(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039279
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】検眼装置及び検眼装置用リモコントレー
(51)【国際特許分類】
A61B 3/028 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
A61B3/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146373
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 英一
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316AA15
4C316FA01
4C316FC01
4C316FC07
4C316FC14
4C316FY05
(57)【要約】
【課題】被検者の検眼を行う際、リモコンの操作形態変更による反射部材の脱着手間を要さず、リモコンと視標提示装置との間での通信不具合の発生を防止する検眼装置を提供すること。
【解決手段】検眼装置1Aは、検眼テーブル2と、視標提示装置3と、第1リモコン4Aと、第1リモコントレー5Aと、を備えている。視標提示装置3は、検眼テーブル2を挟んで被検者Pと対向する位置に近接して配置され、視標OBを提示する視標窓30aと、光信号を受信する受信部30bと、を有する。第1リモコン4Aは、受信部30bに光信号を送信する送信部41と、提示される視標OBの切替えや選択を行う操作部42と、を有する。第1リモコントレー5Aは、検眼テーブル2に設けられ、検眼テーブル2に載置された第1リモコン4Aを操作するとき、送信部41から受信部30bまでの間にて信号光を反射し、信号強度を反射無しに比べて高くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検眼テーブルと、
前記検眼テーブルを挟んで被検者と対向する位置に近接して配置され、被検者に視標を提示する視標窓と、光信号を受信する受信部と、を有する視標提示装置と、
前記視標提示装置の受信部に光信号を送信する送信部と、前記送信部からの光信号によって提示される前記視標の切替えや選択を行う操作部と、を有するリモコンと、
前記検眼テーブルと前記視標提示装置の少なくとも一方に設けられ、前記検眼テーブルに載置された前記リモコンを操作するとき、前記送信部から前記受信部までの間にて信号光を反射し、通信強さを反射無しに比べて高くする反射部材と、を備える
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項2】
請求項1に記載された検眼装置において、
前記反射部材として、前記検眼テーブルに設けられ、前記送信部から出射された信号光を反射し、光信号の信号強度を反射無しに比べて高くするリモコントレーを備え、
前記リモコントレーは、前記リモコンを載置するリモコン載置部と、前記リモコン載置部に前記リモコンを載置したときに前記送信部の直前位置に配置される反射板部と、を有する
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項3】
請求項2に記載された検眼装置において、
前記リモコンは、被検者に提示している視標を表示するモニター部を有し、
前記リモコントレーは、前記リモコン載置部の被検者側に、被検者の視線が前記モニター部に届くのを遮る高さに設定された衝立部を有する
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項4】
請求項3に記載された検眼装置において、
前記リモコントレーは、前記衝立部を、前記リモコン載置部の被検者側端部から上方に立ち上げて配置し、前記反射板部を、前記リモコン載置部に前記リモコンを載置したときに前記リモコンの前記送信部と前記衝立部との間の位置に傾斜配置する
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れか一項に記載された検眼装置において、
前記リモコンは、前記送信部として、リモコン正面に配置された第1送信部と、リモコン左側面に配置された第2送信部と、リモコン右側面に配置された第3送信部と、を有する
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載された検眼装置において、
前記反射部材として、前記リモコントレーに加え、前記視標提示装置に設けられ、前記受信部に向かってくる信号光を反射し、光信号の受光感度を反射無しに比べて高くする装置側反射板を備え、
前記装置側反射板は、前記受信部の上部位置に設けられ、被検者に向かって下向き傾斜角度を持たせて配置し、内面を信号光反射面とし、外面を外光反射面とする
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項7】
請求項6に記載された検眼装置において、
前記装置側反射板は、被検者側から前記視標提示装置を正面視したとき、反射板下端面を、前記受信部の正面視領域の上端境界線以上の高さ位置に設定する
ことを特徴とする検眼装置。
【請求項8】
検眼テーブルと、視標窓と受信部を有する視標提示装置と、送信部と操作部を有するリモコンと、を備える検眼装置において、前記検眼テーブルのテーブル面に設けられる検眼装置用リモコントレーであって、
前記リモコンを載置するリモコン載置部と、
前記リモコン載置部に前記リモコンを載置した際、前記送信部の直前位置に配置され、前記送信部から前記受信部に向かう光信号の信号強度を反射無しに比べて高くする反射板部と、を有する
ことを特徴とする検眼装置用リモコントレー。
【請求項9】
請求項8に記載された検眼装置用リモコントレーにおいて、
前記リモコンは、被検者に提示している視標を表示するモニター部を有し、
前記リモコン載置部の被検者側に、被検者の視線が前記モニター部に届くのを遮る高さに設定された衝立部を有する
ことを特徴とする検眼装置用リモコントレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検眼装置及び検眼装置用リモコントレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査窓を有する左右一対のレンズ室ユニットを持ち、検査窓に光学素子を切換え配置して被検眼の屈折力を自覚的に検査する検眼装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来装置は、検査窓に光学素子(レンズ)を切換え配置するための制御信号を光信号として送信するための送信部を有するコントローラ(以下、「リモコン」という。)と、検眼装置本体に設けられるとともにリモコンからの光信号を受信する受信部とを備える。送信部は発信する光信号の前方向から上方向にかけての光束の広がりの角度分布を横方向の角度分布に比べて大きくするように構成されている。なお、検眼装置本体は、検査窓のレンズを遠隔操作により切換えるレフラクターヘッドと呼ばれるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来公報には、検眼装置本体が設置されるテーブル上にリモコンを置いた状態で操作を行っても、リモコンと受信部が設けられている検眼装置本体との高低差が大きく、光信号が受信され難いと記載されている。そして、リモコンの送信部は、光束を偏向させる信号拡散部を、発光部に取り付けたり発光部から取り外したりできることが記載されている。しかし、リモコンは、テーブルの上に置いて操作する以外に、手に持って検眼装置本体の受信部に向けて操作することもあり、その都度、信号拡散部(光束偏向部材)を、リモコンの発光部から脱着させる手間を要する、という課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、被検者の検眼を行う際、リモコンの操作形態変更による反射部材の脱着手間を要さず、リモコンと視標提示装置との間での通信不具合の発生を防止する検眼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の検眼装置は、検眼テーブルと、視標提示装置と、リモコンと、反射部材と、を備えている。視標提示装置は、検眼テーブルを挟んで被検者と対向する位置に近接して配置され、被検者に視標を提示する視標窓と、光信号を受信する受信部と、を有する。リモコンは、視標提示装置の受信部に光信号を送信する送信部と、送信部からの光信号によって提示される視標の切替えや選択を行う操作部と、を有する。反射部材は、検眼テーブルと視標提示装置の少なくとも一方に設けられ、検眼テーブルに載置されたリモコンを操作するとき、送信部から受信部までの間にて信号光を反射し、通信強さを反射無しに比べて高くする。
【発明の効果】
【0007】
このように、リモコンを検眼テーブルの上に載置して操作するときは、反射部材による信号光の反射により通信強さが高くなることで、通信不具合の発生が防止される。一方、リモコンを手に持って操作するときは、反射部材をリモコン側に固定していないことで、反射部材をリモコンから取り外す手間を要さない。この結果、被検者の検眼を行う際、リモコンの操作形態を変更する毎に反射部材を脱着する手間を要さず、リモコンと視標提示装置との間での通信不具合の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1に係る検眼装置の全体外観を示す側面図である。
【
図2】実施例1に係る検眼装置における視標提示装置を示す斜視図である。
【
図3】実施例1に係る検眼装置における視標提示装置の視標提示光学系の一例を示す内部正面図である。
【
図4】実施例1に係る検眼装置における第1リモコン(リモコンの一例)を示す斜視図である。
【
図5】実施例1に係る検眼装置における第1リモコントレー(リモコントレーの一例)を示す斜視図である。
【
図6】背景技術の検眼装置において検眼テーブルに載置されたリモコンを操作する様子を示す説明図である。
【
図7】背景技術の検眼装置において検眼テーブルに載置されたリモコンを操作するときにリモコンを視標提示装置側に近づける様子を示す説明図である。
【
図8】背景技術の検眼装置において検眼テーブルに載置されたリモコンを操作するときに通信不具合が発生しやすいことを信号強度と受光感度により示す説明図である。
【
図9】実施例1に係る検眼装置においてリモコンを検眼テーブルの上に載置して操作する操作形態を示す作用説明図である。
【
図10】実施例1に係る検眼装置において第1リモコンを手に持って操作する操作形態を示す作用説明図である。
【
図11】実施例1に係る検眼装置において第1リモコンを検眼テーブルの上に載置して操作するときの信号強度の向上作用を示す作用説明図である。
【
図12】実施例1に係る検眼装置において第1リモコンを手に持って操作するときの信号強度の確保作用を示す作用説明図である。
【
図13】実施例2に係る検眼装置の全体外観を示す側面図である。
【
図14】実施例2に係る検眼装置における第2リモコン(リモコンの他例)を示す正面図である。
【
図15】実施例2に係る検眼装置における第2リモコントレー(リモコントレーの他例)を示す斜視図である。
【
図16】背景技術の検眼装置において検眼テーブルに載置されたリモコンを操作する様子を示す説明図である。
【
図17】実施例2に係る検眼装置において第2リモコンを検眼テーブルの上に載置して操作するときの信号強度及び受光感度の向上作用を示す作用説明図である。
【
図18】卓上型の視標提示装置を検眼テーブルの上ではなく専用台に載せる他例1に係る検眼装置を示す側面図である。
【
図19】視標提示装置を背の高い床置きタイプの視標提示装置とした他例2に係る検眼装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による検眼装置及び検眼装置用リモコントレーを実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例0010】
実施例1は、リモコンとして、複数個の送信部を有する第1リモコンを用い、反射部材として、検眼テーブルに設けられた第1リモコントレーを用い、赤外線通信による遠隔操作にて視標を提示する検眼装置の例である。ここで、「赤外線通信」とは、電磁波の一種である赤外線を利用して実現される無線データ通信のことである。
【0011】
なお、本明細書などの全般において無線式の遠隔操作機器(リモートコントローラ)のことを「リモコン」という文言で統一する。また、本明細書を通じて各図に記すように、左右方向軸をX軸といい、上下方向軸をY軸といい、被検者と視標提示装置とが対峙する前後方向軸をZ軸という。
【0012】
まず、
図1~
図5を参照して実施例1に係る検眼装置1Aの構成を説明する。
【0013】
実施例1の検眼装置1Aは、被検者Pに対して測定者Mが各種の視標OBを提示し、仮枠検眼によって提示された視標OBを視認する被検者Pの協力を得て被検眼Eの光学特性(屈折力など)を測定する装置である。
【0014】
検眼装置1Aは、
図1に示すように、検眼テーブル2と、視標提示装置3と、第1リモコン4A(リモコン)と、第1リモコントレー5A(反射部材、リモコントレー)と、検眼用仮枠6と、を備えている。
【0015】
検眼テーブル2は、被検者Pに対して視力などを検眼するときに視標提示装置3などを載置するテーブルである。検眼テーブル2は、テーブル板20と、図外のテーブル脚と、を有して構成されている。テーブル板20としては、例えば、被検者Pと視標提示装置3とが対峙するZ軸方向の長さ寸法を、X軸方向の長さ寸法より長くした長方形状の板が用いられる。
【0016】
検眼テーブル2のテーブル面20aには、Z軸方向の一端部に視標提示装置3が載置されている。テーブル板20の視標提示装置3とは反対のZ軸方向の他端側には、被検者Pが着座する図外の椅子が配置される。また、テーブル板20のX軸方向の2つの長尺端面側の少なくとも一方には、測定者Mが着座する図外の椅子が配置される。なお、椅子を無くし、被検者Pと測定者Mが立った状態のままで検眼しても良い。
【0017】
ここで、検眼装置1Aとしては、省スペース型の視標提示装置3を適用している。このため、被検者Pの被検眼Eから視標提示装置3の前面までの距離Lは1m以下になる。なお、場合によっては、距離Lが40cm~60cm程度の装置も知られている。
【0018】
視標提示装置3は、遠用検眼の視標OBであるランドルト環(虚像)を、被検眼Eの前方の遠用検眼距離(例えば、約5m程度の距離)に提示する装置である。ここで、遠用検眼の視標OBとしては、
図1に示すランドルト環に限られるものではなく、ランドルト環以外のEチャート、スネレン視標、などの視標であっても勿論良い。
【0019】
視標提示装置3は、内部に光学系を有し、検眼テーブル2を挟んで被検者Pと対向する位置に遠用検査距離よりも近接して配置され、
図2及び
図3に示すように、筐体30と、筐体30の内部に配置された視標提示光学系31と、を備えている。ここで、実施例1における視標提示装置3は、検眼テーブル2のテーブル面20aのうち、Z軸方向の一端部のテーブル面上に載置されている。
【0020】
筐体30は、
図2に示すように、中空のほぼ直方体形状を呈し、筐体前面に視標窓30aと受信部30bを有している。視標窓30aは、被検者Pに対向する筐体前面の上部位置に配置され、被検者Pに対して視標OBを提示する方形状の視標表示窓である。受信部30bは、筐体前面のうち視標窓30aの窓枠横位置(例えば、窓枠の高さ方向中央部横位置、又は、窓枠の高さ方向下部横位置)に配置され、第1リモコン4Aからの光信号を受け取る方形状の受光部領域である。
【0021】
ここで、「光信号」とは、第1リモコン4Aにより送信操作をしたとき、第1リモコン4Aの送信部41から出射される近赤外線光(780nmから3μmまでの波長の赤外線光)による特定のパルス信号のことをいう。
【0022】
視標提示光学系31は、
図3に示すように、表示器31aと、第1反射ミラー31bと、第2反射ミラー31cと、凸レンズ系31dと、光路折り曲げミラー31eと、を有している。
【0023】
表示器31aは、例えば、液晶表示装置から構成され、物点Oの位置に存在する表示画面に、第1リモコン4Aからの光信号を受け付ける図外の制御器からの制御出力信号に応じた視標像を表示する。また、この表示器31aは、筐体30の下部に設けられ、被検者Pの視線Sの方向(視標提示装置3の奥行き方向)に対して側方から光束K1を出射する位置に配置されている。このとき、光束K1は、被検者Pの視線Sに交差(実施例1では直交)する平面F(
図1を参照)に沿って出射される。
【0024】
第1反射ミラー31bは、表示器31aから出射された光束K1を反射し、反射光束を第2反射ミラー31cに向ける反射ミラーである。第2反射ミラー31cは、第1反射ミラー31bにより反射された反射光束K2を反射し、凸レンズ系31dに向ける反射ミラーである。
【0025】
凸レンズ系31dは、第2反射ミラー31cからの反射光束K3を透過し、この反射光束K3により虚像を形成するレンズ系である。この凸レンズ系15は、表示器13よりも上方の位置であって、表示器31aからの光束K1に干渉しない位置に配置されている。なお、
図3において、符号foは凸レンズ系31dの焦点を示している。
【0026】
光路折り曲げミラー31eは、凸レンズ系31dを通過した反射光束K3の光路を反射することで折り曲げ(
図1を参照)、被検者Pの被検眼Eの前方の所定距離の像点位置に虚像の視標OBを提示するミラーである。
【0027】
第1リモコン4Aは、測定者Mによる操作を受け付け、操作に応じた光信号を視標提示装置3の受信部30bへ向けて出射し、検眼中に提示される視標OBの切替えや選択を行うLED発光による赤外線リモコンである。第1リモコン4Aは、
図4に示すように、リモコン本体40と、送信部41と、操作部42と、モニター部43と、を有している。なお、「LED」とは、「Light Emitting Diode」の略称である。
【0028】
リモコン本体40は、全体形状が測定者Mが片手で持てる程度の薄い直方体形状に形成されており、樹脂材料で成形されている。リモコン本体40は、リモコン正面40aと、リモコン左側面40bと、リモコン右側面40cと、リモコン背面40dと、リモコン上面40eと、リモコン底面40fと、の6面により囲まれている。
【0029】
送信部41は、視標提示装置3の受信部30bに光信号を送信する。送信部41は、リモコン正面40aに配置された第1送信部41aと、リモコン左側面40bに配置された第2送信部41bと、リモコン右側面40cに配置された第3送信部41cと、を有している。第1送信部41aは、リモコン正面40aの中央部に配置される。第2送信部41bは、リモコン左側面40bのうち第1送信部41aに近い位置に配置される。第3送信部41cは、リモコン右側面40cのうち第1送信部41aに近い位置に配置される。
【0030】
ここで、リモコン上面40eとリモコン正面40aが交わる稜線位置には、第1送信部41aの位置を示す第1へこみ44aが形成されている。リモコン上面40eとリモコン左側面40bが交わる稜線位置には、第2送信部41bの位置を示す第2へこみ44bが形成されている。リモコン上面40eとリモコン右側面40cが交わる稜線位置には、第3送信部41cの位置を示す第3へこみ44cが形成されている。
【0031】
操作部42は、送信部41からの光信号によって提示される視標OBの切替え操作や選択操作を行う操作ボタンである。操作部42は、送信部選択ボタン群42aと、視標設定ボタン群42bと、電源ボタン42cと、を有している。
【0032】
送信部選択ボタン群42aは、リモコン本体40のリモコン上面40eのうち、リモコン背面40d側の位置に設けられた複数の押ボタンから構成されている。測定者Mは、この送信部選択ボタン群42aを操作することで、第1送信部41a~第3送信部41cの何れかを選択し、選択した送信部から光信号を送信させることができる。なお、第1送信部41a~第3送信部41cの全てから同時に光信号を送信させることもできる。
【0033】
視標設定ボタン群42bは、リモコン本体40のリモコン上面40eのうち、リモコン正面40aとリモコン背面40dの中間位置に設けられた複数の押ボタンから構成されている。測定者Mは、この視標設定ボタン群42bを操作することで、視標提示装置3の視標窓30aに表示させる視標OBを選択することができる。
【0034】
電源ボタン42cは、リモコン本体40のリモコン上面40eのうち、視標設定ボタン群42bのモニター部43側の位置に設けられた押ボタンによって構成されている。測定者Mは、この電源ボタン42cを操作することで、視標提示装置3のON/OFF動作を制御することができる。
【0035】
モニター部43は、被検者Pに提示している視標OBを、測定者Mが確認できるように表示するディスプレイである。モニター部43は、リモコン本体40のリモコン上面40eのうち、リモコン正面40a側に設けられた方形状のLCDディスプレイにより構成されている。なお、「LCD」とは、「Liquid Crystal Display(液晶ディスプレイ)」の略である。
【0036】
第1リモコントレー5Aは、検眼テーブル2のテーブル面20aに設けられ、第1リモコン4Aの送信部41から出射された信号光を反射し、光信号の信号強度を反射無しに比べて高くする検眼テーブル側反射部材の一例である。
【0037】
ここで、第1リモコントレー5Aは、検眼テーブル2のテーブル面20aに対し、両面テープなどを用い、光信号の信号強度が最も高くなる最適な位置に固設可能として設定しても良い。また、検眼テーブル2のテーブル面20aにトレー設置枠線などを表示しておき、第1リモコントレー5Aを、光信号の信号強度が最も高くなる最適な位置にいつでも設定できるようにしても良い。
【0038】
第1リモコントレー5Aは、
図5に示すように、リモコン載置部50と、反射板部51と、衝立部52と、リモコン位置決め部53と、を有している。
【0039】
リモコン載置部50は、第1リモコン4Aを載置するリモコン載置面50aを有している。例えば、測定者Mが被検者Pの右側位置であるときは、リモコン右側面40cをリモコン位置決め部53の位置決め面53aに押し当て、リモコン載置面50aに第1リモコン4Aが載置される。一方、測定者Mが被検者Pの左側位置であるときは、リモコン左側面40bをリモコン位置決め部53の位置決め面53aに押し当て、リモコン載置面50aに第1リモコン4Aが載置される。
【0040】
ここで、リモコン載置面50aには、第1リモコン4Aを少し沈み込ませて位置決め収納する凹部を形成しても良いし、第1リモコン4Aを磁気により吸着固定する磁気吸着構造を設けても良い。なお、凹部を形成したり、磁気吸着構造を設けたりした場合は、第1リモコン4Aが不用意に落下するなどのトラブルも防止できる。
【0041】
反射板部51は、リモコン載置部50に第1リモコン4Aを載置したときに反射面51aが送信部41の直前位置に配置される。反射面51aは、ミラーのような全反射面であっても、白色板のような拡散反射面であっても良い。そして、反射板部51は、リモコン載置部50に第1リモコン4Aを載置したときに第1リモコン4Aの送信部41と衝立部52との間の位置に適切な所定角度にて傾斜配置される。
【0042】
衝立部52は、リモコン載置部50の被検者側端部から上方に立ち上げて配置される。衝立部52の高さは、被検者Pが視線Sを下げても第1リモコン4Aのモニター部43に視線Sが届くのを遮る高さに設定される。
【0043】
第1リモコントレー5Aの場合、測定者Mが被検者Pの右側位置であるときは、第1リモコン4Aの第2送信部41bの直前位置に反射面51aが配置される(
図9を参照)。一方、測定者Mが被検者Pの左側位置であるときは、第1リモコン4Aの第3送信部41cの直前位置に反射面51aが配置される。
【0044】
検眼用仮枠6は、左右の仮枠に図外のトライアルレンズが着脱可能に設けられる検査用眼鏡フレームである。この検眼用仮枠6は、複数枚用意されているトライアルレンズを測定者Mが交換しながら検眼を行う仮枠検査において用いられる。
【0045】
次に、
図6~
図8を参照して検眼装置の背景技術について説明する。
【0046】
省スペース型の視標提示装置では、
図6及び
図7に示すように、被検眼から視標提示装置の前面までの距離Lは1m以下であって、40cmから60cmのものがある。
【0047】
このような視標提示装置で検眼を行う際は、長手のテーブルの端に視標提示装置を配置し、逆端側に被検者を座らせて行うことがある。このとき、測定者は視標提示装置と被検者の間のテーブル面にリモコンを置き、視標の切り替えなどの操作を行う。
【0048】
測定者は、被検者が見ている視標を同時に見ることが困難であるため、リモコンには小型のモニター部が備えられ、提示している視標の種類や向きをモニター上で確認することができ、被検者の応答の正誤を判断できる。被検者は、視標提示装置の視標窓越しに内部光学系により遠用検査距離に結像した虚像(視標像)を目視し、視標の向きや見え方につき応答する。
【0049】
しかし、
図6に示すように、被検者が視線Sを落とすと、テーブル上に置かれたリモコンのモニター部が見えてしまう。このため、本来の遠用視標が判別不可能な状態であっても、リモコンのモニター部の表示を見て回答してしまうことがあり、正しい検査が行えないことがある。
【0050】
レフラクターヘッドを用いて検眼する場合であれば、レフラクターヘッドに遮られて前下方のリモコンを見ることはできないが、仮枠による検眼を行う仮枠検眼の場合には、視界を遮るものが少ないため問題となる。また、仮枠検眼の場合、測定者はトライアルレンズを頻繁に交換しながらの検眼になる。このため、トライアルレンズを交換する毎に、リモコンを手に持って操作することは、無駄な動作が増えてしまう。したがって、特に、仮枠検眼の場合、リモコンはテーブル上に置いたまま操作、確認を行うことが多くなる。
【0051】
よって、リモコンをテーブル上に置いたまま操作する場合、測定者は被検者からリモコンのモニター部が見えにくくなるように、被検者からリモコンを遠ざけて置くようになる(
図7のRC1→RC2)。結果的に、リモコンは視標提示装置に近づくことになる。
【0052】
リモコンからの光信号を受信する視標提示装置の受信部は、
図7に示すように、テーブル面から所定の高さH(=300m~40cm程度)に配置されている。このため、リモコンの送信部の正面から視標提示装置の受信部の正面までの仰角θは、リモコン位置がRC1のときの第1仰角θ1からリモコン位置がRC2のときの第2仰角θ2(>θ1)というように、リモコンを視標提示装置に近づけるほど大きな角度になる。
【0053】
リモコンが赤外線リモコンのように光リモコンの場合、
図8に示すように、発光部(LED)から出射される信号強度(光強度)の分布は、発光部の正面方向が最も強く、正面方向からの角度が大きくなるに従い信号強度は低下する。視標提示装置の受光部(光センサ)の受光感度についても同様に、
図8に示すように、受光部の正面方向で最大となり、正面方向からの角度が大きくなるにしたがって弱くなる傾向がある。
【0054】
したがって、光リモコンが視標提示装置に近接し、光リモコンの発光部から視標提示装置の受光部への仰角が大きくなり、信号強度と受信感度が共に低下してしまうため、通信不具合が発生しやすくなる。
【0055】
これに対し、特開2004-329361号公報において、リモコンの発光部に、光束を偏向させる信号拡散部(光束偏向部材)を取り付ける検眼装置が提案されている。しかし、リモコンは、上記のように、テーブルの上に置いて操作する以外に、手に持って被検者の背後から視標提示装置の受信部に向けて操作することもある。
【0056】
リモコンを手に持って操作する場合、リモコンの発光部に信号拡散部を取り付けていると、リモコンの送信部からの受信部へ向かう光信号が拡散し、受信部への信号強度が低くなるため、信号拡散部を外す必要がある。一方、リモコンをテーブルの上に置いて操作する場合、リモコンの発光部から信号拡散部を外していると、リモコンの送信部から受信部へ向かう信号強度が低くなるため、信号拡散部を取り付ける必要がある。したがって、リモコンの操作形態を変更すると、その都度、信号拡散部を、リモコンの発光部から脱着させる手間を要する。
【0057】
上記背景技術での課題を解決したのが実施例1の検眼装置1Aである。以下、実施例1の検眼装置1Aにおける検眼作用を、
図9~
図12を参照して説明する。
【0058】
まず、被検者Pに対して視力検査を行う場合、被検者Pと視標提示装置3の位置関係を調整するアライメントが行われる。アライメントは、被検者Pを椅子に座らせ、被検眼Eから視標提示装置3の視標窓30aまでの距離Lが、予め定められた範囲内の検眼距離とされる。そして、被検眼Eの高さを、視標提示装置3の視標窓30aの中央部領域の高さに一致させるようにする(
図1を参照)。ここで、高さ調整については、例えば、椅子と検眼テーブル2の少なくとも何れか一方を昇降させても良いし、被検眼Eの高さに合わせて反射ミラー31eの角度を変更しても良い。一般的には、大まかな調整を椅子や検眼テーブル2の高さで行い、微調整を反射ミラー31eの角度変更で行う。
【0059】
アライメントを行った後、被検者Pに対して視力検査を行う場合、測定者Mを加えたときの第1リモコン4Aの操作形態としては、操作形態1(
図9)と操作形態2(
図10)との2つの形態がある。
【0060】
操作形態1は、
図9に示すように、第1リモコン4Aを検眼テーブル2の上に載置して操作する形態である。操作形態1では、検眼テーブル2の上に設定されている第1リモコントレー5Aに第1リモコン4Aが載置される。このとき、測定者Mが被検者Pの右側位置である
図9の場合には、リモコン右側面40cをリモコン位置決め部53の位置決め面53aに押し当て、リモコン載置面50aに第1リモコン4Aが載置される。
【0061】
第1リモコン4Aの載置によって、第1リモコン4Aの第2送信部41bの直前位置に反射面51aが配置される。そして、第1リモコン4Aの操作部42とモニター部43とは、測定者Mが正面向き(X軸方向)の状態で視標OBやボタンなどを視認できる配置とされる。よって、操作部42の電源ボタン42cをONとし、操作部42の送信部選択ボタン群42aにより第2送信部41bを含む送信部を選択することで、被検者Pに対して視力検査を開始する。
【0062】
視力検査を開始すると、測定者Mは、モニター部43に表示される視標OBを正面視により見ながら、操作部42の視標設定ボタン群42bに対する操作により視標OBの切替えや選択を行う。そして、測定者Mは、被検者Pの正誤応答に基づいて、検眼用仮枠6へのトライアルレンズの交換作業を行う。
【0063】
操作形態1での第1リモコン4Aと視標提示装置3との間での通信不具合の発生を防止する通信不具合防止作用を、
図11に基づいて説明する。
【0064】
操作形態1において、第1リモコン4Aの第2送信部41bから信号光をZ軸方向(被検者Pに向かう水平方向)に出射すると、第1リモコントレー5Aの反射板部51の反射面51aにて反射する。この反射により信号光の信号強度分布は、視標提示装置3の受信部30bへ向かう方向の信号強度が、信号光を反射しない場合に比べて高くなる。このため、検眼テーブル2の上に設定されている第1リモコントレー5Aに第1リモコン4Aを載置する操作形態1において、第1リモコン4Aと視標提示装置3との間での通信不具合の発生が防止される。
【0065】
操作形態2は、
図10に示すように、第1リモコン4Aを手に持って操作する形態である。第1リモコン4Aを検眼テーブル2の上に載置して操作する操作形態1から操作形態2へと変更するときは、第1リモコントレー5Aに載置されている第1リモコン4A(
図10の仮想線)を手に持って被検者Pの背面位置に移動する。操作形態2での第1リモコン4Aと視標提示装置3との間での通信不具合の発生を防止する通信不具合防止作用を、
図12に基づいて説明する。
【0066】
操作形態2の場合、第1リモコン4Aと視標提示装置3との距離が操作形態1の場合に比べて長くなり、第1リモコン4Aと視標提示装置3とが離れる。このため、第1リモコン4Aの第1送信部41aと視標提示装置3の受信部30bとがY軸方向やX軸方向にずれると、信号強度や受光感度が低下してしまうため、通信不具合が発生しやすくなる。
【0067】
これに対し、手に持っている第1リモコン4Aの第1送信部41aが向いている方向を視標提示装置3の受信部30bの位置に合わせることで、正面方向の信号強度が最も高い状態で使用することができる。このため、
図12に示すように、位置合わせ状態で測定者Mが、信号光を-Z軸方向(視標提示装置3に向かう水平方向)に出射することによって高い信号強度や高い受光感度が確保される。よって、第1リモコン4Aを手に持って操作する操作形態2において、第1リモコン4Aと視標提示装置3との間での通信不具合の発生が防止される。
【0068】
加えて、第1リモコン4Aを手に持って操作するときは、検眼テーブル2に設けられる第1リモコントレー5Aに反射板部51を一体に有する構成とし、リモコン側に反射部材を固定していない。よって、第1リモコン4Aを検眼テーブル2の上に載置して操作する操作形態1から第1リモコン4Aを手に持って操作する操作形態2に移行したとき、反射部材を第1リモコン4Aから取り外す手間を要さない。
【0069】
このように、検眼装置1Aによって被検者Pの検眼を行う際、第1リモコン4Aの操作形態を変更する毎に反射部材を脱着する手間を要さず、第1リモコン4Aと視標提示装置3との間での通信不具合の発生が防止される。
【0070】
以上説明したように、実施例1に係る検眼装置1Aにあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0071】
(1)検眼装置1Aは、検眼テーブル2と、視標提示装置3と、第1リモコン4Aと、反射部材と、を備えている。視標提示装置3は、検眼テーブル2を挟んで被検者Pと対向する位置に近接して配置され、被検者Pに視標OBを提示する視標窓30aと、光信号を受信する受信部30bと、を有する。第1リモコン4Aは、視標提示装置3の受信部30bに光信号を送信する送信部41と、送信部41からの光信号によって提示される視標OBの切替えや選択を行う操作部42と、を有する。反射部材は、検眼テーブル2と視標提示装置3の少なくとも一方に設けられ、検眼テーブル2に載置された第1リモコン4Aを操作するとき、送信部41から受信部30bまでの間にて信号光を反射し、通信強さを反射無しに比べて高くする。このため、被検者Pの検眼を行う際、第1リモコン4Aの操作形態を変更する毎に反射部材を脱着する手間を要さず、第1リモコン4Aと視標提示装置3との間での通信不具合の発生を防止することができる。
【0072】
ここで、「通信強さ」とは、検眼テーブル2に設けられる反射部材による「信号強度」と、視標提示装置3に設けられる反射部材による「受光感度」との両方の意味を含む上位概念の文言として用いる。
【0073】
(2)反射部材として、検眼テーブル2に設けられ、送信部41から出射された信号光を反射し、光信号の信号強度を反射無しに比べて高くする第1リモコントレー5Aを備える。第1リモコントレー5Aは、第1リモコン4Aを載置するリモコン載置部50と、リモコン載置部50に第1リモコン4Aを載置したときに送信部41の直前位置に配置される反射板部51と、を有する。このため、既存の検眼装置における検眼テーブル2のテーブル面20aに第1リモコントレー5Aを追加するだけで、反射部材を脱着する手間を要さずに通信不具合の発生を防止する検眼装置1Aにすることができる。
【0074】
即ち、反射部材として、検眼テーブル2側に設けられる第1リモコントレー5Aを用いている。このため、第1リモコントレー5Aのリモコン載置部50に対して第1リモコン4Aを載置すると、第1リモコン4Aの送信部41と反射板部51の位置関係が光信号の信号強度を高くする適切な位置関係に保たれる。
【0075】
(3)第1リモコン4Aは、被検者Pに提示している視標OBを表示するモニター部43を有する。第1リモコントレー5Aは、リモコン載置部50の被検者P側に、被検者Pの視線Sがモニター部43に届くのを遮る高さに設定された衝立部52を有する。このため、検眼時にモニター部43に表示されている視標OBを被検者Pが見て回答することが防止され、正しい検査を行うことができる。
【0076】
即ち、被検者Pのモニター部43へ向かう視線Sが、衝立部52により遮られる。そして、第1リモコントレー5Aの衝立部52は、特に、被検者Pの視線Sを遮るものが少ない仮枠検眼のときに有効であり、仮枠検眼のときに正しい検査結果が得られる。
【0077】
(4)第1リモコントレー5Aは、衝立部52を、リモコン載置部50の被検者P側端部から上方に立ち上げて配置する。反射板部51を、リモコン載置部50に第1リモコン4Aを載置したときに第1リモコン4Aの送信部41と衝立部52との間の位置に傾斜配置する。このため、反射板部51をリモコン載置部50の視標提示装置3側端部から斜め上方に立ち上げて配置する場合に比べ、第1リモコン4Aから反射して視標提示装置3へ向かう光信号の信号強度をより高くすることができる。
【0078】
即ち、反射板部51の位置設定としては、送信部41を視標提示装置3に向けている第1リモコン4Aに対し、リモコン載置部50の視標提示装置3側端部から斜め上方に立ち上げて配置するのが一般的といえる(実施例2を参照)。しかし、この一般例の場合、反射板部51と視標提示装置3までの距離が短くなり、受信部30bに向かう反射信号の仰角も大きな角度になる。
【0079】
これに対し、反射板部51を、第1リモコン4Aの送信部41と衝立部52との間の位置に傾斜配置すると、第1リモコン4Aを一般例と同じテーブル位置に配置しても、反射板部51と視標提示装置3までの距離が長く確保される。よって、受信部30bに向かう反射信号の仰角が、一般例よりも小さな角度になり、光信号の信号強度分布の最大強度域を、受信部30bに向かう方向に合わせることが容易になる。
【0080】
(5)第1リモコン4Aは、送信部41として、リモコン正面40aに配置された第1送信部41aと、リモコン左側面40bに配置された第2送信部41bと、リモコン右側面40cに配置された第3送信部41cと、を有する。このため、第1リモコン4Aを検眼テーブル2の上に載置して操作するとき、測定者Mは第1リモコン4Aの操作部42とモニター部43を正面視する姿勢によりリモコン操作を行えることで、第1リモコン4Aの操作負荷を軽減することができる。
【0081】
即ち、リモコンとして、正面側に1つの送信部のみを有するリモコンが一般的といえる(実施例2を参照)。しかし、1つの送信部のみを有するリモコンの場合、送信部を反射板部の直前の位置に配置すると、リモコンが、その長尺辺をテーブル辺に平行とする位置関係の横向き配置になる。測定者はリモコンの操作部とモニター部を横方向から視る姿勢になり、リモコンの操作負荷が増大する。
【0082】
これに対し、第1リモコン4Aは、直角3方向に第1送信部41aと第2送信部41bと第3送信部41cを有する。このため、リモコン左側面40bに配置された第2送信部41bと、リモコン右側面40cに配置された第3送信部41cと、の何れかを送信部として用いることで、第1リモコン4Aを横向き配置(Z軸向き配置)から90度回転させた縦向き配置(X軸向き配置)にすることができる。よって、測定者Mは、第1リモコン4Aの操作部42とモニター部43を正面視する姿勢によりリモコン操作を行える。
実施例2は、リモコンとして、1個の送信部を有する第2リモコンを用い、反射部材として、検眼テーブルに設けられた第2リモコントレーと、視標提示装置に設けられた装置側反射板と、を併用する検眼装置の例である。
ここで、検眼テーブル2と視標提示装置3と検眼用仮枠6については、実施例1と同様の構成であるために説明を省略する。以下、第2リモコン4Bと第2リモコントレー5Bと装置側反射板7の構成を説明する。
リモコン本体40は、リモコン正面40aとリモコン上面40eを有する。送信部41は、リモコン正面40aのみに配置されている。操作部42’は、リモコン本体40のリモコン上面40eに設けられ、送信部41からの光信号によって提示される視標OBの切替え操作や選択操作や電源ON/OFF操作を行う操作ボタン群である。モニター部43は、実施例1の第1リモコン4Aと同様に、方形状のLCDディスプレイにより構成されている。
リモコン載置部50は、リモコン載置面50aに第2リモコン4Bを少し沈み込ませて位置決め収納する凹部50bを形成している。よって、第2リモコン4Bを凹部50bに載置すると、第2リモコン4Bが位置決めされる。
反射板部51は、リモコン載置部50の視標提示装置3側端部から斜め上方に立ち上げて設けられ、第2リモコン4Bを載置したときに反射面51aが送信部41の直前位置に配置される。
衝立部52は、リモコン載置部50の被検者側端部から上方に立ち上げて配置される。衝立部52の高さは、被検者Pが視線Sを下げても第1リモコン4Aのモニター部43に視線Sが届くのを遮る高さに設定される。
ここで、装置側反射板7は、視標提示装置3に予め固定して設けても良いし、既存の視標提示装置3に付加して設けても良い。既存の視標提示装置3に装置側反射板7を付加して設ける場合は、例えば、視標提示装置3の受信部30bの上部位置に磁石などにより装置側反射板7を着脱可能に設けても良いし、両面テープなどで装置側反射板7を固定しても良い。
操作形態1において、第2リモコン4Bの送信部41から信号光をZ軸方向(被検者Pに向かう水平方向)に出射すると、第2リモコントレー5Bの反射板部51の反射面51aにて信号光が反射される。この信号光の反射により信号光の信号強度分布は、視標提示装置3の受信部30bへ向かう方向の信号強度が、信号光を反射しない場合に比べて高くなる。
そして、視標提示装置3の受信部30b側では、反射板部51から受信部30bに向かう信号光のうち一部の信号光が、装置側反射板7の信号光反射面7aにて反射される。この信号光反射面7aによる信号光の反射により、受信部30bでの信号光の受光感度が、信号光を反射しない場合に比べて高くなる。
さらに、視標提示装置3の受信部30b側において視標提示装置3の受信部30bに向かって照明などの外光が入射しようとするときは、受信部30bに入射する前に装置側反射板7の外光反射面7bにて外光が反射される。この外光反射面7bによる外光の反射により、受信部30bでのS/N比が、装置側反射板7を有さず外光を反射しない場合に比べて高くなる。
このように、検眼テーブル2の第2リモコントレー5Bに第2リモコン4Bを載置する操作形態1において、受信部30bへ向かう方向の信号強度と、受信部30bでの信号光の受光感度と、受信部30bでのS/N比と、が何れも高くなる作用を示す。よって、操作形態1において、信号強度と受光感度とS/N比の向上作用により、第2リモコン4Bと視標提示装置3との間での通信不具合の発生が有効に防止される。
(6)反射部材として、第2リモコントレー5Bに加え、視標提示装置3に設けられ、受信部30bに向かってくる信号光を反射し、光信号の受光感度を反射無しに比べて高くする装置側反射板7を備える。装置側反射板7は、受信部30bの上部位置に設けられ、被検者に向かって下向き傾斜角度を持たせて配置し、内面を信号光反射面7aとし、外面を外光反射面7bとする。このため、第2リモコン4Bを検眼テーブル2に載置する操作形態1において、信号強度と受光感度とS/N比の向上作用により、第2リモコン4Bと視標提示装置3との間での通信不具合の発生を有効に防止することができる。
(7)装置側反射板7は、被検者P側から視標提示装置3を正面視したとき、反射板下端面7cを、受信部30bの正面視領域の上端境界線300以上の高さ位置に設定する。このため、第2リモコン4Bを手に持って操作する場合、受信部30bに向けて遮蔽物の無い状態での操作が確保され、第2リモコン4Bと視標提示装置3との間での通信不具合の発生を防止することができる。
次に、実施例2の変形例として、第2リモコン4Bに代えて第1リモコン4Aを用い、かつ、第2リモコントレー5Bに代えて第1リモコントレー5Aを用いる。つまり、実施例1の検眼装置1Aに、装置側反射板7を加える構成とすることもできる。この実施例2の変形例とした場合は、上記実施例1の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の効果に加え、上記(6)、(7)の効果が得られる。
次に、実施例1,2に係る検眼装置1A,1Bにおいて、検眼テーブル2に設けられる反射部材である検眼装置用リモコントレー(第1リモコントレー5A、第2リモコントレー5B)に着目すると、下記の構成を採用している。
検眼装置用リモコントレー(第1リモコントレー5A、第2リモコントレー5B)は、検眼テーブル2のテーブル面20aに設けられ、リモコン載置部50と、反射板部51と、衝立部52と、を有する。リモコン載置部50は、リモコン(第1リモコン4A、第2リモコン4B)を載置する。反射板部51は、リモコン載置部50にリモコンを載置した際、送信部41の直前位置に配置され、送信部41から受信部30bに向かう光信号の信号強度を反射無しに比べて高くする。衝立部52は、リモコン載置部50の被検者P側の位置に配置され、被検者Pの視線Sがモニター部43に届くのを遮る。これらの構成は、実施例1の第1リモコントレー5Aと実施例2の第2リモコントレー5Bに共通している。
(8)検眼装置用リモコントレーは、検眼テーブル2と、視標提示装置3と、リモコン(第1リモコン4A、第2リモコン4B)と、を備える検眼装置において、検眼テーブル2のテーブル面20aに設けられ、リモコン載置部50と、反射板部51と、を有する。このため、既存の検眼装置における検眼テーブル2のテーブル面20aに検眼装置用リモコントレーを追加するだけで、反射部材の脱着手間を要さず、リモコンと視標提示装置3との間での通信不具合の発生が防止される検眼装置1A,1Bにすることができる。
(9)リモコン(第1リモコン4A、第2リモコン4B)は、被検者Pに提示している視標OBを表示するモニター部43を有する。検眼装置用リモコントレーは、リモコン載置部50の被検者P側の位置に配置され、被検者Pの視線Sがモニター部43に届くのを遮る高さに設定された衝立部52を有する。このため、検眼時に被検者Pのモニター部43へ向かう視線Sを遮る視線遮断機能を検眼装置用リモコントレー(第1リモコントレー5A、第2リモコントレー5B)に加えることができる。
以上、本発明の検眼装置及び検眼装置用リモコントレーを実施例1及び実施例2に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例1及び実施例2の構成に限られるものではない。特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
実施例1では、反射部材として、検眼テーブル側反射部材である第1リモコントレー5Aのみを設ける例を示した。実施例2では、反射部材として、検眼テーブル側反射部材である第2リモコントレー5Bと、装置側反射部材である装置側反射板7と、を併用して設ける例を示した。しかし、検眼テーブルと視標提示装置の少なくとも一方に反射部材が設けられるものであれば良く、実施例1,2以外に、検眼テーブル側反射部材を用いないで、装置側反射部材(装置側反射板7)のみを用いる例であっても良い。この場合、操作形態1において、受信部での受光感度の向上作用とS/N比の向上作用により、リモコンと視標提示装置との間での通信不具合の発生を防止することができる。
実施例1,2では、検眼装置として、検眼用仮枠6を用い、仮枠検眼を行う検眼装置1A,検眼装置1Bの例を示した。しかし、検眼装置としては、レフラクターヘッドを用いて検眼を行う検眼装置であっても良い。レフラクターヘッドを用いて検眼を行う検眼装置の場合、被検者の視界が制限されることで、衝立部を有さないリモコントレーを用いることも可能である。
実施例1,2では、視標提示装置として、遠用検眼の視標OBのみを提示する装置の例を示した。視標提示装置としては、遠用検眼の視標の提示に加え、近用検眼の視標を併せて提示する装置であっても良い。
実施例1,2では、リモコンとして、人の目に見えない近赤外線光を発光する送信部41を有する赤外線通信による第1リモコン4A及び第2リモコン4Bの例を示した。しかし、リモコンとしては、赤外線通信によるリモコンに限られず、例えば、人の目に見える可視光線帯域の電磁波を用いて無線通信を行う可視光通信によるリモコンの例としても良い。
実施例1では、3方向の送信部を有する第1リモコン4Aと、第1リモコン4Aの被検者P側に反射板部51を有する第1リモコントレー5Aとを組み合わせる例を示した。実施例2では、正面方向に1つの送信部を有する第2リモコン4Bと、第2リモコン4Bの視標提示装置3側に反射板部51を有する第2リモコントレー5Bとを組み合わせる例を示した。しかし、実施例1に記載の第1リモコン4Aと、実施例2に記載の第2リモコントレー5Bとを組み合わせる例としても良い。また、実施例2に記載の第2リモコン4Bと、実施例1に記載の第1リモコントレー5Aとを組み合わせる例としても良い。