(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039239
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】レーザアブレーションを実施するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/351 20140101AFI20230313BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20230313BHJP
【FI】
B23K26/351
B23K26/066
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021146300
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】518053334
【氏名又は名称】エム-ソルブ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】M-SOLV LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アダム ノース ブラントン
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD04
4E168AD18
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA46
4E168EA19
4E168JB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レーザアブレーションを実行するための方法および装置を提供する。
【解決手段】一構成によれば、紫外線レーザビーム8が、マスク10によって画定されるアブレーションパターンの一部を材料層上に画像化するために、マスク10を通して方向付けられる。レーザビーム8は、アブレーションパターンの異なる部分を層4の異なるそれぞれの領域上に順次画像化するために、マスク10上で走査される。レーザビーム8は、20ピコ秒未満のパルス長を有する超高速パルスレーザビームを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザアブレーションを実施する方法であって、
マスクを通して、前記マスクによって画定されるアブレーションパターンの一部を材料層上に画像化するために、紫外線レーザビームを方向付けるステップと、
前記アブレーションパターンの異なる部分を前記層の異なるそれぞれの領域上に順次画像化し、それにより、前記アブレーションパターンに対応する構造を前記層にアブレーションするために、前記マスク上で前記レーザビームを走査するステップとを含み、
前記レーザビームは、20ピコ秒未満のパルス長を有する超高速パルスレーザビームを含む、方法。
【請求項2】
前記アブレーションパターンに対応する前記構造は、開口部の規則的なアレイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開口部の少なくともサブセットのすべては、略同じサイズおよび形状を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記開口部の各々は、前記レーザビームの下流方向に減少する断面積を有するようにテーパ状になっている、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記開口部のうちの1つ以上の各々について、前記マスクでの前記レーザビームのフルエンスは、前記開口部の形成中に変化し、前記変化は、前記材料層の異なる深さにある前記開口部の部分の形成中に前記フルエンスが異なり、それによって前記材料層の深さの関数として前記開口部のテーパ角度の変化を制御する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方向付けするステップおよび前記走査するステップは、複数のマスクパターンに対して繰り返され、各々のマスクパターンは、異なる深さでの前記テーパ状の開口部の断面積を画定する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記アブレーションパターンの各々の画像化部分は、前記層内に複数の開口部を形成することに寄与する、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各々の画像化部分に対応する前記複数の開口部は、少なくとも100個の開口部を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アブレーションパターンの異なる部分の前記連続的な画像化は、前記層に少なくとも100000個の開口部を形成することに寄与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アレイのピッチは10ミクロンよりも小さい、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方向付けするステップおよび前記走査するステップは、異なるそれぞれのアブレーションパターンを画定する複数のマスクパターンに対して繰り返される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方向付けするステップおよび前記走査するステップの前記繰り返しは、異なるレーザアブレーションパターンを前記層の同じまたは重複する領域に適用する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のマスクパターンは、別個のマスク上に提供される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のマスクパターンは、同じマスクの異なる領域に提供される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
前記層は金属層を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方向付けするステップおよび前記走査するステップは、前記マスクに対する前記層の複数の異なる位置に対して繰り返され、それによって、前記層上の複数の異なる位置で前記アブレーションパターンに対応する前記構造をアブレーションする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記構造は、有機発光分子ベースのディスプレイの製造中に有機発光分子を堆積させるための蒸発マスクの一部を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
有機発光分子を堆積させる方法であって、
請求項17に記載の方法を実施することにより蒸発マスクを形成するステップと、
前記蒸発マスクによって画定されたパターンで有機発光分子を堆積させるために、前記蒸発マスクを使用するステップとを含む、方法。
【請求項19】
レーザアブレーションを実施するための装置であって、
20ピコ秒未満のパルス長を有する超高速パルスレーザビームを生成するように構成された紫外線レーザと、
アブレーションパターンを画定するマスクと、
前記マスクを通して前記レーザビームを方向付けて、前記アブレーションパターンの一部を材料層上に画像化するように構成された光学システムと、
前記マスク上で前記レーザビームを走査して、前記アブレーションパターンの異なる部分を前記層上に順次画像化し、それにより、前記アブレーションパターンに対応する構造を前記層内にアブレーションするように構成された走査装置とを含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にファインメタルメッシュを形成するための、レーザアブレーションを実行するための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ファインメタルメッシュ(FMM)は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイの製造に使用される。具体的には、ディスプレイの製造でOLED蒸着マスクとして使用される。FMMは、OLED分子がディスプレイ上のどこに堆積されるかを画定し、最終的にOLEDディスプレイの解像度を決定する。
【0003】
ファインメタルメッシュを製造するための現在の技術には、フォトリソグラフィーおよび電鋳プロセスが含まれる。しかしながら、そのようなプロセスのコストは高く、そのような技術を使用して製造されたFMMを使用するOLEDディスプレイの解像度は、通常、600ピクセル/インチ(ppi)未満である。最新のアプリケーション、例えば携帯電話およびバーチャルリアリティのヘッドセットは、より高い解像度、例えば1000ppi以上の解像度が要求される。フォトリソグラフィーおよび電鋳プロセスによって製造されたFMMは、このような高解像度を達成するのに苦労している。
【0004】
FMMを製造するための他の従来技術は、単一のレーザビームを複数のレーザビームに分割し、これらのレーザビームを基板の表面を横切って走査して、アブレーションによってFMMを形成することを含む。このような技術は通常、フェムト秒パルス赤外線レーザを使用する。しかしながら、そのような技術は、複数のレーザビームを得るために複雑な投影光学系を必要とする。不可能ではないにしても、この技術を数千のレーザビームにスケールアップすることは困難であるため、この方法でFMMを製造できる速度は制限される。このようなシステムは、10μmのクリティカルディメンジョンと数百ドット/インチ(dpi)の解像度を有する開口部を備えたFMMを製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の実施形態は、上記で論じた問題の1つ以上および/または他の問題に少なくとも部分的に対処することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、レーザアブレーションを実施する方法であって、マスクを通して、マスクによって画定されるアブレーションパターンの一部を材料層上に画像化するために、紫外線レーザビームを方向付けるステップと、アブレーションパターンの異なる部分を層の異なるそれぞれの領域上に順次画像化し、それにより、アブレーションパターンに対応する構造を層にアブレーションするために、マスク上でレーザビームを走査するステップとを含み、レーザビームは、20ピコ秒未満のパルス長を有する超高速パルスレーザビームを含む、方法が提供される。
【0007】
したがって、マスクが形成されるアブレーションパターンを画定する方法が提供される。アブレーションパターンは、マスク内の複数の透明領域によって画定することができる。上記の従来技術と比較した場合、単一のレーザビームを使用して、マスク内の複数の透明領域を同時に照射し、それにより、アブレーションされる材料層内の対応する多数のフィーチャーのアブレーションに寄与することができる。これは、複雑なビーム分割およびバランス調整用光学系を必要とせずに達成され、非常に多数のフィーチャーの同時処理を達成するためにスケーリングすることができる。レーザ出力はアブレーションパターンの多くの異なるフィーチャーにわたって分散できるため、高いレーザ出力を使用できる。高出力レーザを使用すると、高スループットが促進される。紫外線照射を使用することで、リーズナブルな運用コストで高い空間分解能を実現できる。(レーザから直接個々のビームスポットを介してではなく)マスクを使用してアブレーションパターンを画定すると、マスクを照射するために使用されるレーザビームの要件を緩和しながら、アブレーションパターンを高精度で画定できる。レーザは、比較的低い解像度でマスク上を簡単に「流す」ことができる。
【0008】
一実施形態では、アブレーションパターンに対応する構造は、開口部の規則的なアレイを含む。開口部はすべて、略同じサイズおよび形状を有することができる。したがって、アブレーションパターンを使用してFMMを形成することができる。
【0009】
一実施形態では、アブレーションパターンの画像化部分は、層内に複数の開口部を形成することに寄与する。各々の画像化部分に対応する複数の開口部は、少なくとも100個の開口部を含むことができる。したがって、レーザパルスエネルギーは、複雑なビーム分割とバランス調整を必要とせずに、少なくとも100個の開口部にわたって拡散される。さらに、一実施形態では、アブレーションパターンの異なる部分の連続的な画像化は、層内に少なくとも100000個の開口部を形成することに寄与することができる。したがって、マスク上でレーザビームを走査するだけで、形成される開口部の数を大幅に増やすことができる。このアプローチは、単一のマスクを使用して、500000個を超える開口部、750000個を超える開口部、または100万個を超える開口部でさえ処理するようにスケールアップできる。
【0010】
一実施形態では、開口部の各々は、レーザビームの下流方向に減少する断面積を有するようにテーパ状になっている。次に、方向付けするステップおよび走査するステップを複数のマスクパターンに対して繰り返すことができ、各々のマスクパターンは、異なる深さでのテーパ状開口部の断面積を画定する。このアプローチにより、テーパ状開口部のプロファイルを効率的かつ高精度に制御できる。FMMの開口部のテーパを最適化すると、OLED分子のパターンの堆積中のパターンエッジのぼやけを最小限に抑えることで、FMMを使用するOLED製造プロセスのパフォーマンスを向上させることができる。典型的には、FMMのテーパ状の開口部は、OLED分子が上に堆積する基板に面するように(すなわち、基板から外側に開くように)配置される。テーパの角度を制御することで、高解像度で(許容されるテーパの最大量を制限する可能性がある)空間的に正確なFMMの提供と、(一般的に、テーパの量を増やすことで改善できる)FMMの開口部の側壁との望ましくない相互作用(衝突)によるOLED分子軌道のリダイレクトの最小化との間で最適なバランスを実現できる。
【0011】
上記のように、層は、(例えば、FMMを形成するために)金属層を含むことができる。金属層は、FMMの目的に応じて様々な組成を有することができる。金属層は、例えば、インバーなどの非常に低い熱膨張係数を有する材料から形成することができる。非金属材料を含む他の材料も使用することができる。層は、例えば、誘電体材料および/またはポリマーを含むことができる。
【0012】
一実施形態では、構造は、OLEDベースのディスプレイの製造中にOLED分子を堆積させるための蒸発マスクの一部を含む。したがって、本開示のレーザアブレーションを実行する方法を使用して蒸発マスクを形成し、得られた蒸発マスクを使用して、蒸発マスクによって画定されるパターンで有機発光分子を堆積させる、OLED分子を堆積させる方法を提供することができる。
【0013】
本発明の別の一態様によれば、レーザアブレーションを実施するための装置であって、
20ピコ秒未満のパルス長を有する超高速パルスレーザビームを生成するように構成された紫外線レーザと、アブレーションパターンを画定するマスクと、マスクを通してレーザビームを方向付けて、アブレーションパターンの一部を材料層上に画像化するように構成された光学システムと、マスク上でレーザビームを走査して、アブレーションパターンの異なる部分を層上に順次画像化し、それにより、アブレーションパターンに対応する構造を層内にアブレーションするように構成された走査装置とを含む、装置が提供される。
【0014】
ここで、本発明の実施形態を、例としてのみ、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】レーザアブレーションを実行するための装置の概略側面図である。
【
図2】
図1に示される装置で使用することができるマスクの上面図である。
【
図3】レーザビームがマスク上にどのように走査することができるかを示すマスクの上面図である。
【
図4】アブレーションパターンが層にアブレーションされている状態の、
図1に示される層の上面図である。
【
図5】テーパ状開口部のアブレーションの異なる段階を示す側面断面図である。
【
図6】テーパ状開口部のアブレーションの異なる段階を示す側面断面図である。
【
図7】テーパ状開口部のアブレーションの異なる段階を示す側面断面図である。
【
図8】マスクパターンが別個のマスク上に提供されている、層の同じ領域にわたる異なる走査のための複数のマスクパターンを示している。
【
図9】マスクパターンが同じマスクの異なる領域上に提供されている、層の同じ領域にわたる異なる走査のための複数のマスクパターンを示している。
【
図10】レーザエネルギー密度(フルエンス)を減少または増加させることによって形成される異なる開口部テーパプロファイルを示す側面断面図である。
【
図11】レーザエネルギー密度(フルエンス)を減少または増加させることによって形成される異なる開口部テーパプロファイルを示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、レーザアブレーションを実行するための例示的な装置2を示している。装置2は、超高速パルスレーザビーム8を提供するように構成された紫外線レーザ6を使用する。超高速パルスレーザビーム8は、20ピコ秒未満、任意選択で15ピコ秒未満、任意選択で10ピコ秒未満、任意選択で8ピコ秒未満、任意選択で6ピコ秒未満、任意選択で5ピコ秒未満のパルス長を有する。(
図2に示される)アブレーションパターン18を画定するマスク10が提供される。処理される材料層4は、支持体12(例えば、基板)上に提供される。支持体12は、支持体12をレーザビーム8の下の異なる位置にステッピングさせるための可動テーブル(図示せず)上に提供することができる。マスク10を通して層4上にレーザビーム8を方向付ける光学システム13が提供される。光学システム13は、アブレーションパターン18の一部を層4上に画像化する。
【0017】
走査装置14は、マスク10上でレーザビーム8を走査して、マスク10によって画定されるアブレーションパターン18の異なる部分を、層4の異なるそれぞれの領域に順次画像化する。それによってアブレーションパターンに対応する構造が、層4内にアブレーションされる。レーザビーム8は、通常、(例えば、適切な走査光学系による)レーザ6またはマスク10の対応する動きなしにマスク10上を走査される。
【0018】
紫外線波長の使用により、複雑なおよび/または高価な光学系を必要とせずに、高解像度で層4内に構造を形成することができる。通常、最高1000dpiの解像度が形成され、これには、例えば、約3μm以下のクリティカルディメンジョンを有するくぼみまたは開口部などのフィーチャーが含まれる。
【0019】
装置2は、装置2の全体的な動作を制御するためのコントローラ15をさらに含むことができる。コントローラ15は、(例えば、レーザがいつオンおよびオフになるかを制御するため、および/または1パルスあたりのエネルギーまたはパルス繰り返し率などのレーザのパラメータを変更するために)レーザ6、走査装置14、および(例えば、焦点高さを制御するために)光学システム13、ならびに(例えば、可動テーブルおよび関連するモータを介して)レーザ6に対する支持体12の移動の操作を制御することができる。
【0020】
一実施形態では、装置2は、マスク10から下流の(例えば、レンズを含む)光学系16をさらに含む。光学系16は、マスク10からのレーザ放射8を層4上に集束させることができる。一実施形態では、光学系16は、マスク10と層4との間に縮小を提供する。したがって、アブレーションによって層4上に形成されるフィーチャーは、マスク10内の対応するフィーチャーよりも小さい。このアプローチにより、マスク10でより広い面積にわたってレーザエネルギーを分配しながら、層4内に高解像度パターンを形成することができる。したがって、レーザエネルギー密度(フルエンス)は、マスク10では、そうでない場合よりも低くなる。これにより、より高いレーザパルスエネルギーおよびより高いレーザ出力を使用することが可能になり、これは、マスク10に損傷を与えるリスクなしにスループットを向上させる。さらに、マスク10は、層4で必要とされるパターンよりも低い解像度で製造することができ、これによりマスク10の製造が容易になる。
【0021】
いくつかの実施形態では、マスク10のアブレーションパターンに対応する層4内のアブレーション生成構造は、層4の開口部の規則的なアレイを含む。層4のアレイのピッチは、非常に小さく、例えば10ミクロン以下にすることができる。開口部の少なくとも1つのサブセットのすべては、略同じサイズおよび形状を有する、および/または別の方法で、OLEDベースのディスプレイの製造に使用するためのFMMの全部または一部を形成するのに適した方法で構成することができる。
図2は、そのようなアブレーションパターンを形成するための例示的なマスク10の上面図である。この例におけるマスク10は、透明領域20の規則的なアレイを含む。各々の透明領域20は、層4に形成されるそれぞれの開口部に対応する。マスク10上の透明領域20のピッチは、通常、縮小により層4内の対応する開口部のピッチよりも大きい。説明を容易にするために、
図2のマスク10は、比較的少数の透明領域20のみを含む。実際には、マスクごとにより多く(例えば、以下に説明するように、100000以上)の透明領域20が提供される可能性が高い。
【0022】
いくつかの実施形態では、マスク10内のアブレーションパターン18の各々の画像化部分は、層4内に複数の開口部を形成することに寄与する。複数の開口部は、好ましくは、少なくとも100個の開口部を含むことができる。例えば、層4内の各々の開口部は、マスク10上の対応する透明領域20を通してレーザ放射を方向付けることによって(部分的または完全に)形成することができ、アブレーションパターン18の画像化部分は、マスク10上の複数(例えば、100以上)のそのような透明領域20を同時に照射することによって形成することができる。このように多数の透明領域20を同時に照射することにより、同時に層4内の多数の開口部の形成に寄与することが可能である。これにより、利用可能なレーザパルスエネルギーを最大限に活用し、スループットを向上させることができる。走査するステップと組み合わせると、非常に多くの開口部をすばやく形成することができる。アブレーションパターンの異なる部分の連続的な画像化は、例えば、それぞれが少なくとも100個の開口部に寄与するアブレーションパターンの1000個以上の部分を介して、層内に少なくとも10000個の開口部を形成することに寄与することができる。
【0023】
図2に概略的に示される例では、マスク10によって画定されるアブレーションパターン18は、正方形の透明領域20のアレイを含む。他の実施形態では、透明領域20は、他の形状を有して、それにより、層4内に異なる形状のフィーチャーまたは開口部を形成することができる。透明領域20は、例えば、長方形、円形、または楕円形とすることができる。
【0024】
図3は、(レーザ6から見た)走査するステップ中のマスク10上のレーザビームスポット9の例示的な走査経路22を示している。レーザビームスポット9は、任意の所与の時間にレーザビーム8によって照射され、その時点で層4上に画像化されるアブレーションパターンの対応する部分(「画像化部分」)を画定するマスク10の部分である。走査経路22は、ラスター走査として説明することができる。他の走査経路を使用してもよい。走査経路22は、層4内で構造が必要とされない領域を回避するように適合することができる。走査経路22は、使用されるレーザ6の性質(例えば、出力および/またはマスク10でのスポットサイズ9)、マスク10内のアブレーションパターン18、および/または層4の特性などの他の要因を追加的または代替的に考慮することができる。
【0025】
図4は、マスク10(例えば、開口部の正方形アレイ)によって画定されたアブレーションパターン18に対応する構造24の層4内へのアブレーション後の層4の上面図である。構造24は、マスク10上での単一の走査によって、またはマスク上での複数の走査によって形成することができる。例えば、マスク10上の第1の走査において、構造のフィーチャーの少なくとも1つのサブセットは、層4を通してそれらの意図された深さの一部のみまでアブレーションされ、それにより、部分的に形成されたフィーチャーを提供することができる。走査プロセスを繰り返すことにより、各々の部分的に形成されたフィーチャーが完全に形成されるまで(例えば、開口部が層4を完全に貫通して延在するようにさせるために)、各々の部分的に形成されたフィーチャーを複数回照射することができる。このアプローチは、有利には、連続するアブレーションプロセス間で熱を放散させ、それにより、アブレーションの標的領域の外側の領域への望ましくない損傷を防ぐのに役立てることができる。一実施形態では、レーザビームスポット9は、
図3を参照して上で論じたように走査経路22に沿って複数回走査される。複数の走査は、プロセス中にマスク10と層4との間に相対的な動きが提供されることなく実行することができる。
【0026】
図4に示されるように、1つのマスク10によって提供されるアブレーションパターン18に対応する構造24は、処理される層4の小さな部分のみをカバーすることができる。したがって、この方法を繰り返して、層4の他の必要な部分を処理することができる。一実施形態では、ステップアンドスキャンプロセスが使用され、それによって、構造24が、マスク10に対して第1の位置に提供される層4で形成される。次に、層4をマスク10に対して第2の位置に移動させるために(通常、層4を移動し、マスク10および光学系16を所定の位置に維持したままにすることによって)、層4とマスク10との間に相対運動が提供され、走査プロセスが繰り返されて、前に形成されたインスタンスに隣接する構造24の別のインスタンスを形成する。次に、このプロセスを繰り返して、層4全体を処理することができる。したがって、層4上の複数の異なる位置でアブレーションパターンに対応する構造をアブレーションするために、上記の方向付けするステップおよび走査するステップを、マスク10に対する層4の複数の異なる位置に対して繰り返し、それにより、層4をステッピングすることなしに可能であるよりもはるかに大きな構造を層4に構築することができる。
【0027】
一実施形態では、
図5~
図7に示されるように、アブレーションによって形成された構造24の開口部25の各々は、レーザビーム8の下流方向に減少する断面積を有するようにテーパ状になっている。一実施形態では、テーパは、マスク10を通してレーザビーム8を層4上に方向付けることと、複数の異なるマスクパターンに対してマスク10上でレーザビーム8を走査することとを繰り返すことによって制御され、各々のマスクパターンは、異なる深さでのテーパ状の開口部25の断面領域を画定する。例えば、第1のマスクパターンは、層4に形成されるそれぞれの複数の開口部25に対応する第1の複数の透明領域20を備えてもよく、第2のマスクパターンは、同じそれぞれの複数の開口部25に対応する第2の複数の透明領域20を備えてもよく、第3のマスクパターンは、同じそれぞれの複数の開口部25に対応する第3の複数の透明領域20を備えてもよく、第1のマスクパターンの透明領域20は、第2のマスクパターンの透明領域20よりも大きく、第2のマスクパターンの透明領域は、第3のマスクパターンの透明領域20よりも大きい。第1のマスクパターンを使用した処理の例示的な結果は、直径26を有する浅いくぼみが形成される
図5に概略的に示されている。第2のマスクパターンを使用した処理の例示的な結果は、くぼみが深められ、より狭い直径28を有する
図6に概略的に示されている。第3のマスクパターンを使用した処理の例示的な結果は、アブレーションが層4を貫通し、くぼみ25の最も深い点で直径30のテーパ状開口部25を形成した
図7に概略的に示されている。第1、第2、および第3のマスクパターンの透明領域のサイズの変化は、テーパに沿った異なる点で直径26、28、および30に影響を与えるため、テーパプロファイルを高精度で制御できる。
【0028】
異なるそれぞれのアブレーションパターンを画定する複数のマスクパターンに対して方向付けするステップと走査するステップとを繰り返すアプローチは、形成される構造が開口部の規則的な配列であり、異なるアブレーションパターンが開口部の異なる深さに対応する場合に限定されない。このアプローチは、異なる構造またはより複雑な構造に適用され得る。このアプローチは、くぼみまたは開口部の深さの関数として、層4内のくぼみまたは開口部の形状を制御することに利点がある場合はいつでも有用である。深さの関数として形状の制御を達成するために、通常、方向付けするステップと走査するステップの繰り返しは、層4の同じまたは重複する領域に異なるレーザアブレーションパターンの適用をもたらすことが望ましいであろう。典型的には、これは、マスク10と層4との間の相対位置を変更することなく、例えばそれが毎回処理される層4の同じ部分になるように、方向付けおよび走査を繰り返すことを含むであろう。複数のマスクパターンは、
図8に概略的に示されるように、別個のマスク101、102、および103上に、または
図9に概略的に示されるように、同じマスク10上の異なる領域10A、10B、10Cとして提供することができる。
【0029】
テーパを制御するための他のアプローチは、上記と組み合わせて、または代替として使用することができる。例えば、一クラスの実施形態では、テーパは、マスク10上へのレーザビーム8のフルエンス(パルスエネルギー密度-レーザパルスのエネルギーをレーザパルスが照射している面積で割ったもの)を制御することによって少なくとも部分的に制御される。例えば、レーザビーム8は、マスク10上で複数回走査することができ、走査のうちの少なくとも2つは、異なるフルエンスで実行される。層4に入射するときのレーザビーム8のフルエンスは、層内のアブレーションされたポケットの壁のテーパ角度に影響を与える。フルエンスが高いほど、テーパ角度が小さくなる(鉛直方向が大きくなる)。フルエンスが低いほど、テーパ角度が大きくなる(鉛直方向が小さくなる)。層4内の深さの関数としてフルエンスを変化させる能力を提供することは、層4内に形成された構造の内部形状(例えば、テーパプロファイル)を調整するための有用な追加の自由度を提供する。
【0030】
上記に基づいて、一クラスの実施形態では、1つ以上の開口部の各々に対して、マスク10でのレーザビーム8のフルエンスは、開口部の形成中に変化する。マスク10でのフルエンスを変化させると、層4でフルエンスの対応する変化が生じる。変化は、層4内の異なる深さにある開口部の部分の形成中に、マスク(したがって層4)でのフルエンスが異なるようなものであり、それにより、層4内における深さの関数としての開口部のテーパ角度の変化を制御する。
【0031】
一例の手順では、マスク10上での第1の走査は、マスク10で第1のフルエンスを提供するレーザビーム8を用いて実行される。走査は、例えば、
図3を参照して上記したような走査経路22をたどることができる。レーザビーム8のフルエンスは、マスク10上でのこの第1の走査の後、(
図5の状況と同様に)層4に形成された構造が層4の途中までしか延在しないようなものとすることができる。次に、マスク10上での第2の走査が、第1のフルエンスよりも低い第2のフルエンスを提供するレーザビーム8を用いて実行される。この走査の結果、第1の走査で形成された構造が深くされる。しかしながら、第2の走査中のレーザビーム8のより低いフルエンスのために、テーパ角度もまた増加する。次に、マスク10上での第3の走査が、第2のフルエンスよりも低い第3のフルエンスを提供するレーザビーム8を用いて実行される。この走査の結果は、アブレーションが層4の反対側に突破するまで、第2の走査で形成された構造が深くされることである。第3の走査中のレーザビーム8のより低いフルエンスは、新しく到達した深さで、テーパ角度がさらに増加することを意味する。
図10は、このような方法で作成された開口部のプロファイルを示している。したがって、このアプローチは、開口部のテーパの形状を制御するための代替または追加の方法を提供する。この実施形態は、3つの走査を参照することによって例示されてきたが、任意の数の走査を使用することができる。さらに、フルエンスは必ずしも上記の方法で調整する必要はなく、代わりに任意の適切な方法で変更することができる。連続走査でフルエンスが徐々に増加すると、
図11に示すタイプの開口部プロファイルが作成される。さらに、レーザビーム8のフルエンスは、少なくとも2つの走査において差がある限り、すべての走査で異なる必要はない。フルエンスは、異なる走査間で増加または減少させることができる。
【外国語明細書】