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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003942
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】電気化学反応セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20230110BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230110BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105336
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA14
5H126BB06
5H126EE11
5H126JJ00
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】ガス室を流れる反応ガスの単セル内への流通性が阻害されることに起因する電気化学反応セルスタックの性能の低下を抑制する。
【解決手段】電気化学反応セルスタックは、複数の電気化学反応単位を備える。電気化学反応単位は、単セルと、単セルに対して第1の方向(空気極と燃料極とが対向する方向)側に配置された第1導電部材と、単セルと第1導電部材との間に位置し、かつ、熱膨張係数が第1導電部材の熱膨張係数とは異なる第2導電部材と、単セルと第1導電部材との間に位置するスペーサーとを備える。電気化学反応単位は、更に、第2導電部材の先端部と、第1導電部材とを接合する複数の接合部を備える。複数の接合部は、第1の方向視において特定方向に沿って互いに間隔を空けつつ並んでいる。第2導電部材の先端部は、特定領域の一部において欠損している。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、
前記単セルに対して前記第1の方向側に配置された第1導電部材と、
前記単セルと前記第1導電部材との間に位置し、かつ、熱膨張係数が前記第1導電部材の熱膨張係数とは異なる、第2導電部材と、
前記単セルと前記第1導電部材との間に位置するスペーサーと、を備える電気化学反応単位が複数並べて配置された電気化学反応セルスタックであって、
少なくとも1つの前記電気化学反応単位である特定反応単位における前記第2導電部材は、
前記空気極と前記燃料極とのうちの一方である特定電極に接触し、前記特定電極とは反対側において前記スペーサーと接触する電極側接触部と、
前記第1導電部材に接触する反対側接触部と、
前記電極側接触部と前記反対側接触部とを繋ぐ連接部と、
前記電極側接触部に繋がり、かつ、前記スペーサーに対して前記連接部とは反対側に位置する部分を有する先端部であって、前記第1の方向視において前記スペーサーに沿った特定方向に延伸している先端部と、を備える、電気化学反応セルスタックにおいて、
前記特定反応単位は、前記第2導電部材の前記先端部と、前記第1導電部材とを接合する複数の接合部であって、前記第1の方向視において前記特定方向に沿って互いに間隔を空けつつ並んでいる複数の接合部を備え、
前記複数の接合部のうちのいずれかを第1接合部とし、前記第1接合部の隣に位置する前記接合部を第2接合部とし、かつ、
前記第1の方向視において、前記第1接合部の中心と前記第2接合部の中心とを通る仮想直線に直交する方向を第2の方向とし、前記第1接合部に重なる前記第2の方向の仮想直線のうち、前記先端部の前記電極側接触部とは反対側の輪郭線と交差する第1外側交点と、前記第1接合部に最も近い前記スペーサーの表面と交差する第1内側交点とを結ぶ仮想線分を第1線分とし、前記第2接合部に重なる前記第2の方向の仮想直線のうち、前記先端部の前記電極側接触部とは反対側の輪郭線と交差する第2外側交点と、前記第2接合部に最も近い前記スペーサーの表面と交差する第2内側交点とを結ぶ仮想線分を第2線分とし、前記第1外側交点と前記第2外側交点とを結ぶ仮想線分を第3線分とし、前記第1内側交点と前記第2内側交点とを結ぶ仮想線分を第4線分とし、前記第1線分と前記第2線分と前記第3線分と前記第4線分とにより囲まれた領域を特定領域としたときに、
前記先端部は、前記特定領域の一部において欠損している、
ことを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応セルスタックであって、
前記第1線分の前記第2の方向の長さをL1とし、前記第2線分の前記第2の方向の長さをL2とし、前記第1線分と前記第2線分との間において前記第2の方向に前記先端部の欠損している部分を通過する仮想線分であって、前記第3線分と前記第4線分とを結ぶ仮想線分のうち、前記電極側接触部および前記先端部と重なる部分の長さをL3とし、長さL3/長さL1を第1比A1とし、長さL3/長さL2を第2比A2としたときに、
第1比A1と第2比A2は、いずれも0.8以下である、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応セルスタックであって、
前記連接部に、前記連接部に対して前記スペーサーとは反対側の空間に連通する貫通孔であって、前記単セルに面する貫通孔が形成されている、
ことを特徴とする電気化学反応セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、電気化学反応セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、燃料電池発電単位(以下、「発電単位」という。)が複数並べて配置された燃料電池スタックの形態で利用される。発電単位は、燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)を備える。単セルは、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という。)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
各発電単位102は、さらに、単セルに対して第1の方向側に配置されたインターコネクタと、単セルとインターコネクタとの間に位置する燃料極側集電体と、単セルとインターコネクタとの間に位置するスペーサーとを備える。インターコネクタは、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。燃料極側集電体は、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。インターコネクタと燃料極側集電体とは、互いに熱膨張係数が異なっている。スペーサーは、第1の方向視において所定方向に延伸している。
【0004】
燃料極側集電体は、電極側接触部と、反対側接触部と、連接部と、先端部とを備える(例えば、特許文献1参照)。電極側接触部は、燃料極に接触し、燃料極とは反対側においてスペーサーと接触している。反対側接触部は、インターコネクタに接触している。連接部は、電極側接触部と反対側接触部とを繋いでいる。先端部は、電極側接触部に繋がり、かつ、スペーサーに対して連接部とは反対側に位置する部分を有する。先端部は、第1の方向視において、スペーサーが延伸する方向(以下、「スペーサー延伸方向」という。)に延伸している。各発電単位は、燃料極側集電体の先端部とインターコネクタとを接合する複数の接合部を備える。この複数の接合部は、第1の方向視においてスペーサー延伸方向に沿って互いに間隔を空けつつ並んでいる。第1の方向視において、燃料極側集電体の先端部のスペーサー延伸方向の長さは、均一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-022471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の燃料電池スタックにおいては、例えば運転中の温度変化が生じた際に、インターコネクタと燃料極側集電体(より厳密には、燃料極側集電体の上記先端部)との間の熱膨張差に起因して燃料極側集電体の上記先端部が変形した結果、当該先端部のうち、いずれかの上記接合部と当該接合部の隣に位置する上記接合部との間の部分(換言すれば、インターコネクタに接合されていない部分。以下、「非接合部」という。)が単セルに接触し、その結果、当該非接合部により、単セルと燃料室(単セルとインターコネクタとの間の空間)との間が塞がれた状態となることがある。このように単セルと燃料室との間が塞がれると、燃料室(単セルとインターコネクタとの間の空間)を流れる反応ガスの単セル内への流通性が阻害される。そのため、この燃料電池スタックにおいては、燃料室を流れる反応ガスの単セル内への流通性が阻害され、これにより、燃料電池スタックの性能が低下するおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、上記の燃料電池スタックにおいて、「燃料極」を「空気極」に置換し、「燃料極極側集電体」を「空気極側集電体」に置換した構成である燃料電池スタックにも共通の問題である。また、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の問題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される電気化学反応セルスタックは、電解質層と、前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極と、を含む単セルと、前記単セルに対して前記第1の方向側に配置された第1導電部材と、前記単セルと前記第1導電部材との間に位置し、かつ、熱膨張係数が前記第1導電部材の熱膨張係数とは異なる、第2導電部材と、前記単セルと前記第1導電部材との間に位置するスペーサーと、を備える電気化学反応単位が複数並べて配置された電気化学反応セルスタックであって、少なくとも1つの前記電気化学反応単位である特定反応単位における前記第2導電部材は、前記空気極と前記燃料極とのうちの一方である特定電極に接触し、前記特定電極とは反対側において前記スペーサーと接触する電極側接触部と、前記第1導電部材に接触する反対側接触部と、前記電極側接触部と前記反対側接触部とを繋ぐ連接部と、前記電極側接触部に繋がり、かつ、前記スペーサーに対して前記連接部とは反対側に位置する部分を有する先端部であって、前記第1の方向視において前記スペーサーに沿った特定方向に延伸している先端部と、を備える、電気化学反応セルスタックにおいて、前記特定反応単位は、前記第2導電部材の前記先端部と、前記第1導電部材とを接合する複数の接合部であって、前記第1の方向視において前記特定方向に沿って互いに間隔を空けつつ並んでいる複数の接合部を備え、前記複数の接合部のうちのいずれかを第1接合部とし、前記第1接合部の隣に位置する前記接合部を第2接合部とし、かつ、前記第1の方向視において、前記第1接合部の中心と前記第2接合部の中心とを通る仮想直線に直交する方向を第2の方向とし、前記第1接合部に重なる前記第2の方向の仮想直線のうち、前記先端部の前記電極側接触部とは反対側の輪郭線と交差する第1外側交点と、前記第1接合部に最も近い前記スペーサーの表面と交差する第1内側交点とを結ぶ仮想線分を第1線分とし、前記第2接合部に重なる前記第2の方向の仮想直線のうち、前記先端部の前記電極側接触部とは反対側の輪郭線と交差する第2外側交点と、前記第2接合部に最も近い前記スペーサーの表面と交差する第2内側交点とを結ぶ仮想線分を第2線分とし、前記第1外側交点と前記第2外側交点とを結ぶ仮想線分を第3線分とし、前記第1内側交点と前記第2内側交点とを結ぶ仮想線分を第4線分とし、前記第1線分と前記第2線分と前記第3線分と前記第4線分とにより囲まれた領域を特定領域としたときに、前記先端部は、前記特定領域の一部において欠損している。
【0011】
本電気化学反応セルスタックでは、上述したように、第2導電部材は、スペーサーに対して連接部とは反対側に位置する部分を有する先端部を備える。そのため、スペーサーの所定方向(第2導電部材の連接部とスペーサーとが並ぶ方向)の位置ずれを抑制することができ、ひいては、スペーサーの当該所定方向の位置ずれによりガス室(単セルと第1導電部材との間の空間)内のガスの流れが悪化することに起因する電気化学反応セルスタックの性能の低下を抑制することができる。
【0012】
ところで、上述した従来の燃料電池スタック(特開2021-022471号公報)では、特定領域は欠損していない。そのため、この燃料電池スタックにおいては、例えば運転中の温度変化が生じた際に、第1導電部材と第2導電部材(より厳密には、第2導電部材の先端部)との間の熱膨張差に起因して第2導電部材の先端部が変形した結果、先端部の非接合部(先端部のうち、第1接合部と第2接合部との間の部分)が単セルに接触し、その結果、当該非接合部により、単セルとガス室(単セルと第1導電部材との間の空間)との間が塞がれた状態となることがある。このように単セルとガス室との間が塞がれると、ガス室(単セルと第1導電部材との間の空間)を流れる反応ガスの単セル内への流通性が阻害される。そのため、この燃料電池スタックにおいては、ガス室を流れる反応ガスの単セル内への流通性が阻害され、これにより、電気化学反応セルスタックの性能が低下するおそれがある。
【0013】
これに対し、本電気化学反応セルスタックでは、上述したように、特定領域の一部において欠損している。そのため、第1導電部材と第2導電部材との間の熱膨張差に起因して、先端部の非接合部(先端部のうち、第1接合部と第2接合部との間の部分)が変形し、先端部の非接合部が単セルに接触したとしても、特定領域が欠損していない構成と比較して、先端部の非接合部と単セルとの接触面積が小さいため、ガス室を流れる反応ガスの単セル内への流通性が阻害されることが抑制される。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、第1導電部材と第2導電部材との間の熱膨張差に起因して先端部の非接合部が変形し、先端部の非接合部が単セルに接触することに起因する電気化学反応セルスタックの性能の低下を抑制することができる。
【0014】
(2)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記第1線分の前記第2の方向の長さをL1とし、前記第2線分の前記第2の方向の長さをL2とし、前記第1線分と前記第2線分との間において前記第2の方向に前記先端部の欠損している部分を通過する仮想線分であって、前記第3線分と前記第4線分とを結ぶ仮想線分のうち、前記電極側接触部および前記先端部と重なる部分の長さをL3とし、長さL3/長さL1を第1比A1とし、長さL3/長さL2を第2比A2としたときに、第1比A1と第2比A2は、いずれも0.8以下である構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックでは、先端部の非接合部と単セルとの接触面積が特に小さくなり、ガス室を流れる反応ガスの単セル内への流通性が阻害されることが特に効果的に抑制される。従って、本電気化学反応セルスタックによれば、特に効果的に、第1導電部材と第2導電部材との間の熱膨張差に起因して先端部の非接合部が変形し、先端部の非接合部が単セルに接触することに起因する電気化学反応セルスタックの性能の低下を抑制することができる。
【0015】
(3)上記電気化学反応セルスタックにおいて、前記連接部に、前記連接部に対して前記スペーサーとは反対側の空間に連通する貫通孔であって、前記単セルに面する貫通孔が形成されている構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックによれば、ガス室(連接部に対してスペーサーとは反対側の空間)を流れる反応ガスの単セル内への流通性を更に向上させることができ、これにより電気化学反応セルスタックの性能を更に向上させることができる。
【0016】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、電気化学反応セルスタックの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図6図5のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図7図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図8】単セル110の一部分(図4のX1部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。
図9】単セル110の一部分(図5のX2部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。
図10】単セル110の一部分(図7のX3部)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。
図11図10のXI-XIの位置における単セル110のYZ断面構成を示す説明図である。
図12】変形例における単セル110の一部分(図7のX3部に対応する部分)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。
図13図12のXIII-XIIIの位置における発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。なお、Z軸方向は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。燃料電池スタックは、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックの一例である。
【0019】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態ではZ軸方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
【0020】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、Z軸方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士がZ軸方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたってZ軸方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、「連通孔108」という。
【0021】
各連通孔108にはZ軸方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0022】
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、当該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0023】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス供給マニホールド171として機能し、当該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0024】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0025】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0026】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図6は、図4および図5のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図7は、図4および図5のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。なお、図7の上部に示されている部分拡大図は、断面構成を示す図ではなく斜視図である。
【0027】
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、スペーサー149と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。インターコネクタ150は、単セル110に対してZ軸方向側に配置されている、といえる。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。なお、発電単位102は、特許請求の範囲における電気化学反応単位の一例である。
【0028】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。インターコネクタ150は、特許請求の範囲における第1導電部材の一例である。
【0029】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0030】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な(気孔率が低い)層である。ここでいうZ軸方向視は、「Z軸方向に平行な方向から見たとき」を意味する(以下における「方向視」も同様)。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な(電解質層112より気孔率が高い)層である。燃料極116の厚さは、例えば200μm~1000μmである。燃料極116における燃料極側集電体144の付近の部分の平均気孔率は、例えば25~60vol%であり、当該部分の平均気孔径は、例えば0.5μm~4μmである。このような構成である本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。なお、本実施形態の燃料極116は、特許請求の範囲における特定電極の一例である。
【0031】
セパレータ120は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたろう材(例えばAgろう)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0032】
図6に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0033】
図7に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0034】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、当該一体の部材の内の、Z軸方向に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、当該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電体要素が空気極側集電体134として機能する。また、空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0035】
図4および図5に示すように、燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、単セル110とインターコネクタ150との間に位置している。
【0036】
燃料極側集電体144の熱膨張係数は、インターコネクタ150の熱膨張係数とは異なっている。燃料極側集電体144は、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。燃料極側集電体とインターコネクタとの各熱膨張係数については、それぞれを形成する材料の種類を考慮することにより、適宜、調整することができ、例えば熱膨張率測定装置(株式会社リガク社製 TMA8310)を用いて測定することにより、特定することができる。燃料極側集電体144は、特許請求の範囲における第2導電部材の一例である。
【0037】
燃料極側集電体144は、上記のような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。
【0038】
スペーサー149は、燃料極側集電体144に覆われている。スペーサー149は、例えばマイカ等により板状に形成されている。なお、スペーサー149の板厚は、例えば0.4~3mmである。
【0039】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2図4および図6に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3図5および図7に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0040】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は、燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0041】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2図4および図6に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3図5および図7に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0042】
A-3.燃料極側集電体144およびその周辺の詳細構成:
図8は、単セル110の一部分(図4のX1部)のXZ断面構成を拡大して示す説明図である。但し、図8では、燃料極側集電体144に、後述する貫通孔THが形成されている位置における単セル110の断面が示されている。図8は、後述する図10のVIII-VIIIの位置における単セル110のXZ断面構成を示している。図9は、単セル110の一部分(図5のX2部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。図10は、単セル110の一部分(図7のX3部)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。図11は、図10のXI-XIの位置における単セル110のYZ断面構成を示す説明図である。
【0043】
図8に示すように、燃料極側集電体144は、電極側接触部145と、反対側接触部146と、連接部147(図4参照)と、X方向先端部148とを備えている。電極側接触部145は、燃料極116に接触し、燃料極116とは反対側においてスペーサー149と接触している。反対側接触部146は、インターコネクタ150(より正確には、一対のインターコネクタ150のうち、下側のインターコネクタ150の表面)に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における反対側接触部146は、下側のエンドプレート106に接触している。連接部147は、電極側接触部145と反対側接触部146とを繋いでいる(図4参照)。X方向先端部148は、電極側接触部145のうち、連接部147に繋がる側とは反対側(X軸負方向側)に繋がっている。燃料極側集電体144のX方向先端部148と電極側接触部145と連接部147と反対側接触部146とによって、スペーサー149は覆われている。なお、X方向先端部148は、特許請求の範囲における先端部の一例である。
【0044】
上述のように燃料極側集電体144の電極側接触部145と反対側接触部146との間にスペーサー149が配置されていることにより、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0045】
図9に示すように、燃料極側集電体144は、更に、Y方向先端部148Aと、Y方向先端部148Bとを備えている。2つのY方向先端部148A,148Bはそれぞれ、電極側接触部145のうち、Y軸方向の一方(Y軸負方向)の端と他方(Y軸正方向)の端とに繋がっている。
【0046】
(X方向先端部148およびその周辺の更なる詳細構成)
図8(および図4)に示すように、燃料極側集電体144のX方向先端部148は、スペーサー149に対して連接部147とは反対側(X軸負方向側)に位置する部分を有している。図8に示すようにX方向先端部148の全体がスペーサー149に対して連接部147とは反対側(X軸負方向側)に位置していてもよいが、X方向先端部148の一部のみがスペーサー149に対して連接部147とは反対側(X軸負方向側)に位置していてもよい。なお、「スペーサー149に対して連接部147とは反対側(X軸負方向側)に位置する」とは、スペーサー149に対して連接部147とは反対側(X軸負方向側)であって、かつ、X軸方向視においてスペーサー149と重なるように位置することを意味する。
【0047】
燃料極側集電体144のX方向先端部148は、電極側接触部145における連接部147に接続する側とは反対側(X軸負方向側)から下方に延びる第1の上下延伸部200と、第1の上下延伸部200の下端からX軸負方向に延びるX延伸部201とを備えている。
【0048】
図10に示すように、X方向先端部148は、Z軸方向視においてスペーサー149(換言すれば、スペーサー149の延伸方向)に沿った方向であるY軸方向に延伸している。
【0049】
図8および図10に示すように、各発電単位102は、燃料極側集電体144のX方向先端部148(より詳細には、X延伸部201)とインターコネクタ150とを接合する複数の接合部151を備える。本実施形態の接合部151は、燃料極側集電体144のX方向先端部148とインターコネクタ150とを溶接(例えば、レーザーを用いたスポット溶接)することにより形成された溶接痕である。図10に示すように、複数の接合部151は、Z軸方向視においてY軸方向に沿って互いに間隔(例えば、略等間隔)を空けつつ並んでいる。ここでいう「ある方向に沿って」とは、当該方向について±20°の誤差が許容されるものであってもよい。Y軸方向は、特許請求の範囲における特定方向の一例である。なお、燃料極側集電体144とインターコネクタ150とを溶接する工程は燃料極側集電体144とインターコネクタ150とを密着させつつ行う必要があり、燃料極側集電体144として薄い材料(例えば、25μm程度のNi箔)を用いる際には密着させることが容易ではない。そのため、溶接の方法としては、燃料極側集電体144として薄い材料を用いる際でも燃料極側集電体144とインターコネクタ150とを密着させやすい方法であるスポット溶接を採用することが好ましい。
【0050】
ここで、Z軸方向視において以下のように定義される領域を「特定領域SA」とする。すなわち、図10に示すように、特定領域SAは、第1線分LP1と第2線分LP2と第3線分LP3と第4線分LP4とにより囲まれた領域である。複数の接合部151の1つ(以下、「第1接合部151」という。例えば、図10の接合部1511)の中心C1と、第1接合部151の隣に位置する接合部151(以下、「第2接合部151」という。例えば、図10の接合部1512)の中心C2とを通る仮想直線VLに直交する方向を特定直交方向(本実施形態ではX軸方向)という。第1線分LP1は、第1接合部151に重なる特定直交方向(X軸方向)の仮想直線のうち、X方向先端部148の電極側接触部145とは反対側の輪郭線と交差する第1外側交点OI1と、第1接合部151に最も近いスペーサー149の表面と交差する第1内側交点II1とを結ぶ仮想線分である。第2線分LP2は、第2接合部151に重なる特定直交方向(X軸方向)の仮想直線のうち、X方向先端部148の電極側接触部145とは反対側の輪郭線と交差する第2外側交点OI2と、第2接合部151に最も近いスペーサー149の表面と交差する第2内側交点II2とを結ぶ仮想線分である。第3線分LP3は、第1外側交点OI1と第2外側交点OI2とを結ぶ仮想線分である。第4線分LP4は、第1内側交点II1と第2内側交点II2とを結ぶ仮想線分である。なお、図10に示されるSAは、複数の接合部151の1つである接合部1511を第1接合部151とし、接合部1511の隣に位置する接合部151である接合部1512を第2接合部151としたときの特定領域SAを示している。特定直交方向(X軸方向)は、特許請求の範囲における第2の方向の一例である。
【0051】
図10に示すように、燃料極側集電体144のX方向先端部148は、特定領域SAの一部において欠損している。より詳細には、本実施形態では、燃料極側集電体144は、X軸方向に凹むように切り欠かれた切り欠き部CPを複数有しており、これにより特定領域SAの一部において欠損している。切り欠き部CPは、隣り合う2つの接合部151間に1つずつ形成されている。なお、隣り合う2つの接合部151間に形成される切り欠き部CPの個数が2つ以上であってもよい。各切り欠き部CPは、燃料室176の一部であって、燃料極116の近傍に位置する部分に面している。なお、本実施形態では、いずれの隣り合う2つの接合部151の組合せに係る特定領域SAにおいても、燃料極側集電体144のX方向先端部148は、上記のように特定領域SAの一部において欠損している。また、図10では、切り欠き部CPは、上底が下底(凹みの底)よりも長い略台形状をなしているが、その形状は特に限定されるものではなく、例えば矩形などであってもよい。また、切り欠き部CPの角が直線状でなく曲線状としてもよく、この際にはより変形しにくくなる(浮き上がりにくくなる)ことがある。
【0052】
第1線分LP1の特定直交方向(本実施形態では、X軸方向)の長さをL1とし、第2線分LP2の特定直交方向(X軸方向)の長さをL2とし、第1線分LP1と第2線分LP2との間において特定直交方向(X軸方向)にX方向先端部148の欠損している部分を通過する仮想線分であって、第3線分LP3と第4線分LP4とを結ぶ仮想線分のうち、電極側接触部145およびX方向先端部148と重なる部分の長さをL3とし、長さL3/長さL1を第1比A1とし、長さL3/長さL2を第2比A2としたときに、第1比A1と第2比A2は、いずれも0.8以下である。第1比A1と第2比A2は、例えば、0.5である。
【0053】
(Y方向先端部148A,148Bおよびその周辺の更なる詳細構成)
図9に示すように、燃料極側集電体144のY方向先端部(148A,148B)は、スペーサー149に対してY軸方向側に位置する部分を有している。より詳細には、燃料極側集電体144の電極側接触部145のY軸負方向の端に繋がっているY方向先端部148Aは、スペーサー149に対してY軸負方向側に位置する部分を有している。燃料極側集電体144の電極側接触部145のY軸正方向の端に繋がっているY方向先端部148Bは、スペーサー149に対してY軸正方向側に位置する部分を有している。なお、図9に示すようにY方向先端部(148A,148B)の全体がスペーサー149に対してY軸方向側に位置していてもよいが、Y方向先端部(148A,148B)の一部のみがスペーサー149に対してY軸方向側に位置していてもよい。
【0054】
本実施形態では、燃料極側集電体144の電極側接触部145のY軸負方向の端に接続されているY方向先端部148Aは、電極側接触部145のY軸負方向の端から下方に延びる第2の上下延伸部203と、第2の上下延伸部203の下端からY軸負方向に延びるY延伸部204とを備えている。当該第2の上下延伸部203および当該Y延伸部204は、スペーサー149に対してY軸負方向側に位置している。なお、「スペーサー149に対してY軸負方向側に位置する」とは、スペーサー149に対してY軸負方向側であって、かつ、Y軸方向視においてスペーサー149と重なるように位置することを意味する。
【0055】
本実施形態では、燃料極側集電体144の電極側接触部145のY軸正方向の端に接続されているY方向先端部148Bは、電極側接触部145のY軸正方向の端から下方に延びる第3の上下延伸部205と、第3の上下延伸部205の下端からY軸正方向に延びるY延伸部206とを備えている。当該第3の上下延伸部205および当該Y延伸部206は、スペーサー149に対してY軸正方向側に位置している。なお、「スペーサー149に対してY軸正方向側に位置する」とは、スペーサー149に対してY軸正方向側であって、かつ、Y軸方向視においてスペーサー149と重なるように位置することを意味する。
【0056】
図9に示すように、各発電単位102は、燃料極側集電体144のY方向先端部148A(より詳細には、Y延伸部204)とインターコネクタ150とを接合する接合部153と、燃料極側集電体144のY方向先端部148B(より詳細には、Y延伸部206)とインターコネクタ150とを接合する接合部154とを備える。本実施形態の接合部153と接合部154とはいずれも、溶接(例えば、スポット溶接)により形成された溶接痕である。なお、図7における部分拡大図では、図の理解を容易にするために、便宜上、燃料極側集電体144のY方向先端部148Aがインターコネクタ150に接合される前の状態が示されている。
【0057】
(連接部147の更なる詳細構成)
図8および図10に示すように、連接部147に、連接部147に対してスペーサー149とは反対側の空間に連通する貫通孔181が複数形成されている。各貫通孔181は、単セル110に面している。
【0058】
図10に示すように、複数の貫通孔181は、Y軸方向に互いに間隔を空けつつ並んでいる。
【0059】
なお、本実施形態では、燃料極側集電体144の反対側接触部146と電極側接触部145と連接部147とX方向先端部148とY方向先端部148AとY方向先端部148Bとは一体の部材により構成されている。
【0060】
本実施形態では、燃料極側集電体144は、例えばニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成される金属箔(例えば、厚さが10~800μm)により形成されている。図7における部分拡大図に示すように、燃料極側集電体144は、略矩形の金属箔に切り込みを入れ、複数の矩形部分を曲げ起こすように加工し、当該矩形部分に上記切り欠き部CPを形成するために切り欠き加工を施すことにより製造される。
【0061】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態における燃料電池スタック100は、並べて配置された複数の発電単位102を備える。各発電単位102は、単セル110と、インターコネクタ150と、燃料極側集電体144と、スペーサー149とを備える。単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを含む。インターコネクタ150は、単セル110に対してZ軸方向側に配置されている。燃料極側集電体144は、単セル110とインターコネクタ150(より正確には、一対のインターコネクタ150のうちの下側のインターコネクタ150、以下同様)との間に位置し、かつ、熱膨張係数がインターコネクタ150の熱膨張係数とは異なる。スペーサー149は、単セル110とインターコネクタ150との間に位置している。燃料極側集電体144は、電極側接触部145と、反対側接触部146と、連接部147と、X方向先端部148とを備える。電極側接触部145は、燃料極116に接触し、燃料極116とは反対側においてスペーサー149と接触している。反対側接触部146は、インターコネクタ150に接触している。連接部147は、電極側接触部145と反対側接触部146とを繋いでいる。X方向先端部148は、電極側接触部145に繋がり、かつ、スペーサー149に対して連接部147とは反対側に位置する部分を有する。X方向先端部148は、Z軸方向視においてスペーサー149に沿った方向であるY軸方向(以下、「特定方向Y」という。)に延伸している。各発電単位102は、燃料極側集電体144のX方向先端部148とインターコネクタ150とを接合する複数の接合部151を備える。複数の接合部151は、Z軸方向視において特定方向Yに沿って互いに間隔を空けつつ並んでいる。X方向先端部148は、特定領域SAの一部において欠損している。
【0062】
なお、上述したように、特定領域SAは、Z軸方向視において以下のように定義される領域である。すなわち、特定領域SAは、第1線分LP1と第2線分LP2と第3線分LP3と第4線分LP4とにより囲まれた領域である。第1線分LP1は、複数の接合部151の1つである第1接合部151に重なる特定直交方向(本実施形態ではX軸方向)の仮想直線のうち、X方向先端部148の電極側接触部145とは反対側の輪郭線と交差する第1外側交点OI1と、第1接合部151に最も近いスペーサー149の表面と交差する第1内側交点II1とを結ぶ仮想線分である。特定直交方向(X軸方向)は、第1接合部151の中心C1と、第1接合部151の隣に位置する接合部151である第2接合部151の中心C2とを通る仮想直線VLに直交する方向である。第2線分LP2は、第2接合部151に重なる特定直交方向(X軸方向)の仮想直線のうち、X方向先端部148の電極側接触部145とは反対側の輪郭線と交差する第2外側交点OI2と、第2接合部151に最も近いスペーサー149の表面と交差する第2内側交点II2とを結ぶ仮想線分である。第3線分LP3は、第1外側交点OI1と第2外側交点OI2とを結ぶ仮想線分である。第4線分LP4は、第1内側交点II1と第2内側交点II2とを結ぶ仮想線分である。
【0063】
本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したように、燃料極側集電体144は、スペーサー149に対して連接部147とは反対側(X軸負方向側)に位置する部分を有するX方向先端部148を備える。そのため、スペーサー149のX軸方向の位置ずれを抑制することができ、ひいては、スペーサー149のX軸方向の位置ずれにより燃料室176内のガスの流れが悪化することに起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下を抑制することができる。
【0064】
ところで、上述した従来の燃料電池スタック(特開2021-022471号公報)では、燃料極側集電体の先端部の特定直交方向(X軸方向)の長さは均一である。換言すれば、上記のような特定領域SAを考慮すると、特定領域SAは欠損していないといえる。そのため、この燃料電池スタックにおいては、例えば運転中の温度変化が生じた際に、インターコネクタ150と燃料極側集電体144(より厳密には、燃料極側集電体144のX方向先端部148)との間の熱膨張差に起因して燃料極側集電体144のX方向先端部148が変形した結果、X方向先端部148の非接合部152(X方向先端部148のうち、第1接合部151と第2接合部151との間の部分)が単セル110に接触し、その結果、当該非接合部により、単セル110と燃料室176(単セル110とインターコネクタ150との間の空間)との間が塞がれた状態となることがある。このように単セル110と燃料室176との間が塞がれると、燃料室176(単セル110とインターコネクタ150との間の空間)を流れる反応ガスの単セル110内への流通性が阻害される。そのため、この燃料電池スタックにおいては、燃料室176を流れる反応ガスの単セル110内への流通性が阻害され、これにより、燃料電池スタック100の発電性能が低下するおそれがある。
【0065】
これに対し、本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したように、特定領域SAの一部において欠損している。そのため、インターコネクタ150と燃料極側集電体144との間の熱膨張差に起因して、X方向先端部148の非接合部152(X方向先端部148のうち、第1接合部151と第2接合部151との間の部分)が変形し、X方向先端部148の非接合部152が単セル110に接触したとしても、特定領域SAが欠損していない構成と比較して、X方向先端部148の非接合部152と単セル110との接触面積が小さいため、燃料室176を流れる反応ガスの単セル110内への流通性が阻害されることが抑制される。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、インターコネクタ150と燃料極側集電体144との間の熱膨張差に起因してX方向先端部148の非接合部152が変形し、X方向先端部148の非接合部152が単セル110に接触することに起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下を抑制することができる。
【0066】
本実施形態の燃料電池スタック100では、第1比A1と第2比A2は、いずれも0.8以下である。なお、上述したように、第1比A1は、長さL3/長さL1である。長さL3は、第1線分LP1と第2線分LP2との間において特定直交方向(X軸方向)にX方向先端部148の欠損している部分を通過する仮想線分であって、第3線分LP3と第4線分LP4とを結ぶ仮想線分のうち、電極側接触部145およびX方向先端部148と重なる部分の長さである。長さL1は、第1線分LP1の特定直交方向(X軸方向)の長さである。第2比A2は、長さL3/長さL2である。長さL2は、第2線分LP2の特定直交方向(X軸方向)の長さである。
【0067】
そのため、本実施形態の燃料電池スタック100では、X方向先端部148の非接合部152と単セル110との接触面積が特に小さくなり、燃料室176を流れる反応ガスの単セル110内への流通性が阻害されることが特に効果的に抑制される。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、特に効果的に、インターコネクタ150と燃料極側集電体144との間の熱膨張差に起因してX方向先端部148の非接合部152が変形し、X方向先端部148の非接合部152が単セル110に接触することに起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下を抑制することができる。
【0068】
本実施形態の燃料電池スタック100では、連接部147に、連接部147に対してスペーサー149とは反対側の空間に連通する貫通孔181が形成されている。貫通孔181は、単セル110に面している。そのため、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料室176(連接部147に対してスペーサー149とは反対側の空間)を流れる反応ガスの単セル110内への流通性を更に向上させることができ、これにより燃料電池スタック100の発電性能を更に向上させることができる。
【0069】
本実施形態の燃料電池スタック100では、燃料極側集電体144は、スペーサー149に対してY軸方向側に位置する部分を有するY方向先端部148Aを備える。そのため、スペーサー149のY軸方向の位置ずれを抑制することができ、ひいては、スペーサー149のY軸方向の位置ずれにより燃料室176内のガスの流れが悪化することに起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下を抑制することができる。
【0070】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0071】
上記実施形態において、一部の発電単位102における燃料極側集電体144は、電極側接触部145と、反対側接触部146と、連接部147と、X方向先端部148と、Y方向先端部148Aと、Y方向先端部148Bとのいずれかを備えない、としてもよい。少なくとも1つの燃料極側集電体144が、反対側接触部146と、電極側接触部145と、連接部147と、X方向先端部148とを備える構成であれば、当該燃料極側集電体144の電極側接触部145と反対側接触部146との間に配置されたスペーサー149のX軸方向の位置ずれを抑制することができる。なお、発電単位102に含まれる燃料極側集電体144の個数の50%以上(より好ましくは80%以上)の個数の燃料極側集電体144がそのような構成(反対側接触部146と、電極側接触部145と、連接部147と、X方向先端部148を備える構成)となっていることが特に好ましい。また、発電単位102に含まれる燃料極側集電体144の個数の50%以上(より好ましくは80%以上)の個数の燃料極側集電体144がそのような構成となっている発電単位102の個数が、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数の20%以上(より好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%)となっていることが特に好ましい。
【0072】
上記実施形態(または変形例、以下同様)において、全てまたは一部の発電単位102における燃料極側集電体144は、Y方向先端部148BとY方向先端部148Bとの両方または一方を備えない、としてもよい。
【0073】
上記実施形態では、燃料極側集電体144のX方向先端部148と、電極側接触部145と、連接部147と、反対側接触部146とによって、スペーサー149は覆われている。これについて、単セル110の任意の断面においてスペーサー149は覆われているとしてよいが、単セル110の一部の断面のみにおいてスペーサー149は覆われているとしてもよい。また、スペーサー149の全周に亘って覆うとしてよいが、スペーサー149の全周でなく、一部のみを覆うとしてもよい。
【0074】
上記実施形態において、1つの燃料極側集電体144に覆われるスペーサー149が複数の分割した部分により構成されていてもよい。
【0075】
上記実施形態では、接合部151,153,154は、溶接により形成された溶接痕であるが、これらの全てまたは一部が溶接以外の接合方法(例えば、機械的接合や接着)により形成されるものであってもよい。
【0076】
上記実施形態では、燃料極側集電体144は、X軸方向に凹むように切り欠かれた切り欠き部CPを複数有しており、これにより特定領域SAの一部において欠損しているが、切り欠き部CP以外の態様により、特定領域SAの一部において欠損している、としてもよい。図12は、変形例における単セル110の一部分(図7のX3部に対応する部分)のXY断面構成を拡大して示す説明図である。図13は、図12のXIII-XIIIの位置における発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。例えば、図12および図13に示すように、燃料極側集電体144のX方向先端部148に、Z軸方向に貫通する貫通孔THが形成されており、これにより特定領域SAの一部において欠損している、としてもよい。なお、図12および図13の例では、貫通孔THが複数形成されており、複数の貫通孔THは、Z軸方向視においてY軸方向に沿って互いに間隔を空けつつ並んでいる。貫通孔THは、隣り合う2つの接合部151間に3つずつ形成されている。隣り合う2つの接合部151間に形成される貫通孔THの個数は、3つに限らず、可変可能である。各貫通孔THは、燃料室176の一部であって、燃料極116の近傍に位置する部分に面している。いずれの隣り合う2つの接合部151の組合せに係る特定領域SAにおいても、燃料極側集電体144のX方向先端部148は、上記のように特定領域SAの一部において欠損している。貫通孔THは、例えば、プレス加工などにより形成することができる。なお、図12および図13の例では、各貫通孔THは、略円形状であるが、その形状は特に限定されるものではなく、例えば長孔などであってもよい。
【0077】
上記実施形態では、いずれの接合部151とその隣の接合部151の組合せにおいても、燃料極側集電体144のX方向先端部148は、特定領域SAの一部において欠損しているが、一部の接合部151とその隣の接合部151の組合せのみにおいて、燃料極側集電体144のX方向先端部148は、特定領域SAの一部において欠損している、としてもよい。
【0078】
上記実施形態において、燃料極側集電体144の電極側接触部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接合材を介して接触している構成であってもよい。また、上記実施形態において、燃料極側集電体144の反対側接触部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接合材を介して接触している構成であってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、燃料極側集電体144の反対側接触部146と電極側接触部145と連接部147とX方向先端部148とは一体の部材により構成されているが、反対側接触部146と電極側接触部145と連接部147とのいずれかまたはすべてが別体の部材により構成されていてもよい。
【0080】
上記実施形態の燃料電池スタック100において、空気極側集電体134が、単セル110に対して上方(Z軸方向の一方)の側に配置されたインターコネクタ150(以下、当該インターコネクタ150を特に指すときには「上側のインターコネクタ150」という。)の表面に接触する反対側接触部と、空気極114に接触する電極側接触部と、当該反対側接触部と当該電極側接触部とをつなぐ連接部と、当該電極側接触部における当該連接部に接続する側とは反対側に接続されているX軸方向先端部(以下、「空気極側のX軸方向先端部」という。)を備え、当該反対側接触部と当該電極側接触部との間にスペーサー(スペーサー149と同様の材料および形状である部材。以下、「空気極側スペーサー」という。)が配置され、空気極側のX軸方向先端部が特定領域SAの一部において欠損している構成が採用されてもよい。この構成においても、上記実施形態の場合と同様の理由から、空気極側のX軸方向先端部の存在により、スペーサー149のX軸方向の位置ずれを抑制することができ、更に、空気極側のX軸方向先端部が特定領域SAの一部において欠損していることにより、空気極側のX軸方向先端部の非接合部が単セル110に接触することに起因する燃料電池スタック100の発電性能の低下を抑制することができる。この構成においては、上側のインターコネクタ150は、特許請求の範囲における第1導電部材の一例であり、空気極側集電体134は、特許請求の範囲における第2導電部材の一例であり、空気極114は特許請求の範囲における特定電極の一例である。また、このような構成に加えて、上記実施形態の燃料電池スタック100において、空気極側集電体134が、電極側接触部145におけるY軸方向の端に接続されている第2の先端部であって、少なくとも一部が空気極側スペーサーに対してY軸方向の側に位置するY軸方向先端部(以下、「空気極側のY軸方向先端部」という。)を備える構成が採用されてもよい。この構成においても、上記実施形態の場合と同様の理由から、空気極側のY軸方向先端部の存在により、空気極側スペーサーのY軸方向の位置ずれを抑制することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。
【符号の説明】
【0082】
22(22A~22E): ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極側接触部 146:反対側接触部 147:連接部 148:X方向先端部 148A,148B:Y方向先端部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 151,153,154:接合部 152:非接合部 161:酸化剤ガス供給マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス供給マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 181:貫通孔 200:第1の上下延伸部 201:X延伸部 203:第2の上下延伸部 204:Y延伸部 205:第3の上下延伸部 206:Y延伸部 1511:接合部 1512:接合部 CP:切り欠き部 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス II1:第1内側交点 II2:第2内側交点 OG:酸化剤ガス OI1:第1外側交点 OI2:第2外側交点 OOG:酸化剤オフガス SA:特定領域 TH:貫通孔
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図10
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図13