(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039441
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ガラスまたはガラスセラミック、ならびにガラスまたはガラスセラミックの溶融および清澄方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/225 20060101AFI20230313BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C03B5/225
C03C3/091
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142758
(22)【出願日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10 2021 123 303.8
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ クラウセン
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン グリューン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リフカ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ シュレプファー
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062AA11
4G062BB01
4G062DA06
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4G062MM01
4G062NN29
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた生成物品質を維持しつつ、多価酸化物系清澄剤の必要量を低減する、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法を提供する。
【解決手段】方法は、原料のバッチを提供するステップと、メルトが得られるまでバッチを加熱するステップであって、特にバッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、10
3dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、メルトに清澄処理を施すステップであって、メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、10
2.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、清澄ガラス、清澄ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップとを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法であって、前記方法は、
- 原料のバッチを提供するステップと、
- メルトが得られるまで前記バッチを加熱するステップであって、前記バッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、103dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- 前記メルトに清澄処理を施すステップであって、前記メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- 清澄ガラス、清澄ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップと
を含み、ここで、
式XnOm[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]および/または式MnSO4[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の少なくとも1つの清澄剤を、前記原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で使用し、
前記清澄剤は、酸素分圧p(O2)1バールおよび温度T2で、前記清澄ステップにおける前記メルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、XnOm→XnOm-1+1/2O2および/もしくはXnOm→XnOm-2+O2の反応による、ならびに/またはMnSO4→MnO+SO2+1/2O2の反応による高酸化段階から低酸化段階への少なくとも30%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、前記温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当し、かつ前記方法は、
前記メルトの前記清澄時の酸素分圧p(O2)を、前記温度T3でのメルトにおけるO2飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低くなるように調整するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記清澄ガラス、前記清澄ガラスセラミック、または前記ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスにおけるFe3+に対するFe2+の比が、少なくとも0.02である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記清澄ガラス、前記清澄ガラスセラミック、または前記ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスにおけるXnOmに対するXnOm-1の比、あるいはXnOmに対するXnOm-2の比が、少なくとも0.6である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記清澄剤が、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、SrSO4、ZnSO4、Sb2O5、As2O5、CeO2、およびSnO2の一覧から選択される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記清澄ガラスまたは前記清澄ガラスセラミックがガラス10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡が80個未満であり、かつ/またはガラス10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡が2個未満である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
バッチプロセスでの前記清澄時間が、少なくとも2時間であるが、ただし最長で96時間であるか、
または連続プロセスでの清澄時の前記メルトの平均滞留期間が、少なくとも2時間であるが、ただし最長で18時間である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法をバッチ式で実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法を、H2およびO2の燃焼による加熱下で実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記方法を、1.05未満の空燃比λで実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法であって、前記溶融および/または前記清澄を、H2およびO2の燃焼による加熱下で実施し、前記溶融を、空燃比λ>1.00、特に>1.05で実施し、かつ/または前記清澄を、空燃比λ<1.05、特に<1.00で実施する、方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により製造可能であるかまたは製造された、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラス。
【請求項12】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスであって、前記ガラスまたは前記ガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比が少なくとも0.02であり、前記ガラスまたは前記ガラスセラミックがガラスまたはガラスセラミック10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡が80個未満であり、かつ/または前記ガラスまたは前記ガラスセラミックがガラスまたはガラスセラミック10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡が2個未満である、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラス。
【請求項13】
前記ガラスまたは前記ガラスセラミックのCO2収支がゼロである、請求項11または12記載のガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラス。
【請求項14】
前記ガラスが清澄剤XnOmを含み、前記ガラスにおいて、温度T2および酸素分圧p(O2)1バールで前記清澄剤からのO2放出量が最大で30%である、請求項11から13までのいずれか1項記載のガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法、ならびにガラスまたはガラスセラミックに関する。
【0002】
背景技術
ガラスやガラスセラミックの製造に際して、これらは、溶融後に通常は清澄工程に供される。これは特に、溶解プロセス中に例えば炭酸塩系や水酸化物系の原料の分解により形成されるCO2気泡やH2O気泡をガラスメルトから除去することを目的としている。ガラス製造の清澄段階では、ガラスメルト中に存在する気泡が成長して上昇し、表面からメルトの外に出ることができるようになる。
【0003】
一般的な清澄工程では、ガラスメルトを、溶融槽の一部、すなわち溶融槽の清澄セクションや下流域、例えば清澄チャンバで高温にする。メルトに清澄剤が含まれている場合、メルトは例えばO2などの清澄ガスを放出する。この清澄ガスが既存の気泡に拡散して気泡を拡大させることで、気泡がメルト中で上昇してメルトの外に出ることができる。
【0004】
例えば多価酸化物系清澄剤であるSb2O5やAs2O5といった幾つかの古典的な清澄剤については、現在では、使用しない、あるいは環境に適合した様式でのみ使用するという法的規制があるが、そのような清澄剤の使用の低減を求める顧客要求も存在する。
【0005】
例えばSnO2などの環境に適合した許容可能な清澄剤は、高濃度では、透過率や結晶化傾向といったガラスの特性に悪影響を与えるおそれがある。
【0006】
したがって、本発明の課題は、非常に良好な生成物品質を得るのに必要な多価酸化物系清澄剤の量を低減することである。
【0007】
発明の概要
本発明による方法は、優れた生成物品質を維持しつつ、多価酸化物系清澄剤の必要量を低減するという課題を解決するものである。
【0008】
これに関連して、本発明による方法により、清澄剤から放出されるO2量を増加させて、選択された清澄温度で使用される清澄剤の転化率を高めることができ、清澄剤を比較的少量しか使用しなくても清澄の向上が達成され、すなわち、気泡をごくわずかにしか含まないガラスまたはガラスセラミックが得られる。
【0009】
第1の態様において、本発明は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法であって、該方法は、
- 原料のバッチを提供するステップと、
- メルトが得られるまでバッチを加熱するステップであって、特にバッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、103dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- メルトに清澄処理を施すステップであって、特にメルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- 清澄ガラス、清澄ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップと
を含み、ここで、
式XnOm[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]および/または式MnSO4[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の少なくとも1つの清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で使用し、
清澄剤は、酸素分圧p(O2)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、XnOm→XnOm-1+1/2O2および/もしくはXnOm→XnOm-2+O2の反応による、ならびに/またはMnSO4→MnO+SO2+1/2O2の反応による高酸化段階から低酸化段階への清澄剤の少なくとも30%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当し、かつ該方法は、
メルトの清澄時の酸素分圧p(O2)を、温度T3でのメルトにおけるO2飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低くなるように調整するステップを含む、方法に関する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法であって、溶融および/または清澄を、H2およびO2の燃焼による加熱下で実施し、溶融を、空燃比λ>1.00、特に>1.05で実施し、かつ/または清澄を、空燃比λ<1.00、特に<1.05で実施する、方法に関する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、本発明による方法により製造可能であるかまたは製造された、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスに関する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスであって、ガラスまたはガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比が少なくとも0.02であり、ガラスまたはガラスセラミックがガラスまたはガラスセラミック10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡が80個未満であり、かつ/またはガラスまたはガラスセラミックがガラスまたはガラスセラミック10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡が2個未満である、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスに関する。
【0013】
定義および方法
「ガラスメルト」または「メルト」とは、ガラス原材料またはガラス出発材料のバッチ体積で、107.6dPa・s未満の粘度を有するものをいう。
【0014】
「気泡」とは、ガラスまたはガラスメルト内に存在するガス状の介在物で、一般に少なくとも10μmの直径を有するものをいう。ここで「直径」とは、球相当径を意味する。本明細書において気泡の「サイズ」に言及する場合には、球相当径を意味する。本明細書において「気泡」という用語は、広義のガス状の介在物と、特定の意味での「CO2気泡」または「O2気泡」との双方であると理解することができる。
【0015】
「空燃比λ」とは、燃料が例えばH2OやCO2などの燃焼生成物に反応または転化する際に利用できる酸素の量を定義するものである。したがって、λ=1.00は化学量論的であり、燃料の多い混合気はλ<1.00であり、燃料の少ない混合気はλ>1.00である。したがって、燃料の少ないλ>1.00の混合気では、(残存)酸素が過剰な状態で燃料を完全に転化させることができる。
【0016】
本明細書において固体または液体の文脈で「ppm」に言及する場合、これは「重量/重量」と理解されるべきであり、気体の文脈での「ppm」は、「体積/体積」に関するものである。
【0017】
「滞留時間」とは、連続プロセスにおいて、ガラスメルトの所定の部分が所定の容器または部分容器(例えば、溶融容器または清澄容器)内に留まり、そこから取り出されるまでの時間をいう。文献上では、「滞留時間」という用語は「滞留期間」とも同等に用いられている。「最小滞留時間」とは、連続プロセスにおいて、ガラスメルトの所定の部分が容器または部分容器内を最速の経路で通過しても、その部分が容器または部分容器内に留まる時間をいう。「流体力学的滞留時間」とは、「(部分)容器体積[m3]」と「(部分)容器処理量[m3・h-1]」との比として定義される。したがって、「流体力学的滞留時間」とは、「平均滞留時間」または「平均滞留期間」、すなわち、連続プロセスにおいて、ガラスメルトの所定の部分が数学的平均値または物理的平均処理速度に対応する経路で容器または部分容器を通過する際に、この部分が容器または部分容器内に留まる時間と理解することができる。
【0018】
「清澄時間」とは、ガラスメルトの所定の部分が、バッチプロセスにおいて清澄を目的として所定の容器または部分容器(例えば、清澄容器)内に留まり、そこから取り出されるまでの時間をいう。この場合、メルトは、少なくとも一部の領域において、清澄温度、特にT2.5を上回る温度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスにおける清澄剤Sb
2O
3、As
2O
3およびSnO
2の酸素放出量を温度に対して示す図である。
【
図2】ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスのメルトにSnO
2で清澄処理を施したものの酸素分圧p(O
2)のグラフを示す図である。
【
図3】SnO
2清澄ガラスセラミックにおけるスズの総量、すなわちSnOおよびSnO
2に対するSnOの割合(モル%)を、溶融および清澄方法の温度および時間に対して示す図である。
【0020】
発明を実施するための形態
第1の態様において、本発明は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法であって、該方法は、
- 原料のバッチを提供するステップと、
- メルトが得られるまでバッチを加熱するステップであって、特にバッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、103dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- メルトに清澄処理を施すステップであって、メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- 清澄ガラス、清澄ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップと
を含み、ここで、
式XnOm[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]および/または式MnSO4[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の少なくとも1つの清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で使用し、
清澄剤は、酸素分圧p(O2)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、XnOm→XnOm-1+1/2O2および/もしくはXnOm→XnOm-2+O2の反応による、ならびに/またはMnSO4→MnO+SO2+1/2O2の反応による高酸化段階から低酸化段階への清澄剤の少なくとも30%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当し、かつ該方法は、
メルトの清澄時の酸素分圧p(O2)を、温度T3でのメルトにおけるO2飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低くなるように調整するステップを含む、方法に関する。
【0021】
一実施形態において、「メルトに清澄処理を施す」ステップを清澄時間で実施し、バッチプロセスでの清澄時間は、少なくとも2時間であるが、ただし最長で96時間である。
【0022】
別の一実施形態において、「メルトに清澄処理を施す」ステップを平均滞留期間で実施し、連続プロセスでの清澄時のメルトの平均滞留期間は、少なくとも2時間であるが、ただし最長で18時間である。
【0023】
本方法の一実施形態において、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および清澄方法が対象となる。
【0024】
本方法のさらなる一実施形態において、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの清澄方法が対象となる。ここで、清澄の前に、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスを高温、すなわち清澄に適した温度、特にT2.5を上回る温度まで加熱することが、暗に前提となる。
【0025】
本方法により、優れた生成物品質を維持しつつ、多価酸化物系清澄剤の必要量を低減することが可能となる。本発明による方法は、清澄剤から放出されるO2量を増加させて、その都度必要な清澄温度で使用される清澄剤の転化率を高めることによって、これを達成するものである。したがって、本発明による方法により、清澄剤を比較的少量しか使用しなくても清澄の向上が達成され、すなわち、気泡をごくわずかにしか含まないガラスまたはガラスセラミックが得られる。
【0026】
本方法の一実施形態において、メルトが得られるまでバッチを加熱するステップを実施し、バッチを一部の領域においてまたは実質的に全領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、103dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、バッチを最高で温度T2.5まで加熱し、ここで、温度T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。
【0027】
本方法の一実施形態において、メルトに清澄処理を施すステップを実施し、メルトを一部の領域においてまたは実質的に全領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、好ましくは、メルトを少なくともT2.2、T2-100℃またはT2-150℃の温度に加熱し、ここで、T2.2は、102.2dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、かつ/またはメルトを最高で温度T2まで加熱し、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。
【0028】
本方法の一実施形態において、メルトに清澄処理を施すステップを実施し、メルトを一部の領域においてまたは実質的に全領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、好ましくは、メルトを少なくともT2.2、T2-100℃またはT2-150℃の温度に加熱し、ここで、T2.2は、102.2dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、かつ/またはメルトを最高で温度T2まで加熱し、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、メルトに清澄処理を施すステップを清澄時間で実施し、バッチプロセスでの清澄時間は、少なくとも2時間、しかし最長で96時間である。
【0029】
本方法の一実施形態において、メルトに清澄処理を施すステップを実施し、メルトを一部の領域においてまたは実質的に全領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、好ましくは、メルトを少なくともT2.2、T2-100℃またはT2-150℃の温度に加熱し、ここで、T2.2は、102.2dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、かつ/またはメルトを最高で温度T2まで加熱し、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、メルトに清澄処理を施すステップを平均滞留期間で実施し、連続プロセスでの清澄時のメルトの平均滞留期間は、少なくとも2時間であるが、ただし最長で18時間である。
【0030】
一実施形態において、本方法は、清澄剤の選択によって特徴付けられ、清澄剤は、酸素分圧p(O2)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、XnOm→XnOm-1+1/2O2および/もしくはXnOm→XnOm-2+O2の反応による、ならびに/またはMnSO4→MnO+SO2+1/2O2の反応による高酸化段階から低酸化段階への清澄剤の少なくとも30%の転化率、少なくとも35%の転化率、少なくとも40%の転化率、または少なくとも45%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。清澄剤の転化率は、例えばメルトの温度やメルト中の酸素分圧など様々な要因に影響される。ここで、酸素分圧p(O2)1バールおよび温度T2での所与の清澄剤の各転化率(%)は、化学平衡条件と関連している。例えば、XnOm→XnOm-1+1/2O2の反応による少なくとも30%の転化率とは、化学平衡状態において、XnOmおよびXnOm-1の総モル量に対して少なくとも30モル%の還元種XnOm-1が存在することを意味する。明確にするために述べると、清澄剤が酸素分圧1バールおよび温度T2でメルトにおいてある転化率を有するという熱力学的特性を有している、という記述は、プロセスステップを特徴付けるものではなく、仮想的な溶融条件下での清澄剤の特性を特徴付けるものである。これは、メルトがある時点でT2温度でなければならず、かつ/または酸素分圧が1バールでなければならないことを意味するものではない。この特性は、所定の条件で清澄剤がどのような挙動を示すのかを表すものである。これにより、メルトの組成に応じた清澄剤の選択規定が示される。この清澄剤の特性は、実験により求めることができる。実際に実施されるプロセスステップおよび実際に生じる条件は、これとは区別して考えなければならない。こうすることで、本明細書に記載されているように清澄剤の実際の転化率に影響を及ぼすことができ、特に、酸素分圧を低下させることによってこの転化率を高めることができる。
【0031】
一実施形態において、本方法、特に清澄ステップを、清澄剤の実際の少なくとも30%の転化率、少なくとも35%の転化率、少なくとも40%の転化率、または少なくとも45%の転化率が生じるように十分な時間にわたって実施する。複数の清澄剤の混合物を使用する場合には、使用する清澄剤のモル割合の合計から得られる実際の転化率(モル%)が、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、または少なくとも45%であることが好ましい。これは、化学平衡状態において、すべての還元種の合計が、還元種および酸化種の総モル量に対して少なくとも30モル%存在することを意味する。ここで、当業者であれば、清澄剤の所望の転化率に必要な時間を理論的に推定することも、計測学的に求めて確認することも可能である(例えば、
図3を参照)。この時間は、連続プロセスにおける清澄容器または清澄セクションでのメルトの平均滞留時間2~18時間に相当し得る。同様に、この時間は、バッチプロセスにおける2~96時間の清澄時間に相当し得る。
【0032】
一実施形態において、本方法は、メルトの清澄時の酸素分圧p(O
2)を、温度T3でのメルトにおけるO
2飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低くなるように調整することを特徴とする(例えば、
図2を参照)。メルトにおけるO
2飽和度およびメルトの清澄時の酸素分圧p(O
2)の低下は、それぞれの設定温度での化学平衡条件と関連している。明確にするために述べると、温度T3でのメルトにおけるO
2飽和度への言及は、参照値としてのみ用いられる。これは、実際にこの温度で平衡状態に達しなければならないということではない。本方法の特徴は、例えば、適切に選択された温度を調整し、かつ/または低い空燃比λを用いることにより実現可能である。代替的または追加的に、本方法の特徴は、例えば、ガラスメルトの上方の領域において、0.5バール以下、0.4バール以下、0.3バール以下、0.2バール以下、0.1バール以下、または0.05バール以下の絶対圧力を用いることにより実現可能である。しかし、好ましくは、清澄時のメルトの上方での絶対圧力は少なくとも0.5バールである。
【0033】
ガラスメルト中の酸素分圧p(O2)を、温度T3でのメルトにおけるO2飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低下させることにより、XnOm→XnOm-1+1/2O2もしくはXnOm→XnOm-2+O2の反応、またはMnSO4→MnO+SO2+1/2O2の反応によるそれぞれの平衡が、生成物側へ、すなわち清澄剤の還元に有利になるように、すなわち、還元された清澄剤およびその際に生成されるO2に有利になるようにシフトする。
【0034】
一実施形態において、式XnOm[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]の清澄剤を使用する。一実施形態において、式MnSO4[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の清澄剤を使用する。これに関連するおよび関連しない一実施形態において、1つ以上の清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で、かつ/または原料のバッチの総重量に対して少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、もしくは少なくとも0.2重量%の濃度で使用する。一実施形態において、1つ以上の清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用する。清澄剤を1つ以上使用することができる。本明細書において「清澄剤」に言及する場合、これは複数の清澄剤を併用することを排除するものではない。しかし、本明細書に挙げられた清澄剤のいずれかを単独の清澄剤として使用することも可能である。複数の清澄剤を使用する場合、本明細書の記述が、相応して清澄剤の組み合わせに適用される。
【0035】
一実施形態において、塩化物およびフッ化物、例えばNaCl、KCl、NaF、KFの一覧から選択される追加の清澄剤を使用する。
【0036】
一実施形態において、清澄剤は、酸素分圧p(O2)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、XnOm→XnOm-1+1/2O2および/もしくはXnOm→XnOm-2+O2の反応による、ならびに/またはMnSO4→MnO+SO2+1/2O2の反応による高酸化段階から低酸化段階への清澄剤の少なくとも30%の転化率、少なくとも35%の転化率、少なくとも40%の転化率、少なくとも45%の転化率、または少なくとも50%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。一実施形態において、清澄剤は、酸素分圧p(O2)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、XnOm→XnOm-1+1/2O2および/もしくはXnOm→XnOm-2+O2の反応による、ならびに/またはMnSO4→MnO+SO2+1/2O2の反応による清澄剤の最高で99%の転化率、最高で95%の転化率、最高で90%の転化率、または最高で80%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、温度T2は、102dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。
【0037】
本方法の一実施形態において、本方法は、ガラスメルト中の酸素分圧p(O2)を、温度T3でのメルトにおけるO2飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、または少なくとも80%低くなるように調整するステップを含む。本方法の一実施形態において、本方法は、メルト中の酸素分圧p(O2)を、メルトにおけるO2飽和度に対して最大で99%、好ましくは最大で95%、または最大で90%低くなるように調整するステップを、バッチの加熱後でかつメルトの清澄処理前に含む。本方法の一実施形態において、本方法は、メルト中の酸素分圧p(O2)を、メルトにおけるO2飽和度に対して60%~99%、好ましくは70%~95%、または80%~90%低くなるように調整するステップを、バッチの加熱後でかつメルトの清澄処理前に含む。
【0038】
一実施形態において、(清澄)ガラス、(清澄)ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおけるFe3+に対するFe2+の比は、少なくとも0.02、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、または少なくとも0.4である。一実施形態において、(清澄)ガラス、(清澄)ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおけるFe3+に対するFe2+の比は、最大で1.00、最大で0.99、最大で0.95、最大で0.9、最大で0.8、または最大で0.7である。一実施形態において、(清澄)ガラス、(清澄)ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおけるFe3+に対するFe2+の比は、0.02~1.0、0.05~0.99、0.1~0.95、0.2~0.9、0.3~0.8、または0.4~0.7である。
【0039】
本方法により、その都度使用される清澄剤からの酸素の放出が促進され、それにより、清澄ガラス、清澄ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスにおいて達成すべきFe3+に対するFe2+の比に関して所望の酸化還元比の調整が可能となる。特に本方法では、初期のFe3+に対するFe2+の比に応じてFe2+に有利になるように平衡をシフトさせる還元条件が促進され、それによって清澄結果が改善される。
【0040】
一実施形態において、本方法と、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスとの双方に関して、(清澄)ガラス、(清澄)ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおける清澄剤の酸化型に対する清澄剤の還元型の比、特にXnOmに対するXnOm-1の比、あるいはXnOmに対するXnOm-2の比は、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも1.0、または少なくとも2.0である。一実施形態において、(清澄)ガラス、(清澄)ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおける清澄剤の酸化型に対する清澄剤の還元型の比、特にXnOmに対するXnOm-1の比、あるいはXnOmに対するXnOm-2の比は、最大で99.0、最大で90.0、最大で50.0、最大で10.0、または最大で5.0である。一実施形態において、(清澄)ガラス、(清澄)ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおける清澄剤の酸化型に対する清澄剤の還元型の比、特にXnOmに対するXnOm-1の比、あるいはXnOmに対するXnOm-2の比は、0.6~99.0、0.7~90.0、0.8~50.0、1.0~10.0、または2.0~5.0である。本方法により、その都度使用される清澄剤からの酸素の放出が促進され、それにより、(清澄)ガラス、(清澄)ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおいてその都度使用される清澄剤の還元型と酸化型との望ましいあるいは所望の比の調整が可能となる。
【0041】
一実施形態において、清澄剤は、Na2SO4、K2SO4、Li2SO4、MgSO4、CaSO4、SrSO4、ZnSO4、Sb2O5、As2O5、CeO2、およびSnO2、またはそれらの混合物の一覧から選択される。
【0042】
清澄剤Sb2O5、As2O5、CeO2、およびSnO2は、原料のバッチにおいて、最初はそれぞれ最も低い酸化段階で供給されることが好ましい。例えば、清澄剤であるSb2O5およびAs2O5は、原料のバッチにおいて、通常はSb2O3およびAs2O3の形で提供される。重量%単位のデータ(重量%)は、各清澄剤、例えばSb2O5、As2O5、CeO2およびSnO2のすべての酸化種および還元種の合計に対するものであり、したがって、例えばSb2O3、As2O3、CeOおよびSnOもそれぞれ含まれる。
【0043】
一実施形態において、清澄剤はSnO2であり、特に清澄剤はSnO2であって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0044】
一実施形態において、清澄剤はAs2O5であり、特に清澄剤はAs2O5であって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0045】
一実施形態において、清澄剤はSb2O5であり、特に清澄剤はSb2O5であって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0046】
一実施形態において、清澄剤は硫酸塩であり、特にNa2SO4であって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0047】
前述の清澄剤は、単独で用いてもよいし、2つ以上の清澄剤を組み合わせて用いてもよい。さらなる一実施形態において、清澄を、さらに塩化物およびフッ化物により促進させることができる。
【0048】
一実施形態において、(清澄)ガラスまたは(清澄)ガラスセラミックがガラス10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡は80個未満であり、かつ/またはガラス10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡は2個未満である。
【0049】
一実施形態において、(清澄)ガラスまたは(清澄)ガラスセラミックがガラス10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡は80個未満、40個未満、10個未満、5個未満、または2個未満であり、かつ/またはガラス10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡は2個未満である。
【0050】
一実施形態において、(清澄)ガラスまたは(清澄)ガラスセラミックがガラス10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡は少なくとも0.1個、または少なくとも0.5個であり、かつ/またはガラス10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡は少なくとも0.1個である。
【0051】
ガラス10kgあたりの所定数の気泡についての言及は、ガラスセラミック10kgあるいはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラス10kgにも同様に適用され、類推されるものとする。さらに、ガラス10kgあたりの所定数の気泡に関する特徴は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスが10kgの重量を有しなければならないことと解釈されるべきではない。基準重量である10kgは、様々な重量のガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスにおける気泡数を比較して測定するためにのみ用いられる。
【0052】
一実施形態において、(清澄)ガラスまたは(清澄)ガラスセラミックは、少なくとも1g、少なくとも5g、少なくとも10g、少なくとも50g、または少なくとも100gの重量を有する。さらなる一実施形態において、(清澄)ガラスまたは(清澄)ガラスセラミックは、少なくとも0.5ml、少なくとも2.5ml、少なくとも5ml、少なくとも25ml、または少なくとも50mlの体積を有する。
【0053】
一実施形態において、本方法をバッチ式で実施する。これは、特にH2およびO2の燃焼と組み合わせると有利であり、なぜならば、そうすることで、メルトの清澄時に清澄剤転化率の向上を伴う酸素分圧p(O2)の低下を特に良好に制御および調整できるように清澄段階を拡張することができるためである。
【0054】
本方法の一実施形態において、バッチプロセスでの清澄時間は、少なくとも2時間、少なくとも8時間、少なくとも16時間、または少なくとも24時間であるが、ただし最長で96時間、最長で72時間、または最長で48時間である。本方法の一実施形態において、バッチプロセスでの清澄時間は、2~96時間、8~72時間、16~72時間、または24~48時間である。
【0055】
バッチプロセスで所定の清澄時間となるように調整することで、使用される清澄剤の十分な反応時間あるいは十分な転化率、および(それに付随する)メルトからの十分なO2の放出、さらに基礎となる化学平衡の調整が可能となる。特にこれは、(ガラス)メルトにおける使用される清澄剤の還元型と酸化型との化学平衡、ならびに(温度に応じた)ガラスメルト中の酸素分圧p(O2)とガラスメルトの上方の酸素分圧p(O2)との化学平衡を指す。
【0056】
本方法の一実施形態において、清澄を連続プロセスで実施し、清澄時のメルトの平均滞留期間は、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、または少なくとも8時間である。しかし、清澄時のメルトの平均滞留期間は、最長で18時間、最長で16時間、最長で14時間、または最長で12時間である。本方法の一実施形態において、清澄を連続プロセスで実施し、清澄時のメルトの平均滞留期間は、2~18時間、4~16時間、6~14時間、または8~12時間である。
【0057】
本方法の一実施形態において、清澄を連続プロセスで実施し、清澄時のメルトの流体力学的滞留時間は、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、または少なくとも8時間である。しかし、清澄時のメルトの流体力学的滞留時間は、最長で18時間、最長で16時間、最長で14時間、または最長で12時間である。本方法の一実施形態において、清澄を連続プロセスで実施し、清澄時のメルトの流体力学的滞留時間は、2~18時間、4~16時間、6~14時間、または8~12時間である。
【0058】
連続プロセスでの清澄時にメルトの所定の平均滞留期間となるように調整することで、使用される清澄剤の十分な反応時間あるいは十分な転化率、および(それに付随する)メルトからの十分なO2の放出、さらに基礎となる化学平衡の調整が可能となる。特にこれは、メルトにおける使用される清澄剤の還元型と酸化型との化学平衡、ならびに(温度に応じた)メルト中の酸素分圧p(O2)とメルトの上方の酸素分圧p(O2)との化学平衡を指す。
【0059】
一実施形態において、本方法を、H2およびO2の燃焼による加熱下で実施する。本方法の一実施形態において、本方法に必要なエネルギーの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも99%を、H2およびO2の燃焼により供給する。
【0060】
一実施形態において、本方法を、H2およびO2の燃焼による加熱下で実施し、H2およびO2の少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも99%を、H2Oの電気分解から供給する。好ましくは、H2Oの電気分解を再生可能エネルギーにより運転する。これには、環境負荷が最小限に抑えられ、かつ化石燃料を使用しないため、CO2排出量の削減が可能になるという利点がある。
【0061】
一実施形態において、清澄方法を、1.00未満、特に1.05未満の空燃比λで実施する。これは、(ほぼ)完全に反応しきることができる酸素の経済的な使用の観点から特に有利である。一実施形態において、溶融方法を、1.00より大きい、特に1.05より大きい空燃比λで実施する。同様に、酸素の追加投入量を低く抑えて、メルトの清澄時の酸素分圧p(O2)の低下を促進することが有利である。
【0062】
さらなる一態様において、本発明は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法であって、溶融および/または清澄を、H2およびO2の燃焼による加熱下で実施し、溶融を、空燃比λ>1.00、特に>1.05で実施し、かつ/または清澄を、空燃比λ<1.05、特に<1.00で実施する、方法に関する。
【0063】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの溶融および/または清澄方法の一実施形態において、溶融および/または清澄を、H2およびO2の燃焼による加熱下で実施し、溶融を、空燃比λ>1.00でかつλ<1.20、特にλ>1.01、>1.02、または>1.03、特にλ>1.05でかつλ<1.15で実施し、かつ/または清澄を、空燃比λ<1.05でかつλ>0.90、特にλ<0.99、<0.98または<0.97、特にλ<1.00でかつλ>0.95で実施する。
【0064】
このような方法は、溶融時の空燃比λ>1.00の利点が利用され、これが清澄時の空燃比λ<1.00、特に<1.05の利点と組み合わせられるため有利である。これにより、特に清澄段階での酸素の追加投入量が低く抑えられ、メルトの清澄時の酸素分圧p(O2)の低下が促進される。
【0065】
化石燃料による加熱およびO2の燃焼下に溶融および/または清澄を実施する従来の方法と比較すると、こうした方法では、溶融時に空燃比λが1.00を上回る程度では不完全燃焼ゆえに運転が不可能である。不完全燃焼の結果、COおよび/またはCが混入すると、メルトやプロセス装置において多くの好ましくない問題が発生する。化石燃料で加熱する場合、清澄を空燃比λ<1.05、特に<1.00で実施すると、前述の欠点がさらに顕著になる。
【0066】
さらなる一態様において、本発明は、本明細書に記載の方法のいずれかにより製造可能であるかまたは製造された、ガラス、ガラスセラミック、または特にガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスに関する。
【0067】
さらなる一態様において、本発明は、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスであって、ガラスまたはガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比が少なくとも0.02であり、ガラスまたはガラスセラミックがガラスまたはガラスセラミック10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡が80個未満であり、かつ/またはガラスまたはガラスセラミックがガラスまたはガラスセラミック10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡が2個未満である、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスに関する。
【0068】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの一実施形態において、ガラスまたはガラスセラミックは、式XnOm[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]および/または式MnSO4[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の少なくとも1つの清澄剤を、ガラスまたはガラスセラミックの総重量に対して0.4重量%以下の総濃度で含む。ここで、重量%での総濃度(重量%)は、使用される各清澄剤、例えばSb2O5、As2O5、CeO2およびSnO2のすべての酸化種および還元種の合計に対するものであり、したがって、例えばSb2O3、As2O3、CeOおよびSnOもそれぞれ含まれる。
【0069】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの一実施形態において、ガラスまたはガラスセラミックのCO2収支はゼロである。有利には、H2Oの電気分解を、CO2収支がゼロである電気により運転する。本開示において、CO2収支がゼロであるとは、発電によってCO2の全存在量が増加しないことであるとみなされる。そのため、太陽光、風力、水力および/または原子力で発生させた電気が、CO2収支がゼロの電気であるとみなされる。
【0070】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの一実施形態において、ガラスは清澄剤XnOmを含み、清澄剤において、ガラスメルト中で、温度T2および酸素分圧p(O2)1バールで、清澄剤からのO2放出量は、最大で30%、最大で20%、または最大で10%である。上記で定義した清澄剤の選択規定および好ましい清澄剤に関する情報は、ガラス、ガラスセラミックおよびガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの実施形態に適宜適用される。
【0071】
ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの組成物
本明細書において「ガラス組成物」について言及される場合、これは、溶融および/または清澄後のガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの酸化物組成物であると理解される。塩化物およびフッ化物を追加の清澄剤として使用する場合、「ガラス組成物」とは、溶融および/または清澄後になおも存在する金属塩化物および金属フッ化物を含む、ガラス、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの酸化物組成物を指す。
【0072】
つまり、「ガラス組成物」とは、溶融および/または清澄後に得られる酸化物と塩化物とフッ化物との組み合わせである。
【0073】
本発明によるガラス組成物は、SiO2およびB2O3を多く含むことができる。その結果、高品質のガラスまたはガラスセラミックを得ることができる。
【0074】
ガラス組成物は、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、またはリチウムアルミノケイ酸ガラスセラミックであってよい。
【0075】
ガラス組成物は、例えばLi2O、Na2OおよびK2Oなどのアルカリ金属酸化物を、20重量%未満、15重量%未満、12重量%未満、10重量%未満、または5重量%未満の量で含むことができる。任意に、ガラス組成物は、アルカリ金属酸化物を含まない。代替的な実施形態において、ガラス組成物中のアルカリ金属酸化物の量は、少なくとも1重量%である。有利なことに、アルカリ金属酸化物の量が少ないと、メルトへのCO2の溶解性が低くなる。
【0076】
ガラス組成物は、例えばMgO、CaO、SrO、BaOなどのアルカリ土類金属酸化物を、20重量%未満、15重量%未満、12重量%未満、10重量%未満、または5重量%未満の量で含むことができる。任意に、ガラス組成物は、アルカリ土類金属酸化物を含まない。代替的な実施形態において、ガラス組成物中のアルカリ土類金属酸化物の量は、少なくとも1重量%である。
【0077】
ガラス組成物は、鉄を、Fe2O3ベースで計算した場合に0.05重量%未満、0.01重量%未満、または0.005重量%未満の量で含むことができる。
【0078】
一実施形態において、ガラス組成物は、Fe2O3を少なくとも0.0005重量%、少なくとも0.001重量%、または少なくとも0.002重量%の量で含むことができる。対応する実施形態において、ガラス組成物は、Fe2O3を0.0005重量%~0.05重量%、0.001重量%~0.01重量%、または0.002重量%~0.005重量%の量で含むことができる。
【0079】
Fe2O3の量は、ガラス組成物中のすべての鉄がFe2O3の形で存在するものとして、その総重量に対するものである。しかしこれは、すべての鉄がこの形で存在することを意味するものではない。例えば、FeOの形のすべての鉄が含まれる。
【0080】
さらなる一実施形態において、ガラス組成物は、Fe2O3を、ガラス組成物の総重量に対して1000ppm未満、500ppm未満、または200ppm未満の量で含むことができる。任意に、ガラス組成物は、Fe2O3を、ガラス組成物の総重量に対して少なくとも1ppm、少なくとも10ppm、または少なくとも50ppmの量で含むことができる。対応する実施形態において、ガラス組成物は、Fe2O3を、ガラス組成物の総重量に対して1~1000ppmの量で、10~500ppmの量で、または50~200ppmの量で含むことができる。
【0081】
ガラス組成物は、SiO2を、少なくとも48重量%、少なくとも55重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、または少なくとも75重量%の量の含むことができる。任意に、SiO2の量は、最大で90重量%、最大で87.5重量%、最大で85重量%、最大で82.5重量%、または最大で80重量%であってよい。
【0082】
ガラス組成物は、ガラスセラミックであってよい。ガラスセラミックの場合、ガラス組成物は、例えばTiO2および/またはZrO2などの核形成剤を含むことができる。任意に、TiO2および/またはZrO2の総量は、少なくとも2.0重量%、または少なくとも2.5重量%であってよい。任意に、TiO2および/またはZrO2の総量は、7.0重量%未満、または5.0重量%未満であってよい。ガラス組成物は、例えば、Li2Oを少なくとも2.0重量%含むリチウムアルミノケイ酸ガラス組成物であってよい。
【0083】
任意に、ガラス組成物は、Al2O3を、少なくとも1.5重量%、少なくとも5.0重量%、または少なくとも10.0重量%の量で含むことができる。Al2O3の量は、最大で25.0重量%、最大で23.0重量%、最大で20.0重量%、または最大で18.0重量%であってよい。特定の実施形態において、Al2O3の量は、1.5~23.0重量%、5.0~20.0重量%、または10.0~18.0重量%であってよい。
【0084】
追加的または代替的に、ガラス組成物は、B2O3を、少なくとも0.5重量%、少なくとも8.0重量%、または少なくとも10.0重量%の量で含むことができる。B2O3の量は、最大で25.0重量%、最大で23.0重量%、最大で20.0重量%、最大で18.0重量%、最大で16.0重量%、または最大で14.0重量%であってよい。特定の実施形態において、B2O3の量は、0.5~20.0重量%、8.0~16.0重量%、または10.0~14.0重量%であってよい。
【0085】
高粘度ガラスの多くは、SiO2、Al2O3、およびB2O3を多量に含む。任意に、ガラス組成物において、SiO2、Al2O3、およびB2O3の合計含有量は、少なくとも75.0重量%、少なくとも78.0重量%、少なくとも80.0重量%、少なくとも82.0重量%、または少なくとも85.0重量%であってよい。SiO2、Al2O3、およびB2O3の合計含有量は、97.0重量%未満、93.5重量%未満、または90.0重量%未満であってよい。任意に、SiO2、Al2O3、およびB2O3の量は、75.0~95.0重量%、78.0~92.5重量%、または85.0~90.0重量%であってよい。
【0086】
一実施形態において、ガラス組成物は、3.0~4.2重量%のLi2O、19~23重量%のAl2O3、60~69重量%のSiO2、および任意にTiO2および/またはZrO2、好ましくは2.0~4.0重量%のTiO2および/またはZrO2を含むリチウムアルミノケイ酸ガラスであってよい。
【0087】
特定の実施形態において、ガラス組成物は、本明細書に記載された組成物に代えてまたは加えて、以下の組成範囲により記述することができる。
【0088】
一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%)を含むホウケイ酸ガラスであってよい:
【表1】
【0089】
一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%)を含むホウケイ酸ガラスであってよい:
【表2】
【0090】
一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%)を含むホウケイ酸ガラスであってよい:
【表3】
【0091】
別の一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%)を含むアルカリホウケイ酸ガラスであってよい:
【表4】
【0092】
代替的な一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%)を含むアルカリホウケイ酸ガラスであってよい:
【表5】
【0093】
さらなる一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%):
【表6】
および任意にCo、Ni、Fe、Nd、Moの1つ以上の酸化物、および任意にSnO
2、塩化物、As
2O
5、Sb
2O
5の群から選択される1つ以上の清澄剤、好ましくは0.1~1.5重量%のSnO
2、または好ましくは0.1~1.5重量%のAs
2O
5、または好ましくは0.1~1.5重量%のSb
2O
5を含むことができる。
【0094】
一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%):
【表7】
を含むことができ、ここで、MgO、CaO、およびBaOの合計は、8.0~18.0重量%である。
【0095】
さらなる一実施形態において、ガラス組成物は、以下の成分(重量%):
【表8】
を含むことができる。
【0096】
図面の説明
図1は、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスにおける清澄剤Sb
2O
3、As
2O
3およびSnO
2の酸素放出量を温度に対して示したものである。
【0097】
図2は、SnO
2で清澄処理を施したガラスセラミックの酸素分圧p(O
2)のグラフを示している。酸化物系清澄剤を伴ってガラスの清澄温度に達した場合、メルトのp(O
2)は、通常は約1バールである。その際、酸化物系清澄剤の一部が、酸化状態から還元状態に移行する。p(O
2)のグラフは、1600℃以降は平坦になり、1650℃以降は、p(O
2)曲線は約1バールでほぼ一定となる。1700℃以降は、大気との交換によりp(O
2)が急激に低下し、約0.2バールまで低下する。このp(O
2)の低下により、清澄剤の転化率はさらに上昇し、Sn
2+またはSnOに有利となる。
【0098】
図3は、SnO
2清澄ガラスセラミックにおけるスズの総量、すなわちSnOおよびSnO
2に対するSnOの割合を、溶融および清澄方法の温度および時間に対して示したものである。清澄ステップ前のスズの総量に対するSnOの割合は、約35%(SnOおよびSnO
2に対するSnOのモル比)である。清澄温度を1700℃まで高めると、SnOの割合は約42.5%に増加する。この清澄温度およびp(O
2)値の低下(
図2参照)で本方法を保持することにより、SnOの割合は44.5%に増加する。
【0099】
清澄ステップでのスズの転化率は、清澄の成功、すなわち清澄ガラスセラミックの気泡性の低減に関して重要である。(t=1.5hで)1700℃までの昇温により、増加したスズ転化率はSnO約7.5%である。1700℃で約8時間保持し、メルトをガス雰囲気と交換すると、メルト中のp(O2)の低下が見られ、さらに2%の既存のスズがSnOに転化する。1700℃では、ガラスセラミックの粘度が1600℃の場合の半分となる。そのため、残存する気泡は、1600℃の場合に比べて1700℃の場合の方が2倍速く上昇する。このように、清澄時に保持される温度である1700℃での気泡除去は、SnOの転化の進行に大きく左右される。
【0100】
実施例
ガラス製造
記載のガラスを以下のように製造した。ガラス原材料のバッチを混合し、溶融部および清澄部からなる連続運転型二槽式溶融るつぼ内で加熱した。各部の体積は、約40リットルである。3種類のガラス組成物を製造した:A)ガラスセラミック、B)医薬用ガラス、およびC)光学用ガラス。
【0101】
【0102】
溶融および清澄温度または対応する範囲を、各ガラス生成物に特に適合させた。
【0103】
【0104】
ガラス原材料およびガラスメルトの加熱を、各部の別個の燃料バーナー、すなわち溶融部および清澄部の2つの別個のバーナー、および追加の電気加熱によって実現させた。2つのバーナーは、天然ガス、水素、または両者の所定の混合物を用いて独立して運転可能である。電気加熱には、Pt20Rhプレート電極を使用した。
【0105】
溶融部には、寸法225×225×3mmの電極2つ、および加熱回路を1つ使用した。清澄部には、寸法125×125×3mmの電極4つ、および加熱回路を1つ使用した。ガラスメルトを、溶融部および清澄部における18.3時間(A)、16.5時間(B)または18.6時間(C)の平均滞留期間後に、Pt10/Rhトラフを用いて清澄部から排出した。
【0106】
3種類のガラス組成物は、Fe2O3の初期量(ガラス原材料のバッチに対してモル%およびppm単位で示される)を含む。溶融および清澄後、得られたガラス生成物はFe2+およびFe3+の両種を含んでおり、その量をUV-VIS分光法により定量的に決定し、モル%で表すとともに、両種の比Xred(Fe2+/Fe3+)として表した。
【0107】
【0108】
清澄温度の調整
所与の清澄剤について、必要な清澄温度を、例えば各ガラスメルトの粘度から決定することができる。これは、粘度が十分に低い場合にのみ、製造技術に必要な時間内にメルトからメルト中の気泡が離れ得るためである。SiO
2系ガラスの場合には、総じて、清澄時のガラスメルトの粘度が10
2dPa・sとなるように清澄温度(T2)を調整する。そして、清澄温度T2に応じて適切な清澄剤を選択する。
図1は、清澄剤であるSb
2O
3、As
2O
3およびSnO
2のメルト中でのO
2放出曲線を示す。ここから、O
2放出量には温度に応じて明らかな段階的変化があることがわかる。例えば、Sb
2O
3は比較的低温で酸素を放出し、SnO
2は比較的高温で酸素を放出するが、As
2O
3はその中間である。
【0109】
粘度
粘度を、例えばDIN ISO 7884-2:1998-2により回転粘度計で測定することができる。粘度と温度との関係は、VFT式(Vogel-Fulcher-Tammann)で記述される。
【0110】
鉄含有量
鉄含有量を、DIN 51001:2003-08に準拠して、得られたガラス生成物のスペクトル分析により決定した。特に、得られたガラス生成物中のFe2+とFe3+との比を、UV-Vis透過スペクトルのデコンボリューションにより定量的に求めた。
【外国語明細書】