(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039294
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】電路接続異常検知センサ及び電源コンセント
(51)【国際特許分類】
H01H 37/52 20060101AFI20230313BHJP
H01R 13/66 20060101ALI20230313BHJP
H01R 13/44 20060101ALI20230313BHJP
H01R 27/00 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
H01H37/52 A
H01R13/66
H01R13/44 Z
H01R27/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146405
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明義
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
5G041
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB21
5E021FC27
5E021KA13
5E021MA04
5E021MA18
5E087EE07
5E087FF02
5E087LL37
5E087QQ03
5E087RR17
5G041AA03
5G041BB11
5G041DA07
5G041DB01
5G041DC02
(57)【要約】
【課題】 1つのセンサ部材で、トラッキング放電と発熱の双方を検知できる電路接続異常検知センサを提供する。
【解決手段】 天面10b及び底面10cを有する筒状のハウジング10の内部中心軸M上に、トラッキング放電を検出するための棒状の第1電極部材2を配置し、第1電極部材2の先端が対峙する天面中央には、透孔11が設けられて天面10b上で発生するトラッキング放電を第1電極部材2が検知可能とし、第1電極部材2にはハウジング10内に配置されたバイメタル部材4の一端が連結される。ハウジング10内にバイメタル部材4が熱変形して自由端である他端が接触可能な第2電極部材3が配置され、第2電極部材3と第1電極部材2とが、ハウジング10の底面10cから送出されて一対の電極2a,3aを形成している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面及び底面を有する筒状のハウジングの内部中心軸上に、トラッキング放電を検出するための棒状導体を配置し、 前記棒状導体の先端が対峙する前記天面中央には、透孔が設けられて天面上で発生するトラッキング放電を前記棒状導体が検知可能とし、
前記棒状導体には、前記ハウジング内に配置されたバイメタル部材の一端が連結される一方、
前記ハウジング内に、前記バイメタル部材が熱変形して自由端である他端が接触可能な電極部材が配置され、
前記電極部材と前記棒状導体とが、前記ハウジングの前記底面から送出されて一対の電極を形成して成ることを特徴とする電路接続異常検知センサ。
【請求項2】
前記バイメタル部材は、渦巻形状、弦巻形状の少なくとも一方の形状を成すことを特徴とする請求項1記載の電路接続異常検知センサ。
【請求項3】
前記ハウジングは、直径或いは幅が2~4mm、長さが6~12mmの円筒形状或いは角柱形状であることを特徴とする請求項1又は2記載の電路接続異常検知センサ。
【請求項4】
電源プラグを接続する電源コンセントであって、請求項1乃至3の何れかに記載の電路接続異常検知センサが電源コンセントのケース内に配置され、
ケースの電源プラグを挿入する対を成す受刃の間には孔が穿設されて成り、
前記電路接続異常検知センサは、天面に設けた透孔が前記孔と連通するよう配置されることを特徴とする電源コンセント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源コンセント等の電気機器において電路接続部に発生する異常を検知する電路接続異常検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電源コンセントは、接続したプラグの栓刃間に埃等の微小なゴミが付着することでトラッキング放電が発生する場合がある。このトラッキング放電に関しては、例えば特許文献1に開示されているように、その対策が取られた電源コンセントがある。
一方で、端子部のネジの緩み等で、電路接続部が発熱する問題があり、この問題に関してもバイメタルや温度センサを配置して対応可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラッキング放電を検知する上記特許文献1の技術は、電源プラグの栓刃を挿入する電源コンセントの2つの孔の間に微小な孔を設け、この中に電極を配置して栓刃間で発生するトラッキング放電の電流を検知させた。
しかしながら、電源コンセントの発熱は、トラッキング放電以外に電線の接続不良等で発生する場合があり、これはトラッキング放電を検出する電極等では検出できないため、別途温度センサ等を取り付ける必要がった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、1つのセンサ部材で、トラッキング放電と発熱の双方を検知できる電路接続異常検知センサを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る電路接続異常検知センサは、天面及び底面を有する筒状のハウジングの内部中心軸上に、トラッキング放電を検出するための棒状導体を配置し、 棒状導体の先端が対峙する天面中央には、透孔が設けられて天面上で発生するトラッキング放電を棒状導体が検知可能とし、棒状導体には、ハウジング内に配置されたバイメタル部材の一端が連結される一方、ハウジング内に、バイメタル部材が熱変形して自由端である他端が接触可能な電極部材が配置され、電極部材と棒状導体とが、ハウジングの底面から送出されて一対の電極を形成して成ることを特徴とする。
この構成によれば、ハウジングから送出された一対の電極に対して検知回路を接続することで、1つのセンサ部材でトラッキング放電と発熱の双方を検知でき、電路接続部に発生する異常検知に活用できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、バイメタル部材は、渦巻形状、弦巻形状の少なくとも一方の加工が成されて形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、省スペースで熱感度の優れたセンサを得ることができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の構成において、ハウジングは、直径或いは幅が2~4mm、長さが6~12mmの円筒形状或いは角柱形状であることを特徴とする。
この構成によれば、ハウジングが小さいため、例えば電源コンセントに対して大きさを大きく変更すること無く容易に取り付けできる。
【0009】
請求項4の発明は、電源プラグを接続する電源コンセントであって、請求項1乃至3の何れかに記載の電路接続異常検知センサが電源コンセントのケース内に配置され、ケースの電源プラグを挿入する対を成す受刃の間には孔が穿設されて成り、電路接続異常検知センサは、天面に設けた透孔が孔と連通するよう配置されることを特徴とする。
この構成によれば、2種類のセンサを設けること無く、またケースを大型化すること無く、トラッキング放電と発熱の双方を検知することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電路接続異常検知センサによれば、ハウジングから送出された一対の電極に対して検知回路を接続することで、1つのセンサ部材でトラッキング放電と発熱の双方を検知でき、電路接続部の異常検知に活用できる。
また、本発明の電源コンセントによれば、2種類のセンサを設けること無く、またケースを大型化すること無く、トラッキング放電と発熱の双方を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る電路接続異常検知センサの一例を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図2】
図1のハウジングの一部を削除した斜視図である。
【
図3】電源コンセントの説明図であり、断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1,2は本発明に係る電路接続異常検知センサの一例を示す説明図であり、
図1(a)は斜視図、(b)は側面図、
図2はハウジングの一部を削除して内部構成を示した斜視図(
図1のA-A線で切断した図)である。
電路接続異常検知センサ1は、合成樹脂製のハウジング10内に2つの電極部材(第1電極部材2,第2電極部材3)と、バイメタル部材4を収容して形成されている。
ハウジング10は、円筒形状の側面10a、天面10b、底面10cを有し、寸法は例えば直径Wが3mm、長さLが10mmである。尚、図示上面を天面、下面を底面とする。
【0013】
第1電極部材2は棒状導体であり、ハウジング10の中心軸Mにおいて全長に亘り配置され、先端が対峙するハウジング10の天面10bの中央には、透孔11が穿設されている。一方、第1電極部材2の他方は、ハウジング10の底面10cから下方に送出され、電極2aを形成して外部に設けられた検知回路(図示せず)に接続される。
第2電極部材3は、ハウジング10内に配置されてバイメタル部材4が熱変形して接触する電極部材3bと、底面10cから下方に送出して、検知回路に接続する電極3aとで形成されている。
【0014】
バイメタル部材4は、渦巻形状を成す渦巻部41と弦巻形状を成す弦巻部42とを有し、両者は連結されている。渦巻部41の中心41aが第1電極2の先端部に連結され、その最外周の先端部41bは側面10a近傍に配置され天面10bに平行に配置されている。
この渦巻部41の先端部41bに弦巻部42の一端42aが連結されて、垂下するようにハウジング10に収容されている。弦巻部42の他端はハウジング10の下方に配置され、自由端であり電極42bを形成している。バイメタル部材4が熱変形することで、この自由端が
図2の矢印Yで示す方向に移動し、第2電極部材3の電極部材3bに接触する。
バイメタル部材4を、このように渦巻部41と弦巻部42との2種類の形状を連結して形成することで、上方(天面10bの上方)で発生する熱は渦巻部41が検知して熱変形するし、ハウジング10の側方で発生する熱は弦巻部42が検知して熱変形するため、周囲で発生する発熱を良好に検知できる。
【0015】
このように、ハウジング10から送出された一対の電極2a,3aに対して検知回路を接続すれば、1つのセンサ部材でトラッキング放電と発熱の双方を検知でき、電路接続部の異常検知に活用できる。
また、バイメタル部材4を直線状に形成すること無く、渦巻部41と弦巻部42の2つの形状を備えるため、省スペースで熱感度の優れたセンサを得ることができる。
更に、ハウジング10を小さくすることで、例えば電源コンセントに対してケースの大きさを大きく変更すること無く容易に収容できる。
【0016】
尚、ハウジング10の寸法は、小さいほど組み付けやすいが直径2~4mm、長さ6~12mmであれば、コンセントケース等に収容可能であるし作製可能である。また、ハウジング10の形状は、四角柱或いは六角柱等、角柱形状であっても良い。
【0017】
図3は電源コンセントの断面説明図であり、上記電路接続異常検知センサ1を組み込んだ構成を示している。
図3において、51は電源コンセント5のケース50内に収容され、挿入された電源プラグ(図示せず)の栓刃を把持する受刃、52は電源プラグを挿入するケース50に形成された孔、53は電路接続異常検知センサ1からの検知情報を受けて異常発生を判定する判定回路が組み付けられた回路基板、54はトラッキング放電を検知するための孔である。また7は電源コンセント5に接続される電線である。
【0018】
図3に示すように、電路接続異常検知センサ1は、一対の受刃51の間において天面10bを電源コンセント5の前面に向けて配置されている。そして、ハウジング10の天面10bに設けられた透孔11が、ケース50の孔54に一致して連通し、トラッキング放電電流が、電路接続異常検知センサ1に入り込むよう構成されている。
そして、電路接続部異常検知センサ1の電極2a,3aがケース50内に配置されたコネクタ55に接続されることで、回路基板53に形成された接点56を介して判定回路に、検知した放電電流が流れて異常の有無が判定される。
また、トラッキング放電やケース50内の発熱等でケース50の周囲或いは内部の温度が上昇したら電路接続異常検知センサ1がそれを検知する。
【0019】
このように電路接続異常検知センサ1を配置することで、電源プラグと電源コンセント5の間で発生するトラッキング放電を検知できるし、過電流や接触不良で発生する発熱も検知できる。
加えて、2種類のセンサを設けること無く、またケース50を大型化すること無く、トラッキング放電と発熱の双方を検知することが可能となる。
【0020】
尚、上記実施形態の電路接続異常検知センサ1は、バイメタル部材4が渦巻部41と弦巻部42の双方を備えた形状であるが、何れか一方の形状のみでも良い。
また、電源コンセント5に設置してコンセントの異常を検知する場合を説明したが、本発明の電路接続異常検知センサ1は、発熱を検知するセンサとして広く利用できる。
更に、電源コンセント5は、ケース50の前面に電路接続異常検知センサ1の透孔11に連通する孔54を設けているが、電路接続異常検知センサ1の天面10b全体をケース50から露出させても良い。
【符号の説明】
【0021】
1・・電路接続異常検知センサ、2・・第1電極部材(棒状導体)、2a・・電極、3・・第2電極部材(電極部材)、3a・・電極、4・バイメタル部材、5・・電源コンセント、10・・ハウジング、10a・・側面、10b・・天面、10c・・底面、11・・透孔、41・・渦巻部、42・・弦巻部、51・・受刃、M・・中心軸、W・・直径、L・・長さ。