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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039481
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】配管ろう付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/18 20060101AFI20230314BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230314BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20230314BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20230314BHJP
   F23D 14/38 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B23K1/18 D
B23K1/00 330G
B23K3/00 310B
B23K3/06 J
F23D14/38 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146598
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛騨 隆道
(72)【発明者】
【氏名】牧戸 俊也
(72)【発明者】
【氏名】杉本 広夢
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩平
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆
(57)【要約】
【課題】配管の端部に被接合部材を均一な品質で容易且つ安全にろう付けできる。
【解決手段】端部がリングろう3を介して接続継手2に挿入された配管1を固定し支持する配管固定支持手段13と、接続継手を配管側に付勢させた状態で保持し、軸方向に移動可能で且つ軸回りに回転可能な接続継手保持手段14と、接続継手保持手段に保持された接続継手の近傍に配置され、接続継手を加熱してリングろうを溶融させる加熱手段16と、加熱手段による接続継手の加熱中に、接続継手保持手段を所定角度往復回転させて接続継手を軸回りに回動させる回動手段18と、リングろうの溶融により接続継手が配管側に変位したことを、接続継手保持手段の移動により検出する接触式変位センサ19と、リングろうが溶融して接続継手が配管側に所定値変位したことが接触式変位センサにより検出されるまで、加熱手段及び回動手段を作動させるよう制御する制御装置12と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部がろう材を介して被接合部材に挿入された配管を固定し支持する配管固定支持手段と、
前記被接合部材を前記配管側に付勢させた状態で保持すると共に、軸方向に移動可能で且つ軸回りに回転可能に設けられた被接合部材保持手段と、
前記被接合部材保持手段に保持された前記被接合部材の近傍に配置されて、前記被接合部材を加熱して前記ろう材を溶融させる加熱手段と、
前記被接合部材保持手段に連結され、前記加熱手段による前記被接合部材の加熱中に、前記被接合部材保持手段を所定角度往復回転させて前記被接合部材を軸回りに回動させる回動手段と、
前記ろう材の溶融により前記被接合部材が前記配管側に変位したことを、前記被接合部材保持手段の移動より検出する変位検出手段と、
前記ろう材が溶融して前記被接合部材が前記配管側に所定値変位したことが前記変位検出手段により検出されるまで、前記加熱手段及び前記回動手段を作動させるよう制御する制御手段と、を有して構成されたことを特徴とする配管ろう付け装置。
【請求項2】
前記被接合部材保持手段の内部に不活性ガスを導入して、被接合部材及び配管の内部に前記不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を、更に有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管ろう付け装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、被接合部材保持手段に保持された被接合部材の周囲近傍にトーチノズル複数配置されて可燃性ガスを酸素ガスと共に放出する加熱トーチと、前記加熱ノズルの先端近傍に配置されて前記可燃性ガスを着火させる着火ヒータと、を備えて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の配管ろう付け装置。
【請求項4】
前記加熱ノズルの先端近傍に配置されて、前記加熱ノズルから放出された可燃性ガスが着火して燃焼したことを検出する着火検出手段を、更に有して構成されたことを特徴とする請求項3に記載の配管ろう付け装置。
【請求項5】
前記ろう材が、リン銅にて構成されてリング状に形成されたリングろうであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配管ろう付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配管ろう付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性の高い六フッ化硫黄(SF6)ガスを用いたガス遮断機(GCB)やガス絶縁開閉装置(GIS)の工事においては、ユニット間をガス配管で接続して、現地で組み立てた個々の機器に六フッ化硫黄ガスを充填している。接続に使用するガス配管は、対候性が安定し且つ耐久性が確保された銅製の小口径配管を用いるのが一般的であり、現地で機器を据え付けた後に、配管を現地合わせで例えばろう付けにより接続している。
【0003】
一般に、ろう付け作業、特に高温でのろう付け作業は、大別すると、一つに、「差しろう」と呼ばれるSP-27等のろう材を使用し、フラックスを併用する方法がある。この方法では、高温状態においてフラックスが炭化し、このフラックスがろう付け面の外に不均一に溢れて外観を損なうと共に、残留したフラックスが腐食の原因になる恐れがある。しかも、残留フラックスの除去にも時間を要する。
【0004】
他の一つに、セルフフラッシング作用を有するリン銅ろう(BCuP-5等)のろう材を用いて、フラックスを使用しないろう付け方法がある。フラックスを使用しないことから、炭化したフラックスや残留フラックスの除去工程を省略できるが、ろう付け部品内に酸化被膜が発生してしまう。この酸化被膜を防止するために、ろう付け部品の内部に不活性ガスを流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-150658号公報
【特許文献2】特開2002-263879号公報
【特許文献3】特開2016-155137号公報
【特許文献4】特開2019-202338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、不活性ガスの流入装置は、一般にろう付け部品の全体を包み込む形式になっているため大型化してしまう。しかも、ガス流入装置自体が独立したものとして設置されるので、ろう付け部品の固定、加熱及び不活性ガスの流入という作業がそれぞれ分離した作業になり、現地で非効率的な作業になっていた。
【0007】
また、高温でのろう付け作業では、加熱溶融したろう材が満遍なく流れず、ろう付け部にブローホールが発生する問題がある。これに対処するために、配管または被接合部材としての接続継手を回転させればよいが、高温加熱状態での回転作業は安全性及び作業性に課題が生ずる。
【0008】
更に、リン銅ろうを用いた高温でのろう付け作業は難易度が高く、専用の工具を使用して訓練を実施し、検定試験に合格した者のみがその作業を許可されている。しかしながら、検定試験に合格した者であっても作業員のレベル差は発生する。例えば、ろう付け作業を常に実施している作業員と、ろう付け作業を久々に行なう作業員とでは、ろう付け作業の仕上がり状態が著しく異なる。
【0009】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、配管の端部に被接合部材を、均一な品質で容易且つ安全にろう付けできる配管ろう付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態における配管ろう付け装置は、端部がろう材を介して被接合部材に挿入された配管を固定し支持する配管固定支持手段と、前記被接合部材を前記配管側に付勢させた状態で保持すると共に、軸方向に移動可能で且つ軸回りに回転可能に設けられた被接合部材保持手段と、前記被接合部材保持手段に保持された前記被接合部材の近傍に配置されて、前記被接合部材を加熱して前記ろう材を溶融させる加熱手段と、前記被接合部材保持手段に連結され、前記加熱手段による前記被接合部材の加熱中に、前記被接合部材保持手段を所定角度往復回転させて前記被接合部材を軸回りに回動させる回動手段と、前記ろう材の溶融により前記被接合部材が前記配管側に変位したことを、前記被接合部材保持手段の移動より検出する変位検出手段と、前記ろう材が溶融して前記被接合部材が前記配管側に所定値変位したことが前記変位検出手段により検出されるまで、前記加熱手段及び前記回動手段を作動させるよう制御する制御手段と、を有して構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態によれば、配管の端部に被接合部材を、均一な品質で容易且つ安全にろう付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る配管ろう付け装置の構成を示すブロック図。
図2図1のろう付け装置本体を示す正面図。
図3図2のろう付け装置本体を示す平面図。
図4図2のIV-IV矢視図。
図5図2のV-V矢視図。
図6図2の要部を拡大して示す要部正面半断面図。
図7図6のVII矢視図。
図8図6のVIII矢視図。
図9図6の配管、接続継手及びリングろうを示し、(A)がろう付け前の状態を、(B)がろう付け後の状態をそれぞれ示す半断面図。
図10図6の接触式変位センサの作用を示し、(A)が配管等取付前の状態を、(B)が配管等取付後の状態を、(C)がリングろう溶融後の状態をそれぞれ示す作用図。
図11図10の接触式変位センサに代えてレーザー式距離センサを用いた場合の作用を示し、(A)が配管等取付前の状態を、(B)が配管等取付後の状態を、(C)がリングろう溶融後の状態をそれぞれ示す作用図。
図12図1の制御装置の作用を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る配管ろう付け装置の構成を示すブロック図である。この図1に示す配管ろう付け装置10は、図2及び図6に示す配管1に被接合部材としての接続継手2を、ろう材としてのリングろう3を用いてろう付けして接合するものであり、ろう付け装置本体11及び制御手段としての制御装置12を有して構成される。上記ろう付け装置本体11は、図2図3及び図6に示すように、配管固定支持手段13、被接合部材保持手段としての接続継手保持手段14、不活性ガス供給手段15、加熱手段16、着火検出手段17、回動手段18、変位検出手段としての接触式変位センサ19を有して構成される。
【0014】
配管固定支持手段13は、図2図6及び図8に示すように配管1を固定し支持するものであり、配管押え21、配管押え座22及びトグルクランプ23を有してなる。配管押え21は、配管1の直径に対応して複数種類用意され、配管押え座22に交換可能に取り付けられる。この配管押え21は、ヒンジ結合された上コマ部21Aと下コマ部21B間に配管1をクランプ(把持)して固定する。配管押え座22は、配管押え21をベース20に支持するものであり、この配管押え21を介して配管1を支持する。トグルクランプ23は、配管押え21にクランプ力を付与するものである。また、図2中の符号39は配管支えである。
【0015】
ここで、配管固定支持手段13に固定され支持される配管1は、その端部に接続継手2が、図9(A)に示すようにリングろう3を介して挿入されている。リングろう3は、リング状に形成されたろう材であり、配管1及び接続継手2が銅製である場合には、リン銅ろう(例えばBCuP-5)にて構成されるろう材が用いられるのが、フラックスの使用が不要になる点で好ましい。
【0016】
接続継手保持手段14は、図2及び図6に示すように、ハウジング24、ハウジング受台25、継手アダプタ26、圧縮スプリング27及びスプリングケース28を有し、このうち継手アダプタ26が、アダプタ共通受座26A及びアダプタエレメント26Bを備えてなる。
【0017】
ハウジング受台25は、ハウジング24をベース20に支持する。ハウジング24は、内部に軸受ブッシュ29を備え、継手アダプタ26のアダプタ共通受座26Aの筒状部30を軸受ブッシュ29により、継手アダプタ26の軸方向に移動可能で且つ継手アダプタ26の軸回りに回転可能に支持する。
【0018】
継手アダプタ26のアダプタ共通受座26Aは、ホルダ部31と筒状部30とが一体化されて構成される。継手アダプタ26のアダプタエレメント26Bは、接続継手2の種類に応じて複数種類が用意され、アダプタ共通受座26Aのホルダ部31に交換可能に取り付けられる。このアダプタエレメント26Bを用いて継手アダプタ26は、配管1の端部に挿入された接続継手2を保持する。
【0019】
スプリングケース28は、基端部がハウジング24に固定されると共に、先端部とアダプタ共通受座26Aの筒状部30との間に圧縮スプリング27が介在される。端部がリングろう3を介して接続継手2に挿入された配管1は、配管固定支持手段13の配管押え21によりクランプされ固定される際に、接続継手保持手段14の圧縮スプリング27を圧縮するように継手アダプタ26を、図6の矢印O方向に押圧する。これにより、接続継手保持手段14は、配管1の端部に挿入された接続継手2を、圧縮スプリング27の付勢力により、図6の矢印Pに示すように、配管1側に付勢した状態で継手アダプタ26及びハウジング24により保持する。
【0020】
不活性ガス供給手段15は、図1及び図2に示すように、不活性ガスとしての窒素(N2)ガスを、ガスタンク32から窒素供給ライン33を経て接続継手保持手段14の継手アダプタ26の内部に導入するものである。これにより、継手アダプタ26により保持された接続継手2の内部及び配管1の内部に窒素ガスが供給されて、加熱手段16により加熱される接続継手2及び配管1の内部の酸化が防止され、酸化被膜の発生が抑制される。尚、不活性ガスとしては窒素ガスほかに、アルゴンガスなどであってもよい。
【0021】
上記窒素供給ライン33には、図1図3に示すように、ガスタンク32側から窒素供給弁34、流量調整弁35が順次配設されている。流量調整弁35は、窒素ガスの供給流量を調整するものであり、ろう付け作業前に作業員により手動で調整される。また、窒素供給弁34は、継手アダプタ26への窒素ガスの供給、遮断を、電磁力による弁の開閉により実施するものであり、後述の如く制御装置12により制御される。
【0022】
加熱手段16は、図1及び図2に示すように、可燃性ガスとしてのPLG(液化石油ガス)をガスタンク36から供給するPLG供給ライン37と、酸素ガスをガスタンク38から供給する酸素供給ライン40と、PLGと酸素ガスを放出する加熱トーチ41と、加熱トーチ41のトーチノズル41Aから放出されるPLGを着火させる着火ヒータ42と、を有してなる。ここで、PLGはプロパンガスまたはアセチレンガスなどが好ましい。
【0023】
PLG供給ライン37には、図1及び図3に示すように、ガスタンク36側からベーパタンク43、PLG供給弁44、逆火防止器45、流量調整弁46が順次配設されている。流量調整弁46は、PLGの供給流量を調整するものであり、ろう付け作業前に作業員により手動で調整される。また、PLG供給弁44は、加熱トーチ41へのPLGの供給、遮断を、電磁力による弁の開閉により実施するものであり、後述の如く制御装置12により制御される。
【0024】
酸素供給ライン40には、図1及び図3に示すように、ガスタンク38側から酸素供給弁47、逆火防止器48、流量調整弁49が順次配設されている。流量調整弁49は、酸素ガスの供給流量を調整するものであり、ろう付け作業前に作業員により手動で調整される。また、酸素供給弁47は、加熱トーチ41への酸素ガスの供給、遮断を、電磁力による弁の開閉により実施するものであり、後述の如く制御装置12により制御される。
【0025】
加熱トーチ41は、図3及び図4に示すように、略リング形状のトーチリング41Bの周方向等配位置、例えば120度等配位置にトーチノズル41Aが取り付けられて構成される。トーチノズル41Aは、接続継手保持手段14に保持された接続継手2の周囲近傍に複数、例えば3個配置される。また、トーチリング41Bに、PLG供給ライン37及び酸素供給ライン40が連結される。これにより、加熱トーチ41は、PLG供給ライン37からのPLGを、酸素供給ライン40からの酸素ガスと共に、接続継手保持手段14に保持された接続継手2の周囲にトーチノズル41Aから放出可能とする。
【0026】
着火ヒータ42は、図2に示すように、ハウジング24に設置されたヒータ取付座51に、加熱トーチ41のトーチノズル41Aに対応して複数取り付けられる。この着火ヒータ42は、例えばSNヒータ(窒化ケイ素ヒータ)が好ましい。各着火ヒータ42は、各トーチノズル41A近傍に配置可能とされて、トーチノズル41AからPLGが放出されるときにON作動され、このPLGを着火させる。トーチノズル41Aからは上述の着火後に、PLGと酸素ガスとの混合ガスが放出され、このときの火炎F(図1)が、接続継手保持手段14に保持された配管2の内部のリングろう3を加熱して溶融させる。
【0027】
ここで、図3及び図5に示すように、PLG供給ライン37、酸素供給ライン40及び加熱トーチ41は、キャリッジ53を備えた可動テーブル52に支持される。また、この可動テーブル52にはグリップバー50が立設されている。キャリッジ53は、ベース20に敷設されたレール54に係合されて、可動テーブル52をろう付け装置本体11の正面視前後方向に移動可能に案内する。これにより、PLG供給ライン37、酸素供給ライン40及び加熱トーチ41は、グリップバー50が作業員により操作されて可動テーブル52が外方へ移動することで、端部が接続継手2に挿入された配管1を配管固定支持手段13に固定する際に、図3の2点鎖線に示すように、配管固定支持手段13、接続継手保持手段14及び不活性ガス供給手段15に対して外方に退避される。
【0028】
着火検出手段17は、図2及び図4に示すように、加熱トーチ41のトーチノズル41Aの先端近傍に配置された、例えば熱電対である。この着火検出手段17は、加熱トーチ41のトーチノズル41Aから放出されたPLGが着火し、同じく放出された酸素ガスにより燃焼して火炎F(図1)が所定温度以上になったことを検出する。この着火検出手段17による検出信号は、図1に示す制御装置12へ出力される。
【0029】
回動手段18は、図2図6及び図7に示すように、加熱手段16による接続継手2の加熱中に接続継手保持手段14の継手アダプタ26を所定角度往復回動させて、この継手アダプタ26に保持された接続継手2を回動(しゅん動)させるものであり、回動用モータ55、可動円板56、モータ軸フランジ57及びクランク58を有して構成される。
【0030】
回動用モータ55は、モータ座59を用いてベース20に支持される。この回動用モータ55の回転軸にモータ軸フランジ57が連結され、このモータ軸フランジ57は、回動用モータ55の回転駆動時に、図7の矢印α方向に連続回転運動する。可動円板56は、継手アダプタ26の筒状部30の端部に回転一体に取り付けられて連結されると共に、クランク58を介してモータ軸フランジ57に連結される。可動円板56は、クランク58を介してモータ軸フランジ57に連結されることで、モータ軸フランジ57のα方向の連続回転時に、図7の矢印β方向に所定角度往復回転運動する。これにより、継手アダプタ26も、可動円板56と同様にβ方向に所定角度往復回転運動して、この継手アダプタ26に保持された接続継手2を回動(しゅん動)させる。この回動(しゅん動)は、β方向の所定角度往復回転運動と実質的に同義である。
【0031】
加熱手段16の加熱トーチ41による接続継手2の加熱中にこの接続継手2が上述の如く回動(しゅん動)することで、接続継手2が加熱トーチ41により周方向に均一に加熱されると共に、接続継手2の内部で加熱されて溶融されたリングろう3が、図9(B)に示すように、接続継手2と配管1との接合面に満遍なく均一に流れる。このように、接続継手2と配管1との接合面に溶融状態のリングろう3が満遍なく流れることで、ろう付け接合箇所にブローホール等の発生が抑制される。
【0032】
接触式変位センサ19は、図5図6及び図7に示すように、センサ座60を用いてベース20に設置される。配管1内の端部に挿入されて継手アダプタ26に保持された接続継手2が、リングろう3の溶融により圧縮スプリング27の付勢力によって矢印P方向(図6)に変位したとき、その変位を継手アダプタ26の移動により検出する。そして、この接触式変位センサ19により上記接続継手2が所定値(リングろう3の厚さ分)変位したと検出したときに、配管1と接続継手2との間に介在されたリングろう3が完全に溶融したと制御装置12により判断される。
【0033】
つまり、図6及び図10(A)に示すように、配管固定支持手段13に配管1が固定支持されていないときには、接続継手保持手段14の圧縮スプリング27が圧縮されていない状態であり、接触式変位センサ19の接触子61は、接続継手保持手段14の継手アダプタ26に取り付けられた可動円板56に接触していない。図6及び図10(B)に示すように、端部に接続継手2がリングろう3を介して挿入された状態の配管1が配管固定支持手段13に固定され支持されて、接続継手2が、圧縮スプリング27を矢印O方向に押圧(圧縮)しながら継手アダプタ26に保持されたときに、接触式変位センサ19の接触子61は、可動円板56に接触する。
【0034】
図10(C)は、配管1に挿入された接続継手2内のリングろう3が加熱手段16により加熱されて溶融し、回動手段18により接続継手2が回動して、溶融状態のリングろう3が配管1と接続継手2との接合面に満遍なく均一に流れたときである。このとき、図6及び図10(C)に示すように、接続継手2、継手アダプタ26及び可動円板56は、接続継手保持手段14の圧縮スプリング27によって矢印P方向に付勢され、リングろう3の厚さ分(所定値)戻される。接触式変位センサ19の接触子61は、可動円板56に接触した状態で、継手アダプタ26及び可動円板56を介して接続継手2の上記所定値の変位を検出する。この検出信号は、図1に示すように、接触式変位センサ19から制御装置12へ出力される。
【0035】
上述の接触式変位センサ19に代えて、図11に示すレーザ式距離センサ62を変位検出手段として用いてもよい。つまり、図6及び図11(A)に示すように、レーザ式距離センサ62は、配管1が配管固定支持手段13に固定支持されていないときの可動円板56との距離を計測する。図6及び図11(B)に示すように、接続継手2が挿入された配管1が配管固定支持手段13に固定されて支持され、接続継手2が、接続継手保持手段14の圧縮スプリング27を矢印O方向に押圧(圧縮)しながら継手アダプタ26に保持されたとき、レーザ式距離センサ62は可動円板56との距離を計測する。
【0036】
更に、図6及び図11(C)に示すように、接続継手2内のリングろう3が加熱手段16により加熱されて溶融し、回動手段18により接続継手2が回動して、溶融状態のリングろう3が配管1と接続継手2との接合面に均一に満遍なく流れて、接続継手2がリングろう3の厚さ分(所定値)矢印P方向に変位したとき、レーザ式距離センサ62は可動円板56との距離を計測する。図11(B)及び(C)におけるレーザ式距離センサ62の計測値の差分を求めることで、接続継手2内のリングろう3の溶融が検出される。
【0037】
制御装置12は、図1及び図2に示すように、配管1の端部に挿入された接続継手2と配管1との間に介在されたリングろう3が溶融して、接続継手2が配管1側に所定値変位したことが接触式変位センサ19(またはレーザ式距離センサ62)により検出されるまで、着火検出手段17及び接触式変位センサ19からの検出信号に基づいて、加熱手段16及び回動手段18の作動を制御する。更に、制御装置12は、上述の加熱手段16及び回動手段18の作動前から作動後の間、配管1及び接続継手2の内部への不活性ガスとしての窒素ガスの供給を制御する。上述の制御装置12の制御を、主に図1及び図12を用いて詳説する。
【0038】
作業員は、制御装置12の電源スイッチ63及び起動ボタン64をON作動する前に、図9(A)に示すように、配管1の端部にリングろう3を介して接続継手2を挿入し、この接続継手2及びリングろう3を備えた配管1を、図2及び図6に示す配管固定支持手段13の配管押え21にクランプして固定する。この配管1の固定時に接続継手2を接続継手保持手段14の継手アダプタ26に、圧縮スプリング27を矢印O方向に押圧し圧縮した状態で保持させる。
【0039】
上述のように配管1を配管固定支持手段13により固定し支持させ、接続継手2を接続継手保持手段14に保持させた後に、図1及び図12に示すように、作業員により制御装置12の電源スイッチ63、起動ボタン64が順次ON操作される(S11、S12)。起動ボタン64のON操作により制御装置12は、まず、不活性ガス供給手段15の窒素供給弁34を開弁させて(S13)、ガスタンク32内の窒素ガスを、窒素供給ライン33を経て配管1及び接続継手2の内部に供給する。このステップS13の後、制御装置12は接触式変位センサ19の初期位置を取り込む(S14)。
【0040】
次に、制御装置12は、加熱手段16のPLG供給弁44を開弁させて(S15)、ガスタンク36内のPLGを、PLG供給ライン37を経て加熱トーチ41のトーチノズル41Aから放出させる。この加熱トーチ41からのPLGの放出後に、制御装置12は、着火ヒータ42をON作動させて(S16)、加熱トーチ41から放出されたPLGを着火させる。その後、制御装置12は酸素供給弁47を開弁させて(S17)、ガスタンク38内の酸素ガスを、酸素供給ライン40を経て加熱トーチ41のトーチノズル41AからPLGと共に放出させ、トーチノズル41Aに火炎Fを生じさせる。
【0041】
ステップ17の後、制御装置12は着火ヒータ42をOFF作動する(S18)。この着火ヒータ42のOFF作動後、制御装置12は、着火検出手段17からの検出信号に基づき、加熱トーチ41のトーチノズル41Aから放出されたPLGが酸素ガスにより燃焼して火炎Fが所定温度以上か否かを判断する(S19)。トーチノズル41Aでの火炎Fが所定温度未満の場合には、制御装置12は、着火が失敗したと判断して制御を終了する。
【0042】
ステップS19でトーチノズル41Aの火炎Fが所定温度以上である場合には、制御装置12は、回動手段18の回動用モータ55を起動させて(S20)、可動円板56を介し接続継手保持手段14の継手アダプタ26を所定角度往復回転運動させ、継手アダプタ26に保持された接続継手2を回動(しゅん動)させる。
【0043】
次に、制御装置12は、接触式変位センサ19からの検出信号に基づき、可動円板56及び継手アダプタ26を介して接続継手2の変位が所定値(リングろう3の厚さ分)以上であって、接続継手2内のリングろう3が溶融しているか否かを判断する(S21)。接続継手2の変位が所定値以上でない場合でも、制御装置12は、着火ヒータ42がON作動して加熱トーチ41からのPLGが着火してから所定時間が経過したか否かを判断した後(S22)、再度接続継手2の変位が所定値以上であるか否かを判断する。ステップS22でPLGの着火後所定時間を経過している場合、制御装置12は、接続継手2内のリングろう3が溶融不良であると判断して制御を終了する。
【0044】
制御装置12は、ステップS21で接続継手2の変位が所定値以上であって、接続継手2内のリングろう3の溶融が良好であると判断した場合には、加熱手段16の酸素供給弁47を閉弁し(S23)、PLG供給弁44を閉弁して(S24)、加熱手段16の作動を停止させる。更に、制御装置12は、回動手段18の回動用モータ55を停止させて回動手段18の作動を停止させ(S25)、接続継手保持手段14の継手アダプタ26に保持された接続継手2の回動(しゅん動)を停止させる。
【0045】
制御装置12は、ステップS24のPLG供給弁44の閉弁後一定時間が経過しているか否かを判断し(S26)、一定時間経過するまで不活性ガス供給手段15の窒素供給ライン33から配管1及び接続継手2内に窒素ガスを継続して供給して、これらの配管1及び接続継手2を冷却させる。制御装置12は、上記一定時間が経過した時点で、不活性ガス供給手段15の窒素供給弁34を閉弁させて、配管1及び接続継手2への窒素ガスの供給を停止させ(S27)、ろう付け作業の制御を終了する。
【0046】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)~(3)を奏する。
(1)制御装置12は、図2及び図6に示すように、配管1の端部に挿入された接続継手2と配管1との間に介在されたリングろう3が溶融して、接続継手2が配管1側に所定値変位したことが接触式変位センサ19またはレーザ式距離センサ62により検出されるまで、加熱手段16及び回動手段18を作動させるように制御している。このことから、加熱手段16の加熱トーチ41が接続継手2を加熱して接続継手2内のリングろう3が溶融する間に、回動手段18が、接続継手保持手段14の継手アダプタ26を所定角度往復回動させて接続継手2を回動させるので、溶融状態のリングろう3が配管1と接続継手2との接合面に満遍なく均一に流れる。この結果、配管1と接続継手2とのろう付け接合箇所にブローホールを生じさせることなく、配管1と接続継手2とを均一な品質で容易にろう付けすることができる。
【0047】
(2)制御装置12が加熱手段16及び回動手段18を制御して配管1と接続継手2とのろう付け作業が完了するので、加熱手段16の加熱トーチ41により加熱された接続継手2及び配管1に作業員が手を触れる必要がない。このため、ろう付け作業の安全性を向上させることができる。
【0048】
(3)制御装置12は、加熱手段16及び回動手段18の作動前から作動後に至る間、不活性ガス供給手段15を作動させて、配管1及び接続継手2の内部への窒素ガスの供給を制御している。この結果、加熱手段16により加熱される配管1及び接続継手2の内面の酸化を防止できるので、その内面に酸化皮膜の発生を抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…配管、2…接続継手(被接合部材)、3…リングろう(ろう材)、10…配管ろう付け装置、11…ろう付け装置本体、12…制御装置(制御手段)、13…配管固定支持手段、14…接続継手保持手段、15…不活性ガス供給手段、16…加熱手段、17…着火検出手段、18…回動手段、19…接触式変位センサ(変位検出手段)、21…配管押え、24…ハウジング、26…継手アダプタ、27…圧縮スプリング、33…窒素供給ライン、34…窒素供給弁、37…PLG供給ライン、40…酸素供給ライン、41…加熱トーチ、41A…トーチノズル、42…着火ヒータ、44…PLG供給弁、47…酸素供給弁、55…回動用モータ、56…可動円板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部がろう材を介して被接合部材に挿入された配管を固定し支持する配管固定支持手段と、
前記被接合部材を前記配管側に付勢させた状態で保持すると共に、軸方向に移動可能で且つ軸回りに回転可能に設けられた被接合部材保持手段と、
前記被接合部材保持手段に保持された前記被接合部材の近傍に配置されて、前記被接合部材を加熱して前記ろう材を溶融させる加熱手段と、
前記被接合部材保持手段に連結され、前記加熱手段による前記被接合部材の加熱中に、前記被接合部材保持手段を所定角度往復回転させて前記被接合部材を軸回りに回動させる回動手段と、
前記ろう材の溶融により前記被接合部材が前記配管側に変位したことを、前記被接合部材保持手段の移動より検出する変位検出手段と、
前記ろう材が溶融して前記被接合部材が前記配管側に所定値変位したことが前記変位検出手段により検出されるまで、前記加熱手段及び前記回動手段を作動させるよう制御する制御手段と、を有して構成されたことを特徴とする配管ろう付け装置。
【請求項2】
前記被接合部材保持手段の内部に不活性ガスを導入して、被接合部材及び配管の内部に前記不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段を、更に有して構成されたことを特徴とする請求項1に記載の配管ろう付け装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、被接合部材保持手段に保持された被接合部材の周囲近傍にトーチノズルを複数配置して可燃性ガスを酸素ガスと共に放出する加熱トーチと、前記トーチノズル近傍に対応して複数配置されて前記可燃性ガスを着火させる着火ヒータと、を備えて構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の配管ろう付け装置。
【請求項4】
前記トーチノズルの先端近傍に配置されて、前記トーチノズルから放出された可燃性ガスが着火して燃焼したことを検出する着火検出手段を、更に有して構成されたことを特徴とする請求項3に記載の配管ろう付け装置。
【請求項5】
前記ろう材が、リン銅にて構成されてリング状に形成されたリングろうであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配管ろう付け装置。