(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039552
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】水晶デバイスの周波数調整方法及び水晶デバイスの周波数調整装置
(51)【国際特許分類】
H03H 3/04 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
H03H3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146715
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】楠木 孝男
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA02
5J108BB02
5J108CC04
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108GG03
5J108GG15
5J108GG16
5J108JJ04
5J108NA02
5J108NB02
5J108NB05
(57)【要約】
【課題】共振周波数をより正確に調整することのできる水晶デバイスの周波数調整方法及び水晶デバイスの周波数調整装置を提供する。
【解決手段】水晶デバイスの周波数調整方法は、水晶片と水晶片上に位置する電極とを有し、導電性接着剤により基体に接着されている水晶振動素子の第1の共振周波数を計測する計測ステップ(P2)、得られた第1の共振周波数と電極の厚さの調整量との対応関係に係る予め保持された情報に基づいて、電極の厚さを調整する調整ステップ(P4)、を含む。対応関係では、水晶振動素子が基体の内側に封止されることで所定の第2の共振周波数が得られることになるこの封止がされる前の第3の共振周波数に応じた調整量に係る値が特定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶片と当該水晶片上に位置する電極とを有し、導電性接着剤により基体に接着されている水晶振動素子の第1の共振周波数を計測する計測ステップ、
得られた前記第1の共振周波数と前記電極の厚さの調整量との対応関係に係る予め保持された情報に基づいて、前記電極の厚さを調整する調整ステップ、
を含み、
前記対応関係では、前記水晶振動素子が前記基体の内側に封止されることで所定の第2の共振周波数が得られる当該封止がされる前の第3の共振周波数に応じた前記調整量に係る値が特定される、
水晶デバイスの周波数調整方法。
【請求項2】
前記調整ステップでは、複数回の調整動作で前記第1の共振周波数に対応する前記調整量を得る請求項1記載の水晶デバイスの周波数調整方法。
【請求項3】
前記調整ステップでは、前記複数回の調整動作のうち最終回の調整動作で、前記第1の共振周波数に対応する合計の調整量となるように前記調整を行う請求項2記載の水晶デバイスの周波数調整方法。
【請求項4】
水晶片と当該水晶片上に位置する電極とを有し、導電性接着剤により基体に接着されている水晶振動素子の第1の共振周波数の情報を取得し、当該第1の共振周波数と、前記電極の厚さの調整量との対応関係に係る予め保持された情報に基づいて、前記電極の厚さを調整する調整部を備え、
前記対応関係では、前記水晶振動素子が前記基体の内側に封止されることで第2の共振周波数が得られる当該封止がされる前の第3の共振周波数に応じた調整量に係る値が特定される、
水晶デバイスの周波数調整装置。
【請求項5】
前記第1の共振周波数を計測する計測部を備える請求項4記載の水晶デバイスの周波数調整装置。
【請求項6】
前記対応関係に係る情報を記憶する記憶部を備える請求項4又は5記載の水晶デバイスの周波数調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水晶デバイスの周波数調整方法及び水晶デバイスの周波数調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の共振周波数で共振する水晶片を有し、この水晶片の共振を利用した信号を生成出力する水晶振動素子を有する水晶デバイスがある。この水晶デバイスにおける最終的な共振周波数は、水晶片だけではなく、当該水晶片の両面に位置する電極や当該電極を外部に接続する導電性接着剤の接合状態などにも依存する。特許文献1では、適正な共振周波数に調整するために、水晶振動素子をパッケージに接着してから共振周波数を計測し、計測値と目標の共振周波数とのずれに応じて電極を削ったり付加したりする製造工程について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記工程で一方の電極の厚みが変化した状態でパッケージに接着されている水晶振動素子は、当該水晶振動素子をパッケージ内部に蓋体で封止する際の加熱などによって歪みの状態が変化し得る。従来、このような歪みによる共振周波数の変化には十分に対応できていなかった。
そこで、共振周波数をより正確に調整することのできる水晶デバイスの周波数調整方法及び水晶デバイスの周波数調整装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様は、
水晶片と当該水晶片上に位置する電極とを有し、導電性接着剤により基体に接着されている水晶振動素子の第1の共振周波数を計測する計測ステップ、
得られた前記第1の共振周波数と前記電極の厚さの調整量との対応関係に係る予め保持された情報に基づいて、前記電極の厚さを調整する調整ステップ、
を含み、
前記対応関係では、前記水晶振動素子が前記基体の内側に封止されることで所定の第2の共振周波数が得られる当該封止がされる前の第3の共振周波数に応じた前記調整量に係る値が特定される、
水晶デバイスの周波数調整方法である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、共振周波数をより正確に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態の水晶デバイスの製造装置の機能構成を説明する図である。
【
図3】水晶デバイスの製造及び調整の手順について説明する図である。
【
図4】上面電極の厚さと共振周波数との関係について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の水晶デバイスの製造装置1の機能構成を説明する図である。
【0009】
本実施形態の水晶デバイスの製造装置1(周波数調整装置)は、制御部11と、記憶部12と、計測部13と、調整部14(切削部)と、接合部15と、表示部16と、操作受付部17などを備える。計測部13は、パッケージに接着された水晶振動素子に対してパッケージ上の電極パッドなどから電圧を印加して水晶振動素子を発振させて、共振周波数(発振周波数)を計測する。調整部14は、パッケージに接着された水晶振動素子の一の面に位置する電極の厚さを調整、主に削ることで、共振周波数を調整する。接合部15は、共振周波数の調整後のパッケージに対して蓋体を接着して封止する。
【0010】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサを有し、水晶デバイスの製造装置1の制御動作を行う。制御動作には、上記調整部14による電極の厚さの調整量、すなわち、一般的には電極の削り量(削り時間)の制御が含まれる。
【0011】
記憶部12は、データを記憶するメモリであり、CPUに作業用のメモリ空間を提供して一時データを記憶するRAMと、設定データ(予め保持された情報)やプログラムなどを記憶する不揮発性メモリとを含む。不揮発性メモリは、例えば、フラッシュメモリであり、HDD(Hard Disk Drive)を含んでもよい。設定データには、調整量設定121が含まれる。
【0012】
表示部16は、制御部11の制御に基づいて、水晶デバイスの製造装置1の動作や状態に係る表示を行う。表示部16は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)を有し、文字や図形などが表示可能であってよい。また、表示部16は、ステータス、特に異常状態の報知などを行うためのLEDランプなどを有していてもよい。
【0013】
操作受付部17は、ユーザなどによる外部操作を受け付けて制御信号を生成し、当該制御信号を制御部11へ出力する。操作受付部17は、例えば、表示画面と重なって位置するタッチパネルを有する。これに加えて又は代えて、操作受付部17は、押しボタンスイッチやスライドスイッチなどを備えていてもよい。
【0014】
図2は、水晶デバイスの製造装置1により製造される水晶デバイス5について説明する図である。水晶デバイス5は、基体51と、水晶振動素子52と、導電性接着剤53と、蓋体54と、部品55などを備える。
【0015】
基体51は、一の面(上面)に凹部51aを有する箱形形状である。凹部51aの底面には、水晶振動素子52が接続される電極パッド511が位置している。電極パッド511は、基体51の内部を通って外面に露出されている図示略の外部接続パッドと電気的につながっている。
【0016】
水晶振動素子52は、水晶片521と、下面電極522と、上面電極523(水晶片上に位置する電極)と、接続電極524などを有する。下面電極522は、水晶片521の下面に位置し、上面電極523は、水晶片521の上面に位置している。すなわち、下面電極522は、凹部51aの底面と対向して、水晶振動素子52の電極パッド511への接着後には上方から視認したり厚さを調整したりすることができない。上面電極523と下面電極522との間に所定の電圧が印加されることで水晶片521が発振する。接続電極524は、水晶片521の一端付近に一対が位置し、それぞれ上面電極523及び下面電極522と接続している。また接続電極524は、基体51の電極パッド511と導電性接着剤53により接着されて、当該電極パッド511と電気的に接続されている。水晶振動素子52は、振動時に凹部51aの底面に接触しないように導電性接着剤53により当該底面より上方に固定されている。また、このために電極パッド511の上面は、凹部51aの底面から突出して所定の高さに位置していてもよい。
【0017】
水晶片521の厚さは、出力対象の共振周波数に応じて定まり、特には限られないが、ここでは例えば、公称周波数が76.8MHzなど、現在製造されている水晶振動素子52の中では高周波数帯のものである。
【0018】
基体51の凹部51aを取り囲む側壁面512の上端面には、蓋体54がろう材などによって接合される。側壁面512と蓋体54との間には、平面視で側壁面512と略同一形状である枠状のメタライズ層(不図示)が位置していてもよい。メタライズ層は、塗布焼成された導体層であってもよいし、めっき層などであってもよい。蓋体54により凹部51aが封止されて、外部との空気や埃などの出入りが遮断される。基体51及び蓋体54が本実施形態の水晶デバイス5において水晶振動素子52を内部に収容する筐体である。
【0019】
部品55は、基体51の底面側(凹部51aを有する一の面とは反対側)に位置している。部品55は、ICチップなどの電子部品であってもよいし、検温素子(サーミスタなど)といったセンサなどであってもよい。また、部品55は、これらの複数個の組合せであってもよい。これらは、水晶振動素子52の共振周波数の調整に係る付帯情報を出力したり、あるいは、付帯情報に応じた調整を行ったりするものであり、すなわち水晶デバイス5は、水晶発振器であってもよい。なお、部品55の位置は、底面の平面視中央付近ではなく、偏った位置であってもよい。
【0020】
ここでは、基体51は、特には限られないが、例えば、セラミック材料、半導体材料若しくはガラス材料、又はこれらの組合せであり、内部や表面などに導体の信号線(電力供給及び接地に係るものを含む)を有する。導電性の電極パッド511の最上面には、例えば、金めっきなどがなされていてもよい。
また、導電性接着剤53は、例えば、銀フィラーを含有する樹脂系(エポキシ樹脂など)の接着剤であってもよい。
また、蓋体54は金属導体の平板であり、例えば、鉄、銅、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン若しくはタングステンを含む金属、又はこれらの合金である。
【0021】
次に、本実施形態の水晶デバイス5の製造方法について説明する。
図3は、水晶デバイス5の製造及び調整の手順を示す図である。
水晶デバイスの製造装置1では、個々の水晶振動素子52が基体51に挿入され、導電性接着剤53によって基体51の電極パッド511に接着される(P1)。この状態で、計測部13により水晶デバイス5の共振周波数(第1の共振周波数)が計測される(P2;計測ステップ)。
【0022】
調整量設定121が参照され、計測された共振周波数に基づいて、水晶デバイス5(水晶振動素子52)が蓋体54で封止される前に調整されるべき共振周波数(第3の共振周波数)が取得され、この共振周波数に応じた厚さの調整量が定まる(P3)。定められた調整量で、調整部14により上面電極523の厚さが調整され(主に表面が削られ)る(P4;調整ステップ)。厚さの調整動作には、例えば、レーザー光又はイオンビームなどが利用されてよい。
【0023】
接合部15により基体51に対して蓋体54が接合されて凹部51a内(基体51の内側)の水晶振動素子52が封止される(P5)。再度、水晶デバイス5の共振周波数が計測部13により計測されて、この計測された共振周波数が目標範囲内にあるか否かの判断がなされる(P6)。目標範囲内に共振周波数がない場合には、不適格品として除外されてよい。
なお、水晶デバイスの製造装置1では、P1より前に任意の処理がなされてもよいし、P6よりも後に任意の処理がなされてもよい。
【0024】
本実施形態の水晶デバイス5の製造方法では、処理P3で定められる上面電極523の厚さの調整量は、封止に係る処理による共振周波数の変化が考慮される。
【0025】
図4は、上面電極523の厚さと共振周波数との関係について説明する図である。
図4(a)に示すように、水晶振動素子52を基体51に接着(実装)した状態で目標周波数F2(第2の共振周波数)とは異なる共振周波数F0(1)で共振する水晶デバイス5は、上面電極523の厚さを調整、一般的には削ることで共振周波数の調整がなされる。しかしながら、このときに目標周波数F2となるように上面電極523の厚さが調整されると、破線で示されているように、蓋体54による封止の処理で更に共振周波数が周波数F3rへ変化して、最終的に目標周波数F2からずれが生じる。この原因には、上面電極523と下面電極522との間で厚さに差が生じることによる振動に対する歪みの影響が、封止時の加熱により更に変化することが含まれる。
【0026】
本実施形態の水晶デバイス5の周波数調整方法では、
図4(a)の細実線で示すように、上面電極523の厚さを調整して、目標周波数F2(第2の共振周波数)とは異なる中間周波数F1(1)(第3の共振周波数)に共振周波数を変化させる。この中間周波数F1(1)は、水晶デバイス5における水晶振動素子52が封止されることで共振周波数が目標周波数F2(第2の共振周波数)が得られるように定められる。
【0027】
このとき、封止処理による共振周波数の変化量は、封止前に上面電極523の厚さが調整された量(上面電極523と下面電極522との間の厚さの差)にも依存するので、中間周波数F1を一律に定めることができない。すなわち、
図4(a)の太実線で示すように、装着時の共振周波数F0(2)が上記の共振周波数F0(1)と異なる場合には、中間周波数F1(2)(共振周波数F0(2)と中間周波数F1(2)の差)も中間周波数F1(1)(共振周波数F0(1)と中間周波数F1(1)との差)とは異なるものになり、すなわち、共振周波数F0に依存することになる。
【0028】
中間周波数F1(k)は、予め実験的に求められればよい。すなわち、適宜な間隔で定められる周波数F0(k)に対して、封止後の周波数が目標周波数F2となる封止前の中間周波数F1(k)を各々定める。そして、例えば、回帰分析などにより、周波数F0(k)と、周波数F1(k)又は周波数変化df=F1(k)-F0(k)との関係が特定される。回帰式は、直線(一次式)であってよいが、二次以上の高次の式で表されてもよい。
【0029】
上面電極523の調整量dc(削られる厚さ)と調整動作による周波数変化dfは概ね比例するので、共振周波数F0(k)と調整量dcとの対応関係が直接特定されてもよい。また、調整量dc自体ではなく、基準となる調整量dc0に対する調整量の変化量ddc=dc-dc0を相対値として求めるのであってもよい。
図4(b)には、共振周波数F0(k)に対する調整量dcの関係を模式的に示している。黒点が各々計測値を示し、実線が回帰直線を示したものである。なお、実際にはより多くの条件(共振周波数F0(k))に対して調整量dcが計測されてよい。
【0030】
このようにして得られた元の共振周波数F0(第1の共振周波数)に対する上面電極523の調整量dc、変化量ddc、周波数変化df又は中間周波数F1など(調整量に係る値)の対応関係は、調整量設定121(対応関係に係る情報)として記憶部12に記憶、保持される。記憶される内容は、上記の回帰式であってもよいし、所定間隔の共振周波数F0にそれぞれ対応する調整量dcなどの値を示すテーブルデータであってもよい。特に、2次以上の高次式で対応関係が示される場合には、テーブルデータを利用して線形補間により計測された共振周波数F0に対する調整量dcに係る値が定められてもよい。
【0031】
水晶デバイスの製造装置1では、調整量は、更に、調整動作の動作時間によって定められてもよい。この場合には、調整量dc(F0)の代わりに調整動作時間tc(F0)が調整量に係る値として調整量設定121に記憶されてもよい。
【0032】
目標周波数F2が複数種類ある場合には、異なる目標周波数F2に対して各々別個に調整量設定121が記憶保持されてよい。特に、目標周波数F2が高いほど封止時の周波数変化が目立つ傾向があるので、目標周波数F2に応じて適切に調整量dcが設定される。また、基体51のサイズなどによっても中間周波数F1が変化し得るので、製品サイズなどに応じて各々別個に調整量設定121が記憶保持されてもよい。これらの場合には、操作受付部17が受け付けた入力操作などに応じて所望の目標周波数F2やサイズなどが設定され、これらの目標周波数F2やサイズに応じて適切な調整量設定121が選択、利用されればよい。
【0033】
実際の調整(切削)動作では、設定された調整量の調整動作が一度に連続して行われる必要はない。調整量dcは、複数回に分割された調整動作における各調整量の合計であってもよい。この場合、設定された調整量dcを複数回に等分する、すなわち、毎回調整量を調整するのではなくてもよい。例えば、最後の一回以外は固定の調整量に設定して調整動作を行い、最終回の調整動作でのみ、複数回の合計の調整量が設定された調整量となるように制御されればよい。固定された各回の調整量は、一定であってもよいし、毎回異なっても、例えば、漸減するものであってもよい。
【0034】
以上のように、本実施形態の水晶デバイスの周波数調整方法は、水晶片521と当該水晶片521上に位置する上面電極523とを有し、導電性接着剤53により基体51に接着されている水晶振動素子52の共振周波数F0を計測する計測ステップ(P2)、得られた共振周波数F0と上面電極523の厚さの調整量dcとの対応関係に係る予め保持された情報である調整量設定121に基づいて、上面電極523の厚さを調整する調整ステップ(P5)、を含む。上記対応関係では、水晶振動素子52が基体51の内側に封止されることで所定の目標周波数F2が得られる当該封止がされる前の中間周波数F1に応じた調整量dcに係る値が特定される。
このように、水晶デバイス5の封止前の段階で、封止に係る処理による共振周波数の変化を考慮して、封止後に適切な目標周波数F2を得られるように厚さの調整量dcを定めるので、最終的に安定して正確な共振周波数に近づけた水晶デバイス5を得ることができる。特に、封止に係る処理による共振周波数の変化量は、封止前における上面電極523の調整量にも依存するので、一律に中間周波数F1を定めるのではなく、当初の共振周波数F0に対して各々中間周波数F1を定めることで、共振周波数のばらつきをより確実に低減することができる。
【0035】
また、調整ステップでは、複数回の調整動作で共振周波数F0に対応する調整量dcを得る。すなわち、一度の調整量をあまり大きくしないことで、安定した周波数調整を行いやすくすることができる。
【0036】
また、調整ステップでは、複数回の調整動作のうち最終回の調整動作で、共振周波数F0に対応する合計の調整量dcとなるように調整を行ってもよい。言い換えると、複数回の調整動作のうち最終回以外は、合計の調整量dcによらず固定した調整量での処理とすることで、各回の調整動作の制御をより容易に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の水晶デバイス5の製造装置1は、水晶片521と当該水晶片521上に位置する上面電極523とを有し、導電性接着剤53により基体51に接着されている水晶振動素子52の共振周波数F0の情報を取得し、当該共振周波数F0と、上面電極523の厚さの調整量dcとの対応関係に係る予め保持された情報に基づいて、上面電極523のを厚さを調整する調整部14を備える。上記対応関係では、水晶振動素子52が基体51の内側に封止されることで目標周波数F2が得られる当該封止がされる前の中間周波数F1に応じた調整量dcに係る値が特定される。
このような水晶デバイスの製造装置1によれば、より安定して正確な共振周波数で共振する水晶デバイス5を得ることができる。
【0038】
また、水晶デバイスの製造装置1は、上記の共振周波数F0を計測する計測部13を備えていてもよい。すなわち、自装置内で共振周波数F0を計測してそのまま適切な厚さの調整量dcを取得し、厚みの調整を行ってもよい。これにより、水晶デバイスの製造装置1では、他の計測装置で共振周波数F0を計測させて当該共振周波数F0のデータを取得し、また、水晶デバイス5を計測装置から移動させて位置の調整などを行う必要がなく、より容易かつ手間をかけずに水晶デバイスを適切な共振周波数に調整することができる。
【0039】
また、水晶デバイスの製造装置1は、上記対応関係に係る情報として調整量設定121を記憶する記憶部12を備える。このように調整量設定121を予め求めて記憶しておくことで、取得(計測)された共振周波数F0に対して容易かつ速やかに適切な調整量dcを定めて、より正確な共振周波数の調整を行うことができる。
【0040】
なお、上記実施の形態は例示であって、様々な変更が可能である。
例えば、上記の調整の工程において、複数回に分割して上面電極523の厚さを調整する場合には、最終回の調整動作の開始前までに当該最終回の調整量が定まっていればよく、初回の調整動作の開始前に調整量dcの設定を行わなくてもよい。なお、当初の共振周波数F0を直接計測、取得する代わりに、最終回より前の共振周波数の計測値とそれまでの調整量とに基づいて間接的に当初の共振周波数F0を求めることも可能である。
【0041】
一方で、上記実施の形態にかかわらず、複数回の調整量の全てに対し、合計の調整量dcの差異が反映されるように各回の調整量が定められてされてもよい。すなわち、合計の調整量dcの基準となる調整量dc0からのずれ量(変化量ddc)が、複数回の調整量の各々に分配されて調整されてもよい。
【0042】
また、上記実施の形態では、部品55を有する水晶デバイス5を例に挙げて説明したが、部品55を有しないものであってもよい。
【0043】
また、上記実施の形態では、同一の水晶デバイスの製造装置1で共振周波数の計測、調整量dcの設定及び調整動作が行われるものとして説明したが、これに限られない。例えば、水晶デバイスの製造装置1では、計測された共振周波数を外部サーバなどに送信し、当該外部サーバから調整量の設定値の返信を受けて、調整動作が行われてもよい。また、調整(切削)動作と封止動作とは、異なる装置で行われてもよい。水晶デバイスの製造装置1は、調整動作に係る処理のみを行う周波数調整装置であって、これら以外の製造工程は、全て他の装置で行われるのであってもよい。また、水晶デバイスの製造装置1は、他の計測装置で計測された水晶振動素子52の共振周波数の情報を取得して、当該共振周波数に基づいて、自機にセットされた水晶振動子52の上面電極523の厚さの調整を行ってもよい。
【0044】
また、調整量dcが目標周波数F2及びサイズに応じて計算式やテーブルデータなどが選択され、当初の共振周波数F0に基づいて定められるものとして説明したが、これに限られない。サイズやその他の影響を上記計算式のパラメータとして含んで当該計算式が定められ、調整量dcが算出、設定されてもよい。
【0045】
また、上記のように、上面電極523の厚さの調整は、一般的には削ることでなされるが、電極膜を蒸着させるなどにより厚さを増加させる場合を除外するものではない。
【0046】
また、上記実施の形態では、公称周波数が76.8MHzの周波数信号を出力する水晶デバイス5の場合を例に挙げて説明したが、これに限られない。水晶デバイス5は、これよりも高周波数の周波数信号(例えば、100MHz、250MHz、600MHz、又はそれ以上)を出力してもよいし、反対にこれよりも低周波数の周波数信号を出力してもよい。
【0047】
また、基体51及び凹部51aの形状は、図示した直方体形状に限られない。例えば、平面視、正面視や側面視などのいずれか又は複数で角の一部又は全部が丸められていたり、四角形以外の多角形であったり、突起(凸部)や窪み(凹部)などを有していたりしてもよい。また、上記実施の形態とは反対に、基体51が平板であり、蓋体54が下面側に凹部を有して上記水晶振動素子52の上方を覆う箱形形状などであってもよい。このような形状の組み合わせも、基体51の内側に水晶振動素子52が封止される構成に含まれる。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、構造、材質、処理手順や処理内容などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0048】
1 製造装置
11 制御部
12 記憶部
121 調整量設定
13 計測部
14 調整部
15 接合部
16 表示部
17 操作受付部
5 水晶デバイス
51 基体
511 電極パッド
512 側壁面
51a 凹部
52 水晶振動素子
521 水晶片
522 下面電極
523 上面電極
524 接続電極
53 導電性接着剤
54 蓋体
55 部品
F0 共振周波数
F1 中間周波数
F2 目標周波数
dc、dc0 調整量
ddc 変化量
tc 調整動作時間