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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039355
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】スマート杖
(51)【国際特許分類】
   A45B 3/00 20060101AFI20230313BHJP
   A45B 9/00 20060101ALI20230313BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A45B3/00 B
A45B9/00 Z
G08G1/005
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146485
(22)【出願日】2021-09-08
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】521397429
【氏名又は名称】森田 康雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【弁理士】
【氏名又は名称】白浜 秀二
(72)【発明者】
【氏名】森田 康雄
【テーマコード(参考)】
3B104
5H181
【Fターム(参考)】
3B104AA03
5H181AA21
5H181AA22
5H181AA23
5H181CC12
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF21
5H181FF33
(57)【要約】
【課題】 簡単な構成で、視力が低下している者に対して、行き先方位を簡易、かつ確実に指標できる安価なスマート杖を提供すること。
【解決手段】
杖の上部先端を掴むことで歩行を補助する杖において、GPS処理部21が取得する位置情報の変位状態を演算してユーザーが歩行する進行方位を確定し、該確定した方位と意図する方位とが一致するように、杖の上部先端面に設ける方向指示部材を回転駆動して進むべき北西・北東・南西・南東・北・北北東・東東北・東・東南東・南南東・南・南南西・西西南・西・西西北・北北西のいずれかの方位を認識させることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップとシャフトとを備えるスマート杖であって、
位置情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得する複数の位置情報から、前記杖を掴んでいるユーザーの進行方位を演算する演算手段と、
前記演算手段が演算した進行方位と、前記ユーザーが進みたい方位とのずれを調整するように、杖を使用する者が掴む前記杖の上部先端面に設ける方向指示部材を回転させて位置決めする制御手段と、
を備えることを特徴とするスマート杖。
【請求項2】
前記方向指示部材は、北西・北東・南西・南東・北・北北東・東東北・東・東南東・南南東・南・南南西・西西南・西・西西北・北北西のいずれかの方位を指標することを特徴とする請求項1に記載のスマート杖。
【請求項3】
前記方向指示部材は、手触りで進行方向を確認できる形状突起部材であることを特徴とする請求項1に記載のスマート杖。
【請求項4】
前記方向指示部材は、手触りで進行方向を確認できる形状凹み部材であることを特徴とする請求項1に記載のスマート杖。
【請求項5】
前記位置情報は、受信するGPS信号から取得することを特徴とする請求項1に記載のスマート杖。
【請求項6】
前記位置情報は、データ端末が受信するGPS信号を無線通信により取得することを特徴とする請求項1に記載のスマート杖。
【請求項7】
杖の長さを調整可能なスマート杖であって、
方位磁石の方位角を検出する検出手段と、
前記検出手段が取得する方位情報に基づいて、杖を使用する者が掴む前記杖の上部先端面に設ける方向指示部材を回転駆動して位置決めする制御手段と、
を備えることを特徴とするスマート杖。
【請求項8】
グリップとシャフトとを備えるスマート杖であって、
方位情報を取得する電子コンパスと、
前記電子コンパスが取得する方位情報に基づいて、杖を使用する者が掴むグリップの上面に設ける方向指示部材を回転駆動して位置決めする制御手段と、
を備えることを特徴とするスマート杖。
【請求項9】
グリップとシャフトとを備えるスマート杖であって、
方位情報を取得する電子コンパスと、
前記グリップの位置情報を取得する取得手段と、
前記電子コンパスが取得する方位情報と、前記取得手段が取得する位置情報とに基づいて、杖を使用する者が掴むグリップの上面に設ける方向指示部材を回転駆動して位置決めする制御手段と、
を備えることを特徴とするスマート杖。
【請求項10】
歩行ルートを入力する入力手段と、
前記取得手段が取得するグリップの位置情報が前記歩行ルートから外れているかどうかを判断する判断手段と、を備え、
前記制御手段は、前記判断手段が前記歩行ルートから外れていると判断した場合、前記歩行ルートへ近づくように前記方向指示部材の方向を制御することを特徴とする請求項9に記載のスマート杖。
【請求項11】
前記グリップは、前記シャフトから着脱自在であることを特徴とする請求項1または9に記載のスマート杖。
【請求項12】
前記制御手段は、前記グリップが前記シャフトから着脱されることを検知して、杖操作モードを携帯モードへ切り替えることを特徴とする請求項1または9に記載のスマート杖。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者が歩行する方向を指標指示するスマート杖に関するものである。
【背景技術】
【0002】
年齢の進行に伴い足腰の筋肉量が低下することで歩行の際、正立状態を保持するための補助具として多種多様な杖が実用化されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、患者が前に歩き出そうとする進行方向に、杖の目印が進行方向と一致することで、患者の目印に対する不安を取り除き、患者に対して歩行を促す際に有効な歩行補助装置が記載されている。
【0004】
具体的には、杖本体は中空の管であり、軽量で曲げ強度の高いカーボンパイプ、アルミ合金等の金属材料で形成される。杖本体の管の部分に搭載部2が取り付けられ、杖の最下部に先端部が取り付けられる。
【0005】
搭載部には光源部、電子制御部、駆動部からなる。光源部にはレーザー発振器とレンズ、プリズム、ミラー等が内蔵され、駆動部とは連結されている。電子制御部には基板、電池、マイコン、GPS、スピーカー、ファン、重力センサ、ジャイロセンサが内蔵されており動作の制御を行う。駆動部には電動モーターが内蔵されており、光源部のレーザー発振器を回転させる。先端部にはスイッチが内蔵されている。
【0006】
このように構成された杖システムは、杖が前に突こうとするときに発生する反動を重力センサが感知し、その方向を進行方向の基準とし電子制御部に保存する。方向が変化した場合、ジャイロセンサが基準からずれたことを感知し、電子制御部から駆動部にずれた分を補正するように命令を出し、駆動部の電動モーターが回転する。駆動部と光源部はジョイントにより連結および動作が連動しており、光源部が作る目印の位置を補正する。杖を地面から離すとスイッッチが切られ、電子制御部に保存された基準も消去する。
杖の使用時にはGPSが起動し、現在位置を無線、IP電話回線網、ISM無線等により送信をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-159133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1によれば、歩行補助具としての機能は、歩行能力を回復させるために使用されており、歩行者が進行したい方向をガイドするものではなく、その機能用途は歩行能力を回復に限定されるものである。
【0009】
一方、GPS機能を備えるスマフォを利用したマップサービスでは、片手または両手でスマフォを操作する必要があり、杖を補助具とする者は、片方の腕を必ず使用するため、スマフォ操作と連動して歩行することは難しい。
また、周辺に土地勘のある者は、単に歩行する方向がガイドされるのであれば、目的地を目指せる場合もある。
【0010】
したがって、上述したような高機能で高価な端末装置を使用するのではなく、行き先方向を簡易に補助できるような機能を備えた杖は、実用化されていなかった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、簡単な構成で、視力が低下している者に対して、行き先方位を簡易、かつ確実に指標できる安価なスマート杖を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する本発明のスマート杖は以下に示す構成を備える。
杖の上部先端を掴むことで歩行を補助するスマート杖であって、杖の上部先端を掴むことで歩行を補助する杖であって、位置情報を取得する取得手段と、前記取得手段が取得する複数の位置情報から、前記杖を掴んでいるユーザーの進行方位を演算する演算手段と、前記演算手段が演算した進行方位と、前記ユーザーが進みたい方位とのずれを調整するように、杖を使用する者が掴む前記杖の上部先端面に設ける方向指示部材を回転させて位置決めする制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成で、視力が低下している者に対して、行き先方向を簡易、かつ確実に指標できる安価な杖を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】スマート杖の操作状態を示す斜視図である。
図2】スマート杖システムの構成を説明するブロック図である。
図3】スマート杖システムの制御方法を説明するフローチャートである。
図4】スマート杖システムの構成を説明する図である。
図5】本実施形態を示すスマート杖の駆動制御回路の一例を示す図である。
図6】本実施形態を示すスマート杖の構成を説明する斜視図である。
図7】本実施形態を示すスマート杖システムの制御方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
<スマート杖の構成の説明>
〔第1実施形態〕
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態を示すスマート杖の操作状態を示す斜視図である。
【0016】
図1において、1は杖本体で、上部(グリップ)1a、杖(シャフト)1b、滑り止めゴム1c、アンテナ1d、方向指示部材1e,USBコネクタ1fを備える。本例は、杖本体1を使用するユーザーが、例えば右手で上部1aを掴んだ状態を示している。なお、グリップ1aは、後述するようにシャフト1bから着脱自在である。また、グリップ1aと、シャフト1bとの係合態様は、ねじ込み式とするがその他の係合部材を用いて係止される。
【0017】
アンテナ1dは、後述するバッテリから供給される電力を受けて、所定周波数のGPS信号を受信し、図2に示す制御部21へ出力する。方向指示部材1eはプラスチック素材で成形され、円形の底板の上に矢印が突起するように構成されている。円形の底板は、後述するステッピングモータの軸に係合する回転軸が設けられている。なお、方向指示部材1eは、手触りで進行方向を確認できる形状凹み部材で構成されていてもよい。
【0018】
方向指示部材1eは、発光LEDが内蔵され夜間の歩行時には、その方向を視認し易くなるように構成されている。なお、方向指示部材1eは、LEDに代えて、内側部に夜光塗料が塗布された方向指示部材1e自体が自然発光する構成としてもよい。USBコネクタ1fは、後述する充電可能な電池へDC電流を供給する。
【0019】
図2は、図1に示したスマート杖システムの構成を説明するブロック図である。
図2において、21はGPS処理部で、アンテナ1dを介して受信するGPS(Global Positioning System(GPS)、全地球測位システム)信号を処理する。GPSとは、アメリカ合衆国によって運用される衛星測位システムの略称である。
【0020】
22は電池で、システムバスに接続される各デバイスに、例えば5Vを供給し、図示しないUSBケーブルを接続することで充電可能なリチウム電池で構成されている。23は演算部で、CPU23A,ROM23B、RAM23Cを備え、ROM23Bに記憶された制御プログラムをRAM23Cに展開して演算処理を行う。
【0021】
24はステッピングモータ(STM)で、演算部23から出力される駆動パルス信号に基づいて回転軸を中心に順転、逆転、停止を行う。これにより、ステッピングモータ24の軸に固着される方向指示部材1eの方位が位置決めされることで1つの方位を指し示す指標機能を発揮する。26は振動部で、偏心回転質量(ERM)方式のバイブレーション機構で構成される。振動部26は、電池22から電源が供給され、CPU23Aにより駆動タイミングが制御される。
【0022】
25は指示方向ボタンで、方向指示部材1eが指し示すべき方位を、例えば4段階(東→西→南→北)切替指示する。なお、指示方向ボタン25が回転指示機構を備える場合は、指示方向ボタン25が正逆回転自在となるため、1方向に回転して行くと、繰り返し東→西→南→北の各方位を指示させることができる。
【0023】
振動部26は、USBコネクタ27に接続されるUSBメモリからあらかじめ設定された歩行ルートを読み出し、杖本体1aを操作する歩行者が設定ルートから外れると振動して進行方向の誤りを通知する。
なお、演算部23は、GPS処理部21が取得する位置情報と、USBメモリから読み出す歩行ルートを比較しながら、方向指示部材1eの駆動を制御する。
また、杖本体1に図示しないブルートゥース通信機能を備える場合には、スマフォから歩行ルートを取得することも可能である。
【0024】
27はUSBコネクタで、USBメモリ、スマートフォン等と接続して、方向ルートを入力することができる。また、歩行した位置情報の履歴をUSBメモリに書き込んだり、スマートフォンへ通知したりすることができる。
【0025】
なお、方位は、記憶されるプログラムを実行することに応じて、東、西、南、北のいずれかの方位を指し示すことができる。また、方向指示部材1eの機能を開始または停止するボタンを備え、消費電力を抑える構成を組み入れてもよい。
【0026】
また、ユーザーの中指、薬指、小指が掴む杖の周囲に押下スイッチを設けて、指示する方位を順次サイクリックに変更することで、ユーザーが所望する方位を指し示すように制御してもよい。
【0027】
その際、方向指示部材1eが発光するLEDの色を指し示す方位に従い、緑、青、赤、黄に色分け表示する制御を組み入れても良い。
また、CPU23Aは、グリップ1aがシャフト1bから着脱されることを検知して、杖操作モードを後述する携帯モードへ切り替える。
【0028】
図3は、本実施形態を示すスマート杖システムの制御方法を説明するフローチャートである。なお、各ステップは、CPU23AがROM23Bに記憶された制御プログラムをRAM23Cにロードして実行することで実現される。
【0029】
まず、図示しない電源ボタンが押下されると、CPU23AはROM23Bに記憶された制御プログラムをRAM23Cにロードして処理を開始する。所定の初期化作業を終了したら、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北であるかどうかを判断する(1)。ここで、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北であると判断した場合、ステップ(5)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を演算し、その演算された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D2と一致するかどうかを判断する(6)。ここで、D1=D2(北)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが12時方向を指し示すようにSTM24を制御する(7)。
【0030】
一方、ステップ(6)で、D1≠D2(北)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが12時方向を指し示すようにSTM24を制御して(10)、方向指示部材1eを位置決めした後、ステップ(8)へ進む。
【0031】
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(8)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(1)へ戻る。
【0032】
一方、ステップ(8)で、現在の方位を変更する指示がなされていないと判断した場合、CPU23Aは、電源をOFFする指示がなされているかどうかを判断したら(9)、本処理を終了する。
【0033】
一方、ステップ(1)で、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北でないと判断した場合、CPU23Aは、ステップ(2)で、ユーザーが設定している指標すべき方位が南であるかどうかを判断する。
【0034】
ここで、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が南であると判断した場合、ステップ(5)へ進み、GPS処理部21が受信する位置情報を取得したら、ステップ(6)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を判断し、その演算された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D3(南)と一致するかどうかを判断する。
【0035】
ここで、D1=D3(南)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが6時方向(↓)を指し示すようにSTM24を制御する。
【0036】
一方、ステップ(6)で、CPU23Aは、その演算された方位が、ユーザーにより選択している方位と一致しないと判断した場合、ステップ(10)へ進み、CPU23Aは、歩行ルートとの方位差分に基づいて、方向指示部材1eを位置決め制御して、ステップ(8)へ進む。
【0037】
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(8)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(1)へ戻る。
【0038】
一方、ステップ(1)で、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北でもなく、ステップ(2)で南でもないと判断した場合、CPU23Aは、ステップ(3)で、ユーザーが設定している指標すべき方位が東であるかどうかを判断する。
【0039】
次に、ステップ(5)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を確定し、その確定された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D4(東)と一致するかどうかを判断する(6)。
【0040】
ここで、D1=D4(東)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが3時方向(→)を指し示すようにSTM24を制御する。
【0041】
一方、ステップ(6)で、CPU23Aは、その演算された方位が、ユーザーにより選択している方位と一致しないと判断した場合、ステップ(10)へ進み、CPU23Aは、歩行ルートとの方位差分に基づいて、方向指示部材1eを位置決め制御して、ステップ(8)へ進む。
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(8)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(1)へ戻る。
【0042】
一方、ステップ(1)で、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北でもなく、南でもなく、東でもない判断した場合、CPU23Aは、ステップ(4)で、ユーザーが設定している指標すべき方位が西であるかどうかを判断する。
【0043】
次に、ステップ(5)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を確定し、その確定された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D5(西)と一致するかどうかを判断する(6)。
【0044】
ここで、D1=D5(西)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが3時方向(←)を指し示すようにSTM24を制御する。
【0045】
一方、ステップ(6)で、CPU23Aは、その演算された方位が、ユーザーにより選択している方位と一致しないと判断した場合、ステップ(10)へ進み、CPU23Aは、歩行ルートとの方位差分に基づいて、方向指示部材1eを位置決め制御して、ステップ(8)へ進む。
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(8)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(1)へ戻る。
【0046】
一方、ステップ(8)で、現在の方位を変更する指示がなされていないと判断した場合、CPU23Aは、電源をOFFする指示がなされているかどうかを判断したら(9)、本処理を終了する。
【0047】
なお、位置情報は、杖を掴むユーザーが形態するデータ端末が受信するGPS信号を無線通信により取得する構成としてもよい。
これにより、より正確な位置情報を取得して、指示すべき方位の誤差を小さく収めることができる。
【0048】
〔第1の実施形態の効果〕
本実施形態によれば、簡単な構成で、視力が低下している者に対して、行き先方向を簡易、かつ確実に指標できる安価な杖を提供できる。
【0049】
また、ユーザーは、方向指示部材1eが杖本体の上部面に突起する形態となるため、手触りで矢印の方向を触覚で認知できるため、視力にかかわらずだれでも薄暗い環境下において、進行方位を確実に認識することができる。
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態を示すスマート杖システムの構成を説明する図である。なお、図1と同一のものには同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図4において、31は磁気コンパスで、地磁気に対応して方位北を矢印で指し示す。32は角度センサで、磁気コンパス31の軸に連動して回動する方向辺と、北向きとの角度差を読み取る。演算処理部23は、読み取った角度差に基づいて方向指示部材1eを位置決めする回転量を演算する。そして、演算処理部23は、演算した回転量に従い方向指示部材1eを位置決めするステップ数をSTM24に出力する。なお、STM24の回転軸は、方向指示部材1eに連結されている。このように、演算処理部23がSTM24を制御することにより、方向指示部材1eは、杖本体1の上部平面上で、常時北方向を指し示すように位置決めされる。なお、電池22より、角度センサ32,STM24に対して必要な電源が供給されている。
【0051】
電池22より電源が供給された状態では、ユーザーが杖本体1を利き手で掴むと、該杖本体1の上部平面に回動自在に設けられた方向指示部材1eは、ユーザーの歩行方向に左右されることなく、方位が北である方向を指し示すように位置決めされる。
【0052】
これにより、ユーザーは、歩行して進行している方位と、磁石が示す北方向との差分を常に手触りで認識しながら歩行するように導くことができる。つまり、北方向を意識しながら、散歩や買い物を行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態では、方位として北を指し示す例を示したが、角度センサ32が東西南のそれぞれの角度差を認識することに基づいて、STM24が杖本体1の上部平面に回動自在に設けられた方向指示部材1eの位置決めを行う構成とすることで、ユーザーが意図する方向を指し示すように方向指示部材1eを機能させることができる。
〔第2実施形態の効果〕
【0054】
第1実施形態に比べて、簡単な構成で歩行するユーザーのバランスを指示しつつ、進行する方位を指し示すことができる安価なスマート杖を提供することができる。
【0055】
〔第3実施形態〕
図5は、本実施形態を示すスマート杖の駆動制御回路の一例を示す図である。なお、図1図2と同一のものには同一の符号を付してある。
本例は、ホール素子を利用する磁気センサの情報を演算処理して方位情報を取得する例である。
【0056】
図5において、31はホール素子で、電池22により供給される電源により駆動する。ホール素子31は、内部の半導体薄膜などに電流が流れると、ホール効果によって磁束密度や向きに応じた電圧が出力磁場と電流の相互作用で電流にローレンツ力が加わり起電力が発生する。
【0057】
34は演算部で、オペアンプ33で増幅された電圧値を演算処理することで方位(北)を指示する駆動信号を生成する。35はステッピングモータ(STM)で、演算部34から出力される駆動信号(駆動パルス)を受信することで、ステッピングモータ35の軸に直結される方向指示部材1eを回転移動させる。
【0058】
これにより、杖本体(グリップ)1のグリップ1aに設ける方向指示部材1eの矢印方向が方位北を指示させることができる。
【0059】
方位設定部25は、方向指示部材1eの矢印方向(北)を基準として、当該→の向きを、東、西、南のいずれかを指示させたい場合に押下指示することにより、方位を北のみではなく、他の方位に指示させることができる。
【0060】
なお、本実施形態に示すスマート杖においても、上述した図4の処理を適用することができる。
〔第3の実施形態の効果〕
本実施形態によれば、電子コンパス機能を利用して方向指示部材1eの指示する方位を制御するので、安価なコストで正確な方位を指し示すことが可能となる。
【0061】
また、歩行者が歩行する状態に連動して、電子コンパスが作動して方向指示部材1eを駆動するため、方位精度が極めて高い方位を歩行者に指示できる。
【0062】
〔第4実施形態〕
図6は、本実施形態を示すスマート杖の構成を説明する斜視図である。
本例は、杖本体1から上部1aが分離可能な構成を特徴とする。なお、杖本体1に対する上部1aと杖1bとの接続態様がねじ込み式で固着される例とする。
また、上部1aと杖1bとの接続状態が解除された状態で、上部1a内に設ける駆動回路基板への電源を供給する電池等の交換作業を行う。
【0063】
また、上部1aと杖1bとの接続状態が解除された状態では、ねじ込み穴が露出するため、分離した状態で使用する場合には、防水性の高いゴムブッシュを装着できるように構成されている。
【0064】
さらに、上部1aの素材が軽量なプラスチック素材で成型されている場合、非常に持ち運びが楽なため、旅行鞄等に入れて携帯することも可能である。
【0065】
〔第4実施形態の効果〕
本実施形態によれば、杖を使用する歩行者は、歩行の用途に合わせてグリップ1aとシャフト1bとを分離して持ち運びすることが可能となり、一体使用時以外の使用用途が拡張され、普段使いから、旅行先での利用にも柔軟に対応することができる。
【0066】
また、本実施形態を示すグリップ部を簡単に取り外せるので、歩行方位指示機能のバージョンアップも容易に行うことができる。
【0067】
これにより、旅行先等であって、道路事情に不案内な使用者であっても、電源を入れるだけで、方向指示部材1eに所望の方位を指示させることができる。方向音痴といわれる人たちにとっては、携帯アプリの電子コンパスよりも手軽なコンパスとして使用勝手に優れている。
【0068】
〔第5実施形態〕
図7は、本実施形態を示すスマート杖システムの制御方法を説明するフローチャートである。なお、各ステップは、CPU23AがROM23Bに記憶された制御プログラムをRAM23Cにロードして実行することで実現される。
【0069】
まず、図示しない電源ボタンが押下されると、CPU23AはROM23Bに記憶された制御プログラムをRAM23Cにロードして処理を開始する。所定の初期化作業を終了したら、CPU23Aは、USBコネクタ27に接続されたUSBメモリから所定のアプリで作成された歩行ルートを示す情報を読み込み、RAM23cにロードする(11)。
【0070】
次に、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北であるかどうかを判断する(12)。ここで、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北であると判断した場合、ステップ(16)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を演算し、その演算された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D2と一致するかどうかを判断する(17)。
【0071】
ここで、D1=D2(北)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが12時方向を指し示すようにSTM24を制御する(18)。
【0072】
一方、ステップ(17)で、D1≠D2(北)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが12時方向を指し示すようにSTM24を制御して(22)、方向指示部材1eを位置決めした後、ステップ(19)へ進む。
【0073】
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(19)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(12)へ戻る。
【0074】
一方、ステップ(19)で、現在の方位を変更する指示がなされていないと判断した場合、CPU23Aは、電源をOFFする指示がなされているかどうかを判断したら(20)、本処理を終了する。
【0075】
一方、ステップ(12)で、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北でないと判断した場合、CPU23Aは、ステップ(13)で、ユーザーが設定している指標すべき方位が南であるかどうかを判断する。
【0076】
ここで、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が南であると判断した場合、ステップ(16)へ進み、GPS処理部21が受信する位置情報を取得したら、ステップ(17)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を判断し、その演算された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D3(南)と一致するかどうかを判断する。
【0077】
ここで、D1=D3(南)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが6時方向(↓)を指し示すようにSTM24を制御する(18)。
【0078】
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(19)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(12)へ戻る。
【0079】
一方、ステップ(12)で、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北でもなく、ステップ(13)で南でもないと判断した場合、CPU23Aは、ステップ(14)で、ユーザーが設定している指標すべき方位が東であるかどうかを判断する。
【0080】
次に、ステップ(16)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を確定し、その確定された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D4(東)と一致するかどうかを判断する。
【0081】
ここで、D1=D4(東)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが3時方向(→)を指し示すようにSTM24を制御する。
【0082】
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(19)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(1)へ戻る。
【0083】
一方、ステップ(1)で、CPU23Aは、ユーザーが設定している指標すべき方位が北でもなく、南でもなく、東でもない判断した場合、CPU23Aは、ステップ(15)で、ユーザーが設定している指標すべき方位が西であるかどうかを判断する。
【0084】
次に、ステップ(16)へ進み、CPU23AはGPS処理部21が受信する現在位置の変化から進行方位を確定し、その確定された方位D1が、ユーザーにより選択している方位D5(西)と一致するかどうかを判断する。
【0085】
ここで、D1=D5(西)であるとCPU23Aが判断した場合、CPU23Aは、方向指示部材1eが3時方向(←)を指し示すようにSTM24を制御する。
【0086】
次に、CPU23Aは、ユーザーより現在の方位を変更する指示がなされているか否かを判断する(19)。ここで、現在の方位を変更する指示がなされていると判断した場合、ステップ(12)へ戻る。
【0087】
一方、ステップ(19)で、現在の方位を変更する指示がなされていないと判断した場合、CPU23Aは、電源をOFFする指示がなされているかどうかを判断したら(20)、本処理を終了する。
なお、位置情報は、杖を掴むユーザーが形態するデータ端末が受信するGPS信号を無線通信により取得する構成としてもよい。
【0088】
一方、ステップ(17)で、CPU23Aは、その演算された方位が、ユーザーにより選択している方位と一致しないと判断した場合、ステップ(21)へ進み、振動部26を駆動して、歩行している方向が歩行ルートから外れていることをバイブレーションで通知する。
【0089】
これにより、グリップ1aを握っている使用者は、歩行している方向が予定しているルートから外れていることを認知する。
【0090】
次に、ステップ(22)で、CPU23Aは、歩行ルートとの方位差分に基づいて、方向指示部材1eを位置決め制御して、ステップ(19)へ進む。
これにより、グリップ1aを握っている使用者は、歩行ルートへ戻る方位を方向指示部材1eの方位指示状態から認知することができる。
【0091】
これにより、あらかじめ設定した歩行ルートと、取得する正確な位置情報とから、杖を握って歩行している歩行者に移動すべき方位を連続して指示することができ、道に迷って右往左往するような事態を回避し、短時間で目的地まで誘導することができる。
〔第5の実施形態の効果〕
【0092】
本実施形態によれば、簡単な構成で、視力が低下している者に対して、行き先方向を簡易、かつ確実に指標できる安価なスマート杖を提供できるとともに、あらかじめ設定した歩行ルートから外れた歩行をしている旨をいち早く通知して、歩行する方位を迅速に修正させることができる。
【0093】
なお、インターネットから取得する最新の地図情報や道路工事情報に基づいてあらかじめ設定した歩行ルートに障害が予想される場合には、歩行ルートの変更を催促するような機能を設けてもよい。
【0094】
さらに、道路上の様々な情報(坂道下りとか、坂道上りとか)、例えば一方交通路であるとか、道幅が細いとか、信号のない交差点であるとか、道路上の段差等の情報を取得できる交通システムが確立されている場合は、さらに杖を使用して歩く歩行者に快適で、安全な歩行ルートを方向指示部材1eで示すサービス(アプリケーションサービス)との連携も期待できる。
【0095】
なお、シャフトは、テープ状のLED照明を巻き付けることで、歩行ルートに従う方位から外れた場合、イルミネーション表示を行う制御を行うことで、杖使用者が道に迷っていることを周囲の補助者に認知させて、積極的なサポート支援を受けられるように構成してもよい。
【0096】
また、歩行者が1点に留まり、移動しない時間が所定時間経過した状態を検出した場合、歩行者に医療的保護が必要と判断して、上記テープ状のLED照明が赤色表示となるように制御する構成を加えてもよい。
これにより、歩行者が突発的に体調を崩している場合、積極的な医療介護の支援を受けられる。
【0097】
なお、上記第1実施形態および第5実施形態において、指示可能な方位を東西南北4通りの例を示したが、北西・北東・南西・南東・北西北・北北東・東東北・東・東南東・南南東・南・南南西・西西南・西・西西北・北北西の12方位を含めて指示できるように構成してもよい。この場合、図3図7に示す方位判断処理が12通とすることで実現可能である。
これにより、杖使用者に対して、さらに使い勝手のよい方位を指示することができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【符号の説明】
【0098】
1 杖本体
22 電源
23 演算処理部
24 STM

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7