、受信したコマンド応答群を、事前定義された確認ルールにより0又は1に変換することで特徴ベクトルを生成する。ここで、前処理部103は、特徴ベクトル(C0~Cn)のうち、受信したコマンド応答には含まれていないコマンドIDに対応する次元については、「0(正常)」をセットする。例えば、特徴ベクトルが、C0~C349の350次元である場合で、コマンド応答には、コマンドIDが0~39、60~99、200~219である合計100個のコマンド応答が含まれていたものとする。この場合、前処理部103は、特徴ベクトル(C0~C349)のうち、40~59、100~199、220~349のコマンドIDに対応する次元については、「0(正常)」をセットする。
【0054】
ステップS13で、判別部104は、ステップS12で生成された特徴ベクトルを学習済モデル100bに投入する。続いて、判別部104は、学習済モデル100bから出力される、故障種別を示すラベルを取得する。続いて、出力部105は、学習済モデル100bから出力されたラベルに対応する故障種別を示す情報(例えば図7の故障種別に示す文言)を、ディスプレイ等に出力する。
【0055】
なお、受付部106は、ディスプレイに表示された故障種別を参考に実際の故障解析を行った通信事業者のオペレータから、ステップS13の処理手順で出力された故障種別が正しいか否かを示す情報、及び、故障種別が誤っている場合には、正しい故障種別を示すラベルの入力を受け付けるようにしてもよい。また、生成部107は、正しい故障種別を示すラベルの値と、ステップS12の処理手順で生成した特徴ベクトルとを対応づけて新たなラベル付き教師データを生成し、教師データDB100dを更新するようにしてもよい。このように新たな教師データが追加された教師データDB100dを利用することで、学習済モデル100bを追加学習させることも可能になる。
【0056】
(教師なし学習におけるクラスタリング処理)
図10は、特徴ベクトルのクラスタリングを行うことで教師データを生成する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0057】
ステップS21で、前処理部103は、コマンド応答DB100cに格納されている各コマンド応答から特徴ベクトルを生成する。なお、前処理部103は、図7のステップS12で説明した処理手順と同一の処理手順により特徴ベクトルを生成する。続いて、クラス分類部109は、生成された複数の特徴ベクトルについて、例えばk-means法を用いてクラスタリングを行う。ここでは、複数の特徴ベクトルが、例えば5つのクラスにクラスタリングされたものとする。クラス分類部109は、5つのクラスにクラスタリングされた各特徴ベクトルに対してラベル(例えば1~5)を付与する。
【0058】
ステップS22で、受付部106は、通信事業者のオペレータから、ラベル付けされた5つのクラスについての具体的な故障種別を示す情報の入力を受け付ける。このとき、受付部106は、クラスタリング処理を行うオペレータ等から、クラス分類部109により各特徴ベクトルに付与されたラベルの修正を受け付けるようにしてもよい。
【0059】
図11は、クラスタリングによりラベルが付与された特徴ベクトルを格納するデータベースの一例を示す図である。図11のAにおける1つの行は、特徴ベクトルと、当該特徴ベクトルに付与されたラベルとを示している。また、図11のBは、通信事業者のオペレータが、5つのクラスに対し具体的な故障種別を付与した例を示している。
【0060】
ステップS23で、生成部107は、ステップS21の処理手順及びステップS22の処理手順で得られたラベル付き特徴ベクトルを格納した教師データDB100dを、記憶部100に格納する。その後、学習処理部108は、記憶部100に格納された教師データDB100dを用いて、学習済モデル100bを生成する。
【0061】
(投入コマンド最適化)
本実施形態では、最小のコマンド数で故障種別の推定を行うために、故障種別推定に用いる決定木の情報を利用することで、通信装置20に実行させる最適なコマンド系列を事前に生成するようにしてもよい。決定木は、特徴ベクトルの分類に関する規準を節点に、各特徴ベクトルが最終的に分類されるラベルを葉に持つ木構造により表現される。決定木における各節点は、特徴ベクトルのどの要素が何の値であるか、すわなち、対応するコマンドの確認結果を表しており、節点の情報を確認することで、どのコマンドを実行・確認すべきかが把握できる。したがって、根から順に節点を辿り、各節点で利用されているコマンドを抽出することで、故障種別推定の観点から最適なコマンド系列を獲得することができる。
【0062】
図12は、故障申告を受け付けた際に各通信装置20から収集された特徴ベクトルを可視化した例を示す図である。図12の縦軸は、コマンド種別(つまり特徴ベクトルの次元数であり、ここでは350次元)に対応し、横軸は各故障事象に対応している。
【0063】
図12において点が存在する場所は、コマンド応答が異常であることを示している。ここで、図12に示すように、350個のコマンドのうち、異常を示すコマンドには偏りがある。つまり、350個のコマンドのうち、故障種別の特定に役立つコマンドは一部に限られることを示している。
【0064】
そこで、コマンド生成部101は、決定木である学習済モデル100bに入力する複数の特徴ベクトルのうち、決定木の中で分岐に用いられている特定コマンドを抽出する。図13は、決定木を用いた学習済モデル100bの一例を示す図である。例えば、図13に示す決定木は、C0~C350までのコマンドが投入されると、最も可能性が高い故障種別を示すラベル(i)を出力するように学習されているものとする。図15の例では、350次元を構成する350個のコマンドのうち、C4、C16、C70、C80、C100及びC200が分岐に用いられている。従って、コマンド生成部101は、特定コマンドとして、コマンドC4、C16、C70、C80、C100及びC200を抽出するようにしてもよい。
【0065】
なお、投入コマンド最適化機能を実現するにあたり、故障種別の判別機能に用いるための学習済モデル100bと、投入コマンド最適化機能にて分析する決定木は、同一のモデルであってもよいし異なるモデルであってもよい。例えば、学習処理部108は、最適なコマンド系列を得るために、故障種別の判別機能に用いるための学習済モデル100bとは別個に決定木のモデルを作成するようにしてもよい。
【0066】
前述した図7のステップS11の処理手順において、コマンド生成部101は、特定された複数の通信装置20に実行させる、故障診断に必要なコマンド系列を生成する際、投入コマンド最適化機能で抽出された特定コマンドの範囲でコマンド系列を生成するようにしてもよい。つまり、収集部102で自動実行されるコマンドは、決定木の情報に基づき、故障種別の判別が可能な最小のコマンド実行数に絞られることになる。これにより、故障種別の判別結果には影響しない不要なコマンドを各通信装置20に送信する必要がなくなることから、故障種別の判定をより迅速に行うことが可能になる。
【0067】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、診断装置10は、教師あり学習により生成された学習済みモデルに特徴ベクトルを入力することで、故障種別を判別するようにした。これにより、通信ネットワークにおける故障種別の特定を効率化することが可能になる。また、診断装置10は、故障申告を受けた際に収集したコマンド応答を、教師なし学習によりクラスタリングすることで、教師データの作成を補助するようにした。これにより、過去の故障診断業務で作成された教師データの数が十分ではない場合であっても、学習済みモデルを生成することが可能になる。
【0068】
また、診断装置10は、学習済モデル100bによる判定結果が、実際の故障種別とは異なっていたとオペレータにより判断された場合、正解の故障種別を受け付けるとともに、受け付けた正解の故障種別と、収集されたコマンド応答に基づき生成された特徴ベクトルとを対応づけて教師データとして保存するようにした。これにより、教師あり学習を進めるために必要な教師データを効率的に収集することが可能になる。
【0069】
また、診断装置10は、決定木を用いた学習済モデル100bを利用し、決定木の中で分岐に用いられている特定コマンドを抽出するようにした。これにより、故障種別の判別には使われない不要なコマンドを各通信装置20に送信する必要がなくなることから、コマンド応答を効率的に収集することが可能になる。
【0070】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0071】
なお、本実施形態において、コマンド生成部101は、特定部及び抽出部の一例である。
【符号の説明】
【0072】
1…診断システム、10…診断装置、11…プロセッサ、12…記憶装置、13…通信IF、14…入力デバイス、15…出力デバイス、20…通信装置、100…記憶部、100a…NW構成DB、100b…学習済モデル、100c…コマンド応答DB、100d…教師データDB、101…コマンド生成部、102…収集部、103…前処理部、104…判別部、105…出力部、106…受付部、107…生成部、108…学習処理部、109…クラス分類部、200…記憶部、201…通信処理部、202…管理部、203…入力部、204…出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13