(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039436
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】沈下量測定装置及び沈下量測定方法
(51)【国際特許分類】
E01C 19/27 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
E01C19/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142178
(22)【出願日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2021146121
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(71)【出願人】
【識別番号】520242551
【氏名又は名称】株式会社ザクティエンジニアリングサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】相田 尚
(72)【発明者】
【氏名】立花 洋平
(72)【発明者】
【氏名】駒坂 翼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章仁
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭介
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052AB01
2D052BB05
2D052CA07
(57)【要約】
【課題】プルーフローリング試験に要する作業者の労力を軽減する。
【解決手段】沈下量測定装置は、タイヤローラの後輪の走行前画像IMG_Bを撮像する第1のカメラ300と、タイヤローラの後輪の走行後画像IMG_Aを撮像する第2のカメラ310と、タイヤローラの現在位置POSを測位する測位装置330と、電子制御装置320と、を備えている。そして、電子制御装置320は、走行前画像IMG_B及び走行後画像IMG_Aの差分に基づいて路盤の変形量を求め、測位装置330により測位された現在位置POSに対して変形量を関連付けたレコードを、不揮発性メモリ322B、揮発性メモリ322Cなどの記録媒体に時系列で記録するように構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走車両の走行前後の路面状況を検出する検出器と、
前記自走車両の現在の位置を測位する測位装置と、
前記検出器により検出された前記自走車両の走行前後の路面状況の差分に基づいて路面の沈下量を特定し、前記測位装置により測位された位置に対して前記特定された路面の沈下量を関連付けたレコードを記録媒体に時系列で記録するように構成された電子制御装置と、
を備えた沈下量測定装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記自走車両の走行前後の路面を夫々撮像する撮像装置、及び前記自走車両の走行前後の路面を複数に分割した各領域までの距離を測距する測距装置の少なくとも一方である、
請求項1に記載の沈下量測定装置。
【請求項3】
前記自走車両は、左右一列に配置された複数の車輪を備え、
前記撮像装置及び前記測距装置の少なくとも一方は、前記自走車両の左右方向に配置された複数の車輪のうち、最外方に位置する車輪の外方に設置された、
請求項2に記載の沈下量測定装置。
【請求項4】
前記撮像装置及び前記測距装置の少なくとも一方は、前記自走車両の左右方向に配置された複数の車輪の間に更に設置された、
請求項3に記載の沈下量測定装置。
【請求項5】
前記自走車両は、左右一列に配置された複数の車輪を備え、
前記撮像装置及び前記測距装置の少なくとも一方は、前記自走車両の左右方向において前記複数の車輪の間に夫々設置された、
請求項2に記載の沈下量測定装置。
【請求項6】
可視的にデータを表示可能な表示装置を更に備え、
前記電子制御装置は、前記特定された路面の沈下量を前記表示装置に表示するように構成された、
請求項1に記載の沈下量測定装置。
【請求項7】
前記電子制御装置は、前記測位装置により測位された位置を含む地図を前記表示装置に重畳させて表示するように構成された、
請求項6に記載の沈下量測定装置。
【請求項8】
前記電子制御装置は、路面の沈下量が所定値を超えた場合、その位置を異常箇所と判定して前記記録媒体に記録するように構成された、
請求項1に記載の沈下量測定装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の沈下量測定装置を使用し、前記自走車両を走行させながら前記路面の沈下量を連続して記録する、
沈下量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路盤や路床などの支持力や均一性を管理するプルーフローリング試験で利用可能な、沈下量測定装置及び沈下量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を走行する車両などの荷重は、道路の表層から路盤及び路床へと伝達される。路盤及び路床へと伝達された荷重によって路盤や路床が大きく変形すると、その上面に舗設されたアスファルト舗装も変形を起こし、アスファルト舗装の平坦性を低下させる原因となる。このため、特開2020-176401号公報(特許文献1)に記載されるように、転圧後の路盤や路床などの支持力や均一性を管理するプルーフローリング試験が行われている。プルーフローリング試験では、転圧後の路盤や路床にタイヤローラ、ダンプトラック、マカダムローラなどの車両をゆっくりと走行させ、輪荷重による路面の変形量の大きい箇所を検査員が車両の後方を歩きながら目視によって確認することで、大きな変形を起こし得る不良個所を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プルーフローリング試験では、検査員の目視により路盤や路床などの変形の大きな箇所を確認するため、施工面積が広大な施工現場では変形箇所を確認するのに多大な労力が必要である。
【0005】
そこで、本発明は、プルーフローリング試験に要する作業者の労力を軽減することができる、沈下量測定装置及び沈下量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
沈下量測定装置は、自走車両の走行前後の路面状況を検出する検出器と、自走車両の現在の位置を測位する測位装置と、電子制御装置と、を備えている。そして、電子制御装置は、検出器により検出された自走車両の走行前後の路面状況の差分に基づいて路面の沈下量を特定し、測位装置により測位された位置に対して路面の沈下量を関連付けたレコードを記録媒体に時系列で記録するように構成されている。
【0007】
沈下量測定方法は、沈下量測定装置を使用し、自走車両を走行させながら路面の沈下量を連続して記録する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プルーフローリング試験に要する検査員の労力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】自走車両の走行前後の路盤を撮像するカメラの取付位置の一例を示す説明図である。
【
図5】沈下量測定装置の制御系の一例を示す概要図である。
【
図6】沈下量測定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】記録媒体に時系列で記録されるレコードの一例を示す説明図である。
【
図8】
図4に関連するカメラの配置位置の一例を示す平面図である。
【
図9】
図8におけるカメラ配置による作用及び効果の説明図である。
【
図10】路盤の変形量の表示形態の一例を示す説明図である。
【
図11】
図4に関連するカメラの配置位置の他の例を示す平面図である。
【
図12】自走車両の走行前後の路盤を撮像するカメラの取付位置の他の例を示す説明図である。
【
図13】
図12に関連するカメラの配置位置の一例を示す平面図である。
【
図14】
図12に関連するカメラの配置位置の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1~
図3は、本実施形態で利用可能な自走車両の一例として挙げることができる、施工現場で路床や路盤を転圧する際に用いられるタイヤローラ100の一例を示している。
【0011】
タイヤローラ100は、ディーゼルエンジンなどの原動機が搭載された車体120の前後に、操舵輪となる3つの空気入りタイヤを左右一列に配置した前輪140、及び駆動輪となる4つの空気入りタイヤを左右一列に配置した後輪160を夫々取り付けることで構成されている。車体120に搭載された原動機は、油圧ポンプを駆動して作動流体となる油圧を発生させ、前輪140を操舵させるための油圧アクチュエータ(図示せず)、及び後輪160を駆動させるための油圧モータ(図示せず)に油圧を夫々供給する。
【0012】
また、車体120の上部の所定箇所には、タイヤローラ100を操作するための運転席180が取り付けられている。運転席180には、オペレータが着座するシート182と、操舵を行うステアリングホイール184と、ペダル,レバー,スイッチ及び計器などが取り付けられた操作盤186と、キャノピー188と、が配置されている。そして、タイヤローラ100は、オペレータの操作に応じて、例えば、施工現場の路床や路盤(以下、「路盤RB」と略記する。)の上を走行して、前輪140及び後輪160で路盤RBの転圧を行う。
【0013】
ところで、転圧後の路盤RBの支持力や均一性を管理するプルーフローリング試験では、上述したように、転圧後の路盤RBにタイヤローラ100をゆっくりと走行させ、輪荷重による路盤RBの変形の大きい箇所を確認する必要がある。従来技術では、路盤RBの変形の大きい箇所を検査員がタイヤローラの後方を歩行しながら目視によって確認していたため、施工面積が広大な施工現場では、変形箇所を確認するのに多大な労力が必要であるほか、判断に個人差や見落としが生じるおそれがある。
【0014】
そこで、本実施形態においては、タイヤローラ100に対して、以下詳細を説明するような沈下量測定装置が搭載されている。
【0015】
タイヤローラ100の後部の所定箇所には、
図4に示すように、後輪160の走行前の路盤RBの走行前画像IMG_Bを撮像する第1のカメラ(撮像装置)300、後輪160の走行後の路盤RBの走行後画像IMG_Aを撮像する第2のカメラ(撮像装置)310が夫々取り付けられている。第1のカメラ300及び第2のカメラ310は、例えば、図示しないステーやブラケットなどを介して、後輪160によって路盤RBの撮像が妨げられない位置に取り付けられている。
図4に示す一例では、走行前画像IMG_Bと走行後画像IMG_Aとを比較すると、走行前では略平坦であった路盤RBが、走行後には輪荷重によって変形していることを把握できるであろう。ここで、第1のカメラ300及び第2のカメラ310が、検出器の一例として挙げられる。また、第1のカメラ300により撮像された走行前画像IMG_B、及び第2のカメラ310により撮像された走行後画像IMG_Aが、自走車両の走行前後の路面状況の一例として挙げられる。
【0016】
第1のカメラ300及び第2のカメラ310の各出力信号は、
図5に示すように、タイヤローラ100の所定箇所に搭載された電子制御装置320に入力されている。また、電子制御装置320には、タイヤローラ100の現在位置POS(例えば、タイヤローラ100に設定された基準点の絶対位置)を測位する測位装置330の出力信号が入力されている。測位装置330としては、例えば、GPS(Global Positioning System)、Galileo、QZSSなどのGNSS(Global Navigation Satellite System)を使用することができる。
【0017】
電子制御装置320は、本実施形態を実装するためのアプリケーションプログラム(コンピュータプログラム)を実行するマイクロコンピュータ322を内蔵している。マイクロコンピュータ322は、CPU(Central Processing Unit)、ALU(Arithmetic and Logic Unit)などのプロセッサ322Aと、不揮発性メモリ322Bと、揮発性メモリ322Cと、入出力回路322Dと、通信回路322Eと、これらを相互通信可能に接続する内部バス322Fと、を備えている。
【0018】
プロセッサ322Aは、アプリケーションプログラムに記述された命令セット(データの転送、演算、加工、制御、管理など)を実行するハードウエアであって、演算装置、命令やデータを格納するレジスタ、周辺回路などから構成されている。不揮発性メモリ322Bは、電源供給を遮断してもデータを保持可能なフラッシュROM(Read Only Memory)などからなり、本実施形態を実装するためのアプリケーションプログラムを保持する。揮発性メモリ322Cは、電源供給を遮断するとデータが消失するダイナミックRAM(Random Access Memory)などからなり、プロセッサ322Aの演算過程においてデータを一時的に格納する記憶領域を提供する。
【0019】
入出力回路322Dは、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、D/Dコンバータなどからなり、外部機器に対するアナログ信号及びデジタル信号の入出力機能を提供する。通信回路322Eは、例えば、CANトランシーバなどからなり、タイヤローラ100の車載ネットワーク(図示せず)に接続する機能を提供する。内部バス322Fは、各デバイス間でデータを交換するための経路であって、アドレスを転送するためのアドレスバス、データを転送するためのデータバス、及びアドレスバスやデータバスで実際に入出力を行うタイミングや制御情報を遣り取りするコントロールバスを含んでいる。
【0020】
また、タイヤローラ100の運転席180であって、オペレータがシート182に着座した操作状態で目視確認可能な位置に、可視的に任意のデータを表示可能な表示装置340が取り付けられている。そして、表示装置340には、詳細について後述するように、路盤RBの変形量(沈下量)が表示される。
【0021】
図6は、タイヤローラ100のオペレータによる明示の指示に応答して、電子制御装置320に内蔵されたマイクロコンピュータ322のプロセッサ322Aが繰り返し実行する、沈下量測定処理の一例を示している。ここで、電子制御装置320のプロセッサ322Aは、例えば、所定時間ごと、又は所定距離走行するたびに沈下量測定処理を実行する。また、電子制御装置320のプロセッサ322Aは、マイクロコンピュータ322の不揮発性メモリ322Bに格納されたアプリケーションプログラムに従って、沈下量測定処理を実行する。
【0022】
ステップ10(
図6では「S10」と略記する。以下同様。)では、電子制御装置320のプロセッサ322Aが、マイクロコンピュータ322の入出力回路322Dを介して、第1のカメラ300から走行前画像IMG_Bを読み込む。ここで、走行前画像IMG_Bは、
図4に示すように、後輪160の走行前の路盤RBの路面状況を表している。
【0023】
ステップ11では、電子制御装置320のプロセッサ322Aが、マイクロコンピュータ322の入出力回路322Dを介して、第2のカメラ310から走行後画像IMG_Aを読み込む。ここで、走行後画像IMG_Aは、
図4に示すように、後輪160の走行後の路面状況を表している。
【0024】
ステップ12では、電子制御装置320のプロセッサ322Aが、マイクロコンピュータ322の入出力回路322Dを介して、測位装置330からタイヤローラ100の現在位置POSを読み込む。ここで、現在位置POSには、例えば、タイヤローラ100の基準点に対する座標が含まれている。
【0025】
ステップ13では、電子制御装置320のプロセッサ322Aが、第1のカメラ300から読み込んだ走行前画像IMG_Bと第2のカメラ310から読み込んだ走行後画像IMG_Aとの差分を抽出する。走行前画像IMG_Bと走行後画像IMG_Aとの差分は、後輪160の走行前後における路盤RBの変形量を間接的に表している。
【0026】
ステップ14では、電子制御装置320のプロセッサ322Aが、例えば、周知の画像処理技術を適用して、走行前画像IMG_Bと走行後画像IMG_Aとの差分から路盤RBの変形量を算出する。ここで、路盤RBの変形量としては、大きな変形を起こし得る不良箇所の特定を目的とすることを考慮すると、走行前画像IMG_B及び走行後画像IMG_Aに表れている範囲における最大変形量とすればよい。
【0027】
ステップ15では、電子制御装置320のプロセッサ322Aが、
図7に示すように、測位装置330から読み込んだ現在位置POSに対して路盤RBの変形量を関連付けたレコードを生成し、これをマイクロコンピュータ322の不揮発性メモリ322B又は揮発性メモリ322Cに時系列で逐次記録する。揮発性メモリ322Cにレコードを記録した場合、電子制御装置320の電源遮断によりレコードが消失するため、電子制御装置320を停止させる前に、不揮発性メモリ322Bにコピーしたり、図示しない外部機器に転送したりすることが望ましい。なお、電子制御装置320のプロセッサ322Aは、不揮発性メモリ322B又は揮発性メモリ322Cにレコードを記録する代わりに、例えば、SDメモリカード、USBメモリなどの可搬記録媒体にレコードを記録してもよい。ここで、不揮発性メモリ322B、揮発性メモリ322C、SDメモリカード、USBメモリなどが、記録媒体の一例として挙げられる。
【0028】
ステップ16では、電子制御装置320のプロセッサ322Aが、
図5に示すように、路盤RBの変形量を表示装置340に表示する。表示装置340に表示される路盤RBの変形量は、例えば、変形量に応じた色別や濃度別など、周知の技術によって表示することができる。また、
図5に示す一例では、タイヤローラ100が走行した経路に沿った路盤RBの変形量が過去に遡って帯状に4列表示されているが、最新の路盤RBの変形量をリアルタイムに表示してもよい。
【0029】
このような沈下量測定処理を実行する沈下量測定装置によれば、タイヤローラ100の後輪160の走行前後の走行前画像IMG_B及び走行後画像IMG_Aの差分から路盤RBの変形量が求められ、タイヤローラ100の現在位置に対して変形量が関連付けられたレコードが不揮発性メモリ322Bに時系列で逐次記録される。従って、不揮発性メモリ322Bに記録されたレコードを任意の時点で解析することで、大きな変形を起こし得る不良箇所を特定することができ、施工現場における、プルーフローリング試験に要する検査員の労力を軽減することができるほか、定量的な判断が可能になる。
【0030】
また、路盤RBの変形量が表示装置340に表示されるため、タイヤローラ100のオペレータが路盤RBの状況をリアルタイムに把握することができる。さらに、路盤RBの変形量は、走行前画像IMG_B及び走行後画像IMG_Aに表れている範囲における最大変形量から特定されるため、不揮発性メモリ322Bに記録されるレコードのサイズが小さくなり、記録に必要な記憶領域を少なくすることができる。
【0031】
タイヤローラ100の後輪160の輪荷重による路盤RBの変形は、車体120の後部において左右一列に配置された4つの後輪160のうち、左右の最外方に位置する後輪160の外方で顕著に見られる。このため、第1のカメラ300及び第2のカメラ310は、
図8に示すように、車体120の左右の最外方に位置する後輪160の外方に夫々配置するようにしてもよい。このようにすれば、
図9に示すように、左右の最外方に位置する後輪160の輪荷重が路盤RBに伝達されてその外方の路盤RBが上方に変形した突出部PRを呈しても、これを検知することができる。従って、多様な方法で、路盤RBの変形を確認することができるようになる。
【0032】
この場合、表示装置340には、
図10に示すように、タイヤローラ100の左右の最外方に位置する後輪160の外方の路盤RBの変形量を並列して表示するようにすればよい。また、不揮発性メモリ322Bに時系列で格納されるレコードには、例えば、タイヤローラ100のどの後輪160に関するものであるかを特定可能な識別子を付すようにすればよい。
【0033】
タイヤローラ100の後輪160の輪荷重による路盤RBの変形は、左右の最外方に位置する後輪160の外方だけでなく、左右一列に配置された各後輪160の間でも起こり得る。従って、タイヤローラ100の車体120には、
図11に示すように、各後輪160の間の走行前画像IMG_B及び走行後画像IMG_Aを撮像する、第1のカメラ300及び第2のカメラ310を更に取り付けるようにしてもよい。なお、
図11に示す一例では、第1のカメラ300及び第2のカメラ310は、各後輪160の間に3組取り付けられているが、例えば、中央に位置する2つの後輪160の間にのみ取り付けられていてもよい。
【0034】
沈下量測定装置が搭載されたタイヤローラ100を使用して路盤RBの変形量を測定する場合、オペレータが、タイヤローラ100を測定開始地点まで自走させ、路盤RBの変形量の測定を開始する指示を入力する。そして、オペレータが、路盤RBの所定の経路に沿ってタイヤローラ100をゆっくりと走行させると、後輪160の走行前後の路盤RBの変形量が、タイヤローラ100の現在位置POSと関連付けられたレコードとして不揮発性メモリ322Bに時系列で記録される。従って、路盤RBの変形量を定量的に連続して記録することができる。
【0035】
なお、当業者であれば、様々な上記実施形態の技術的思想について、その一部を省略したり、その一部を適宜組み合わせたり、その一部を周知技術に置換したりすることで、新たな実施形態を生み出せることを容易に理解できるであろう。
【0036】
その一例を挙げると、自走車両としては、タイヤローラ100に限らず、ダンプトラック、マカダムローラなどであってもよい。また、タイヤローラ100の走行前後の路盤RBの状況を検出する検出器としては、第1のカメラ300及び第2のカメラ310に限らず、路盤RBを複数に分割した各領域までの距離(深度)を測距可能な測距装置を使用、又は測距装置を併用することもできる。路盤RBまでの距離を測距可能な測距装置としては、例えば、インテル株式会社(登録商標)が提供する「RealSence(登録商標)デプスカメラ」を使用することができる。ここで、測距装置が、検出器の一例として挙げられる。
【0037】
タイヤローラ100の走行前後の路盤RBの状況は、一対の第1のカメラ300及び第2のカメラ310により撮像する構成に限らず、
図12に示すように、走行前後の路盤RBを俯瞰可能な位置に取り付けられた1つのカメラ400(撮像装置)により撮像する構成であってもよい。この場合、電子制御装置320は、例えば、後輪160を認識することで、カメラ400により撮像された画像から走行前画像IMG_B及び走行後画像IMG_Aを識別して、上述した処理を実行すればよい。ここで、カメラ400が、検出器の一例として挙げられる。また、電子制御装置320によって識別された走行前画像IMG_B及び走行後画像IMG_Aが、自走車両の走行前後の路面状況の一例として挙げられる。
【0038】
1つのカメラ400により路盤RBを撮像する場合、
図13に示すように、車体120の左右一列に配置された4つの後輪160のうち、左右の最外方に位置する後輪160の外方にカメラ400を夫々取り付けるか、これに加えて、
図14に示すように、各後輪160の間にカメラ400を夫々取り付けるようにしてもよい。なお、
図14に示す一例では、カメラ400は、各後輪160の間に3組取り付けられているが、例えば、中央に位置する2つの後輪160の間にのみ取り付けられていてもよい。
【0039】
また、現在位置POSに対して路盤RBの変形量を関連付けたレコードは、マイクロコンピュータ322の不揮発性メモリ322B又は揮発性メモリ322Cに時系列で逐次記録する代わりに、外部のサーバなどに送信して時系列で逐次記録するようにしてもよい。
【0040】
電子制御装置320のプロセッサ322Aは、路盤RBの変形量が所定値を超えた場合、その位置を異常箇所と判定し、マイクロコンピュータ322の不揮発性メモリ322B又は揮発性メモリ322Cに記録するようにしてもよい。この場合、電子制御装置320のプロセッサ322Aは、現在位置POSに対して路盤RBの変形量を関連付けたレコードについて、異常箇所を更に関連付けるようにすればよい。
【0041】
さらに、電子制御装置としては、マイクロコンピュータ322を内蔵した電子制御装置320に限らず、一般的なパーソナルコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで構成した電子回路であってもよい。さらにまた、電子制御装置320は、無線通信装置を介して、路盤RBの変形量を外部の事務所などに送信するようにしてもよい。また、電子制御装置320は、表示装置340に路盤RBの変形量を表示する際、測位装置330によって測位されたタイヤローラ100の現在位置を含む電子地図を重畳して表示するようにしてもよい。
【0042】
その他、タイヤローラ100の後輪160の輪荷重による路盤RBの変形は、左右一列に配置された各後輪160の間で起こり得ることのみを考慮して、車体120の左右一列に配置された4つの後輪160の間に第1のカメラ300及び第2のカメラ310、又はカメラ400を夫々取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
100 タイヤローラ(自走車両)
160 後輪
300 第1のカメラ(検出器、撮像装置)
310 第2のカメラ(検出器、撮像装置)
320 電子制御装置
322B 不揮発性メモリ(記録媒体)
322C 揮発性メモリ(記録媒体)
330 測位装置
340 表示装置
400 カメラ(検出器、撮像装置)
IMG_B 走行前画像(走行前の路面状況)
IMG_A 走行後画像(走行後の路面状況)
RB 路盤(路面)