(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039176
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】過負荷保護制御システムおよび過負荷保護制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20230313BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J13/00 311K
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146209
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220642
【氏名又は名称】東京電設サービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】関 昌也
(72)【発明者】
【氏名】松原 好宏
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆一
(72)【発明者】
【氏名】梅村 侑史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 治
(72)【発明者】
【氏名】辻 誠
(72)【発明者】
【氏名】知念 正人
(72)【発明者】
【氏名】白井 梢平
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB10
5G064DA03
5G066AA06
5G066AB02
5G066HA13
5G066HA15
(57)【要約】
【課題】電力系統において過負荷状態となっている箇所を適切に検出する。
【解決手段】過負荷保護制御システム10は、電力系統100において電力潮流の分岐点#1~#4間に存在する複数の送電線区間のうち少なくとも一つの送電線区間に設けられ、当該送電線4の送電容量に関連する物理量を測定するセンサ装置2と、センサ装置2によって測定された物理量の測定データを集約して外部に送信する集約装置3と、集約装置3から送信された測定データを受信し、測定データに基づいてセンサ装置2が設けられた送電線区間が過負荷状態であるか否かを判定し、センサ装置2が設けられた送電線区間が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線区間に接続されている分散形電源装置70からの電力供給量を減らす制御を行う過負荷保護制御装置1と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統において電力潮流の分岐点間に存在する複数の送電線区間のうち少なくとも一つの送電線区間に設けられ、当該送電線区間の送電容量に関連する物理量を測定するセンサ装置と、
前記センサ装置によって測定された物理量の測定データを集約して外部に送信する集約装置と、
前記集約装置から送信された前記測定データを受信し、前記測定データに基づいて前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であるか否かを判定し、前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線区間に接続されている分散形電源装置からの電力供給量を減らす制御を行う過負荷保護制御装置と、を備える
過負荷保護制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の過負荷保護制御システムにおいて、
前記過負荷保護制御装置は、前記制御として、前記分散形電源装置を前記電力系統から解列させる
ことを特徴とする過負荷保護制御システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の過負荷保護制御システムにおいて、
前記センサ装置は、前記電力系統における大規模変電所端に接続された送電線区間よりも先に送電量が送電容量を超える可能性がある送電線区間に設けられている
ことを特徴とする過負荷保護制御システム。
【請求項4】
請求項3に記載の過負荷保護制御システムにおいて、
前記電力系統において、前記大規模変電所側を上流側とし、前記大規模変電所と反対側を下流側とした場合に、前記センサ装置は、前記下流側に複数の前記分散形電源装置が接続されている送電線区間に設けられている
ことを特徴とする過負荷保護制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の過負荷保護制御システムにおいて、
前記センサ装置は、当該センサ装置が設けられた送電線区間の電流を検出する電流センサを含む
ことを特徴とする過負荷保護制御システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の過負荷保護制御システムにおいて、
前記センサ装置は、当該センサ装置が設けられた送電線区間の温度を検出する温度センサを含む
ことを特徴とする過負荷保護制御システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の過負荷保護制御システムにおいて、
前記集約装置と前記過負荷保護制御装置とは、光ファイバ複合架空地線を介して前記物理量のデータの送受信を行う
ことを特徴とする過負荷保護制御システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の過負荷保護制御システムにおいて、
前記過負荷保護制御装置は、過負荷継電器である
ことを特徴とする過負荷保護制御システム。
【請求項9】
電力系統において電力潮流の分岐点間に存在する複数の送電線区間のうち少なくとも一つの送電線区間に設けられたセンサ装置が、当該送電線区間の送電容量に関連する物理量を測定する第1ステップと、
集約装置が、前記第1ステップにおいて前記センサ装置によって測定された物理量の測定データを集約して外部に送信する第2ステップと、
過負荷保護制御装置が、前記第2ステップにおいて前記集約装置から送信された前記測定データを受信する第3ステップと、
前記過負荷保護制御装置が、前記第3ステップにおいて受信した前記測定データに基づいて、前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であるか否かを判定する第4ステップと、
前記過負荷保護制御装置が、前記第4ステップにおいて前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線区間に接続されている分散形電源装置からの電力供給量を減らす制御を行う第5ステップと、を含む
過負荷保護制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過負荷保護制御システムおよび過負荷保護制御方法に関し、例えば、分散形電源装置が連系された電力系統において電力の供給を制御する過負荷保護制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力系統では、火力発電所や水力発電所などの大型の発電所で発電した電力を変電所において変圧し、最も効率的で安定した経路を通して、一般家庭や工場、ビル等の需要家の受電設備に供給することが求められる。例えば、特許文献1には、電力の潮流状態を監視し、電力の供給を制御する技術が開示されている。
【0003】
また、送電線の事故等により電力系統の所定の経路において停電が発生した場合、速やかに別の経路に切り替えて電力を供給することにより、停電の範囲を最小限度に止める必要がある。例えば、重潮流の2回線送電線において片回線に事故が発生した場合、もう一方の健全な回線に潮流が偏り、その回線の送電容量を超過し、設備が損傷する虞がある。そこで、送電容量を超過する虞がある送電線には、事故発生時等において需要家への電力供給の遮断や発電者による発電の抑制または遮断を実行する過負荷継電器(OLR:Over Load Relay、以下、「OLR」とも称する。)が設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電力系統の多くは、大型の発電所で発電した電力が大規模変電所を介して需要家側に向かって一方向に供給されるため、OLRは、最も負荷の大きい変電所端の潮流を監視し、変電所端の潮流が予め設定された送電容量を超えているか否かを判定することにより、送電線が過負荷状態であるか否かを判断していた。
【0006】
しかしながら、近年、太陽光発電装置(Photovoltaic Apparatus)や風力発電装置、バイオマス発電装置等の大型の分散形電源装置を備えた発電業者や小型の太陽光発電装置等を設置した住宅等が増えつつある。これらの分散形電源装置の多くは電力系統に連系されており、分散形電源装置によって発電した電力の電力系統へ供給が可能になっている。
【0007】
分散形電源装置が連系された電力系統では、従来の電力系統のように大規模変電所から需要家側に一方向に電力が供給されるのではなく、電力系統の各所に連系された分散形電源装置からも電力が供給されるため、電力系統の潮流が季節や時間帯により大きく変化する。
【0008】
例えば、天候等によって太陽光発電装置の発電量が変化した場合、電力系統の潮流が大きく変化し、変電所端の送電線区間以外の他の送電線区間が過負荷状態になる可能性がある。そのため、従来のように変電所端において送電量を監視するだけでは電力系統に発生した過負荷状態を適切に検出することができず、事故発生時等に適切な系統制御ができない虞がある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、電力系統において過負荷状態となっている箇所を適切に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態に係る過負荷保護制御システムは、電力系統において電力潮流の分岐点間に存在する複数の送電線区間のうち少なくとも一つの送電線区間に設けられ、当該送電線区間の送電容量に関連する物理量を測定するセンサ装置と、前記センサ装置によって測定された物理量の測定データを集約して外部に送信する集約装置と、前記集約装置から送信された前記測定データを受信し、前記測定データに基づいて前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であるか否かを判定し、前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線区間に接続されている分散形電源装置からの電力供給量を減らす制御を行う過負荷保護制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る過負荷保護制御システムによれば、電力系統において過負荷状態となっている箇所を適切に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る過負荷保護制御システムを含む電力系統を模式的に示す図である。
【
図2】本実施の形態に係る過負荷保護制御システムの構成を模式的に示す図である。
【
図3】センサ装置の設置例を模式的に示す図である。
【
図4】過負荷保護制御システムによる電力供給制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0014】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る過負荷保護制御システム(10)は、電力系統において電力潮流の分岐点(#1~#4)間に存在する複数の送電線区間(4)のうち少なくとも一つの送電線区間に設けられ、当該送電線区間の送電容量に関連する物理量を測定するセンサ装置(2)と、前記センサ装置によって測定された物理量の測定データを集約して外部に送信する集約装置(3)と、前記集約装置から送信された前記測定データを受信し、前記測定データに基づいて前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であるか否かを判定し、前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線区間に接続されている分散形電源装置(70)からの電力供給量を減らす制御を行う過負荷保護制御装置(1)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記〔1〕に記載の過負荷保護制御システムにおいて、前記過負荷保護制御装置は、前記制御として、前記分散形電源装置を前記電力系統から解列させてもよい。
【0016】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の過負荷保護制御システムにおいて、前記センサ装置は、前記電力系統における大規模変電所端に接続された送電線区間よりも先に送電量が送電容量を超える可能性がある送電線区間に設けられていてもよい。
【0017】
〔4〕上記〔3〕に記載の過負荷保護制御システムにおいて、前記電力系統において前記大規模変電所側を上流側とし、前記大規模変電所と反対側を下流側とした場合に、前記センサ装置は、前記下流側に複数の前記分散形電源装置が接続されている送電線区間に設けられていてもよい。
【0018】
〔5〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載の過負荷保護制御システムにおいて、前記センサ装置は、当該センサ装置が設けられた送電線区間の電流を検出する電流センサ(20)を含んでもよい。
【0019】
〔6〕上記〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載の過負荷保護制御システムにおいて、前記センサ装置は、当該センサ装置が設けられた送電線区間の温度を検出する温度センサ(21)を含んでもよい。
【0020】
〔7〕上記〔1〕乃至〔6〕の何れかに記載の過負荷保護制御システムにおいて、前記集約装置と前記過負荷保護制御装置とは、光ファイバ複合架空地線(44)を介して前記物理量のデータの送受信を行ってもよい。
【0021】
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕の何れかに記載の過負荷保護制御システムにおいて、前記過負荷保護制御装置は、過負荷継電器であってもよい。
【0022】
〔9〕本発明の代表的な実施の形態に係る過負荷保護制御方法は、電力系統において電力潮流の分岐点間に存在する複数の送電線区間のうち少なくとも一つの送電線区間に設けられたセンサ装置が、当該送電線区間の送電容量に関連する物理量を測定する第1ステップ(S1)と、集約装置が、前記第1ステップにおいて前記センサ装置によって測定された物理量の測定データを集約して外部に送信する第2ステップ(S2)と、過負荷保護制御装置が、前記第2ステップにおいて前記集約装置から送信された前記測定データを受信する第3ステップ(S3)と、前記過負荷保護制御装置が、前記第3ステップにおいて受信した前記測定データに基づいて、前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であるか否かを判定する第4ステップ(S4)と、前記過負荷保護制御装置が、前記第4ステップにおいて前記センサ装置が設けられた送電線区間が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線区間に接続されている分散形電源装置からの電力供給量を減らす制御を行う第5ステップ(S5)と、を含むことを特徴とする。
【0023】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る過負荷保護制御システムを含む電力系統を模式的に示す図である。
【0025】
図1に示す電力系統100は、例えば火力発電所や水力発電所等の大規模発電所において発電した電力を変圧する大規模変電所(超高圧変電所)5と、大規模変電所5から供給された電力を高圧・低圧需要家に供給可能な電圧に変圧する複数の配電用変電所6と、複数の送電線区間4と、分散形電源装置を有する複数の発電者7_1~7_5と、複数の特別高圧需要家8と、によって構成されている。
【0026】
電力系統100において、送電線4は、図示されない鉄塔を介して配策され、分岐されることにより、電力供給経路を形成している。
図1には、送電線4の分岐点として代表的に分岐点#1~#4が例示されており、各分岐点#1~#4は電力潮流の分岐点となる。
【0027】
なお、
図1に示す電力系統100の構成は一例であって、電力系統100を構成する大規模変電所5、配電用変電所6、送電線4、発電者7_1~7_5、および特別高圧需要家8の数や送電線4の分岐点#1~#4の位置および数等は、特に限定されない。
【0028】
特別高圧需要家8は、電力の供給を受ける消費者であり、例えば、ビルや工場等も含む。需要家における電気設備は、変圧器を介して電力系統100に接続されており、電力系統100の電力を使用電圧変圧されて上記電気設備に供給される。
【0029】
発電者7_1~7_5は、分散形電源装置を有する者であり、例えば、大規模太陽光発電装置や風力発電装置、バイオマス発電装置等の分散形電源装置を備えた発電事業者である。発電者7_1~7_5が備える設備については、後述する。
なお、以下の説明において、発電者7_1~7_5の夫々を区別しない場合には、単に「発電者7」と称する。
【0030】
電力系統100には、過負荷保護制御システム10が設けられている。
過負荷保護制御システム10は、電力系統100内の電力供給を制御するシステムである。過負荷保護制御システム10は、電力系統100における少なくとも一つの送電線区間の送電量を監視し、当該送電線区間が過負荷状態である場合に当該送電線区間に供給される電力を抑制する。
【0031】
図2は、本実施の形態に係る過負荷保護制御システム10の構成を模式的に示す図である。
過負荷保護制御システム10は、過負荷保護制御装置1、センサ装置2、および集約装置3を含んで構成されている。
【0032】
センサ装置2は、送電線4の送電容量に関連する物理量を検出する装置である。センサ装置2は、例えば、電流センサ20を含む。また、センサ装置2は、例えば、温度センサ21を含んでいてもよい。
【0033】
図3は、センサ装置2の設置例を模式的に示す図である。
例えば、2回線送電線の場合、
図3に示すように、2回線を構成する送電線4_1,4_2のそれぞれに電流センサ20が設けられ、少なくとも一方の送電線4に温度センサ21が設けられる。
【0034】
電流センサ20は、設置された送電線4に流れる電流を測定する。温度センサ21は、設置された送電線4の温度(または、送電線4の周辺の温度)を測定する。電流センサ20および温度センサ21としては、送電線に設置可能な公知のセンサを用いることができる。
【0035】
センサ装置2は、電力系統100において電力潮流の分岐点#1~#4間に存在する複数の送電線4のうち少なくとも一つの送電線4に設けられている。
【0036】
具体的には、センサ装置2は、電力系統100における大規模変電所5端に接続された送電線4よりも先に送電量が送電容量を超える可能性がある送電線4に設けられている。
【0037】
より具体的には、電力系統100において、大規模変電所5側を上流側とし、大規模変電所5と反対側を下流側とした場合に、センサ装置2は、下流側に複数の分散形電源装置が接続されている送電線4に設けられている。
【0038】
図1に示すように、分岐点#1を電力系統100の上流側、分岐点#2を下流側とした場合、分岐点#1と分岐点#2を接続する送電線4の下流側(分岐点#2側)には、複数の発電者7_1~7_4(分散形電源装置)が接続されている。
【0039】
例えば天候や時間帯によっては、発電者7_1~7_4(分散形電源装置)の発電量が増加し、分岐点#1と分岐点#2との間の送電線4に分岐点#2側から多くの電力が供給され、逆潮流が発生する。その場合、例えば、分岐点#1と分岐点#2との間の送電線容量が小さい場合には、大規模変電所5と分岐点#1とを接続する送電線4よりも先に、分岐点#1と分岐点#2との間の送電線4の送電量が送電容量を超える可能性がある。そこで、本実施の形態では、下流側に複数の発電者7_1~7_4(分散形電源装置)が接続されている、分岐点#1と分岐点#2との間の送電線4にセンサ装置2を設ける。
【0040】
集約装置3は、センサ装置2によって検出された物理量のデータを集約して外部に送信する装置である。例えば、集約装置3は、各センサ装置2を構成する電流センサ20と温度センサ21と無線通信を行うことにより、各センサ装置2によって測定された電流および温度の測定データを受信する。
【0041】
集約装置3は、センサ装置2と通信が可能な範囲に設けられている。例えば、
図3に示すように、通信対象のセンサ装置2が設置された送電線4に接続される鉄塔40に設置されている。なお、集約装置3とセンサ装置2との間の通信は、無線通信に限られず、有線通信であってもよい。
【0042】
集約装置3は、センサ装置2から受信した測定データを外部に送信する。具体的に、集約装置3は、センサ装置2から受信した測定データを過負荷保護制御装置1に送信する。
【0043】
例えば、集約装置3と過負荷保護制御装置1とは、光ファイバ複合架空地線(OPGW:Optical Ground Wire)44を介して測定データの送受信を行う。例えば、
図3に示すように、鉄塔40には光ファイバ同士を連結する光ファイバ用ジャンクションボックス(JB)42が設けられている。集約装置3は、光ファイバ41を介して光ファイバ用ジャンクションボックス(JB)42の一端の端子に接続されている。光ファイバ用ジャンクションボックス(JB)42の他方の端子は光ファイバ複合架空地線44に接続されている。これにより、集約装置3から送信された測定データは、光ファイバ用ジャンクションボックス42および光ファイバ複合架空地線44を通る光通信により、遠隔地にある過負荷保護制御装置1に送信される。
【0044】
図2に示すように、発電者7_1~7_5は、分散形電源装置70、遮断器71、および遮断制御装置72を備えている。上述したように、分散形電源装置70としては、太陽光発電装置、風力発電装置、およびバイオマス発電装置等を例示することができる。
【0045】
遮断器71は、分散形電源装置70の電力系統100への連系と解列を切り替える装置である。遮断器71がオンしているとき、分散形電源装置70は、送電線4に接続されて、電力系統100に連系される。遮断器71がオフしているとき、分散形電源装置70は、送電線4と接続されず、電力系統100から解列される。
【0046】
遮断制御装置72は、過負荷保護制御装置1からの指令に応じて制御対象の遮断器71をオフする装置である。遮断制御装置72は、例えば、図示されない通信ネットワークを介して過負荷保護制御装置1と接続されており、過負荷保護制御装置1との間で通信が可能となっている。
【0047】
遮断制御装置72は、例えば、転送遮断装置である。過負荷保護制御装置1から転送遮断信号を受信した場合に、遮断器71をオフさせて、分散形電源装置70を電力系統100から解列させる。遮断制御装置72と過負荷保護制御装置1との間の通信は、例えば、光ファイバ、OPGWもしくは配電線添架の光ケーブルなどによって実現されている。
【0048】
過負荷保護制御装置1は、電力系統100における電力の潮流状態を監視するとともに、電力系統100における電力の供給を制御する装置である。過負荷保護制御装置1は、例えば、監視対象の送電線区間の潮流状態を監視して、制御対象の遮断器の開閉を制御する過負荷継電器(OLR)である。
【0049】
過負荷保護制御装置1は、例えば、大規模変電所である大規模変電所5に設置されており、大規模変電所5端に接続された送電線4の送電量(潮流)を監視する。また、過負荷保護制御装置1は、上述したように、集約装置3との間で通信を行うことにより、大規模変電所5から離れた場所にある送電線4に設置されたセンサ装置2による測定データに基づいて、センサ装置2が設置された送電線4の送電量を監視する。
【0050】
過負荷保護制御装置1は、集約装置3から送信されたセンサ装置2による測定データを受信し、測定データに基づいてセンサ装置2が設けられた送電線4が過負荷状態であるか否かを判定する。例えば、過負荷保護制御装置1は、予め設定された監視対象の送電線4の送電容量と監視対象の送電線4の送電量とを比較し、比較結果に基づいて監視対象の送電線4が過負荷状態であるか否かを判定する。
【0051】
ここで、送電容量とは、例えば、連続許容電流値(常時許容電流値)および短時間許容電流値の少なくとも一方を含む。
【0052】
例えば、過負荷保護制御装置1は、監視対象の送電線4に流れる電流の測定値が連続許容電流値を超えた場合には、監視対象の送電線4が過負荷状態であると判定する。また、例えば、2回線の一方の送電線4が送電不能となり、もう一方の送電線4に連続許容電流値を超えて電流を流す必要がある状況において、もう一方の送電線4に流れる電流の測定値が短時間許容値を超えた状態が所定期間継続した場合には、その送電線4が過負荷状態であると判定する。
【0053】
なお、測定データとしての温度の測定値を用いる場合には、例えば、過負荷保護制御装置1は、そのときの温度に応じた連続許容電流値および短時間許容電流値をそれぞれ算出し、算出した連続許容電流値および短時間許容電流値と電流の測定値とを比較することにより、過負荷状態であるか否かを判定してもよい。
【0054】
過負荷保護制御装置1は、センサ装置2が設けられた送電線4が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線4に接続されている分散形電源装置からの電力供給量を減らす制御を行う。
【0055】
具体的には、過負荷保護制御装置1は、センサ装置2が設けられた送電線4が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線4に接続されている複数の発電者7のうち少なくとも一つの発電者7の分散形電源装置70を電力系統100から解列させる。
【0056】
図1に示すように、センサ装置2が設置されている分岐点#1と分岐点#2との間の送電線4が過負荷状態である場合、過負荷保護制御装置1は、当該送電線4の下流側(分岐点#2側)に接続されている発電者7_2~7_4のうち少なくとも一つの発電者7の遮断制御装置72に転送遮断信号を送信する。
【0057】
例えば、過負荷保護制御装置1が発電者7_2および発電者7_3の遮断制御装置72に対して転送遮断信号を送信した場合を考える。この場合、発電者7_2および発電者7_3において、遮断制御装置72が遮断器71をそれぞれオフさせる。これにより、発電者7_2および発電者7_3の分散形電源装置70が電力系統100から解列されるので、分岐点#1と分岐点#2との間の送電線4に流れる電流が減少し、当該送電線4の過負荷状態が解消される。
【0058】
なお、電力系統100から解列すべき発電者7の選定は、監視対象の送電線4の送電容量に対する超過分と各発電者7の発電量とに基づいて行えばよい。
【0059】
次に、本実施の形態に係る過負荷保護制御システム10による電力供給制御の流れについて説明する。
【0060】
図4は、過負荷保護制御システム10による電力供給制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【0061】
図4に示すように、電力系統100において、送電線4に設置されたセンサ装置2が、当該送電線4の送電容量に関する物理量を測定する(ステップS1)。例えば、センサ装置2は、上述したように、センサ装置2が設置された送電線4に流れる電流と当該送電線4の周辺の温度をそれぞれ測定する。
【0062】
次に、集約装置3が、センサ装置2によって測定された物理量(電流および温度)の測定データをセンサ装置2から受信する(ステップS2)。例えば、集約装置3は、一定時間毎にセンサ装置2と通信を行うことにより、定期的に測定データを受信してもよいし、過負荷保護制御装置1からの指示に応じて、センサ装置2から測定データを受信してもよい。
【0063】
集約装置3は、ステップS2において受信した送電線4の測定データを過負荷保護制御装置1に送信する(ステップS3)。次に、過負荷保護制御装置1は、ステップS3において受信した測定データに基づいて監視対象の送電線4が過負荷状態であるか否かを、上述した手法により判定する(ステップS4)。
【0064】
監視対象の送電線4が過負荷状態でないと判定した場合、過負荷保護制御装置1は、引き続き送電線4の潮流状態の監視を行う。一方、監視対象の送電線4が過負荷状態であると判定した場合、過負荷保護制御装置1は、監視対象の送電線4の下流側に接続されている複数の発電者7のうち少なくとも一つの発電者7の遮断器71を転送遮断させる(ステップS5)。これにより、監視対象の送電線4の下流側に接続されている分散形電源装置70が電力系統100から解列され、監視対象の送電線4に流れる電流を減少させることができる。
【0065】
以上、本実施の形態に係る過負荷保護制御システム10によれば、電力系統100において電力潮流の分岐点#1~#4間に存在する複数の送電線4のうち少なくとも一つの送電線4に設けられたセンサ装置2が当該送電線4の送電容量に関連する物理量を測定し、集約装置3がセンサ装置2によって測定された物理量の測定データを過負荷保護制御装置1に送信し、過負荷保護制御装置1が受信した測定データに基づいて、センサ装置2が設けられた送電線4が過負荷状態であるか否かを判定する。
【0066】
これによれば、大規模変電所端の送電線区間の潮流状態のみを監視していた従来手法に比べて、電力系統100において過負荷状態となっている箇所を適切に検出することが可能となる。
【0067】
また、本実施の形態に係る過負荷保護制御システム10において、過負荷保護制御装置1は、センサ装置2が設けられた送電線4が過負荷状態であると判定した場合に、当該送電線4に接続されている分散形電源装置50からの電力供給量を減らす制御を行う。
【0068】
これによれば、電力系統100において大規模変電所5端の送電線4よりも先に、電力系統100の別の箇所にある送電線4が過負荷状態になった場合であっても、その送電線4に流れる電流を減らして、過負荷状態を適切に解消することが可能となる。
【0069】
また、過負荷保護制御装置1は、上記制御として、過負荷状態である送電線4に接続されている分散形電源装置50を電力系統から解列させる。これによれば、簡単かつ確実に、過負荷状態の送電線4に流れる電流を減らすことができる。
【0070】
また、センサ装置2は、電力系統100における大規模変電所5端に接続された送電線4よりも先に送電量(電流)が送電容量を超える可能性がある送電線4に設けられている。これによれば、大規模変電所5端の送電線4の潮流状態を監視していた従来手法に比べて速やかに電力系統100における過負荷状態を検出して、過負荷状態を解消することができるので、電力の安定供給に資する。
【0071】
また、
図1に示したように、電力系統100において大規模変電所5側を上流とし、大規模変電所5の反対側を下流とした場合に、センサ装置2は、下流側に複数の分散形電源装置70が接続されている送電線4に設けられている。
このような送電線4は、大規模変電所5端に接続された送電線4よりも先に送電量(電流)が送電容量を超える可能性が高いので、より確実かつ速やかに、電力系統100における過負荷状態を検出することが可能となる。
【0072】
また、センサ装置2は、送電線4の電流を検出する電流センサ20を含む。これによれば、監視対象の送電線4に流れる電流の測定値を用いることにより、その送電線4が過負荷状態であるか否かを容易に判定することができる。
【0073】
また、センサ装置2は、送電線4の温度を検出する温度センサ21を含む。これによれば、監視対象の送電線4の温度(または、周辺の温度)に応じた適切な送電容量を設定することができるので、そのときの周辺環境に応じた適切な過負荷状態の判定が可能となる。
【0074】
また、集約装置3と過負荷保護制御装置1とは、光ファイバ複合架空地線(OPGW)44を介して測定データの送受信を行う。これによれば、集約装置3に対して遠隔地に設置された過負荷保護制御装置1に測定データを送信するための新たな設備を導入する必要がないので、本実施の形態に係る過負荷保護制御システム10の構築に要する費用を抑えることが可能となる。
【0075】
また、過負荷保護制御装置1は、過負荷継電器(OLR)である。これによれば、送電線の過負荷状態の判定処理と、遠隔地にある分散形電源装置70の電力系統100に対する連系および解列の制御とを一つの装置で実現することができる。
【0076】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本願発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0077】
例えば、
図1に示したように、電力系統100の一か所の送電線4にセンサ装置2を設ける場合を例示したが、大規模変電所5端に接続された送電線4よりも先に送電量が送電容量を超える可能性がある送電線4が複数ある場合には、それぞれの送電線4にセンサ装置2を設けてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態では、集約装置3と過負荷保護制御装置1とは、光ファイバ複合架空地線(OPGW:Optical Ground Wire)44を介して通信を行う場合を例示したが、集約装置3と過負荷保護制御装置1との間の通信手法は、特に限定されない。例えば、集約装置3と過負荷保護制御装置1とは、インターネットに代表される公知の通信ネットワークや公知の移動体無線通信を利用してデータの送受信を行ってもよい。
【0079】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…過負荷保護制御装置(OLR)、2…センサ装置、3…集約装置、4,4_1,4_2…送電線、5…大規模変電所、6…配電用変電所、7,7_1~7_5…発電者、8…特別高圧需要家、10…過負荷保護制御システム、20…電流センサ、21…温度センサ、40…鉄塔、41…光ファイバ、42…光ファイバ用ジャンクションボックス(JB)、44…光ファイバ複合架空地線(OPGW)、70…分散形電源装置、71…遮断器、72…遮断制御装置、#1~#4…分岐点。