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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039594
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】農作業システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230314BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01D69/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146797
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊之
【テーマコード(参考)】
2B043
2B076
【Fターム(参考)】
2B043AA10
2B043AB15
2B043BA02
2B043BA05
2B043BB14
2B043EA35
2B043ED14
2B043EE02
2B043EE05
2B076AA04
2B076DA05
2B076EA02
2B076EC21
2B076ED23
2B076ED30
(57)【要約】
【課題】刈り取り前の前工程作業において畝の一部に土が盛り上がった箇所が生じた場合であっても、刈り取り作業中に刈取部が土を取り入れないようにする。
【解決手段】泥土混入防止制御処理の実行中である場合(S4のYES)、制御部は圃場情報と走行機体の走行位置情報を取得する(S5)。圃場情報は泥土混入エリアマップデータを含み、予め記憶部に記憶されている。泥土混入エリアマップデータは、散布作業車が圃場を走行中に畝に対し交差して走行した交差領域に関する情報を含むマップ情報である。制御部は、走行機体の走行位置情報と泥土混入エリアマップデータを比較して、走行機体が交差領域に到達した場合(S6の範囲内)、ブザーにブザー音を発生させ(S7)、また刈取部を作業位置から回避位置まで上昇させる(S9)。これにより、前工程作業において畝の一部に土が盛り上がった箇所が生じても、刈り取り作業中に刈取部が土を取り入れない。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前工程作業を行う前工程作業車両と、
前記前工程作業の後に、圃場の畝に作付けされた作物を刈り取り可能な刈取作業機と、
前記前工程作業車両の走行経路と、前記圃場の前記畝の畝位置を含むマップと、に基づいて、前記走行経路が前記畝位置に交差する交差領域に関する情報を生成する生成部と、を備え、
前記刈取作業機は、
走行機体と、
前記走行機体に昇降可能に連結される刈取部と、
前記刈取部を昇降させる昇降部と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置と、
前記交差領域に関する情報を取得可能な取得部と、
前記走行機体が前記交差領域に到達した場合に、前記昇降部によって前記刈取部を上昇させる制御部と、を備える、
ことを特徴とする農作業システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記走行機体が前記交差領域から離脱した場合に、前記昇降部によって前記刈取部を上昇前の高さへ下降させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の農作業システム。
【請求項3】
前工程作業を行う前工程作業車両と、
前記前工程作業の後に、圃場の畝に作付けされた作物を刈り取り可能な刈取作業機と、
前記前工程作業車両の走行経路と、前記圃場の前記畝の畝位置を含むマップと、に基づいて、前記走行経路が前記畝位置に交差する交差領域に関する情報を生成する生成部と、を備え、
前記刈取作業機は、
走行機体と、
前記走行機体に昇降可能に連結される刈取部と、
前記刈取部を昇降させる昇降部と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置と、
前記交差領域に関する情報を取得可能な取得部と、
報知部と、
前記走行機体が前記交差領域に到達した場合に、前記報知部によって前記走行機体が前記交差領域に到達したことを報知する制御部と、を備える、
ことを特徴とする農作業システム。
【請求項4】
前工程作業を行う前工程作業車両と、
前記前工程作業の後に、圃場の畝に作付けされた作物を刈り取り可能な刈取作業機と、
前記前工程作業車両の走行経路と、前記圃場の前記畝の畝位置を含むマップと、に基づいて、前記走行経路が前記畝位置に交差する交差領域に関する情報を生成する生成部と、を備え、
前記刈取作業機は、
走行機体と、
前記走行機体に昇降可能に連結される刈取部と、
前記刈取部を昇降させる昇降部と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置と、
前記交差領域に関する情報を取得可能な取得部と、
表示部と、
前記GPS装置により検出される前記走行機体の前記走行位置と、前記マップに基づく圃場における前記交差領域とを、前記表示部によって表示する制御部と、を備える、
ことを特徴とする農作業システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作物を刈り取り可能な刈取作業機を用いた農作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、作物を刈り取り可能な刈取作業機としての汎用コンバインは、刈取部で刈取った穀稈を脱穀部で脱穀処理し、その後、選別部で穀粒と排稈とに選別される。選別部で選別された穀粒は、穀粒タンクまで搬送され、排出オーガを介して機外へ排出される。こうした汎用コンバインにおいて、刈取部は走行機体の前部に昇降自在に連結されており、刈取部には対地高さを検出する接地センサが設けられている。例えば、特許文献1に記載のコンバインは上下揺動するソリ状の接地センサを備え、刈取部の対地高さに応じた接地センサの上下揺動位置をポテンショメータで検出するように構成されている。
【0003】
上記した刈取部の高さ制御(刈高自動制御と呼ぶ)は、圃場の畝に植えられた大豆などを刈り取るときに有効である。つまり、大豆などを刈り取るときに刈取部が畝に突っ込むと、刈取った穀稈と共に土を取り込んでしまい、汚粒を生じさせる原因となるので、これを避けるために刈高自動制御が行われている。
【0004】
なお、圃場においてより広い作付面積を確保するために、圃場の枕地はできる限り狭い方がよいが、旋回中の汎用コンバインが畦畔にぶつからない広さを確保する必要がある。そこで、一般的に、枕地は汎用コンバインを旋回させるに足る広さで確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-11565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、大豆などの栽培中には刈り取り前の前工程の一例として、例えば雑草を枯らすために除草剤を散布する散布作業車などが圃場を往復走行されることがある。散布作業車は、多数の畝に対し同時に除草剤を散布するために、左右に幅広く広がった散布ブーム(所謂、ブームスプレーヤ)を有している。上記したように、枕地は汎用コンバインを旋回させるに足る広さが確保されているが、散布ブームを有する散布作業車を旋回させるには足りない。そこで、散布作業車は散布ブームが畦畔などにぶつからないように、汎用コンバインに比べて枕地の手前側で旋回動作が行われる。しかし、そのときに散布作業車の車輪が畝を横切ってしまい、車輪が横切った箇所には轍が生じると共に、土が多少なりとも盛り上がって小高くなる。こうして土が盛り上がった箇所では、接地センサが通過するより前に、刈取部によって土が取り入れられ得る。
【0007】
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、刈り取り前の前工程作業において例え畝の一部に土が盛り上がった箇所が生じた場合であっても、刈り取り作業中に刈取部が土を取り入れないようにできる刈取作業機を用いた農作業システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る農作業システムは、
前工程作業を行う前工程作業車両(500)と、
前記前工程作業の後に、圃場の畝に作付けされた作物を刈り取り可能な刈取作業機(1)と、
前記前工程作業車両の走行経路と、前記圃場の前記畝の畝位置を含むマップと、に基づいて、前記走行経路が前記畝位置に交差する交差領域に関する情報を生成する生成部(222)と、を備え、
前記刈取作業機(1)は、
走行機体(1A)と、
前記走行機体に昇降可能に連結される刈取部(2)と、
前記刈取部を昇降させる昇降部(207)と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置(209)と、
前記交差領域に関する情報を取得可能な取得部(211)と、
前記走行機体が前記交差領域に到達した場合に、前記昇降部によって前記刈取部を上昇させる制御部(100)と、を備える、
ことを特徴とする。
【0009】
前記制御部(100)は、前記走行機体が前記交差領域から離脱した場合に、前記昇降部によって前記刈取部を上昇前の高さへ下降させる。
【0010】
本発明に係る農作業システムは、
前工程作業を行う前工程作業車両(500)と、
前記前工程作業の後に、圃場の畝に作付けされた作物を刈り取り可能な刈取作業機(1)と、
前記前工程作業車両の走行経路と、前記圃場の前記畝の畝位置を含むマップと、に基づいて、前記走行経路が前記畝位置に交差する交差領域に関する情報を生成する生成部(222)と、を備え、
前記刈取作業機(1)は、
走行機体(1A)と、
前記走行機体に昇降可能に連結される刈取部(2)と、
前記刈取部を昇降させる昇降部(207)と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置(209)と、
前記交差領域に関する情報を取得可能な取得部(211)と、
報知部(208)と、
前記走行機体が前記交差領域に到達した場合に、前記報知部によって前記走行機体が前記交差領域に到達したことを報知する制御部(100)と、を備える、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る農作業システムは、
前工程作業を行う前工程作業車両(500)と、
前記前工程作業の後に、圃場の畝に作付けされた作物を刈り取り可能な刈取作業機(1)と、
前記前工程作業車両の走行経路と、前記圃場の前記畝の畝位置を含むマップと、に基づいて、前記走行経路が前記畝位置に交差する交差領域に関する情報を生成する生成部(222)と、を備え、
前記刈取作業機(1)は、
走行機体(1A)と、
前記走行機体に昇降可能に連結される刈取部(2)と、
前記刈取部を昇降させる昇降部(207)と、
前記走行機体の走行位置を検出するGPS装置(209)と、
前記交差領域に関する情報を取得可能な取得部(211)と、
表示部(30)と、
前記GPS装置により検出される前記走行機体の前記走行位置と、前記マップに基づく圃場における前記交差領域とを、前記表示部によって表示する制御部(100)と、を備える、
ことを特徴とする。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明によると、刈取作業機は刈り取り作業中に、前工程作業の際に畝の一部で土が盛り上がって小高くなった箇所に到達したとしても、刈取部を上昇させて当該箇所を回避するため、刈取部が刈取った穀稈と共に土を取り入れないようにすることができる。
【0014】
請求項2に係る本発明によると、刈取作業機は刈り取り作業中に、畝の一部で土が盛り上がって小高くなった箇所を回避するために上昇させた刈取部を、回避後に上昇前の高さへ下降するため、ユーザ操作によらず、その後に刈り取り作業を続行できるので便利である。
【0015】
請求項3に係る本発明によると、刈取作業機は刈り取り作業中に、前工程作業の際に畝の一部で土が盛り上がって小高くなった箇所に到達した場合に、当該箇所に到達したことを報知するので、刈取部が刈取った穀稈と共に土を取り入れないように、ユーザは報知に応じて当該箇所を回避する操作を行うことができる。
【0016】
請求項4に係る本発明によると、刈取作業機は刈り取り作業中に、走行機体の走行位置と、前工程作業の際に畝の一部で土が盛り上がって小高くなった箇所とを表示するので、刈取部が刈取った穀稈と共に土を取り入れないように、ユーザは表示に応じて当該箇所を回避する操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の農作業システムで用いる汎用コンバインを示す側面図。
図2】汎用コンバインを示す平面図。
図3】(A)刈取部の要部平面図、(B)刈取部の要部側面図。
図4】運転操作部を示す平面図。
図5】本実施形態の農作業システムのシステム概要を示すブロック図。
図6】泥土混入エリアマップデータについて説明するための図。
図7】刈取部による盛り上がった土の刈り取りについて説明するための図。
図8】本実施形態の泥土混入防止制御を示すフローチャート。
図9】泥土混入防止制御について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に沿って本実施形態の農作業システムについて説明する。まず、本実施形態の農作業システムで用いる刈取作業機の一例である汎用コンバインについて、図1乃至図4を用いて説明する。図1図2に示すように、刈取作業機としての汎用コンバイン1は、走行機体1Aと、穀稈を刈り取る刈取部2と、全稈投入される穀稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯溜する穀粒タンク4と、該穀粒タンク4内の穀粒を機外に排出する排出オーガ5と、脱穀済の排稈を後処理する後処理部6と、運転者が乗車する運転操作部7と、クローラ式の走行部8とを備えて構成されている。
【0019】
刈取部2は、走行機体1Aの前端部に昇降動作可能に連結されるヘッダ9と、ヘッダ9の前端部で未刈り穀稈を分草するデバイダ10(分草体とも呼ぶ)と、未刈り穀稈を刈り取る刈刃11と、未刈り穀稈や刈り取った穀稈を掻込むリール12と、掻き込まれた穀稈を幅方向の所定箇所に集めるオーガ13と、該オーガ13によって集められた穀稈を脱穀部3に向けて搬送し、脱穀部3に全稈投入するフィーダ14とを備えて構成されている。
【0020】
図3(A)、図3(B)に示すように、刈取部2の底部には、刈取部2による穀稈の刈高を検出する刈高センサ15が設けられている。刈高センサ15は、刈取部2において、作物の刈り取り作業中における走行機体1Aの移動方向に関し、刈刃11よりも上流側に配置されており、刈取部2の対地高さを検出する。刈高センサ15は、刈高に応じて上下揺動する左右一対の接地センサ16(左接地センサ、右接地センサ)と、各接地センサ16の上下揺動位置(詳しくは回転角)を検出するポテンショメータ17(左接地センサポテンショメータ、右接地センサポテンショメータ)とを備えて構成されており、その検出値は、刈取部2の刈高を自動的に制御する刈高自動制御で利用される。
【0021】
汎用コンバイン1における刈高自動制御は、通常、大豆等の作物を刈り取るときに有効であり、稲や麦を刈り取る際には実行されない。つまり、大豆等を刈り取るとき、刈取部2が地面に突っ込むと、泥を一緒に刈り取って汚粒の原因となるので、これを避けるために刈高自動制御が実行される。そして、圃場には畝が形成されているため、接地センサ16は幅広なものが使用される。
【0022】
運転操作部7は、図4に示すように、該運転操作部7の中央に設けられた運転席21の左側方に、中立位置から前方又は後方に操作することにより、前進又は後進車速を無段階に調節可能な走行主変速レバー22と、低速の作業レンジと高速の走行レンジとに切換え操作し得る副変速レバー23と、等を有している。更に、上記運転席21の前方に、エンジンの回転数を調節するエンジン回転ダイヤル25と、ボタン操作で脱穀クラッチ及び刈取クラッチ(不図示)を入切して、エンジンから上記脱穀部3又は刈取部2への動力をそれぞれ入切し得るパワークラッチスイッチ26と、刈取部2の昇降操作及び機体の旋回操作をし得るマルチステアリングレバー29と、表示部としてタッチパネル式の液晶モニタ30と、液晶モニタ30の画面を切り換える表示切換スイッチ31と、を有している。なお、液晶モニタ30の画面は、表示切換スイッチ31の操作ではなく、液晶モニタ30のタッチ操作によって切換え可能に構成してもよい。
【0023】
エンジンが出力する動力は、トランスミッション(不図示)で変速されて車輪に伝動されることに加えて、脱穀クラッチ及び刈取クラッチを介して脱穀部3又は刈取部2に伝達されている。パワークラッチスイッチ26は、刈取部2及び脱穀部3の駆動状態を切り換えるモーメンタリ式のシーソースイッチである。刈取部2及び脱穀部3の駆動状態としては、刈取部2及び脱穀部3の両方が駆動停止された停止状態と、刈取部2が駆動停止され且つ脱穀部3が駆動された脱穀状態と、刈取部2及び脱穀部3の両方が駆動された刈取状態との3つがある。脱穀クラッチ及び刈取クラッチの両方を切断させることによって停止状態に遷移し、脱穀クラッチを接続させ且つ刈取クラッチを切断させることによって脱穀状態に遷移し、脱穀クラッチ及び刈取クラッチの両方を接続状態とすることによって刈取状態に遷移する。
【0024】
<制御部>
走行機体1Aには、汎用コンバイン1の各部を制御する制御部100が設けられている。図5は、本実施形態の農作業システムのシステム概要を示すブロック図である。なお、汎用コンバイン1の刈取部2に係る制御系において、制御部100には図5に図示した以外の汎用コンバイン1の各部が接続されていてよいが、ここでは発明の本旨でないのでそれらの図示及び説明を省略する。
【0025】
図5に示すように、制御部100には、主変速レバーポテンショメータ201、刈取駆動検出センサ202、脱穀駆動検出センサ203、対地刈高さ制御実行スイッチ204、泥土混入防止制御実行スイッチ205、右接地センサポテンショメータ17a、左接地センサポテンショメータ17b、刈取部ポテンショメータ206、刈取部昇降用アクチュエータ207、ブザー208、液晶モニタ30、GNSSユニット209、並びに取得部211が接続されている。
【0026】
主変速レバーポテンショメータ201は、上記した無段階に調節可能な走行主変速レバー22の位置を検出する。刈取駆動検出センサ202は、刈取部2の駆動を入切する刈取クラッチ及び刈取部2の駆動状態を検出する。脱穀駆動検出センサ203は、脱穀部3の駆動を入切する脱穀クラッチ及び脱穀部3の駆動状態を検出する。右接地センサポテンショメータ17aは、刈取部2の底部に設けられた刈高センサ15のうち右側の接地センサ16の上下揺動位置(具体的には回転角)を検出する。左接地センサポテンショメータ17bは、刈取部2の底部に設けられた刈高センサ15のうち左側の接地センサ16の上下揺動位置を検出する。刈取部ポテンショメータ206は、走行機体1Aに対する刈取部2の高さを検出する。昇降部としての刈取部昇降用アクチュエータ207は、刈取部2を上下に駆動して走行機体1Aに対し昇降可能であり、本実施形態の場合、刈取部2の畝に対する対地高さを、作物を刈り取り可能な作業位置と、作業位置から上方に回避した回避位置とに切換えできるようにしている。
【0027】
対地刈高さ制御実行スイッチ204は、上記した刈高センサ15の検出データに従って刈取部2を上下に駆動する対地刈高さ制御を実行するか(オン)、実行しないか(オフ)をオペレータが操作して入力することができるスイッチである。泥土混入防止制御実行スイッチ205は、オペレータが操作して後述する泥土混入防止制御処理を実行するか(オン)、実行しないか(オフ)を入力することができるスイッチである。ブザー208は、オペレータに警告や異常等を報知する報知部の一例であり、ブザー音を発する。液晶モニタ30は、上述したようにタッチパネル式の液晶モニタである。
【0028】
制御部100は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータで構成されている。制御部100は、プロセッサの一例である不図示のCPUと、例えばROMやRAM等で構成された記憶部102と、不図示のI/Oとを備える。
【0029】
記憶部102には、制御部100に、後述する演算処理を行わせるプログラムや演算処理に用いる各種のパラメータが格納されている。また、記憶部102には、刈取駆動検出センサ202や脱穀駆動検出センサ203、右接地センサポテンショメータ17aや左接地センサポテンショメータ17bや刈取部ポテンショメータ206などによって取得された検出データ、GNSSユニット209によって取得された走行機体1Aの走行位置情報、取得部211を介して外部機器220から取得した各種データを記憶可能である。本実施形態において、取得部211は、外部機器220から後述する泥土混入エリアマップデータを取得可能である。GNSSユニット209は、受信アンテナ210を介して測位衛星から走行機体1Aの走行位置情報を取得するGPS装置である。
【0030】
制御部100は、取得部211を介して外部機器220との間で各種データを送受信することができる。取得部211は、例えば無線通信(Bluetooth(登録商標)等)や有線通信によって外部機器220の通信部221との間でデータ送受信可能に構成されている。外部機器220は通信機能を備えた機器であればよく、例えばタブレット端末やPC等の情報端末である。
【0031】
外部機器220は、通信部221と泥土混入エリアマップ生成部222とを有する。外部機器220は通信部221を介して、畝立て・播種作業情報、中耕除草作業情報、中耕培土作業情報、除草剤散布作業情報などの管理作業情報を受信可能である。これらの管理作業情報は、例えば畝立て・播種作業、中耕除草作業、中耕培土作業、除草剤散布作業などの作物を刈り取る前の前工程を行う各種の前工程作業車両の走行時にGPS装置等により取得される情報である。
【0032】
泥土混入エリアマップ生成部222は、後述する泥土混入エリアマップデータ(マップ情報)を作成する。本実施形態の場合、外部機器220は、例えば畝立て機(前工程作業車両の一例)により当該圃場で行った畝立て・播種作業に応じた圃場の畝の畝位置を含むマップと、散布作業車(前工程作業車両の一例)により当該圃場で行った除草剤散布作業において散布作業車の走行経路情報とを取得し、これらを用いて泥土混入エリアマップデータを作成する。詳しくは後述するが、泥土混入エリアマップデータは、散布作業車が圃場を走行中に畝に対し交差して走行した交差領域に関する情報を含むマップ情報である。制御部100は外部機器220から泥土混入エリアマップデータを受信して、記憶部102に記憶する。
【0033】
泥土混入エリアマップデータについて、図6及び図7を用いて説明する。図6に示すように、圃場Aには多数の畝Wが形成されている。圃場Aにおけるこれら畝Wの位置情報は畝立て・播種作業情報として、例えば畝立て時や畝Wへの苗の植え付け時に、そうした畝立て・播種作業を行う前工程作業車両が圃場Aを走行したときに得られる。あるいは、ティーチング制御として、畝立て後や苗の植え付け後に前工程作業車両を実際に圃場Aに走行させたり、あるいはドローンを飛行させたりするなどして、畝位置に関する畝Wの位置情報(幅、長さを含む)を取得できるようにしてもよい。
【0034】
ところで、既に述べたように、図6に示すように、大豆などの栽培中には、例えば除草剤を散布する散布作業車500が圃場Aを往復走行されることがある。散布作業車500は、多数の畝に対し同時に(ここでは6ずつ)除草剤を散布可能な左右に幅広く広がった散布ブーム501(ブームスプレーヤとも呼ぶ)を有している。圃場Aの枕地Bは汎用コンバインを旋回させるに足る広さが確保されているが、散布ブーム501を有する散布作業車500を旋回させるには足りない。つまり、枕地Bは散布ブーム501の旋回範囲を考慮して確保されていないため、散布作業車500を枕地Bで旋回させると、散布ブーム501が畦畔Cにぶつかる虞がある。
【0035】
そこで、散布作業車500は圃場の走行中に散布ブーム501が畦畔Cにぶつからないように、汎用コンバインに比べると、枕地Bの手前側で旋回動作が行われる。そのため、散布作業車500の車輪が畝Wを横切ってしまう。そうすると、図7に示すように、車輪が横切った箇所Zには轍が生じると共に、土が多少なりとも盛り上がって小高くなる。こうして土が盛り上がった箇所Yでは、作物の刈り取り作業中に汎用コンバインの刈取部2が刈取った穀稈と共に土を取り入れてしまいやすい。即ち、刈取部2において刈刃11が接地センサ16の通過前に、土が盛り上がった箇所Yに到達するので、刈刃11によって刈取った穀稈と共に土を取り込んでしまい得る。こうして取り入れられた土は脱穀部3や穀粒タンク4へと運ばれて、脱穀部3や穀粒タンク4を汚し穀粒を汚損させる原因となる。
【0036】
そこで、本実施形態の場合、オペレータは圃場Aにおいて散布作業車500が畝Wを交差して走行した交差領域Qを規定した泥土混入エリアマップデータを外部機器220により作成し、これを汎用コンバイン1の記憶部102に記憶させている。散布作業車500の車輪が畝Wを横切った交差領域Qは、散布作業車500の走行経路情報と上記の畝Wの位置情報とから求められる。図6に示す例の場合には、太線で描いた四角枠の部分が散布作業車500の車輪が畝Wを横切った交差領域Qとして、泥土混入エリアマップデータ(マップ情報)に記憶されている。そして、汎用コンバイン1により畝Wに植えられた作物を刈り取る刈取作業を行う際に、泥土混入エリアマップデータを用いることで、刈取部2が刈取った穀稈と共に土を取り入れることがないようにした(後述する泥土混入防止制御処理参照)。
【0037】
<泥土混入防止制御処理>
次に、汎用コンバイン1が圃場の枕地で旋回動作を繰返しながら圃場を往復走行して、刈取部2により畝に植えられた作物を刈り取る刈取作業を行う際に、制御部100が実行する泥土混入防止制御処理について、図5図6等を参照しながら図8及び図9を用いて説明する。図8は、本実施形態の泥土混入防止制御処理を示すフローチャートである。本実施形態において、制御部100は例えばエンジンを始動する不図示のイグニッションキーがオペレータによって操作されると、図8に示す泥土混入防止制御処理を繰り返し実行する。
【0038】
図8に示すように、制御部100は、汎用コンバイン1が刈取作業走行中であるか否かを判定する(S1)。制御部100は刈取駆動検出センサ202の検出結果に基づいて、汎用コンバイン1が刈取作業走行中であるか否かを判定する。汎用コンバイン1が刈取作業走行中である場合(S1のYES)、制御部100は対地刈高さ制御実行中か否かを判定する(S2)。制御部100は、対地刈高さ制御実行スイッチ204がオンかオフかによって、刈高センサ15の検出データに従って刈取部2を上下に駆動する対地刈高さ制御を実行中であるか否かを判定する。対地刈高さ制御が実行中である場合(S2のYES)、制御部100は刈高センサ15が地面(詳しくは畝)に接地した接地状態であるか否かを判定する(S3)。
【0039】
刈高センサ15が接地状態である場合(S3のYES)、制御部100は泥土混入防止制御処理の実行中であるか否かを判定する(S4)。制御部100は、泥土混入防止制御実行スイッチ205がオペレータによってオン操作されている場合に、泥土混入防止制御処理の実行中であると判定する。
【0040】
泥土混入防止制御処理の実行中である場合(S4のYES)、制御部100は圃場情報と走行機体1Aの走行位置情報を取得する(S5)。ここで言う圃場情報は上述した泥土混入エリアマップデータを含み、予め記憶部102に記憶されている。本実施形態の場合、オペレータは刈取作業を行うまでに前もって、刈取作業を行う圃場に関する泥土混入エリアマップデータを外部機器220から取得して記憶部102に記憶させている。走行機体1Aの走行位置情報は、制御部100がGNSSユニット209から取得する。
【0041】
制御部100は、取得した走行機体1Aの走行位置情報と泥土混入エリアマップデータを比較して、走行機体1Aが泥土混入エリア(つまりは交差領域Q)に到達したか否かを判定する(S6)。走行機体1Aが泥土混入エリアに到達した場合(S6の範囲内)、制御部100はブザー95にブザー音を発生させることにより、走行機体1Aが泥土混入エリアに到達した旨をオペレータに対し報知する(S7)。
【0042】
そして、制御部100は泥土混入エリアに到達した時点において、刈取部ポテンショメータ206により検出される刈取部2の高さ(元の作業位置)を記憶部102に記憶する(S8)。その後、制御部100は、刈取部2を作業位置から回避位置まで上昇させる(S9)。例えば、刈取部2は走行機体1Aに対し昇降できるうちの最も高い位置を回避位置として上昇させる。ただし、例えば泥土混入エリアマップデータを作成した散布作業車の車輪径などから、車輪が横切ることで土が盛り上がって小高くなる箇所の高さが想定できる場合は、最も高い位置まで上昇させることなく、小高くなった箇所の高さより高い位置を回避位置として刈取部2を上昇させればよい。
【0043】
制御部100は、取得した走行機体1Aの走行位置情報と泥土混入エリアマップデータを比較して、走行機体1Aが泥土混入エリアの範囲内を走行しているか否かを判定する(S10)。走行機体1Aが泥土混入エリアの範囲内を走行している場合(S10の範囲内)、制御部100は走行機体1Aが泥土混入エリアの範囲から出るまで処理を進行させず待機する。走行機体1Aが泥土混入エリアの範囲から離脱した場合(S10の範囲外)、制御部100は上記ステップS8で記憶部102に記憶した刈取部2の高さつまり上昇前の元の作業位置に戻すように、刈取部2を下降させる(S11)。また、ブザー95からのブザー音を消音させる。
【0044】
図9を用いて、上記した報知ブザー61による報知について具体的に例を挙げて説明する。図9に示すように、汎用コンバイン1は圃場に入り畝Wに沿って走行する。その際に、汎用コンバイン1は刈取部2を作業位置に下降させることで、走行しながら畝Wに植えられている作物を刈取部2によって刈り取る。このとき、汎用コンバイン1は、刈高センサ15による検出に基づき畝Wの高さに応じて刈取部2の対地高さを調整しながら、畝Wに植えられた作物の刈り取りを行う。
【0045】
こうした刈取作業中に、汎用コンバイン1が交差領域Qに到達すると、ブザー95からブザー音が発生される。これにより、オペレータは、汎用コンバイン1が前工程作業車両(例えば、散布作業車)が畝Wを横切ったことにより土が盛り上がった箇所Y(図7参照)に近づいたことが分かる。そして、汎用コンバイン1は、刈取部2を作業位置から回避位置へ上昇させる。
【0046】
汎用コンバイン1が交差領域Qから離脱すると、ブザー95からのブザー音が消音されると共に、刈取部2を回避位置から記憶した元の作業位置へ下降させる。本実施形態では、刈取部2が作業位置にある場合、汎用コンバイン1は刈高センサ15による検出に基づいて刈取部2の対地高さを調整しながら作物の刈り取りを行っていく。そして、汎用コンバイン1は他の畝Wにおいて作物の刈り取りを行っているときに交差領域Qに到達する度に、上記したブザー95による報知と刈取部2の作業位置から回避位置への移動動作を行う。
【0047】
以上のように、本実施形態では、泥土混入防止制御処理の実行中である場合に、走行機体の走行位置情報と泥土混入エリアマップデータを比較して、走行機体が交差領域に到達した場合には、ブザーにブザー音を発生させる。また、刈取部2を作業位置から回避位置まで上昇させる。これにより、汎用コンバイン1は刈り取り作業中に、前工程作業の際に畝の一部で土が盛り上がって小高くなった箇所に到達したとしても、刈取部2を上昇させて当該箇所を回避するため、刈取部2が刈取った穀稈と共に土を取り入れないようにすることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、ブザー95による報知と刈取部2の作業位置から回避位置への移動動作とを共に行う例を示したが、これに限らず、ブザー95による報知と刈取部2の移動動作のいずれか一方を行うようにしてもよい。ただし、ブザー95による報知のみを行う場合には、オペレータがブザー95による報知に応じて、刈取部2を作業位置から回避位置へ移動させる操作を行う必要がある。
【0049】
また、上述した実施形態では、報知部の一例としてブザー95を用いた場合について説明したがこれに限定するものではなく、例えば液晶モニタ30や、不図示のスピーカや警報ランプなどで報知を行ってもよい。例えば、不図示のスピーカに交差領域Qに到達した旨や交差領域Qから離脱した旨を報知する音声を出力させたり、不図示の警報ランプを点灯させたりしてよい。液晶モニタ30に交差領域Qに到達した旨や交差領域Qから離脱した旨を表示させてよい。さらには、例えば図9のような、畝Wの位置情報に基づく畝Wの表示と、走行中の汎用コンバイン1に関しGPS装置により検出される走行機体1Aの走行位置情報に基づく走行機体1Aの走行位置の表示と、泥土混入エリアマップデータに基づく交差領域Qとを、液晶モニタ30に表示するようにしてもよい。オペレータはこうした報知に基づいて、汎用コンバイン1が交差領域Qに到達したことを認識でき、それに応じて刈取部2を作業位置から回避位置へ移動させる操作を適切なタイミングで行うことができる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、汎用コンバイン1が外部機器220(より詳しくは泥土混入エリアマップ生成部222、図5参照)により生成された泥土混入エリアマップデータを取得するようにしたが、これに限らない。例えば、汎用コンバイン1が泥土混入エリアマップ生成部222を有しており、取得部211を介して畝立て・播種作業情報、中耕除草作業情報、中耕培土作業情報、除草剤散布作業情報などの管理作業情報を受信して、泥土混入エリアマップデータを作成できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…汎用コンバイン(刈取作業機)
1A…走行機体
2…刈取部
30…液晶モニタ(表示部)
100…制御部
207…刈取部昇降用アクチュエータ(昇降部)
208…ブザー(報知部)
209…GNSSユニット(GPS装置)
211…取得部
222…生成部
500…散布作業車(前工程作業車両)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9