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特開2023-39442ガラスセラミックおよびガラスセラミックの製造方法
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  • 特開-ガラスセラミックおよびガラスセラミックの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039442
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】ガラスセラミックおよびガラスセラミックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 5/225 20060101AFI20230313BHJP
   C03C 3/062 20060101ALI20230313BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20230313BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20230313BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20230313BHJP
   C03C 3/097 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
C03B5/225
C03C3/062
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/097
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142759
(22)【出願日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10 2021 123 303.8
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】10 2021 123 304.6
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ クラウセン
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン グリューン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リフカ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ シュレプファー
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062AA11
4G062BB01
4G062DA05
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB04
4G062DC01
4G062DD01
4G062DD02
4G062DD03
4G062DD04
4G062DE01
4G062DE02
4G062DE03
4G062DF01
4G062EA03
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062ED01
4G062ED02
4G062ED03
4G062EE01
4G062EE02
4G062EE03
4G062EF01
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4G062EF03
4G062EG01
4G062EG02
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4G062FB03
4G062FC01
4G062FC02
4G062FC03
4G062FD01
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4G062FF01
4G062FG01
4G062FH01
4G062FJ01
4G062FK01
4G062FL01
4G062GA01
4G062GA10
4G062GB01
4G062GC01
4G062GD01
4G062GE01
4G062HH01
4G062HH03
4G062HH05
4G062HH07
4G062HH09
4G062HH11
4G062HH13
4G062HH15
4G062HH17
4G062HH20
4G062JJ01
4G062JJ03
4G062JJ05
4G062JJ07
4G062JJ10
4G062KK01
4G062KK03
4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN29
4G062NN33
4G062NN34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多価酸化物系清澄剤であるSbやAsの使用を低減した、ガラスセラミックの製造方法ならびにガラスまたはガラスセラミックを提供する。
【解決手段】方法は、原料のバッチを提供するステップと、メルトが得られるまでバッチを加熱するステップであって、バッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、メルトに清澄処理を施すステップであって、メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップと該ガラスをセラミック化するステップとを含み、溶融および/または清澄を、HおよびOの燃焼による加熱下で実施する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックの製造方法であって、前記方法は、
- 原料のバッチを提供するステップと、
- メルトが得られるまで前記バッチを加熱するステップであって、前記バッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- 前記メルトに清澄処理を施すステップであって、前記メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップと
- 前記ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスをセラミック化するステップと
を含み、
前記溶融および/または清澄を、HおよびOの燃焼による加熱下で実施する、方法。
【請求項2】
前記ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいは前記ガラスセラミックが、以下の組成(酸化物ベースでの重量%):
【表1】
を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法を、1.05未満の空燃比λで実施する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記溶融を、空燃比λ>1.00、特に>1.05で実施し、かつ/または前記清澄を、空燃比λ<1.05、特に<1.00で実施する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
式X[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]および/または式MSO[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の少なくとも1つの清澄剤を、前記原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記清澄剤は、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2で、前記清澄ステップにおける前記メルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、X→Xm-1+1/2Oおよび/もしくはX→Xm-2+Oの反応による、ならびに/またはMSO→MO+SO+1/2Oの反応による高酸化段階から低酸化段階への前記清澄剤の少なくとも30%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、前記温度T2は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記メルトの前記清澄時の酸素分圧p(O)を、前記温度T3での前記メルトにおけるO飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低くなるように調整するステップを含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ガラスセラミックあるいは前記ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスにおけるFe3+に対するFe2+の比が、少なくとも0.01である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスあるいは前記ガラスセラミックにおけるXに対するXm-1の比、あるいはXに対するXm-2の比が、少なくとも0.6である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記清澄剤が、NaSO、KSO、LiSO、MgSO、CaSO、SrSO、ZnSO、Sb、As、CeO、およびSnOの一覧から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記方法をバッチ式で実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法により製造可能であるかまたは製造された、ガラスセラミック。
【請求項13】
グリーンガラスの製造により放出されるCOが、ガラス1トンあたり500kg未満、好ましくは100kg未満である、請求項12記載のガラスセラミック。
【請求項14】
前記ガラスあるいは前記ガラスから製造されたガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比が、少なくとも0.01である、請求項13記載のガラスセラミック。
【請求項15】
前記ガラスセラミックにおいて、0~50℃の範囲での平均熱膨張係数CTEが最大で0.1×10-6/Kである、請求項12から14までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項16】
前記ガラスセラミックにおいてCO収支がゼロある、請求項12から15までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項17】
前記ガラスが清澄剤Xを含み、前記清澄剤Xが、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、前記清澄剤からのO放出量が最大で30%であるという熱力学的特性を有する、請求項12から16までのいずれか1項記載のガラスセラミック。
【請求項18】
請求項12から16までのいずれか1項記載のガラスセラミックを含む精密部品であって、前記精密部品全体にわたるCTE均一性が、最高で5ppb/K、好ましくは最高で4ppb/K、最も好ましくは最高で3ppb/Kである、精密部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックの製造方法およびガラスセラミックに関する。
【0002】
背景技術
ガラスセラミックの製造では、製造に必要な高温を実現できるようにするため、大量のエネルギーを消費する必要がある。
【0003】
ここでは特に、非ガラス質の出発物質を溶融するステップ、およびそれに続く清澄ステップが挙げられる。これは特に、数日間にわたるバッチプロセスで製造される低膨張およびゼロ膨張ガラスセラミックについて該当する。
【0004】
現在、このプロセスに必要なエネルギーは、主に化石燃料から得られている。しかし、環境保護の観点からは、製造に伴うCO排出量を削減するために、より環境にやさしいエネルギー源への転換や環境対応技術のシェア拡大が望まれる。
【0005】
また環境保護の観点から、清澄時の多価酸化物の使用量を削減することも求められている。これは特に、例えばSbやAsといった問題となる清澄剤について該当する。
【0006】
上述のとおり、ガラスやセラミックの製造に際して、これらは溶融後に通常は清澄工程に供される。これは特に、溶解プロセス中に例えば炭酸塩系や水酸化物系の原料の分解により形成されるCO気泡やHO気泡をガラスメルトから除去することを目的としている。ガラス製造の清澄段階では、ガラスメルト中に存在する気泡が成長して上昇し、表面からメルトの外に出ることができるようになる。
【0007】
一般的な清澄工程では、ガラスメルトを、溶融槽の一部、すなわち溶融槽の清澄セクションや下流域、例えば清澄チャンバで高温にする。メルトに清澄剤が含まれている場合、メルトは例えばOなどの清澄ガスを放出する。この清澄ガスが既存の気泡に拡散して気泡を拡大させることで、気泡がメルト中で上昇してメルトの外に出ることができる。
【0008】
例えば多価酸化物系清澄剤であるSbやAsといった幾つかの古典的な清澄剤については、現在では、使用しない、あるいは環境に適合した様式でのみ使用するという法的規制があるが、そのような清澄剤の使用の低減を求める顧客要求も存在する。
【0009】
例えばSnOなどの環境に適合した許容可能な清澄剤は、高濃度では、透過率や結晶化傾向といったガラスの特性に悪影響を与えるおそれがある。
【0010】
したがって、本発明の課題は、そのような方法を提供することであった。
【0011】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、セラミックの製造方法であって、該方法は、
- 原料のバッチを提供するステップと、
- メルトが得られるまでバッチを加熱するステップであって、バッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- メルトに清澄処理を施すステップであって、メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップと
- ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスをセラミック化するステップと
を含み、
溶融および/または清澄を、HおよびOの燃焼による加熱下で実施する、方法に関する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、本発明による方法により製造されたガラスセラミックに関する。
【0013】
第3の態様において、本発明は、ガラスセラミックであって、グリーンガラスの製造により放出されるCOが、ガラス1トンあたり500kg未満、好ましくは100kg未満である、ガラスセラミックに関する。
【0014】
第4の態様において、本発明は、本発明によるガラスセラミックおよび/または本発明による方法により製造されたガラスセラミックを含む精密部品に関する。
【0015】
第5の態様において、本発明は、本発明による精密部品の使用に関する。
【0016】
定義および方法
「気泡」とは、ガラスまたはガラスメルト内に存在するガス状の介在物で、一般に少なくとも10μmの直径を有するものをいう。ここで「直径」とは、球相当径を意味する。本明細書において気泡の「サイズ」に言及する場合には、球相当径を意味する。本明細書において「気泡」という用語は、広義のガス状の介在物と、特定の意味での「CO気泡」または「O気泡」との双方であると理解することができる。
【0017】
「空燃比λ」とは、燃料が例えばHO、COおよびNOなどの燃焼生成物に完全に反応または転化するのに必要な酸素の量を定義するものである。したがって、λ=1.00は化学量論的であり、燃料の多い混合気はλ<1.00であり、燃料の少ない混合気はλ>1.00である。したがって、燃料の少ないλ>1.00の混合気では、(残存)酸素が過剰な状態で燃料を完全に転化させることができる。
【0018】
本明細書において固体または液体の文脈で「ppm」に言及する場合、これは「重量/重量」と理解されるべきであり、気体の文脈での「ppm」は、「体積/体積」に関するものである。
【0019】
「滞留時間」とは、連続プロセスにおいて、ガラスメルトの所定の部分が所定の容器または部分容器(例えば、溶融容器または清澄容器)内に留まり、そこから取り出されるまでの時間をいう。「最小滞留時間」とは、連続プロセスにおいて、ガラスメルトの所定の部分が容器または部分容器内を最速の経路で通過しても、その部分が容器または部分容器内に留まる時間をいう。「平均滞留時間」とは、「(部分)容器体積[m]」と「(部分)容器処理量[m・h-1]」との比として定義される。
【0020】
「清澄時間」とは、ガラスメルトの所定の部分が、バッチプロセスにおいて清澄を目的として所定の容器または部分容器(例えば、清澄容器)内に留まり、そこから取り出されるまでの時間をいう。この場合、メルトは、少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度を有し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスにおける清澄剤Sb、AsおよびSnOの酸素放出量を温度に対して示す図である。
図2】ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスのメルトにSnOで清澄処理を施したものの酸素分圧p(O)のグラフを示す図である。
図3】SnO清澄ガラスセラミックにおけるスズの総量、すなわちSnOおよびSnOに対するSnOの割合(モル%)を、溶融および清澄方法の温度および時間に対して示す図である。
【0022】
発明を実施するための形態
第1の態様において、本発明は、セラミックの製造方法であって、該方法は、
- 原料のバッチを提供するステップと、
- メルトが得られるまでバッチを加熱するステップであって、バッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- メルトに清澄処理を施すステップであって、メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとするステップと、
- ガラスセラミックへのセラミック化が可能な清澄ガラスを得るステップと
- ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスをセラミック化するステップと
を含み、
溶融および/または清澄を、HおよびOの燃焼による加熱下で実施する、方法に関する。
【0023】
本発明によれば、本方法を、HおよびOの燃焼による加熱下で実施する。本方法の一実施形態において、本方法に必要なエネルギーの少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、または少なくとも99%を、HおよびOの燃焼により供給する。
【0024】
本方法の一実施形態において、メルトが得られるまでバッチを加熱するステップを実施し、バッチを少なくとも一部の領域においてT3を上回る温度まで加熱し、ここで、T3は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、バッチを最高で温度T2.5まで加熱し、ここで、温度T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。
【0025】
本方法の一実施形態において、メルトが得られるまでバッチを加熱するステップを実施し、バッチを少なくとも一部の領域においてT7.6を上回る温度まで加熱する。T7.6は、107.6dPa・sの粘度に相当する温度である。本方法の好ましい一実施形態において、メルトが得られるまでバッチを加熱するステップを実施し、バッチ全体を、T7.6を上回る温度まで加熱する。
【0026】
本方法の一実施形態において、メルトに清澄処理を施すステップを実施し、メルトを少なくとも一部の領域においてT2.5を上回る温度まで加熱し、ここで、T2.5は、102.5dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、好ましくは、メルトを少なくとも温度T2.2まで加熱し、ここで、T2.2は、102.2dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当するものとし、かつ/またはメルトを最高で温度T2まで加熱し、ここで、温度T2は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。
【0027】
一実施形態において、本方法を、HおよびOの燃焼による加熱下で実施し、HおよびOの少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも99%を、HOの電気分解から供給する。好ましくは、HOの電気分解を再生可能エネルギーにより運転する。これには、環境負荷が最小限に抑えられ、かつ化石燃料を使用しないため、CO排出量の削減が可能になるという利点がある。
【0028】
一実施形態において、本方法を、1.05未満の空燃比λで実施する。これは、(ほぼ)完全に反応しきることができる酸素の経済的な使用の観点から特に有利である。一実施形態において、本方法を、少なくとも1.00の空燃比λで実施する。同様に、酸素の追加投入量を低く抑えて、メルトの清澄時の酸素分圧p(O)の低下を促進することが有利である。
【0029】
一実施形態において、本発明は、溶融および/または清澄を、HおよびOの燃焼による加熱下で実施し、溶融を、空燃比λ>1.00、特に>1.05で実施し、かつ/または清澄を、空燃比λ<1.05、特に<1.00で実施する、方法に関する。
【0030】
このような方法は、溶融時の空燃比λ>1.00の(上述の)利点が利用され、これが清澄時の空燃比λ<1.00、特に<1.05の利点と組み合わせられるため有利である。これにより、特に清澄段階での酸素の追加投入量が低く抑えられ、メルトの清澄時の酸素分圧p(O)の低下が促進される。
【0031】
化石燃料による加熱およびOの燃焼下に溶融および/または清澄を実施する従来の方法と比較すると、こうした方法では、溶融時に空燃比λが1.00を上回る程度では不完全燃焼ゆえに運転が不可能である。不完全燃焼の結果、COおよび/またはCが混入すると、メルトやプロセス装置において多くの好ましくない問題が発生する。化石燃料で加熱する場合、清澄を空燃比λ<1.05、特に<1.00で実施すると、前述の欠点がさらに顕著になる。
【0032】
本発明の一実施形態において、ガラスセラミックは、透明ガラスセラミックであり、好ましくは、LiO-Al-SiO(LAS)ガラスセラミックである。
【0033】
本発明の一態様によれば、0~50℃の範囲での平均熱膨張係数CTEが最大で0.1×10-6/KであるLASガラスセラミック、すなわちゼロ膨張LASガラスセラミックが提供される。
【0034】
本発明の一態様によれば、0~50℃の範囲での平均熱膨張係数CTEが少なくとも0.001×10-6/K、少なくとも0.005×10-6/K、または少なくとも0.01×10-6/KであるLASガラスセラミックが提供される。
【0035】
本発明によれば、ガラスセラミックとは、結晶相とガラス質相とを有する無機質の無孔材料であると理解され、マトリックス、すなわち連続相は、通常、ガラス相である。ガラスセラミックを製造するには、まずガラスセラミックの各成分を混合および溶融して清澄処理を施し、次いで、こうして得られたガラスメルト、すなわちガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラス、いわゆるグリーンガラスを、例えば型に流し込む。ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスを、冷却および固化の後に、制御された様式で再加熱により結晶化させる(いわゆる「制御下での体積結晶化」)。ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの化学組成(分析)と、該ガラスから製造されたガラスセラミックの化学組成(分析)とは同一であり、セラミック化によって変化するのは、材料の内部構造のみである。したがって、以下においてガラスセラミックの組成について述べる場合、その記述は、ガラスセラミックの前駆体、すなわちガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはグリーンガラスにも同様に適用される。
【0036】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはガラスセラミックは、以下の組成(酸化物ベースでの重量%):
【表1】
を有する。
【0037】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはガラスセラミックは、以下の組成(酸化物ベースでの重量%):
【表2】
を有する。
【0038】
さらなる一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはガラスセラミックは、以下の組成(酸化物ベースでの重量%):
【表3】
を有する。
【0039】
ガラスセラミックにおいて、SiOの割合が35~72重量%であることが好ましい。SiOの割合は、さらに好ましくは最大で62重量%であり、さらに好ましくは最大で60重量%である。SiOの割合は、さらに好ましくは少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%、さらに好ましくは少なくとも54重量%である。
【0040】
Alの割合は、15~33重量%であることが好ましい。ガラスセラミックは、より好ましくは少なくとも17重量%、好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも22重量%のAlを含む。Alの割合は、より好ましくは最大で32重量%であり、より好ましくは最大で28重量%である。
【0041】
ガラスセラミックのリン酸塩Pの含有量は、0~12重量%である。ガラスセラミックは、より好ましくは少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも4重量%、さらにより好ましくは少なくとも5重量%のPを含む。Pの割合は、好ましくは最大で10重量%、より好ましくは最大で8重量%に制限される。
【0042】
好ましくは、ガラスセラミックはまた、TiOを0~6重量%の割合で含み、有利には少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも1.5重量%のTiOを含む。ただし、TiOの割合は、好ましくは最大で4重量%、より好ましくは最大で3重量%に制限される。
【0043】
また、ガラスセラミックは、ZrOを最大で5重量%、好ましくは最大で4重量%の割合で含むことができる。ZrOは、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは少なくとも1重量%の割合で存在する。
【0044】
さらに、ガラスセラミックは、LiO、NaO、およびKOなどのアルカリ金属酸化物を含むことができる。好ましくは、LiOは、少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも3重量%の割合で存在する。LiOの割合は、好ましくは最大で6重量%、より好ましくは最大で5重量%、より好ましくは最大で4重量%に制限される。ガラスセラミックには、任意にNaOおよびKOが含まれている。NaOは、好ましくは最大で2重量%、好ましくは最大で1重量%の割合で存在する。KOの割合は、好ましくは最大で3重量%、好ましくは最大で2重量%、最も好ましくは最大で1重量%である。NaOおよびKOは、いずれの場合も互いに独立して、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.02重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%の割合でガラスセラミック中に存在することができる。
【0045】
また、ガラスセラミックは、MgO、CaO、BaOおよび/またはSrOなどのアルカリ土類金属酸化物、ならびにZnOなどのさらなる2価の金属を含むことができる。CaOの割合は、好ましくは最大で4重量%、より好ましくは最大で3重量%、さらにより好ましくは最大で2重量%である。ガラスセラミックは、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも0.5重量%のCaOを含む。MgOは、ガラスセラミック中に、最大で3重量%、好ましくは最大で2重量%でかつ/または好ましくは少なくとも0.1重量%の割合で存在することができる。ガラスセラミックは、BaOを5重量%未満、好ましくは最大で4重量%でかつ/または好ましくは少なくとも0.1重量%の割合で含むことができる。個々の実施形態において、ガラスセラミックは、BaOを含まない。ガラスセラミックは、SrOを最大で3重量%でかつ/または好ましくは少なくとも0.1重量%の割合で含むことができる。個々の実施形態において、ガラスセラミックは、SrOを含まない。さらなる金属酸化物として、ガラスセラミックは、好ましくはZnOを、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも1.5重量%の割合で含む。ZnOの割合は、最大で8重量%、好ましくは最大で5重量%、好ましくは最大で4重量%、好ましくは最大で4重量%に制限される。いくつかの実施形態は、ZnOを含まない。
【0046】
光学特性、例えば屈折率を調節するために、いくつかの有利な変形例において、例えばGd、Y、HfO、Biおよび/またはGeOが含まれていてよい。
【0047】
上述のガラス組成物は、任意に、例えばNd、Fe、CoO、NiO、V、MnO、CuO、CeO、Cr、希土類酸化物などの着色酸化物の添加物質をそれぞれ個別にまたは合計で0~3重量%の含有量で含むことができる。好ましい変形例は、着色酸化物を含まない。
【0048】
いくつかの実施形態において、本発明によるガラスセラミックは、TiO、ZrO、Ta、Nb、SnO、MoOおよびWOからなる群から選択される少なくとも1つの成分を1.5重量%~6重量%含む。
【0049】
本発明の有利な一実施形態によれば、本組成物は、上記で言及されていない成分を含まない。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、透明ガラスセラミックが製造される。透明であるため、該ガラスセラミックの多くの特性、特に当然のことながら内部品質をより良好に評価することができる。本発明によるガラスセラミックは透明であり、すなわち、350~650nmの波長範囲において少なくとも70%の純透過率を有する。Bが存在し、かつ/またはフッ素の含有量が多いと、透明度が低下しかねない。したがって、有利な変形例は、前述の成分の一方または双方を含まない。
【0051】
さらに、本発明において製造されるガラスセラミックは、無孔でクラックのないものである。本発明において「無孔」とは、気孔率が1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満であることをいう。クラックとは、連続的な組織における隙間、すなわち不連続性のことである。
【0052】
熱膨張係数CTE
本発明により製造されたガラスセラミックはゼロ膨張性であり、すなわち、特に0~50℃の範囲での平均熱膨張係数CTEが最大で0.1×10-6/Kである。いくつかの有利な変形例は、特に0~50℃の範囲での平均CTEが最大で0.05×10-6/Kであるものさえある。特定の用途では、より広い温度範囲、例えば-30℃~+70℃の範囲、好ましくは-40℃~+80℃の範囲での平均CTEが最大で0.1×10-6/Kであり、すなわちゼロ膨張性であると有利であり得る。
【0053】
本発明により製造されたガラスセラミックおよびそれから製造された精密部品のCTE-T曲線を求めるために、まず微分CTE(T)を求める。微分CTE(T)は、温度の関数として求められる。その場合、CTEは以下の式(1)により定義される:
【数1】
【0054】
Δl/l0-T曲線またはひずみ曲線の作成、あるいは温度に対する試験体(ガラスセラミックや精密部品)の長さ変化Δl/l0のプロット作成に際して、初期温度t0での出発長さl0から温度tでの長さltへの試験体の長さの温度に対する変化を測定することができる。この場合、好ましくは、例えば5℃や3℃や1℃といった小さな温度区間を選択して測定点を決定する。このような測定は、例えば、ディラトメトリー法、干渉法、例えばファブリペロー法、すなわち材料に結合したレーザービームの共振ピークのシフトの評価、または他の適切な方法によって実施することができる。本発明において、長さ100mm、直径6mmの試験体の棒状サンプルのCTEを測定するために、温度区間1℃のディラトメトリー法を選択した。CTEを求めるための選択された方法は、有利に少なくとも±0.05ppm/K、好ましくは少なくとも±0.03ppm/Kの精度を有する。しかし当然のことながら、少なくとも±0.01ppm/K、好ましくは少なくとも±0.005ppm/K、またはいくつかの実施形態によれば少なくとも±0.003ppm/K、または少なくとも±0.001ppm/Kの精度を有する方法によってCTEを求めることも可能である。Δl/l0-T曲線から、特定の温度区間、例えば0℃~50℃の温度範囲での平均CTEが算出される。Δl/l0-T曲線を導き出すことで、CTE-T曲線が得られる。CTE-T曲線から、ゼロクロス、ある温度区間内でのCTE-T曲線の傾きを求めることができる。CTE-T曲線をもとに、いくつかの変形例で形成される有利なCTEプラトーの形状や位置が求められる。
【0055】
一実施形態によれば、本発明による方法により製造されたガラスセラミック部品の1つは、高いCTE均一性を有する(特に基板の形態の)精密部品である。その場合、CTE均一性(英語:「total spatial variation of CTE」)の値は、いわゆるピーク・トゥ・バレー(peak-to-valley)値、すなわち精密部品から採取した試料のそれぞれの最高CTE値とそれぞれの最低CTE値との差であると理解される。よって、CTE均一性は、部品の材料のCTEを指すのではなく、当該部分または精密部品全体にわたるCTEの空間的なばらつきを指す。CTE均一性を求めるために、精密部品から異なる位置で多数の試料を採取し、これについて各CTE値を求めてppb/K単位で表すが、ここで、1ppb/K=0.001×10-6/Kである。精密部品全体にわたるCTE均一性、すなわちCTEの空間的なばらつきは、有利には最高で5ppb/K、好ましくは最高で4ppb/K、最も好ましくは最高で3ppb/Kである。CTE均一性を求める方法およびCTE均一性を達成するための措置は、国際公開第2015/124710号に記載されており、その開示内容は、本明細書に完全に援用される。
【0056】
さらなる一態様において、本発明者らは、本発明による方法により製造されたガラスセラミックまたは本発明によるガラスセラミックを含む精密部品に関する。
【0057】
さらに、さらなる一態様は、本発明による精密部品の使用であって、特に計測、分光、測定技術、リソグラフィー、天文学もしくは宇宙空間からの地球観測に使用するための、例えば分割型もしくは一体型天体望遠鏡用のミラーもしくはミラー支持体としての、またはさらには例えば宇宙ベースの望遠鏡用の軽量もしくは超軽量ミラー基板としての、または例えば宇宙空間もしくは地球観測用の光学系における距離測定用の高精度構造部材としての、精密測定技術用標準器、精密測定用ロッド、干渉計の基準板などの精密部材としての、例えばリングレーザーのジャイロスコープ、時計産業のぜんまいばね用の機械的精密要素としての、例えばLCDリソグラフィーのミラーおよびプリズムとしての、ならびに例えばマイクロリソグラフィーおよびEUVマイクロリソグラフィーのマスクホルダー、ウエハテーブル、基準板、基準フレームおよびグリッドプレートとしての、ならびにEUVマイクロリソグラフィーのミラーおよび/もしくはフォトマスク基板あるいはレチクルマスクブランクとしての使用に関する。
【0058】
一実施形態において、本発明による方法により、優れた生成物品質を維持しつつ、多価酸化物系清澄剤の必要量を低減することが可能となる。本発明による方法は、清澄剤から放出されるO量を増加させて、その都度必要な清澄温度で使用される清澄剤の転化率を高めることによって、これを達成するものである。したがって、本発明による方法により、清澄剤を比較的少量しか使用しなくても清澄の向上が達成され、すなわち、気泡をごくわずかにしか含まないガラスまたはガラスセラミックが得られる。
【0059】
一実施形態において、本発明による方法では、式X[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]および/または式MSO[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の少なくとも1つの清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で使用する。代替的または追加的に、1つ以上の清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で、かつ/または原料のバッチの総重量に対して少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、もしくは少なくとも0.2重量%の濃度で使用する。一実施形態において、1つ以上の清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用する。
【0060】
本方法の一実施形態において、2つ以上の清澄剤の組み合わせを使用し、2つ以上の清澄剤を、式X[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]および/または式MSO[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の化合物の群から選択する。2つ以上の清澄剤の組み合わせを使用する場合、本明細書の記述が、相応して清澄剤の組み合わせに適用される。
【0061】
一実施形態において、塩化物およびフッ化物、例えばNaCl、KCl、NaF、KFの一覧から選択される追加の清澄剤を使用する。
【0062】
一実施形態において、清澄剤は、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、X→Xm-1+1/2Oおよび/もしくはX→Xm-2+Oの反応による、ならびに/またはMSO→MO+SO+1/2Oの反応による高酸化段階から低酸化段階への清澄剤の少なくとも30%の転化率、少なくとも35%の転化率、少なくとも40%の転化率、少なくとも45%の転化率、または少なくとも50%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、温度T2は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。一実施形態において、清澄剤は、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、特に、X→Xm-1+1/2Oおよび/もしくはX→Xm-2+Oの反応による、ならびに/またはMSO→MO+SO+1/2Oの反応による高酸化段階から低酸化段階への清澄剤の最高で99%の転化率、最高で95%の転化率、最高で90%の転化率、または最高で80%の転化率を有するという熱力学的特性を有しており、ここで、温度T2は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。清澄剤の転化率は、例えばメルトの温度やメルト中の酸素分圧など様々な要因に影響される。ここで、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2での所与の清澄剤の各転化率(%)は、化学平衡条件と関連している。例えば、X→Xm-1+1/2Oの反応による少なくとも30%の転化率とは、化学平衡状態において、XおよびXm-1の総モル量に対して少なくとも30モル%の還元種Xm-1が存在することを意味する。
【0063】
好ましくは、清澄剤が酸素分圧1バールおよび温度T2でメルトにおいてある転化率を有するという熱力学的特性を有している、という記述は、プロセスステップを特徴付けるものではなく、仮想的な溶融条件下での清澄剤の特性を特徴付けるものであると理解されるべきである。これは好ましくは、メルトがある時点でT2温度でなければならず、かつ/または酸素分圧が1バールでなければならないことを意味するものではない。好ましくは、この特性は、所定の条件で清澄剤がどのような挙動を示すのかを表すものである。これにより、メルトの組成に応じた清澄剤の選択規定が示される。この清澄剤の特性は、実験により求めることができる。実際に実施されるプロセスステップおよび実際に生じる条件は、これとは区別して考えなければならない。こうすることで、本明細書に記載されているように清澄剤の実際の転化率に影響を及ぼすことができ、特に、酸素分圧を低下させることによってこの転化率を高めることができる。
【0064】
一実施形態において、本方法、特に清澄ステップを、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2でメルトにおいて清澄剤の少なくとも30%の転化率、少なくとも35%の転化率、少なくとも40%の転化率、または少なくとも45%の転化率が生じるように十分な時間にわたって実施する。複数の清澄剤の混合物を使用する場合には、これは、使用する清澄剤のモル割合の合計に対する少なくとも30%の転化率、少なくとも35%の転化率、少なくとも40%の転化率、または少なくとも45%の転化率の総転化率(モル%)を意味する。これは、化学平衡状態において、すべての還元種の合計が、還元種および酸化種の総モル量に対して少なくとも30モル%存在することを意味する。ここで、当業者であれば、温度T2での清澄剤の所望の転化率に必要な時間を理論的に推定することも、計測学的に求めて確認することも可能である(例えば、図3を参照)。この時間は、連続プロセスにおける清澄容器または清澄セクションでのメルトの平均滞留時間2~18時間に相当し得る。同様に、この時間は、バッチプロセスにおける2~96時間の清澄時間に相当し得る。
【0065】
一実施形態において、本発明による方法は、メルトの清澄時の酸素分圧p(O)を、温度T3でのメルトにおけるO飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低くなるように調整するステップを含む。メルトにおけるO飽和度およびメルトの清澄時の酸素分圧p(O)の低下は、それぞれの設定温度での化学平衡条件と関連している。
【0066】
一実施形態において、本方法は、メルトの清澄時の酸素分圧p(O)を、温度T3でのメルトにおけるO飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低くなるように調整することを特徴とする(例えば、図2を参照)。好ましくは、メルトにおけるO飽和度およびメルトの清澄時の酸素分圧p(O)の低下は、それぞれの設定温度での化学平衡条件と関連している。好ましくは、温度T3でのメルトにおけるO飽和度への言及は、参照値としてのみ用いられる。これは、好ましくは、実際にこの温度で平衡状態に達しなければならないということではない。本方法の特徴は、例えば、適切に選択された温度を調整し、かつ/または低い空燃比λを用いることにより実現可能である。代替的または追加的に、本方法の特徴は、例えば、ガラスメルトの上方の領域において、0.5バール以下、0.4バール以下、0.3バール以下、0.2バール以下、0.1バール以下、または0.05バール以下の絶対圧力を用いることにより実現可能である。しかし、好ましくは、清澄時のメルトの上方での絶対圧力は少なくとも0.5バールである。
【0067】
ガラスメルト中の酸素分圧p(O)を、温度T3でのメルトにおけるO飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%低下させることにより、X→Xm-1+1/2OもしくはX→Xm-2+Oの反応、またはMSO→MO+SO+1/2Oの反応によるそれぞれの平衡が、生成物側へ、すなわち清澄剤の還元に有利になるように、すなわち、還元された清澄剤およびその際に生成されるOに有利になるようにシフトする。
【0068】
一実施形態において、式X[式中、n=1または2であり、m=2または5であり、X=As、Sb、SnまたはCeである]の清澄剤を使用する。一実施形態において、式MSO[式中、n=1または2であり、M=Na、K、Li、Mg、Ca、Sr、Baおよび/またはZnである]の清澄剤を使用する。これに関連するおよび関連しない一実施形態において、清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して2重量%以下の濃度で、かつ/または原料のバッチの総重量に対して少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、もしくは少なくとも0.2重量%の濃度で使用する。一実施形態において、清澄剤を、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用する。
【0069】
一実施形態において、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、X→Xm-1+1/2Oおよび/もしくはX→Xm-2+Oの反応による、ならびに/またはMSO→MO+SO+1/2Oの反応による清澄剤の少なくとも30%の転化率、少なくとも35%の転化率、少なくとも40%の転化率、少なくとも45%の転化率、または少なくとも50%の転化率を有するという熱力学的特性を有する清澄剤を選択し、ここで、温度T2は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。一実施形態において、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、X→Xm-1+1/2Oおよび/もしくはX→Xm-2+Oの反応による、ならびに/またはMSO→MO+SO+1/2Oの反応による清澄剤の最高で99%の転化率、最高で95%の転化率、最高で90%の転化率、または最高で80%の転化率を有するという熱力学的特性を有する清澄剤を選択し、ここで、温度T2は、10dPa・sの溶融ガラスの粘度に相当する。
【0070】
本方法の一実施形態において、本方法は、ガラスメルト中の酸素分圧p(O)を、温度T3でのメルトにおけるO飽和度に対して少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、または少なくとも80%低くなるように調整するステップを含む。本方法の一実施形態において、本方法は、ガラスメルト中の酸素分圧p(O)を、温度T3でのメルトにおけるO飽和度に対して最大で99%、好ましくは最大で95%、または最大で90%低くなるように調整するステップを含む。本方法の一実施形態において、本方法は、ガラスメルト中の酸素分圧p(O)を、温度T3でのメルトにおけるO飽和度に対して60%~99%、好ましくは70%~95%、または80%~90%低くなるように調整するステップを含む。
【0071】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比は、少なくとも0.01、少なくとも0.02、または少なくとも0.05である。一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比は、最大で1.00、最大で0.50、最大で0.20、または最大で0.10である。一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比は、0.01~1.0、0.02~0.50、または0.05~0.20、または0.05~0.10である。本方法により、その都度使用される清澄剤からの酸素の放出が促進され、それにより、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスあるいはガラスセラミックにおいて達成すべきFe3+に対するFe2+の比に関して所望の酸化還元比の調整が可能となる。特に本方法では、初期のFe3+に対するFe2+の比に応じてFe2+に有利になるように平衡をシフトさせる還元条件が促進され、それによって清澄結果が改善される。
【0072】
一実施形態において、本方法とガラスセラミックとの双方に関して、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおけるXに対するXm-1の比、あるいはXに対するXm-2の比は、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも1.0、または少なくとも2.0である。一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおけるXに対するXm-1の比、あるいはXに対するXm-2の比は、最大で99.0、最大で90.0、最大で50.0、最大で10.0、または最大で5.0である。一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおけるXに対するXm-1の比、あるいはXに対するXm-2の比は、0.6~99.0、0.7~90.0、0.8~50.0、1.0~10.0、または2.0~5.0である。本方法により、その都度使用される清澄剤からの酸素の放出が促進され、それにより、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスにおいてその都度使用される清澄剤の還元型と酸化型との望ましいあるいは所望の比の調整が可能となる。
【0073】
一実施形態において、清澄剤は、NaSO、KSO、LiSO、MgSO、CaSO、SrSO、ZnSO、Sb、As、CeO、およびSnO、またはそれらの混合物の一覧から選択される。
【0074】
清澄剤Sb、As、CeO、およびSnOは、原料のバッチにおいて通常は、まずそれぞれ最も低い酸化段階で供給される。例えば、清澄剤であるSbおよびAsは、原料のバッチにおいて、通常はSbおよびAsの形で提供される。重量%単位のデータ(重量%)は、各清澄剤Sb、As、CeOおよびSnOのすべての酸化種および還元種の合計に対するものであり、したがって、Sb、As、CeOおよびSnOもそれぞれ含まれる。
【0075】
一実施形態において、清澄剤はSnOであり、特に清澄剤はSnOであって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0076】
一実施形態において、清澄剤はAsであり、特に清澄剤はAsであって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0077】
一実施形態において、清澄剤はSbであり、特に清澄剤はSbであって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0078】
一実施形態において、清澄剤はNaSOであり、特に清澄剤はNaSOであって、原料のバッチの総重量に対して0.05~2重量%、0.1~1重量%、または0.2~0.5重量%の濃度で使用される。
【0079】
一実施形態において、本発明による方法により製造されたガラスセラミックは、良好な内部品質を有する。
【0080】
好ましくは、本発明による方法により製造されたガラスセラミックが含む介在物は、100cmあたり最大で5個、より好ましくは100cmあたり最大で3個、最も好ましくは100cmあたり最大で1個である。本発明によれば、介在物とは、気泡とも結晶子とも理解されるが、好ましくは気泡と理解され、その直径は0.3mm超である。本発明の一変形例によれば、直径または縁の長さが最大で800mmであり、厚さが最大で100mmであり、含まれる0.03mm超のサイズの直径の介在物が100cmあたりそれぞれ最大で5個、好ましくは最大で3個、より好ましくは最大で1個であるガラスセラミックあるいはそれから製造された精密部品が提供される。また、介在物の数だけでなく、検出された介在物の最大直径も内部品質の等級の指標となる。直径500mm未満の精密部品の総体積における個々の介在物の最大直径は、好ましくは最大で0.6mmであり、適用に重要となる体積、例えば表面近傍では、好ましくは最大で0.4mmである。直径500mm以上2m未満のガラスセラミック部品中の個々の介在物の最大直径は、好ましくは最大で3mmであり、適用に重要となる体積、例えば表面近傍では、好ましくは最大で1mmである。
【0081】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスあるいはガラスセラミック(以下、「ガラスセラミック」と称する)がガラスセラミック10kgあたりに有する0.03mm~0.05mmのサイズの気泡は80個未満であり、かつ/またはガラスセラミック10kgあたりに有する0.05mm~0.1mmのサイズの気泡は80個未満であり、かつ/またはガラスセラミック10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡は80個未満であり、かつ/またはガラスセラミック10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡は2個未満である。
【0082】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスあるいはガラスセラミックがガラスセラミック10kgあたりに有する0.03mm~0.05mmのサイズの気泡は80個未満、40個未満、10個未満、5個未満、または2個未満である。
【0083】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスあるいはガラスセラミックがガラスセラミック10kgあたりに有する0.05mm~0.1mmのサイズの気泡は80個未満、40個未満、10個未満、5個未満、または2個未満である。
【0084】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスあるいはガラスセラミックがガラスセラミック10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡は80個未満、40個未満、10個未満、5個未満、または2個未満であり、かつガラス10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡は2個未満である。
【0085】
一実施形態において、ガラスセラミックへのセラミック化が可能な(清澄)ガラスあるいはガラスセラミックがガラス10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡は少なくとも0.1個、または少なくとも0.5個であり、かつ/またはガラス10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡は少なくとも0.1個である。
【0086】
ガラス10kgあたりの所定数の気泡についての言及は、ガラスセラミック10kgあるいはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラス10kgにも同様に適用され、類推されるものとする。さらに、ガラス10kgあたりの所定数の気泡に関する特徴は、ガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスが10kgの重量を有しなければならないことと解釈されるべきではない。基準重量である10kgは、様々な重量のガラスセラミック、またはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスにおける気泡数を比較して測定するためにのみ用いられる。
【0087】
気泡のサイズは、気泡の直径を指す。気泡が非球状である場合、サイズは視野内の最短距離と最長距離との平均を指す。
【0088】
一実施形態において、本方法をバッチ式で実施する。これは、特にHおよびOの燃焼と組み合わせると有利であり、なぜならば、そうすることで、メルトの清澄時に清澄剤転化率の向上を伴う酸素分圧p(O)の低下を特に良好に制御および調整できるように清澄段階を拡張することができるためである。
【0089】
本方法の一実施形態において、バッチプロセスでの清澄時間は、少なくとも2時間、少なくとも8時間、少なくとも16時間、または少なくとも24時間であるが、ただし最長で96時間、最長で72時間、または最長で48時間である。本方法の一実施形態において、バッチプロセスでの清澄時間は、2~96時間、8~72時間、16~72時間、または24~48時間である。
【0090】
バッチプロセスで所定の清澄時間となるように調整することで、使用される清澄剤の十分な反応時間あるいは十分な転化率、および(それに付随する)メルトからの十分なOの放出、さらに基礎となる化学平衡の調整が可能となる。特にこれは、(ガラス)メルトにおける使用される清澄剤の還元型と酸化型との化学平衡、ならびに(温度に応じた)ガラスメルト中の酸素分圧p(O)とガラスメルトの上方の酸素分圧p(O)との化学平衡を指す。
【0091】
本方法の一実施形態において、清澄を連続プロセスで実施し、清澄時のメルトの平均滞留期間は、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも6時間、または少なくとも8時間である。しかし、清澄時のメルトの平均滞留期間は、最長で18時間、最長で16時間、最長で14時間、または最長で12時間である。本方法の一実施形態において、清澄を連続プロセスで実施し、清澄時のメルトの平均滞留期間は、2~18時間、4~16時間、6~14時間、または8~12時間である。
【0092】
連続プロセスでの清澄時にメルトの所定の平均滞留期間となるように調整することで、使用される清澄剤の十分な反応時間あるいは十分な転化率、および(それに付随する)メルトからの十分なOの放出、さらに基礎となる化学平衡の調整が可能となる。特にこれは、(ガラス)メルトにおける使用される清澄剤の還元型と酸化型との化学平衡、ならびに(温度に応じた)ガラスメルト中の酸素分圧p(O)とガラスメルトの上方の酸素分圧p(O)との化学平衡を指す。
【0093】
さらなる一態様において、本発明は、本明細書に記載の方法により製造可能であるかまたは製造されたガラスセラミックに関する。
【0094】
さらなる一態様において、本発明は、ガラスセラミックであって、グリーンガラスの製造により放出されるCOが、ガラス1トンあたり500kg未満、好ましくは250kg未満、より好ましくは100kg未満、さらに好ましくは50kg未満、特に好ましくは10kg未満である、ガラスセラミックに関する。
【0095】
ガラスセラミックまたはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの一実施形態において、ガラスまたはガラスセラミックのCO収支はゼロである。
【0096】
一実施形態において、本発明によるガラスセラミックにおけるFe3+に対するFe2+の比は、少なくとも0.01であり、ガラスセラミックがガラスセラミック10kgあたりに有する0.03mm~0.05mmのサイズの気泡は80個未満であり、かつ/またはガラスセラミック10kgあたりに有する0.05mm~0.1mmのサイズの気泡は80個未満であり、かつ/またはガラスセラミック10kgあたりに有する0.1mm~0.2mmのサイズの気泡は80個未満であり、かつ/またはガラスセラミック10kgあたりに有する0.2mm超のサイズの気泡は2個未満である。本発明によるガラスセラミックに関連して、本発明による製造方法を用いて行われる実施形態が同様に適用される。
【0097】
有利には、HOの電気分解を、CO収支がゼロである電気により運転する。
【0098】
本開示において、CO収支がゼロであるとは、発電によってCOの全存在量が増加しないことであるとみなされる。そのため、太陽光、風力、水力および/または原子力で発生させた電気が、CO収支がゼロの電気であるとみなされる。
【0099】
ガラスセラミックまたはガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスの一実施形態において、ガラスは清澄剤Xを含み、該清澄剤は、酸素分圧p(O)1バールおよび温度T2で、清澄ステップにおけるメルトと同じ組成のメルトにおいて、清澄剤からのO放出量が最大で30%、最大で20%、または最大で10%であるという熱力学的特性を有する。
【0100】
図面の説明
図1は、ガラスセラミックへのセラミック化が可能なガラスにおける清澄剤Sb、AsおよびSnOの酸素放出量を温度に対して示したものである。
【0101】
図2は、SnOで清澄処理を施したガラスセラミックの酸素分圧p(O)のグラフを示している。酸化物系清澄剤を伴ってガラスの清澄温度に達した場合、メルトのp(O)は、通常は約1バールである。その際、酸化物系清澄剤の一部が、酸化状態から還元状態に移行する。p(O)のグラフは、1600℃以降は平坦になり、1650℃以降は、p(O)曲線は約1バールでほぼ一定となる。1700℃以降は、大気との交換によりp(O)が急激に低下し、約0.2バールまで低下する。このp(O)の低下により、清澄剤の転化率はさらに上昇し、Sn2+またはSnOに有利となる。
【0102】
図3は、SnO清澄ガラスセラミックにおけるスズの総量、すなわちSnOおよびSnOに対するSnOの割合を、溶融および清澄方法の温度および時間に対して示したものである。清澄ステップ前のスズの総量に対するSnOの割合は、約35%(SnOおよびSnOに対するSnOのモル比)である。清澄温度を1700℃まで高めると、SnOの割合は約42.5%に増加する。この清澄温度およびp(O)値の低下(図2参照)で本方法を保持することにより、SnOの割合は44.5%に増加する。
【0103】
清澄ステップでのスズの転化率は、清澄の成功、すなわち清澄ガラスセラミックの気泡性の低減に関して重要である。(t=1.5hで)1700℃までの昇温により、増加したスズ転化率はSnO約7.5%である。1700℃で約8時間保持し、メルトをガス雰囲気と交換すると、メルト中のp(O)の低下が見られ、さらに2%の既存のスズがSnOに転化する。1700℃では、ガラスセラミックの粘度が1600℃の場合の半分となる。そのため、残存する気泡は、1600℃の場合に比べて1700℃の場合の方が2倍速く上昇する。このように、清澄時に保持される温度である1700℃での気泡除去は、SnOの転化の進行に大きく左右される。
【0104】
ガラスセラミックは通常、次のように製造される:適切な原材料を適切な組成で溶融し、清澄処理を施し、次いで均質化した後、熱間成形によりガラスブランクまたはグリーンボディまたはグリーンガラスを得る。ガラスセラミックの「グリーンボディ」とは、適切な組成物から溶融させたガラス質の物体を指し、適切な温度プログラムでの処理によってガラスセラミックに移行させることができる。
【0105】
各成分を計り入れた後、バッチを通常の撹拌機で混合し、次いで溶融槽に搬送して装入する。
【0106】
グリーンガラスの溶融を、複数のステップで行う:
- 融解
- 必要に応じて均質化
- 清澄
- 必要に応じてさらなる均質化
- 必要に応じて静置段階
- 流し込み
【0107】
バッチを完全に溶解した後、好ましくは1回目の均質化を行う。メルトを、バブリングにより熱的または機械的に均質化することができる。ここで、熱的均質化とは、槽表面の温度上昇または異なる加熱によりメルトの対流を促進することと理解される。次いで、清澄プロセスのためにメルトの温度を約1600℃まで上昇させる。その後、2回目の均質化段階を行うことができる。例えば、メルトを高温で数日間保持してもよく、その保持時間はメルトの体積に依存する。このような保持段階または静置段階で、メルトの分子レベルでのさらなる均質化が起こると想定される。
【0108】
次に、グリーンガラスを、例えば独国特許出願公開第102004052514号明細書に記載されているような金属製の型に流し込む。その後、金型を溶融槽の下方の領域から横に移動させ、炉の中に移動させて冷却を制御する。室温までの冷却を、応力やクラックの発生を避けるために十分に低い冷却速度で制御下に行う。
【0109】
このようにして製造されたガラスブロックについて、気泡やクラックなどがないことを光学的に検査することが好ましい。その後、最初の機械的処理、特に表面領域の除去を行うことができ、その後にグリーンボディをセラミック化してガラスセラミックを得る。
【0110】
セラミック化と呼ばれる温度処理の際に、グリーンガラスまたはガラスまたはグリーンボディを、制御下での体積結晶化によってガラスセラミックに変化させる。この温度処理の間に、1回目の変態ステップ(「結晶化核形成」)においてガラス中にそれ自身または外来種の結晶化核が形成される。結晶化核または結晶核とは、特徴的なサイズの超顕微鏡的な結晶の集合体であると理解される。2回目の変態ステップ(「結晶成長」)では、必要に応じて若干より高い温度で結晶核から結晶または結晶子が成長する。
【0111】
粘度
粘度を、例えばDIN ISO 7884-2:1998-2により回転粘度計で測定することができる。粘度と温度との関係は、VFT式(Vogel-Fulcher-Tammann)で記述される。
【0112】
鉄含有量
鉄含有量を、DIN 51001:2003-08に準拠して、得られたガラス生成物の分光分析により決定した。特に、得られたガラス生成物中のFe2とFe3との比を、以下のようにUV/vis透過スペクトルのデコンボリューションにより定量的に求めた。
図1
図2
図3
【外国語明細書】