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  • 特開-スクラバシステム 図1
  • 特開-スクラバシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039492
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】スクラバシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/92 20060101AFI20230314BHJP
   F01N 3/04 20060101ALI20230314BHJP
   B63H 21/32 20060101ALI20230314BHJP
   B63B 83/40 20200101ALI20230314BHJP
【FI】
B01D53/92 331
F01N3/04 A
B01D53/92 215
B01D53/92 ZAB
B01D53/92 224
B63H21/32 Z
B63B83/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146616
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大津 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】陳岡 克哉
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AB15
3G091BA01
3G091BA20
3G091CA16
4D002AA02
4D002AA12
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA14
4D002CA01
4D002DA36
4D002GA03
4D002GB05
4D002HA01
(57)【要約】
【課題】スクラバシステムを省電力化する。
【解決手段】排気ガスを浄化するスクラバシステム100は、スクラバ110と、スクラバ水を供給するポンプ121a~121cと、発電機140とを備え、ポンプ121a~121cは互いに同一の定格流量を有し全台数の定格流量の合計がスクラバ110に必要とされる最大必要流量以上であり、かつ、全台数よりも1台少ない台数の定格流量の合計である部分合計定格流量が、上記最大必要流量よりも少なく設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用エンジンの排気ガスを浄化するスクラバシステムであって、
スクラバ水によって排気ガスを浄化するスクラバと、
上記スクラバにスクラバ水を供給する複数のポンプと、
上記ポンプに電力を供給する発電機と、
を備え、
上記複数のポンプは、
互いに同一の定格流量を有し、
全台数の定格流量の合計が、上記スクラバに必要とされる最大必要流量以上であり、かつ、
全台数よりも1台少ない台数のポンプによる運転流量の合計である部分合計運転流量が、上記最大必要流量よりも少なく設定されていることを特徴とするスクラバシステム。
【請求項2】
請求項1のスクラバシステムであって、
上記部分合計運転流量は、スクラバシステムが用いられる船舶の定常運航状態において必要とされる定常最大必要流量以上であることを特徴とするスクラバシステム。
【請求項3】
請求項2のスクラバシステムであって、
上記定常運航状態と、それよりも多くの流量がスクラバに必要とされる状態とで、上記ポンプの運転台数が切り替えられるように構成されたことを特徴とするスクラバシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用エンジンの排気ガスに含まれる硫黄酸化物等を除去するスクラバを有するスクラバシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶用ディーゼルエンジン等では、排気ガスを海水に通すことにより、排気ガス中の硫黄酸化物等を除去するスクラバが用いられる。上記スクラバに適切な量の海水を供給するためには、エンジンの出力や排気ガス中の硫黄酸化物の濃度等に応じて、運転するポンプの台数や回転数を制御することによりポンプの流量を変化させる制御が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5958563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにエンジンの出力や排気ガス中の硫黄酸化物の濃度等に応じてポンプの流量を変化させる場合、ポンプのモータに電力を供給する発電機は、最大の流量に応じた電力を常時発電し得るようにされる必要がある。このため、上記のようにポンプの流量は適切に制御されるとしても、発電機による発電能力は、必ずしも適切に制御されるとは限らないことになる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、消費電力を小さく抑えて省電力化を容易に図り得るようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、
船舶用エンジンの排気ガスを浄化するスクラバシステムであって、
スクラバ水によって排気ガスを浄化するスクラバと、
上記スクラバにスクラバ水を供給する複数のポンプと、
上記ポンプに電力を供給する発電機と、
を備え、
上記複数のポンプは、
互いに同一の定格流量を有し、
全台数の定格流量の合計が、上記スクラバに必要とされる最大必要流量以上であり、かつ、
全台数よりも1台少ない台数のポンプによる運転流量の合計である部分合計運転流量が、上記最大必要流量よりも少なく設定されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、例えば定常運航状態において、消費電力を小さく抑えることができるので、全体として省電力化を図ることが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力を小さく抑えて省電力化を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】スクラバシステムの概略構成を示す説明図である。
図2】海水の最大必要流量と運航時間のカバー率との関係の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(スクラバシステム100の概略構成)
スクラバシステム100は、例えば図1に示すように、船舶用のディーゼルエンジン130の排気ガスに含まれるSOxや、NOx、未燃カーボンなどを海水(スクラバ水)によって除去するスクラバ110を有している。
【0012】
上記海水は、例えばポンプ装置120によってスクラバ110に供給される。ポンプ装置120には、それぞれモータ122a~122cによって駆動される例えば3台のポンプ121a~121cが設けられる。上記モータ122a~122cへの電力は、船舶内で消費される電力と同様に、ディーゼルエンジン130によって駆動される発電機140から供給される。
【0013】
上記3台のポンプ121a~121cの運転状態、および発電機140による発電可能電力は、制御装置150によって制御されるようになっている。具体的には、例えば、ポンプ121a~121cの運転状態は、モータ122a~122cのON/OFFによって制御される。また、発電機140による発電可能電力は、ディーゼルエンジン130の出力、すなわち燃料噴射量を制御することによって、制御されるようになっている。
【0014】
(ポンプ121a~121cの定格流量について)
まず、ポンプ装置120によってスクラバ110に供給する海水の流量の例について説明する。
【0015】
船舶の運航時においてスクラバ110に供給が必要とされる最大必要流量を100%とすると、通常、そのような最大必要流量の海水がスクラバ110に供給されるのは、例えば、機関最大出力でECA(Emission Control Area)海域を航行する場合で、しかも硫黄分が3.5%などと多い燃料が使用される場合など特殊な運航状態の時であり、その他の定常運航状態で必要とされる定常最大必要流量は、例えば上記最大必要流量の80~90%以下程度などである。また、そのような定常運航状態である運航時間は、例えば全運航時間の99%以上程度などである。
【0016】
すなわち、例えば、図2に示すように、スクラバ110への供給流量が最大必要流量の90%以上であれば、船舶の全運航時間の99%以上がカバーされ、1%未満の運航時間だけ、最大必要流量(100%)の海水が供給される必要があることになる。しかも、上記最大必要流量が必要とされる特殊な運航状態は、船舶の運航において予定された状態であるため、事前にディーゼルエンジン130の出力を制御して発電機140による発電可能電力を制御したり、モータ122a~122cのON/OFFを切り替えてポンプ装置120の運転状況を制御したりすることが可能である。
【0017】
そこで、例えば、最大必要流量が400m/Hrとすると、ポンプ121a~121cは、下記(表1)に示すように、運転流量が、それぞれ180m/Hr(45%)、合計で360m/Hr(90%)になるように設定されている。すなわち、全運航時間の99%以上である定常運航状態では、ポンプ121a~121cのうちの2台だけが運転状態とされ、合計で360m/Hr(部分合計運転流量)、すなわち最大必要流量の90%の海水がスクラバ110に供給される。
【0018】
ここで、ポンプ121a~121cの定格流量は、2台の合計(部分合計定格流量)が最大必要流量よりも少なく設定するのでもよいが、定格流量が400m/Hrのポンプで400m/Hrの運転流量が得られるように配管の流路抵抗などが設定されているとすると、運転流量を例えば360m/Hrにするためには、例えば、ポンプ121a~121cの定格流量は、配管抵抗の減少分を考慮すると、それぞれ160m/Hrなどにすることができる。
【0019】
また、例えば定常運航状態よりも多くの流量がスクラバに必要とされる状態である、全運航時間の1%未満などの時間だけ、全部で3台のポンプ121a~121cが運転状態とされ、最大必要流量の100%(400m/Hr)以上である135%(540m/Hr)の海水がスクラバ110に供給可能にされる。ただし、実際には、流路を絞ることにより運転流量は400m/Hrとなるようにすることができる。
【0020】
ここで、同一定格流量のポンプを3台とすることで上記のように定常運航は2台のポンプを使用し、3台目のポンプは予備のポンプとして、何れか1台のポンプが故障しても、例えば全運航時間の99%以上は通常通りに運航を続けることができる。また、そのように1台のポンプが故障した場合、最大必要流量(100%)の海水を供給できなかったとしても、全運航時間の1%未満などの期間において、使用される燃料の硫黄分が多い場合で、かつ、機関最大出力でのECA海域の航行など最も厳しい条件での運航が制限されるだけで、実際上、全体の運航に与える影響は回避または少なく抑えることが容易にできる。
【0021】
上記のように、ポンプ装置120による海水の供給流量が制御される場合、定常運航状態では、ポンプ121a~121cのうちの2台が例えばそれぞれ180m/Hrの海水を供給できればよく、また、そのためには各ポンプ121a~121cの定格流量は、配管抵抗等の減少も考慮して例えば160m/Hrなどに設定することができ、消費電力を低減することが容易にできる。それゆえ、全運航時間の99%以上である定常運航状態において、発電機140による発電可能電力を小さく抑えることなどができるので、全体として省電力化を図ることが容易にできる。本実施形態では、定常運航状態のポンプを2台として、予備のポンプを入れて全台数を3台構成としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、定常運航状態のポンプを例えば3台とし、予備のポンプをいれて全台数を4台構成とするようにしてもよい。
【0022】
【表1】
【符号の説明】
【0023】
100 スクラバシステム
110 スクラバ
120 ポンプ装置
121a~121c ポンプ
122a~122c モータ
130 ディーゼルエンジン
140 発電機
150 制御装置
図1
図2