IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧

特開2023-39352噛合装置、噛合方法、及び、制御プログラム
<>
  • 特開-噛合装置、噛合方法、及び、制御プログラム 図1
  • 特開-噛合装置、噛合方法、及び、制御プログラム 図2
  • 特開-噛合装置、噛合方法、及び、制御プログラム 図3
  • 特開-噛合装置、噛合方法、及び、制御プログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039352
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】噛合装置、噛合方法、及び、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20230313BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20230313BHJP
   B23P 19/04 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
B23P21/00 306Z
B23P19/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146481
(22)【出願日】2021-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小河路 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
【テーマコード(参考)】
3C030
3C707
【Fターム(参考)】
3C030BC04
3C030BC16
3C030BC27
3C030BC35
3C030CA01
3C707AS07
3C707BS10
3C707KS33
3C707KX06
3C707LV11
3C707LV17
(57)【要約】
【課題】第1ギヤを第2ギヤに噛合させる場合に、第1ギヤを含む画像及び第2ギヤを含む画像に頼ることなく位相合わせ可能な技術を提供すること。
【解決手段】噛合装置(1)は、ロボットアーム(11)と、ロボットハンド(13)と、ロボットアーム(11)及びロボットハンド(13)を制御するコントローラ(14)と、を備えている。コントローラ(14)は、(1)第1ギヤ(筒W1)を第2ギヤ(軸W2)に半噛合させる半噛合工程(S11)と、(2)第1ギヤの歯が第2ギヤの歯に接触するまで第1ギヤを順回転させる第1回転工程(S12)と、(3)第1ギヤの歯が第2ギヤの歯に接触するまで第1ギヤを逆回転させる第2回転工程(S13)と、(4)第1ギヤを逆回転させた回転角よりも小さい回転角だけ、第1ギヤを順回転させる第3回転工程(S14)と、を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ギヤを第2ギヤに噛合させる噛合装置であって、
ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられた、前記第1ギヤを保持するロボットハンドと、前記ロボットアーム及び前記ロボットハンドを制御するコントローラと、を備えており、
前記コントローラは、(1)前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに半噛合させる半噛合工程と、(2)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで順回転させる第1回転工程と、(3)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで逆回転させる第2回転工程と、(4)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第2回転工程において前記第1ギヤを逆回転させる際の回転角よりも小さい回転角だけ順回転させる第3回転工程と、(5)前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに全噛合させる並進工程と、を実行する、
ことを特徴とする噛合装置。
【請求項2】
前記第3回転工程において前記第1ギヤを順回転させる際の回転角は、前記第2回転工程において前記第1ギヤを逆回転させる際の回転角の1/2である、
ことを特徴とする請求項1に記載の噛合装置。
【請求項3】
前記ロボットアームと前記ロボットハンドとの間に介在する力覚センサを更に備え、
前記コントローラは、前記第1回転工程及び前記第2回転工程において、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触したことを、前記力覚センサの出力信号を参照して特定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の噛合装置。
【請求項4】
ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられた、第1ギヤを保持するロボットハンドと、を用いて、前記第1ギヤを第2ギヤに噛合させる噛合方法であって、
前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに半噛合させる半噛合工程と、
前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで順回転させる第1回転工程と、
前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで逆回転させる第2回転工程と、
前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第2回転工程において前記第1ギヤを逆回転させる際の回転角よりも小さい回転角だけ順回転させる第3回転工程と、
前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに全噛合させる並進工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする噛合方法。
【請求項5】
ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられた、第1ギヤを保持するロボットハンドと、前記ロボットアーム及び前記ロボットハンドを制御するコントローラと、を備えており、前記第1ギヤを第2ギヤに噛合させる噛合装置を制御する制御プログラムであって、
(1)前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに半噛合させる半噛合工程と、(2)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで順回転させる第1回転工程と、(3)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで逆回転させる第2回転工程と、(4)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第2回転工程において前記第1ギヤを逆回転させる際の回転角よりも小さい回転角だけ順回転させる第3回転工程と、(5)前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに全噛合させる並進工程と、を前記コントローラに実行させる、
ための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ギヤを第2ギヤに噛合させる、噛合装置及び噛合方法に関する。また、そのような噛合装置を制御する制御プログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを用いて歯車同士を噛合させることにより歯車機構を組み立てる組立装置及び組立方法が特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1の技術では、製品ロボットの駆動軸に既に組み込まれている減速機歯車に対して、モータの出力軸に装着されたモータ側歯車を嵌め合わせて、モータの出力軸を減速機歯車中に差し込んで、減速機歯車とモータ側歯車とを組み立てる作業を行う。以下では、新たに嵌め合わせるモータ側歯車を第1ギヤと称し、製品ロボットの駆動軸に既に組み込まれている減速機歯車を第2ギヤと称する。
【0004】
特許文献1の技術では、撮像装置を用いて、第1ギヤを含む画像と、第2ギヤを含む画像とを撮像する。そのうえで、それらの画像に画像処理を施すことによって、第1ギヤを第2ギヤに嵌め合わせるために用いる位相などの情報を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-215345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術では、第1ギヤを第2ギヤに嵌め合わせるために用いる情報を取得するために、第1ギヤを含む画像及び第2ギヤを含む画像を用いる。そのため、特許文献1の技術において用いる第1ギヤを含む画像及び第2ギヤを含む画像は、鮮明であることが好ましい。しかしながら、組み立てる製品の構成によっては、第1ギヤ及び第2ギヤの少なくとも何れかに照射される光量が不足している、あるいは、第2ギヤが奥まった位置に組み込まれており第1ギヤを挿入するための挿入穴が小さい、といった理由により、鮮明な画像を撮像することが困難な場合がある。
【0007】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的は、第1ギヤを第2ギヤに噛合させる場合に、第1ギヤを含む画像及び第2ギヤを含む画像に頼ることなく位相合わせ可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る噛合装置は、第1ギヤを第2ギヤに噛合させる噛合装置であって、ロボットアームと、前記ロボットアームの先端に取り付けられた、前記第1ギヤを保持するロボットハンドと、前記ロボットアーム及び前記ロボットハンドを制御するコントローラと、を備えている。
【0009】
本噛合装置において、前記コントローラは、(1)前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに半噛合させる半噛合工程と、(2)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで順回転させる第1回転工程と、(3)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第1ギヤの歯が前記第2ギヤの歯に接触するまで逆回転させる第2回転工程と、(4)前記ロボットアーム又は前記ロボットハンドを制御することにより、前記第1ギヤを、前記第2回転工程において前記第1ギヤを逆回転させる際の回転角よりも小さい回転角だけ順回転させる第3回転工程と、(5)前記ロボットアームを制御することにより、前記第1ギヤを並進させ、前記第1ギヤを前記第2ギヤに全噛合させる並進工程と、を実行する、ように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、第1ギヤを第2ギヤに噛合させる場合に、第1ギヤを含む画像及び第2ギヤを含む画像に頼ることなく位相合わせ可能な技術を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】噛合装置の構成を示す斜視図である。
図2図1に示す噛合装置が備えているコントローラの構成を示すブロック図である。
図3】(a)及び(b)は、それぞれ、図1に示した噛合装置を用いて噛合させる筒及び軸の斜視図である。
図4図1に示した噛合装置が備えているコントローラが実施する噛合方法の各工程における筒及び軸を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る噛合装置1の構成に関して、図1及び図2を参照して説明する。図1は、噛合装置1の構成を示す斜視図である。図2は、噛合装置1が備えているコントローラ14の構成を示すブロック図である。また、噛合装置1を用いて噛合させる筒W1及び軸W2について、図3を参照して説明する。図3の(a)及び(b)は、それぞれ、筒W1及び軸W2の斜視図である。また、本発明の一実施形態である噛合方法M1の構成に関して、図4を参照して説明する。図4は、噛合方法M1の各工程における筒W1及び軸W2を示す平面図である。
【0013】
〔噛合装置〕
噛合装置1は、図1に示すように、ロボットアーム11、力覚センサ12、ロボットハンド13、及びコントローラ14を含んでいる。噛合装置1は、筒W1を軸W2に噛合させる噛合装置である。ロボットアーム11及びコントローラ14は、定盤の主面上に配置されている。なお、定盤には符号を付していない。
【0014】
<ロボットアーム及びロボットハンド>
本実施形態においては、ロボットアーム11として、垂直多関節型ロボットアームを用いている。また、力覚センサ12として、6軸力覚センサを用いている。また、筒W1を保持するロボットハンド13として、3方チャックを用いている。なお、ロボットハンド13は、筒W1を把持以外の方法で保持できるものであってもよい。把持以外の保持方法としては、例えば、吸着による保持、磁力による保持、静電気力による保持などが挙げられる。ロボットハンド13は、力覚センサ12を介してロボットアーム11の先端に取り付けられている。本実施形態では、ロボットハンド13の3方チャックの軸心と平行な方向であって、ロボットアーム11の先端から遠ざかる方向(図1においては鉛直方向下向き)をz軸正方向と定める。また、z軸方向を法線とする平面を構成する2つの直交する方向をx軸正方向及びy軸正方向と定める。図1においては、x軸方向は、定盤の左右方向と一致しており、y軸方向は、定盤の奥行き方向と一致している。
【0015】
噛合装置1及び噛合方法M1においては、3方チャックの軸心を回転軸として3方チャックを回転させることにより、筒W1の軸心C1を回転軸として筒W1を回転させる。この3方チャックを回転させる機構は、ロボットアーム11に搭載されていてもよいし、ロボットハンド13に搭載されていてもよい。前者の場合、コントローラ14は、ロボットアーム11を制御することにより3方チャックを回転させる。後者の場合、コントローラ14は、ロボットハンド13を制御することにより3方チャックを回転させる。本実施形態においては、ロボットハンド13に3方チャックを回転させる機構が搭載されているものとして説明する。
【0016】
<力覚センサ>
力覚センサ12は、ロボットハンド13に作用する力Fx,Fy,Fz及びモーメントMx,My,Mzを検出する6軸力覚センサである。以下では、各方向を区別する必要がない場合には、力Fx,Fy,Fzをまとめて力Fとも表し、モーメントMx,My,MzをまとめてモーメントMとも表す。
【0017】
力覚センサ12は、検出した力F及びモーメントMを表す出力信号を、コントローラ14に提供する。
【0018】
<コントローラ>
コントローラ14は、力覚センサ12の出力信号を参照してロボットアーム11を制御することにより、特定の作業を実演する機能を有している。本実施形態において、特定の作業は、筒W1の歯T1を軸W2の歯T2に噛合させる作業である。この作業においてコントローラ14が実施する噛合方法については、図4を参照しながら後述する。図1では、軸心C1と軸心C2とがおおよそ一致しているものの、筒W1と軸W2とが離間している状態図示している。後述する噛合方法M1では、この状態を始状態とする。
【0019】
コントローラ14の構成について、図2を参照して説明する。図2は、コントローラ14の構成を示すブロック図である。
【0020】
コントローラ14は、図2に示すように、プロセッサ141と、一次メモリ142と、二次メモリ143と、通信インタフェース144と、バス145と、を備えている。プロセッサ141、一次メモリ142、二次メモリ143、及び通信インタフェース144は、バス145を介して相互に接続されている。コントローラ14として利用可能なデバイスとしては、例えば、クラウドサーバを構成するワークステーションを挙げることができる。
【0021】
二次メモリ143には、制御プログラムPが格納されている。プロセッサ141は、二次メモリ143に格納されている制御プログラムPを一次メモリ142上に展開する。そして、プロセッサ141は、一次メモリ142上に展開された制御プログラムPに含まれる命令に従って、後述する噛合方法M1に含まれる各処理を実行する。プロセッサ141として利用可能なデバイスとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)を挙げることができる。また、一次メモリ142として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(Random Access Memory)を挙げることができる。また、二次メモリ143として利用可能なデバイスとしては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)を挙げることができる。
【0022】
通信インタフェース144は、ネットワークを介してロボットアーム11及びロボットハンド13と通信を行うためのインタフェースである。通信インタフェース144として利用可能なインタフェースとしては、例えば、イーサネット(登録商標)インタフェースが挙げられる。また、利用可能なネットワークとしては、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)、又は、これらのネットワークを含むインターネットワークが挙げられる。インターネットワークは、イントラネットであってもよいし、エクストラネットであってもよいし、インターネットであってもよい。
【0023】
なお、プロセッサ141に噛合方法M1を実行させるための制御プログラムPは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録され得る。この記録媒体は、二次メモリ143であってもよいし、その他の記録媒体であってもよい。例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路などが、その他の記録媒体として利用可能である。制御プログラムPは、後述する噛合装置1及び噛合方法M1と同じ効果を奏する。
【0024】
〔筒及び軸〕
筒W1は、図3の(a)に示すように、金属製の円筒状部材である。ただし、筒W1を構成する材料は、金属に限定されず、例えば、樹脂であってもよいし、セラミックスであってもよい。
【0025】
筒W1の内壁には、その軸心C1と平行に複数の溝が設けられている。複数の溝は、後述する筒W1の複数の歯T2に対応して設けられている。筒W1の内壁に複数の溝が設けられていることにより、筒W1の内壁のうち複数の溝が設けられていない部分は、歯T1として機能する。したがって、筒W1は、内歯車の一態様である。筒W1は、第1ギヤの一例であり、歯T1は、第1ギヤの歯の一例である。
【0026】
軸W2は、図3の(b)に示すように、金属製の円柱状部材である。ただし、軸W2を構成する材料は、金属に限定されず、例えば、樹脂であってもよいし、セラミックスであってもよい。
【0027】
軸W2の外壁には、その軸心C2と平行に複数の歯T2が設けられている。軸W2は、第2ギヤの一例であり、歯T2は、第2ギヤの歯の一例である。
【0028】
本実施形態において、軸W2は、金属製のブロックを介して定盤に固定されている。なお、ブロックにも符号は付していない。
【0029】
なお、本実施形態において、筒W1及び軸W2の高さ(軸心と平行な方向の長さ)は、互いに等しい。ただし、筒W1及び軸W2の高さは、これに限定されず、適宜さだめることができる。
【0030】
ただし、噛合装置1が噛合させる第1ギヤ及び第2ギヤは、筒W1及び軸W2に限定されない。第1ギヤ及び第2ギヤの組み合わせは、各々の位相があった半噛合の状態において、第1ギヤを少なくとも軸心と平行な方向に並進させることによって全噛合させることができる組み合わせであればよい。
【0031】
第1ギヤ及び第2ギヤの組み合わせの他の例としては、一方又は両方が平歯車である組み合わせ、一方又は両方がはすば歯車である組み合わせ、及び、ラックとピニオンとの組み合わせが挙げられる。ラック及びピニオンの場合であれば、ピニオンを第1ギヤとし、ラックを第2ギヤとする場合がおおい。ただし、2つのギヤの組み合わせにおいて、何れを第1ギヤとするかは、組み立て完成品の構成に応じて適宜選択することができる。
【0032】
また、半噛合とは、第1ギヤと第2ギヤとが軽く噛んでいる状態のことを意味し、全噛合とは、第1ギヤと第2ギヤとが完全に噛んでいる状態のことを意味する。言い替えれば、半噛合は、第1ギヤ及び第2ギヤの組み立てが完了していない状態を意味し、全噛合は、第1ギヤ及び第2ギヤの組み立てが完了した状態を意味する。
【0033】
筒W1及び軸W2の場合、半噛合は、筒W1の下端面近傍の歯T1と、軸W2の上端面近傍の歯T2とが噛合しており、歯T1及び歯T2の大部分は、互いに噛合していない状態を指す。一方、全噛合は、軸W2が筒W1の内部に収容されており、軸心方向に沿って見た場合に、歯T1の全部分と歯T2の全部分とが噛合している状態を指す。
【0034】
上述した半噛合及び全噛合の定義は、第1ギヤ及び第2ギヤの少なくとも何れか一方として厚みが薄い(高さが低い)平歯車を用いた場合にも適用できる。
【0035】
また、半噛合の筒W1及び第2ギヤ(軸W2)において、位相が合っている状態とは、第1ギヤ(筒W1)の軸心(軸心C1)と第2ギヤ(軸W2)との軸心(軸心C2)とが一致しており、且つ、第1ギヤ(筒W1)の歯(歯T1)と第2ギヤ(軸W2)の歯(歯T2)とが互いに接触していない状態を意味する。
【0036】
半噛合の筒W1及び軸W2において位相が合っている場合、軸心C1と軸心C2とが一致しており、歯T1と歯T2とは接触していないため、筒W1を並進させるだけで歯T1と歯T2とを接触させることなく全噛合させることができる。したがって、歯T1及び歯T2には、損傷が生じない。
【0037】
一方、半噛合の筒W1及び軸W2において位相が合っていない場合、歯T1の一部と歯T2一部とが接触しているため、全噛合させることができたとしても歯T1及び歯T2の少なくとも何れかに損傷が生じるし、場合によっては全噛合させることができない。
【0038】
噛合装置1は、半噛合の筒W1及び軸W2において位相を合わせることができるので、歯T1及び歯T2に損傷をしょうじさせることなく、各々を全噛合させることができる。
【0039】
なお、図1に示した噛合装置1、筒W1、及び軸W2の状態は、噛合装置1及び噛合方法M1を説明するために設定したものである。噛合装置1は、製品を自動的に組み立てることによって製造する製造ラインにおいて用いられる。軸W2は、組立途中の製品に既に組み込まれている部品の一例である。軸W2は、製造ラインにおいては、組立途中の製品の一部として、所定の場所に固定されている。一方、筒W1は、これから組立途中の製品に組み込むべき部品である。
【0040】
〔噛合方法〕
噛合方法M1は、図4に示すように、半噛合工程S11と、第1回転工程S12と、第2回転工程S13と、第3回転工程S14と、並進工程S15と、を含んでいる。噛合装置1において、噛合方法M1は、コントローラ14により実行される。本発明の一実施形態には、噛合装置1を制御する制御プログラムPであって、噛合方法M1をコントローラ14に実行させる制御プログラムPも含まれる。
【0041】
図4の(a)~(f)は、図1に示した状態の噛合装置1、筒W1、及び軸W2において、z軸負方向側(すなわち、力覚センサ12及びロボットハンド13の側)から筒W1の上端面(図3の(a)においては上側に位置する端面)を平面視することにより得られた平面図である。軸W2の上側(z軸負方向側)に筒W1が位置するので、筒W1の空洞より軸W2が見える状態になっている。ただし、実施には、筒W1の上側に力覚センサ12及びロボットハンド13が位置するため、外部空間より筒W1及び軸W2を撮像することはできない。
【0042】
図4において、(a)は、噛合方法M1を実施する前の始状態を示す、(b)は、半噛合工程S11を実施した後の状態(すなわち、半噛合の状態)を示し、(c)は、第1回転工程S12を実施したあとの状態を示し、(d)は、第2回転工程S13を実施したあとの状態を示し、(e)は、第3回転工程S14を実施したあとの状態を示し、(f)は、並進工程S15を実施したとの状態(すなわち、全噛合の状態)を示す。
【0043】
<始状態>
噛合方法M1では、図1及び図4の(a)に示すように、軸心C1と軸心C2とがおおよそ一致しているものの、筒W1と軸W2とが離間している状態を始状態とする。
【0044】
図1に図示されているブロックは、定盤上の所定の位置に固定されており、ブロックは、軸W2をおおよそ所定の位置に固定することができる。したがたって、コントローラ14は、ブロックの所定の位置に軸W2を固定した場合における軸心C2の位置及び向きを取得することができる。
【0045】
一方、ロボットハンド13は、3方チャックを用いて、3方チャックの軸心と、筒W1の軸心C1とがおおよそ一致するように、筒W1を把持する。コントローラ14は、3方チャックの軸心を取得することができるので、3方チャックに把持された筒W1の軸心C1の位置及び向きを取得することができる。
【0046】
コントローラ14は、軸心C1と軸心C2とが一致するように、且つ、筒W1と軸W2とが所定の間隔だけ離間するように、ロボットアーム11を制御する。この始状態においては、コントローラ14が取得した軸心C2の所定の位置及び向きと、軸心C2の実際の位置及び向きとが一致しているとは限らないし、コントローラ14が取得した軸心C1の所定の位置及び向きと、軸心C1の実際の位置及び向きとが一致しているとは限らない。
【0047】
<半噛合工程>
半噛合工程S11において、コントローラ14は、ロボットアーム11を制御することにより、筒W1を少なくとも並進させ、筒W1の歯T1を軸W2の歯T2に半噛合させる。
【0048】
具体的には、コントローラ14は、側方から見た場合に、軸W2の上端部と筒W1の下端部とが僅かに重なる位置まで、筒W1を鉛直下向き(図1に図示した座標系ではz軸正方向、図3においては紙面の奥に向かう方向)に並進させる。なお、筒W1における側方から見た場合に、軸W2の上端部と筒W1の下端部とが僅かに重なる位置は、予めコントローラ14に提供しておけばよい。
【0049】
始状態において、筒W1と軸W2との位相が偶然にも合っていた場合、力覚センサ12は、半噛合工程S11が完了するまでの間、いかなる力FもモーメントMも検出しない。したがって、半噛合工程S11が完了するまでの間に力覚センサ12が力F及びモーメントMを検出しない場合、コントローラ14は、筒W1と軸W2との位相が合っていると判定する。この場合、コントローラ14は、第1回転工程S12、第2回転工程S13、及び第3回転工程S14の実行を省略し、後述する並進工程S15を実行する。
【0050】
一方、力覚センサ12は、半噛合工程S11が完了するまでの間に力F及びモーメントMの少なくとも何れかを検出した場合、力覚センサ12の出力信号を取得したコントローラ14は、即座にロボットアーム11の動作を停止させることにより筒W1の並進を止める。この状態において、軸W2の上端面と、筒W1の下端面とは接触している。また、この状態を平面視した場合、歯T1と歯T2との重なり具合は、図4の(a)に示した始状態とおおよそ同じと考えられる。
【0051】
コントローラ14は、力覚センサ12から取得した出力信号が表す力F及びモーメントMの各成分に基づいて、軸心C2に対する軸心C1の相対的な位置及び向きを取得することができる。コントローラ14は、軸心C2に対する軸心C1の相対的な位置及び向きに応じてロボットハンド13を制御することにより、軸心C1の位置及び向きと、軸心C2の位置及び向きとを一致させる。
【0052】
軸心C1の位置及び向きと、軸心C2の位置及び向きとは、一致しているものの、歯T1の一部と、歯T2の一部とが重なっている場合、筒W1及び軸W2の全周にわたって歯T1の一部と、歯T2の一部とが接触するため、力覚センサ12は、z軸負方向に作用する力Fz(以下において負の力Fzと称する)を検出する。
【0053】
コントローラ14は、負の力Fzのみを表す出力信号を取得した場合、軸心C1と軸心C2とが一致しているものの、歯T1の一部と、歯T2の一部とが重なっていると判定する。この場合、コントローラ14は、力覚センサ12を制御することにより、軸W2の上端面と、筒W1の下端面とが僅かに接触したままの状態(すなわち、負の力Fzが僅かに検出される状態)のまま、軸心C1を回転軸として筒W1を時計回り(CW、clockwise)方向に筒W1を回転させる。
【0054】
なお、以下では、筒W1を時計回り方向に回転させることを順回転させると称し、筒W1を反時計回り(CCW、counterclockwise)方向に回転させることを逆回転させると称する。
【0055】
ここで、図4の(b)に示すように、歯T1と歯T2とが重ならなくなると、負の力Fzが検出されなくなる。コントローラ14は、負の力Fzが検出されなくなった時点で即座にロボットアーム11の動作を停止させる。以上の工程を実施することにより、筒W1及び軸W2は、筒W1が軸W2に反噛合した状態になる。
【0056】
なお、軸W2の上端面及び筒W1の下端面に生じ得る損傷をできる限り低減するためには、筒W1を順回転させる場合に、筒W1を軸W2から離間させた状態(負の力Fzが検出されない状態)で筒W1の順回転を実行するとよい。
【0057】
ただし、この方法を採用する場合、筒W1を順回転させている最中に力Fzをモニターすることができないため、歯T1と歯T2とが重なっているのか否かをコントローラ14が判定できない。したがって、この方法を採用する場合、以下の(1)~(3)の工程を繰り返すことが好ましい。(3)を実行したあとにおいて負の力Fzが検出されない場合、コントローラ14は、歯T1と歯T2とが重なっていないと判定することができる。(1)筒W1を上方に移動させることにより、筒W1を軸W2から離間させる、(2)筒W1を僅かな角度(例えば1°)だけ順回転させる、(3)側方から見た場合に、軸W2の上端部と筒W1の下端部とが僅かに重なる位置まで、筒W1を下方に移動させる。
【0058】
なお、半噛合工程S11を実行する方法は、上述した方法に限定されるものではない。筒W1の歯T1を軸W2の歯T2に半噛合させる方法としては、例えば、撮像装置の一態様であるビジョンセンサを用いることもできるし、パソコン上でティーチングを行うオフラインティーチングを用いてもよい。
【0059】
<第1回転工程>
第1回転工程S12において、コントローラ14は、ロボットハンド13を制御することにより、筒W1の歯T1が軸W2の歯T2に接触するまで、筒W1を順回転させる(図4の(c)参照)。筒W1を順回転させることにより歯T1が歯T2に接触した場合、力覚センサ12は、反時計回り方向のモーメントMz(以下において負のモーメントMz)を検出する。
【0060】
コントローラ14は、力覚センサ12の出力センサを参照している。コントローラ14は、第1回転工程S12において負のモーメントMzを表す出力信号を取得した場合、ロボットハンド13を制御することにより、即座に筒W1の順回転を停止する。また、ロボットハンド13は、この時点におけるロボットハンド13における3方チャックの回転角θ1を表す回転角信号をコントローラ14に提供する。
【0061】
<第2回転工程>
第2回転工程S13において、コントローラ14は、ロボットハンド13を制御することにより、筒W1の歯T1が軸W2の歯T2に接触するまで、筒W1を逆回転させる(図4の(d)参照)。筒W1を順回転させることにより歯T1が歯T2に接触した場合、力覚センサ12は、時計回り方向のモーメントMz(以下において正のモーメントMz)を検出する。
【0062】
コントローラ14は、力覚センサ12の出力センサを参照している。コントローラ14は、第2回転工程S13において正のモーメントMzを表す出力信号を取得した場合、ロボットハンド13を制御することにより、即座に筒W1の逆回転を停止する。また、ロボットハンド13は、この時点におけるロボットハンド13における3方チャックの回転角θ2を表す回転角信号をコントローラ14に提供する。
【0063】
<第3回転工程>
第3回転工程S14において、コントローラ14は、ロボットハンド13を制御することにより、第2回転工程S13において筒W1を逆回転させる際の回転角よりも小さい回転角だけ、筒W1を順回転させる(図4の(e)参照)。また、第3回転工程S14において筒W1を順回転させる際の回転角は、第2回転工程S13において筒W1を逆回転させる際の回転角の1/2であることが好ましい。
【0064】
コントローラ14は、ロボットハンド13から取得した回転角信号が表す回転角θ1及び回転角θ2を取得し、回転角θ1と回転角θ2との差分を取ることにより第2回転工程S13において筒W1を逆回転させる際の回転角を算出する。これにより、反噛合の状態において、歯T1と歯T2とが接触しない状態を実現することができる。すなわち、反噛合の状態において、筒W1及び軸W2において位相を合わせることができる。
【0065】
<並進工程>
並進工程S15において、コントローラ14は、ロボットアーム11を制御することにより、筒W1を並進させ、筒W1を軸W2に全噛合させる(図4の(f)参照)。
【0066】
具体的には、コントローラ14は、側方から見た場合に、軸W2が筒W1の内部に収容される位置(筒W1の上端面と軸W2の上端面とが一致する位置)まで、筒W1を鉛直下向き(図1に図示した座標系ではz軸正方向、図3においては紙面の奥に向かう方向)に並進させる。
【0067】
噛合方法M1では、半噛合工程S11を実行することにより軸心C1の位置及び向きと、軸心C2の位置及び向きとを一致させることができる。また、噛合方法M1では、第1回転工程S12~第3回転工程S14を実行することにより、筒W1及び軸W2の位相を合わせることができる。したがって、並進工程S15では、筒W1を並進させるだけで、筒W1と軸W2とを全噛合させることができる。
【0068】
〔噛合装置及び噛合方法の効果〕
噛合装置1によれば、筒W1が軸W2に半噛合した状態において、コントローラ14が半噛合工程S11、第1回転工程S12、第2回転工程S13、第3回転工程S14、及び並進工程S15を含む噛合方法M1を実行する。したがって、軸W2に筒W1が接触しないように位相合わせを実施することができる。
【0069】
第1回転工程S12、第2回転工程S13、及び、第3回転工程S14においては、筒W1の歯T1が軸W2の歯T2に接触している場合における筒W1の回転角に基づいて位相合わせを実施する。したがって、噛合装置1及び噛合方法M1は、筒W1を含む画像及び軸W2を含む画像に頼ることなく位相合わせを実施することができる。
【0070】
また、コントローラ14が並進工程S15を実施することにより、軸W2に筒W1が接触しない状態で筒W1を並進させ、筒W1を軸W2に全噛合させることができる。このように、噛合装置1及び噛合方法M1は、筒W1の歯T1が軸W2の歯T2に接触していない状態で、筒W1及び軸W2を半噛合の状態から全噛合の状態に遷移させることができる。したがって、噛合装置1及び噛合方法M1は、歯T1及び歯T2に損傷が生じたり(あるいは傷が付いたり)、咬み込んだりする可能性を低減するという副次的な効果を奏する。
【0071】
また、第3回転工程S14における筒W1を順回転させる際の回転角が、第2回転工程S13において筒W1を逆回転させる際の回転角の1/2であることにより、半噛合の状態における歯T1と歯T2との間隔を最大化することができる。すなわち、反噛合の状態において、筒W1及び軸W2において位相を一致させることができる。図4の(e)には、筒W1及び軸W2の位相が一致した状態を図示している。
【0072】
また、噛合装置1は、ロボットアーム11とロボットハンド13との間に介在する力覚センサ12を備えている。噛合装置1において、コントローラ14は、第1回転工程S12及び第2回転工程S13において、筒W1の歯T1が軸W2の歯T2に接触したことを、力覚センサ12の出力信号を参照して特定することが好ましい。これにより、コントローラ14は、歯T1が歯T2に接触したことを、筒W1を含む画像及び軸W2を含む画像に頼らなくても確実に検出することができる。
【0073】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1 噛合装置
11 ロボットアーム
12 力覚センサ
13 ロボットハンド
14 コントローラ
W1 筒(第1ギア)
C1 軸心
T1 歯(第1ギヤの歯)
W2 軸(第2ギヤ)
C2 軸心
T2 歯(第2ギヤの歯)
図1
図2
図3
図4