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特開2023-39448がんを治療するための、PD-1アンタゴニスト及びVEGFR/FGFR/RETチロシンキナーゼ阻害剤の組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039448
(43)【公開日】2023-03-20
(54)【発明の名称】がんを治療するための、PD-1アンタゴニスト及びVEGFR/FGFR/RETチロシンキナーゼ阻害剤の組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230313BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230313BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K45/00
A61K31/47
A61K9/48
A61K47/02
A61K47/08
A61K47/26
A61K47/38
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022161848
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2020182679の分割
【原出願日】2016-03-03
(31)【優先権主張番号】62/128,232
(32)【優先日】2015-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/171,615
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】P 2015042683
(32)【優先日】2015-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015114890
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日 平成26年12月5日 セミナー名 オンコロジー領域におけるエーザイのプロダクトクリエーション戦略 開催場所 パレスホテル東京
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 開催日 平成26年12月5日 セミナー名 野村証券 インベストメントフォーラム オンコロジー領域におけるエーザイのプロダクトクリエーション戦略 開催場所 パレスホテル東京
(71)【出願人】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】デンカー, アンドリュー エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】田端 君代
(72)【発明者】
【氏名】堀 優作
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD09
4C076DD25
4C076DD28
4C076DD38
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF61
4C084AA19
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんの治療に有用な併用療法を提供する。
【解決手段】個体のがんを治療するための、マルチ受容体チロシンキナーゼ(マルチRTK)阻害剤と組み合わせて使用するための、MPDL3280Aでないプログラム細胞死1タンパク質(PD-1)アンタゴニストを含む医薬であって、PD-1アンタゴニストがモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、医薬を提供する。マルチRTK阻害剤は式(I)で表すことができ、式中、RはC1~6アルキル又はC3~8シクロアルキルであり、Rは水素原子又はC1~6アルコキシであり、Rは水素原子又はハロゲン原子である。式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体を組み合わせた腫瘍治療剤が開示される。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体のがんを治療するための、マルチ受容体チロシンキナーゼ(マルチRTK)阻害剤と組み合わせて使用するための、MPDL3280Aでないプログラム細胞死1タンパク質(PD-1)アンタゴニストを含む医薬であって、PD-1アンタゴニストがモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、医薬。
【請求項2】
個体のがんを治療するための、MPDL3280Aでないプログラム細胞死1タンパク質(PD-1)アンタゴニストと組み合わせて使用するための、マルチ受容体チロシンキナーゼ(マルチRTK)阻害剤を含む医薬。
【請求項3】
個体がヒトである、請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
がんが固形腫瘍である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項5】
がんが、甲状腺がん、肝細胞癌(HCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞癌(RCC)、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌、神経膠芽腫、又はメラノーマである、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項6】
アンタゴニストがモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、請求項2~5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
アンタゴニストが抗PD-1抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
アンタゴニストがペムブロリズマブ又はニボルマブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項9】
マルチRTK阻害剤が、構造:
【化1】

を有する4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
アンタゴニストがペムブロリズマブであり、マルチRTK阻害剤がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
ペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法が、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に投与される、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
ペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法が、少なくとも7日間のレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に投与される、請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
ペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法が、ペムブロリズマブの投与後に投与される、請求項10に記載の医薬。
【請求項14】
第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットであって、第1の容器が、プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)アンタゴニストを含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、第2の容器が、マルチRTK阻害剤を含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、添付文書が、前記医薬を使用して個体のがんを治療するための指示書を含み、アンタゴニストがMPDL3280Aでない、キット。
【請求項15】
指示書には、前記医薬が、免疫組織化学的(IHC)アッセイでPD-L1発現について陽性を示すがんを有する個体を治療するのに使用するためのものであることが明記されている、請求項14に記載のキット。
【請求項16】
個体がヒトである、請求項14又は15に記載のキット。
【請求項17】
マルチ受容体チロシンキナーゼ(マルチRTK)阻害剤が、構造:
【化2】

を有する4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド、又はその薬学的に許容される塩である、請求項14~16のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
アンタゴニストが、10mMヒスチジン緩衝液pH5.5中に25mg/mlペムブロリズマブ、7%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80を含む液体医薬として製剤化されたペムブロリズマブであり、マルチRTK阻害剤が、炭酸カルシウム、マンニトール、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びタルクを含む4mg又は10mgのレンバチニブカプセル剤として製剤化されたレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩である、請求項14~17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
がんが、甲状腺がん、HCC、NSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌、神経膠芽腫又はメラノーマである、請求項14~18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を、1日用量でそれぞれレンバチニブとして24mg、20mg又は14mgで、及びペムブロリズマブを3週間毎に1回、200mgで個体に投与するステップを含む方法により、ヒト個体のがんを治療するための、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用するための、ペムブロリズマブを含む医薬。
【請求項21】
レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を、1日用量でそれぞれレンバチニブとして24mg、20mg又は14mgで、及びペムブロリズマブを3週間毎に1回、200mgで個体に投与するステップを含む方法により、ヒト個体のがんを治療するための、ペムブロリズマブと組み合わせて使用するための、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0003]がんの治療に有用な併用療法が開示される。特に、プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)アンタゴニスト及びマルチ受容体チロシンキナーゼ(マルチRTK)阻害剤を含む併用療法が開示される。さらにより詳細には、マルチチロシンキナーゼ阻害作用を示すキノリン誘導体、及び抗PD-1抗体の組合せを含む腫瘍治療剤が開示される。
【背景技術】
【0002】
[0004]PD-1は、免疫調節及び末梢性免疫寛容の維持における重要な因子として認識されている。PD-1は、ナイーブT細胞、B細胞及びナチュラルキラーT(NKT)細胞で適度に発現されており、リンパ球、単球及び骨髄系細胞でのT/B細胞受容体シグナル伝達によりアップレギュレートされる(1)。
【0003】
[0005]2種の既知のPD-1リガンド、PD-L1(B7-H1)及びPD-L2(B7-DC)が、各種組織で生じるヒトがんにおいて発現される。例えば卵巣がん、腎臓がん、結腸直腸がん、膵臓がん、肝がん及びメラノーマの大量の試料セットにおいて、PD-L1発現が、その後の治療に関係なく、予後不良及び全生存期間の減少と相関することが示された(2~13)。同様に、腫瘍浸潤リンパ球でのPD-1発現が、乳がん及びメラノーマでの機能障害T細胞の特徴であり(14~15)、腎がんでの予後不良と相関する(16)ことが判明した。PD-L1を発現する腫瘍細胞がPD-1を発現するT細胞と相互作用し、T細胞の活性化及び免疫監視機構からの回避を弱め、それにより腫瘍に対する免疫応答障害をもたらすことが提唱されている。したがって、PD-1受容体又はPD-L1リガンドのいずれかを標的とする抗体は両者間の結合を阻害することができ、腫瘍細胞に対する免疫作用の増加をもたらす(23)。
【0004】
[0006]PD-1と、PD-1のリガンドPD-L1及びPD-L2の一方又は両方との間の相互作用を阻害する数種のモノクローナル抗体が、がんの治療用に臨床開発中である。このような抗体の有効性は、その他の承認済み又は実験的がん療法、例えば、放射線、外科手術、化学療法剤、標的療法、腫瘍において調節不全となるその他のシグナル伝達経路を阻害する薬剤、及びその他の免疫増強剤と組み合わせて投与された場合に増強されうることが提唱されている。
【0005】
[0007]チロシンキナーゼは、増殖因子シグナル伝達の調節に関与しており、ゆえにがん療法における重要な標的である。エーザイ株式会社が発見及び開発したレンバチニブメシル酸塩は、血管内皮増殖因子(VEGF)受容体(VEGFR1(FLT1)、VEGFR2(KDR)及びVEGFR3(FLT4))、並びに線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、2、3及び4、さらに、腫瘍増殖に関与するその他の血管新生促進経路及び発癌経路関連RTK(血小板由来増殖因子(PDGF)受容体PDGFRα;KIT;及びRET癌原遺伝子(RET)を含む)のキナーゼ活性を選択的に阻害する、経口用の受容体チロシンキナーゼ(RTK)阻害剤である。特に、レンバチニブはVEGFR2に対し、X線結晶構造解析で確認された新たな結合様式(タイプV)を有し、動態解析により、キナーゼ活性を迅速且つ強力に阻害することを示す。
【0006】
[0008]最近、レンバチニブメシル酸塩が、局所再発性又は転移性の、進行性放射性ヨウ素治療抵抗性分化型甲状腺がん患者の治療用に米国で承認された。レンバチニブメシル酸塩の化学名は4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミドメタンスルホネートである。エーザイは、米国、日本、及び欧州で、様々なタイプの甲状腺がんに対するレンバチニブメシル酸塩について希少疾病用医薬品指定(ODD)が与えられた。甲状腺がん、肝細胞がん、子宮内膜がん、非小細胞肺がん、腎細胞癌(RCC)、メラノーマ、神経膠芽腫、及びその他の固形腫瘍タイプに対しては、レンバチニブメシル酸塩は研究中である。以下の式(I)で表される化合物は、抗血管新生作用(17)、腫瘍などの悪性化に関与すると報告されているチロシンキナーゼに対する阻害効果(18~21)を有する。
【化1】

はC1~6アルキル又はC3~8シクロアルキルである。Rは水素原子又はC1~6アルコキシである。Rは水素原子又はハロゲン原子である。
【0007】
[0009]一般的に、腫瘍治療剤は、別々に投与された場合患者全てには有効でないことがある。したがって、腫瘍治療剤を組み合わせることで、このような治療剤の治癒率を増加させる試みがなされている(22)。
【発明の概要】
【0008】
[0010]本明細書で開示されるように、式(I)で表される化合物及びPD-1受容体抗体の組合せを投与することで、予想外に優れた抗腫瘍効果が達成される。
【0009】
[0011]個体のがんを治療するための方法であって、MPDL3280AでないPD-1アンタゴニスト及びマルチRTK阻害剤を含む併用療法を個体に投与するステップを含む方法が提供される。一部の例では、個体はヒトである。がんは、固形腫瘍、非小細胞肺がん(NSCLC)、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマとすることができる。
【0010】
[0012]本方法のPD-1アンタゴニストは、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントとすることができる。一部の例では、アンタゴニストは抗PD-1抗体である。アンタゴニストはペムブロリズマブ又はニボルマブとすることができる。
【0011】
[0013]本方法のマルチRTK阻害剤は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とすることができ:
【化2】

式中、RはC1~6アルキル又はC3~8シクロアルキルであり、Rは水素原子又はC1~6アルコキシであり、Rは水素原子又はハロゲン原子である。式(I)で表される化合物は、以下の化合物のうちの1つ又は複数とすることができる:
4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化3】

、4-[3-クロロ-4-(メチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化4】

、4-[3-クロロ-4-(エチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化5】

、N6-メトキシ-4-(3-クロロ-4-{[(シクロプロピルアミノ)カルボニル)アミノ]フェノキシ}-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化6】

、及びN6-メトキシ-4-(3-クロロ-4-{[(エチルアミノ)カルボニル]アミノ}フェノキシ)-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化7】

【0012】
[0014]より具体的には、式(I)で表される化合物は、4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミドである:
【化8】

【0013】
[0015]一部の例では、本方法のPD-1アンタゴニストはペムブロリズマブであり、マルチRTK阻害剤はレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩である。一部の治療レジメンでは、ペムブロリズマブの投与がレンバチニブ投与後に行われてもよい。一部の例では、レンバチニブがペムブロリズマブ後に投与される。
【0014】
[0016]第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットが提供される。キットの第1の容器は、MPDL3280AでないPD-1アンタゴニストを含む、少なくとも1回分の用量の医薬を含み、第2の容器は、マルチRTK阻害剤を含む少なくとも1回分の用量の医薬を含む。添付文書は、医薬を使用して個体のがんを治療するための指示書を含む。キットの指示書には、医薬が、免疫組織化学的(IHC)アッセイでPD-L1発現について陽性を示すがんを有する個体を治療するのに使用するためのものであることが明記されていてもよい。一部の例では、個体はヒトとすることができる。
【0015】
[0017]キットのマルチRTK阻害剤は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩とすることができ:
【化9】

式中、RはC1~6アルキル又はC3~8シクロアルキルであり、Rは水素原子又はC1~6アルコキシであり、Rは水素原子又はハロゲン原子である。式(I)で表される化合物は、以下の化合物のうちの1つ又は複数とすることができる:
4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化10】

、4-[3-クロロ-4-(メチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化11】

、4-[3-クロロ-4-(エチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化12】

、N6-メトキシ-4-(3-クロロ-4-{[(シクロプロピルアミノ)カルボニル)アミノ]フェノキシ}-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化13】

、及びN6-メトキシ-4-(3-クロロ-4-{[(エチルアミノ)カルボニル]アミノ}フェノキシ)-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化14】

【0016】
[0018]より具体的には、式(I)で表される化合物は、4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミドとすることができる:
【化15】

【0017】
[0019]キットで提供されるPD-1アンタゴニストは、10mMヒスチジン緩衝液pH5.5中に25mg/mlペムブロリズマブ、7%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80を含む液体医薬として製剤化されたペムブロリズマブとすることができ、マルチRTK阻害剤は、炭酸カルシウム、マンニトール、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びタルクを含む4mg又は10mgのレンバチニブカプセル剤として製剤化されたレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩とすることができる。
【0018】
[0020]キットに含まれる医薬は、NSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマを治療するために施用することができる。
【0019】
[0021]がんと診断されたヒト個体を治療するための方法であって、個体に併用療法を少なくとも24週間投与するステップを含む方法が提供される。併用療法はペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む。レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩は、1日用量で、それぞれレンバチニブとして24mg、20mg又は14mgで投与することができ、ペムブロリズマブは用量200mgで3週間毎に1回投与することができる。
【0020】
[0022]がんを治療するために、マルチRTK阻害剤と組み合わせて使用するためのPD-1アンタゴニストを含む医薬が提供される。
【0021】
[0023]がんを治療するために、PD-1アンタゴニストと組み合わせて使用するためのマルチRTK阻害剤を含む医薬も提供される。
【0022】
[0024]マルチRTK阻害剤と組み合わせて投与される場合に個体のがんを治療するための医薬の製造における、PD-1アンタゴニストの使用も提供され、PD-1アンタゴニストと組み合わせて投与される場合に個体のがんを治療するための医薬の製造における、マルチRTK阻害剤の使用も提供される。
【0023】
[0025]個体のがんを治療するための医薬の製造における、PD-1アンタゴニスト及びマルチRTK阻害剤の使用も提供される。上記医薬はキットを含んでいてもよく、キットは、個体のがんを治療するために、マルチRTK阻害剤と組み合わせてPD-1アンタゴニストを使用するための指示書を含む添付文書を含んでいてもよい。キットは、上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物、及びビヒクルを含んでいてもよい。キットは、抗PD-1抗体及びビヒクルを含む医薬組成物を含んでいてもよい。
【0024】
[0026]上記の治療方法、医薬及び使用全てにおいて、PD-1アンタゴニストはPD-L1のPD-1への結合を阻害し、好ましくはPD-L2のPD-1への結合も阻害する。上記の治療方法、医薬及び使用の一部において、PD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、PD-L1のPD-1への結合を遮断するモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである。例えば、PD-1アンタゴニストは重鎖及び軽鎖を含む抗PD-1抗体であってもよく、ここで、重鎖及び軽鎖は図6に示すアミノ酸配列(配列番号21及び配列番号22)を含む。抗PD-1抗体は、腫瘍の療法用に、上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせることができる。抗PD-1抗体は、上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩と組み合わせることができる。上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体の併用を含みうる、腫瘍を治療する方法も提供される。
【0025】
[0027]本明細書での、上記の治療方法、医薬及び使用全てにおいて、マルチRTK阻害剤は、少なくとも以下のRTKそれぞれのキナーゼ活性を阻害する:(i)VEGFR2、(ii)FGFR1、2、3及び4からなる群から選択される少なくとも1つのFGFR;並びに(iii)RET。一部の例では、マルチRTK阻害剤は、VEGFR1、VEGFR3、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、2、3及び4、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体アルファ(PDGFRα);並びにKITのキナーゼ活性も阻害する。
【0026】
[0028]上記の治療方法、医薬及び使用の一部において、マルチRTK阻害剤はレンバチニブ、又はその、レンバチニブメシル酸塩などの薬学的に許容される塩である。
【0027】
[0029]上記の治療方法、医薬及び使用において、個体はヒトであり、がんは固形腫瘍であり、一部の例では、固形腫瘍は膀胱がん、乳がん、腎明細胞がん、頭頸部扁平上皮細胞癌、肺扁平上皮細胞癌、悪性メラノーマ、NSCLC、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、RCC、小細胞肺がん(SCLC)又はトリプルネガティブ乳がんである。がんはNSCLC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマであってもよい。
【0028】
[0030]上記の治療方法、医薬及び使用において、個体はヒトであってもよく、がんは血液悪性腫瘍(heme malignancy)であり、一部の例では、血液悪性腫瘍は急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、又は小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
【0029】
[0031]また、上記の治療方法、医薬及び使用のいずれかを、がんがPD-L1及びPD-L2の一方又は両方の発現について陽性を示す場合に利用することができる。さらなるその他の例では、がんは上昇したPD-L1発現を有する。
【0030】
[0032]上記の治療方法、医薬及び使用の一部において、個体はヒトであり、がんはヒトPD-L1について陽性を示し、NSCLC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌、又はメラノーマからなる群から選択される。
【0031】
[0033]上記の治療方法、医薬及び使用の一部において、マルチRTK阻害剤は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩であり:
【化16】

式中、RはC1~6アルキル又はC3~8シクロアルキルであり、Rは水素原子又はC1~6アルコキシであり、Rは水素原子又はハロゲン原子である。腫瘍治療剤は、上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体を同時に又は別個に投与することができる。腫瘍治療剤は、同時に投与されても別個に投与されてもよい。例えば、組成物は、上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体を含む組成物を含みうる。腫瘍治療剤は、上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体を含みうる。
【0032】
[0034]抗PD-1抗体と併用するための、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩が開示される。式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、抗PD-1抗体との併用により、腫瘍の療法に使用することができる。
【0033】
[0035]上記の式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、抗PD-1抗体、及びビヒクルを含みうる医薬組成物が開示される。
【0034】
[0036]上記の式(I)で表される化合物は、好ましくは以下の化合物のうちの1つ又は複数である:
[0037]4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化17】

[0038]4-[3-クロロ-4-(メチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化18】

[0039]4-[3-クロロ-4-(エチルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化19】

[0040]N6-メトキシ-4-(3-クロロ-4-{[(シクロプロピルアミノ)カルボニル)アミノ]フェノキシ}-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化20】

[0041]及びN6-メトキシ-4-(3-クロロ-4-{[(エチルアミノ)カルボニル]アミノ}フェノキシ)-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド:
【化21】

[0042]上記の式(I)で表される化合物は、より好ましくは4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミドである:
【化22】

(以下で、レンバチニブと示される場合もある)。
【0035】
[0043]マルチチロシンキナーゼ阻害作用を有する化合物、及び抗PD-1抗体の併用のための腫瘍治療剤が提供される。このような腫瘍治療剤は、マルチチロシンキナーゼ阻害作用を有する化合物、及び抗PD-1抗体が別々に使用された場合と比較して優れた抗腫瘍効果を示し、各種がんのタイプに対して抗腫瘍効果を示しうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】例示的な抗PD-1モノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖CDRのアミノ酸配列(配列番号1~6)を示す図である。
図2】別の例示的な抗PD-1モノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖CDRのアミノ酸配列(配列番号7~12)を示す図である。
図3】例示的な抗PD-1モノクローナル抗体の重鎖可変領域及び全長重鎖のアミノ酸配列(配列番号13及び配列番号14)を示す図である。
図4】例示的な抗PD-1モノクローナル抗体の別の軽鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号15~17)を示す図である。
図5】例示的な抗PD-1モノクローナル抗体の別の軽鎖のアミノ酸配列を示す図であり、K09A-L-11及びK09A-L-16軽鎖のアミノ酸配列(それぞれ配列番号18及び19)とK09A-L-17軽鎖のアミノ酸配列(配列番号20)とを示す。
図6】ペムブロリズマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列(それぞれ配列番号21及び22)を示す図である。
図7】ニボルマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列(それぞれ配列番号23及び24)を示す図である。
図8】皮下LL/2(LLc1)移植モデルにおける、レンバチニブ、抗PD-1抗体(RMP1-14)、及び両者の組合せの抗腫瘍効果を示す図である。
図9】本明細書で開示される、結腸がんマウスモデルにおける処理開始から11日目の抗がん又は抗腫瘍効果を示すグラフである。
図10】本明細書で開示される、対照群、レンバチニブ又はPD-L1別々、並びにレンバチニブ及びPD-L1の組合せについての、投与後日数毎にプロットした腫瘍体積を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
略号。詳細な説明及び実施例を通して、以下の略号が使用される:
[0054]BOR 最良総合効果
[0055]BID 1日2回投与
[0056]CBR 臨床的有効率
[0057]CDR 相補性決定領域
[0058]CHO チャイニーズハムスター卵巣
[0059]CR 完全奏効
[0060]DCR 病勢コントロール率
[0061]DFS 無病生存期間
[0062]DLT 用量制限毒性
[0063]DOR 奏効期間
[0064]DSDR 持続的不変率
[0065]FFPE ホルマリン固定、パラフィン包埋
[0066]FR フレームワーク領域
[0067]IgG 免疫グロブリンG
[0068]IHC 免疫組織化学又は免疫組織化学的
[0069]irRC 免疫関連効果判定基準
[0070]IV 静脈内
[0071]MTD 最大耐用量
[0072]NCBI 国立生物工学情報センター
[0073]NCI 国立がん研究所
[0074]ORR 客観的奏効率
[0075]OS 全生存期間
[0076]PD 進行性疾患
[0077]PD-1 プログラム細胞死1
[0078]PD-L1 プログラム細胞死1リガンド1
[0079]PD-L2 プログラム細胞死1リガンド2
[0080]PFS 無増悪生存期間
[0081]PR 部分奏効
[0082]Q2W 2週間毎に1回投与
[0083]Q3W 3週間毎に1回投与
[0084]QD 1日1回投与
[0085]RECIST 固形癌効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)
[0086]SD 不変疾患
[0087]VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
[0088]VK 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
【0038】
I.定義
[0089]方法、組成物、及び使用がより容易に理解されうるように、特定の専門用語及び科学用語が以下で具体的に定義される。本文書の別の箇所で具体的に定義されない限り、本明細書で使用されるその他の専門用語及び科学用語は全て、当業者が通常理解している意味を有する。
【0039】
[0090]数値で定義されるパラメータ(例えば、PD-1アンタゴニスト若しくはマルチRTK阻害剤の用量、又は本明細書に記載される併用療法による治療時間の長さ)を修飾するために使用されるときの「約」は、パラメータが、そのパラメータについて明記される数値の上下10%の範囲で変動しうることを意味する。例えば、用量約20mgは18mg~22mgの間で変動しうる。
【0040】
[0091]「好ましくは」は、より望ましい選択肢を意味する。例えば、数値で定義されるパラメータを修飾するために使用されるとき、「好ましくは」は、好ましいパラメータによって、別の値でのパラメータと比較して結果の向上がもたらされることを示す。この意味での「好ましくは」は、米国以外でのみ適用される。
【0041】
[0092]添付の特許請求の範囲を含め、本明細書で使用される場合、「a」、「an」及び「the」などの単数形の語は、文脈で別途明確に定められない限り、対応する複数の指示対象を含む。
【0042】
[0093]動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官、又は生体液に適用されるとき、「投与」及び「処理」は、外因性の医薬品、治療剤、診断剤、又は組成物を、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官、又は生体液に接触させることを指す。細胞の処理は、細胞に試薬を接触させること、及び流体が細胞と接触している場合に、その流体に試薬を接触させることを包含する。「投与」及び「処理」は、試薬、診断薬、結合する化合物、又は別の細胞による、例えば細胞の、インビトロ及びエクスビボ処理も意味する。「対象」という語は任意の生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、最も好ましくはヒトを含む。
【0043】
[0094]本明細書で使用される場合、「抗体」という語は、望ましい生物活性又は結合活性を示す任意の形態の抗体を指す。したがって、「抗体」という語は最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、キメラ抗体、及びラクダ化単一ドメイン抗体を具体的に含むが、これらに限定されない。「親抗体」は、免疫系を抗原に曝露することにより得られる、ヒト治療剤として使用するため抗体をヒト化することなどの、意図される用途のための抗体の改変を行う前の抗体である。
【0044】
[0095]一般的に、基本的な抗体構造単位は四量体を含む。各四量体は、同一のポリペプチド鎖対2つを含み、各対は「軽」鎖(約25kDa)1つ及び「重」鎖(約50~70kDa)1つを有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に主に関与する約100~110又はそれ超のアミノ酸の可変領域を含む。重鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能に主に関与する定常領域を規定しうる。通常、ヒト軽鎖はカッパ及びラムダ軽鎖に分類される。さらに、ヒト重鎖は通常、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして規定する。軽鎖及び重鎖内で、可変領域と定常領域は約12又はそれ超のアミノ酸の「J」領域で連結されており、重鎖は約10又はそれ超のアミノ酸の「D」領域も含む。概して、FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY Ch.7(Paul、W.編、第2版 Raven Press、N.Y.(1989)を参照のこと。
【0045】
[0096]各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体の結合部位を形成する。したがって、一般的に、未処理の抗体は2つの結合部位を有する。二機能性又は二重特異性抗体を除いて、一般的に2つの結合部位は同じである。
【0046】
[0097]通常、重鎖及び軽鎖両方の可変ドメインが、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内にある、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域を含む。CDRは通常、フレームワーク領域により整列しており、特定のエピトープに結合することができる。一般的に、軽鎖及び重鎖の可変ドメインは両方、N末端からC末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。一般的に、アミノ酸の各ドメインへの割当ては、SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、Kabatら;アメリカ国立衛生研究所、Bethesda、Md.;第5版;NIH Publ.No.91~3242(1991);Kabat(1978)Adv.Prot.Chem.32:1~75;Kabatら、(1977)J.Biol.Chem.252:6609~6616;Chothiaら、(1987)J Mol.Biol.196:901~917又はChothiaら、(1989)Nature 342:878~883の規定に従う。
【0047】
[0098]本明細書で使用される場合、「超可変領域」という語は、抗原結合に関与する、抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」(すなわち軽鎖可変ドメインのCDRL1、CDRL2及びCDRL3、並びに重鎖可変ドメインのCDRH1、CDRH2及びCDRH3)由来のアミノ酸残基を含む。Kabatら(1991)SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、第5版 公衆衛生局、アメリカ国立衛生研究所、Bethesda、Md.(配列による抗体CDR領域の規定)を参照のこと;Chothia及びLesk(1987)J.Mol.Biol.196:901~917(構造による抗体CDR領域の規定)も参照のこと。本明細書で使用される場合、「フレームワーク」又は「FR」残基という語は、本明細書でCDR残基と定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。
【0048】
[0099]本明細書で使用される場合、別途示されない限り、「抗体フラグメント」又は「抗原結合フラグメント」は、抗体の抗原結合フラグメント、すなわち全長抗体が結合する抗原に特異的に結合する能力を維持している抗体フラグメント、例えば1つ又は複数のCDR領域を維持しているフラグメントを指す。抗体の結合フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFvフラグメント;二重特異性抗体;直線状抗体;単鎖抗体分子、例えばsc-Fv;抗体フラグメントより形成されるナノボディ及び多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
[00100]特定の標的タンパク質「に特異的に結合する」抗体は、その他のタンパク質と比較して、その標的に対し優先的な結合を示す抗体であるが、この特異性には絶対的な結合特異性が必要なわけではない。抗体の結合によって、例えば偽陽性などの望ましくない結果を生じることなく試料中の標的タンパク質の存在が決定される場合に、その抗体は所期の標的に対し「特異的である」と考えられる。抗体、又はその結合フラグメントは、非標的タンパク質との親和性と比較して少なくとも2倍超、好ましくは少なくとも10倍超、より好ましくは少なくとも20倍超、最も好ましくは少なくとも100倍超の親和性で標的タンパク質に結合する。本明細書で使用される場合、抗体は、所与のアミノ酸配列、例えば成熟ヒトPD-1又はヒトPD-L1分子のアミノ酸配列を含むポリペプチドには結合するが、その配列を持たないタンパク質には結合しない場合に、その配列を含むポリペプチドに特異的に結合すると言われる。
【0050】
[00101]「キメラ抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種(例えばヒト)由来の抗体、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体において対応する配列と同一又は相同であり、鎖(複数可)の残りが、別の種(例えばマウス)由来の抗体、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体において対応する配列と同一又は相同である抗体、及び、望ましい生物活性を示す限りこのような抗体のフラグメントを指す。
【0051】
[00102]「ヒト抗体」は、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体を指す。ヒト抗体は、マウス、マウス細胞、又はマウス細胞由来のハイブリドーマで産生された場合、マウスの糖鎖を含んでいてもよい。同様に、「マウス抗体」又は「ラット抗体」は、それぞれマウス又はラットの免疫グロブリン配列のみを含む抗体を指す。
【0052】
[00103]「ヒト化抗体」は、ヒト抗体だけでなく非ヒト(例えばマウス)抗体由来の配列も含む抗体の形態を指す。このような抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の配列を最小限含む。一般的に、ヒト化抗体は少なくとも1つの、通常は2つの可変ドメインの実質的に全体を含み、超可変ループの全体又は実質的に全体が非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FR領域の全体又は実質的に全体がヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。任意選択で、ヒト化抗体は免疫グロブリンの定常領域(Fc)、通常はヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部も含む。ヒト化抗体を親げっ歯類抗体と区別する必要がある場合、抗体のクローン名に接頭語「hum」、「hu」又は「h」が付け足される。一般的に、げっ歯類抗体のヒト化形態は親げっ歯類抗体と同じCDR配列を含むが、ヒト化抗体の親和性を増大させるため、ヒト化抗体の安定性を増大させるため、又はその他の理由で、特定のアミノ酸置換を含んでいてもよい。
【0053】
[00104]本明細書に記載される併用療法などの治療レジメンによる治療を受けるがん患者に言及する場合の「抗腫瘍応答」は、例えば、がん細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢器官へのがん細胞浸潤速度の低下、腫瘍転移若しくは腫瘍増殖速度の低下、又は無増悪生存期間などの、少なくとも1つの陽性治療効果を意味する。がんの陽性治療効果は、複数の方法で測定可能である(W.A.Weber、J.Null.Med.50:1S~10S(2009);Eisenhauerら、上記参照、を参照のこと)。一部の例では、本明細書に記載される併用療法に対する抗腫瘍応答が、RECIST1.1基準(固形癌効果判定基準)、2次元irRC(免疫関連効果判定基準)、又は1次元irRCを使用して評価される。一部の例では、抗腫瘍応答はSD、PR、CR、PFS、又はDFSのいずれかである。
【0054】
[00105]「2次元irRC」は、Wolchok JDら「Guidelines for the evaluation of immune therapy activity in solid tumors:immune-related response criteria」,Clin Cancer Res.2009;15(23):7412~7420に記載される一連の基準を指す。これらの基準では、各病変の最長径と、最長径に直交する最長径を掛けて得られる、標的病変の2次元腫瘍測定値(cm)を利用する。
【0055】
[00106]「生物療法剤」は、腫瘍の維持及び/又は増殖を支えるか、抗腫瘍免疫応答を抑制する任意の生物学的経路におけるリガンド/受容体シグナル伝達を遮断する、抗体又は融合タンパク質などの生体分子を意味する。生物療法剤のクラスには、VEGF、上皮増殖因子受容体(EGFR)、Her2/neu、その他の増殖因子受容体、CD20、CD40、CD-40L、CTLA-4、OX-40、4-1BB、及びICOSに対する抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
[00107]「がん」、「がんの」、「腫瘍」又は「悪性の」という語は、無秩序な細胞増殖を通常特徴とする、哺乳動物の生理的状態を指す、又は表す。がんの例には、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫、及び肉腫が含まれるがこれらに限定されない。このようながんのより詳細な例には、扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫、腺腫、神経鞘腫、胃腸(管)がん、胃がん(gastric cancer)、腎がん、胆嚢がん、卵巣がん、肝がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎がん、前立腺がん、甲状腺がん、メラノーマ、軟骨肉腫、神経芽腫、膵臓がん、多形神経膠芽腫、子宮頸がん、脳がん、胃がん(stomach cancer)、膀胱がん、肝細胞癌、乳がん、結腸癌、子宮内膜がん、子宮体がん、子宮頸がん、及び頭頸部がんが含まれる。がんの別の詳細な例には腎細胞癌が含まれる。がんのさらに詳細な例には、腎明細胞がんが含まれる。開示される治療方法、医薬、及び開示される使用に従って治療されうるがんには、試験される組織試料におけるPD-L1及びPD-L2の一方又は両方の発現上昇を特徴とするがんが含まれる。
【0057】
[00108]「CBR」又は「臨床的有効率」は、CR+PR+持続的SDを意味する。
【0058】
[00109]本明細書で使用される場合、「CDR(複数可)」は、別途示されない限り、Kabat付番システムを使用して規定される、免疫グロブリン可変領域の相補性決定領域(複数可)を意味する。
【0059】
[00110]「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化合物である。化学療法剤のクラスには:アルキル化剤、代謝拮抗剤、キナーゼ阻害剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒/抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、光増感剤、抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、抗プロゲステロン薬、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(ERD)、エストロゲン受容体アンタゴニスト、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト、抗アンドロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、及び異常な細胞増殖又は腫瘍増殖に関与する遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で開示される治療方法において有用な化学療法剤には、細胞分裂阻害剤及び/又は細胞毒性薬剤が含まれる。
【0060】
[00111]本明細書で使用される場合、「Chothia」は、Al-Lazikaniら、JMB 273:927~948(1997)に記載される抗体付番システムを意味する。
【0061】
[00112]「含む(comprising)」、又は「含む(comprise)」、「含む(comprises)」若しくは「~から構成される(comprised of)」などの変化形は、包括的な意味で、すなわち、さらなる特徴の存在又は追加を除外するためではなく、明記される特徴の存在を明示するため、明細書及び特許請求の範囲を通して使用される。さらなる特徴は、明確な文言又は必要な含意のために文脈において別途必要とされない限り、開示される治療方法、医薬、及び開示される使用のいずれかについての操作性又は有用性を著しく増強することができる。
【0062】
[00113]「保存的に改変された変異体」又は「保存的置換」は、タンパク質のアミノ酸の、類似の特性(例えば電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、主鎖コンフォメーション及び剛性など)を有するその他のアミノ酸による置換であって、その変化が、生物活性、又は抗原親和性及び/若しくは特異性などのタンパク質のその他の望ましい特性を変化させることなく頻繁に起こりうる置換を指す。一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換によって、生物活性は実質的に変化しないということを、当業者は認識している(例えば、Watsonら(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、p.224(第4版)を参照のこと)。さらに、構造的に又は機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物活性を妨害する可能性がより低い。例示的な保存的置換を以下の表1に示す。
【0063】
[00114]
【表1】
【0064】
[00115]明細書及び特許請求の範囲を通して使用される「~から本質的になる(Consists essentially of)」、及び「~から本質的になる(consist essentially of)」又は「~から本質的になる(consisting essentially of)」などの変化形は、列挙される任意の要素又は要素の群を含むこと、及び、特定の投薬レジメン、方法、又は組成物の基本的な若しくは新規の特性を著しく変化させない類似の若しくは異なる性質を有する、列挙される要素以外の要素を任意選択で含むことを示す。非限定的な例として、列挙されるアミノ酸配列から本質的になるPD-1アンタゴニストは、結合する化合物の特性に著しい影響を及ぼさない1つ又は複数のアミノ酸残基置換を含む、1つ又は複数のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0065】
[00116]「DCR」又は「病勢コントロール率」は、CR+PR+SDを意味する。
【0066】
[00117]「診断用抗PD-Lモノクローナル抗体」は、特定の哺乳動物細胞表面に発現される指定の成熟型PD-L(PD-L1又はPDL2)に特異的に結合するmAbを意味する。成熟PD-Lは、リーダーペプチドとも呼ばれる前分泌(presecretory)リーダー配列を欠いている。「PD-L」及び「成熟PD-L」という語は、本明細書では互換可能に使用され、別途示されるか文脈から容易に明らかでない限り同じ分子を意味すると理解されるものである。
【0067】
[00118]本明細書で使用される場合、診断用抗ヒトPD-L1mAb又は抗hPD-L1mAbは、成熟ヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体を指す。成熟ヒトPD-L1分子は、以下の配列のアミノ酸19~290からなる:
MRIFAVFIFMTYWHLLNAFTVTVPKDLYVVEYGSNMTIECKFPVEKQLDLAALIVYWEMEDKNIIQFVHGEEDLKVQHSSYRQRARLLKDQLSLGNAALQITDVKLQDAGVYRCMISYGGADYKRITVKVNAPYNKINQRILVVDPVTSEHELTCQAEGYPKAEVIWTSSDHQVLSGKTTTTNSKREEKLFNVTSTLRINTTTNEIFYCTFRRLDPEENHTAELVIPELPLAHPPNERTHLVILGAILLCLGVALTFIFRLRKGRMMDVKKCGIQDTNSKKQSDTHLEET(配列番号25)。
【0068】
[00119]FFPE腫瘍組織切片におけるPD-L1発現をIHC検出するための診断用mAbとして有用な、診断用抗ヒトPD-L1mAbの特定の例は、国際公開第2014/100079号として2014年6月26日に公開された、2013年12月18日出願の、同時係属中の国際特許出願PCT/US13/075932に記載される抗体20C3及び抗体22C3である。FFPE組織切片におけるPD-L1発現をIHC検出するのに有用であると報告されている別の抗ヒトPD-L1mAb(Chen、B.J.ら、Clin Cancer Res 19:3462~3473(2013))は、Sino Biological、Inc.(Beijing、P.R.China;カタログ番号10084-R015)より公的に入手可能なウサギ抗ヒトPD-L1mAbである。
【0069】
[00120]「DSDR」又は「持続的不変率」は、23週間以上のSDを意味する。
【0070】
[00121]本明細書で使用される場合「フレームワーク領域」又は「FR」は、CDR領域を除く免疫グロブリン可変領域を意味する。
【0071】
[00122]「相同性」は、2本のポリペプチド配列が最適にアラインメントされたときの、両者間の配列類似性を指す。比較される2本の配列の両方におけるある位置が同じアミノ酸モノマーサブユニットで占められているとき、例えば、異なる2つのAbの軽鎖CDRのある位置がアラニンで占められている場合、2つのAbはその位置で相同である。相同性パーセントは、2本の配列が共有する相同な位置の数を、比較される位置の総数で割り、100倍したものである。例えば、配列が最適にアラインメントされたときに、2本の配列の位置10個のうち8個が一致するか相同である場合、2本の配列は80%相同である。一般的に、2本の配列が最大の相同性パーセントを与えるようにアラインメントされたときに比較が行われる。例えば、アメリカ国立医学図書館の登録商標である基本ローカルアラインメント検索ツール(ブラスト(BLAST)(登録商標))アルゴリズムにより比較が行われ、このとき、アルゴリズムのパラメータは、各参照配列の全長にわたって各配列間で最大の一致を与えるように選択されうる。
【0072】
[00123]以下の代表的な参考文献が、配列解析にしばしば使用されるブラスト(登録商標)アルゴリズムに関する:ブラストアルゴリズム:Altschul、S.F.ら、(1990)J.Mol.Biol.215:403~410;Gish、W.ら、(1993)Nature Genet.3:266~272;Madden、T.L.ら、(1996)Meth.Enzymol.266:131~141;Altschul、S.F.ら、(1997)Nucleic Acids Res.25:3389~3402;Zhang、J.ら、(1997)Genome Res.7:649~656;Wootton、J.C.ら、(1993)Comput.Chem.17:149~163;Hancock、J.M.ら、(1994)Comput.Appl.Biosci.10:67~70;アラインメントスコアリングシステム:Dayhoff、M.O.ら、「A model of evolutionary change in proteins.」IN ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE、(1978)vol.5、suppl.3.M.O.Dayhoff(編)、pp.345~352、Natl.Biomed.Res.Found.、Washington、DC;Schwartz、R.M.ら、「Matrices for detecting distant relationships.」IN ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE、(1978)vol.5、suppl.3.“M.O.Dayhoff(編)、pp.353~358、Natl.Biomed.Res.Found.、Washington、DC;Altschul、S.F.、(1991)J.Mol.Biol.219:555~565;States、D.J.ら、(1991)Methods 3:66~70;Henikoff、S.ら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915~10919;Altschul、S.F.ら、(1993)J.Mol.Evol.36:290~300;アラインメント統計学:Karlin、S.ら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264~2268;Karlin、S.ら、(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873~5877;Dembo、A.ら、(1994)Ann.Prob.22:2022~2039;及びAltschul、S.F.「Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.」IN THEORETICAL AND COMPUTATIONAL METHODS IN GENOME RESEARCH(S.Suhai、編)、(1997)pp.1~14、Plenum、New York。
【0073】
[00124]「単離された抗体」及び「単離された抗体フラグメント」は精製状態を指し、このような文脈では、核酸、タンパク質、脂質、糖などのその他の生体分子、又は細胞破片及び増殖培地などのその他の物質を、指定の分子が実質的に含まないことを意味する。一般的に、「単離された」という語は、本明細書に記載される結合する化合物を実験又は治療に使用することを実質的に妨げる量で存在しない限り、このような物質が全く存在しないこと、又は水、緩衝液、若しくは塩が存在しないことを指すと意図されるわけではない。
【0074】
[00125]本明細書で使用される場合、「Kabat」は、Elvin A.Kabat((1991)SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST、第5版、公衆衛生局、アメリカ国立衛生研究所、Bethesda、Md.)が開発した、免疫グロブリンアラインメント及び付番システムを意味する。
【0075】
[00126]本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」又は「mAb」又は「Mab」は、実質的に均質な抗体の集団、すなわち、その集団を含む抗体分子が、少量存在しうる、天然に存在する考えられる突然変異を除き、アミノ酸配列において同一であることを指す。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は通常、可変ドメイン、詳細にはCDRに異なるアミノ酸配列を有する、異なるエピトープにしばしば特異的な数多くの異なる抗体を含む。その修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体の特性を示し、特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、治療方法、医薬、及び開示される使用に従って使用されるべきモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature 256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製するか、組換えデオキシリボ核酸(DNA)法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)により作製することができる。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonら(1991)Nature 352:624~628及びMarksら(1991)J.Mol.Biol.222:581~597に記載される技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。Presta(2005)J.Allergy Clin.Immunol.116:731も参照のこと。
【0076】
[00127]本明細書に記載される併用療法による治療に対する特定の抗腫瘍応答に言及するときの「ノンレスポンダー患者」は、患者が抗腫瘍応答を示さなかったことを意味する。
【0077】
[00128]一部の例では、「ORR」又は「客観的奏効率」はCR+PRを指し、ORR(week 24)は、ペムブロリズマブと組み合わせたレンバチニブメシル酸塩による24週間の治療後のコホートの各患者における、irRECISTを使用して測定されるCR及びPRを指す。
【0078】
[00129]「患者」又は「対象」は、ヒト、並びにウシ、ウマ、イヌ、及びネコなどの哺乳動物患畜を含む、療法が望ましい任意の単一の対象、又は臨床試験、疫学研究に参加しているか対照として使用される任意の単一の対象を指す。
【0079】
[00130]「PD-1アンタゴニスト」は、がん細胞で発現されるPD-L1が、免疫細胞(T細胞、B細胞又はNKT細胞)で発現されるPD-1に結合することを遮断し、好ましくはがん細胞で発現されるPD-L2が、免疫細胞で発現されるPD-1に結合することも遮断する任意の化合物又は生体分子を意味する。PD-1及びPD-1リガンドの別名又はシノニムには:PD-1に対するPDCD1、PD1、CD279及びSLEB2;PD-L1に対するPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274及びB7-H;並びにPD-L2に対するPDCD1L2、PDL2、B7-DC、Btdc及びCD273が含まれる。ヒト個体が治療を受ける治療方法、医薬及び開示される使用のいずれかにおいて、PD-1アンタゴニストはヒトPD-L1がヒトPD-1に結合することを遮断し、好ましくはヒトPD-L1及びPD-L2の両方がヒトPD-1に結合することを遮断する。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI Locus No.:NP_005009で見ることができる。ヒトPD-L1及びPD-L2アミノ酸配列は、それぞれNCBI Locus No.:NP_054862及びNP_079515で見ることができる。PD-1アンタゴニストは抗PD-L1モノクローナル抗体MPDL3280Aではない。
【0080】
[00131]治療方法、医薬及び開示される使用のいずれかにおいて有用なPD-1アンタゴニストは、PD-1又はPD-L1に特異的に結合し、好ましくはヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)、又はその抗原結合フラグメントを含む。mAbはヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラ抗体とすることができ、ヒト定常領域を含んでいてもよい。ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域からなる群から選択され、好ましくは、ヒト定常領域はIgG1又はIgG4定常領域である。一部の例では、抗原結合フラグメントはFab、Fab’-SH、F(ab’)、scFv及びFvフラグメントからなる群から選択される。
【0081】
[00132]ヒトPD-1に結合し、治療方法、医薬及び開示される使用において有用なmAbの例が、米国特許第7488802号、米国特許第7521051号、米国特許第8008449号、米国特許第8354509号、米国特許第8168757号、国際公開第2004/004771号、国際公開第2004/072286号、国際公開第2004/056875号、及び米国特許出願公開第2011/0271358号に記載されている。治療方法、医薬及び開示される使用におけるPD-1アンタゴニストとして有用な特定の抗ヒトPD-1mAbには:WHO Drug Information、Vol.27、No.2、161~162ページ(2013)に記載される構造を有し、図6に示す重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含むヒト化IgG4mAbであるペムブロリズマブ(MK-3475としても知られる)、WHO Drug Information、Vol.27、No.1、68~69ページ(2013)に記載される構造を有し、図7に示す重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含むヒトIgG4mAbであるニボルマブ(BMS-936558)、ヒト化モノクローナル抗体であるピジリズマブ、AMP-224、及びAMP-514;国際公開第2008/156712号に記載されるヒト化抗体h409A11、h409A16及びh409A17、並びにMedImmuneが開発したAMP-514が含まれる。
【0082】
[00133]ヒトPD-L1に結合し、治療方法、医薬及び開示される使用において有用なmAbの例が、国際公開第2013/019906号、WO2010/077634A1及び米国特許8383796号に記載されている。治療方法、医薬及び開示される使用におけるPD-1アンタゴニストとして有用な特定の抗ヒトPD-L1mAbには、MPDL3280A、BMS-936559、MEDI4736、MSB0010718C、並びに国際公開第2013/019906号の、それぞれ配列番号24及び配列番号21の重鎖及び軽鎖可変領域を含む抗体が含まれる。
【0083】
[00134]治療方法、医薬及び開示される使用のいずれかにおいて有用なその他のPD-1アンタゴニストには、PD-1又はPD-L1に特異的に結合する、好ましくはヒトPD-1又はヒトPD-L1に特異的に結合するイムノアドヘシン、例えば、免疫グロブリン分子のFc領域などの定常領域と融合させたPD-L1又はPD-L2の細胞外部分又はPD-1結合部分を含む融合タンパク質が含まれる。PD-1に特異的に結合する免疫接着分子の例が、国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載されている。本明細書に記載される治療方法、医薬及び使用におけるPD-1アンタゴニストとして有用な特定の融合タンパク質には、PD-L2-FC融合タンパク質でありヒトPD-1に結合するAMP-224(B7-DCIgとしても知られる)が含まれる。
【0084】
[00135]治療方法、医薬及び開示される使用により、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであるPD-1アンタゴニストが提供され、PD-1アンタゴニストは:(a)軽鎖CDR配列番号1、2及び3、並びに重鎖CDR配列番号4、5及び6;又は(b)軽鎖CDR配列番号7、8及び9、並びに重鎖CDR配列番号10、11及び12を含む。
【0085】
[00136]治療方法、医薬及び開示される使用により、モノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントであるPD-1アンタゴニストが提供され、PD-1アンタゴニストはヒトPD-1に特異的に結合し、(a)配列番号13又はその変異体を含む重鎖可変領域、並びに(b)配列番号15又はその変異体;配列番号16又はその変異体;及び配列番号17又はその変異体からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。重鎖可変領域配列の変異体は、フレームワーク領域に(すなわちCDR以外に)最大17個の保存的アミノ酸置換を有することを除いて参照配列と同一であり、好ましくはフレームワーク領域に10個未満、9個未満、8個未満、7個未満、6個未満又は5個未満の保存的アミノ酸置換を有する。軽鎖可変領域配列の変異体は、フレームワーク領域に(すなわちCDR以外に)最大5個の保存的アミノ酸置換を有することを除いて参照配列と同一であり、好ましくはフレームワーク領域に4個未満、3個未満又は2個未満の保存的アミノ酸置換を有する。
【0086】
[00137]治療方法、医薬及び開示される使用のいずれかのためのPD-1アンタゴニストは、ヒトPD-1に特異的に結合し、(a)配列番号14を含む重鎖及び(b)配列番号18、配列番号19又は配列番号20を含む軽鎖を含むモノクローナル抗体であってもよい。
【0087】
[00138]治療方法、医薬及び開示される使用により、モノクローナル抗体であるPD-1アンタゴニストが提供され、PD-1アンタゴニストはヒトPD-1に特異的に結合し、(a)配列番号14を含む重鎖及び(b)配列番号18を含む軽鎖を含む。
【0088】
[00139]以下の表2では、治療方法、医薬及び開示される使用において使用するための例示的な抗PD-1mAbのアミノ酸配列のリストが提供され、図1~5Bでは配列が示される。
【0089】
【表2】
【0090】
[00140]本明細書で使用される場合「PD-L1」又は「PD-L2」発現は、細胞表面における指定のPD-Lタンパク質、又は細胞若しくは組織内における指定のPD-LmRNAの、検出可能なレベルでの発現を意味する。PD-Lタンパク質発現は、腫瘍組織切片のIHCアッセイで、又はフローサイトメトリーにより、診断用PD-L抗体を用いて検出可能である。或いは、望ましいPD-L標的、例えばPD-L1又はPD-L2に特異的に結合する結合剤(例えば抗体フラグメント、アフィボディなど)を使用する陽電子放射断層撮影(PET)画像法によっても、腫瘍細胞によるPD-Lタンパク質発現が検出可能である。PD-LmRNA発現を検出及び測定する技術には、RT-PCR及びリアルタイム定量的RT-PCRが含まれる。
【0091】
[00141]腫瘍組織切片のIHCアッセイでPD-L1タンパク質発現を定量するための手法がいくつか記載されている。例えば、Thompson、R.H.ら、PNAS 101(49);17174~17179(2004);Thompson,R.H.ら、Cancer Res.66:3381~3385(2006);Gadiot,J.ら、Cancer 117:2192~2201(2011);Taube,J.M.ら、Sci Transl Med 4,127ra37(2012);及びToplian、S.L.ら、New Eng.J Med.366(26):2443~2454(2012)を参照のこと。
【0092】
[00142]ある手法では、PD-L1発現について陽性か陰性かの単純な二値エンドポイントを使用し、陽性結果は、細胞表面膜染色の組織学的証拠を示す腫瘍細胞のパーセンテージに関して定義される。腫瘍組織切片は、総腫瘍細胞の少なくとも1%、好ましくは5%でPD-L1が発現すると陽性として計数される。
【0093】
[00143]別の手法では、腫瘍組織切片でのPD-L1発現が、腫瘍細胞、及びリンパ球を主に含む浸潤免疫細胞において定量される。膜染色を示す腫瘍細胞及び浸潤免疫細胞のパーセンテージが、5%未満、5~9%、それから10%きざみで最大100%として別個に定量される。腫瘍細胞では、PD-L1発現は、スコアが5%未満のスコアであれば陰性、スコアが5%以上であれば陽性として計数される。免疫浸潤物でのPD-L1発現は、補正炎症スコア(AIS)と呼ばれる半定量的測定値として報告される。補正炎症スコアは、膜染色細胞のパーセントに浸潤物の強度を掛けることにより決定され、無(0)、軽度(スコア1、リンパ球ほとんどなし)、中度(スコア2、リンパ組織球性凝集物による腫瘍への限局性浸潤)、又は重度(スコア3、びまん性浸潤)として格付けされる。腫瘍組織切片は、AISが5以上であれば、免疫浸潤物によるPD-L1発現について陽性として計数される。
【0094】
[00144]PD-LmRNA発現のレベルは、定量的RT-PCRで頻繁に使用される、ユビキチンCなどの1つ又は複数の参照遺伝子のmRNA発現レベルと比較することができる。
【0095】
[00145]一部の例では、悪性細胞及び/又は腫瘍内の浸潤免疫細胞でのPD-L1発現(タンパク質及び/又はmRNA)レベルが、適切な対照でのPD-L1発現(タンパク質及び/又はmRNA)レベルとの比較に基づき、「過剰発現」又は「上昇」と決定される。例えば、対照でのPD-L1タンパク質又はmRNA発現レベルは、同じタイプの非悪性細胞、又は対応する正常な組織(すなわち非悪性組織)由来の切片で定量されるレベルとすることができる。腫瘍試料中のPD-L1タンパク質(及び/又はPD-L1mRNA)が、対照と比較して少なくとも10%、20%、又は30%多い場合に、試料におけるPD-L1発現が上昇していると決定されることが好ましい。
【0096】
[00146]「ペムブロリズマブバイオシミラー」は、Merck&Co.,Inc.d.b.a.Merck Sharp and Dohme(MSD)以外の団体により製造され、ペムブロリズマブバイオシミラーとして販売するため、国の規制機関により承認された生物学的製品を意味する。ペムブロリズマブバイオシミラーは、原薬としてペムブロリズマブ変異体又はペムブロリズマブと同じアミノ酸配列を有する抗体を含みうる。
【0097】
[00147]本明細書で使用される場合、「ペムブロリズマブ変異体」は、軽鎖CDR以外にある位置での3個、2個又は1個の保存的アミノ酸置換、及び重鎖CDR以外にある6個、5個、4個、3個、2個又は1個の保存的アミノ酸置換を有することを除いて、ペムブロリズマブと同一の重鎖及び軽鎖配列を含むモノクローナル抗体を意味する。例えば、変異の位置はFR領域及び/又は定常領域にある。言い換えれば、ペムブロリズマブ及びペムブロリズマブ変異体は同一のCDR配列を含むが、全長軽鎖及び重鎖配列のその他の位置に、それぞれ3個又は6個以下の保存的アミノ酸置換を有するため、互いに異なる。ペムブロリズマブ変異体は、以下の特性に関してペムブロリズマブと実質的に同じである:PD-1に対する結合親和性、並びにPD-L1及びPD-L2それぞれの、PD-1への結合を遮断する能力。
【0098】
[00148]本明細書で使用される場合、「RECIST1.1効果判定基準」は、応答が測定される状況に必要に応じて基づいた、標的病変又は非標的病変についての、Eisenhauerら、E.A.ら、Eur.J Cancer 45:228~247(2009)で示される定義を意味する。
【0099】
[00149]本明細書に記載される併用療法による治療に対する特定の抗腫瘍応答に言及するときの「レスポンダー患者」は、抗腫瘍応答を示す患者を意味する。
【0100】
[00150]「持続性応答」は、治療剤、又は本明細書に記載される併用療法による治療の中止後の持続性治療効果を意味する。一部の例では、持続性応答は少なくとも治療期間と同じ、又は治療期間より少なくとも1.5、2.0、2.5又は3倍長い期間を有する。
【0101】
[00151]「組織切片」は、組織試料の単一の部分又は断片、例えば、正常組織又は腫瘍の試料から切り取られた組織の薄切片を指す。
【0102】
[00152]本明細書で使用される場合、がんを「治療する」又は「治療すること」は、例えば、がん細胞数の減少、腫瘍サイズの減少、末梢器官へのがん細胞浸潤速度の低下、又は腫瘍転移若しくは腫瘍増殖速度の低下などの少なくとも1つの陽性治療効果を実現するため、がんを有するかがんと診断された対象に、PD-1アンタゴニスト及びマルチRTK阻害剤の併用療法を投与することを意味する。がんにおける陽性治療効果は、複数の方法で測定可能である(W.A.Weber、J.Nucl.Med.50:1S~10S(2009)を参照のこと)。例えば、腫瘍増殖阻害に関しては、NCI基準によれば、T/C42%以下が抗腫瘍活性の最低レベルである。T/C10%未満は高い抗腫瘍活性レベルと考えられ、T/C(%)=治療を受けた腫瘍体積の中央値/対照の腫瘍体積の中央値×100である。一部の例では、本明細書に記載される併用療法に対する応答が、RECIST1.1基準又はirRC(2次元又は1次元)を使用して評価され、マルチRTK阻害剤及びPD-1アンタゴニストの組合せにより実現される治療は、PR、CR、OR、PFS、DFS及びOSのいずれかである。PFSは、「腫瘍進行までの時間」とも呼ばれ、治療中及び治療後の、がんが増殖しなかった時間の長さを示し、患者がCR又はPRを経験した時間、及び患者がSDを経験した時間を含む。DFSは、治療中及び治療後の、患者が疾患にかからないままであった時間の長さを指す。OSは、ナイーブ又は未治療の個体又は患者と比較した平均余命の延長を指す。一部の例では、マルチRTK阻害剤及びPD-1アンタゴニストの組合せに対する応答は、RECIST1.1効果判定基準を使用して評価される、PR、CR、PFS、DFS、OR及びOSのいずれかである。がん患者を治療するのに有効な、開示される組合せ用の治療レジメンは、患者の病状、年齢、及び体重、並びにその療法が対象の抗がん応答を引き出す能力などの因子に従って変動させてもよい。治療方法、医薬、及び開示される使用は、全ての対象で陽性治療効果を実現するのに有効であるとは限らず、Studentのt検定、カイ2乗検定、Mann-WhitneyのU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定及びWilcoxon検定などの当技術分野で既知の任意の統計的検定で決定される統計的に有意な数の対象において、陽性治療効果を実現するのに有効であるべきである。
【0103】
[00153]「治療レジメン」、「投与プロトコール」及び「投薬レジメン」という語は、マルチRTK阻害剤及びPD-1アンタゴニストの組合せにおける各治療剤についての投与用量及びタイミングを指すために互換可能に使用される。
【0104】
[00154]がんと診断された、又はがんを有する疑いのある対象に適用される場合、「腫瘍」は、任意のサイズの、悪性又は潜在性悪性の新生物又は組織腫瘤を指し、原発性腫瘍及び続発性新生物を含む。固形腫瘍は、嚢胞若しくは液体部分を通常含まない異常な増殖又は組織腫瘤である。様々なタイプの固形腫瘍が、腫瘍を形成する細胞のタイプに従って命名される。固形腫瘍の例は、肉腫、癌、及びリンパ腫である。一般的に白血病(血液のがん又は血液がん)は、固形腫瘍を形成しない(国立がん研究所、がん用語辞書)。
【0105】
[00155]「腫瘍負荷」は「腫瘍量」とも呼ばれ、全身に分布する腫瘍体の総量を指す。腫瘍負荷は、リンパ節及び骨髄を含めた全身の、がん細胞の総数又は腫瘍(複数可)の総サイズを指す。腫瘍負荷は、例えば、腫瘍(複数可)の寸法を対象から取り出し、例えばノギスを使用して測定するか、画像化技術、例えば超音波、骨スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴画像法(MRI)スキャンを使用して体内で測定することなどによる、当技術分野で既知の様々な方法により決定可能である。
【0106】
[00156]「腫瘍サイズ」という語は、腫瘍の長さ及び幅として測定可能な腫瘍の総サイズを指す。腫瘍サイズは、例えば、腫瘍(複数可)の寸法を対象から取り出し、例えばノギスを使用して測定するか、画像化技術、例えば、骨スキャン、超音波、CT又はMRIスキャンを使用して体内で測定することなどによる、当技術分野で既知の様々な方法により決定可能である。
【0107】
[00157]「1次元irRC」は、Nishino M、Giobbie-Hurder A、Gargano M、Suda M、Ramaiya NH、Hodi FS.「Developing a Common Language for Tumor Response to Immunotherapy:Immune-related Response Criteria using Unidimensional measurements,」Clin Cancer Res.2013、19(14):3936~3943)に記載される一連の基準を指す。これらの基準では、各病変の最長径(cm)を利用する。
【0108】
[00158]本明細書で使用される場合、「可変領域」又は「V領域」は、異なる抗体間の配列において可変であるIgG鎖セグメントを意味する。可変領域は、軽鎖のKabat残基109~重鎖の113に及ぶ。
【0109】
[00159]「マルチRTK阻害剤」は、少なくとも以下のRTKのそれぞれのキナーゼ活性を阻害する低分子化合物を意味する:(i)VEGFR2、(ii)FGFR1、2、3及び4からなる群から選択される少なくとも1つのFGFR;並びに(iii)RET。マルチRTK阻害剤は、VEGFR1、VEGFR3、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体FGFR1、2、3及び4、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体アルファ(PDGFRα);並びにKITのキナーゼ活性も阻害することができる。マルチRTK阻害剤は、式(I)で表される構造:
【化23】

式中、RはC1~6アルキル又はC3~8シクロアルキルであり、Rは水素原子又はC1~6アルコキシであり、Rは水素原子又はハロゲン原子である、を有しえる。
【0110】
[00160]治療方法、医薬及び開示される使用により、レンバチニブとして知られる、以下の構造:
【化24】

の化合物、又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)としてマルチRTK阻害剤が提供される。
【0111】
II.方法、使用及び医薬
[00161]一態様において、PD-1アンタゴニスト及びマルチRTK阻害剤を含む併用療法を個体に投与するステップを含む、個体のがんを治療する方法が提供される。
【0112】
[00162]併用療法は、1つ又は複数のさらなる治療剤を含んでいてもよい。さらなる治療剤は、例えば、マルチRTK阻害剤以外の化学療法剤、生物療法剤、免疫原性剤(例えば、弱毒化がん細胞、腫瘍抗原、腫瘍由来の抗原又は核酸をパルス添加した樹状細胞などの抗原提示細胞、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、及び、GM-CSFなどであるがこれに限定されない免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトした細胞)とすることができる。
【0113】
[00163]化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;アセトゲニン(ブラタシン及びブラタシノンなど);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(詳細にはクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCBI-TMIを含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えばカリチアマイシン、好ましくはカリチアマイシンガンマ1I及びカリチアマイシンファイI1、例えば、Agnew、Chem.Intl.Ed.Engl.、33:183~186(1994)を参照のこと;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;及びネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウルノビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎ホルモン剤;フロリン酸(frolinic acid)などの葉酸補給剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジコン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシン及びアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテシン(T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジンなど);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル及びドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金アナログ;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;及び上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が含まれる。また、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン)を含む、抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM);例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、フォルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾール、及びアナストロゾールなどの、副腎でのエストロゲン産生を調節する、酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン薬;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体などの、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。
【0114】
[00164]本明細書で開示される併用療法の各治療剤は、単独で、又は、標準的な薬務に従って、治療剤、並びに1つ又は複数の薬学的に許容される担体、賦形剤及び希釈剤を含む医薬(本明細書では医薬組成物とも呼ばれる)として投与することができる。各治療剤は、式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体を別個に製剤化することにより調製可能であり、両者が同時に又は別個に投与されうる。さらに、いわゆるキット製剤を提供するため、2種の製剤が単一のパッケージに入れられてもよい。一部の構成では、両化合物が単一の製剤に含まれていてもよい。
【0115】
[00165]式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、参考文献17に記載される方法により産生可能である。薬学的に許容される塩の例には、無機酸塩、有機酸塩、無機塩基塩、有機塩基塩、及び酸性又は塩基性アミノ酸塩が含まれる。無機酸塩の好ましい例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが含まれる。有機酸塩の好ましい例には、酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩などが含まれる。無機塩基塩の好ましい例には、ナトリウム塩及びカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩及びマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;並びにアンモニウム塩が含まれる。有機塩基塩の好ましい例には、ジエチルアミン塩、ジエタノールアミン塩、メグルミン塩、N,N-ジベンジルエチレンジアミン塩などが含まれる。酸性アミノ酸塩の好ましい例には、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが含まれる。塩基性アミノ酸塩の好ましい例には、アルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩などが含まれる。より好ましい薬学的に許容される塩は有機酸塩であり、特に好ましい薬学的に許容される塩はメタンスルホン酸塩である。
【0116】
[00166]本明細書で開示される併用療法の各治療剤は、同時に(すなわち、同じ医薬として)、並行して(すなわち、任意の順序で、一方が投与された直後に他方が投与される独立した医薬として)又は連続的に任意の順序で投与することができる。連続投与は、併用療法の治療剤が異なる剤形である(1つの薬剤が錠剤又はカプセル剤であり、別の薬剤が滅菌した液剤である)場合、及び/又は異なる投与計画で投与される場合、例えば、化学療法剤が少なくとも毎日投与され、生物療法剤が週1回、2週間毎に1回、又は3週間毎に1回など、より低い頻度で投与される場合に特に有用である。
【0117】
[00167]一部の例では、マルチRTK阻害剤がPD-1アンタゴニスト投与前に投与され、その他の例では、マルチRTK阻害剤がPD-1アンタゴニスト投与後に投与される。
【0118】
[00168]一部の例では、併用療法の治療剤の少なくとも1つが、その薬剤が同じがんを治療するための単剤療法として使用されるときに通常使用されるものと同じ投薬レジメン(用量、頻度及び治療期間)を使用して投与される。その他の例では、患者は、併用療法の治療剤の少なくとも1つを、その薬剤が単剤療法として使用されるときよりも少ない総量、例えば、より小さい用量、より頻度の低い投与、及び/又はより短い治療期間で投与される。
【0119】
[00169]本明細書で開示される併用療法の各低分子治療剤は、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤若しくはカプセル剤などの固形製剤の形態で、又は液剤、ゼリー剤、シロップ剤などの形態で経口投与することができる。本明細書で開示される併用療法の各低分子治療剤は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸、局所、及び経皮投与経路を含めて非経口的に投与することもできる。
【0120】
[00170]本明細書で開示される併用療法は、腫瘍を除去するための外科手術の前又は外科手術の後に使用してもよく、放射線療法前、放射線療法中又は放射線療法後に使用してもよい。
【0121】
[00171]一部の例では、本明細書で開示される併用療法は、生物療法剤又は化学療法剤による治療を以前に受けたことがない、すなわち治療未経験である患者に投与される。その他の例では、併用療法は、生物療法剤又は化学療法剤による以前の療法後に持続性応答を実現しなかった、すなわち治療経験済みの患者に投与される。
【0122】
[00172]本明細書で開示される併用療法は、触診、又は磁気共鳴画像法(MRI)、超音波、若しくはコンピュータ体軸断層撮影(CAT)スキャンなどの、当技術分野で周知の画像化技術によって発見されるのに十分な大きさの腫瘍を治療するのに通常使用される。
【0123】
[00173]本明細書で開示される併用療法は、好ましくはPD-L1発現について陽性を示すがんを有するヒト患者に投与される。PD-L1発現は、好ましくは、患者から取り出された腫瘍試料のFFPE又は凍結された組織切片に対し、IHCアッセイで診断用抗ヒトPD-L1抗体、又はその抗原結合フラグメントを使用して検出される。通常、PD-1アンタゴニスト及びマルチRTK阻害剤による治療の開始前に患者から取り出された腫瘍組織試料でのPD-L1発現について決定するため、患者の医師は診断検査を指示するが、例えば治療周期終了後など、治療開始後の任意のタイミングで最初の又はその後の診断検査を医師が指示することが想定される。
【0124】
[00174]本明細書で開示される併用療法のための投薬レジメン(本明細書では投与レジメンとも呼ばれる)の選択は、実体の血清又は組織の代謝回転速度、症状のレベル、実体の免疫原性、及び治療を受ける個体の標的細胞、組織又は器官の到達性を含む、数種の因子によって決まる。投薬レジメンにより、許容されるレベルの副作用と調和して、患者に送達される各治療剤の量が最大になることが好ましい。したがって、組合せにおける各生物療法剤及び化学療法剤の投与量及び投与頻度は、ある程度は、特定の治療剤、治療を受けるがんの重症度、及び患者の特性によって決まる。抗体、サイトカイン、及び低分子の適切な用量を選択するにあたってのガイダンスが利用可能である。例えば、Wawrzynczak(1996)ANTIBODY THERAPY、Bios Scientific Pub.Ltd、Oxfordshire、UK;Kresina(編)(1991)MONOCLONAL ANTIBODIES、CYTOKINES AND ARTHRITIS、Marcel Dekker、New York、NY;Bach(編)(1993)MONOCLONAL ANTIBODIES AND PEPTIDE THERAPY IN AUTOIMMUNE DISEASES、Marcel Dekker、New York、NY;Baertら(2003)New Engl.J.Med.348:601~608;Milgromら(1999)New Engl.J.Med.341:1966~1973;Slamonら(2001)New Engl.J.Med.344:783~792;Beniaminovitzら(2000)New Engl.J.Med.342:613~619;Ghoshら(2003)New Engl.J.Med.348:24~32;Lipskyら(2000)New Engl.J.Med.343:1594~1602;PHYSICIANS’DESK REFERENCE 2003(Physicians’ Desk Reference、第57版);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;第57版(2002年11月)を参照のこと。適切な投薬レジメンの決定は、例えば、治療に影響を及ぼすことが当技術分野で知られているか疑われているパラメータ若しくは因子、又は治療に影響を及ぼすことが予測されるパラメータ若しくは因子を使用して臨床医が行ってもよく、例えば、患者の病歴(例えば以前の療法)、治療されるがんのタイプ及びステージ、並びに併用療法の治療剤のうちの1つ又は複数に対する応答についてのバイオマーカーによって決まる。
【0125】
[00175]本明細書で開示される併用療法の生物療法剤は、持続注入、又は、例えば毎日、1日おき、1週間あたり3回、若しくは1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、毎月1回、隔月で1回などの間隔を置いた用量によって投与されてもよい。一般的に、毎週の総用量は少なくとも0.05μg/kg体重、0.2μg/kg体重、0.5μg/kg体重、1μg/kg体重、10μg/kg体重、100μg/kg体重、0.2mg/kg体重、1.0mg/kg体重、2.0mg/kg体重、10mg/kg体重、25mg/kg体重、50mg/kg体重又はそれ超である。例えば、Yangら(2003)New Engl.J.Med.349:427~434;Heroldら(2002)New Engl.J.Med.346:1692~1698;Liuら(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451~456;Portieljiら(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:133~144を参照のこと。
【0126】
[00176]式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩の用量は、患者の症状の程度、年齢、性別、及び体重、感受性の差、投与経路、投与時間及び投与間隔、医薬製剤のタイプなどに応じて適切に選択することができる。通常、経口投与が成人(体重60kg)に対して実施される場合、用量は1日あたり1~600mg、好ましくは5~400mg、より好ましくは5~200mgである。用量は一度に投与されてもよく、1日あたり2~3回で与えられる、より小さい用量に分けられてもよい。
【0127】
[00177]併用療法にPD-1アンタゴニストとして抗ヒトPD-1mAbを使用する一部の例では、投薬レジメンは、治療過程を通して、約14日(±2日)又は約21日(±2日)又は約30日(±2日)の間隔を置いて、1、2、3、5又は10mg/kgの用量で抗ヒトPD-1mAbを投与するステップを含む。抗PD-1抗体の投与量は、上記と同じように適切に選択することができる。通常、静脈内投与が成人(体重60kg)に対して実施される場合、用量は、3週間毎に1回で6週間周期(合計2回分用量)の計画で、2mg/kgである。抗体は適切な間隔を置いて、1~10周期の間投与される。
【0128】
[00178]併用療法にPD-1アンタゴニストとして抗ヒトPD-1mAbを使用するその他の例では、投薬レジメンは、患者内用量を漸増させつつ約0.005mg/kg~約10mg/kgの用量で抗ヒトPD-1mAbを投与するステップを含む。投与の間隔は、例えば、1回目と2回目の投与の間で約30日(±2日)、2回目と3回目の投与の間で約14日(±2日)と、次第に短縮させてもよい。特定の実施形態において、投与間隔は、2回目の投与以降の投与で約14日(±2日)である。
【0129】
[00179]特定の例では、対象が、本明細書に記載されるPD-1アンタゴニストのいずれかを含む医薬の静脈内(IV)注入液を投与される。
【0130】
[00180]一部の例では、併用療法のPD-1アンタゴニストが好ましくはニボルマブであり:1mg/kgQ2W、2mg/kgQ2W、3mg/kgQ2W、5mg/kgQ2W、10mgQ2W、1mg/kgQ3W、2mg/kgQ3W、3mg/kgQ3W、5mg/kgQ3W、及び10mgQ3Wからなる群から選択される用量で静脈内投与される。
【0131】
[00181]一部の例では、併用療法のPD-1アンタゴニストは、好ましくはペムブロリズマブ、ペムブロリズマブ変異体又はペムブロリズマブバイオシミラーであり、1mg/kgQ2W、2mg/kgQ2W、3mg/kgQ2W、5mg/kgQ2W、10mgQ2W、1mg/kgQ3W、2mg/kgQ3W、3mg/kgQ3W、5mg/kgQ3W、10mgQ3W、及びこれらの用量のいずれかの均一用量の同等物、すなわち、200mgQ3Wなどからなる群から選択される用量で、液体医薬として投与される。一部の例では、ペムブロリズマブは、10mMヒスチジン緩衝液pH5.5中に25mg/mlペムブロリズマブ、7%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80を含む液体医薬として提供される。
【0132】
[00182]一部の例では、選択された用量のペムブロリズマブが、25~40分間、又は約30分間の時間期間をかけてIV注入により投与される。
【0133】
[00183]レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)と組み合わせるペムブロリズマブの最適な用量は、これらの薬剤の一方又は両方の用量漸増又は用量漸減により特定可能である。一部の例では、併用療法は、ペムブロリズマブが3週間毎に1回、200mgでIVにより投与され、レンバチニブメシル酸塩が、それぞれレンバチニブとして(a)1日あたり24mgで経口的に、(b)1日あたり20mgで経口的に、又は(c)1日あたり14mgで経口的に投与される、21日間の治療周期を含む。一実施形態において、患者はまず、少なくとも1回のDLTが観察されるまで、IVによるペムブロリズマブ200mg、3週間毎に1回投与、及び経口的なレンバチニブメシル酸塩1日あたり24mg(レンバチニブとして)による治療を受け、次いでレンバチニブメシル酸塩の投与量が1日あたり20又は14mg(それぞれレンバチニブとして)に減少され、ペムブロリズマブ用量はペムブロリズマブ200mg、3週間毎に1回投与のままである。
【0134】
[00184]例示的投薬レジメンとして、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩が、21日周期で毎日ほぼ同じ時間に、食物とともに又は食物無しで、1日1回水により経口的に投与されうる。レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩は、4mg及び10mg(それぞれレンバチニブとして)カプセル剤として提供されてもよい。各周期の1日目(D1)に、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩が、ペムブロリズマブ投与終了後約1時間以内に投与されうる。ペムブロリズマブは、使い捨てのバイアルで、滅菌済みで保存料不含の白色~くすんだ白色の凍結乾燥散剤として提供されうる。各バイアルは、静脈内注入のため、もどされ希釈されうる。もどした溶液は、2mLにつきペムブロリズマブ約50mgを含みうる。一部の例では、ペムブロリズマブは、静脈内注入のため希釈が必要な、滅菌済みで保存料不含の透明~わずかに乳白色、無色~わずかに黄色の溶液として提供されうる。各バイアルは、溶液4mL中にペムブロリズマブ100mgを含みうる。溶液は、1mLにつきペムブロリズマブ25mgを含みうる。ペムブロリズマブは、30分間の静脈内注入液として、3週間毎に1回、用量200mgで投与されうる(例えば25分間~40分間)。
【0135】
[00185]経口用の固形製剤が調製される場合、薬学的に許容されるビヒクル、及び、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、香味剤などを、主成分、すなわち式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び抗PD-1抗体に添加し、その後、従来の方法に従って錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤などを調製することができる。ビヒクルの例には、ラクトース、トウモロコシデンプン、白糖、グルコース、ソルビトール、結晶セルロース及び二酸化ケイ素が含まれる。結合剤の例には、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びシリカが含まれる。着色剤の例には、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、コチニール、カルミン、及びリボフラビンが含まれる。香味剤の例には、ココアパウダー、アスコルビン酸、酒石酸、ペパーミント油、ボルネオール、及びシナモンパウダーが含まれる。これらの錠剤及び顆粒剤は、必要に応じてコーティングされてもよい。
【0136】
[00186]一部の例では、患者は少なくとも24週間、例えば、8回の3週間周期で併用療法による治療を受ける。一部の例では、併用療法による治療は、患者がPD又はCRの証拠を示すまで継続される。
【0137】
[00187]一部の例では、患者は、NSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマと診断された場合に、本明細書で開示される併用療法による治療に選ばれる。
【0138】
[00188]上記のPD-1アンタゴニスト及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬が提供される。PD-1アンタゴニストが生物療法剤、例えばmAbである場合、従来の細胞培養及び回収/精製技術を使用して、CHO細胞でアンタゴニストを産生させることができる。
【0139】
[00189]一部の例では、PD-1アンタゴニストとして抗PD-1抗体を含む医薬が、液体製剤として提供されるか、使用前に注射用滅菌水で凍結乾燥散剤をもどすことにより調製されうる。例えば、国際公開第2012/135408号では、任意の治療方法、医薬、及び開示される使用に適した、ペムブロリズマブを含む液体医薬及び凍結乾燥医薬の調製について記載している。一部の例では、ペムブロリズマブを含む医薬が、溶液4ml中にペムブロリズマブ約100mgを含むガラスバイアルで提供される。溶液は1mLにつきペムブロリズマブ25mgを含み:L-ヒスチジン(1.55mg)、ポリソルベート80(0.2mg)、スクロース(70mg)、及び米国薬局方(USP)協会の注射用水で製剤化される。溶液は、IV注入のため希釈する必要がある。
【0140】
[00190]注射剤が調製される場合、pH調整剤、緩衝剤、懸濁剤、溶解剤、安定剤、等張剤、保存料などを、必要に応じて主成分に添加し、静脈内、皮下若しくは筋肉内注射剤、又は静脈内点滴注入液を調製することができる。必要に応じて、これらは従来の方法により凍結乾燥製品に調製されてもよい。懸濁剤の例には、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートが含まれる。溶解剤の例には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチンアミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、及びグリセリン脂肪酸エステルが含まれる。安定剤の例には、亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸ナトリウムが含まれる。保存料の例には、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、及びクロロクレゾールが含まれる。
【0141】
[00191]レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)、及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬が提供される。一部の例では、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)が、4mg又は10mg(それぞれレンバチニブとして)カプセル剤として提供され、炭酸カルシウム、マンニトール、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びタルクを用いて製剤化される。
【0142】
[00192]本明細書に記載される、PD-1アンタゴニスト、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)医薬は、第1の容器及び第2の容器及び添付文書を含むキットとして提供されてもよい。第1の容器は、PD-1アンタゴニストを含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、第2の容器は、マルチRTK阻害剤を含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、添付文書又はラベルは、医薬を使用して患者のがんを治療するための指示書を含む。第1及び第2の容器は、同じ又は異なる形状(例えば、バイアル、シリンジ及びビン)及び/又は材質(例えば、プラスチック又はガラス)から構成されていてもよい。キットは、希釈剤、フィルター、IVバッグ及びライン、針及びシリンジなどの、医薬を投与するのに有用でありうるその他の物品をさらに含んでいてもよい。キットは好ましくは、抗PD-1抗体であるPD-1アンタゴニストを提供することができ、指示書には、医薬が、IHCアッセイでPD-L1発現について陽性を示すがんを有する患者を治療するのに使用するためのものであることが明記されていてもよい。
【0143】
[00193]以下に列挙する例示的な具体的な治療方法、医薬、及び使用を含めた、本明細書で開示されるこれらの及びその他の態様は、本明細書に含まれる教示から明らかである。
【0144】
具体的な治療方法、医薬、及び使用
1.個体のがんを治療するための方法であって、PD-1アンタゴニスト及びマルチRTK阻害剤を含む併用療法を個体に投与するステップを含む方法。
2.PD-1アンタゴニストがモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、実施形態1の方法。
3.マルチRTK阻害剤がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩であり、PD-1アンタゴニストがMPDL3280Aでない、実施形態1又は2の方法。
4.個体のがんを治療するためにマルチRTK阻害剤と組み合わせて使用するための、MPDL3280AでないPD-1アンタゴニストを含む医薬であって、PD-1アンタゴニストがモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、医薬。
5.個体のがんを治療するために、MPDL3280AでないPD-1アンタゴニストと組み合わせて使用するための、マルチRTK阻害剤を含む医薬。
6.薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、実施形態4又は5の医薬。
7.マルチRTK阻害剤と組み合わせて投与される場合に個体のがんを治療するための医薬の製造における、MPDL3280AでないPD-1アンタゴニストの使用。
6.MPDL3280AでないPD-1アンタゴニストと組み合わせて投与される場合に個体のがんを治療するための医薬の製造における、マルチRTK阻害剤の使用。
7.個体のがんを治療するための医薬の製造における、MPDL3280AでないPD-1アンタゴニスト、及びマルチRTK阻害剤の使用。
8.第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットであって、第1の容器が、MPDL3280Aでない抗PD-1アンタゴニストを含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、第2の容器が、マルチRTK阻害剤を含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、添付文書が、医薬を使用して個体のがんを治療するための指示書を含むキット。
9.指示書には、医薬が、免疫組織化学的(IHC)アッセイでPD-L1発現について陽性を示すがんを有する個体を治療するのに使用するためのものであることが明記されている、実施形態8のキット。
10.個体がヒトであり、PD-1アンタゴニストが、ヒトPD-L1に特異的に結合し、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断するモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、実施形態1~9のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
11.PD-1アンタゴニストがBMS-936559、MEDI4736、又はMSB0010718Cである、実施形態9の方法、医薬、使用又はキット。
12.個体がヒトであり、PD-1アンタゴニストが、ヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトPD-L1のヒトPD-1への結合を遮断するモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、実施形態1~9のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
13.PD-1アンタゴニストが、ヒトPD-L2のヒトPD-1への結合も遮断する、実施形態12の方法、医薬、使用又はキット。
14.モノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントが:(a)配列番号1、2及び3の軽鎖CDR、並びに配列番号4、5及び6の重鎖CDR;又は(b)配列番号7、8及び9の軽鎖CDR、並びに配列番号10、11及び12の重鎖CDRを含む、実施形態13の方法、医薬、使用又はキット。
15.モノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントが、配列番号7、8及び9の軽鎖CDR、並びに配列番号10、11及び12の重鎖CDRを含む、実施形態13の方法、医薬、使用又はキット。
16.PD-1アンタゴニストが、重鎖及び軽鎖を含む抗PD-1モノクローナル抗体であり、重鎖が配列番号21を含み、軽鎖が配列番号22を含む、実施形態13の方法、医薬、使用又はキット。
17.PD-1アンタゴニストが、重鎖及び軽鎖を含む抗PD-1モノクローナル抗体であり、重鎖が配列番号23を含み、軽鎖が配列番号24を含む、実施形態13の方法、医薬、使用又はキット。
18.がんが固形腫瘍である、実施形態10~17のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
19.がんが、膀胱がん、乳がん、腎明細胞がん、頭部/頸部扁平上皮細胞癌、肺扁平上皮細胞癌、悪性メラノーマ、非小細胞肺がん(NSCLC)、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎細胞癌(RCC)、小細胞肺がん(SCLC)又はトリプルネガティブ乳がんである、実施形態10~17のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
20.がんが、NSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマである、実施形態10~17のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
21.個体が、NSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマで以前に治療を受けたことがない、実施形態10~17のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
23.がんが、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、又は小リンパ球性リンパ腫(SLL)である、実施形態10~17のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
24.がんがヒトPD-L1について陽性を示す、実施形態10~23のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
25.ヒトPD-L1の発現が上昇している、実施形態24の方法、医薬、使用又はキット。
26.PD-1アンタゴニストがペムブロリズマブ、ペムブロリズマブ変異体、ペムブロリズマブバイオシミラー又はニボルマブである、実施形態13の方法、医薬、使用又はキット。
27.ペムブロリズマブが、10mMヒスチジン緩衝液pH5.5中に25mg/mlペムブロリズマブ、7%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80を含む液体医薬として製剤化されている、実施形態26の方法、医薬、使用又はキット。
28.マルチRTK阻害剤が、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)である、実施形態1~27のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
29.マルチRTK阻害剤がレンバチニブメシル酸塩であり、炭酸カルシウム、マンニトール、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びタルクとともに製剤化されている、実施形態1~28のいずれかの方法、医薬、使用又はキット。
30.がんと診断されたヒト個体を治療するための方法であって、ペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)を含む併用療法を個体に投与するステップを含み、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)が、1日用量でそれぞれレンバチニブとして24mg、20mg又は14mgで投与され、ペムブロリズマブが3週間毎に1回、200mgで投与される、方法。
31.レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)を、1日用量でそれぞれレンバチニブとして24mg、20mg又は14mgで、及びペムブロリズマブを3週間毎に1回、200mgで個体に投与するステップを含む方法によりヒト個体のがんを治療するために、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)と組み合わせて使用するための、ペムブロリズマブを含む医薬。
32.レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)を、1日用量でそれぞれレンバチニブとして24mg、20mg又は14mgで、及びペムブロリズマブを3週間毎に1回、200mgで個体に投与するステップを含む方法によりヒト個体のがんを治療するために、ペムブロリズマブと組み合わせて使用するための、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩(例えばレンバチニブメシル酸塩)を含む医薬。
33.がんがNSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマである、実施形態30~32のいずれかの方法又は医薬。
34.個体が、NSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌又はメラノーマで以前に治療を受けたことがない、実施形態33の方法又は医薬。
35.併用療法投与前に個体から取り出されたがんの組織切片が、PD-L1発現について陽性を示した、実施形態31~34のいずれかの方法又は医薬。
36.組織切片の腫瘍細胞のうち少なくとも50%が、免疫組織化学的(IHC)アッセイでPD-L1発現について陽性を示した、実施形態35の方法又は医薬。
37.IHCアッセイで抗体22C3を使用してPD-L1発現を検出した、実施形態36の方法又は医薬。
38.ペムブロリズマブが、IV注入により25~40分間又は約30分間投与される、実施形態31~37のいずれかの方法又は医薬。
【0145】
一般的な方法
[00194]分子生物学における標準的な方法が、Sambrook、Fritsch及びManiatis(1982及び1989 第2版、2001 第3版)MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Sambrook及びRussell(2001)MOLECULAR CLONING、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Wu(1993)RECOMBINANT DNA、Vol.217、Academic Press、San Diego、CA)に記載されている。標準的な方法は、Ausbelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology、Vols.1~4、John Wiley及びSons、Inc.New York、NYにも掲載されており、細菌細胞でのクローニング及びDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞及び酵母でのクローニング(Vol.2)、複合糖質及びタンパク質発現(Vol.3)、並びに生物情報学(Vol.4)について記載されている。
【0146】
[00195]免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心処理、及び結晶化を含むタンパク質精製方法が記載されている(Coliganら(2000)CURRENT PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE、Vol.1、John Wiley及びSons、Inc.、New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coliganら(2000)Current PROTOCOLS IN PROTEIN SCIENCE、Vol.2、John Wiley及びSons、Inc.、New York;Ausubelら(2001)CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Vol.3、John Wiley及びSons、Inc.、NY、NY、pp.16.0.5~16.22.17;Sigma-Aldrich、Co.(2001)PRODUCTS FOR LIFE SCIENCE RESEARCH、St.Louis、MO;pp.45~89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory、Piscataway、N.J.、pp.384~391を参照のこと)。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の産生、精製、及びフラグメント化が記載されている(Coliganら(2001)CURRENT PROTCOLS IN IMMUNOLOGY、Vol.1、John Wiley及びSons、Inc.、New York;Harlow及びLane(1999)USING ANTIBODIES、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY;Harlow及びLane、上記参照)。リガンド/受容体相互作用の特徴を決定する標準的な技術が利用可能である(例えば、Coliganら(2001)CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY、Vol.4、John Wiley、Inc.、New Yorkを参照のこと)。
【0147】
[00196]モノクローナル、ポリクローナル、及びヒト化抗体が調製可能である(例えば、Sheperd及びDean(編)(2000)Monoclonal Antibodies、Oxford Univ.Press、New York、NY;Kontermann及びDubel(編)(2001)Antibody Engineering、Springer-Verlag、New York;Harlow及びLane(1988)Antibodies A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY、pp.139~243;Carpenterら(2000)J.Immunol.165:6205;Heら(1998)J.Immunol.160:1029;Tangら(1999)J.Biol.Chem.274:27371~27378;Bacaら(1997)J.Biol.Chem.272:10678~10684;Chothiaら(1989)Nature 342:877~883;Foote及びWinter(1992)J.Mol.Biol.224:487~499;米国特許第6,329,511号を参照のこと)。
【0148】
[00197]ヒト化の別の選択肢は、ファージが呈するヒト抗体ライブラリ、又はトランスジェニックマウスのヒト抗体ライブラリを使用することである(Vaughanら(1996)Nature Biotechnol.14:309~314;Barbas(1995)Nature Medicine 1:837~839;Mendezら(1997)Nature Genetics 15:146~156;Hoogenboom及びChames(2000)Immunol.Today 21:371~377;Barbasら(2001)Phage Display:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York;Kayら(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual、Academic Press、San Diego、CA;de Bruinら(1999)Nature Biotechnol.17:397~399)。
【0149】
[00198]抗原の精製は、抗体の生成には必要でない。目的の抗原を有する細胞で動物を免疫化することができる。次いで、免疫化された動物から脾細胞を単離し、脾細胞を骨髄腫細胞株と融合させてハイブリドーマを産生することができる(例えば、Meyaardら(1997)Immunity 7:283~290;Wrightら(2000)Immunity 13:233~242;Prestonら、上記参照;Kaithamanaら(1999)J.Immunol.163:5157~5164を参照のこと)。
【0150】
[00199]抗体は、例えば、低分子薬物、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートすることができる。抗体は、治療、診断、キット又はその他の目的において有用であり、例えば、色素、放射性同位元素、酵素、又は金属、例えばコロイド金と結合させた抗体を含む(例えば、Le Doussalら(1991)J.Immunol.146:169~175;Gibelliniら(1998)J.Immunol.160:3891~3898;Hsing及びBishop(1999)J.Immunol.162:2804~2811;Evertsら(2002)J.Immunol.168:883~889を参照のこと)。
【0151】
[00200]蛍光標識細胞分取(FACS)を含むフローサイトメトリーの方法が利用可能である(例えば、Owens、ら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice、John Wiley及びSons、Hoboken、NJ;Givan(2001)Flow Cytometry、第2版;Wiley-Liss、Hoboken、NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry、John Wiley及びSons、Hoboken、NJを参照のこと)。例えば診断試薬として使用するための、核酸プライマー及びプローブを含む核酸、ポリペプチド、並びに抗体を修飾するのに適した蛍光試薬が利用可能である(Molecular Probesy(2003)Catalogue、Molecular Probes、Inc.、Eugene、OR;Sigma-Aldrich(2003)Catalogue、St.Louis、MO)。
【0152】
[00201]免疫系組織診断の標準的な方法が記載されている(例えば、Muller-Harmelink(編)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology、Springer Verlag、New York,NY;Hiatt、ら(2000)Color Atlas of Histology、Lippincott、Williams、及びWilkins、Phila、PA;Louis、ら(2002)Basic Histology:Text and Atlas、McGraw-Hill、New York、NYを参照のこと)。
【0153】
[00202]例えば抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能ドメイン、グリコシル化部位、及び配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージ及びデータベースが利用可能である(例えば、GenBank、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax、Inc、Bethesda、MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys、Inc.、San Diego、CA);デサイファー(DeCypher)(登録商標)(TimeLogic Corp.、Crystal Bay、Nevada);Menne、ら(2000)Bioinformatics 16:741~742;Menne、ら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741~742;Wren、ら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177~181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17~21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683~4690を参照のこと)。
【0154】
【表3】
【実施例0155】
[00203]実施例1:レンバチニブ及び抗PD-1抗体の投与による抗腫瘍効果
【0156】
[00204]10%ウシ胎児血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM培養培地(高グルコースタイプ)を使用して、マウス肺がん細胞株LL/2(LLc1)(ATCC番号:CRL-1642)を培養した。次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を使用して、2.0x10細胞/mLの濃度を有する細胞懸濁液を調製した。7週齢マウス(C57BL/6J、メス、日本チャールス・リバー株式会社)それぞれの体の右側面に、細胞懸濁液を用量0.1mLで皮下移植した。移植から8日後、電子デジタルノギス(デジマチック(Digimatic)(商標)キャリパ;株式会社ミツトヨ)を使用して、目的の腫瘍の短径及び長径を測定した。以下の方程式を使用して腫瘍体積TVを算出した。
腫瘍体積TV(mm)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2。
【0157】
[00205]投与1日目の腫瘍体積に基づき、腫瘍体積の平均値がほぼ同じとなるように群分けを実施した。注射用水(大塚製薬)を使用してレンバチニブの1mg/ml溶液を調製し、用量0.2mL/20gマウス体重で1日1回、14日間経口投与した。PBSで希釈した2.5mg/mL抗マウスPD-1抗体(クローン:RMP1-14,BioXCell、カタログ#:BE0146)を含む投与試料0.2mLを、(投与量500μg/匹で)3日毎に1回で合計5回(群分けの日を1日目と設定して、1日目、4日目、7日目、10日目、及び13日目に)腹腔内投与した。対照群には、大塚注射用水を用量0.2mL/20gマウス体重で1日1回、14日間経口投与した。マウス5匹を含む各群を使用して実験を行った。最終投与翌日(15日目)、対照群、レンバチニブ投与群、抗マウスPD-1抗体投与群、及び組合せ投与群についての各腫瘍体積(TV)を決定した。腫瘍体積を対数変換して得られた値を使用して統計解析を実施した。
【0158】
[00206]皮下LL/2(LLc1)移植モデルで、レンバチニブ及び抗マウスPD-1抗体の組合せは、いずれかが単独で投与された場合よりも有意に高い抗腫瘍効果を示した。例えば15日目に、組合せ群は、対照群及び抗PD-1群と比較して2.5倍超小さい腫瘍体積を有し、レンバチニブ群と比較して1.5倍超小さい腫瘍体積を有していた。毎日の腫瘍体積変化を表1に示す。さらに、最終投与翌日の腫瘍体積を図8に示す。
【0159】
[00207]
【表4】
【0160】
[00208]図9は、結腸がんマウスモデルにおける、処理開始から11日目の抗がん又は抗腫瘍効果を示す。10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培養培地を使用して、マウス結腸癌細胞株CT26.WT(ATCC番号:CRL-2638)を培養した。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)を使用して、3.0x10細胞/mLの濃度を有する細胞懸濁液を調製した。7週齢マウス(BALB/cAnNCrlCrlj、メス、日本チャールス・リバー株式会社)それぞれの体の右側面に、細胞懸濁液を用量0.1mLで皮下移植した。移植から8日後、電子デジタルノギス(デジマチック(商標)キャリパ;株式会社ミツトヨ)を使用して、目的の腫瘍の短径及び長径を測定した。以下の方程式を使用して腫瘍体積TVを算出した。
腫瘍体積TV(mm)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2。
【0161】
[00209]投与1日目の腫瘍体積に基づき、腫瘍体積の平均値がほぼ同じとなるように群分けを実施した。レンバチニブ単独処理群、同時の組合せ処理群、及びレンバチニブ後PD-1Ab群のそれぞれについては、注射用水(大塚製薬)を使用してレンバチニブメシル酸塩の1mg/ml溶液を調製し、用量0.2mL/20gマウス体重で1日1回、14日間経口投与した。PD-1Ab単独処理群及び同時の組合せ処理群については、PBSで希釈した2.5mg/mL抗マウスPD-1抗体(クローン:RMP1-14,BioXCell,カタログ#:BE0146)を含む投与試料0.2mLを、(投与量500μg/匹で)3日毎に1回で合計5回(群分けの日を1日目と設定して、1日目、4日目、7日目、10日目、及び13日目に)腹腔内投与した。レンバチニブ後PD-1Ab群については、同じ用量の抗マウスPD-1抗体を3日毎に1回で8日目から合計3回(8日目、11日目、14日目に)腹腔内に投与した。
【0162】
[00210]対照群には、大塚注射用水を用量0.2mL/20gマウス体重で1日1回、14日間経口投与した。マウス5匹を含む各群を使用して実験を行った。最終投与翌日(15日目)、対照群、レンバチニブ投与群、抗マウスPD-1抗体投与群、及び組合せ投与群についての各腫瘍体積TVを決定した。腫瘍体積を対数変換して得られた値を使用して統計解析を実施した。上記の実験と一致して、レンバチニブ及び抗PD-1の組合せは、二者間の相乗効果を実証している。予想外なことに、レンバチニブのみを7日間投与し、その後レンバチニブ及び抗PD-1を投与すると、腫瘍体積の減少に対し、レンバチニブ及び抗PD-1の併用投与よりもいっそう高い効果が示された。
【0163】
[00211]実施例2:レンバチニブメシル酸塩及び抗PD-L1抗体の同時投与による抗腫瘍効果
【0164】
[00212]10%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI1640培養培地を使用して、マウス結腸癌細胞株CT26.WT(ATCC番号:CRL-2638)を培養した。ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)を使用して、3.0x10細胞/mLの濃度を有する細胞懸濁液を調製した。7週齢マウス(BALB/cAnNCrlCrlj、メス、日本チャールス・リバー株式会社)それぞれの体の右側面に、細胞懸濁液を用量0.1mLで皮下移植した。移植から8日後、電子デジタルノギス(デジマチック(商標)キャリパ;株式会社ミツトヨ)を使用して、目的の腫瘍の短径及び長径を測定した。以下の方程式を使用して腫瘍体積TVを算出した。
腫瘍体積TV(mm)=長径(mm)×短径(mm)×短径(mm)/2。
【0165】
[00213]投与1日目の腫瘍体積に基づき、腫瘍体積の平均値がほぼ同じとなるように群分けを実施した。注射用水(大塚製薬)を使用してレンバチニブメシル酸塩の1mg/ml溶液を調製し、用量0.2mL/20gマウス体重で1日1回、14日間経口投与した。PBSで希釈した2.5mg/mL抗マウスPD-L1抗体を含む投与試料0.2mLを、(投与量500μg/匹で)3日毎に1回で合計5回(群分けの日を1日目と設定して、1日目、4日目、7日目、10日目、及び13日目に)腹腔内投与した。対照群には、大塚注射用水を用量0.2mL/20gマウス体重で1日1回、14日間経口投与した。マウス5匹を含む各群を使用して実験を行った。最終投与翌日(15日目)、対照群、レンバチニブ投与群、抗マウスPD-L1抗体投与群、及び組合せ投与群についての各腫瘍体積TVを決定した。腫瘍体積を対数変換して得られた値を使用して統計解析を実施した。
【0166】
[00214]皮下CT26.WT移植モデルで、レンバチニブメシル酸塩及び抗マウスPD-L1抗体の組合せは、いずれかが単独で投与された場合よりも有意に高い抗腫瘍効果を示した。例えば、組合せ群は、レンバチニブ又は抗PD-L1による処理を受けた群よりも少なくとも2倍超小さい腫瘍体積を有していた。毎日の腫瘍体積変化を表2に示す。さらに、最終投与翌日の腫瘍体積を図8に示す。
【0167】
[00215]
【表5】
【0168】
[00216]図10は、対照群、レンバチニブ又はPD-L1別々、並びにレンバチニブ及びPD-L1の組合せについての、投与後日数毎にプロットした腫瘍体積のグラフを示す。PD-L1とレンバチニブの組合せは、腫瘍体積に関して相乗効果を示した。効果は処理開始から4日後には認められ、8日目及び11日目までには非常に顕著となり、レンバチニブ及びPD-L1の併用治療を受けたマウスは、11日目に対照群の腫瘍体積のほぼ3分の1のサイズの腫瘍体積を示している。
【0169】
参考文献
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23. Iwai et al., PNAS, 2002, 99(19), 12293-7.
[00217]本明細書で引用される参考文献は全て、個々の刊行物、データベース登録(例えばGenbank配列又はGeneID登録)、特許出願、又は特許がそれぞれ、参照により組み込まれることが明確且つ個別に示される場合と同程度に、参照により組み込まれる。参照による組込みについての明記は、出願者により、米国特許法施行規則第1.57条第(b)項(1)に従って、いずれの個々の刊行物、データベース登録(例えばGenbank配列又はGeneID登録)、特許出願、又は特許にも関連することが意図され、このような引用が参照による組込みについての専用の明記のすぐ隣になくとも、そのそれぞれが米国特許法施行規則第1.57条第(b)項(2)に従って明確に識別される。参照による組込みについての専用の明記を、もしあれば明細書内に含むことで、参照による組込みについてのこの一般的な明記が弱められることはない。本明細書での参考文献の引用は、参考文献が関連先行技術であると認めることとは意図されず、これらの刊行物又は文書の内容又は日付に関して認めるということにもならない。
【0170】
本発明の好適な実施形態は以下の通りである。
[1]個体のがんを治療するための方法であって、プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)アンタゴニスト及びマルチ受容体チロシンキナーゼ(マルチRTK)阻害剤を含む併用療法を個体に投与するステップを含み、アンタゴニストがMPDL3280Aでない、方法。
[2]個体がヒトである、項[1]に記載の方法。
[3]がんが固形腫瘍である、項[1]又は[2]に記載の方法。
[4]がんが、甲状腺がん、肝細胞癌(HCC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、腎細胞癌(RCC)、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌、神経膠芽腫、又はメラノーマである、項[1]又は[2]に記載の方法。
[5]アンタゴニストがモノクローナル抗体、又はその抗原結合フラグメントである、項[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]アンタゴニストが抗PD-1抗体である、項[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]アンタゴニストがペムブロリズマブ又はニボルマブである、項[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]マルチRTK阻害剤が、構造:
【化25】

を有する4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド、又はその薬学的に許容される塩である、項[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]アンタゴニストがペムブロリズマブであり、マルチRTK阻害剤がレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩である、項[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]ペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法が、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に投与される、項[9]に記載の方法。
[11]ペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法が、少なくとも7日間のレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩の投与後に投与される、項[10]に記載の方法。
[12]ペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含む併用療法が、ペムブロリズマブの投与後に投与される、項[9]に記載の方法。
[13]第1の容器、第2の容器及び添付文書を含むキットであって、第1の容器が、プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)アンタゴニストを含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、第2の容器が、マルチRTK阻害剤を含む少なくとも1回分の用量の医薬を含み、添付文書が、前記医薬を使用して個体のがんを治療するための指示書を含み、アンタゴニストがMPDL3280Aでない、キット。
[14]指示書には、前記医薬が、免疫組織化学的(IHC)アッセイでPD-L1発現について陽性を示すがんを有する個体を治療するのに使用するためのものであることが明記されている、項[13]に記載のキット。
[15]個体がヒトである、項[13]又は[14]に記載のキット。
[16]マルチ受容体チロシンキナーゼ(マルチRTK)阻害剤が、構造:
【化26】

を有する4-[3-クロロ-4-(シクロプロピルアミノカルボニル)アミノフェノキシ]-7-メトキシ-6-キノリンカルボキシアミド、又はその薬学的に許容される塩である、項[13]~[15]のいずれか一項に記載のキット。
[17]アンタゴニストが、10mMヒスチジン緩衝液pH5.5中に25mg/mlペムブロリズマブ、7%(w/v)スクロース、0.02%(w/v)ポリソルベート80を含む液体医薬として製剤化されたペムブロリズマブであり、マルチRTK阻害剤が、炭酸カルシウム、マンニトール、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、及びタルクを含む4mg又は10mgのレンバチニブカプセル剤として製剤化されたレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩である、項[13]~[16]のいずれか一項に記載のキット。
[18]がんが、甲状腺がん、HCC、NSCLC、RCC、子宮内膜がん、尿路上皮がん、頭頸部扁平上皮細胞癌、神経膠芽腫又はメラノーマである、項[13]~[17]のいずれか一項に記載のキット。
[19]がんと診断されたヒト個体を治療するための方法であって、個体に併用療法を少なくとも24週間投与するステップを含み、併用療法がペムブロリズマブ、及びレンバチニブ又はその薬学的に許容される塩を含み、レンバチニブ又はその薬学的に許容される塩が、1日用量で、それぞれレンバチニブとして24mg、20mg又は14mgで投与され、ペムブロリズマブが用量200mgで3週間に1回投与される、方法。
【0171】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、その内容が全内容にわたって参照により本明細書に組み込まれる、2015年3月4日出願の日本出願である特願2015-042683号、2015年6月5日出願の日本出願である特願2015-114890号、2015年3月4日出願の米国特許仮出願第62/128,232号、及び2015年6月5日出願の米国特許仮出願第62/171,615号に基づく利益を主張する。
【0172】
[配列表]
[0002]全内容にわたって参照により本明細書に組み込まれる、配列番号1~25を含む配列表も添付される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2023039448000001.xml
【外国語明細書】