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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039464
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20230314BHJP
   F24F 8/24 20210101ALI20230314BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F24F6/00 H
F24F8/24
F24F6/00 331
F24F3/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146550
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】岸本 如水
(72)【発明者】
【氏名】福本 将秀
【テーマコード(参考)】
3L053
3L055
【Fターム(参考)】
3L053BC05
3L055AA01
3L055BB03
3L055DA04
3L055DA07
3L055DA12
(57)【要約】
【課題】空調室内の温湿度が調整された空気を所定の空間に搬送する際、加湿器の排水管路から外部の空気が流入するのを抑制し、所定の空間内の空気を清潔に保つことが可能な空調システムを提供する。
【解決手段】空調システムは、居室から空気を導入可能に構成された空調室と、空調室に設置され、空調室の空気を温調するエアコンディショナーと、空調室に設置され、エアコンディショナーによって温調された空気を加湿する加湿装置16と、空調室に設置され、温調及び加湿された空気を居室に搬送する搬送ファンと、加湿装置16の底部に設けられたドレンパン44と、を備える。ドレンパン44には、加湿装置16からの排水を外部に導出する排水管路46が接続されている。排水管路46には、空調室内が減圧になった場合に、排水管路46を介して空調室内に外部の空気が流入するのを抑制する封水部47が設置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被空調空間から空気を導入可能に構成された空調ユニットと、
前記空調ユニットに設置され、前記空調ユニットの空気を温調するエアコンディショナーと、
前記空調ユニットに設置され、前記エアコンディショナーによって温調された空気を加湿する加湿装置と、
前記空調ユニットに設置され、温調及び加湿された空気を前記被空調空間に搬送する送風機と、
前記加湿装置の底部に設けられた水受け部と、
を備え、
前記水受け部には、前記加湿装置からの排水を外部に導出する排水管路が接続され、
前記排水管路には、前記空調ユニット内が減圧になった場合に、前記排水管路を介して前記空調ユニット内に外部の空気が流入するのを抑制する封水部が設置されていることを特徴とする空調システム。
【請求項2】
前記加湿装置の運転を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記加湿装置の排水を定期的に実行させることで前記排水管路に通水し、前記封水部に貯留される貯留水を入れ替えるように制御することを特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記エアコンディショナーの運転モードに基づいて冷房運転期または暖房運転期の特定を行い、前記冷房運転期と特定された場合、前記暖房運転期と特定された場合よりも前記封水部における前記貯留水の入れ替え頻度を増加させることを特徴とする請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記加湿装置からの排水は、次亜塩素酸水であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空間を空調する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住居に対して全館空調機での空調が行なわれている。また、省エネルギー住宅需要の高まりと規制強化に伴い、高断熱・高気密住宅が増加していくことが予想されており、その特徴に適した空調システムが要望されている。
【0003】
こうした空調システムとして、複数の屋内空間(居室)等における空気の温湿度が目標温湿度となるように、複数の屋内空間等から空調室に搬送されてくる空気を、空調室内において所定の温湿度に空調した上で、複数の屋内空間等のそれぞれに搬送する全館空調システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-63899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の全館空調システムでは、空調室内の温湿度が調整された空気は、空調室内に設置された搬送ファンによって複数の屋内空間にそれぞれ搬送される。そして、空調室内の空気の搬送に伴って空調室内が陰圧となるため、空調室に設けられた吸気用の開口から空調室内に屋内空間の空気が流れ込む。流れ込んだ空気は、空調室内で温湿度が調整される。しかしながら、空調室には、吸気用の開口以外に、加湿器の排水管路が外部と連通しており、空調室内が陰圧となると、こうした排水管路から外部の空気(例えば、臭気のある汚れた空気)が加湿器を介して空調室内に流入することが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、空調室内の温湿度が調整された空気を所定の空間に搬送する際、加湿器の排水管路から外部の空気が流入するのを抑制し、所定の空間内の空気を清潔に保つことが可能な空調システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明に係る空調システムは、被空調空間から空気を導入可能に構成された空調ユニットと、空調ユニットに設置され、空調ユニットの空気を温調するエアコンディショナーと、空調ユニットに設置され、エアコンディショナーによって温調された空気を加湿する加湿装置と、空調ユニットに設置され、温調及び加湿された空気を被空調空間に搬送する送風機と、加湿装置の底部に設けられた水受け部と、を備える。水受け部には、加湿装置からの排水を外部に導出する排水管路が接続されている。排水管路には、空調ユニット内が減圧になった場合に、排水管路を介して空調ユニット内に外部の空気が流入するのを抑制する封水部が設置されている。これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空調室内の温湿度が調整された空気を所定の空間に搬送する際、加湿器の排水管路から外部の空気が流入するのを抑制し、所定の空間内の空気を清潔に保つことが可能な空調システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システムの接続概略図である。
図2図2は、空調システムを構成する加湿装置の概略断面図である。
図3図3は、加湿装置のうち排水に関わる構成部分の拡大断面図である。
図4図4は、空調システムにおけるシステムコントローラの概略機能ブロック図である。
図5図5は、空調処理手順を示すフローチャートである。
図6図6は、封水部における貯留水の入れ替え制御において、入れ替え頻度を特定する制御フロー図である。
図7図7は、封水部における貯留水の入れ替え制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る空調システムは、被空調空間から空気を導入可能に構成された空調ユニットと、空調ユニットに設置され、空調ユニットの空気を温調するエアコンディショナーと、空調ユニットに設置され、エアコンディショナーによって温調された空気を加湿する加湿装置と、空調ユニットに設置され、温調及び加湿された空気を被空調空間に搬送する送風機と、加湿装置の底部に設けられた水受け部と、を備える。水受け部には、加湿装置からの排水を外部に導出する排水管路が接続されている。排水管路には、空調ユニット内が減圧になった場合に、排水管路を介して空調ユニット内に外部の空気が流入するのを抑制する封水部が設置されている。
【0011】
こうした構成によれば、空調システムは、空調ユニット内の温湿度が調整された空気を被空調空間に搬送する際、封止部によって加湿装置の排水管路から空調ユニット内への外部の空気(例えば、臭気のある汚れた空気)の流入を抑制するので、被空調空間内の空気を清潔に保つことができる。
【0012】
また、本発明に係る空調システムは、加湿装置の運転を制御する制御部をさらに備える。制御部は、加湿装置の排水を定期的に実行させることで封水部に通水し、封水部に貯留される貯留水を入れ替えるよう制御することが好ましい。これにより、封水部に貯留される貯留水の水質劣化に起因するカビまたは菌の繁殖が抑制される。この結果、空調ユニット内が陰圧となった場合に、封水部の貯留水におけるカビまたは菌が空調ユニット内に流入することが抑制される。つまり、空調システムは、被空調空間内の空気を清潔に保つことができる。
【0013】
また、本発明に係る空調システムでは、制御部は、エアコンディショナーの運転モードに基づいて冷房運転期または暖房運転期の判定を行い、冷房運転期と特定された場合、暖房運転期と特定された場合よりも封水部における貯留水の入れ替え頻度を増加させることが好ましい。これにより、封水部に貯留される貯留水の水質劣化が生じやすい冷房運転期において、カビまたは菌の繁殖をより確実に抑制することができる。つまり、空調システムは、エアコンディショナーの運転モードに基づいて、封水部における貯留水の水質劣化の抑制(封水部の衛生状態の維持)をより効果的に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る空調システムでは、加湿装置からの排水は、次亜塩素酸水であることが好ましい。これにより、封水部に貯留される貯留水が次亜塩素酸水となるので、次亜塩素酸水に含まれる次亜塩素酸によって貯留水におけるカビまたは菌の繁殖がより確実に抑制される。つまり、空調システムは、加湿装置が使用する次亜塩素酸水によって、封水部における貯留水の水質劣化の抑制をより効果的に行うことができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0016】
(実施の形態1)
まず、図1を参照して、本実施の形態1に係る空調システム20について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る空調システム20の接続概略図である。
【0017】
空調システム20は、複数の搬送ファン3(搬送ファン3a,3b)と、熱交換気扇4と、複数のダンパー5(ダンパー5a,5b)と、複数の循環口6(循環口6a,6b,6c,6d)と、複数の居室排気口7(居室排気口7a,7b,7c,7d)と、複数の居室給気口8(居室給気口8a,8b,8c,8d)と、居室温度センサ11(居室温度センサ11a,11b,11c,11d)と、居室湿度センサ12(居室湿度センサ12a,12b,12c,12d)と、エアコンディショナー(空調機)13と、加湿装置16と、集塵フィルタ17と、入出力端末19と、システムコントローラ14(空調システムコントローラに該当)と、を備えて構成される。
【0018】
空調システム20は、建物の一例である一般住宅1内に設置される。一般住宅1は、複数(本実施の形態では4つ)の居室2(居室2a,2b,2c,2d)に加え、居室2と独立した少なくとも1つの空調室18を有している。ここで一般住宅1(住宅)とは、居住者がプライベートな生活を営む場として提供された住居であり、一般的な構成として居室2にはリビング、ダイニング、寝室、個室、子供部屋等が含まれる。また空調システム20が提供する居室にトイレ、浴室、洗面所、脱衣所等を含んでもよい。なお、居室2は、請求項の「被空調空間」に相当する。
【0019】
居室2aには、循環口6a、居室排気口7a、居室給気口8a、居室温度センサ11a、居室湿度センサ12a、システムコントローラ14、及び入出力端末19が設置されている。また、居室2bには、循環口6b、居室排気口7b、居室給気口8b、居室温度センサ11b、及び居室湿度センサ12bが設置されている。また、居室2cには、循環口6c、居室排気口7c、居室給気口8c、居室温度センサ11c、及び居室湿度センサ12cが設置されている。また、居室2dには、循環口6d、居室排気口7d、居室給気口8d、居室温度センサ11d、及び居室湿度センサ12dが設置されている。
【0020】
一方、空調室18には、搬送ファン3a、搬送ファン3b、ダンパー5a、ダンパー5b、エアコンディショナー13、集塵フィルタ17、及び加湿装置16が設置されている。より詳細には、空調室18内を流れる空気の流通経路の上流側から、エアコンディショナー13、集塵フィルタ17、加湿装置16、搬送ファン3(搬送ファン3a、3b)、ダンパー5(ダンパー5a、5b)の順にそれぞれ配置されている。
【0021】
空調室18では、各居室2から循環口6を通って搬送された空気(屋内の空気)と、熱交換気扇4により取り込まれて熱交換された外気(屋外の空気)とが混合される。空調室18の空気は、空調室18内に設けられたエアコンディショナー13及び加湿装置16によって温度及び湿度がそれぞれ制御され、すなわち空調されて、居室2に搬送すべき空気が生成される。空調室18にて空調された空気は、搬送ファン3により、各居室2に搬送される。ここで、空調室18は、エアコンディショナー13、加湿装置16、及び集塵フィルタ17などが配置でき、各居室2の空調をコントロールできる一定の広さを備えた空間を意味するが、居住空間を意図するものではなく、基本的に居住者が滞在する部屋を意味するものではない。なお、空調室18は、請求項の「空調ユニット」に相当する。
【0022】
各居室2の空気は、循環口6により空調室18へ搬送される他、居室排気口7により熱交換気扇4を通して熱交換された後、屋外へ排出される。空調システム20は、熱交換気扇4によって各居室2から内気(屋内の空気)を排出しつつ、屋内に外気(屋外の空気)を取り込むことで、第1種換気方式の換気が行われる。熱交換気扇4の換気風量は、複数段階で設定可能に構成されており、その換気風量は、法令で定められた必要換気量を満たすように設定される。
【0023】
熱交換気扇4は、内部に給気ファン(図示せず)及び排気ファン(図示せず)を有して構成され、各ファンを動作させることによって、内気(屋内の空気)と外気(屋外の空気)との間で熱交換しながら換気する。この際、熱交換気扇4は、熱交換した外気を空調室18に搬送する。
【0024】
搬送ファン3は、空調室18の壁面(底面側の壁面)に設けられている。そして、空調室18の空気は、搬送ファン3によって搬送ダクトを介して居室給気口8から居室2に搬送される。より詳細には、空調室18の空気は、搬送ファン3aによって一般住宅1の一階に位置する居室2a及び居室2bにそれぞれ搬送されるとともに、搬送ファン3bによって一般住宅1の二階に位置する居室2c及び居室2dにそれぞれ搬送される。なお、各居室2の居室給気口8に接続される搬送ダクトは、それぞれ独立して設けられる。また、搬送ファン3は、請求項の「送風機」に相当する。
【0025】
ダンパー5は、搬送ファン3から各居室2に空気を搬送する際、ダンパー5の開度を調整することによって各居室2への送風量を調節する。より詳細には、ダンパー5aは、一階に位置する居室2a及び居室2bへの送風量を調整するとともに、ダンパー5bは、二階に位置する居室2c及び居室2dへの送風量を調整する。
【0026】
各居室2(居室2a~2d)の空気の一部は、それぞれ対応する循環口6(循環口6a~6d)によって、循環ダクトを介して空調室18に搬送される。ここで、循環口6により搬送される空気は、搬送ファン3によって空調室18から各居室2に搬送される風量(給気風量)と、熱交換気扇4によって居室排気口7から屋外に排気される風量(排気風量)の差分だけ、循環空気として自然に空調室18に搬送される。なお、空調室18と各居室2とを接続する循環ダクトは、それぞれ独立して設けられてもよいが、循環ダクトの一部である複数の支流ダクトを途中より合流させて1つの循環ダクトに統合した後、空調室18に接続するようにしてもよい。
【0027】
各循環口6(循環口6a~6d)は、上述の通り、各居室2(居室2a~2d)から空調室18に屋内の空気を搬送するための開口である。
【0028】
各居室排気口7(居室排気口7a~7d)は、上述の通り、各居室2(居室2a~2d)から熱交換気扇4に屋内の空気を搬送するための開口である。
【0029】
各居室給気口8(居室給気口8a~8d)は、上述の通り、空調室18から各居室2(居室2a~2d)に空調室18内の空気を搬送するための開口である。
【0030】
居室温度センサ11(居室温度センサ11a~11d)は、対応する居室2(居室2a~2d)それぞれの居室温度(室内温度)を取得して、システムコントローラ14に送信するセンサである。
【0031】
居室湿度センサ12(居室湿度センサ12a~12d)は、対応する居室2(居室2a~2dそれぞれの居室湿度(室内湿度)を取得して、システムコントローラ14に送信するセンサである。
【0032】
エアコンディショナー13は、空調機に該当するものであり、空調室18の空調を制御する。エアコンディショナー13は、空調室18の空気の温度が設定温度(空調室目標温度)となるように、空調室18の空気を冷却又は加熱する。ここで、設定温度には、ユーザによって設定された目標温度(居室目標温度)と居室温度との温度差から必要熱量を算出して、その結果に基づいた温度に設定される。
【0033】
加湿装置16は、空調室18内のエアコンディショナー13の下流側に位置しており、各居室2の空気の湿度(居室湿度)が、ユーザによって設定された目標湿度(居室目標湿度)よりも低い場合に、その湿度が目標湿度となるように、空調室18の空気を加湿する。また、ここで扱う湿度は、それぞれ相対湿度で示されるが、所定の変換処理にて絶対湿度として扱ってもよい。この場合、居室2の湿度を含めて空調システム20での取り扱い全体を絶対湿度として取り扱うのが好ましい。
【0034】
集塵フィルタ17は、空調室18内に導入される空気中に浮遊する粒子を捕集する集塵フィルタである。集塵フィルタ17は、循環口6を通して空調室18内に搬送された空気中に含まれる粒子を捕集することで、搬送ファン3によって屋内に供給する空気を清浄な空気にする。
【0035】
システムコントローラ14は、空調システム20全体を制御するコントローラである。システムコントローラ14は、熱交換気扇4、搬送ファン3、ダンパー5、居室温度センサ11、居室湿度センサ12、エアコンディショナー13、及び加湿装置16のそれぞれと、無線通信により通信可能に接続されている。なお、システムコントローラ14は、請求項の「制御部」に相当する。
【0036】
また、システムコントローラ14は、居室温度センサ11及び居室湿度センサ12により取得された各居室2それぞれの居室温度及び居室湿度と、居室2a~2d毎に設定された目標温度(居室目標温度)及び目標湿度(居室目標湿度)等に応じて、空調機としてのエアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3の風量、及びダンパー5の開度を制御する。なお、搬送ファン3の風量は、ファンごとに個別に制御してもよい。
【0037】
これにより、空調室18にて空調された空気が、各搬送ファン3及び各ダンパー5に設定された風量で各居室2に搬送される。よって、各居室2の居室温度及び居室湿度が、目標温度(居室目標温度)及び目標湿度(居室目標湿度)となるように制御される。
【0038】
ここで、システムコントローラ14は、熱交換気扇4、搬送ファン3、ダンパー5、居室温度センサ11、居室湿度センサ12、エアコンディショナー13、及び加湿装置16と無線通信で接続される。これにより、複雑な配線工事を不要とすることができる。ただし、これら全体を、又は、システムコントローラ14とこれらの一部を、有線通信により通信可能に構成してもよい。
【0039】
入出力端末19は、システムコントローラ14と無線通信により通信可能に接続される。入出力端末19は、空調システム20を構築する上で必要な情報の入力を受け付けてシステムコントローラ14に記憶させたり、空調システム20の状態をシステムコントローラ14から取得して表示したりするものである。入出力端末19は、携帯電話、スマートフォン、又はタブレットといった携帯情報端末が例として挙げられる。
【0040】
なお、入出力端末19は、必ずしも無線通信によりシステムコントローラ14と接続される必要はなく、有線通信により通信可能にシステムコントローラ14と接続されてもよい。この場合、入出力端末19は、例えば、壁掛のリモートコントローラにより実現されるものであってもよい。
【0041】
次に、図2及び図3を参照して、加湿装置16の構成について説明する。図2は、空調システム20を構成する加湿装置16の概略断面図である。図3は、加湿装置16のうち排水に関わる構成部分の拡大断面図である。
【0042】
加湿装置16は、空調室18内のエアコンディショナー13の下流側に位置しており、空調室18内の空気を遠心水破砕によって加湿するための装置である。加湿装置16は、図2に示すように、空調室18内の空気を吸い込む吸込口31と、加湿した空気を空調室18内に吹き出す吹出口32と、吸込口31と吹出口32との間に設けられた風路と、この風路に設けられた液体微細化室33と、を備えている。
【0043】
吸込口31は、加湿装置16の外枠を構成する筐体の上面(筐体の中央側の上面)に設けられ、吹出口32は、筐体の上面(筐体の外縁側の上面)に設けられている。液体微細化室33は、加湿装置16の主要部であり、遠心水破砕方式によって水の微細化を行うところである。
【0044】
具体的には、加湿装置16は、回転モータ34と、回転モータ34によって回転する回転軸35と、遠心ファン36と、筒状の揚水管37と、貯水部40と、第一エリミネータ41、第二エリミネータ42と、フィルタ43と、ドレンパン44と、を備えている。
【0045】
揚水管37は、液体微細化室33の内側において回転軸35に固定され、回転軸35の回転に合わせて回転しながら、鉛直方向下方に備えた円形状の揚水口から水を汲み上げる。より詳細には、揚水管37は、逆円錐形の中空構造となっており、鉛直方向下方に円形状の揚水口を備えるとともに、揚水管37の上方であって逆円錐形の天面中心に、鉛直方向に向けて配置された回転軸35が固定されている。回転軸35が、液体微細化室33の鉛直方向上方に位置する回転モータ34と接続されることで、回転モータ34の回転運動が回転軸35を通じて揚水管37に伝導され、揚水管37が回転する。
【0046】
揚水管37は、逆円錐形の天面側に、揚水管37の外面から外側に突出するように形成された複数の回転板38を備えている。複数の回転板38は、上下で隣接する回転板38との間に、回転軸35の軸方向に所定間隔を設けて、揚水管37の外面から外側に突出するように形成されている。回転板38は、揚水管37とともに回転するため、回転軸35と同軸の水平な円盤形状が好ましい。なお、回転板38の枚数は、目標とする性能あるいは揚水管37の寸法に合わせて適宜設定されるものである。
【0047】
また、揚水管37の壁面には、揚水管37の壁面を貫通する複数の開口39が設けられている。複数の開口39のそれぞれは、揚水管37の内部と、揚水管37の外面から外側に突出するように形成された回転板38の上面とを連通する位置に設けられている。
【0048】
遠心ファン36は、揚水管37の鉛直方向上方に配置され、空調室18から装置内に空気を取り込むためのファンである。遠心ファン36は、揚水管37と同じく回転軸35に固定されており、回転軸35の回転に合わせて回転することで、液体微細化室33内に空気を導入する。
【0049】
貯水部40は、揚水管37の鉛直方向下方において、揚水管37が揚水口より揚水する水を貯水する。貯水部40の深さは、揚水管37の下部の一部、例えば揚水管37の円錐高さの三分の一から百分の一程度の長さが浸るような深さに設計されている。この深さは、必要な揚水量に合わせて設計できる。また、貯水部40の底面は、揚水口に向けてすり鉢状に形成されている。貯水部40への水の供給は、給水部(図示せず)により行われる。貯水部40からの排水は、回転軸35の鉛直下方に設けられた排水口40aより行われる。そして、排水口40aから流出する排水は、加湿装置16の底部全面に設けられたドレンパン44にて捕集される。 第一エリミネータ41は、空気が流通可能な多孔体であり、液体微細化室33の側方(遠心方向の外周部)に設けられ、遠心方向に空気が流通するように配置されている。第一エリミネータ41では、揚水管37の開口39から放出された水滴が衝突することで、水滴を微細化させるとともに、液体微細化室33を通過する空気に含められた水のうち水滴を捕集する。これにより、加湿装置16内を流れる空気には、気化された水のみが含まれるようになる。
【0050】
第二エリミネータ42は、第一エリミネータ41の下流側に設けられ、鉛直方向上方に空気が流通するように配置されている。第二エリミネータ42もまた、空気が流通可能な多孔体であり、第一エリミネータ41を通過した空気が衝突することで、第二エリミネータ42を通過する空気に含められた水のうち水滴を捕集する。これにより、微細化された水滴を二つのエリミネータによって二重に捕集することで、粒径の大きな水滴をより精度よく捕集することができる。
【0051】
フィルタ43は、第二エリミネータ42の下流側に設けられ、鉛直方向上方に空気が流通するように配置されている。フィルタ43は、長期間の使用により液体微細化室33で蓄積した微細なスケール成分が飛散した際に、飛散したスケール成分を捕集する役割を持つ。
【0052】
ドレンパン44は、貯水部40の下方領域を含む加湿装置16の底部全面に設けられ、貯水部40から流れ落ちる排水を捕集する役割を有する。また、ドレンパン44は、加湿装置16の異常時において、例えば、加湿装置16への給水配管に水漏れが生じた場合あるいは後述する排水管路46に詰まりが生じるなどの排水不良が発生した場合において、漏れ出た水あるいは外部に排水できなかった水を一時的に保持して、加湿装置16から空調室18内への漏水を防ぐ役割も有する。ドレンパン44には、捕集した排水を外部に導出する排水管路46が接続されている。ドレンパン44は、排水管路46と一体的に構成されていてもよく、個別の部材を接続して構成されていてもよい。なお、ドレンパン44は、請求項の「水受け部」に相当する。
【0053】
排水管路46は、ドレンパン44で捕集された排水を外部(空調室18外)に導出するための部材である。排水管路46は、一端がドレンパン44の底面に接続され、他端となる外部排水口45が外部の設備排水管(図示せず)に接続されている。ここで、排水管路46の一端は、ドレンパン44の底面に形成された凹部(溝)として構成されている。より詳細には、図3に示すように、凹部(溝)は、ドレンパン44における貯水部40の排水口40aの直下の位置から外縁の位置まで延設されている。また、凹部(溝)には、ドレンパン44が捕集する排水を外部排水口45へとスムーズに導水するため、排水口40aの直下の位置から外縁の位置に向かって下り勾配がつけられている。また、排水管路46には、外部排水口45の近傍となるドレンパン44の外縁に位置する部分に封水部47が設置されている。
【0054】
封水部47は、搬送ファン3の送風動作によって空調室18内が減圧になった場合に、排水管路46を介して加湿装置16(最終的には空調室18)内に外部の空気(例えば、臭気のある汚れた空気)が流入するのを抑制する役割を有する部材である。また、封水部47は、空調室18内の温湿度が調整された空気が排水管路46を介して外部に流出するのを抑制する役割も有する。つまり、封水部47は、排水管路46における排水トラップと言える。
【0055】
より詳細には、封水部47は、筐体47aと、貯留部47bと、仕切板47cと、封水となる貯留水48とを有して構成される。
【0056】
筐体47aは、封水部47の外枠を構成する。筐体47aの一方の側面には、ドレンパン44からの排水が流入する上流側開口が設けられ、筐体47aの他方の側面には、外部排水口45に向けて排水が流出する下流側開口が設けられている。そして、それぞれの開口には、排水管路46が接続されている。
【0057】
貯留部47bは、筐体47aの底部において封水となる貯留水48を貯留する。
【0058】
仕切板47cは、筐体47aの上部から底部に向かって延在し、仕切板47cの先端部が貯留水48内にまで達するように設けられている。つまり、仕切板47cは、貯留水48の水面上の空間を上流側と下流側とに区画するとともに、貯留水48の内部に排水が流通する流路を形成している。
【0059】
以上のように、封水部47は、内部に形成される流路が仕切板47cによってU字状となり、貯留部47bに貯留水48が満たされることでU字状の流路が封水され、空気の通りを防ぐようになっている。
【0060】
次に、図2を参照して、加湿装置16における加湿(水の微細化)の動作原理を説明する。なお、図2では、加湿装置16内での空気の流れと水の流れをそれぞれ矢印で示している。
【0061】
まず、加湿装置16の動作を開始すると、回転モータ34により回転軸35を第一回転数R1で回転させ、遠心ファン36によって、吸込口31から空調室18の空気の吸い込みが開始される。そして、回転軸35の第一回転数R1での回転に合わせて揚水管37が回転する。そして、破線矢印で示す水の流れのように、その回転によって生じる遠心力により、貯水部40に貯水された水が揚水管37によって汲み上げられる。ここで、回転モータ11(揚水管37)の第一回転数R1は、例えば、空気の送風量及び空気への加湿量に応じて、2000rpm~5000rpmの間に設定される。揚水管37は、逆円錐形の中空構造となっているため、回転によって汲み上げられた水は、揚水管37の内壁を伝って上部へ揚水される。そして、揚水された水は、揚水管37の開口39から回転板38を伝って遠心方向に放出され、水滴として飛散する。
【0062】
回転板38から飛散した水滴は、第一エリミネータ41に囲まれた空間(液体微細化室33)を飛翔し、第一エリミネータ41に衝突し、微細化される。一方、液体微細化室33を通過する空気は、実線矢印で示す空気の流れのように、第一エリミネータ41によって破砕(微細化)された水を含みながら第一エリミネータ41の外周部へ移動する。そして、第一エリミネータ41から第二エリミネータ42に至る風路内を空気が流れる過程で、気流の渦が生じ、水と空気とが混合する。そして、水を含んだ空気は、第二エリミネータ42及びフィルタ43を通過する。これにより、加湿装置16は、吸込口31より吸い込んだ空気に対して加湿を行い、吹出口32より加湿された空気を吹き出すことができる。
【0063】
続いて、図2を参照して、加湿装置16における貯水部40の水の止水動作及び排水動作について説明する。
【0064】
加湿装置16では、貯水部40の排水口40aの直上の所定の位置に、揚水管37を配置している。加湿装置16は、加湿動作が開始され、回転モータ34(揚水管37)が第三回転数R3(例えば、2000rpm)で回転されると、その回転の遠心力によって、揚水管37の内部で貯水部40の水に渦(図示せず)が発生する。そして、揚水管37は、その回転によって発生する渦中心において、揚水管37の先端開口と排水口40aとの間を連通する空隙(図示せず)を形成する。これにより、空隙が排水口40aを塞ぐ状態となり、貯水部40の水が排水口40aに流れ込むのが抑制される。つまり、加湿装置16では、加湿動作中(回転モータ34が第二回転数R2で回転動作中)に、貯水部40の水が排水口40aから排水されることを抑制することができる。
【0065】
一方、回転モータ34(揚水管37)の回転が停止されると、渦とともに空隙がなくなり、排水口40aに貯水部40の水が流れ込む。つまり、加湿装置16では、加湿動作(回転モータ34の回転動作)を停止することにより、貯水部40の水を排水口40aから排水して、ドレンパン44に流れ込ませることができる。
【0066】
このように、加湿装置16は、排水口40aに排水弁を用いなくても、加湿動作中は、貯水部40の水が排水口40aから排水されることを抑制(止水)でき、加湿動作の停止後は、貯水部40の水を排水口40aからドレンパン44に排水できる。
【0067】
次に、図4を参照して、システムコントローラ14の各機能について説明する。図4は、空調システム20のシステムコントローラ14の概略機能ブロック図である。
【0068】
システムコントローラ14は、図4に示すように、居室目標温湿度取得部51、空調制御部52、空調機制御部53、回転モータ制御部54、風量制御部55、及び記憶部56を備える。
【0069】
居室目標温湿度取得部51は、入出力端末19により居室2全体に共通して設定された居室目標温度及び居室目標湿度(以下、居室目標温湿度とも呼ぶ)を取得する。居室目標温度は、下限を最低温度で、上限を最高温度で定義される所定の温度範囲として設定される。居室目標湿度は、下限を最低湿度で、上限を最高湿度で定義される所定の湿度範囲として設定される。ここで、居室目標温度以上の温度とは、上限の最高温度以上の温度であることを意味し、居室目標温度より小さい温度とは、下限の最低温度よりも小さい温度を意味する。居室目標湿度についても同様である。なお、本実施の形態では、居室目標温度及び居室目標湿度をユーザが設定可能としているが、あらかじめ空調システム20に固定値として設定されていてもよい。居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された最高温度及び最低温度と、最高湿度及び最低湿度は、記憶部56に記憶される。
【0070】
空調制御部52は、温湿度差算出部57と、制御条件決定部58とを備える。
【0071】
温湿度差算出部57は、居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された居室目標温度と、居室温度センサ11が取得した居室温度との差分(温度差)と、居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された居室目標湿度と、居室湿度センサ12が取得した居室湿度との差分(湿度差)を居室2ごとに算出する。
【0072】
制御条件決定部58は、温湿度差算出部57によって居室2ごとに算出された温度差と湿度差に基づいて、エアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3、及びダンパー5の制御条件を決定する。
【0073】
つまり、空調制御部52は、居室目標温湿度取得部51からの居室目標温湿度に関する情報と、各センサ(居室温度センサ11、居室湿度センサ12)からの居室温湿度に関する情報とによって出される温度差及び湿度差に関する情報に基づいて、エアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3、及びダンパー5の出力を決定する。
【0074】
また、空調制御部52は、空調システム20が施工される際に設定されたエアコンディショナー13における暖房運転と冷房運転の切り替え日に基づいて、自動で暖房運転から冷房運転あるいは冷房運転から暖房運転に、運転モードの切り替えを実施する。なお、設定される切り替え日は、空調システム20が施工される地域の気候条件によって決定され、記憶部56に記憶されている。
【0075】
また、空調制御部52は、封水部47における貯留水48の入れ替え動作を制御する。詳細は後述するが、空調制御部52は、エアコンディショナー13の運転モードに関する情報(運転モード情報)に基づいて、加湿装置16の出力を決定する。
【0076】
空調機制御部53は、空調室18内のエアコンディショナー13の運転モード、吹き出し温度及び送風量を、空調制御部52にて決定された制御方法に基づいて制御する。
【0077】
回転モータ制御部54は、加湿装置16に設けられた回転モータ34の回転数をコントロールすることで、空調制御部52にて決定された制御条件に基づいて空調室18内に設けられた加湿装置16の加湿量を制御する。
【0078】
風量制御部55は、居室2に対応して設けられた搬送ファン3の送風量及びダンパー5の開度を、空調制御部52にて決定された制御条件に基づいて制御する。
【0079】
記憶部56は、居室目標温湿度取得部51により取得され、あるいはあらかじめ設定された所定の温度範囲、すなわち最高温度および最低温度と、湿度範囲、すなわち最高湿度及び最低湿度を記憶する、いわゆるメモリである。また、その他システムコントローラ14による制御に数値などの情報の記憶が必要な場合にも記憶部56が利用される。
【0080】
次に、図5を参照して、システムコントローラ14により実行される空調処理について説明する。図5は、空調処理手順を示すフローチャートである。ここでは、日本の冬季における空調処理を想定するので、空調システム20では、エアコンディショナー13は居室2の空気の温度を上昇させつつ、加湿装置16による加湿を行う状況となる。
【0081】
図5に示すように、空調システム20では、一般的な全館空調システムと同じように、熱交換気扇4は常時換気運転を行っており、空調処理を行っていない場合でも、搬送ファン3は第二送風量に設定され、ダンパー5は第二開度で設定されて送風を行っている(ステップS11)。ここで、第二送風量とは、住宅において法令で定められた必要換気量を満たす風量であり、熱交換気扇4によって空調室18内に給気された空気を搬送ファン3によって居室2に搬送する。また、第二開度とは、例えば、全開に設定される。なお、熱交換気扇4のみを運転している際には、エアコンディショナー13及び加湿装置16は運転を停止している。
【0082】
ユーザが空調処理を実行すると、まず、システムコントローラ14は、入出力端末19にて設定された居室目標温湿度(居室目標温度及び居室目標湿度)を取得して記憶部56に記憶する(ステップS12)。ここで、居室目標温湿度とは、ユーザが心地よいと感じる温湿度であり、すべての居室に共通する温湿度である。
【0083】
居室目標温湿度を取得すると、空調制御部52は、各居室2に設置された居室温度センサ11及び居室湿度センサ12から居室温湿度に関する情報を取得する(ステップS13)。続いて、空調制御部52は、温湿度差算出部57を用いて、取得した居室目標温湿度に関する情報と居室温湿度に関する情報から目標に対する温度差及び湿度差をそれぞれ算出する(ステップS14)。
【0084】
そして、制御条件決定部58は、算出した温度差及び湿度差に基づいて、空調室18の空気に対する空調室目標温湿度(空調室目標温度及び空調室目標湿度)を特定する(ステップS15)。ここでは、空調室目標温度は、居室目標温度よりも高い温度である第一温度に設定され、空調室目標湿度は、居室目標湿度よりも高い湿度である第一湿度に設定される。
【0085】
そして、空調制御部52は、特定した空調室目標温湿度に基づいて、エアコンディショナー13、加湿装置16、搬送ファン3、及びダンパー5の制御条件を決定して、それぞれ実行させる(ステップS16)。
【0086】
具体的には、空調機制御部53は、空調制御部52からの制御条件に基づいて、エアコンディショナー13の運転動作を開始させ、空調室18内の空気の温度が空調室目標温度(第一温度)となるように温調を実行させる。回転モータ制御部54は、空調制御部52からの制御条件に基づいて、回転モータ34の回転動作を開始させ、空調室18の空気の湿度が空調室目標湿度(第一湿度)となるように、第一回転数R1(2000rpm~5000rpm)で回転させる。風量制御部55は、空調制御部52からの制御条件に基づいて、搬送ファン3の風量及びダンパー5の開度を、第一送風量及び第一開度にそれぞれ変更させる。なお、第一開度は、居室2の空気の温度と居室目標温度との間の温度差に応じて設定され、例えば、温度差が大きければ広げるように設定され、温度差が小さければ狭くするように設定される。
【0087】
そして、空調運転中に、制御条件が変更されたステップ(ここではステップS16)を起点とした所定時間Tが経過した場合(ステップS17のYes)には、空調制御部52は、各居室2に設置された居室温度センサ11及び居室湿度センサ12から新たに居室温湿度に関する情報を取得する(ステップS13に戻る)。一方、所定時間Tが経過していない場合(ステップS17のNo)には、空調制御部52は、空調運転をそのままの制御条件で継続させる(ステップS17に戻る)。ここで、所定時間Tは、居室温度センサ11及び居室湿度センサ12における居室温湿度の取得サイクル時間であり、例えば、5分に設定される。
【0088】
本実施の形態に係る空調システム20では、以上の一連の処理により、居室2における居室温湿度が居室目標温湿度に到達するよう制御する。
【0089】
次に、図6及び図7を参照して、封水部47における貯留水48の入れ替え制御について説明する。図6は、封水部47における貯留水48の入れ替え制御において、入れ替え頻度を特定する制御フロー図である。図7は、封水部47における貯留水48の入れ替え制御フロー図である。
【0090】
まず、空調制御部52は、封水部47の貯留水48の入れ替え制御を行うにあたって、貯留水48の入れ替え間隔を特定する。具体的には、図6に示すように、空調制御部52は、エアコンディショナー13から、エアコンディショナー13の運転モードに関する情報(運転モード情報)を取得する(ステップS21)。運転モード情報には、エアコンディショナー13が冷房運転を行う期間(冷房運転期)及びエアコンディショナー13が暖房運転を行う期間(暖房運転期)に関する情報に加え、各期間を切り替える切り替え日に関する情報が含まれる。
【0091】
空調制御部52は、取得した運転モード情報に基づいて、エアコンディショナー13が冷房運転期であるか否かを判定する(ステップS22)。判定の結果、エアコンディショナー13が冷房運転期であると特定された場合(ステップS22のYes)、貯留水入れ替えタイマーTcを第一時間に設定(ステップS23)し、貯留水入れ替え処理に移行する。一方、ステップS22での判定の結果、エアコンディショナー13が冷房運転期でない場合、つまりエアコンディショナー13が暖房運転期であると特定された場合(ステップS22のNo)、貯留水入れ替えタイマーTcを第一時間よりも長い時間となる第二時間に設定(ステップS24)し、貯留水入れ替え処理に移行する。
【0092】
ここで、冷房運転期の第一時間は、例えば12時間に設定され、暖房運転期の第二時間は、例えば24時間に設定される。つまり、冷房運転期の方が、暖房運転期よりも貯留水入れ替えタイマーTcが小さく設定され、より高頻度で貯留水48の入れ替えが行われることになる。言い換えれば、空調制御部52においてエアコンディショナー13が冷房運転期と特定された場合には、エアコンディショナー13が暖房運転期と特定された場合よりも、封水部47における貯留水48の入れ替え頻度を増加させている。
【0093】
続いて、貯留水入れ替え処理を説明する。
【0094】
図7に示すように、空調制御部52は、貯留水入れ替えタイマーTcをカウントダウンできるようになっており、貯留水入れ替えタイマーTcが「0」になるまでカウントダウンを繰り返す(ステップS31)。そして、貯留水入れ替えタイマーTcが「0」になると、貯留水入れ替え処理を開始する。具体的には、冷房運転期において設定される第一時間(12時間)あるいは暖房運転期において設定される第二時間(24時間)が経過すると、貯留水入れ替え処理を開始する。
【0095】
貯留水入れ替え処理が開始すると、空調制御部52は、加湿装置16が加湿運転しているか否かを判定する(ステップS32)。判定の結果、加湿装置16が加湿運転している場合(ステップS32のYes)には、加湿装置16の加湿運転を停止する(ステップS33)。これにより、加湿装置16の止水動作が停止するので、加湿装置16の貯水部40に貯水される水が排水口40aから排水される。そして、排水を開始してから排水所定時間Tout(例えば、1分)が経過するのを待って、つまり貯水部40に貯水される水がすべて排水されるのを待って(ステップS34)、貯留水入れ替え処理を終了させる。この結果、貯水部40からの排水は、ドレンパン44、排水管路46、及び封水部47を流通して、外部排水口45から外部に導出される。この際、封水部47に貯留される貯留水48は、流通した排水と入れ替わり、入れ替わった新しい貯留水48が封水部47に貯留される。つまり、貯留水48の水質が劣化してカビまたは菌が繁殖していたとしても、カビまたは菌が繁殖した貯留水48は、排水とともに外部に導出されるため、結果として封水部47における貯留水48の水質劣化が抑制される。
【0096】
一方、ステップS32での判定の結果、加湿装置16が加湿運転しない場合(ステップS32のNo)には、加湿装置16の貯水部40への給水を開始する(ステップS35)。そして、給水を開始してから給水所定時間Tin(例えば、2分)が経過するのを待って(ステップS36)、給水を終了させる(ステップS37)。ここで、給水所定時間Tinは、封水部47における貯留水48が完全に入れ替わるよう、貯留部47bの容積よりも十分大きな水量が流れる時間に設定される。ステップS36において貯水部40への給水を行っている間には、加湿装置16の止水動作が停止している、つまり揚水管37が回転していないので、貯水部40に供給された水は、そのまま排水口40aから排水される。その後、貯水部40からの排水がドレンパン44、排水管路46、及び封水部47を流通して外部排水口45から外部に導出される際、封水部47に貯留される貯留水48は、流通した排水と入れ替わり、入れ替わった新しい貯留水48が封水部47に貯留される。
【0097】
以上、実施の形態1に係る空調システム20によれば、以下の効果を享受することができる。
【0098】
(1)空調システム20は、居室2から空気を導入可能に構成された空調室18と、空調室18に設置され、空調室18の空気を温調するエアコンディショナー13と、空調室18に設置され、エアコンディショナー13によって温調された空気を加湿する加湿装置16と、空調室18に設置され、温調及び加湿された空気を居室2に搬送する搬送ファン3と、加湿装置16の底部に設けられたドレンパン44と、を備える。ドレンパン44には、加湿装置16からの排水を外部に導出する排水管路46が接続されている。排水管路46には、空調室18内が減圧になった場合に、排水管路46を介して空調室18内に外部の空気が流入するのを抑制する封水部47が設置されている。
【0099】
これにより、空調システム20は、空調室18内の温湿度が調整された空気を居室2に搬送する際、封水部47によって加湿装置16の排水管路46から空調室18内への外部の空気(例えば、臭気のある汚れた空気)の流入を抑制するので、居室2内の空気を清潔に保つことができる。
【0100】
(2)空調システム20は、加湿装置16の運転を制御するシステムコントローラ14の空調制御部52を備える。システムコントローラ14の空調制御部52は、加湿装置16の排水を定期的に実行させることで封水部47に通水し、封水部47に貯留される貯留水48を入れ替えるよう制御するようにした。これにより、封水部47に貯留される貯留水48の水質劣化に起因するカビまたは菌の繁殖が抑制される。この結果、空調室18内が陰圧となった場合に、封水部47の貯留水48におけるカビまたは菌が空調室18内に流入することが抑制される。つまり、空調システム20は、居室2内の空気を清潔に保つことができる。
【0101】
(3)空調システム20では、システムコントローラ14の空調制御部52は、エアコンディショナー13の運転モード情報に基づいて冷房運転期または暖房運転期の判定を行い、冷房運転期と特定された場合、暖房運転期と特定された場合よりも封水部47における貯留水48の入れ替え頻度を増加させるようにした。これにより、封水部47に貯留される貯留水48の水質劣化が生じやすい冷房運転期において、カビまたは菌の繁殖をより確実に抑制することができる。つまり、空調システム20は、エアコンディショナー13の運転モードに基づいて、封水部47における貯留水48の水質劣化の抑制(封水部47の衛生状態の維持)をより効果的に行うことができる。
【0102】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、上記実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0103】
本発明に係る空調システム20では、加湿装置16において微細化される液体は水以外でもよく、例えば、殺菌性あるいは消臭性を備えた次亜塩素酸水等の液体であってもよい。これにより、空調システム20は、居室2に吹き出す空気に次亜塩素酸を含ませることができるので、居室2の除菌または殺菌を容易に行うことができる。なお、次亜塩素酸水を用いる場合には、年間通して居室2を除菌または殺菌するために、加湿装置16を連続動作させることが好ましい。
【0104】
また、加湿装置16から排出される排水が次亜塩素酸水となることから、封水部47に貯留される貯留水48もまた次亜塩素酸水となるので、次亜塩素酸水に含まれる次亜塩素酸によって貯留水48におけるカビまたは菌の繁殖がより確実に抑制される。つまり、空調システム20は、加湿装置16が使用する次亜塩素酸水によって、封水部47における貯留水48の水質劣化の抑制をより効果的に行うことができる。
【0105】
本実施の形態では、居室として示しているが、居室は必ずしも人が居る必要はなく、一つの空間として捉えることができる。つまり、廊下あるいはキッチンもある程度区切られているのであれば1つの空間として捉えることができ、1つの居室に該当する。
【0106】
また、本実施の形態に係る空調システム20は、戸建て住宅あるいはマンション等の複合住宅に適用可能である。ただし、空調システム20を複合住宅に適用する場合には、1つのシステムが世帯単位に対応するものであり、各世帯を1つの居室とするものではない。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る空調システムは、複数の空間(居室)等に供給する空気を効率よく空調制御することが可能なものとして有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 一般住宅
2、2a、2b、2c、2d 居室
3、3a、3b 搬送ファン
4 熱交換気扇
5、5a、5b ダンパー
6、6a、6b、6c、6d 循環口
7、7a、7b、7c、7d 居室排気口
8、8a、8b、8c、8d 居室給気口
11、11a、11b、11c、11d 居室温度センサ
12、12a、12b、12c、12d 居室湿度センサ
13 エアコンディショナー
14 システムコントローラ
16 加湿装置
17 集塵フィルタ
18 空調室
19 入出力端末
20 空調システム
31 吸込口
32 吹出口
33 液体微細化室
34 回転モータ
35 回転軸
36 遠心ファン
37 揚水管
38 回転板
39 開口
40 貯水部
40a 排水口
41 第一エリミネータ
42 第二エリミネータ
43 フィルタ
44 ドレンパン
45 外部排水口
46 排水管路
47 封水部
47a 筐体
47b 貯留部
47c 仕切板
48 貯留水
51 居室目標温湿度取得部
52 空調制御部
53 空調機制御部
54 回転モータ制御部
55 風量制御部
56 記憶部
57 温湿度差算出部
58 制御条件決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7