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特開2023-39477積層シート、シート状物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039477
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】積層シート、シート状物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20230314BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20230314BHJP
   A43B 1/14 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B32B27/40
D06N3/14 101
A43B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146592
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】303000545
【氏名又は名称】帝人コードレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹田 茂生
【テーマコード(参考)】
4F050
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F050HA56
4F055AA01
4F055AA03
4F055AA30
4F055BA19
4F055FA15
4F055GA02
4F055GA11
4F055GA32
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK51D
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA02C
4F100CB01C
4F100CB02C
4F100EH461
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ192
4F100EJ91
4F100GB74
4F100JB16D
4F100JK06
4F100JL11C
(57)【要約】
【課題】接着層と表皮層を有するポリウレタンの積層シートにおいて、接着層から表皮層への低分子物質の移行が抑制された積層シートを提供する。
【解決手段】ヒドロキシポリウレタンからなる中間層、前記中間層の一方の面に配置された表皮層、前記中間層の他方の面に配置された接着層からなる積層シートであり、中間層のヒドロキシポリウレタンが二酸化炭素を原料として用いて製造されたヒドロキシポリウレタンであることを特徴とする、積層シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシポリウレタンからなる中間層、前記中間層の一方の面に配置された表皮層、前記中間層の他方の面に配置された接着層からなる積層シートであり、中間層のヒドロキシポリウレタンが二酸化炭素を原料として用いて製造されたヒドロキシポリウレタンであることを特徴とする、積層シート。
【請求項2】
請求項1に記載の積層シート、および該積層シートの接着層に積層されたTPU型ポリウレタン基材からなるシート状物。
【請求項3】
請求項2に記載のシート状物をアッパーとして含む靴。
【請求項4】
離型紙の上に表皮層を設ける工程、前記表皮層の上に二酸化炭素を原料として用いたヒドロキシポリウレタンを塗布して中間層を形成する工程、および前記中間層の上に接着層を介してTPU型ポリウレタン基材を貼り合わせる工程を含む、シート状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート、シート状物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂シートは、スポーツシューズのアッパーなどに用いられてきた。しかし、ポリウレタン樹脂に含まれる低分子モノマーや、シート作成時にポリウレタン樹脂に添加された添加剤が、ポリウレタン樹脂シートの表面に移行してしまい、外観を損ねたり、強度を低下させるブリード現象が発生する。
【0003】
近年、新規なポリウレタン樹脂として、化学構造中にウレタン結合と水酸基を併せ持つヒドロキシポリウレタン樹脂が開発され、その工業的な応用が期待されている。既存のポリウレタン樹脂が、イソシアネート化合物とポリオールを原料として用いて製造されるのに対して、ヒドロキシポリウレタン樹脂は、エポキシ化合物、二酸化炭素およびアミン化合物を原料として用いて製造される。原料の二酸化炭素は、ヒドロキシポリウレタン樹脂の化学構造中に-CO-O-結合として組み込まれることから、温室効果ガスである二酸化炭素の有効利用の観点からも、近年注目される樹脂である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、接着層と表皮層を有するポリウレタンの積層シートにおいて、接着層から表皮層への低分子物質の移行が抑制された積層シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ヒドロキシポリウレタンからなる中間層、前記中間層の一方の面に配置された表皮層、前記中間層の他方の面に配置された接着層からなる積層シートであり、中間層のヒドロキシポリウレタンが二酸化炭素を原料として用いて製造されたヒドロキシポリウレタンであることを特徴とする、積層シートである。
本発明はまた、上記の積層シートおよび該接着層に積層されたTPU型ポリウレタン基材からなるシート状物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、接着層と表皮層を有するポリウレタンの積層シートにおいて、接着層から表皮層への低分子物質の移行が抑制された積層シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
〔ヒドロキシポリウレタンからなる中間層〕
中間層は、ヒドロキシポリウレタンからなる。このヒドロキシポリウレタンは、二酸化炭素を原料として用いて製造されたヒドロキシポリウレタンである。
【0009】
このヒドロキシポリウレタンは、少なくとも2つの五員環環状カーボネート構造を有する化合物と、少なくとも2つのアミノ基を有する化合物の重付加反応により得られたものである。そして、五員環環状カーボネート構造は、少なくともその一部に二酸化炭素を原料として用いて合成された五員環環状カーボネート構造である。このヒドロキシポリウレタンにおいては、-O-CO-結合のうちの1~20%を、二酸化炭素由来の-O-CO-結合が占める。
【0010】
ヒドロキシポリウレタンは結晶性が高く、他の樹脂と分離が起こることから、この中間層においては、ヒドロキシポリウレタンが中間層の重量を基準として、好ましくは100重量%を占める。この中間層の厚みは、屈曲性の保持の観点から、好ましくは5~10μmである。ヒドロキシポリウレタンは、他のポリウレタンを弾くため、ポリウレタン製の顔料を含有しないことが好ましい。
【0011】
〔表皮層〕
表皮層は、ポリウレタンの層であり、その厚みは外観および屈曲性、剥離強度などの基礎物性を得る観点から、好ましくは5~100μmである。この層は、充実層であることが好ましい。
表皮層は、表面保護の役割を有し、本発明の積層シートが靴や鞄などの皮革代替用途に使用される場合に、摩耗によって外観を損ねないようにする役割を果たす。
【0012】
〔接着層〕
接着層は、高分子弾性体の層である。この高分子弾性体として、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーを例示することができ、良好な物性を得る観点から、好ましくはポリウレタンエラストマーを用いる。
この高分子弾性体には、末端にイソシアネート基などの反応性の高い置換基を含む架橋剤が添加されていることが好ましい。
【0013】
接着層の厚みは、好ましくは5~50μm、さらに好ましくは5~35μmである。接着層の厚みが5μm未満であるとコーティング装置におけるわずかな歪みで接着不良を起こす場合があり好ましくない。他方、50μmを超えると、接着層が厚くなりすぎてしまい、接着層の影響が素材の硬さに影響を及ぼすようになり、素材の剛性が高くなるとロール状に巻き取るなどの加工時において巻き付けが困難になり、また巻き癖が付きパッド加工後にそりが発生するなどの傾向にあり好ましくない。
【0014】
本発明では、接着層と表皮層の間にある中間層を、二酸化炭素を原料として用いて製造されたヒドロキシポリウレタンで構成することで、接着層から表皮層への低分子物質の移行を抑制することができる。
【0015】
〔TPU型ポリウレタン基材〕
本発明に用いられるTPU型ポリウレタン基材は、熱可塑性を有するポリウレタン樹脂からなるTPU型ポリウレタン基材である。
他のポリウレタン基材としては、有機溶剤に分散させた溶剤系ポリウレタン樹脂を不織布に含浸させ、水と置換することでポリウレタンを凝固させる湿式成形により作成したポリウレタン基材や、水系ポリウレタンを用いたポリウレタン基材を使用することもできる。
【0016】
〔用途〕
本発明のシート状物は、靴のアッパーとして好適に用いることができる。すなわち、本発明は、上述のシート状物をアッパーとして含む靴が提供される。
【0017】
〔製造方法〕
本発明のシート状物は、離型紙の上に表皮層を設ける工程、前記表皮層の上に二酸化炭素を原料として用いたヒドロキシポリウレタンを塗布して中間層を形成する工程、および前記中間層の上に接着層を介してTPU型ポリウレタン基材を貼り合わせる工程を含む、シート状物の製造方法によって製造することができる。
【0018】
ヒドロキシポリウレタンは、溶液または分散液として塗布する。溶媒または分散媒としては、有機溶媒または水を用いる。
ヒドロキシポリウレタンの溶液または分散液は、塗布量が多いと、ヒドロキシポリウレタン層の厚みが厚くなり屈曲性が著しく低下するため、好ましくは10~30g/mの重量のヒドロキシポリウレタンが含まれる溶液または分散系を塗布する。
【0019】
ヒドロキシポリウレタンは、低粘度の液体を弾きやすいため、ヒドロキシポリウレタン層の上に接着層の設けるために塗布する液体の粘度は、好ましくは2000mPa・s以上である。
【実施例0020】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。「部」は重量部を表す。
【0021】
〔実施例1〕
離型紙上に、溶剤系のポリウレタン(DIC社製「クリスボンS-125」、ポリウレタン濃度30%、融点145℃)100部、ジメチルホルムアミド(DMF)70部、メチルエチルケトン(MEK)30部および染料1部を混合した溶液(粘度:1220mPa・s)を、90g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで表皮層(ポリウレタン層)を形成した。
【0022】
表皮層の表面にヒドロキシポリウレタン(大日精化工業社製、固体、熱軟化点97℃、このヒドロキシポリウレタンは、-O-CO-結合のうちの16%を二酸化炭素由来の-O-CO-結合が占める。)30部、DMF40部およびMEK30部を混合した溶液を、50g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで中間層(ヒドロキシポリウレタン層)を形成した。
【0023】
さらに中間層の上にポリウレタン系接着剤(DIC社製「クリスボンOA-370」、ポリウレタン濃度40重量%、融点140℃)100部、DMF30部、MEK10部およびポリイソシアネート系架橋剤(大日精化工業社製「レザミンNE架橋剤」、ポリイソシアネート濃度75重量%)を混合した溶液(粘度:2440mPa・s)を140g/mの重量で塗布し、110℃で30秒間乾燥することで、接着層を形成した。
【0024】
その後、厚さ0.15mmのTPU型ポリウレタン基材(Kimyung製)を、前記接着層に重ね合わせ、0.3mmの間隙のロールに通過させ圧着した。
その後、温度70℃の恒温槽で1日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り、シート状物(ポリウレタンシート-1)を得た。得られたシート状物の接着層を目視で観察したところ、ブリード現象は観察されなかった。また、このシート状物の剥離強度は、4.76kg/cmであった。
【0025】
〔実施例2〕
離型紙上に、水分散系のポリウレタン(DIC社製「ハイドランTMS-236」、ポリウレタン濃度35重量%)100部、カルボジライト1部および染料5部を混合した溶液を、90g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで、表皮層(ポリウレタン層)を形成した。
【0026】
表皮層の表面にヒドロキシポリウレタン(大日精化工業社製、固体、熱軟化点97℃、このヒドロキシポリウレタンは、-O-CO-結合のうちの16%を二酸化炭素由来の-O-CO-結合が占める。)30部、DMF40部およびMEK30部を混合した溶液を、50g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで中間層(ヒドロキシポリウレタン層)を形成した。
【0027】
さらに中間層の上に、水分散系のポリウレタン系接着剤(DIC社製「ハイドランTMA-478」、ポリウレタン濃度45重量%)100部およびポリイソシアネート系架橋剤(「DNW-5500」)を混合した溶液を140g/mの重量で塗布し、110℃で5分間乾燥することで、接着層を形成した。
【0028】
その後、厚さ0.15mmのTPU型ポリウレタン基材(Kimyung製)を前記接着層に重ね合わせ、0.3mmの間隙のロールに通過させ圧着した。その後、温度70℃の恒温槽で1日間放置し、離型紙を剥ぎ取り、シート状物(ポリウレタンシート-2)を得た。得られたシート状物の接着層を、目視で観察したところ、ブリード現象は観察されなかった。
【0029】
〔実施例3〕
離型紙上に、溶剤系のポリウレタン(DIC社製「クリスボンS-125」、ポリウレタン濃度30重量%、融点145℃)100部、ジメチルホルムアミド(DMF)70部およびメチルエチルケトン(MEK)30部を混合した溶液(粘度:1220mPa・s)を、90g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで、表皮層(ポリウレタン層)を形成した。
【0030】
表皮層の表面にヒドロキシポリウレタン(大日精化工業社製、固体、熱軟化点97℃、このヒドロキシポリウレタンは、-O-CO-結合のうちの16%を二酸化炭素由来の-O-CO-結合が占める。)30部、DMF40部およびMEK30部を混合した溶液を、50g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで中間層(ヒドロキシポリウレタン層)を形成した。
【0031】
さらに中間層の上にポリウレタン系接着剤(DIC社製「クリスボンOA-370」、ポリウレタン濃度40重量%、融点140℃)100部、DMF30部、MEK10部およびポリイソシアネート系架橋剤(大日精化工業社製「レザミンNE架橋剤」、ポリイソシアネート濃度75重量%)を混合した溶液を140g/mの重量で塗布し、110℃で30秒間乾燥することで、接着層を形成した。
【0032】
その後、厚さ1.20mmのポリウレタン樹脂含浸基材を、前記接着層に重ね合わせ、0.8mmの間隙のロールに通過させ圧着した。なお、このポリウレタン樹脂含浸基材は、成分に疎水性の低分子量物質を含むため、ブリード現象が生じやすい。
【0033】
その後、温度70℃の恒温槽で1日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り、シート状物(ポリウレタン樹脂含浸基材のコート状物-1)を得た。得られたコート状物を70℃の恒温槽で3週間加熱したが、含浸基材に含まれる低分子量物質がコートした表面に析出することはなく、ブリード現象は観察されなかった。
【0034】
〔比較例1〕
実施例1と同様にして表皮層を作成した。その後、表皮層の表面に、ポリウレタン(DIC社製「クリスボンNB-140」、ポリウレタン濃度30重量%)50部、ポリウレタン(セイコー化成社製「ラックスキンSY-2266」、ポリウレタン濃度40重量%)50部、DMF70部およびMEK30部を混合した溶液を、50g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで中間層(第二ポリウレタン層)を形成した。
【0035】
中間層のうえに、ポリウレタン系接着剤(DIC社製「クリスボンOA-370」、ポリウレタン濃度40重量%、融点140℃)100部、DMF30部、MEK10部、ポリイソシアネート系架橋剤(大日精化工業社製「レザミンNE架橋剤」およびポリイソシアネート濃度75重量%)を混合した溶液を140g/mの重量で塗布し、110℃で30秒間乾燥することで、接着層を形成した。
【0036】
その後、厚さ0.15mmのTPU型ポリウレタン基材(Kimyung製)を前記接着層に重ね合わせ、0.3mmの間隙のロールに通過させ圧着した。その後、温度70℃の恒温槽で1日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り、シート状物(ポリウレタンシート-3)を得た。
得られたシート状物は、実施例1で得られたシート状物(ポリウレタンシート-1)と比べて、転写層表面に白色の汚れが浮き出ておりブリード現象が強く観察された。
【0037】
〔比較例2〕
離型紙上に、ヒドロキシポリウレタン(大日精化工業社製、固体、熱軟化点97℃、このヒドロキシポリウレタンは、-O-CO-結合のうちの16%を二酸化炭素由来の-O-CO-結合が占める。)を30部、DMFを40部およびMEKを30部を混合した溶液を、50g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥して表皮層(ヒドロキシポリウレタン層)を形成した。
【0038】
表皮層の表面にポリウレタン(DIC社製「クリスボンNB-140」、ポリウレタン濃度30重量%)50部、ポリウレタン(セイコー化成社製「ラックスキンSY-2266」、ポリウレタン濃度40重量%)50部、DMF70部およびMEK30部を混合した溶液を、90g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで中間層(第二ポリウレタン層)を形成した。
【0039】
さらに、中間層にうえにポリウレタン系接着剤(DIC社製「クリスボンOA-370」、ポリウレタン濃度40重量%、融点140℃)100部、DMF30部、MEK10部およびポリイソシアネート系架橋剤(大日精化社製「レザミンNE架橋剤」、ポリイソシアネート濃度75重量%)を混合した溶液を140g/mの重量で塗布し、110℃で30秒間乾燥することで、接着層を形成した。
【0040】
その後、厚さ0.15mmのTPU型ポリウレタン基材(Kimyung製)を前記接着層に重ね合わせ、0.3mmの間隙のロールに通過させて圧着した。その後、温度70℃の恒温槽で1日間放置した後、離型紙を剥ぎ取りシート状物(ポリウレタンシート-4)を得た。
【0041】
得られたシート状物(ポリウレタンシート-4)の剥離強度は2.45kg/cmであった。このシート状物(ポリウレタンシート-4は、実施例1で得られたシート状物(ポリウレタンシート-1)と比べて剥離強度が低く、シート状物としての耐久性が劣っていた。
【0042】
〔比較例3〕
実施例3と同様にして表皮層を作成した。その後、表皮層の表面に、ポリウレタン(DIC社製「クリスボンNB-140」、ポリウレタン濃度30重量%)50部、ポリウレタン(セイコー化成社製「ラックスキンSY-2266」、ポリウレタン濃度40重量%)50部、DMF70部およびMEK30部を混合した溶液を、90g/mの重量で塗布した。その後、乾燥機にて70℃で10分間乾燥することで、中間層(第二ポリウレタン層)を形成した。
【0043】
中間層の上に、ポリウレタン系接着剤(DIC社製「クリスボンOA-370」、ポリウレタン濃度40重量%、融点140℃)100部、DMF30部、MEK10部、ポリイソシアネート系架橋剤(大日精化社製「レザミンNE架橋剤」およびポリイソシアネート濃度75重量%)を混合した溶液を140g/mの重量で塗布し、110℃で30秒間乾燥することで、接着層を形成した。その後、厚さ1.20mmのポリウレタン樹脂含浸基材を前記接着層に重ね合わせ、0.8mmの間隙のロールに通過させ圧着した。なお、このポリウレタン樹脂含浸基材は、成分に疎水性の低分子量物質を含むため、ブリード現象が生じやすい。
【0044】
その後、温度70℃の恒温槽で1日間放置した後、離型紙を剥ぎ取り、シート状物(ポリウレタン樹脂含浸基材のコート状物-2)を得た。得られたシート状物を70℃の恒温槽で3週間加熱したところ、含浸基材に含まれる低分子量物質がシート状物の転写層表面に析出し、ブリード現象が観察された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のシート状物および積層シートは、皮革製品の部材として、特に靴のアッパーとして好適に用いることができる。