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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039195
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】高速炉の予熱電源システム
(51)【国際特許分類】
   G21D 1/02 20060101AFI20230313BHJP
   G21D 3/08 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
G21D1/02 C
G21D3/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146234
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】307041573
【氏名又は名称】三菱FBRシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】黒木 博▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】平松 貴志
(57)【要約】
【課題】高速炉の予熱電源システムにおいて、電源盤のメンテナンス性を保ったまま電源盤に接続されているケーブルの亘長を短くする。
【解決手段】原子炉容器室と接続されている冷却系配管と、冷却系配管を予熱するための複数の予熱ヒータと、冷却系機器とを有する、空気雰囲気の機器・配管室と、予熱ヒータに電源を供給するための電源部が設けられている電源室とを備え、冷却系配管は二重配管であり、冷却系機器は二重容器構造を有し、機器・配管室は、冷却系配管が複数のブロックに分割されており、分割されたブロック毎に予熱ヒータが冷却系配管に配置されており、電源部から供給された電源を複数の前記予熱ヒータに供給するか否かをブロック毎に切り換える、予熱電源盤を更に有する、予熱電源システム。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体金属を用いて原子炉の炉心を冷却する高速炉の予熱電源システムであって、
前記炉心を内包する原子炉容器が設けられている窒素雰囲気の原子炉容器室と接続されている冷却系配管と、
前記冷却系配管を予熱するための複数の予熱ヒータと、前記液体金属を循環させるための冷却系機器とを有する、空気雰囲気の機器・配管室と、
前記予熱ヒータに電源を供給するための電源部が設けられている電源室と
を備え、
前記冷却系配管は、前記液体金属を移送するための内管と、前記内管の周囲を囲うように設けられている外管とを含む二重配管であり、
前記冷却系機器は、前記液体金属を内包する内部機器と、前記内部機器を覆うように設けられている外筒容器とを含む二重容器構造を有し、
前記機器・配管室は、
前記冷却系配管が複数のブロックに分割されており、
分割されたブロック毎に前記予熱ヒータが前記冷却系配管に配置されており、
前記電源部から供給された電源を複数の前記予熱ヒータに供給するか否かをブロック毎に切り換える、予熱電源盤を更に有する、
予熱電源システム。
【請求項2】
前記機器・配管室は、前記冷却系配管の分割されたブロック毎に配置されており、前記冷却系配管の温度を検出するための複数の温度センサを更に有し、
1つのブロックの前記温度センサの温度検出結果に基づき、前記1つのブロックの前記予熱ヒータに電源を供給するか否かを判定して、判定結果に基づく制御信号を前記予熱電源盤に供給する予熱制御盤を更に備える、
請求項1に記載の予熱電源システム。
【請求項3】
前記予熱制御盤から前記予熱電源盤に前記制御信号を伝送する信号線は、プラスチック材料の被覆で覆われた多芯ケーブルである、
請求項2に記載の予熱電源システム。
【請求項4】
前記機器・配管室には、複数の前記予熱ヒータと前記予熱電源盤が設けられており、複数の前記予熱ヒータのケーブルと、前記予熱電源盤とにそれぞれ電気的に接続されている端子箱を更に有し、
前記端子箱と前記予熱電源盤との間のケーブルは、プラスチック材料の被覆で覆われた多芯ケーブルである、
請求項1から3のいずれか一項に記載の予熱電源システム。
【請求項5】
前記電源部は、3つの電圧線と1つの中性線との4つの配電線を用いて三相交流電流を伝送する三相4線式配電線を有し、
複数の前記予熱ヒータは、一端が前記中性線と共通に接続されており、他端が3つの前記電圧線のうち対応する1つの前記電圧線に接続されている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の予熱電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速炉の予熱電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の冷却に液体金属を使用する高速炉の予熱電源システムが知られている。このような予熱電源システムは、冷却材の液体金属を受け入れる前に配管及び機器をヒータで予熱して、配管及び機器に急激な熱変化を与えないようにすると共に、液体金属の凍結を防止していた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-142391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような予熱電源システムによる配管及び機器の予熱は、冷却材として循環させる液体金属にナトリウムを用いるので、ナトリウムが漏洩した際に空気と反応することを防止すべく、窒素雰囲気にした部屋内で行っていた。この場合、作業者は、窒素雰囲気の部屋へ容易に出入りすることができないので、窒素雰囲気の部屋とは異なる空気雰囲気の部屋にヒータに電源を供給するための電源盤を配置して、電源盤を容易にメンテナンスできるようにしていた。この場合、電源盤とヒータとが別々の部屋に配置されるので、ケーブル亘長が長くなってしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、高速炉の予熱電源システムにおいて、電源盤のメンテナンス性を保ったまま電源盤に接続されているケーブルの亘長を短くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、液体金属を用いて原子炉の炉心を冷却する高速炉の予熱電源システムであって、前記炉心を内包する原子炉容器が設けられている窒素雰囲気の原子炉容器室と接続されている冷却系配管と、前記冷却系配管を予熱するための複数の予熱ヒータと、前記液体金属を循環させるための冷却系機器とを有する、空気雰囲気の機器・配管室と、前記予熱ヒータに電源を供給するための電源部が設けられている電源室とを備え、前記冷却系配管は、前記液体金属を移送するための内管と、前記内管の周囲を囲うように設けられている外管とを含む二重配管であり、前記冷却系機器は、前記液体金属を内包する内部機器と、前記内部機器を覆うように設けられている外筒容器とを含む二重容器構造を有し、前記機器・配管室は、前記冷却系配管が複数のブロックに分割されており、分割されたブロック毎に前記予熱ヒータが前記冷却系配管に配置されており、前記電源部から供給された電源を複数の前記予熱ヒータに供給するか否かをブロック毎に切り換える、予熱電源盤を更に有する、予熱電源システムを提供する。
【0007】
前記機器・配管室は、前記冷却系配管の分割されたブロック毎に配置されており、前記冷却系配管の温度を検出するための複数の温度センサを更に有し、前記予熱電源システムは、1つのブロックの前記温度センサの温度検出結果に基づき、前記1つのブロックの前記予熱ヒータに電源を供給するか否かを判定して、判定結果に基づく制御信号を前記予熱電源盤に供給する予熱制御盤を更に備えてもよい。
【0008】
前記予熱制御盤から前記予熱電源盤に前記制御信号を伝送する信号線は、プラスチック材料の被覆で覆われた多芯ケーブルであってもよい。
【0009】
前記機器・配管室には、複数の前記予熱ヒータと前記予熱電源盤が設けられており、複数の前記予熱ヒータのケーブルと、前記予熱電源盤とにそれぞれ電気的に接続されている端子箱を更に有し、前記端子箱と前記予熱電源盤との間のケーブルは、プラスチック材料の被覆で覆われた多芯ケーブルであってもよい。
【0010】
前記電源部は、3つの電圧線と1つの中性線との4つの配電線を用いて三相交流電流を伝送する三相4線式配電線を有し、複数の前記予熱ヒータは、一端が前記中性線と共通に接続されており、他端が3つの前記電圧線のうち対応する1つの前記電圧線に接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高速炉の予熱電源システムにおいて、電源盤のメンテナンス性を保ったまま電源盤に接続されているケーブルの亘長を短くできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の予熱電源システム10の構成例を示す。
図2】本実施形態に係る予熱電源システム20の構成例を示す。
図3】本実施形態に係る電源部141から予熱ヒータ121までの電気的な接続構成の第1例を示す。
図4】本実施形態に係る電源部141から予熱ヒータ121までの電気的な接続構成の第2例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<従来の予熱電源システム10の構成例>
図1は、従来の予熱電源システム10の構成例を示す。図1は、液体金属を用いた冷却材が原子炉容器101、冷却系配管110、冷却系機器125を循環する高速炉の予熱電源システム10の一例である。予熱電源システム10は、窒素雰囲気の部屋において、液体金属を循環させる配管及び機器を予熱する。予熱電源システム10は、原子炉容器室100と、冷却系配管110と、機器・配管室120と、冷却系機器125と、制御盤室130と、電源室140とを備える。
【0014】
原子炉容器室100は、原子炉容器101が設けられている。原子炉容器101は、炉心と炉内支持構造物とを収容し、内部の冷却材を保持する。原子炉容器101は、炉心を冷却するための液体金属を循環させるための冷却系配管110が接続されている。冷却系配管110は、原子炉容器室100と機器・配管室120との間で液体金属を移送可能とするように設けられている。
【0015】
液体金属は、一例として、金属ナトリウムを含む。金属ナトリウムは、空気、水、水蒸気をはじめ多くの物質と激しい化学反応を発生させる。そこで、原子炉容器室100及び機器・配管室120の内部は、液体金属が漏洩しても、発火、爆発等が生じることを防止する目的で、窒素雰囲気としている。なお、原子炉の構造、動作等は、既知の技術であり、詳細な説明は省略する。
【0016】
機器・配管室120は、冷却系配管110に接続されており、原子炉容器101との間で液体金属を循環させるためのポンプ等の冷却系機器125を有する。機器・配管室120は、原子炉容器室100に隣接していることが望ましい。機器・配管室120は、複数設けられていてもよい。図1は、1つの機器・配管室120が原子炉容器室100に隣接して設けられており、網掛けの原子炉容器室100及び機器・配管室120が窒素雰囲気になっている例を示す。機器・配管室120は、予熱ヒータ121と、温度センサ122と、端子箱123と、センサ接続盤124とを有する。
【0017】
予熱ヒータ121は、冷却系配管110及び冷却系機器125を予熱するために設けられている。図1は、予熱ヒータ121をHとして示した例を示す。予熱ヒータ121は、室温と比較して高温の液体金属が冷却系配管110に導入しても急激な熱変化が生じないように、併せて、液体金属の温度が融点よりも下がって凍結することを防止するために、液体金属を冷却系配管110及び冷却系機器125に導入する前から冷却系配管110及び冷却系機器125を予熱する。
【0018】
また、予熱ヒータ121は、温度センサ122の温度検出結果に基づいて冷却系配管110及び冷却系機器125の温度を安定化させるために制御される。例えば、機器・配管室120において、冷却系配管110及び冷却系機器125は複数のブロックに分割されており、分割されたブロック毎に予熱ヒータが冷却系配管110及び冷却系機器125に配置されており、予熱ヒータ121は、冷却系配管110及び冷却系機器125をブロック毎に出力制御される。
【0019】
温度センサ122は、冷却系配管110及び冷却系機器125の温度を検出する。図1は、温度センサ122をTとして示した例を示す。温度センサ122は、例えば、冷却系配管110の分割されたブロック毎に複数配置されており、各ブロックにおける冷却系配管110の温度を検出する。温度センサ122は、一例として、熱電対である。
【0020】
端子箱123は、複数の予熱ヒータ121のケーブルと電気的に接続されている。端子箱123は、機器・配管室120の外部に設けられている予熱電源盤142から入力した電源を、予熱ヒータ121毎に分散してそれぞれの予熱ヒータ121に供給する。予熱電源盤142については後述する。端子箱123は、機器・配管室120に複数設けられてよい。この場合、1つの端子箱123には、1又は複数のブロック毎に設けられている予熱ヒータ121に接続されていることが望ましい。
【0021】
センサ接続盤124は、複数の温度センサ122と後述する制御盤室130の予熱制御盤131との間に設けられており、複数の温度センサ122のケーブルと、予熱制御盤131とにそれぞれ電気的に接続されている。言い換えると、センサ接続盤124は、予熱制御盤131と複数の温度センサ122との間を電気的に中継する。センサ接続盤124は、機器・配管室120に複数設けられてよい。
【0022】
制御盤室130は、空気雰囲気の部屋であり、予熱制御盤131を有する。予熱制御盤131は、センサ接続盤124を介して複数の温度センサ122と電気的に接続されており、複数の温度センサ122の温度検出結果を取得する。また、予熱制御盤131は、予熱電源盤142に電気的に接続されており、予熱電源盤142に設けられている電磁接触器を開閉するための制御信号を予熱電源盤142に送信する。
【0023】
例えば、予熱制御盤131は、1つのブロックの温度センサ122の温度検出結果に基づき、1つのブロックの予熱ヒータ121に電源を供給するか否かを判定して、判定結果に基づく制御信号を予熱電源盤142に供給する。このように、予熱制御盤131は、冷却系配管110及び冷却系機器125が移送する液体金属の温度を略一定の温度範囲になるように、冷却系配管110及び冷却系機器125の温度をブロック毎に制御する。予熱制御盤131は、一例として、液体金属の温度を200℃程度の温度となるように、冷却系配管110の温度を制御する。
【0024】
電源室140は、空気雰囲気の部屋であり、電源部141と予熱電源盤142とを有する。電源部141は、予熱電源盤142を介して予熱ヒータ121に電源を供給する。
【0025】
予熱電源盤142は、電源部141が供給した電源を複数の予熱ヒータ121に供給するか否かをブロック毎に切り換える。予熱電源盤142は、予熱制御盤131から入力した制御信号に基づき、予熱ヒータ121に電源を供給するか否かを切り換える複数の電磁接触器を有する。
【0026】
制御盤室130及び電源室140は、保守、点検を容易にするため、原子炉容器室100から離れた位置に設けられている。以上のように、従来の予熱電源システム10は、原子炉容器室100から離れた位置に、予熱制御盤131及び予熱電源盤142が設けられており、窒素雰囲気の機器・配管室120の冷却系配管110及び冷却系機器125の温度を調節する。このような予熱電源システム10は、予熱電源盤142と予熱ヒータ121との間の距離が長くなってしまい、ケーブル亘長が長くなっていた。
【0027】
ここで、ケーブル亘長を短くするために、予熱電源盤142を機器・配管室120に配置することが考えられる。しかしながら、この場合、予熱電源盤142の保守及び点検をするには、ナトリウムをドレンした後に機器・配管室120の窒素を空気に置換してから行うことになり、メンテナンス性が悪くなってしまう。そこで、本実施形態に係る予熱電源システム20は、予熱電源盤142のメンテナンス性を保ったまま予熱電源盤142に接続されているケーブルの亘長を短くできるようにする。このような予熱電源システム20について、次に説明する。
【0028】
<予熱電源システム20の構成例>
図2は、本実施形態に係る予熱電源システム20の構成例を示す。図2は、図1と同様に、液体金属を用いた原子炉容器101、冷却系配管210、冷却系機器213を循環する高速炉の予熱電源システム10の一例である。予熱電源システム20において、図1に示された従来の予熱電源システム10の動作と略同一のものには同一の符号を付け、重複する説明を省略する。予熱電源システム20は、空気雰囲気の部屋において、液体金属を循環させる配管及び機器を予熱しつつ、液体金属に含まれているナトリウムが漏洩して空気と反応することを防止する。予熱電源システム20は、原子炉容器室100と、冷却系配管210と、機器・配管室120と、冷却系機器213と、制御盤室130と、電源室140とを備える。
【0029】
本実施形態に係る原子炉容器室100の原子炉容器101には、冷却系配管210が接続されている。冷却系配管210は、内部を冷却するための液体金属を循環させるための配管である。原子炉容器室100内の雰囲気は、従来と同様に、窒素雰囲気である。
【0030】
冷却系配管210は、原子炉容器室100と機器・配管室120との間で液体金属を移送可能とするように設けられている。冷却系配管210は、液体金属を移送するための内管211と、内管211の周囲を囲うように設けられている外管212とを含む二重配管である。また、冷却系機器213は、液体金属を内包する内部機器214と、内部機器214を覆うように設けられている外筒容器215とを含む二重容器構造である。このような二重配管は、移送する液体金属が内管211から漏洩しても、外管212が内管211を覆っているので、冷却系配管210の外部へと液体金属が漏洩することを防止できる。同様に、二重容器構造は、移送する液体金属が内部機器214から漏洩しても、外筒容器215が内部機器214を覆っているので、冷却系機器213の外部へと液体金属が漏洩することを防止できる。
【0031】
機器・配管室120は、このような冷却系配管210に接続されている。機器・配管室120は、冷却系配管210を二重配管とすることにより、また、冷却系機器213を二重容器構造とすることにより、液体金属の漏洩を防止できる。そこで、機器・配管室120の内部の雰囲気を空気雰囲気にすることができる。これにより、機器・配管室120への作業者等の出入りが容易になり、機器・配管室120内部の機器等のメンテナンス性が窒素雰囲気の時より向上する。そこで、本実施形態に係る機器・配管室120は、予熱ヒータ121、温度センサ122、端子箱123、及びセンサ接続盤124に加えて、予熱電源盤142を有する。
【0032】
端子箱123は、機器・配管室120において、複数の予熱ヒータ121と予熱電源盤142との間に設けられており、複数の予熱ヒータ121のケーブルと、予熱電源盤142とにそれぞれ電気的に接続されている。言い換えると、端子箱123は、予熱電源盤142の電磁接触器と予熱ヒータ121との間を電気的に中継する。
【0033】
端子箱123は、予熱電源盤142から入力した電源を、予熱ヒータ121毎に分散して接続されているケーブルを介してそれぞれの予熱ヒータ121に供給する。予熱電源盤142が機器・配管室120に設けられていることにより、予熱電源盤142と端子箱123とを接続するケーブルの亘長を短くできる。そして、予熱電源盤142と端子箱123とを接続するケーブルの数は、電源部141と予熱電源盤142とを接続するケーブルの数よりも多い。したがって、電源部141から端子箱123までのケーブルの物量を低減できる。
【0034】
ここで、予熱ヒータ121の1本当たりの電気容量は比較的小さく、また、予熱ヒータ121に接続されているケーブルは端子箱123にまとめて接続されている。そこで、端子箱123と予熱電源盤142との間のケーブルを多芯ケーブルにすることができ、これにより、ケーブルの本数を更に低減できる。
【0035】
なお、従来の窒素雰囲気の機器・配管室120の場合、ケーブルとして耐高温用に金属被覆の無機絶縁ケーブル(MIケーブル)が用いられていた。しかしながら、本実施形態に係る機器・配管室120は空気雰囲気なので、プラスチック材料の被覆で覆われた多芯ケーブルを用いることができる。プラスチック材料は、例えば、塩化ビニル混和物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ふっ素樹脂、ポリアミド等である。このようなプラスチック材料の多芯ケーブルは、安価で、かつ、取り扱いが容易なので、予熱電源システム20の構成を低コストにさせることができる。
【0036】
電源室140は、空気雰囲気の部屋であり、予熱ヒータ121に電源を供給するための電源部141が設けられている。電源部141は、機器・配管室120の予熱電源盤142に電源を供給する。
【0037】
以上の本実施形態に係る予熱電源システム20は、冷却系配管210を二重配管とすること及び冷却系機器213を二重容器構造とすることにより、従来は窒素雰囲気としていた機器・配管室120を空気雰囲気にして、機器・配管室120の保守、点検を容易に行えるようにする。これにより、従来は原子炉容器室100から離れた位置に設けられている電源室140に設けられていた予熱電源盤142を、機器・配管室120に設けることができ、メンテナンス性を保ちつつ、予熱電源盤142と端子箱123との間のケーブル亘長を短くすることができる。概算すると、予熱電源盤142から予熱ヒータ121間のケーブル亘長の短縮により、予熱電源システム20の全体のケーブルのうち、約6割を占める電力ケーブルの亘長を予熱電源システム10に対して3割程度に削減できることがわかった。
【0038】
なお、予熱電源盤142と端子箱123との間の複数のケーブルと、予熱制御盤131と予熱電源盤142とを接続している信号線とを、多芯ケーブルにする例を説明したが、これに限定されることはない。センサ接続盤124と予熱制御盤131とを接続する信号線も、プラスチック材料の被覆で覆われた多芯ケーブルとしてもよい。
【0039】
本実施形態に係る予熱電源盤142は、機器・配管室120に設けられているので、従来の予熱電源盤142が電源室140に設けられている構成と比較して、高温の環境で用いられることになる。この場合、予熱電源盤142の電磁接触器は、半導体スイッチよりも機械式スイッチを用いることが望ましい。これにより、機器・配管室120は、予熱電源盤142の温度を調節するための予熱電源盤142専用の空調設備を不要とすることができる。
【0040】
<電源部141から予熱ヒータ121までの電気的な接続構成の第1例>
図3は、本実施形態に係る電源部141から予熱ヒータ121までの電気的な接続構成の第1例を示す。電源部141は、電源母線201の三相電源を変圧した電源電圧を予熱電源盤142に供給する。電源母線201は、高速炉を構成する建物内に設けられている電源設備であり、例えば、定格6.6kVの三相高圧母線である。電源部141は、変圧器143と、パワーセンタ144とを含む。
【0041】
変圧器143は、三相3線式(3φ3W)の動力変圧器である。変圧器143は、例えば、Y-Y結線、Y-Δ結線、Δ-Δ結線等の変圧器である。図3は、変圧器143がΔ-Y結線の変圧器である例を示す。変圧器143の二次側の結線の中性点は、接地されており、一例として、一次側結線に入力する三相6.6kVの電圧を三相210Vに変圧する。
【0042】
パワーセンタ144は、変圧器143によって降圧された電圧を、所定の範囲の負荷を有する予熱電源盤142に給電する設備である。図3は、パワーセンタ144が三相3線210Vの電源電圧を予熱電源盤142に給電する例を示す。
【0043】
予熱電源盤142は、給電された三相3線210Vの電源電圧を単相の210V電源電圧として予熱ヒータ121のそれぞれに端子箱123を介して供給する。予熱電源盤142及び端子箱123の間は、多芯ケーブル230で接続されていることが望ましい。例えば、1つの予熱ヒータ121の両端に電磁接触器220を介して2つの電圧線が接続されており、予熱制御盤131から供給される制御信号に応じて、電磁接触器220を介して2つの電圧線が1つの予熱ヒータ121と電源部141とを電気的に接続して1つの予熱ヒータ121に210Vの電源電圧を供給する。
【0044】
以上のように、第1例の接続構成の電源部141は、動力負荷への電源供給として一般的な三相3線式の動力変圧器を用いているが、これに限定されることはない。電源部141は、同じ電源母線201を用いてより大きい電源電圧を予熱ヒータ121に供給する構成を有してもよい。このような構成について、次に説明する。
【0045】
<電源部141から予熱ヒータ121までの電気的な接続構成の第2例>
図4は、本実施形態に係る電源部141から予熱ヒータ121までの電気的な接続構成の第2例を示す。電源部141は、電源母線201の三相電源を変圧した電源電圧を予熱電源盤142に供給する。電源部141は、変圧器143と、パワーセンタ144とを含む。
【0046】
変圧器143は、三相3線式の電源母線201からの3つの電圧線と中性線との4線で送電する。言い換えると、電源部141は、3つの電圧線と1つの中性線との4つの配電線を用いて三相交流電流を伝送する三相4線式(3φ4W)420V配電線の変圧器143を有する。ここで、中性線と各相の間の電圧は、いずれも240Vの単相電圧となる。そして、パワーセンタ144は、変圧器143によって降圧された電圧を、所定の範囲の負荷を有する予熱電源盤142に給電する。
【0047】
そして、複数の予熱ヒータ121は、一端が中性線と共通に接続されており、他端が3つの電圧線のうち対応する1つの電圧線に接続されている。これにより、予熱電源盤142は、給電された三相4線420Vの電源電圧を単相の240V電源電圧として予熱ヒータ121のそれぞれに供給する。
【0048】
例えば、1つの予熱ヒータ121の両端に電磁接触器220を介して1つの中性線と1つの電圧線が接続されており、予熱制御盤131から供給される制御信号に応じて、電磁接触器220を介して1つの中性線と1つ電圧線が1つの予熱ヒータ121と電源部141とを電気的に接続して、1つの予熱ヒータ121に240Vの電源電圧を供給する。
【0049】
以上のように、図4に示す三相4線式の電源部141は、図3に示す三相3線式の電源部141と比較して、三相の線間電圧を高くすることができる。これにより、三相の相電流を従来よりも小さくすることができ、予熱電源盤142から予熱ヒータ121の間のケーブルの電線断面積を小さくすることができる。
【0050】
例えば、図4の例の場合、図3の例と比較して、予熱電源盤142から予熱ヒータ121の間のケーブルの電線断面積を1/31/2から4/(3×31/2)程度に小さくできる。したがって、予熱電源システム20は、三相4線式の電源部141を用いることにより、電源部141から予熱ヒータ121までのケーブルの物量を低減できる。また、ケーブルの断面積を小さくし、かつ、ケーブルに流れる電流を小さくすることができるので、より多くのケーブルをまとめて1つの多芯ケーブル230とすることができる。
【0051】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0052】
10 予熱電源システム
20 予熱電源システム
100 原子炉容器室
101 原子炉容器
110 冷却系配管
120 機器・配管室
121 予熱ヒータ
122 温度センサ
123 端子箱
124 センサ接続盤
125 冷却系機器
130 制御盤室
131 予熱制御盤
140 電源室
141 電源部
142 予熱電源盤
143 変圧器
144 パワーセンタ
201 電源母線
210 冷却系配管
211 内管
212 外管
213 冷却系機器
214 内部機器
215 外筒容器
220 電磁接触器
230 多芯ケーブル
図1
図2
図3
図4