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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039588
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】レーザー散乱光の測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01J1/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146782
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000179926
【氏名又は名称】山本光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】谷 祥宇
(72)【発明者】
【氏名】野田 健太
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AA17
2G065AB02
2G065AB09
2G065AB24
2G065BA05
2G065BA06
2G065BB05
2G065BB24
2G065BB27
2G065BB32
2G065BB33
2G065BC14
2G065BD04
2G065BD05
2G065BD06
2G065BD10
2G065DA01
(57)【要約】
【課題】レーザー散乱光の人体に対する安全性を簡易に確認することができる、レーザー散乱光の測定装置を提供する。
【解決手段】
レーザー散乱光の測定装置は、受光部10と、算出部30と、表示部40とを具備する。受光部10は、レーザー光L0が対象物2に照射されることによって発生するレーザー散乱光L1を受光し、レーザー散乱光L1の強度を検出する。算出部30は、受光部10によって受光されるレーザー散乱光L1の強度を所定のしきい値R0と比較し、比較結果に基づいて、人体に対するレーザー散乱光L1の危険度Dを算出する。表示部40は、算出部30によって算出される危険度Dを表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光が対象物に照射されることによって発生するレーザー散乱光を受光し、前記レーザー散乱光の強度を検出する受光部と、
前記受光部によって検出される前記レーザー散乱光の強度を所定のしきい値と比較し、比較結果に基づいて、人体に対する前記レーザー散乱光の危険度を算出する算出部と、
前記算出部によって算出される前記危険度を表示する表示部
とを具備する、レーザー散乱光の測定装置。
【請求項2】
前記受光部が受光する前記レーザー散乱光の前記対象物における発生位置を指し示すレーザーポインタを更に具備する、請求項1に記載のレーザー散乱光の測定装置。
【請求項3】
前記危険度が前記しきい値に基づいて定められる基準値以上であるときに警報音を発する警報部を更に具備する、請求項1又は請求項2に記載のレーザー散乱光の測定装置。
【請求項4】
前記受光部によって検出される前記レーザー散乱光の強度の最大値を記録する最大値記録手段を更に具備し、前記表示部は、前記危険度の変化をリアルタイムに表示するとともに、前記最大値に対応する前記危険度を継続的に表示する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーザー散乱光の測定装置。
【請求項5】
前記受光部は、前記レーザー散乱光を集光するレンズと、前記レンズを透過した光の周波数成分を調整する調光部と、前記調光部を透過した光の強度に対応する光強度信号を前記算出部に出力する光センサとを有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のレーザー散乱光の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー散乱光の測定装置に関し、特に、レーザー散乱光の人体に対する安全性を確認するためのレーザー散乱光の測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光音響イメージングのために、人体にレーザーを照射するレーザー照射装置として、特許文献1には、レーザー光源と、検出部と、制御部とを具備するレーザー照射装置が記載されている。検出部は、人体へのレーザーの放射照度を検出する。制御部は、検出部によって検出されるレーザーの放射照度が、JIS規格C6802などに記載される最大許容露光量を超えないように、レーザー光源の出力を制御する。制御部が最大許容露光量を超えないようにレーザー光源の出力を制御することによって、レーザー光の人体に対する安全性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-229735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のレーザー照射装置においては、人体に直接的に照射されるレーザー光の放射照度を人体に対し危険がないように制御できても、例えば金属材料の切断、穴あけ等のためにレーザーが使用される場合に、散乱光が人体に危険がないように制御することはできない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザー散乱光の人体に対する安全性を簡易に確認することができるレーザー散乱光の測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示するレーザー散乱光の測定装置は、受光部と、算出部と、表示部とを具備する。前記受光部は、レーザー光が対象物に照射されることによって発生するレーザー散乱光を受光し、前記レーザー散乱光の強度を検出する。前記算出部は、前記受光部によって検出される前記レーザー散乱光の強度を所定のしきい値と比較し、比較結果に基づいて、人体に対する前記レーザー散乱光の危険度を算出する。前記表示部は、前記算出部によって算出される前記危険度を表示する。
【0007】
本願に開示するレーザー散乱光の測定装置は、レーザーポインタを更に具備する。前記レーザーポインタは、前記受光部が受光する前記レーザー散乱光の前記対象物における発生位置を指し示す。
【0008】
本願に開示するレーザー散乱光の測定装置は、警報部を更に具備する。前記警報部は、前記危険度が前記しきい値に基づいて定められる基準値以上であるときに警報音を発する。
【0009】
本願に開示するレーザー散乱光の測定装置は、最大値記録手段を更に具備する。前記最大値記録手段は、前記受光部によって検出される前記レーザー散乱光の強度の最大値を記録する。そして、前記表示部は、前記危険度の変化をリアルタイムに表示するとともに、前記最大値に対応する前記危険度を継続的に表示する。
【0010】
本願に開示するレーザー散乱光の測定装置において、前記受光部は、レンズと、調光部と、光センサとを有する。前記レンズは、前記レーザー散乱光を集光する。前記調光部は、前記レンズを透過した光の周波数成分を調整する。前記光センサは、前記調光部を透過した光の放射照度に対応する光強度信号を前記算出部に出力する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のレーザー散乱光の測定装置によれば、レーザー散乱光の人体に対する安全性を簡易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を示す機能ブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を示す前面斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を示す背面斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置におけるメイン処理を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置におけるレーザー光測定処理を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置における最大値記録処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0014】
〈実施形態〉
以下に、図1から図3を参照して、本発明の実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を説明する。図1は、実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を示す機能ブロック図である。図2は、実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を示す前面斜視図である。図3は、実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置を示す背面斜視図である。
【0015】
図1から図3に示すように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置は、レーザー装置1がワーク2などの対象物にレーザー光L0を照射したときに生ずるレーザー散乱光L1の強度を測定するための装置であり、受光部10と、レーザーポインタ20と、算出部としての演算回路30と、表示部40と、警報部50と、操作部60と、通信手段としての通信モジュール70とを具備する。測定装置の各部は、バスを介し接続されている。なお、測定装置の各部は、一対一で接続されてもよい。
【0016】
図2図3に示すように、測定装置は、筐体3を有している。筐体3は、受光部10、レーザーポインタ20、演算回路30、表示部40、警報部50、操作部60、及び通信モジュール70を収容する。実施形態においては、筐体3のサイズは、測定装置の取扱いを容易とするために、片手で持てる程度のサイズに設定される。例えば、筐体3の高さは、10cm程度に設定される。また、筐体3は、片手で測定装置を把持するときに指を掛けることができる形状の凹部3aを有している。
【0017】
実施形態の測定装置は、代表的には、レーザー光L0を連続発振できるCW-YAGレーザー等のレーザー装置1を使用し、金属材料等のワーク2を溶接、切断する等の処理が行われる作業場において、人が安全に行き来できる領域を確保するために、レーザー散乱光L1の発生位置から適切な距離を空け、あるいは、レーザー散乱光L1の発生位置との間に適切な遮蔽物を設置するような場面で、レーザー散乱光L1の人体に対する安全性を確認するために使用される。
【0018】
受光部10は、レンズ11と、調光部12と、光センサ13とを有し、レーザー光L0がワーク2等の対象物に照射されることによって発生するレーザー散乱光L1を受光し、レーザー散乱光L1の強度を検出する。レーザー散乱光L1の強度は、素面に入射する放射束を素面の面積で除した値である放射照度によって表すことができる。放射照度の単位は、「ワット毎平方メートル(W/m2)」である。また、レーザー散乱光L1は、代表的には、ワーク2等の対象物におけるレーザー光L0の反射、及び/又は拡散によって発生する。
【0019】
レンズ11は、筐体3に設けられる受光開口10aを介し入光するレーザー散乱光L1を集光する。実施形態においては、受光開口10aは、円形であり、径は、JIS規格C6802の付属書「A.2 限界開口」に準拠し、7mmに設定される。
【0020】
調光部12は、例えばワーク2に照射されるレーザー光L0の波長に基づいて定められる特定周波数帯域の周波数成分を選択的に透過するように、レンズ11を透過した光の周波数成分を調整する。調光部12は、例えば光学フィルタ、偏光板、波長板、非線形結晶等の波長変換材(波長変換素子)、拡散板、及び回折板のうちの少なくとも1つを使用して形成される。光学フィルタとしては、反射フィルタ、及び吸収フィルタを使用できる。反射フィルタ、及び吸収フィルタとしては、バンドパスフィルタ、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、及び減光フィルタ(NDフィルタ)等を使用できる。
【0021】
レーザー装置1が、CW-YAGレーザーであれば、レーザー光L0の波長は1064nmであり、1064nmという波長に基づいて定められる周波数帯域の周波数成分を選択的に透過するバンドパスフィルタ等が、調光部12に採用される。
【0022】
光センサ13は、実施形態においては、シーモス(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor;相補性金属酸化膜半導体)・イメージセンサ、シーシーディー(CCD:Charge Coupled Device、電荷結合素子)・イメージセンサ、フォトトランジスタ等の光電効果型センサから形成され、調光部12に透過される光の強度に対応する電気信号である光強度信号を出力する。
【0023】
レーザーポインタ20は、受光部10が受光するレーザー散乱光L1のワーク2における発生位置を指し示す。レーザー光L0は指向性が強く、レーザー散乱光L1の強度を検出する際には、レンズ11がレーザー散乱光L1の発生位置と正対するように測定装置の位置及び姿勢を定める必要がある。実施形態の測定装置がレーザーポインタ20を具備することによって、レンズ11がレーザー散乱光L1の発生位置と正対している状態で、受光部10にレーザー散乱光L1を受光することができ、レーザー散乱光L1の強度を正確に検出することができる。
【0024】
算出部としての演算回路30は、受光部10によって受光されるレーザー散乱光L1の強度である放射照度I1を所定のしきい値であるしきい値R0と比較し、比較結果に基づいて、人体に対するレーザー散乱光L1の危険度Dを算出する。また、演算回路30は、中枢の制御部として、レーザーポインタ20、表示部40、警報部50、及び通信モジュール70等の各部を制御する。
【0025】
しきい値R0は、実施形態においては、JIS規格C6802の付属書Aに記載されている最大許容露光量に対応する数値であり、記憶装置31に記憶される。最大許容露光量は、レーザー光L0の波長に応じて変化し、付属書Aにおいては、放射照度又は放射露光によって示されている。レーザー装置1がCW-YAGレーザーであり、レーザー光L0の波長が1064nmであれば、参考値として、最大許容露光量は50W/m2であり、この放射照度に対応する数値がしきい値R0として使用される。
【0026】
危険度Dは、実施形態においては、放射照度I1のしきい値R0に対する割合に基づいて算出される。例えば、放射照度I1がしきい値R0の100%以上であるとき、危険度Dを値「10」とし、放射照度I1がしきい値R0の90%以上、100%未満であるとき、危険度Dを値「9」とする、というように、危険度Dは、実施形態においては、放射照度I1のしきい値R0に対する割合に基づいて算出される。
【0027】
表示部40は、演算回路30によって算出される危険度Dを表示する。図3に示すように、実施係形態においては、表示部40は、10段階のレベルメーターであり、各段階が危険度Dの値と対応している。なお、実施形態においては、危険度Dが値「1」であるとき、放射照度I1のしきい値R0に対する割合は、所定の下限割合LR以上、20%未満であり、危険度Dが値「2」であるとき、20%以上、30%未満であり、以降、10%ずつ割合の上下限が増加していく。
【0028】
下限割合LRは、実施形態においては、0%よりも大きく、10%未満である所定の割合に設定される。また、表示部40は、レベルメーターに限らず、危険度Dを視認できるものであればよく、例えば液晶パネルに危険度Dを数値として表示するものであってもよい。
【0029】
警報部50は、危険度Dが基準値R1以上であるときに警報音を発する。基準値R1は、しきい値R0に基づいて定められる。図3に示すように、警報部50は、実施形態においては、スピーカー51を含む。また、実施形態においては、基準値R1は、放射照度I1のしきい値R0に対する割合が100%以上であるときの危険度Dの値「10」に設定されており、放射照度I1のしきい値R0に対する割合が100%以上であるとき、警報部50はスピーカー51から警報音を発する。また、実施形態においては、演算回路30は、スピーカー51による警報音の発生と同時に、表示部40における表示が点滅するように、表示部40を制御することによっても危険度Dが基準値R1以上であることを警報する。
【0030】
操作部60は、図2図3に示すように、実施形態においては、電源スイッチ61、キャリブレーション・スイッチ62、及びレーザーポインタ・スイッチ63を含む。電源スイッチ61は、測定装置の電源を入り切りする。キャリブレーション・スイッチ62は、キャリブレーションの実行を演算回路30に指示する。レーザーポインタ・スイッチ63は、レーザーポインタ20を発するように演算回路30に指示する。なお、各スイッチの機能については、図4から図6を参照し、必要に応じて説明する。
【0031】
通信モジュール70は、図1に示すように、実施形態においては、クラウド3等の外部記憶手段、又はスマートフォン、タブレット、及びパーソナルコンピューター等の端末装置4と通信し、各時点における放射照度I1、危険度D、後で図6を参照して説明する放射照度I1の最大値、放射照度I1の最大値に対応する最大の危険度D、及び最大の危険度Dが基準値R1以上であるような危険な状態であるか否か等を示す各種データをクラウド3等の外部記憶手段、又は端末装置4に送信する。
【0032】
クラウド3等の外部記憶手段は、通信モジュール70によって送信されるデータを記憶し、保存する。端末装置4は、専用のアプリ、又はソフトウェアによって、通信モジュール70によって送信されるデータを液晶パネル、モニタ等の表示装置に表示する。端末装置4が、通信モジュール70によって送信されるデータを表示装置に表示する形態としては、表示部40と同様に、例えばレベルメーターを液晶パネルに表示するようなものであってもよいし、危険度D等の各データを文字、数値によって直接表示するものであってもよい。
【0033】
また、図1に示す例においては、通信モジュール70は、クラウド3等の外部記憶手段、及び端末装置4と無線通信しているが、クラウド3等の外部記憶手段、及び端末装置4と例えばユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)端子、又は有線のローカル・エリア・ネットワーク(LAN:Local Area Network)を介し、有線接続されてもよい。また、外部記憶手段は、クラウド3に限らず、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)メモリ、又はSDメモリーカード等であってもよい。
【0034】
また、通信モジュール70は、レーザー装置1に対し上記した各種データを送信するものとしてもよく、レーザー装置1は、通信モジュール70によって送信されるデータに基づいて、対象物に照射するレーザー光L0の強度を制御する制御手段を有していてもよい。例えば、最大の危険度Dが基準値R1以上であるような危険な状態であるときには、レーザー光L0の発振を停止したり、照射されるレーザー光L0の強度を低くしたりするように、制御手段がレーザー装置1を制御することが考えられる。
【0035】
次に、図1から図3とともに、図4から図6を参照して、実施形態に係る測定装置の動作を説明する。図4は、実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置におけるメイン処理を示すフローチャートである。図5は、実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置におけるレーザー光測定処理を示すフローチャートである。図6は、実施形態に係るレーザー散乱光の測定装置における最大値記録処理を示すフローチャートである。
【0036】
図4に示すメイン処理のステップS1においては、電源スイッチ61が「オフ」から「オン」とされ、図示しないバッテリー等の電源装置から測定装置の各部に電力が供給され、所定の初期化処理が行われる。初期化処理が終了すると、受光部10に入射される光の強度検出が開始される。初期化処理においては、記憶装置31から演算回路30へのしきい値R0の読み出し等の各種処理が行われる。
【0037】
図4に示すメイン処理のステップS2においては、ゼロ点設定であるキャリブレーションを実行するために、環境光検出処理が行われる。室内における蛍光灯の光、室外における太陽光等の環境光が受光部10における検出結果に及ぼす影響を排除するために、環境光検出処理においては、電源スイッチ61が「オフ」から「オン」とされ、受光部10が光の強度検出を開始したときに、光センサ13は、ゼロ点としての光強度信号を出力する。
【0038】
図4に示すメイン処理のステップS3においては、キャリブレーション処理が実行される。演算回路30は、ステップS2において光センサ13が出力した光強度信号をゼロ点として記憶するように、記憶装置31を制御する。ゼロ点として記憶装置31に記憶された光強度信号は、以降のレーザー光測定処理において使用される。
【0039】
なお、本ステップS3のキャリブレーション処理は、キャリブレーション・スイッチ62が操作されたときにも随時に実行される。キャリブレーション処理が随時に実行されることによって、測定作業中にレーザー散乱光の測定環境が変化したときにも、ゼロ点をより適切な値に設定し直すことができ、環境光がレーザー散乱光の測定結果に及ぼす影響をより適切に排除することができる。
【0040】
図4に示すメイン処理のステップS4においては、レーザーポインタ20によって位置決めが行われる。測定者は、最も強力なレーザー散乱光が発生していると思われる位置、例えばレーザー光L0がワーク2に当たっている位置をレーザーポインタ20によって指し示し、最も強力なレーザー散乱光が発生していると思われる位置にレーザー散乱光L1の測定対象位置を位置決めする。
【0041】
図4に示すメイン処理のステップS5においては、レーザー光測定処理が行われる。以下に、図5を参照してレーザー光測定処理を説明する。なお、図5の処理においては、例えば電源スイッチ61が「オン」とされている間、ステップS11からステップS15の処理が繰り返し実行される。
【0042】
図5に示すレーザー光測定処理のステップS11においては、測定値演算処理が行われる。測定値演算処理において、演算回路30は、光センサ13が各時点に出力する光強度信号V1と、図4のステップS3において設定されたゼロ点との差異から、各時点におけるレーザー散乱光L1の強度である放射照度I1を算出する。
【0043】
図5に示すレーザー光測定処理のステップS12において、演算回路30は、ステップS11において算出される放射照度I1に基づいて危険度Dを算出し、算出された危険度Dを表示するように、表示部40を制御する。また、演算回路30は、危険度Dが値「10」であるときには、警報音を発するように、警報部50を制御する。
【0044】
図3に、表示部40における危険度Dの表示例a、表示例b、表示例cを示す。表示例aは、危険度Dが値「1」のときの表示例であり、表示例bは、危険度Dが値「6」のときの表示例であり、表示例cは、危険度Dが値「10」のときの表示例である。図3に示す例においては、危険度Dが値「7」以上であるとき、放射照度I1が最大許容露光量に達しかけていることを示すために、危険度Dが値「6」以下のときとは例えば表示色を変えるようにして、表示の態様を変えている。なお、表示の態様を変えるときの境界となる危険度Dの値を変えることも、表示の態様を変えないようにすることもできる。
【0045】
図5に示すレーザー光測定処理のステップS13においては、最大値記録手段としての最大値記録処理が実行される。最大値記録処理においては、例えば電源スイッチ61が「オン」されてから「オフ」されるまでの間に、ステップS11において算出される放射照度I1の最大値が記録される。最大値記録処理の詳細については、図6を参照して後述する。
【0046】
図5に示すレーザー光測定処理のステップS14においては、各時点において算出される放射照度I1がしきい値R0以上であるか否かが判定される。各時点の放射照度I1がしきい値R0以上(Yes)であれば、処理はステップS15に進み、しきい値R0未満(No)であれば、処理はステップS11に戻る。
【0047】
図5に示すレーザー光測定処理のステップS15において、演算回路30は、警報音を発するように、警報部50を制御する。実施形態においては、演算回路30は、スピーカー51が異常を示す警報音、例えば急ピッチの断続音を発するように、警報部50を制御する。また、演算回路30は、表示部40が点滅するように制御することによっても警報を発することができる。
【0048】
図4に戻り、メイン処理のステップS6においては、図5のステップS12及びステップS15における演算回路30の制御によって、表示部40が、危険度Dの変化をリアルタイムに表示するとともに、放射照度I1の最大値に対応する危険度Dを継続的に表示し、放射照度I1がしきい値R0以上であれば、警報部50が、警報音を発し、表示部40が点滅する等して警報を発する。表示部40が、放射照度I1の最大値に対応する危険度Dを継続的に表示する形態としては、表示部40がレベルメーターであれば、最大の危険度Dに対応するレベルメーターの発光素子だけを点灯したまま消灯しないことが考えられる。また、表示部40が液晶パネルであれば、最大の危険度Dを示す数値を表示し続けることが考えられる。
【0049】
また、メイン処理のステップS6においては、通信モジュール70は、各時点における放射照度I1、危険度D、放射照度I1の最大値、放射照度I1の最大値に対応する最大の危険度D、及び最大の危険度Dが基準値R1以上であるような危険な状態であるか否か等を示す各種データをクラウド3等の外部記憶手段、又は端末装置4に送信する。
【0050】
以下、図6を参照して最大値記録処理を説明する。図6の最大値記録処理においては、例えば電源スイッチ61が「オン」とされている間、ステップS22からステップS24の処理が繰り返し実行される。
【0051】
図6に示す最大値記録処理のステップS21においては、図4のステップS1における初期化処理の一環として、放射照度I1の最大値が、初期値である値「0」に設定される。
【0052】
図6に示す最大値記録処理のステップS22においては、演算回路30によって、各時点の放射照度I1が算出され、最大値と比較され、ステップS23において、放射照度I1が最大値以上であるか否かが判定される。放射照度I1が最大値以上(Yes)であれば、処理はステップS24に進み、最大値未満(No)であれば、処理はステップS22に戻る。
【0053】
図6に示す最大値記録処理のステップS24においては、演算回路30は、その時点の最大値以上と判定された放射照度I1を新しい最大値として記憶するように、記憶装置31を制御する。その時点の放射照度I1が新しい最大値として記憶装置31に記憶されることによって、最大値が書き換えられる。
【0054】
以上、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置によれば、受光部10が、レーザー光L0が対象物に照射されることによって発生するレーザー散乱光L1の強度を検出し、演算回路30が、受光部10によって受光されるレーザー散乱光1の強度をしきい値R0と比較し、比較結果に基づいて、人体に対するレーザー散乱光L1の危険度Dを算出し、表示部40が、演算回路30によって算出される危険度Dを表示する。
【0055】
従って、人体に対する危険性が高い、高出力のレーザー装置1が使用される環境下において、最も強力なレーザー散乱光L1が発生していると思われる位置に受光部10を向け、レーザー散乱光L1の強度を検出し、危険度Dを算出し、表示できる。その結果、レーザー散乱光L1の発生位置から適切な距離をとり、あるいは、レーザー散乱光L1の発生位置との間に適切な遮蔽物を設置し、人が安全に行き来できる領域を確保するような場面において、レーザー散乱光の人体に対する安全性を簡易に確認できる。
【0056】
また、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置は、レーザーポインタ20を更に具備する。従って、レーザーポインタ20によって、最も強力なレーザー散乱光L1が発生していると思われる位置を指し示し、最も強力なレーザー散乱光L1が発生していると思われる位置に受光部10を正確に向けることができ、レーザー散乱光L1の強度を正確に検出し、レーザー散乱光の人体に対する安全性を簡易且つ正確に確認できる。
【0057】
また、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置によれば、危険度Dがしきい値Rに基づいて定められる基準値R1以上であるときに、警報部50が警報音を発する。従って、例えばレーザーポインタ20を使用し、最も強いレーザー散乱光L1が発生していると思われる位置に受光部10を向けるような作業をしているときに、音によって、レーザー散乱光L1の放射照度I1が、例えば最大許容露光量に準じて決められるしきい値R以上となったことを知ることができ、レーザー散乱光の人体に対する安全性を更に簡易に確認することができる。
【0058】
また、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置によれば、最大値記録処理によって、例えば電源スイッチがオンされてからオフされるまでの間における危険度Dの最大値が表示部40に継続的に表示される。従って、例えばレーザーポインタ20を使用し、最も強いレーザー散乱光L1が発生していると思われる位置に受光部10を向けるような作業をしながら、危険度Dの最大値を随時に確認することができ、レーザー散乱光の人体に対する安全性を更に簡易に確認できる。
【0059】
また、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置によれば、測定装置の筐体3は、片手で持つことができる程度に小型であり、片手で測定装置を把持するときに指を掛けることができる形状の凹部3aを有している。従って、例えばレーザーポインタ20によって最も強いレーザー散乱光L1が発生しているポイントを指し示すような作業を簡単にすることができ、レーザー散乱光の人体に対する安全性を更に簡易に確認することができる。
【0060】
また、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置によれば、受光部10が、レンズ11を透過した光のうち、例えば対象物に照射されるレーザー光L0の波長に基づいて定められる特定周波数帯域の周波数成分を選択的に透過するように、レンズ11を透過した光の周波数成分を調整する調光部12を有している。従って、人体に対し危険性が高い、レーザー散乱光L1の強度を正確に検出し、危険度Dを算出でき、レーザー散乱光の人体に対する安全性を更に簡易且つ正確に確認できる。
【0061】
また、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置によれば、演算回路30が、ゼロ点設定であるキャリブレーションのために、環境光検出処理を実行する。従って、室内における蛍光灯の光、室外における太陽光等の環境光が受光部10における検出結果に及ぼす影響を排除でき、レーザー散乱光の人体に対する安全性を更に簡易且つ正確に確認できる。
【0062】
また、図1から図6を参照して説明したように、実施形態のレーザー散乱光の測定装置は、通信モジュール70を更に具備する。従って、通信モジュール70によって、各時点における放射照度I1、危険度D、放射照度I1の最大値、放射照度I1の最大値に対応する最大の危険度D、及び最大の危険度Dが基準値R1以上であるような危険な状態であるか否か等を示す各種データをクラウド3等の外部記憶手段、又は端末装置4に送信でき、各種データを関係者の間で共有したり、長期間保存したり、レーザー散乱光L1の測定場所以外の遠隔地においてレーザー散乱光の人体に対する安全性を簡易に確認したりでき、レーザー散乱光の人体に対する安全性に関する情報を更に有効活用できる。
【0063】
以上、図面(図1図6)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記(1)~(4))。
【0064】
(1)実施形態においては、基準値R1は、値「10」の危険度Dと対応しており、警報部50は、放射照度I1のしきい値R0に対する割合が100%以上であるときに警報音を発する。これに限られず、基準値R1を値「10」よりも小さい危険度Dと対応するように設定することもできる。また、危険度Dの値に応じて警報音のピッチや高さ、大きさを変えるように、演算回路30が警報部50を制御することもできる。
【0065】
(2)実施形態においては、危険度Dは、10段階の数値で表されている。しかしながら、危険度Dは、放射照度I1のしきい値R0に対する割合に基づいて算出されるものであれば、10段階より大きな数値で表されてもよく、10段階より小さな数値で表されてもよく、表示部40がレベルメーターであれば、セグメントの個数も危険度Dの段階数に応じて設定することができる。また、危険度Dの各値に対応する割合の幅も一定である必要はなく、例えば危険度Dの値が大きくなるほど上下限の差が小さくなるように、危険度Dの各値に対応する割合の幅を変えることもできる。また、危険度Dの値が大きくなるほど上下限の差が大きくなるように、危険度Dの各値に対応する割合の幅を変えることもできる。
【0066】
(3)実施形態においては、筐体3のサイズは、測定装置の取扱いを容易とするために、片手で持てる程度のサイズに設定されているが、これに限られず、筐体3のサイズは、片手で持てる程度のサイズより大きくされてもよく、測定装置を専用の脚等によって支持して使用するように設計されてもよい。
【0067】
(4)実施形態においては、レーザー装置1は、CW-YAGレーザーであり、レーザー光L0の波長は1064nmであったが、これに限られず、レーザー装置1には各種レーザーを使用することができる。また、調光部12は、1064nmというレーザー光L0の波長に対応するものであったが、各種レーザーの波長に対応するバンドパスフィルタ等を調光部12として採用することができ、各種レーザーの波長に対応してしきい値R0等を設定することができる。
【符号の説明】
【0068】
L0…レーザー光
L1…レーザー散乱光
LR…下限割合
R0…しきい値
R1…基準値
V1…光強度信号
2…ワーク(対象物)
10…受光部
11…レンズ
12…調光部
13…光センサ
20…レーザーポインタ
30…演算回路(算出部)
40…表示部
50…警報部
60…操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6