(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039503
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】樹脂用添加剤、樹脂組成物および樹脂表面成分コントロール方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230314BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20230314BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20230314BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/02
C08K5/10
C08K5/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146638
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】509328892
【氏名又は名称】株式会社 ガラステクノシナジー
(71)【出願人】
【識別番号】514082295
【氏名又は名称】マスダ商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391048049
【氏名又は名称】滋賀県
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】國領 一人
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸次
(72)【発明者】
【氏名】神澤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】平尾 浩一
(72)【発明者】
【氏名】上田中 隆志
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 博之
(72)【発明者】
【氏名】松本 正
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BG011
4J002CF001
4J002EH006
4J002EH046
4J002EH096
4J002EH146
4J002EJ067
4J002FD026
(57)【要約】
【課題】樹脂用添加剤、および、前記樹脂用添加剤による抗菌性等の効果を持続的にコントロール可能な樹脂組成物を得る。
【解決手段】 エステル系可塑剤およびポリフェノール類を含み、エステル系可塑剤は、主たる成分のモル質量が150以上であって、一塩基酸または多塩基酸と、グリコール、メタノール、エタノール、プロパノールおよびグリコールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のアルコール類とから構成される樹脂用添加剤。樹脂組成物は、前記樹脂用添加剤と特定の熱可塑性樹脂とを含み、熱可塑性樹脂100重量部に対する樹脂用添加剤の量が、0.1重量部以上100重量部以下の範囲内にある。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系可塑剤およびポリフェノール類を含み、
前記エステル系可塑剤は、主たる成分のモル質量が150以上であって、
一塩基酸または多塩基酸と、
グリコール、メタノール、エタノール、プロパノールおよびグリコールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のアルコール類とから構成される
ことを特徴とする樹脂用添加剤。
【請求項2】
前記多塩基酸が、コハク酸またはアジピン酸である、請求項1記載の樹脂用添加剤。
【請求項3】
前記グリコールエーテルが、エチレングリコールモノアルキルエーテルである、請求項1または2記載の樹脂用添加剤。
【請求項4】
前記グリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルである、請求項1または2記載の樹脂用添加剤。
【請求項5】
前記ポリフェノール類が、カテキン類である、請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂用添加剤。
【請求項6】
前記エステル系可塑剤100重量部に対する前記ポリフェノール類の量が、1重量部以上100重量部以下の範囲内にある、請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂用添加剤。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂用添加剤と、樹脂群Aの樹脂および樹脂群Bの樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記樹脂用添加剤の量が、0.1重量部以上100重量部以下の範囲内にあることを特徴とする樹脂組成物。
樹脂群A:ポリオレフィン系樹脂
樹脂群B:酢酸ビニル共重合オレフィン樹脂およびポリ酢酸ビニル、これらを全部または部分ケン化したもの、さらにこれらにアルデヒドを反応させることなどにより得られるポリビニルアセタール類、
酢酸ビニル共重合オレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ならびに、クロロプレン系ゴム
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項7記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂群Aの樹脂100重量部に対する前記樹脂群Bの樹脂の量が、2重量部以上20重量部以下の範囲内にある、請求項7または8記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂用添加剤と、樹脂群Aの樹脂および樹脂群Bの樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の調製時において、
前記樹脂群Aの樹脂の含有量と前記樹脂群Bの樹脂の含有量との重量比を変えることによって前記樹脂組成物の表面に存在する前記樹脂用添加剤の量を制御することを特徴とする、樹脂表面成分コントロール方法。
樹脂群A:ポリオレフィン系樹脂
樹脂群B:酢酸ビニル共重合オレフィン樹脂およびポリ酢酸ビニル、これらを全部または部分ケン化したもの、さらにこれらにアルデヒドを反応させることなどにより得られるポリビニルアセタール類、
酢酸ビニル共重合オレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ならびに、クロロプレン系ゴム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂用添加剤、樹脂組成物および樹脂表面成分コントロール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛生意識が高まっており、樹脂製品においても抗菌性が求められている。従来から、抗菌性付与の手段として、樹脂に抗菌成分を練りこんだり、抗菌成分を有する塗料を表面に塗布するといった方法が検討されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかし、練り込み法を用いた場合は、練り込んだ抗菌剤の樹脂への分散性が不充分となり、性状や意匠性の保持が充分ではなかった。加えて、これらの方法では、いずれも、長期間経過後や、表面が拭き取られたりするという状況においては、抗菌性の維持は困難であった。近年では、特に、樹脂製品における持続的な抗菌性が求められており、この観点での製品開発が急がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するものであり、ポリフェノール類と、ポリフェノール類との親和性に優れ、高温においても使用可能な特定の可塑剤とを含む樹脂用添加剤によって、ポリフェノール類が樹脂に微分散し性状や意匠性に優れた樹脂組成物、さらには前記添加剤による抗菌性等の効果を持続的にコントロール可能な樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤およびポリフェノール類を含み、
前記エステル系可塑剤は、主たる成分のモル質量が150以上であって、
一塩基酸または多塩基酸と、
グリコール、メタノール、エタノール、プロパノールおよびグリコールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のアルコール類とから構成される
ことを特徴とする。
【0006】
本発明の樹脂用添加剤において、前記多塩基酸が、コハク酸またはアジピン酸であることが好ましい。
【0007】
本発明の樹脂用添加剤において、前記グリコールエーテルが、エチレングリコールモノアルキルエーテルであることが好ましい。
【0008】
本発明の樹脂用添加剤において、前記グリコールエーテルが、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルであることが好ましい。
【0009】
本発明の樹脂用添加剤において、前記ポリフェノール類が、カテキン類であることが好ましい。
【0010】
本発明の樹脂用添加剤において、前記エステル系可塑剤100重量部に対する前記ポリフェノール類の量が、1重量部以上100重量部以下の範囲内にあることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂組成物は、前記本発明の樹脂用添加剤と、樹脂群Aの樹脂および樹脂群Bの樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記樹脂用添加剤の量が、0.1重量部以上100重量部以下の範囲内にあることを特徴とする。
樹脂群A:ポリオレフィン系樹脂
樹脂群B:酢酸ビニル共重合オレフィン樹脂およびポリ酢酸ビニル、これらを全部または部分ケン化したもの、さらにこれらにアルデヒドを反応させることなどにより得られるポリビニルアセタール類、
酢酸ビニル共重合オレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ならびに、クロロプレン系ゴム
【0012】
本発明の樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂が、ポリ酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0013】
本発明の樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル系樹脂が、脂肪族ポリエステルおよび脂肪族芳香族ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物において、前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル系樹脂を含み、前記ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸であることが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂組成物において、前記樹脂群Aの樹脂100重量部に対する前記樹脂群Bの樹脂の量が、2重量部以上20重量部以下の範囲内にあることが好ましい。
【0016】
本発明の樹脂表面成分コントロール方法は、前記本発明の樹脂用添加剤と、前記樹脂群Aの樹脂および前記樹脂群Bの樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の調製時において、
前記樹脂群Aの樹脂の含有量と前記樹脂群Bの樹脂の含有量との重量比を変えることによって前記樹脂組成物の表面に存在する前記樹脂用添加剤の量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポリフェノール類と、ポリフェノール類との親和性に優れ、高温においても使用可能な特定の可塑剤とを含む樹脂用添加剤によって、ポリフェノール類が樹脂に微分散し性状や意匠性に優れた樹脂組成物、さらには前記添加剤による抗菌性等の効果を持続的にコントロール可能な樹脂組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例17の樹脂組成物表面の顕微鏡画像の写真である。
【
図2】
図2は、参考例の樹脂組成物表面の顕微鏡画像の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。本発明の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤およびポリフェノール類を含む。発明者らは、主たる成分のモル質量が150以上であって、一塩基酸または多塩基酸と、グリコール、メタノール、エタノール、プロパノールおよびグリコールエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種以上のアルコール類とから構成されるエステル系可塑剤が、ポリフェノール類との親和性に優れていることを見出し、前記エステル系可塑剤とポリフェノール類とを用いることで、ポリフェノール類が高濃度であっても均一に混合可能な樹脂用添加剤を得たものである。
【0020】
エステル系可塑剤としては、アジピン酸ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)、フタル酸ビス(2-メトキシエチル)、アジピン酸ビス(2-メトキシエチル)、アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノエート)、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール等を用いることができる。エステル系可塑剤を構成する多塩基酸は、コハク酸またはアジピン酸であることが好ましい。また、エステル系可塑剤を構成するグリコールエーテルは、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルであることが好ましく、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルであることがさらに好ましい。前記エステル系可塑剤としては、1種類を単独で配合してもよく、2種以上の前記エステル系可塑剤を併用してもよい。また、前記多塩基酸と2種以上の前記アルコール類からなる混基エステルとして用いても構わない。
【0021】
前記エステル系可塑剤は、主たる成分のモル質量が150以上である。可塑剤は、樹脂用添加剤であり、100℃以上や、場合によっては150℃を超える高温で使用することが必要である。主たる成分のモル質量が150未満であると、エステル系可塑剤が樹脂との混練中に揮発し、作業環境・取扱性が悪化する場合がある。前記モル質量は、好ましくは200以上であり、さらに好ましくは300以上である。
【0022】
ポリフェノール類としては、(-)エピカテキン、(-)エピガロカテキン、(-)エピガロカテキンガレート、(-)エピカテキンガレート、アントシアニン、イソフラボン、エラグ酸、オレウロペイン、クルクミン、クロロゲン酸、リグナン、緑茶由来等のカテキン混合物、茶カテキン粉末、柿タンニン等のタンニン等を用いることができ、カテキン類であることが好ましい。前記ポリフェノール類としては、1種類を単独で配合してもよく、2種以上の前記ポリフェノール類を併用してもよい。
【0023】
最終的に樹脂組成物に含まれるポリフェノール類の量は、抗菌性等の効果の持続性を考慮すると、熱可塑性樹脂100重量部に対し、数~10数重量部とすることが好ましい。樹脂用添加剤中のポリフェノール類の量が少なすぎると、所望の量のポリフェノール類を含有させるためには、熱可塑性樹脂に添加する樹脂用添加剤量が増えすぎて効率的でない。また、樹脂用添加剤中のポリフェノール類の量が多すぎると、樹脂用添加剤の粘度が高くなりすぎて、生産・作業効率が低下する。そこで、本発明の樹脂用添加剤においては、前記エステル系可塑剤100重量部に対する前記ポリフェノール類の量が、1重量部以上100重量部以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは10重量部以上60重量部以下の範囲内である。
【0024】
樹脂製品の抗菌性能は、樹脂表面に存在する抗菌成分の存在により発現すると考えられることから、長期間経過後や、表面が拭き取られたりするという状況においては、抗菌性の維持が困難となる。そのため、樹脂製品の抗菌性を持続させるには、抗菌成分が継続して表面に供給されるような樹脂組成物、すなわち、樹脂表面に存在する抗菌成分量がコントロール可能な樹脂組成物が求められていた。本発明の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤とポリフェノール類とが混合されてなるものであり、エステル系可塑剤とポリフェノールとが一体的に振舞い、エステル系可塑剤の表面へのブリードに伴ってポリフェノール類が表面に滲み出すことを大きな特徴とする。その一方で、上記樹脂用添加剤と、極性の低い熱可塑性樹脂とを混合した場合、極性の低い樹脂とエステル系可塑剤との親和性が低いことから、樹脂表面にブリードするエステル系可塑剤の量が増加し、樹脂表面のべとつきが顕著となり、製品として用いるのが困難な場合があった。この場合、エステル系可塑剤のブリードに伴って、ポリフェノール類も必要以上に表面に供給されてしまうことから、エステル系可塑剤のブリード量がコントロールされた樹脂組成物、ひいてはポリフェノール類の表面への供給量がコントロールされた樹脂組成物を見出す必要があった。本発明はこれらの状況に鑑みて検討の結果、極性の低い樹脂(樹脂群A)と、極性を有する樹脂(樹脂群B)とを必要に応じて混合して、樹脂全体の極性を調整することで、エステル系可塑剤のブリード量ひいてはポリフェノール類の表面への供給量がコントロール可能な樹脂組成物を見出すに至ったものである。すなわち、本発明の樹脂組成物は、前記樹脂用添加剤と、以下の樹脂群Aの樹脂および樹脂群Bの樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂とを含み、前記熱可塑性樹脂100重量部に対する前記樹脂用添加剤の量が、0.1重量部以上100重量部以下の範囲内にあることで、前記添加剤による抗菌性等の効果を持続的にコントロール可能な樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
樹脂群A:ポリオレフィン系樹脂
【0026】
樹脂群B:酢酸ビニル共重合オレフィン樹脂およびポリ酢酸ビニル、これらを全部または部分ケン化したもの、さらにこれらにアルデヒドを反応させることなどにより得られるポリビニルアセタール類、
酢酸ビニル共重合オレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、スチレン系ゴム、ニトリル系ゴム、ならびに、クロロプレン系ゴム
【0027】
熱可塑性樹脂は、樹脂群Aとして、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらの共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、ポリメチルペンテン、シクロオレフィンコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、樹脂群Aが、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがさらに好ましい。
【0028】
熱可塑性樹脂は、樹脂群Bとして、ポリ酢酸ビニルおよびエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、熱可塑性樹脂が、樹脂群Bとしてポリエステル系樹脂を含むことも好ましく、前記ポリエステル系樹脂は、脂肪族ポリエステルおよび脂肪族芳香族ポリエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。前記ポリエステル系樹脂が、ポリ乳酸であることも好ましい。
【0029】
本発明の樹脂組成物においては、前記樹脂群Aおよび前記樹脂群Bの一方の群から選ばれる樹脂を配合してもよく、両方の群から選ばれる樹脂を配合してもよい。両方の群から選ばれる樹脂を配合する、すなわち樹脂群Aの樹脂から少なくとも1種、樹脂群Bの樹脂から少なくとも1種を配合する場合、前記樹脂群Aの樹脂100重量部に対する前記樹脂群Bの樹脂の量が、2重量部以上20重量部以下の範囲内にあると、添加剤による抗菌性等の効果を持続的にコントロール可能となるため好ましい。前記樹脂群Bの量は、より好ましくは3重量部以上10重量部以下の範囲内である。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、その他、任意の成分として、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料、ラジカル開始剤、難燃剤、酸化防止剤、抗酸化剤、抗菌剤、制菌剤および殺菌剤等の一般的な添加剤等を、本発明における効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。ラジカル開始剤としては、過酸化剤等を好適に用いることができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、例えば、ニーダーに各材料を投入して混練した後、それらを押出成形機で製造することができる。なお、必要に応じて、得られた樹脂組成物をペレット化してもよいし、シート状、フィルム状に加工してもよい。
【0032】
本発明の樹脂表面成分コントロール方法は、極性の低い樹脂(樹脂群A)と、極性を有する樹脂(樹脂群B)とを、必要に応じて所定の割合で混合し、樹脂全体の極性を調整することでエステル系可塑剤のブリード量のコントロール、ひいてポリフェノール類の表面への供給量をコントロールする方法であり、前記本発明の樹脂用添加剤と、前記樹脂群Aの樹脂および前記樹脂群Bの樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂と、を含む樹脂組成物の調製時において、前記樹脂群Aの樹脂の含有量と前記樹脂群Bの樹脂の含有量との重量比を変えることによって前記樹脂組成物の表面に存在する前記樹脂用添加剤の量を制御することを特徴とする。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例および比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0034】
(樹脂用添加剤)
[実施例1]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるアジピン酸ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)(BXA-N、大八化学工業株式会社製、モル質量435)を用いた。このエステル系可塑剤は、多塩基酸としてアジピン酸と、グリコールエーテルとしてジエチレングリコールモノブチルエーテルとから構成されている。また、ポリフェノール類として、(-)エピカテキン(長良サイエンス株式会社製)を用いた。本実施例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0035】
[実施例2]
ポリフェノール類として、(-)エピガロカテキン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0036】
[実施例3]
ポリフェノール類として、(-)エピガロカテキンガレート(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0037】
[実施例4]
ポリフェノール類として、カテキン混合物(緑茶由来)(長良サイエンス株式会社製)を用いた他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0038】
[実施例5]
ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0039】
[実施例6]
ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用い、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類66.7重量部を配合した他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0040】
[実施例7]
ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用い、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類100重量部を配合した他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0041】
[実施例8]
ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用い、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類150重量部を配合した他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0042】
[実施例9]
ポリフェノール類として、柿タンニン(株式会社岩本亀太郎本店製)を用い、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類0.1重量部を配合した他は、実施例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0043】
[実施例10]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるフタル酸ビス(2-メトキシエチル)(東京化成工業株式会社製、モル質量282)を用いた。このエステル系可塑剤は、多塩基酸としてフタル酸と、グリコールエーテルとしてエチレングリコールモノメチルエーテルとから構成されている。また、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた。本実施例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0044】
[実施例11]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるアジピン酸ビス(2-メトキシエチル)(東京化成工業株式会社製、モル質量262)を用いた。このエステル系可塑剤は、多塩基酸としてアジピン酸と、グリコールエーテルとしてエチレングリコールモノメチルエーテルとから構成されている。また、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた。本実施例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0045】
[実施例12]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるアジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)(東京化成工業株式会社製、モル質量346)を用いた。このエステル系可塑剤は、多塩基酸としてアジピン酸と、グリコールエーテルとしてエチレングリコールモノブチルエーテルとから構成されている。また、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた。本実施例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0046】
[実施例13]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(G-260、積水化学工業株式会社製、モル質量402)を用いた。このエステル系可塑剤は、一塩基酸として2-エチルヘキサン酸と、グリコールエーテルとしてトリエチレングリコールとから構成されている。また、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた。本実施例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0047】
[実施例14]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるアジピン酸ベンジルメチルジグリコール(DAIFATTY-101、大八化学工業株式会社製、モル質量338)を用いた。このエステル系可塑剤は、多塩基酸としてアジピン酸と、グリコールエーテルとしてジエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールモノベンジルエーテルとの混合物とから構成されている。また、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた。本実施例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0048】
[実施例15]
ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用い、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類50重量部を配合した他は、実施例14と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0049】
[実施例16]
ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用い、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類100重量部を配合した他は、実施例14と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0050】
[比較例1]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるアジピン酸ジブチル(DBA、大八化学工業株式会社製、モル質量258)を用いた。このエステル系可塑剤は、多塩基酸としてアジピン酸と、アルコール類としてブタノールとから構成されている。また、ポリフェノール類として、(-)エピカテキン(長良サイエンス株式会社製)を用いた。本比較例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0051】
[比較例2]
ポリフェノール類として、(-)エピガロカテキン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた他は、比較例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0052】
[比較例3]
ポリフェノール類として、(-)エピガロカテキンガレート(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた他は、比較例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0053】
[比較例4]
ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた他は、比較例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0054】
[比較例5]
ポリフェノール類として、柿タンニン(株式会社岩本亀太郎本店製)を用い、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類0.1重量部を配合した他は、比較例1と同様に樹脂用添加剤を調製した。
【0055】
[比較例6]
可塑剤として、エステル系可塑剤であるアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(東京化成工業株式会社製、モル質量370)を用いた。このエステル系可塑剤は、多塩基酸としてアジピン酸と、アルコール類として2-エチルヘキサノールとから構成されている。また、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた。本比較例の樹脂用添加剤は、エステル系可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0056】
[比較例7]
可塑剤として、ポリエチレングリコール400(ナカライテスク株式会社製、モル質量約400)を用いた。また、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用いた。本比較例の樹脂用添加剤は、可塑剤100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して調製した。
【0057】
[比較例8]
酢酸エチル(ナカライテスク株式会社製、モル質量88)と、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)を用い、酢酸エチル100重量部に対し、ポリフェノール類1重量部を配合して本比較例の樹脂用添加剤を調製した。
【0058】
(溶解性試験)
実施例1~16、比較例1~8の樹脂用添加剤について、ポリフェノール類と可塑剤とをサンプル瓶内で混合し、金属スパチュラで軽くかき混ぜた。その後、一昼夜室温で放置し、目視で次の基準で溶解性を判断した。結果を表1および表2に示す。
S:混合後数時間以内に溶解
A:一昼夜放置後溶解
B:未溶物が一部残っているがほぼ溶解
C:明らかに未溶物が残存(NG)
【0059】
【0060】
【0061】
実施例1~8は、混合後数時間以内に溶解した。実施例8については、ペースト状になった。実施例11、実施例14~16は、一昼夜放置後には溶解していた。実施例9、実施例10、実施例12、実施例13は、一昼夜放置後にも未溶物が一部残っているがほぼ溶解した。比較例1~6は、一昼夜放置後にも明らかに未溶物が残存していた。また、比較例7は、混合後数時間以内に溶解したが、後の熱可塑性樹脂への添加時に水分揮発により発泡し、樹脂用添加剤としては溶融混練には適していないものであった。比較例8は、混合後数時間以内に溶解したが、この樹脂用添加剤は揮発性が大きく、溶融混練には適していないものであった。
【0062】
(樹脂組成物)
[実施例17]
(1)バッチ式混練
樹脂用添加剤として、アジピン酸ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)(BXA-N、大八化学工業株式会社製)を10重量部、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)3重量部を混合したものを用いた。ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE、「ノバテックLD」LC525、日本ポリエチレン株式会社製、樹脂群Aに該当)を用いた。前記低密度ポリエチレン100重量部と、前記樹脂用添加剤13重量部とを、140℃に設定したバッチ式ニーダー(10S100、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、回転数を12.5rpmで10分間混練し、混練サンプルを得た。
【0063】
(2)シート成形(加熱プレス法)
得られた混練サンプルを約2.5g秤取し、10cm×10cm×0.3mmのスペーサー内に静置後、140℃に設定した卓上プレス機(小型プレスG-12型、テクノサプライ株式会社製)にて加熱プレスした後、水道水を内部通水した金属製の板に直ちに挟み込み冷却してシート状試験片を得た。得られたシート状試験片の厚みは概ね0.3mmであった。
【0064】
[実施例18]
樹脂用添加剤として、アジピン酸ビス(2-(2-ブトキシエトキシ)エチル)(BXA-N、大八化学工業株式会社製)を10重量部、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)3重量部を混合したものを用いた。ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE、「ノバテックLD」LC525、日本ポリエチレン株式会社製、樹脂群Aに該当)、共重合オレフィン樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA、「ウルトラセン」射出用グレード633、東ソー株式会社製、樹脂群Bに該当)を用いた。前記低密度ポリエチレン100重量部と、前記エチレン酢酸ビニル共重合体5重量部と、前記樹脂用添加剤13重量部とを、140℃に設定したバッチ式ニーダー(10S100、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、回転数を12.5rpmで10分間混練し、混練サンプルを得た。得られた混練サンプルを用い、実施例17と同様に、シート状試験片を得た。
【0065】
[実施例19]
樹脂用添加剤として、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール(DAIFATTY-101、大八化学工業株式会社製)を10重量部、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)3重量部を混合したものを用いた。ポリエステル系樹脂としてポリ乳酸(PLA、「REVODE」101L、浙江海正生物材料製、樹脂群Bに該当)を用いた。前記ポリ乳酸100重量部と、前記樹脂用添加剤13重量部とを、140℃に設定したバッチ式ニーダー(10S100、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、回転数を12.5rpmで10分間混練し、混練サンプルを得た。得られた混練サンプルを用い、実施例17と同様に、シート状試験片を得た。
【0066】
[実施例20]
樹脂用添加剤として、アジピン酸ベンジルメチルジグリコール(DAIFATTY-101、大八化学工業株式会社製)を10重量部、ポリフェノール類として、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)3重量部を混合したものを用いた。ポリエステル系樹脂としてポリ乳酸(PLA、「REVODE」101、浙江海正生物材料製、樹脂群Bに該当)、ポリビニルアセタール類として分子量が1.15×105のPVB(「エスレックB・K」BH-A、積水化学工業株式会社製)に、PVB用可塑剤としてトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(G-260、積水化学工業株式会社製)を、重量比でPVB:PVB用可塑剤=3:1で配合したもの(樹脂群Bに該当)、を用いた。前記ポリ乳酸75重量部と、前記ポリビニルアセタール類25重量部と、前記樹脂用添加剤13重量部とを、180℃に設定したバッチ式ニーダー(10S100、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、回転数を12.5rpmで10分間混練し、混練サンプルを得た。得られた混練サンプルを用い、卓状プレス機の設定温度を180℃にした以外は実施例17と同様に、シート状試験片を得た。
【0067】
[参考例]
低密度ポリエチレン(LDPE、「ノバテックLD」LC525、日本ポリエチレン株式会社製、樹脂群Aに該当)100重量部と、Qualselect茶カテキン粉末(合同会社グローバルフォート製)3重量部とを、140℃に設定したバッチ式ニーダー(10S100、株式会社東洋精機製作所製)に投入し、回転数を12.5rpmで10分間混練し、混練サンプルを得た。得られた混練サンプルを用い、実施例17と同様に、シート状試験片を得た。
【0068】
(顕微鏡観察)
実施例17および参考例で得られたシート状試験片を、倍率50倍に設定した実体顕微鏡(HDMIデジタルマイクロスコープ実体顕微鏡:STZ-171-TLED-1080、株式会社島津理化製)により透過観察した。
図1は、実施例17の樹脂組成物から得られたシート状試験片表面の顕微鏡画像の写真である。
図2は、参考例の樹脂組成物から得られたシート状試験片表面の顕微鏡画像の写真である。
図2ではカテキンが粗分散しているのに対し、
図1では微分散していることがわかる。また、実施例19および20で得られたシート状試験片についても、
図1と同様にカテキンが微分散していた。このように、本発明の、特定の可塑剤にポリフェノール類が溶解した樹脂用添加剤を用いることで、ポリフェノール類が樹脂に微分散し性状や意匠性に優れた樹脂組成物が得られることが示された。
【0069】
(表面カテキン量測定)
高速液体クロマトグラフ分析装置(HPLC EXTREMA、日本分光株式会社製)を用い、以下の方法、条件でシート状試験片の表面カテキン量を測定した。
<表面成分の抽出方法>
シート状試験片から、35mm×55mmの短冊状試料(約1g)を切り出した。シャーレ内に10%メタノール水溶液1.5mLを準備し、室温で、前記メタノール水溶液面に前記短冊状試料の表裏を順番に接触させた。接触時間は各面1秒、接触繰り返し回数は30回(総接触時間60秒)とした。その後、シャーレ内のメタノール水溶液を0.5μmフィルターでろ過し、得られたろ液を高速液体クロマトグラフの試料とした。
<高速液体クロマトグラフ条件>
カラム:Inertsil ODSC8-3(ジーエルサイエンス株式会社製、シリカゲル粒子径5μm、内径4.6μm、長さ150mmの逆相カラム)
温度:40℃
注入量:10μL
溶出方法:水(A)、メタノール(B)の混合溶液を用いたグラジエント溶出(溶出条件、A/B=90/10から60/40を20分で濃度変化)
流速:1.0mL/分
<定量方法>
(-)エピガロカテキンガレート(EGCg)標準試料(富士フイルム和光純薬株式会社製)の測定で得られた12.4分に見られるピークをカテキン由来ピークと定義し、各サンプルの同部分ピーク面積から試料1gあたりのカテキン量を算出し、表面カテキン量の指標とした。
【0070】
実施例17および参考例で得られたシート状試験片について、表面カテキン量を測定した。表面カテキン量は、次の3つの段階について測定した。
第1段階:シート状試験片作製後、特に処理せずそのまま測定
第2段階:シート状試験片の表裏面を、エタノールをしみ込ませたウェスでふき取り処理した後に、すぐに測定
第3段階:第2段階の処理後のシート状試験片を、室温で1か月放置した後に測定
【0071】
実施例17で得られたシート状試験片では、第1段階での表面には、試料1gあたり約110μgのカテキンが存在していたのに対し、表裏面をエタノールでふき取ると、表面に存在するカテキン量は約20%まで減少した(第2段階)。なお、その量は1か月放置するとふき取り前の約40%まで増加し、時間とともにカテキンが表面にブリードしてくることが確認された(第3段階)。これは、いったん表面をふき取った場合であっても、カテキンの有する効果は持続可能であることを示している。
【0072】
参考例で得られたシート状試験片では、第1段階での表面には、試料1gあたり約80μgのカテキンが存在していたのに対し、表裏面をエタノールでふき取ると、表面に存在するカテキン量は約10%まで減少した(第2段階)。一方、その量は1か月放置後も増加することはなかった(第3段階)。これは、いったん表面をふき取ってしまうと、カテキンの有する効果は限定的になりうることを示している。
【0073】
なお、実施例18で得られたシート状試験片は、実施例17と比べ、表面のべとつきが抑制され、手触りが良好になった。これは、サンプルの良好な表面性状(べとつき抑制)と、カテキンの有する効果の持続の双方が両立可能であることを示している。このように、樹脂群Aと樹脂群Bとを組み合わせることで、エステル系可塑剤のブリードが低減され、その結果、表面に存在する樹脂用添加剤の量が抑制された。この結果は、表面に存在する樹脂用添加剤の量を、樹脂群Aの樹脂の含有量と前記樹脂群Bの樹脂の含有量との重量比を変えることによって制御し得ることを示している。
【0074】
以上、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
本発明によれば、添加剤としてポリフェノール類を含む樹脂において、ポリフェノール類を樹脂に微分散させ性状や意匠性に優れた樹脂組成物を提供でき、さらには抗菌性等の効果を持続的にコントロール可能とすることができる。また、ポリフェノール類との親和性に優れた特定の可塑剤を使用することで、ポリフェノール類の添加量を増やしても、分散性良く樹脂中に含有させることができるので、抗菌性等のポリフェノール類に起因する効果を高めることが可能となる。前記効果が持続的にコントロール可能な樹脂組成物を得ることができるので、例えば交換(買い替え)周期を延ばすことができ、廃棄物等による環境への負荷を低減させる効果を有するのみならず、産業利用上の面においても大きく貢献すると考えられる。