(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003949
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】浮き床パネル及び浮き床パネルの設置方法
(51)【国際特許分類】
B63B 29/02 20060101AFI20230110BHJP
E04F 15/024 20060101ALI20230110BHJP
B63B 15/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B63B29/02 Z
E04F15/024 601D
E04F15/024 603C
B63B15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105350
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】591000506
【氏名又は名称】早川ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510273787
【氏名又は名称】株式会社赤阪鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 道雄
(72)【発明者】
【氏名】城本 和幸
(72)【発明者】
【氏名】小出 竜馬
(72)【発明者】
【氏名】藤井 拓門
(72)【発明者】
【氏名】澤村 宏
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 治恒
(72)【発明者】
【氏名】黒田 透
(72)【発明者】
【氏名】田中 悟
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA23
2E220AA25
2E220AA51
2E220AB10
2E220AC03
2E220BA01
2E220CA14
2E220CA62
2E220CA66
2E220CA71
2E220DA12
2E220DB02
2E220DB05
2E220GA25X
2E220GB01X
2E220GB01Y
2E220GB05X
2E220GB39Y
(57)【要約】
【課題】浮き床パネル同士の嵌合作業を容易にしながら、嵌合後の浮き床パネル同士の相対的な移動を抑制して仕上げ材の表面に亀裂が発生し難くする。
【解決手段】金属製板材10の第1の辺部11は、第1縦板部11aと第1横板部11bと第1外板部11cとを有している。金属製板材10の第2の辺部12は、別の金属製板材10が有する第1縦板部11aの上端部に当接し、下方へ向けて延びる第1当接板部12aと、別の金属製板材10が有する第1外板部11cまで延びる第1嵌合板部12bとを有している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床構造体の上に複数の支持脚によって支持され、前記床構造体の上に浮き床を構成する金属製板材を備えた浮き床パネルにおいて、
前記金属製板材は、平面視で長方形とされ、
前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、第1の辺部は、下方へ向けて延びる第1縦板部と、該第1縦板部の下端部から前記金属製板材の外方へ向けて延びる第1横板部と、該第1横板部の外端部から上方へ向けて前記第1縦板部の上端部よりも下方まで延びる第1外板部とを有しており、
前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、前記第1の辺部と向かい合う第2の辺部は、前記金属製板材と隣接して設置される別の浮き床パネルの金属製板材が有する前記第1縦板部の上端部に当接し、下方へ向けて前記別の金属製板材が有する前記第1横板部に達するまで延びる第1当接板部と、該第1当接板部の下端部から前記別の金属製板材が有する前記第1外板部まで延びる第1嵌合板部とを有している浮き床パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の浮き床パネルにおいて、
前記第1の辺部及び前記第2の辺部は前記金属製板材の長辺部である浮き床パネル。
【請求項3】
請求項1に記載の浮き床パネルにおいて、
前記第1の辺部及び前記第2の辺部は前記金属製板材の短辺部である浮き床パネル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の浮き床パネルにおいて、
前記金属製板材の材質は、鉄、ステンレス鋼及びアルミニウム合金のうちのいずれかである浮き床パネル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の浮き床パネルにおいて、
前記金属製板材の厚みは、2.3mm以上6.0mm以下である浮き床パネル。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の浮き床パネルにおいて、
前記金属製板材の重量が20kg以下である浮き床パネル。
【請求項7】
床構造体の上に浮き床を構成する金属製板材を備えた複数の浮き床パネルのそれぞれを複数の支持脚によって設置する浮き床パネルの設置方法において、
平面視で長方形とされた前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、第1の辺部には、下方へ向けて延びる第1縦板部と、該第1縦板部の下端部から前記金属製板材の外方へ向けて延びる第1横板部と、該第1横板部の外端部から上方へ向けて前記第1縦板部の上端部よりも下方まで延びる第1外板部とを形成し、
前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、前記第1の辺部と向かい合う第2の辺部には、前記金属製板材と隣接して設置される別の浮き床パネルの金属製板材が有する前記第1縦板部の上端部に当接し、下方へ向けて前記別の金属製板材が有する前記第1横板部に達するまで延びる第1当接板部と、該第1当接板部の下端部から前記別の金属製板材が有する前記第1外板部まで延びる第1嵌合板部とを形成し、
その後、前記浮き床パネルを前記支持脚で前記床構造体の上に支持し、
次いで、前記別の浮き床パネルを上方から下方へ移動させて前記別の浮き床パネルの第1当接板部を、前記浮き床パネルの第1縦板部の上端部に当接させるとともに、前記別の浮き床パネルの第1嵌合板部を、前記浮き床パネルの第1縦板部と第1外板部との間に入れる浮き床パネルの設置方法。
【請求項8】
請求項7に記載の浮き床パネルの設置方法において、
前記浮き床パネルを前記支持脚で前記床構造体の上に支持した後、
前記支持脚に回転可能に支持されるとともに該支持脚から上方へ突出するネジ軸を、前記金属製板材に設けられたネジ孔に螺合させた状態で、前記金属製板材に設けられた貫通孔を介して回転させることによってレベル調整を行う浮き床パネルの設置方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の浮き床パネルの設置方法において、
前記浮き床パネルを前記支持脚で前記床構造体の上に支持した後、
隣接した前記金属製板材同士をスポット溶接により固定するパネルの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床構造体の上に設置される浮き床パネル及び浮き床パネルの設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、船舶の騒音対策として、浮き床が知られている。船舶の主な騒音源は主機や発電機であり、これらが設置してある機関室の床及び壁から振動として上階にある居住区の床や壁に伝わる固体伝播音、騒音源から直接発せられる空気伝播音を低減するために金属製の床パネルを用いることにより、上記浮き床が施工される場合がある(例えば、特許文献1~4参照)。
【0003】
船舶で一般的に使用される浮き床パネルとしては、厚さ3.2mm程度の鋼板に、密度が150~250kg/m3で厚みが50mm程度のロックウールが積層されたものがある。このような構成の浮き床パネルの重量は、35~45kg/m2程度にもなる。船舶の床構造体に設置する際には、1枚の浮き床パネルの大きさが1m2よりも小さくされているが、それでも1枚当たり25~35kg程度になる。
【0004】
また、浮き床パネルを船舶の床構造体の上に設置する際には、例えば特許文献1に開示されているように、床構造体の上に骨組みを設け、その骨組みの上に浮き床パネルを置いてビスによって固定する構造が知られている。
【0005】
また、特許文献3に開示されているものでは、防音材を甲板の床に固着しないで載置するようにして敷設し、その上に所定寸法の浮き床パネルを適切に並べ合せて積層し、積層した浮き床パネルの突き合わせ部を突き合わせて溶接し、これらの表面に樹脂モルタルを均一状に被覆して仕上げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平1-106394号公報
【特許文献2】実用新案登録第3216446号公報
【特許文献3】実用新案登録第3194384号公報
【特許文献4】特開2017-105433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のように、浮き床パネルを骨組みに対してビスによって固定しようとすると、1枚当たり複数本のビスが必要になるので、固定作業がかなり煩雑になる。また、特許文献3のように、浮き床パネルの突き合わせ部を突き合わせて嵌合させる際には、一方の浮き床パネルを他方の浮き床パネルに対して水平方向へ移動させる必要があるが、1枚当たりの浮き床パネルの重量が25~35kg程度もあり、重いことから容易な作業ではなく、突き合わせ部を狙い通りに突き合わせる作業は難しい。よって、施工に時間がかかるという問題があった。
【0008】
そこで、浮き床パネル同士を嵌合させずに水平方向に並べて設置するだけにする方法が考えられる。しかしながら、浮き床パネル同士を嵌合させないと、浮き床パネル間で段差ができるため、浮き床パネルの上に、当該浮き床パネルを一体化するための鋼板等を追加施工する必要があり、材料費及び施工時間の点で問題になる。
【0009】
また、浮き床パネル同士の嵌合を緩めにすれば、上記突き合わせの作業が多少は容易になるが、嵌合が緩いと、デッキコンポジション等の仕上げ材の表面に亀裂が発生するという問題がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、浮き床パネル同士の嵌合作業を容易にしながら、嵌合後の浮き床パネル同士の相対的な移動を抑制して仕上げ材の表面に亀裂が発生し難くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第1の側面では、床構造体の上に複数の支持脚によって支持され、前記床構造体の上に浮き床を構成する金属製板材を備えた浮き床パネルを前提とすることができる。前記金属製板材は、平面視で長方形とされている。前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、第1の辺部は、下方へ向けて延びる第1縦板部と、該第1縦板部の下端部から前記金属製板材の外方へ向けて延びる第1横板部と、該第1横板部の外端部から上方へ向けて前記第1縦板部の上端部よりも下方まで延びる第1外板部とを有している。また、前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、前記第1の辺部と向かい合う第2の辺部は、前記金属製板材と隣接して設置される別の浮き床パネルの金属製板材が有する前記第1縦板部の上端部に当接し、下方へ向けて前記別の金属製板材が有する前記第1横板部に達するまで延びる第1当接板部と、該第1当接板部の下端部から前記別の金属製板材が有する前記第1外板部まで延びる第1嵌合板部とを有している。
【0012】
この構成によれば、複数枚の浮き床パネルを水平方向に並べ、浮き床パネルのそれぞれを複数の支持脚によって床構造体の上に支持することにより、床構造体の上に浮き床が構成される。このとき、一の浮き床パネルに隣接する別の浮き床パネルを設置する際には、一の浮き床パネルを先に設置しておき、その後、別の浮き床パネルの第1当接板部を、一の浮き床パネルの第1縦板部の上端部に当接させるとともに、別の浮き床パネルの第1嵌合板部を、一の浮き床パネルの第1縦板部と第1外板部との間に入れる。つまり、別の浮き床パネルを設置する際には、床構造体の上方から下へ移動させるのが通常であるが、この通常の動作及び浮き床パネルの自重を利用することで、一の浮き床パネルの第1の辺部と、別の浮き床パネルの第2の辺部とを嵌合させることができるので、従来のように浮き床パネルを水平方向に移動させて突き合わせによる嵌合の場合に比べて作業が容易になる。
【0013】
しかも、嵌合した後は、上記別の浮き床パネルの第1当接板部が上記一の浮き床パネルの第1縦板部の上端部に当接し、さらに、上記別の浮き床パネルの第1嵌合板部が第1縦板部と第1外板部との間に配置されるので、両浮き床パネルの水平方向への相対変位が抑制される。これにより、仕上げ材の表面に亀裂が発生し難くなる。
【0014】
また、浮き床パネル同士を上下に嵌合させているので、嵌合部位において支持脚を共通化することができ、支持脚の数を減らすことができる。
【0015】
本開示の第2の側面では、前記第1の辺部及び前記第2の辺部は前記金属製板材の長辺部となっている。
【0016】
この構成によれば、一の浮き床パネルと、別の浮き床パネルの長辺部同士を嵌合させることができる。
【0017】
本開示の第3の側面では、前記第1の辺部及び前記第2の辺部は前記金属製板材の短辺部となっている。
【0018】
この構成によれば、一の浮き床パネルと、別の浮き床パネルの短辺部同士を嵌合させることができる。
【0019】
本開示の第4の側面では、前記金属製板材の材質は、鉄、ステンレス鋼及びアルミニウム合金のうちのいずれかである。
【0020】
この構成によれば、浮き床パネルで船舶の浮き床を構成する場合に、鉄、ステンレス鋼及びアルミニウム合金のうちのいずれかとすることで、高い耐火性を付与して安全性を高めることができる。
【0021】
本開示の第5の側面では、前記金属製板材の厚みは、2.3mm以上6.0mm以下である。
【0022】
この構成によれば、浮き床パネルで船舶の浮き床を構成する場合に、2.3mm以上の厚みを確保することで、床の剛性を十分に確保して良好な歩行感を得ることができるとともに、高い耐火性を付与して安全性を高めることができる。また、厚みを6.0mm以下とすることで、1枚の浮き床パネルの重量がそれほど重くならないので、設置時の作業性が良好になる。
【0023】
本開示の第6の側面では、前記金属製板材の重量が20kg以下である。
【0024】
この構成によれば、設置時に浮き床パネルを移動させる際の作業性が良好になる。
【0025】
本開示の第7の側面では、床構造体の上に浮き床を構成する金属製板材を備えた複数の浮き床パネルのそれぞれを複数の支持脚によって設置する浮き床パネルの設置方法を前提とすることができる。そして、平面視で長方形とされた前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、第1の辺部には、下方へ向けて延びる第1縦板部と、該第1縦板部の下端部から前記金属製板材の外方へ向けて延びる第1横板部と、該第1横板部の外端部から上方へ向けて前記第1縦板部の上端部よりも下方まで延びる第1外板部とを形成しておく。また、前記金属製板材の周縁部を構成している4つの辺部のうち、前記第1の辺部と向かい合う第2の辺部には、前記金属製板材と隣接して設置される別の浮き床パネルの金属製板材が有する前記第1縦板部の上端部に当接し、下方へ向けて前記別の金属製板材が有する前記第1横板部に達するまで延びる第1当接板部と、該第1当接板部の下端部から前記別の金属製板材が有する前記第1外板部まで延びる第1嵌合板部とを形成しておく。その後、前記浮き床パネルを前記支持脚で前記床構造体の上に支持する。次いで、前記別の浮き床パネルを上方から下方へ移動させて前記別の浮き床パネルの第1当接板部を、前記浮き床パネルの第1縦板部の上端部に当接させるとともに、前記別の浮き床パネルの第1嵌合板部を、前記浮き床パネルの第1縦板部と第1外板部との間に入れることができる。
【0026】
この構成によれば、浮き床パネル同士を容易に嵌合させることができるとともに、嵌合後の相対的な位置ずれを抑制することができる。
【0027】
本開示の第8の側面では、前記浮き床パネルを前記支持脚で前記床構造体の上に支持した後、前記支持脚に回転可能に支持されるとともに該支持脚から上方へ突出するネジ軸を、前記金属製板材に設けられたネジ孔に螺合させた状態で、前記金属製板材に設けられた貫通孔を介して回転させることによってレベル調整を行うものである。
【0028】
この構成によれば、浮き床パネルの設置後に、金属製板材の上方から支持脚のネジ軸を回転させることで、レベル調整を容易に行うことができる。
【0029】
本開示の第9の側面では、前記浮き床パネルを前記支持脚で前記床構造体の上に支持した後、隣接した前記金属製板材同士をスポット溶接により固定するものである。
【0030】
この構成によれば、隣接する金属製板材同士をスポット溶接することで、相対的な移動を確実に防止できる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、浮き床パネル同士の嵌合作業を容易にしながら、嵌合後の浮き床パネル同士の相対的な移動を抑制して仕上げ材の表面に亀裂が発生し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施形態に係る浮き床パネルの平面図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線断面図である。
【
図8】
図4におけるVII-VII線断面図である。
【
図9A】1枚目の浮き床パネルを置いた状態を示す平面図である。
【
図9B】2枚目の浮き床パネルを置いた状態を示す平面図である。
【
図9C】3枚目の浮き床パネルを置いた状態を示す平面図である。
【
図9D】4枚目の浮き床パネルを置いた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1~
図3は、本発明の実施形態に係る浮き床パネル1を示すものである。浮き床パネル1は、床構造体100(
図5及び
図6に示す)の上に複数の支持脚2によって支持され、床構造体100の上に浮き床F(
図4に示す)を構成する金属製板材10を備えた床構成部材である。本発明に係る浮き床Fは、例えば船舶の船室(居室、病室等)に設けることができる。船舶の場合、床構造体100は例えば船舶の甲板等である。また、本発明に係る浮き床Fは、例えば住宅等に設けることもできる。住宅等の場合、床構造体100は例えばコンクリートスラブ等である。以下の説明では、床構造体100が船舶の金属製甲板である場合について説明する。
【0035】
図4に示すように、浮き床Fは、複数の浮き床パネル1を水平方向に縦及び横に並べて設置することによって構成されている。各浮き床パネル1を構成している金属製板材10は、平面視で長方形とされており、従って金属製板材10の周縁部は、互いに向かい合う一対の長辺部11、12と、互いに向かい合う一対の短辺部13、14とを合わせて4つの辺部11~14で形成されている。金属製板材10における4つの辺部11~14で囲まれた長方形の領域が本体部15である。本体部15は水平になるように設置される部分である。
【0036】
一対の長辺部11、12のうち、
図1の上に位置する長辺部11を第1の辺部と呼び、
図1の下に位置する長辺部12を第2の辺部と呼ぶ。また、一対の短辺部13、14のうち、
図1の右に位置する短辺部13を第3の辺部と呼び、
図1の左に位置する短辺部14を第4の辺部と呼ぶ。これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、一対の短辺部13、14のうち、
図1の右に位置する短辺部13を第1の辺部と呼び、
図1の左に位置する短辺部14を第2の辺部と呼んでもよいし、一対の長辺部11、12のうち、
図1の上に位置する長辺部11を第3の辺部と呼び、
図1の下に位置する長辺部12を第4の辺部と呼んでもよい。また、各図では、金属製板材10を横長の長方形としているが、これに限らず、縦長の長方形であってもよい。
【0037】
金属製板材10が長方形であることから、第1の辺部11と第3の辺部13とは直角であり、また、第1の辺部11と第4の辺部14とは直角である。また、第2の辺部12と第3の辺部13とは直角であり、また、第2の辺部12と第4の辺部14とは直角である。そして、第1の辺部11と第2の辺部12とは互いに平行であり、また、第3の辺部13と第4の辺部14とは互いに平行である。
【0038】
金属製板材10の材質は、鉄、ステンレス鋼及びアルミニウム合金のうちのいずれかである。これにより、浮き床パネル1の強度を高めることができるとともに、高い耐火性を浮き床パネル1に付与することができる。金属製板材10の材質を鉄とする場合には、防食、耐食性のある亜鉛メッキ鋼板やガルバリウム鋼板(登録商標)等を使用することができる他、鉄に防錆塗装等を施して耐食性を向上させた板材を使用することができる。金属製板材10として、例えば電気亜鉛メッキ鋼板等を使用することもできる。
【0039】
金属製板材10の厚みは、2.3mm以上6.0mm以下の範囲で設定されている。金属製板材10の厚みを2.3mm以上確保することで、浮き床Fを構成した後の床の撓みを所定値以下とすることができるとともに、高い遮音性を確保することができる。すなわち、金属製板材10の厚みが2.3mm未満であると、例えば積載時や歩行時等に床の撓みが大きくなるとともに、遮音性が低くなるので、好ましくない。また、金属製板材10の厚みを6.0mm以下とすることで、浮き床パネル1の重量を所定重量以下とすることができ、船舶内で搬送する際の作業性や船室内で設置位置まで搬送する際の作業性が良好になり、施工性の面で好ましい。すなわち、金属製板材10の厚みが6.0mmを超えると、浮き床パネル1の厚みが無用に厚くなって浮き床パネル1の重量が重くなり、施工性の面で好ましくなくなる。金属製板材10の厚みの下限値を3.2mm以上とすることで、床の撓みを抑制できるとともに遮音性がより一層向上する。また、金属製板材10の厚みの上限値を4.5mm以下とすることで、施工性がより一層良好になる。
【0040】
金属製板材10の第1の辺部11及び第2の辺部12の長さは、例えば600mm以上1800mm以下の範囲で設定することができる。また、金属製板材10の第3の辺部13及び第4の辺部14の長さは、例えば300mm以上900mm以下の範囲で設定することができる。金属製板材10の各辺部11~14の長さ、金属製板材10の厚み、金属製板材10の材質により、金属製板材10の重量が変化するが、この実施形態では、1枚の金属製板材10の重量が20kg以下または18kg以下となるように、各辺部11~14の長さ及び厚みを設置し、材質を選定している。一例として、金属製板材10の第1の辺部11及び第2の辺部12の長さを900mmとし、金属製板材10の第3の辺部13及び第4の辺部14の長さを450mmとし、金属製板材10の厚みを3.2mmとし、金属製板材10を電気亜鉛メッキ鋼板とした場合には、1枚の金属製板材10の重量が15kg以下(例えば約14kg)になるので、施工性が良好になる。
【0041】
隣合う浮き床パネル1同士を嵌合させる際には、浮き床パネル1を水平方向に移動させるのではなく、上方から下方へ移動させることによって嵌合可能にしている。隣合う浮き床パネル1同士は、一の浮き床パネル1と、当該一の浮き床パネル1に隣接する別の浮き床パネル1とを嵌合させる。以下、隣合う浮き床パネル1同士の嵌合構造について具体的に説明する。
【0042】
図1~
図3は、隣合う浮き床パネル1のうち、一の浮き床パネル1を示しており、この一の浮き床パネル1の部分拡大図が
図5及び
図6である。
図5に示すように、一の浮き床パネル1の金属製板材10の第1の辺部11は、第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cを有している。第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cは、本体部15と一体成形されており、例えばプレス成形法によって第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cを成形できる。また、第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cは、本体部15とは別部材で構成されていてもよい。別部材とする場合には、第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cを成形した後、本体部15と結合して一体化する。第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cにより、上方に開放して第1の辺部11の延びる方向に長い溝が形成されることになる。平板状の本体部15の縁部に第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cを設けることにより、第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cがリブのように機能することになるので、浮き床パネル1の撓みが抑制されて歩行感が良好になる。尚、外方とは、浮き床パネル1の水平方向の外方であり、内方とは、浮き床パネル1の水平方向の内方である。
【0043】
第1縦板部11aは、本体部15から下方へ向けて延びるとともに、第1の辺部11の延びる方向に連続しており、本体部15に対して垂直となっている。第1縦板部11aの下端部は、床構造体100から上に離れて配置されており、床構造体100の上面に接触しないようになっている。第1横板部11bは、第1縦板部11aの下端部から金属製板材10の外方へ向けて延びるとともに、第1の辺部11の延びる方向に連続している。第1横板部11bは、本体部15と平行であり、この実施形態では水平であるが、傾斜していてもよい。傾斜させる場合、第1横板部11bの先端へ行くほど下に位置するように傾斜していてもよいし、第1横板部11bの先端へ行くほど上に位置するように傾斜していてもよい。
【0044】
第1外板部11cは、第1横板部11bの外端部から上方へ向けて第1縦板部11aの上端部よりも下方まで延びるとともに、第1の辺部11の延びる方向に連続している。従って、第1外板部11cの上下方向の寸法は、第1縦板部11aの上下方向の寸法よりも短く設定されている。また、この実施形態では、第1外板部11cと、第1縦板部11aとは平行になっているが、第1外板部11cの上端へ行くほど第1縦板部11aから離れるように、第1外板部11cが鉛直面に対して傾斜していてもよい。
【0045】
本体部15の上面から第1横板部11bの上面までの寸法C1は、15mm以上50mm以下の範囲で設定することができる。寸法C1を15mm以上確保することで後述するように嵌合させた際にしっかりと位置決めできる。また、寸法C1を50mm以下とすることで、床構造体100の上面との干渉を回避することができる。この実施形態では、寸法C1を20mm以上30mm以下の範囲で設定しており、具体的には25mm程度である。
【0046】
第1縦板部11aの外面から第1外板部11cの外面までの寸法C2は、15mm以上50mm以下の範囲で設定することができる。寸法C2を15mm以上確保することで後述するように嵌合させた際にしっかりと位置決めできる。また、寸法C2を50mm以下とすることで、嵌合部分が無用に大型化してしまうのを回避することができる。この実施形態では、寸法C2を15mm以上25mm以下の範囲で設定しており、具体的には20mm程度である。
【0047】
第1横板部11bの下面から第1外板部11cの上端部までの寸法C3は、15mm以上50mm以下の範囲で設定することができる。寸法C3を15mm以上確保することで後述するように嵌合させた際にしっかりと位置決めできる。また、寸法C3を50mm以下とすることで、隣接する浮き床パネル1の本体部15との干渉を回避することができる。この実施形態では、寸法C3を15mm以上25mm以下の範囲で設定しており、具体的には18.2mmである。
【0048】
図6に示すように、一の浮き床パネル1の金属製板材10の第2の辺部12は、第1当接板部12aと、第1嵌合板部12bとを有している。第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bは、本体部15にプレス成形等で一体成形してもよいし、本体部15とは別部材で構成してもよい。第1当接板部12a、第1嵌合板部12b及び本体部15により、内方へ開放して第2の辺部12の延びる方向に長い溝が形成されることになる。第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bを設けることによっても、第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bがリブのように機能するので、浮き床パネル1の撓みが抑制される。
【0049】
図8に示すように、第1当接板部12aは、金属製板材10と隣接して設置される別の浮き床パネル1の金属製板材10が有する第1縦板部11aの上端部に当接可能になっており、第1縦板部11aの上端部に当接する部分から下方へ向けて別の金属製板材10が有する第1横板部11bに達するまで延びている。第1当接板部12aは、第2の辺部12の延びる方向に連続しており、本体部15に対して垂直となっている。従って、第1縦板部11aと第1当接板部12aとは互いに平行である。
【0050】
第1嵌合板部12bは、第1当接板部12aの下端部から別の金属製板材10が有する第1外板部11cまで内方へ向けて延びるように形成されている。第1嵌合板部12bは、第2の辺部12の延びる方向に連続しており、本体部15に対して平行、かつ、第1当接板部12aに対して垂直となっている。従って、第1嵌合板部12bと、第1横板部11bとは互いに平行である。
【0051】
図6に示すように、本体部15の上面から第1当接板部12aの下端部までの寸法C4は、15mm以上50mm以下の範囲で設定することができる。寸法C4を15mm以上確保することで後述するように嵌合させた際にしっかりと位置決めできる。また、寸法C4を50mm以下とすることで、床構造体100の上面との干渉を回避することができる。この実施形態では、寸法C4を20mm以上30mm以下の範囲で設定しており、具体的には25mm程度である。
【0052】
第1当接板部12aの外面から第1嵌合板部12bの先端部までの寸法C5は、10mm以上50mm以下の範囲で設定することができる。寸法C5を15mm以上確保することで後述するように嵌合させた際にしっかりと位置決めできる。また、寸法C5を50mm以下とすることで、嵌合部分が無用に大型化してしまうのを回避することができる。この実施形態では、寸法C5を10mm以上20mm以下の範囲で設定しており、具体的には15mm程度である。
【0053】
図8に示すように、一の浮き床パネル1の第1の辺部11の第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cと、別の浮き床パネル1の第2の辺部12の第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bとを嵌合させることが可能になっている。嵌合状態では、一の浮き床パネル1の本体部15と、別の浮き床パネル1の本体部15との高さが同じになり、これら本体部15、15の間に段差ができないように、第1縦板部11a、第1横板部11b、第1外板部11c、第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bの寸法や形状、相対的な位置が設定されている。
【0054】
また、一の浮き床パネル1と別の浮き床パネル1との嵌合状態において、両浮き床パネル1を本固定する前の作業中などに、例えば一の浮き床パネル1を別の浮き床パネル1に対して水平方向に移動させるような外力が作用することが考えられる。この場合、一の浮き床パネル1が別の浮き床パネル1に対して容易に動かないように、第1縦板部11a、第1横板部11b、第1外板部11c、第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bの寸法や形状、相対的な位置が設定されている。つまり、第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cを、第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bに嵌合させた際に、一の浮き床パネル1が別の浮き床パネル1から水平方向に離れないようにしっかりと嵌合させて両浮き床パネル1を一体化することができる。
【0055】
また、一の浮き床パネル1と別の浮き床パネル1との嵌合状態において、一の浮き床パネル1の第1縦板部11aと、別の浮き床パネル1の第1当接板部12aとが互いに当接しているので、浮き床パネル1の下から上への騒音の漏れ、上から下への騒音の漏れが抑制される。さらに、上記嵌合状態において、一の浮き床パネル1の第1横板部11bと、別の浮き床パネル1の第1嵌合板部12bとが互いに上下方向に当接しているので、このことによっても、浮き床パネル1の下から上への騒音の漏れ、上から下への騒音の漏れが抑制される。つまり、本実施形態に係る嵌合構造によれば、空気を伝って伝播する音を遮断する効果を高めることができる。
【0056】
また、
図1及び
図2に示すように、第3の辺部13には、第1の辺部11の第1縦板部11a、第1横板部11b及び第1外板部11cと同様に構成された第2縦板部13a、第2横板部13b及び第2外板部13cが設けられている。また、第4の辺部14には、第2の辺部12の第1当接板部12a及び第1嵌合板部12bと同様に構成された第2当接板部14a及び第2嵌合板部14bが設けられている。したがって、一の浮き床パネル1の第3の辺部13の第2縦板部13a、第2横板部13b及び第2外板部13cと、別の浮き床パネル1の第4の辺部14の第2当接板部14a及び第2嵌合板部14bとを嵌合させることが可能になっている。
【0057】
図4及び
図8に示すように、一の浮き床パネル1の金属製板材10と、別の浮き床パネル1の金属製板材10とは、スポット溶接により固定されている。スポット溶接部を符号Wで示す。スポット溶接部Wは、浮き床パネル1の嵌合後に周知の溶接装置によって設けることができる。スポット溶接部Wは、1箇所であってもよいし、複数箇所であってもよい。複数箇所にする場合、例えば200mm以上500mm以下の間隔でスポット溶接部Wを設ければよい。
【0058】
(支持脚)
上記のように構成された浮き床パネル1は支持脚2によって床構造体100の上に支持される。
図7に支持脚2の構造例を示している。支持脚2は、ゴム製の下側部材20と、下側部材20の上端部に固定された金属製の板状部材21と、板状部材21に取り付けられたネジ軸22とを備えている。支持脚2の高さによって浮き床パネル1の床構造体100からの高さを設定することができる。この実施形態では、浮き床パネル1の床構造体100からの高さが30mm以上500mm以下の範囲となるように、支持脚2の高さを設定している。浮き床パネル1の床構造体100からの高さを30mm以上にすることで、床構造体100の不陸を吸収して複数の浮き床パネル1を水平に設置することが可能になる。また、浮き床パネル1の下に電気配線や配管を設置する場合には、浮き床パネル1の床構造体100からの高さを500mmの範囲まで設定することができる。
【0059】
下側部材20は、下へ行くほど大径の中空状に形成されており、例えば防振性の高いゴム材料で構成されている。下側部材20の下端部が床構造体100の上面に当接する部分である。板状部材21は、平面視で円形状となっており、その中心部にはネジ軸22を回転可能に支持する円形の支持孔21aが形成されている。
【0060】
ネジ軸22は上下方向に延びる姿勢とされて板状部材21の支持孔21aに差し込まれた状態で支持されている。ネジ軸22の上側部分は、板状部材21の上面から上方へ突出している。ネジ軸22の上端面には、工具(図示せず)が係合する工具係合部22aが設けられている。工具係合部22aは、工具の形状に応じた形状を有しており、例えば工具がマイナスドライバーであればマイナス型の凹部を有し、また、工具がプラスドライバーであればプラス型の凹部を有し、また、工具が六角レンチであれば平面視で正六角形の凹部を有している。工具係合部22aに工具を係合させることで、ネジ軸22を回転させることが可能になる。
【0061】
支持脚2の構造は上述した構造に限られるものではなく、ゴム製の部材を設けることなく、金属製の部材のみで構成したものや、樹脂製の部材のみで構成したものであってもよい。また、支持脚2は、床構造体100の上面に載置しただけであってもよいし、床構造体100の上面に接着剤によって接着してもよいし、床構造体100の上面に溶接によって固定してもよい。
【0062】
図1に示すように、1枚の金属製板材10を複数の支持脚2で支持するようにしており、この実施形態では5つの支持脚2で1枚の金属製板材10を支持するようにしている。すなわち、金属製板材10の4つの角部近傍と、中央部とには、それぞれ、貫通孔10aが形成されている。
図5及び
図6に示すように、各貫通孔10aの内部には、金属製板材10の下方へ突出する筒状部材10bが配置されている。この筒状部材10bは金属製板材10に対して厚み方向両側からかしめ固定されているが、例えば溶接等で固定されていてもよい。支持脚2の数は、5つに限定されるものではなく、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。
【0063】
筒状部材10bは上下両端部がそれぞれ開放されている。筒状部材10bの内部には、上下方向に延びるネジ孔10cが形成されている。ネジ孔10cには、支持脚2のネジ軸22が下方からねじ込まれる。これにより、貫通孔10aが閉塞される。ネジ軸22がネジ孔10cにねじ込まれた状態で、支持脚2が金属製板材10に結合される。ネジ軸22を、金属製板材10に設けられたネジ孔10cに螺合させた状態で、金属製板材10に設けられた貫通孔10aを介して回転させることによってレベル調整を行うことができる。例えば、浮き床パネル1の設置後、金属製板材10の貫通孔10aから工具を差し込んでネジ軸22の工具係合部22aに係合させてネジ軸22を回転させると、ネジ軸22に対する筒状部材10bの高さを変えることができる。ネジ軸22の回転方向によって筒状部材10bを高くすることも、低くすることもできる。尚、筒状部材10bは、例えばナットであってもよい。
【0064】
このように、支持脚2によって浮き床パネル1を部分的に支持しているので、床パネル全面で支持する構造に比べて、軽量化することができるとともに、施工性が良好になる。また、床パネル全面で支持する構造の場合、レベル調整が困難であるが、本実施形態のように支持脚2で部分的に支持する構造とすることで、レベル調整が容易になる。
【0065】
(空気音遮断性能)
本実施形態に係る浮き床パネル1及び支持脚2を用いて
図4に示すような浮き床Fを構築できる。この浮き床Fの空気音遮断性能について説明する。空気音遮断性能試験は、日本建築総合試験所に於ける空気音遮断性能試験である。試験条件としては、床構造体100は船舶の床を想定しており、6mm厚の鋼板とした。また、浮き床パネル1は、SECC鋼板(電気亜鉛メッキ鋼板)3.2mm厚で、床構造体100の上に支持脚2を用いて支持した。浮き床パネル1の床構造体100からの高さは50mmとした。この条件で、重みつき音響透過損失の測定結果がRw-47であった。
【0066】
一般的に重みつき音響透過損失の測定結果がRw-45を上回る性能を得るためには、何層かの材料を積層して浮き床パネルを構成する必要があるが、本実施形態では、3.2mm厚の単層の浮き床パネル1の状態でRw-45を上回る性能を得ることができた。
【0067】
(浮き床パネルの設置方法)
次に、浮き床パネル1の設置方法について説明する。
図4は、船舶のある船室の床構造体100の上に複数の支持脚2を用いて複数の浮き床パネル1を設置した後を示している。この
図4に示すような浮き床構造を構築する際には、
図9Aに示すように、船室の角部の床構造体100に1枚目の浮き床パネル1Aを5つの支持脚2Aで支持する。その後、
図9Bに示すように、2枚目の浮き床パネル1Bを置く。
図8を例にして説明すると、1枚目の浮き床パネル1Aは、
図8の左側のパネルに相当し、2枚目の浮き床パネル1Bは、
図8の右側のパネルに相当する。よって、1枚目の浮き床パネル1Aの第1の辺部11と2枚目の浮き床パネル1Bの第2の辺部12とを嵌合させる。この嵌合状態では、2枚目の浮き床パネル1Bの第2の辺部12近傍の荷重を1枚目の浮き床パネル1Aの第1の辺部11で受けることができるので、
図9Bに示すように、1枚目の浮き床パネル1Aの第1の辺部11近傍を支持する支持脚2Aによって2枚目の浮き床パネル1Bの第2の辺部12近傍を支持することができる。これにより、2枚目の浮き床パネル1Bを直接支持する支持脚2Bの数は3つで済み、低コスト化を図ることができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0068】
次に、
図9Cに示すように、3枚目の浮き床パネル1Cを置く。この場合、1枚目の浮き床パネル1Aの第3の辺部13と3枚目の浮き床パネル1Cの第4の辺部14とを嵌合させる。この嵌合状態では、3枚目の浮き床パネル1Cの第4の辺部14近傍の荷重を1枚目の浮き床パネル1Aの第3の辺部13で受けることができるので、1枚目の浮き床パネル1Aの第3の辺部13近傍を支持する支持脚2Aによって3枚目の浮き床パネル1Cの第4の辺部14近傍を支持することができる。これにより、3枚目の浮き床パネル1Cを直接支持する支持脚2Cの数は3つで済み、低コスト化を図ることができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0069】
その後、
図9Dに示すように、4枚目の浮き床パネル1Dを置く。この場合、3枚目の浮き床パネル1Cの第1の辺部11と4枚目の浮き床パネル1Dの第2の辺部12とを嵌合させる。この嵌合状態では、4枚目の浮き床パネル1Dの第2の辺部12近傍の荷重を3枚目の浮き床パネル1Cの第1の辺部11で受けることができるので、3枚目の浮き床パネル1Cの第1の辺部11近傍を支持する支持脚2C及び1枚目の浮き床パネル1Aの第1の辺部11近傍を支持する支持脚2Aによって4枚目の浮き床パネル1Dの第2の辺部12近傍を支持することができる。
【0070】
また、2枚目の浮き床パネル1Bの第3の辺部13と4枚目の浮き床パネル1Dの第4の辺部14とを嵌合させる。この嵌合状態では、4枚目の浮き床パネル1Dの第4の辺部14近傍の荷重を2枚目の浮き床パネル1Bの第3の辺部13で受けることができるので、2枚目の浮き床パネル1Bの第3の辺部13近傍を支持する支持脚2B及び1枚目の浮き床パネル1Aの第1の辺部11近傍を支持する支持脚2Aによって4枚目の浮き床パネル1Dの第4の辺部14近傍を支持することができる。これにより、4枚目の浮き床パネル1Dを直接支持する支持脚2Dの数は2つで済み、低コスト化を図ることができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0071】
以上のようにして、5枚目、6枚目、…の浮き床パネル1を設置していく。上述した例では、2枚目の浮き床パネル1B、3枚目の浮き床パネル1C及び4枚目の浮き床パネル1Dの支持脚2を1枚目の浮き床パネル1Aよりも少なくできるので、2枚目の浮き床パネル1B、3枚目の浮き床パネル1C及び4枚目の浮き床パネル1Dでは、開放したままになる貫通孔10aが存在することになる。貫通孔10aが開放されたままであると、後工程で浮き床パネル1の上に床仕上げ材となるデッキコンポジション(樹脂モルタル)を施工する際に、デッキコンポジションが貫通孔10aから下へ流れ落ちてしまうおそれがある。このことに対し、
図8に示すように、支持脚2が取り付けられない貫通孔10aには、穴埋ボルト30をネジ孔10cに下方からねじ込んで閉塞しておく。尚、穴埋ボルト30の代わりに、図示しないが例えばアルミテープ等の閉塞部材を用いて貫通孔10aを閉塞してもよい。また、貫通孔10aを閉塞しておくことで、騒音の透過を抑制することもできる。
【0072】
上述した例では、1枚目から4枚目の全ての浮き床パネル1A~1Dが同じである場合について説明したが、2枚目から4枚目の全ての浮き床パネル1B~1Dでは支持脚2の数を減らすことができるので、支持脚2の数に対応した数の貫通孔10aが設けられた浮き床パネル1B~1Dを予め用意してもよい。これにより、上記閉塞部材を用いた処理は不要になる。
【0073】
浮き床パネル1の設置の際、船体の鋼壁からの振動が浮き床パネル1に伝達するのを抑制する観点から、鋼壁と浮き床パネル1とは接触させないようにするのが好ましい。船体の鋼壁と、浮き床パネル1の周縁部との間に、例えばロックウール、グラスウール等の不燃性の繊維系緩衝材31(
図4に示す)を入れることで、鋼壁からの振動伝達を抑制できる。
【0074】
浮き床パネル1と船体の鋼壁とは、例えば5mm以上50mm以下の範囲で離しておき、この隙間に繊維系緩衝材31を入れることができる。繊維系緩衝材31は、圧縮されて密度の高い状態で上記隙間に入れるのが好ましい。これにより、騒音が漏れにくくなる。一例として、例えば厚みが25mm、密度100kg/m3のロックウールを繊維系緩衝材31として浮き床パネル1と船体の鋼壁との間に入れることができる。
【0075】
図4に示すように、船室の床面積によっては、一部の浮き床パネル1のみ、他の浮き床パネル1に比べて長さを短くしたり、幅を狭くする。これにより、様々な床面積の船室に施工することができる。浮き床パネル1の長さや幅は、浮き床パネル1を切断することによって変更できるが、支持脚2の取付用のネジ孔10cが無くなる場合もある。この場合、
図10に示すような補助支持脚200を浮き床パネル1における鋼壁側の下面に取り付ける。補助支持脚200は、支持脚2と同様に構成された下側部材201、板状部材202及びネジ軸203を有するとともに、支持板204も有している。支持板204は、
図11に示すように円形であり、浮き床パネル1における鋼壁側の下面に対して、例えばスポット溶接等により固定される。支持板204の中央部には貫通孔204aが形成されている。貫通孔204aの内部には、下方へ突出する筒状部材205が配置されている。この筒状部材205は支持板204に対してかしめ固定または溶接されている。
【0076】
筒状部材205は上下両端部がそれぞれ開放されている。筒状部材205の内部には、上下方向に延びるネジ孔205aが形成されている。ネジ孔205aには、ネジ軸203が下方からねじ込まれる。補助支持脚200を設けることで、浮き床パネル1の撓みを抑制できる。
【0077】
船室内の全ての浮き床パネル1を支持脚2で床構造体100の上に支持した後、上記レベル調整を行う。すなわち、支持されている浮き床パネル1が水平になっているか否かを水平器(例えばレーザー変位計等)を用いて測定し、全ての浮き床パネル1が水平になるように、各支持脚2(補助支持脚200も含む)のネジ軸22(ネジ軸203)を工具で回転させてレベル調整を行う。
【0078】
レベル調整後、
図8に示すように、隣合う浮き床パネル1の金属製板材10同士をスポット溶接してスポット溶接部Wを形成する。
図4にもスポット溶接部Wを示している。
【0079】
その後、デッキコンポジションによる床仕上げ工程に移るが、その前に、レベル調整したネジ軸22(ネジ軸203)を固定する工程を行う。例えばネジ軸22を筒状部材10bにスポット溶接や接着剤で固定する工程、ネジ軸203を筒状部材205にスポット溶接や接着剤で固定する工程を行う。これにより、長期間の使用によってネジ軸22(ネジ軸203)が回転することはなく、レベルの変化を抑制できる。
【0080】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、複数枚の浮き床パネル1を水平方向に並べ、浮き床パネル1のそれぞれを複数の支持脚2によって床構造体100の上に支持することにより、床構造体100の上に浮き床Fを構築できる。具体的には、
図8に示すように、右側の浮き床パネル1の第1当接板部12aを、左側の浮き床パネル1の第1縦板部11aの上端部に当接させるとともに、右側の浮き床パネル1の第1嵌合板部12bを、左側の浮き床パネル1の第1縦板部11aと第1外板部11cとの間に入れて嵌合させることができる。
【0081】
つまり、
図8の右側の浮き床パネル1を後から設置する際には、床構造体100の上方から下へ移動させるのが通常であるが、この通常の動作及び浮き床パネル1の自重を利用することで、左側の浮き床パネル1の第1の辺部11と、右側の浮き床パネル1の第2の辺部12とを嵌合させることができるので、従来のように浮き床パネルを水平方向に移動させて突き合わせによる嵌合の場合に比べて作業が容易になる。
【0082】
しかも、嵌合した後は、右側の浮き床パネル1の第1当接板部12aが左側の浮き床パネル1の第1縦板部11aの上端部に当接し、さらに、第1嵌合板部12bが第1縦板部11aと第1外板部11cとの間に配置されるので、両浮き床パネル1、1の水平方向への相対変位が抑制される。これにより、デッキコンポジションによる仕上げ材の表面に亀裂が発生し難くなる。
【0083】
また、浮き床パネル1、1同士を上下に嵌合させているので、嵌合部位において支持脚2を共通化することができ、支持脚2の数を減らすことができる。
【0084】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、船舶の居室以外にも、各種住居の居室に本実施形態を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明に係る浮き床パネル及び浮き床パネルの設置方法は、例えば船舶の船室等に適用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1 浮き床パネル
2 支持脚
10 金属製板材
11 第1の辺部
11a 第1縦板部
11b 第1横板部
11c 第1外板部
12 第2の辺部
12a 第1当接板部
12b 第1嵌合板部
13 第3の辺部
14 第4の辺部
100 床構造体
F 浮き床