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▶ イビデン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039313
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/46 N
H05K3/46 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146430
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】籠橋 進
(72)【発明者】
【氏名】冨田 真礼
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA38
5E316AA43
5E316BB02
5E316CC04
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC32
5E316CC60
5E316DD17
5E316DD24
5E316DD47
5E316EE33
5E316FF14
5E316HH05
(57)【要約】
【課題】高い品質を有するプリント配線板の提供。
【解決手段】プリント配線板は、第1導体層と、前記第1導体層上に形成されていて、前記第1導体層を露出するビア導体用の開口と第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の前記第1面上に形成されている第2導体層と、前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体、とを有する。前記樹脂絶縁層は無機粒子と樹脂によって形成されており、前記第2導体層は信号配線を含み、前記樹脂絶縁層の前記第1面は前記樹脂で形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体層と、
前記第1導体層上に形成されていて、前記第1導体層を露出するビア導体用の開口と第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層と、
前記樹脂絶縁層の前記第1面上に形成されている第2導体層と、
前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体、とを有するプリント配線板であって、
前記樹脂絶縁層は無機粒子と樹脂によって形成されており、前記第2導体層は信号配線を含み、前記樹脂絶縁層の前記第1面は前記樹脂で形成されている。
【請求項2】
請求項1のプリント配線板であって、前記開口の内壁面は前記樹脂と前記無機粒子の表面で形成されている。
【請求項3】
請求項2のプリント配線板であって、前記樹脂絶縁層の厚さは前記信号配線の厚さの2倍以上である。
【請求項4】
請求項1のプリント配線板であって、前記信号配線は、前記樹脂絶縁層上に形成されているシード層と前記シード層上に形成されている電解めっき膜によって形成されており、前記シード層はスパッタによって形成されている。
【請求項5】
請求項1のプリント配線板であって、前記信号配線は第1信号配線と第2信号配線によって形成されるペア配線を含んでいる。
【請求項6】
請求項2のプリント配線板であって、前記第1面は前記無機粒子の表面を含まない。
【請求項7】
請求項6のプリント配線板であって、前記第1面は前記樹脂のみで形成されている。
【請求項8】
請求項6のプリント配線板であって、前記第1面から前記無機粒子は露出しない。
【請求項9】
請求項3のプリント配線板であって、前記樹脂絶縁層の前記厚さは前記第1面と前記第1導体層間の距離である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ビルドアップ用絶縁層を含む配線基板を開示している。ビルドアップ用絶縁層の例は第1絶縁層と第2絶縁層である。特許文献1の16段落によれば、熱硬化性樹脂中に絶縁粒子が分散されている。特許文献1の18段落によれば、絶縁粒子は部分露出粒子を含んでいる。本明細書では、部分露出粒子は露出粒子と称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-83303号公報
【発明の概要】
【0004】
[特許文献1の課題]
特許文献1の技術は、露出粒子を有している。従って、特許文献の第1絶縁層の上面はビルドアップ用絶縁層を形成する樹脂と露出粒子の露出面で形成されると考えられる。第1絶縁層の上面上に第1配線導体が形成されている。絶縁粒子の比誘電率とビルドアップ用絶縁層を形成する樹脂の比誘電率は異なると考えられる。露出粒子を均一に分散することは難しいと考えられる。各露出粒子の露出している部分の面積を同一にすることは難しいと考えられる。従って、第1絶縁層の上面の比誘電率は場所によって異なると考えられる。もし、第1配線導体が2つの信号配線を含むと、ひとつの信号配線で伝達される信号の伝搬速度と別の信号配線で伝達される信号の伝搬速度の差は大きいと考えられる。特許文献1の技術で複数の信号配線を含む配線基板が製造されると、大きいノイズが発生すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント配線板は、第1導体層と、前記第1導体層上に形成されていて、前記第1導体層を露出するビア導体用の開口と第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の前記第1面上に形成されている第2導体層と、前記開口内に形成されていて、前記第1導体層と前記第2導体層とを接続するビア導体、とを有する。前記樹脂絶縁層は無機粒子と樹脂によって形成されており、前記第2導体層は信号配線を含み、前記樹脂絶縁層の前記第1面は前記樹脂で形成されている。
【0006】
本発明の実施形態のプリント配線板では、樹脂絶縁層の第1面は樹脂で形成されている。樹脂絶縁層の第1面は樹脂のみで形成されている。第1面は無機粒子の表面を含まない。樹脂絶縁層の第1面近傍部分の比誘電率の標準偏差が大きくなることが抑制される。樹脂絶縁層の第1面の比誘電率はほぼ同じである。第1面上に第2導体層が形成される場合、第2導体層に含まれる信号配線間の電気信号の伝搬速度の差を小さくすることができる。実施形態のプリント配線板ではノイズが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態のプリント配線板を模式的に示す断面図。
図2A】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2B】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2C】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2D】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2E】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2F】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
図2G】実施形態のプリント配線板の製造方法を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態]
図1は実施形態のプリント配線板2を示す断面図である。図1に示されるように、プリント配線板2は、絶縁層4と第1導体層10と樹脂絶縁層20と第2導体層30とビア導体40とを有する。
【0009】
絶縁層4は樹脂を用いて形成される。絶縁層4はシリカ等の無機粒子を含んでもよい。絶縁層4は、ガラスクロス等の補強材を含んでもよい。絶縁層4は、第3面6(図中の上面)と第3面6と反対側の第4面8(図中の下面)を有する。
【0010】
第1導体層10は絶縁層4の第3面6上に形成されている。第1導体層10は信号配線12とパッド14とを含む。図に示されていないが、第1導体層10は信号配線12とパッド14以外の導体回路も含んでいる。第1導体層10は銅によって形成される。第1導体層10は、シード層10aとシード層10a上の電解めっき膜10bで形成されている。
【0011】
樹脂絶縁層20は絶縁層4の第3面6と第1導体層10上に形成されている。樹脂絶縁層20は第1面22(図中の上面)と第1面22と反対側の第2面24(図中の下面)を有する。樹脂絶縁層20にはパッド14を露出する開口26が形成されている。樹脂絶縁層20は樹脂80と樹脂80内に分散されている多数の無機粒子90で形成されている。樹脂80はエポキシ系樹脂である。樹脂の例は熱硬化性樹脂と光硬化性樹脂である。無機粒子90は、例えば、シリカやアルミナである。
【0012】
樹脂絶縁層20の第1面22は樹脂80のみで形成されている。第1面22から無機粒子90は露出しない。第1面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第1面22には凹凸が形成されていない。第1面22は荒らされていない。第1面22は平滑に形成されている。一方、開口26の内壁面27には無機粒子90が露出する。開口26の内壁面27は無機粒子90の表面を含む。開口26の内壁面27は凹凸を有する。開口26の内壁面27は樹脂80の露出面と無機粒子90の露出面で形成される。
【0013】
樹脂絶縁層20の厚さは、第2導体層30の厚さの2倍以上である。樹脂絶縁層20の厚さTは第1面22と第1導体層10の上面の間の距離である。
【0014】
第2導体層30は樹脂絶縁層20の第1面22上に形成されている。第2導体層30は第1信号配線32と第2信号配線34とランド36とを含む。図に示されていないが、第2導体層30は第1信号配線32と第2信号配線34とランド36以外の導体回路も含んでいる。第1信号配線32と第2信号配線34はペア配線を形成している。第2導体層30は銅によって形成される。第2導体層30は、シード層30aとシード層30a上の電解めっき膜30bで形成されている。
【0015】
ビア導体40は開口26内に形成されている。ビア導体40は第1導体層10と第2導体層30を接続する。図1ではビア導体40はパッド14とランド36を接続する。ビア導体40はシード層30aとシード層30a上の電解めっき膜30bで形成されている。
【0016】
[実施形態のプリント配線板2の製造方法]
図2A図2Gは実施形態のプリント配線板2の製造方法を示す。図2A図2Gは断面図である。図2Aは絶縁層4と絶縁層4の第3面6上に形成されている第1導体層10を示す。第1導体層10はセミアディティブ法によって形成される。
【0017】
図2Bに示されるように、絶縁層4と第1導体層10上に樹脂絶縁層20と保護膜50が形成される。樹脂絶縁層20の第2面24が絶縁層4の第3面6と対向している。樹脂絶縁層20の第1面22上に保護膜50が形成されている。樹脂絶縁層20の第1面22は樹脂80のみで形成されている。第1面22から無機粒子90は露出しない。第1面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第1面22には凹凸が形成されていない。
【0018】
保護膜50は樹脂絶縁層20の第1面22を完全に覆っている。保護膜50の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。保護膜50と樹脂絶縁層20との間に離型剤が形成されている。
【0019】
図2Cに示されるように、保護膜50の上からレーザ光Lが照射される。レーザ光Lは保護膜50と樹脂絶縁層20を同時に貫通する。第1導体層10のパッド14に至るビア導体用の開口26が形成される。レーザ光Lは例えばUVレーザ光、CO2レーザ光である。開口26によりパッド14が露出される。開口26が形成される時、第1面22は保護膜50で覆われている。そのため、開口26が形成される時、樹脂が飛散しても、第1面22に樹脂が付着することが抑制される。
【0020】
その後、開口26内が洗浄される。開口26内を洗浄することにより開口26形成時に発生する樹脂残渣が除去される。開口26内の洗浄はプラズマによって行われる。即ち洗浄はドライプロセスで行われる。洗浄はデスミア処理を含む。プラズマにより、樹脂80が選択的に除去される。プラズマは無機粒子90より樹脂80を早く除去する。開口26の内壁面27はプラズマで荒らされる。
【0021】
開口26内を洗浄することにより、開口26の内壁面27には無機粒子90が露出する(図2C)。開口26の内壁面27は無機粒子90の表面を含む。開口26の内壁面27には凹凸が形成される。一方、樹脂絶縁層20の第1面22は保護膜50で覆われている。第1面22はプラズマの影響を受けない。第1面22は樹脂80のみで形成されている。第1面22から無機粒子90は露出しない。第1面22は無機粒子90の表面を含まない。樹脂絶縁層20の第1面22には凹凸が形成されない。第1面22は平滑に形成されている。
【0022】
図2Dに示されるように、樹脂絶縁層20から保護膜50が除去される。保護膜50除去後、樹脂絶縁層20の第1面22を荒らすことは行われない。
【0023】
図2Eに示されるように、樹脂絶縁層20の第1面22上にシード層30aが形成される。シード層30aはスパッタによって形成される。シード層30aの形成はドライプロセスで行われる。シード層30aは開口26から露出するパッド14の上面と開口26の内壁面27にも形成される。シード層30aは銅で形成される。
【0024】
図2Fに示されるように、シード層30a上にめっきレジスト60が形成される。めっきレジスト60は、第1信号配線32と第2信号配線34とランド36(図1)を形成するための開口を有する。
【0025】
図2Gに示されるように、めっきレジスト60から露出するシード層30a上に電解めっき膜30bが形成される。電解めっき膜30bは開口26を充填する。第1面22上のシード層30aと電解めっき膜30bによって、第1信号配線32と第2信号配線34とランド36が形成される。第2導体層30が形成される。開口26内のシード層30aと電解めっき膜30bによって、ビア導体40が形成される。ビア導体40は、パッド14とランド36を接続する。第1信号配線32と第2信号配線34はペア配線を形成する。
【0026】
その後、めっきレジスト60が除去される。電解めっき膜30bから露出するシード層30aが除去される。第2導体層30とビア導体40は同時に形成される。実施形態のプリント配線板2(図1)が得られる。
【0027】
実施形態のプリント配線板2(図1)では樹脂絶縁層20の第1面22は樹脂80で形成されている。第1面22には無機粒子90が露出しない。第1面22には凹凸が形成されない。樹脂絶縁層20の第1面22近傍部分の比誘電率の標準偏差が大きくなることが抑制される。第1面22の比誘電率は場所によって大きく変わらない。第1信号配線32と第2信号配線34が第1面22に接していても、第1信号配線32と第2信号配線34間の電気信号の伝搬速度の差を小さくすることができる。そのため、実施形態のプリント配線板2ではノイズが抑制される。実施形態のプリント配線板2にロジックICが実装されても、第1信号配線32で伝達されるデータと第2信号配線で伝達されるデータがロジックICにほぼ遅延なく到達する。ロジックICの誤動作を抑制することができる。第1信号配線32の長さと第2信号配線34の長さが5mm以上であっても、両者の伝搬速度の差を小さくすることができる。第1信号配線32の長さと第2信号配線34の長さが10mm以上、20mm以下であっても、ロジックICの誤動作を抑制することができる。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【0028】
実施形態のプリント配線板2(図1)では、樹脂絶縁層20の厚さTは第2導体層30の厚さの2倍以上である。プリント配線板2がヒートサイクルを受けると、開口26の内壁面27とビア導体40の間に加わるストレスは、第1面22と第2導体層30の間に加わるストレスより大きいと考えられる。また、開口26の内壁面27は凹凸を有する。そのため、開口26の内壁面27とビア導体40間の密着強度は、第1面22と第2導体層30間の密着強度より高い。ビア導体40が樹脂絶縁層20から剥離し難い。第2導体層30が樹脂絶縁層20から剥離し難い。
【0029】
実施形態のプリント配線板2では、シード層30aはスパッタで形成される(図2E)。シード層30aを形成する粒子は第1面22と垂直に衝突する。そのため、第1面22とシード層30aとの密着強度は高い。一方、シード層30aを形成する粒子と開口26の内壁面27は斜めに衝突する。ただし、開口26の内壁面27は凹凸を有する。そのため、シード層30aと開口26の内壁面27間の密着強度は高い。第1面22が凹凸を有していなく、且つ、開口26の内壁面27が凹凸を有しても、第2導体層30と第1面22との間の密着強度とビア導体40と開口26の内壁面27との間の密着強度の差を小さくすることができる。第2導体層30と第1面22との間の界面にストレスが集中し難い。ビア導体40と開口26の内壁面27との間の界面にストレスが集中し難い。プリント配線板2がヒートサイクルを受けても、ビア導体40が樹脂絶縁層20から剥離し難い。高い品質を有するプリント配線板2が提供される。
【符号の説明】
【0030】
2 :プリント配線板
4 :絶縁層
10 :第1導体層
20 :樹脂絶縁層
22 :第1面
24 :第2面
26 :開口
27 :内壁面
30 :第2導体層
30a :シード層
30b :電解めっき膜
32 :第1信号配線
34 :第2信号配線
36 :ランド
40 :ビア導体
80 :樹脂
90 :無機粒子
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G