(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039278
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】造形物の製造方法及び造形物
(51)【国際特許分類】
B23K 9/04 20060101AFI20230313BHJP
B23K 9/14 20060101ALI20230313BHJP
B23K 9/032 20060101ALI20230313BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20230313BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230313BHJP
B23K 15/00 20060101ALI20230313BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230313BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230313BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B23K9/14 Z
B23K9/032 Z
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K15/00 501Z
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146372
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 保人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
(72)【発明者】
【氏名】黄 碩
【テーマコード(参考)】
4E001
4E066
4E081
4E168
【Fターム(参考)】
4E001AA03
4E001BB01
4E001BB07
4E001BB09
4E001BB11
4E001CA01
4E001CA02
4E001CA05
4E001DC01
4E001DD01
4E001QA03
4E066CC03
4E081BA04
4E081BA05
4E081BA08
4E081BB05
4E081BB07
4E081CA01
4E081CA10
4E081CA11
4E081CA14
4E081CA19
4E081CA20
4E081DA14
4E081DA74
4E081EA06
4E081EA07
4E081EA24
4E168BA35
4E168BA37
4E168BA85
4E168BA87
4E168CB03
4E168FB03
(57)【要約】
【課題】内面が滑らかな空洞部を有する造形物を容易に造形することが可能な造形物の製造方法及び造形物を提供する。
【解決手段】溶加材Mを溶融及び凝固させた溶着ビードBを積層させて空洞部31を有する造形物Wを造形する造形物の製造方法であって、隅部が円弧状に形成されて空洞部31の一部となる溝部35を土台40に形成する溝部形成工程と、溝部35に対して開放側からサポート部材37を嵌合させて溝部35を封鎖して空洞部31を形成する空洞部形成工程と、サポート部材37の外面を覆うように溶着ビードBを繰り返し形成し、サポート部材37を土台40に固定する固定工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させて空洞部を有する造形物を造形する造形物の製造方法であって、
隅部が円弧状に形成されて前記空洞部の一部となる溝部を土台に形成する溝部形成工程と、
前記溝部に対して開放側からサポート部材を嵌合させて前記溝部を封鎖して前記空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記サポート部材の外面を覆うように前記溶着ビードを繰り返し形成し、前記サポート部材を前記土台に固定する固定工程と、
を含む、
造形物の製造方法。
【請求項2】
前記空洞部形成工程において、平板部の両側縁に側板部が連設され、前記平板部と前記側板部との隅部が円弧状に形成された断面凹状の前記サポート部材を、開放側を前記溝部に向けて前記溝部に嵌め込む、
請求項1に記載の造形物の製造方法。
【請求項3】
前記サポート部材は、前記側板部の縁部が円弧状に形成されている、
請求項2に記載の造形物の製造方法。
【請求項4】
前記空洞部形成工程において、四隅が円弧状に形成された断面矩形状の筒状の前記サポート部材を前記溝部に嵌め込む、
請求項1に記載の造形物の製造方法。
【請求項5】
前記溝部形成工程において、
母材に前記溶着ビードを積層させて前記溝部の両側部を構成する壁部を形成し、
前記壁部における前記土台との隅部に前記溶着ビードを形成し、
前記壁部及び前記隅部の内面を切削加工する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項6】
前記溝部形成工程において、母材を切削して前記溝部を形成する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項7】
前記サポート部材を、前記空洞部の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所で前記溝部の縁部に接合させる、
請求項1~6のいずれか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項8】
前記溝部の開放側の縁部を切削し、前記溝部の縁部と前記サポート部材の外面との隙間に接合用の溶着ビードを充填して前記サポート部材を接合させる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の造形物の製造方法。
【請求項9】
溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードが積層された空洞部を有する造形物であって、
隅部が円弧状に形成されて前記空洞部の一部となる溝部が形成された土台と、
前記溝部の開放側から嵌合されて前記溝部を封鎖して前記空洞部を形成するサポート部材と、
前記サポート部材の外面を覆うように積層された前記溶着ビードからなる造形部と、
を備えた、
造形物。
【請求項10】
平板部の両側縁に側板部が連設されて前記平板部と前記側板部との隅部が円弧状に形成された断面凹状の前記サポート部材を備え、前記サポート部材の開放側が前記溝部に向けて前記溝部に嵌め込まれて前記空洞部が構成されている、
請求項9に記載の造形物。
【請求項11】
前記サポート部材は、前記側板部の縁部が円弧状に形成されている、
請求項10に記載の造形物。
【請求項12】
四隅が円弧状に形成された断面矩形状の筒状の前記サポート部材が前記溝部に嵌め込まれている、
請求項9に記載の造形物。
【請求項13】
前記サポート部材と前記溝部の縁部との間には、接合用の溶着ビードが充填され、
前記サポート部材は、前記接合用の溶着ビードによって前記溝部の縁部に接合されている、
請求項9~12のいずれか一項に記載の造形物。
【請求項14】
前記サポート部材が、前記空洞部の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所で前記溝部の縁部に接合されている、
請求項13に記載の造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物の製造方法及び造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段としての3Dプリンタのニーズが高まっており、特に金属材料への適用については航空機業界等で実用化に向けて研究開発が行われている。金属材料を用いた3Dプリンタは、レーザやアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させて造形物を造形する。
【0003】
特許文献1には、トーチによってビードを積層させて内部に空間があるような閉構造(中空構造)の3次元積層造形物を造形する際に、ビードの積層と切削の工程を繰り返すことで、造形物の側部の造形粗さを抑える造形方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空洞部を有する造形物を造形する場合、応力集中を低減させるために、空洞部の内面は平滑であることが望まれる。
【0006】
上記特許文献1の技術によれば、空洞部分の内面の造形粗さをある程度抑えることができるが、空洞部分の内面を平滑に形成することは困難である。この場合、空洞部分の内面を切削工具によって切削しながら造形物を造形することが考えられるが、空洞部分は、造形が進むにしたがって切削工具を内部に挿し込んで切削するのが困難となる。
【0007】
そこで本発明は、内面が滑らかな空洞部を有する造形物を容易に造形することが可能な造形物の製造方法及び造形物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は下記構成からなる。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させて空洞部を有する造形物を造形する造形物の製造方法であって、
隅部が円弧状に形成されて前記空洞部の一部となる溝部を土台に形成する溝部形成工程と、
前記溝部に対して開放側からサポート部材を嵌合させて前記溝部を封鎖して前記空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記サポート部材の外面を覆うように前記溶着ビードを繰り返し形成し、前記サポート部材を前記土台に固定する固定工程と、
を含む、
造形物の製造方法。
(2) 溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードが積層された空洞部を有する造形物であって、
隅部が円弧状に形成されて前記空洞部の一部となる溝部が形成された土台と、
前記溝部の開放側から嵌合されて前記溝部を封鎖して前記空洞部を形成するサポート部材と、
前記サポート部材の外面を覆うように積層された前記溶着ビードからなる造形部と、
を備えた、
造形物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内面が滑らかな空洞部を有する造形物を容易に造形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
【
図2】造形物の構造例を示す造形物の概略断面図である。
【
図3】造形物の製造方法を説明する図であって、(A)~(D)は、各工程における造形物の概略断面図である。
【
図4】固定工程における他の例を示す造形物の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の造形物Wを製造する製造システム100の模式的な概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、本構成の造形物の製造システム100は、溶接ロボット11と、ロボットコントローラ13と、溶加材供給部15と、溶接電源19と、制御部21と、を備える。
【0013】
溶接ロボット11は、多関節ロボットからなるアクチュエータであり、先端軸にトーチ23が支持される。トーチ23の位置及び姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。トーチ23は、溶加材供給部15から連続供給される線状の溶加材(溶接ワイヤ)Mをトーチ先端から突出した状態に保持する。
【0014】
トーチ23は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが溶接部に供給される。アーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する造形物に応じて適宜選定される。
【0015】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ23は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構によりトーチ23に送給される。そして、トーチ23を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、溶加材Mの溶融凝固体である溶着ビードBが形成される。
【0016】
溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビームやレーザにより加熱する場合、加熱量をさらに細かく制御でき、溶着ビードBの状態をより適正に維持して、造形物Wの更なる品質向上に寄与できる。
【0017】
溶加材Mは、あらゆる市販の溶接ワイヤを用いることができる。例えば、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用のマグ(MAG)溶接及びミグ(MIG)溶接ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)、軟鋼,高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ(JIS Z 3313)等で規定されるワイヤを用いることができる。
【0018】
溶加材Mとしてチタンのような活性金属を用いることもできる。その場合、溶接時に大気との反応による酸化、窒化を回避するため、溶接部をシールドガス雰囲気にすることが必要となる。
【0019】
ロボットコントローラ13は、制御部21からの指示を受けて、溶接ロボット11の各部を駆動し、必要に応じて溶接電源19の出力を制御する。
【0020】
制御部21は、CPU、メモリ、ストレージ等を備えるコンピュータ装置により構成され、予め用意された駆動プログラム、又は所望の条件で作成した駆動プログラムを実行して、溶接ロボット11等の各部を駆動する。
【0021】
上記構成の製造システム100は、設定された層形状データから生成されるトーチ23の移動軌跡に沿って、トーチ23を溶接ロボット11の駆動により移動させながら、溶加材Mを溶融させ、溶融した溶加材Mをベースプレート(母材)41上に供給する。これにより、ベースプレート41の上面に複数の線状の溶着ビードBを積層させた造形物Wを造形する。
【0022】
次に、本例で製造する造形物Wの一例について説明する。
図2は、造形物Wの構造例を示す造形物Wの概略断面図である。
【0023】
図2に示すように、造形物Wは、空洞部31を有している。空洞部31は、例えば、液体や気体が流される流路として用いられる。この造形物Wは、土台40と、サポート部材37と、造形部39とを備えている。土台40には、溝部35が形成されており、空洞部31は、溝部35とサポート部材37とから構成されている。
【0024】
土台40は、ベースプレート(母材)41と、一対の壁部43とから構成されており、壁部43は、ベースプレート41の上面に形成されている。壁部43は、ベースプレート41上に積層された複数の溶着ビードBからなるもので、互いに間隔をあけて形成されている。
【0025】
土台40に形成された溝部35は、ベースプレート41と壁部43とによって囲われた凹状部分からなるもので、空洞部31の一部を構成する。溝部35には、その隅部に、溶着ビードBsが隅肉溶接されて形成されている。溝部35は、壁部43及び隅部の溶着ビードBsの内面が切削加工されて平滑に形成され、隅部が円弧状に形成されている。
【0026】
サポート部材37は、金属材料から形成されたもので、平板部45と、側板部47とを有し、平板部45の両側縁に側板部47が一体に形成されている。これにより、サポート部材37は、一方側が開放された断面凹状に形成されている。
【0027】
このサポート部材37は、平板部45と側板部47との連設部分が円弧状に湾曲されている。これにより、平板部45と側板部47との隅部における内面が円弧状に形成されている。サポート部材37は、開放側を溝部35へ向けた状態で溝部35に嵌合されている。これにより、溝部35は、サポート部材37によって封鎖され、これにより、溝部35とサポート部材37とから空洞部31が形成されている。
【0028】
造形部39は、溶着ビードBを繰り返し形成することにより造形されている。造形部39は、サポート部材37の表面を覆うように造形されている。これにより、サポート部材37が壁部43に固定されている。この造形部39を構成する溶着ビードBのうちの溝部35の縁部とサポート部材37の側板部47との隅部に充填された溶着ビードBbは、接合用の溶着ビードであり、この溶着ビードBbによってサポート部材37が溝部35を構成する壁部43の縁部に接合されている。この接合用の溶着ビードBbによるサポート部材37の溝部35の縁部への接合箇所は、空洞部31の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所に合わされている。
【0029】
次に、本発明の造形物Wの製造方法について説明する。
図3は、造形物Wの製造方法を説明する図であって、(A)~(D)は、各工程における造形物Wの概略断面図である。
【0030】
(溝部形成工程)
図3(A)に示すように、製造システム100の溶接ロボット11を駆動させてトーチ23を移動させ、ベースプレート41の上面に溶着ビードBを積層させる。これにより、ベースプレート41と一対の壁部43とからなる断面凹状の溝部35を土台40に形成する。さらに、溝部35の隅部に、溶着ビードBsを隅肉溶接する。また、形成した溝部35に対して、壁部43及び隅部の内面を切削加工によって平滑に形成する。
【0031】
(空洞部形成工程)
図3(B)に示すように、土台40に形成した溝部35に対して、開放側を溝部35に向けてサポート部材37を嵌合させる。このようにすると、溝部35が断面凹状のサポート部材37によって封鎖され、空洞部31が形成される。
【0032】
(固定工程)
図3(C)に示すように、製造システム100の溶接ロボット11を駆動させてトーチ23を移動させ、サポート部材37の外面を覆うように、溶着ビードBを積層させる。これにより、サポート部材37を、溝部35を構成する壁部43に固定する。そして、
図3(D)に示すように、サポート部材37及び壁部43の上部に造形部39を造形する。これにより、空洞部31を有する造形物Wが得られる。
【0033】
ここで、サポート部材37の外面を覆うように形成した溶着ビードBのうちの溝部35の縁部とサポート部材37の側板部47との隅部に充填した溶着ビードBが接合用の溶着ビードBbとされる。そして、この溶着ビードBbによってサポート部材37が溝部35の縁部に接合される。この接合用の溶着ビードBbによるサポート部材37の溝部35の縁部への接合箇所は、空洞部31の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所に合わせるのが好ましい。
【0034】
また、
図4に示すように、溝部35にサポート部材37を嵌合させた際に溝部35の縁部とサポート部材37の外面との隙間が大きくなるように、切削加工によって溝部35の縁部を斜めに切削しておくのが好ましい。このようにすれば、接合用の溶着ビードBbによってサポート部材37を溝部35の縁部へ接合させる際に、より多くの溶着ビードBbを充填して接合力を高めることができる。
【0035】
以上、説明したように、本構成に係る造形物Wの製造方法及び造形物Wによれば、隅部が円弧状に形成された溝部35にサポート部材37を嵌合させて空洞部31を形成し、その後にサポート部材37の外面を覆うように溶着ビードBを繰り返し形成してサポート部材37を土台40に固定する。これにより、内面形状が滑らかな空洞部31を有する造形物Wを製造することができる。
【0036】
また、空洞部31における天井部分をサポート部材37によって形成するので、溶着ビードBによって天井部分を形成する場合と比べ、溶着ビードBの溶け落ちを抑えつつ円滑に空洞部31を形成することができる。
【0037】
また、サポート部材37によって空洞部31の強度が高められた耐荷重性に優れた造形物Wを製造することができる。
【0038】
しかも、隅部が円弧状に形成された断面凹状のサポート部材37を用いることにより、四隅が円弧状に形成されて応力集中が抑制された空洞部31を容易に形成することができる。
【0039】
また、溝部35にサポート部材37を嵌め込んで塞ぐ前に、溝部35の内面及び隅部を切削加工して滑らかにすれば、内面形状がさらに滑らかな空洞部31を有する造形物Wを製造することができる。
【0040】
また、空洞部31の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所でサポート部材37を溝部35の縁部に接合させる。これにより、造形後に空洞部31の長手方向に沿って曲げ力が付与されて主応力が生じた際に、サポート部材37における溝部35の縁部との接合箇所に対する主応力の影響を抑えることができる。
【0041】
次に、各変形例について説明する。
(変形例1)
図5は、変形例1に係る造形物Wの概略断面図である。
【0042】
図5に示すように、変形例1では、平板部45と側板部47との隅部が円弧状に形成され、さらに、側板部47の縁部が内側へ湾曲されて円弧状に形成されたサポート部材37を用いている。この変形例1では、溝部35に対してサポート部材37を嵌合させることにより、円弧状に形成された側板部47の縁部が、溶着ビードBsによって隅肉溶接された溝部35の隅部に突き合わされる。
【0043】
この変形例1によれば、サポート部材37は、平板部45と側板部47との隅部及び側板部47の縁部が円弧状に形成されているので、四隅における応力集中が抑制された空洞部31を容易に形成することができる。
【0044】
(変形例2)
図6は、変形例2に係る造形物Wの概略断面図である。
【0045】
図6に示すように、変形例2では、四隅が円弧状に形成された断面矩形状の筒状のサポート部材37を用いている。この変形例2では、溝部35に対してサポート部材37を嵌合させることにより、嵌合方向前方側の角部が、溶着ビードBsによって隅肉溶接された溝部35の隅部に突き合わされる。
【0046】
この変形例2によれば、筒状のサポート部材37を溝部35に機械的に嵌め込むことにより、内面形状が滑らかな空洞部31を容易に形成することができる。また、四隅が円弧状に形成された断面矩形状の筒状のサポート部材37を用いることにより、四隅が円弧状に形成されて応力集中が抑制された空洞部31を容易に形成することができる。
【0047】
(変形例3)
図7は、変形例3に係る造形物Wの概略断面図である。
【0048】
図7に示すように、変形例3では、ベースプレート41に切削加工を行うことにより、溝部35を形成する。そして、この溝部35を有するベースプレート41からなる土台40に対して、その溝部35にサポート部材37を嵌合させて空洞部31を形成する。
【0049】
この変形例3によれば、切削したベースプレート41の溝部35にサポート部材37を嵌め込んで空洞部31を形成するので、内面形状が滑らかな空洞部31を容易に形成することができる。また、切削によって溝部35を精密に形成することができ、溝部35に対してサポート部材37を高精度に嵌合させることができる。
【0050】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0051】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを積層させて空洞部を有する造形物を造形する造形物の製造方法であって、
隅部が円弧状に形成されて前記空洞部の一部となる溝部を土台に形成する溝部形成工程と、
前記溝部に対して開放側からサポート部材を嵌合させて前記溝部を封鎖して前記空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記サポート部材の外面を覆うように前記溶着ビードを繰り返し形成し、前記サポート部材を前記土台に固定する固定工程と、
を含む、造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、隅部が円弧状に形成された溝部にサポート部材を嵌合させて空洞部を形成し、その後にサポート部材の外面を覆うように溶着ビードを繰り返し形成してサポート部材を土台に固定する。これにより、内面形状が滑らかな空洞部を有する造形物を製造することができる。
また、空洞部における天井部分などの一部をサポート部材によって形成するので、溶着ビードによって天井部分を形成する場合と比べ、溶着ビードの溶け落ちを抑えつつ円滑に空洞部を形成することができる。
また、サポート部材によって空洞部の強度が高められた耐荷重性に優れた造形物を製造することができる。
【0052】
(2) 前記空洞部形成工程において、平板部の両側縁に側板部が連設され、前記平板部と前記側板部との隅部が円弧状に形成された断面凹状の前記サポート部材を、開放側を前記溝部に向けて前記溝部に嵌め込む、(1)に記載の造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、開放側を溝部に向けて断面凹状のサポート部材を溝部に機械的に嵌め込むことにより、内面形状が滑らかな空洞部を容易に形成することができる。また、隅部が円弧状に形成された断面凹状のサポート部材を用いることにより、四隅が円弧状に形成されて応力集中が抑制された空洞部を容易に形成することができる。
【0053】
(3) 前記サポート部材は、前記側板部の縁部が円弧状に形成されている、(2)に記載の造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、サポート部材の側板部の縁部が円弧状に形成されているので、四隅における応力集中が抑制された空洞部を容易に形成することができる。
【0054】
(4) 前記空洞部形成工程において、四隅が円弧状に形成された断面矩形状の筒状の前記サポート部材を前記溝部に嵌め込む、(1)に記載の造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、筒状のサポート部材を溝部に機械的に嵌め込むことにより、内面形状が滑らかな空洞部を容易に形成することができる。また、四隅が円弧状に形成された断面矩形状の筒状のサポート部材を用いることにより、四隅が円弧状に形成されて応力集中が抑制された空洞部を容易に形成することができる。
【0055】
(5) 前記溝部形成工程において、
母材に前記溶着ビードを積層させて前記溝部の両側部を構成する壁部を形成し、
前記壁部における前記土台との隅部に前記溶着ビードを形成し、
前記壁部及び前記隅部の内面を切削加工する、(1)~(4)のいずれか一つに記載の造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、溝部にサポート部材を嵌め込んで塞ぐ前に、溝部の内面及び隅部を切削加工して滑らかにすることにより、内面形状がさらに滑らかな空洞部を有する造形物を製造することができる。
【0056】
(6) 前記溝部形成工程において、母材を切削して前記溝部を形成する、(1)~(4)のいずれか一つに記載の造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、切削した溝部にサポート部材を嵌め込んで空洞部を形成するので、内面形状が滑らかな空洞部を容易に形成することができる。また、切削によって溝部を精密に形成することができ、溝部に対してサポート部材を高精度に嵌合させることができる。
【0057】
(7) 前記サポート部材を、前記空洞部の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所で前記溝部の縁部に接合させる、(1)~(6)のいずれか一つに記載の造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、空洞部の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所でサポート部材を溝部の縁部に接合させる。これにより、造形後に空洞部の長手方向に沿って曲げ力が付与されて主応力が生じた際に、サポート部材における溝部の縁部との接合箇所に対する主応力の影響を抑えることができる。
【0058】
(8) 前記溝部の開放側の縁部を切削し、前記溝部の縁部と前記サポート部材の外面との隙間に接合用の溶着ビードを充填して前記サポート部材を接合させる、(1)~(7)のいずれか一つに記載の造形物の製造方法。
この構成の造形物の製造方法によれば、切削した溝部の縁部とサポート部材の外面との隙間に接合用の溶着ビードを充填することにより、サポート部材を強固に接合させることができる。
【0059】
(9) 溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードが積層された空洞部を有する造形物であって、
隅部が円弧状に形成されて前記空洞部の一部となる溝部が形成された土台と、
前記溝部の開放側から嵌合されて前記溝部を封鎖して前記空洞部を形成するサポート部材と、
前記サポート部材の外面を覆うように積層された前記溶着ビードからなる造形部と、
を備えた、造形物。
この構成の造形物によれば、隅部が円弧状に形成された溝部にサポート部材が嵌合されて空洞部が形成され、サポート部材の外面を覆うように溶着ビードが積層されて造形部が造形されている。これにより、内面形状が滑らかな空洞部を有する造形物とすることができる。
また、サポート部材によって空洞部の強度が高められた耐荷重性に優れた造形物とすることができる。
【0060】
(10) 平板部の両側縁に側板部が連設されて前記平板部と前記側板部との隅部が円弧状に形成された断面凹状の前記サポート部材を備え、前記サポート部材の開放側が前記溝部に向けて前記溝部に嵌め込まれて前記空洞部が構成されている、(9)に記載の造形物。
この構成の造形物によれば、開放側が溝部に向けて断面凹状のサポート部材が溝部に嵌め込まれて内面形状が滑らかな空洞部が構成されている。また、サポート部材は、隅部が円弧状に形成された断面凹状であるので、四隅における応力集中が抑制された空洞部を有する造形物とすることができる。
【0061】
(11) 前記サポート部材は、前記側板部の縁部が円弧状に形成されている、(10)に記載の造形物。
この構成の造形物によれば、側板部の縁部が円弧状に形成されているので、四隅における応力集中が抑制された空洞部を有する造形物とすることができる。
【0062】
(12) 四隅が円弧状に形成された断面矩形状の筒状の前記サポート部材が前記溝部に嵌め込まれている、(9)に記載の造形物。
この構成の造形物によれば、断面矩形状の筒状のサポート部材が溝部に嵌め込まれて内面形状が滑らかな空洞部が構成されている。また、サポート部材は、四隅が円弧状に形成されているので、四隅における応力集中が抑制された空洞部を有する造形物とすることができる。
【0063】
(13) 前記サポート部材と前記溝部の縁部との間には、接合用の溶着ビードが充填され、
前記サポート部材は、前記接合用の溶着ビードによって前記溝部の縁部に接合されている、(9)~(12)のいずれか一つに記載の造形物。
この構成の造形物によれば、溝部の縁部とサポート部材の外面との間に充填された接合用の溶着ビードによってサポート部材が溝部の縁部に対して強固に接合される。
【0064】
(14) 前記サポート部材が、前記空洞部の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所で前記溝部の縁部に接合されている、(13)に記載の造形物。
この構成の造形物によれば、空洞部の長手方向に沿う曲げ力によって生じる主応力の予想最小箇所でサポート部材が溝部の縁部に接合されている。これにより、空洞部の長手方向に沿って曲げ力が付与されて主応力が生じた際に、サポート部材における溝部の縁部との接合箇所に対する主応力の影響を抑えることができる。
【符号の説明】
【0065】
31 空洞部
35 溝部
37 サポート部材
40 土台
41 ベースプレート(母材)
43 壁部
45 平板部
47 側板部
B,Bb,Bs 溶着ビード
M 溶加材
W 造形物