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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039602
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】波形観測装置及び透過特性取得方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01R13/20 L
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146811
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 創
(57)【要約】
【課題】任意のPPGの帯域に応じて被測定物の透過特性を取得することができる波形観測装置及び透過特性取得方法を提供する。
【解決手段】任意のPPG100(100')からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして離散デジタル波形データを取得する波形観測部10と、PPG100,から被測定物200を介さずに波形観測部10に入力された被測定信号の基準波形データを記憶する基準波形データ記憶部21と、PPG100から被測定物200を介して波形観測部10に入力された被測定信号の損失挿入波形データを記憶する損失挿入波形データ記憶部22と、基準波形データ及び損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換部31と、基準スペクトルと損失挿入スペクトルとの差分を算出して、被測定物200の透過特性を取得する差分算出部32と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のパルスパターン発生器(100,100')からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部(10)を備える波形観測装置(1)であって、
前記パルスパターン発生器から被測定物(200)を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶部(21)と、
前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶部(22)と、
前記基準波形データ記憶部に記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶部に記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換部(31)と、
前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出部(32)と、を備えることを特徴とする波形観測装置。
【請求項2】
前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力部(33)を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の波形観測装置。
【請求項3】
前記被測定物が、前記差分算出部により透過特性が取得済みの既知デバイス(200A)と、透過特性が未知の未知デバイス(200B)とからなる場合に、前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性から前記既知デバイスのS21パラメータを減算して、前記未知デバイスのS21パラメータを取得する損失補償部(34)を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の波形観測装置。
【請求項4】
あるパルスパターン発生器(100)からのパターン信号に基づく前記被測定物の透過特性を、他のパルスパターン発生器(100')からのパターン信号に基づく前記基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成する損失挿入部(35)を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の波形観測装置。
【請求項5】
前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性、又は、前記損失挿入部により生成された擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換して、前記被測定物の波形データを生成する逆フーリエ変換部(36)を更に備えることを特徴とする請求項4に記載の波形観測装置。
【請求項6】
操作部(40)への操作入力に応じて、前記基準波形データ、前記損失挿入波形データ、前記基準スペクトル、前記損失挿入スペクトル、前記透過特性、及び前記被測定物の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部(50)に表示制御する表示制御部(38)を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の波形観測装置。
【請求項7】
任意のパルスパターン発生器(100,100')からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部(10)を備えた波形観測装置(1)を用いる透過特性取得方法であって、
前記パルスパターン発生器から被測定物(200)を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶ステップ(S2)と、
前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶ステップ(S4)と、
前記基準波形データ記憶ステップで記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶ステップで記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換ステップ(S5)と、
前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出ステップ(S6)と、を含むことを特徴とする透過特性取得方法。
【請求項8】
前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力ステップ(S7)を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の透過特性取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形観測装置及び透過特性取得方法に関し、特に、被測定信号の周波数特性の測定を行える波形観測装置及び透過特性取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば被測定物を介して入力した被測定信号の波形データを所定の周期で順次サンプリングし、サンプリングした波形データを適宜読み出して表示画面にアイパターンを再生表示することにより被測定信号の波形を観測する波形観測装置が知られている。
【0003】
一般的な波形観測装置では、通常、サンプリングした被測定信号のアイパターン表示のみが表示され、この波形形状に応じて信号の品質を観測している。よって、例えば高周波回路網における被測定物の周波数特性(特に、測定頻度が高い周波数特性としてS21パラメータ)を測定する場合には、別機器としてベクトルネットワークアナライザ(VNA)を接続して測定する必要がある。
【0004】
しかしながら、被測定物の周波数特性を測定するには、波形観測装置の他にVNAを別途用意しなければならず、測定コストが嵩むという問題があった。また、測定項目を変更する際に、その都度新たな機器へケーブル等の配線を引き回して測定系の変更をしなければならず、測定作業が煩雑であった。
【0005】
そこで、一般的な波形観測機能に加えて周波数特性の測定を行える波形観測装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5475484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された波形観測装置は、固有の周期を持つランダムな「0」と「1」のパターンのうち、任意に選択されたパルスパターンのパターン信号をテスト信号として被測定物に出力するパルスパターン発生器(Pulse Pattern Generator:PPG)を内蔵した構成になっている。
【0008】
このため、特許文献1に開示された波形観測装置には、被測定物の周波数特性の測定が内蔵のPPGの帯域に制限されてしまうという問題があった。また、特許文献1に開示された波形観測装置は、自身がPPGを内蔵しているため、光トランシーバなどのPPGを備えたデバイス内の回路を被測定物として測定できないという問題もあった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、任意のPPGの帯域に応じて被測定物の透過特性を取得することができる波形観測装置及び透過特性取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る波形観測装置は、任意のパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部を備える波形観測装置であって、前記パルスパターン発生器から被測定物を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶部と、前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶部と、前記基準波形データ記憶部に記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶部に記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換部と、前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出部と、を備える構成である。
【0011】
この構成により、本発明に係る波形観測装置は、波形観測装置とは独立したPPGを被測定信号の信号源として用いるため、ユーザがその都度入手しやすい任意のPPGの帯域に応じて被測定物の透過特性(S21パラメータ)を取得することができる。
【0012】
また、本発明に係る波形観測装置は、前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力部を更に備える構成であってもよい。
【0013】
この構成により、本発明に係る波形観測装置は、被測定物のS21パラメータをSパラメータファイルに変換して出力することができるため、例えば、このSパラメータファイルを他の波形観測装置や信号解析装置などの各種測定装置に適用することができる。
【0014】
また、本発明に係る波形観測装置においては、前記被測定物が、前記差分算出部により透過特性が取得済みの既知デバイスと、透過特性が未知の未知デバイスとからなる場合に、前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性から前記既知デバイスのS21パラメータを減算して、前記未知デバイスのS21パラメータを取得する損失補償部を更に備える構成であってもよい。
【0015】
この構成により、本発明に係る波形観測装置は、被測定物のS21パラメータから既知デバイスのS21パラメータを減算して、未知デバイスのS21パラメータを取得できるため、測定系における損失をキャンセルして所望の透過特性を取得することができる。
【0016】
また、本発明に係る波形観測装置においては、あるパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく前記被測定物の透過特性を、他のパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく前記基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成する損失挿入部を更に備える構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明に係る波形観測装置は、あるPPGからのパターン信号に基づく被測定物のS21パラメータを、他のPPGからのパターン信号に基づく基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成することができる。例えば、本発明に係る波形観測装置は、任意のロスボードを被測定物としてS21パラメータを取得しておき、光トランシーバなどのデバイスに含まれる他のPPGの基準スペクトルに、任意のロスボードから得られたS21パラメータを損失として付加して、マージンテストを行うことができる。
【0018】
また、本発明に係る波形観測装置は、前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性、又は、前記損失挿入部により生成された擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換して、前記被測定物の波形データを生成する逆フーリエ変換部を更に備える構成であってもよい。
【0019】
この構成により、本発明に係る波形観測装置は、差分算出部により取得された被測定物のS21パラメータを逆フーリエ変換することで、PPGと波形観測装置との間に存在する被測定物以外の損失要素の影響を排除して、被測定物の波形データを生成することができる。また、本発明に係る波形観測装置は、擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換することで、擬似的な損失要素を付加した状態のPPGの波形データを取得することができる。
【0020】
また、本発明に係る波形観測装置は、操作部への操作入力に応じて、前記基準波形データ、前記損失挿入波形データ、前記基準スペクトル、前記損失挿入スペクトル、前記透過特性、及び前記被測定物の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部に表示制御する表示制御部を更に備える構成であってもよい。
【0021】
この構成により、本発明に係る波形観測装置は、ユーザによる操作部への操作入力に応じて、基準波形データ、損失挿入波形データ、基準スペクトル、損失挿入スペクトル、S21パラメータ、及び、逆フーリエ変換部により生成された被測定物の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部に表示制御するため、これらの波形データやスペクトルをユーザが確認することができる。
【0022】
また、本発明に係る透過特性取得方法は、任意のパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部を備えた波形観測装置を用いる透過特性取得方法であって、前記パルスパターン発生器から被測定物を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶ステップと、前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶ステップと、前記基準波形データ記憶ステップで記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶ステップで記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換ステップと、前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出ステップと、を含む構成である。
【0023】
また、本発明に係る透過特性取得方法は、前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力ステップを更に含む構成であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、任意のPPGの帯域に応じて被測定物の透過特性を取得することができる波形観測装置及び透過特性取得方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る波形観測装置の構成を示すブロック図である。
図2】光トランシーバに内蔵されたPPGを本実施形態におけるPPGとして用いる場合の構成を示すブロック図である。
図3図1における波形観測部の動作を説明するための図である。
図4】(a)はPPGから被測定物を介さずに被測定信号が波形観測部に入力された場合のアイパターンの一例を示す図であり、(b)はPPGから被測定物を介して被測定信号が波形観測部に入力された場合のアイパターンの一例を示す図である。
図5】(a)は図1におけるフーリエ変換部により生成された基準スペクトルを示すグラフであり、(b)は図1におけるフーリエ変換部により生成された損失挿入スペクトルを示すグラフである。
図6図5(b)に示した損失挿入スペクトルから図5(a)に示した基準スペクトルを減算して得られた被測定物のS21パラメータの一例を示すグラフである。
図7】本実施形態の波形観測装置で被測定物のS21パラメータを測定した結果と、VNAで被測定物のS21パラメータを測定した結果とを重ねて示すグラフである。
図8】被測定物の構成例を示すブロック図である。
図9】本発明の実施形態に係る波形観測装置を用いる透過特性取得方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る波形観測装置及び透過特性取得方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0027】
図1に示す本発明の実施形態に係る波形観測装置1は、任意のPPG100からのパターン信号に基づく被測定信号の波形を観測するものであって、波形観測部10と、波形データ記憶部20と、波形データ処理部30と、操作部40と、表示部50と、を備える。
【0028】
PPG100は、波形観測装置1とは別個に設けられるものであり、例えば、信号発生装置として独立した形態を取ったものでもあってもよく、あるいは、光トランシーバなどの各種デバイスに搭載されたDSP(Digital Signal Processor)内に内蔵されるチップ状のものであってもよい。
【0029】
PPG100は、NRZ方式のPRBS(Pseudorandom Binary Sequence)パターンなどのパターン信号を出力する。また、PPG100は、PAM4方式のPRBSパターンやSSPRQ(Short Stress Pattern Random Quaternary)パターンなどのパターン信号を出力する。あるいは、PPG100は、固定パターン、任意パターンによるプログラマブルパターンなどのパターン信号を出力するものであってもよい。さらに、PPG100は、上記のようなパターン信号に同期した同期クロックを生成し、この同期クロックをトリガ信号として波形観測部10に出力するようになっている。
【0030】
被測定物200は、例えば、ケーブル、コネクタ、フィルタ、所定の損失を持つロスボードなどのパッシブデバイスである。被測定物200が対応する伝送規格の例としては、IEEE802.3、OIF-CEIなどが挙げられる。さらに、被測定物200は、光トランシーバなどの各種デバイスにおいて、内蔵のPPGの後段に配置されたパッシブな回路などであってもよい。
【0031】
図2は、光トランシーバ60に内蔵されたPPGを本実施形態におけるPPG100として用いる場合の構成例を示す図である。MCB(Module Compliance Board)61は、光トランシーバ60から出力された電気信号を送受信するための評価ボードであり、光トランシーバ60を差し込むためのポート(不図示)を備えている。
【0032】
図1に戻り、波形観測部10は、PPG100からのトリガ信号に応じて被測定信号に対するサンプリングを行い、被測定信号の時系列データである離散デジタル波形データを取得するようになっており、サンプラ11と、サンプリング信号生成部12と、を含む。
【0033】
ここで、被測定信号は、PPG100から被測定物200を介さずに波形観測部10に直接入力されたパターン信号であるか、あるいは、PPG100から被測定物200を介して波形観測部10に入力されたパターン信号である。なお、PPG100からのパターン信号が被測定物200を介さずに波形観測部10に直接入力される場合には、PPG100と波形観測部10とが周波数特性が保証された損失の少ないケーブルで接続されることが望ましい。
【0034】
サンプラ11は、入力された被測定信号を、サンプリング信号生成部12により生成されるサンプリング信号を受けるごとにサンプリングして、時系列データである離散デジタル波形データに変換して波形データ記憶部20に出力する。
【0035】
サンプリング信号生成部12には、PPG100からのトリガ信号が入力される。サンプリング信号生成部12は、図3に示すように、被測定信号の波形繰り返し周期Taの整数倍に対して所定の時間分解能ΔTだけ長いサンプリング周期Tsのサンプリング信号を、トリガ信号を受けたタイミングから発生する。サンプリング信号生成部12により生成されたサンプリング信号は、サンプラ11に入力される。このサンプリング信号により、被測定信号の周期波形の特定の位相を基準としてサンプリング位置がΔTずつ徐々にずれていくため、サンプラ11は被測定信号の波形を時間分解能ΔTで復元することができる。
【0036】
なお、図3の最下段は、時間分解能ΔTで復元された被測定信号を時系列波形(パルスパターン)として表示する例を示しているが、表示形態を変えて被測定信号を2UIで折り返して表示すればアイパターンが得られる。なお、サンプリング周期Tsとトリガ信号の周期は、操作部40の操作によって設定可能となっている。
【0037】
サンプラ11により取得された離散デジタル波形データは、表示部50においてアイパターン又は時系列波形として表示される。図4(a)は、PPG100から被測定物200を介さずに被測定信号が波形観測部10に入力された場合のアイパターンの一例を示している。図4(b)は、PPG100から被測定物200を介して被測定信号が波形観測部10に入力された場合のアイパターンの一例を示している。
【0038】
なお、サンプリング信号生成部12に入力されるトリガ信号は、被測定信号から抽出されたものであってもよい。この場合、波形観測装置1は、入力された被測定信号からそのクロック成分を再生するクロック再生回路を更に備え、このクロック再生回路から被測定信号のクロック成分の立ち上がりまたは立ち下がりに同期したトリガ信号を発生することになる。
【0039】
波形データ記憶部20は、基準波形データ記憶部21と、損失挿入波形データ記憶部22と、を含む。基準波形データ記憶部21は、PPG100から被測定物200を介さずに波形観測部10に入力された被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶するようになっている。損失挿入波形データ記憶部22は、PPG100から被測定物200を介して波形観測部10に入力された被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶するようになっている。
【0040】
波形データ処理部30は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、フーリエ変換部31、差分算出部32、Sパラメータファイル出力部33、損失補償部34、損失挿入部35、逆フーリエ変換部36、透過特性記憶部37、及び表示制御部38の機能を実現する。なお、波形データ処理部30の少なくとも一部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのデジタル回路で構成することや、CPUによる所定のプログラムの実行によりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、波形データ処理部30の少なくとも一部は、デジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0041】
フーリエ変換部31は、基準波形データ記憶部21に記憶された基準波形データをフーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)して、基準スペクトルを生成するようになっている。また、フーリエ変換部31は、損失挿入波形データ記憶部22に記憶された損失挿入波形データをフーリエ変換して、損失挿入スペクトルを生成するようになっている。図5(a)及び(b)は、基準スペクトルと損失挿入スペクトルの一例をそれぞれ示している。フーリエ変換部31により生成された基準スペクトル及び損失挿入スペクトルは、透過特性記憶部37に記憶される。
【0042】
差分算出部32は、フーリエ変換部31により生成された基準スペクトルと損失挿入スペクトルとの差分を算出して、被測定物200の透過特性(S21パラメータ)を取得するようになっている。図6は、差分算出部32により図5(b)に示した損失挿入スペクトルから図5(a)に示した基準スペクトルを減算して得られた被測定物200のS21パラメータの一例を示している。差分算出部32により取得された被測定物200のS21パラメータは、透過特性記憶部37に記憶される。
【0043】
図7は、本実施形態の波形観測装置1で被測定物200のS21パラメータを測定した結果と、VNAで被測定物200のS21パラメータを測定した結果とを重ねて示すグラフである。本実施形態の波形観測装置1によるS21パラメータの測定結果は、15GHzくらいまでの低周波数帯域ではVNAの測定結果と良く一致し、高周波数帯域に向かうに連れて周波数特性が減衰していく傾向を示している。本実施形態の波形観測装置1は、高価なVNAを用意することなく、低コストで簡易に被測定物200のS21パラメータを測定できるという利点がある。
【0044】
Sパラメータファイル出力部33は、差分算出部32により取得されて透過特性記憶部37に記憶された被測定物200のS21パラメータのデータを、パーソナルコンピュータ等で読み書き可能な公知のSパラメータのファイル形式のデータに変換し、Sパラメータファイルとして出力するようになっている。Sパラメータファイル出力部33から出力されるSパラメータファイルは、透過特性記憶部37に記憶されてもよく、あるいは、ハードディスク装置などの外部の記憶装置や、磁気テープ、ディスク、オプティカルディスク、光磁気ディスク、ROM、PROM、VCD、DVD、又はその他のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されてもよい。なお、Sパラメータファイル出力部33から出力されるSパラメータファイルは、他の波形観測装置や信号解析装置などの各種測定装置に適用することも可能である。
【0045】
このようにして、本実施形態の波形観測装置1は、PPG100と波形観測装置1との間に存在する被測定物200以外の損失要素の影響を排除して、被測定物200のS21パラメータを抽出することができる。
【0046】
損失補償部34は、被測定物200が、差分算出部32によりS21パラメータが取得済みの1以上の既知デバイスと、S21パラメータが未知の1以上の未知デバイスとからなる場合に、差分算出部32により取得された被測定物200のS21パラメータから1以上の既知デバイスのS21パラメータを減算して、1以上の未知デバイスのS21パラメータを取得するようになっている。
【0047】
図8は、被測定物200が2つの既知デバイス200Aと、1つの未知デバイス200Bとからなる場合の測定系の例を示している。2つの既知デバイス200Aは、例えば、1つの未知デバイス200BをPPG100と波形観測装置1とに接続する2本のケーブルである。この場合、損失補償部34は、2つの既知デバイス200AのS21パラメータを、被測定物200のS21パラメータからそれぞれ減算して、未知デバイス200BのS21パラメータを取得する。ここで、2つの既知デバイス200AのS21パラメータは、ユーザによる操作部40への操作入力に応じて透過特性記憶部37から読み出される。なお、損失補償部34により取得された未知デバイス200BのS21パラメータは、透過特性記憶部37に記憶されてもよい。
【0048】
損失挿入部35は、あるPPG100からのパターン信号に基づいて得られた被測定物200のS21パラメータを、他のPPG100'からのパターン信号に基づいて得られた基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成できるようになっている。ここで、あるPPG100からのパターン信号に基づいて得られた被測定物200のS21パラメータは、ユーザによる操作部40への操作入力に応じて透過特性記憶部37から読み出される。なお、損失挿入部35により生成された擬似的な損失挿入スペクトルは、透過特性記憶部37に記憶されてもよい。
【0049】
逆フーリエ変換部36は、差分算出部32により取得された被測定物200のS21パラメータを逆フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform:IFFT)して、被測定物200の波形データを生成するようになっている。また、逆フーリエ変換部36は、損失挿入部35により生成された擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換して、擬似的な被測定物200の波形データを生成するものであってもよい。なお、逆フーリエ変換部36により生成された波形データは、波形データ記憶部20に記憶されてもよい。
【0050】
例えば、本実施形態の波形観測装置1を用いて、IEEE802.3やOIF-CEIなどの伝送規格で規定された周波数特性を持つロスボードのS21パラメータをあらかじめ取得しておき、他のPPG100'の基準スペクトルにロスボードのS21パラメータを加算することで、擬似的な損失挿入スペクトルを生成できる。さらに、本実施形態の波形観測装置1を用いて、擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換部36により波形データに変換することができる。これにより、様々な周波数特性を持つ実際のロスボードを他のPPG100'に取り付けることなく、他のPPG100'への損失の付加をシミュレーションすることなどが可能になる。
【0051】
表示制御部38は、ユーザによる操作部40への操作入力に応じて、基準波形データ、損失挿入波形データ、基準スペクトル、損失挿入スペクトル、S21パラメータ、及び、逆フーリエ変換部36により生成された被測定物200の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部50に表示制御するようになっている。
【0052】
操作部40は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部50の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。操作部40は、ユーザが表示画面に表示されている特定の項目の位置を指やスタイラス等で触れた際に、タッチセンサが表示画面上で検出した位置と項目の位置との一致を認識することにより、各項目に割り当てられた機能を実行するための信号を表示制御部38に出力する。操作部40は、表示部50に操作可能に表示されるものであってもよく、あるいは、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されるものであってもよい。
【0053】
ユーザによる操作部40への操作入力により、被測定信号のサンプリングに関する設定、各記憶部に記憶された波形データやスペクトルの選択、表示部50に表示する波形データやスペクトルの選択などを行うことが可能である。
【0054】
表示部50は、液晶ディスプレイやCRT等の表示機器で構成され、表示制御部38による表示制御に基づき、基準波形データ、損失挿入波形データ、基準スペクトル、損失挿入スペクトル、被測定物200のS21パラメータ、及び被測定物200の波形データなどの各種表示内容を表示画面に表示するようになっている。さらに、表示部50は、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0055】
以下、波形観測装置1を用いる透過特性取得方法について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0056】
まず、ユーザにより、被測定物200を介さずにPPG100と波形観測装置1とが接続される(ステップS1)。
【0057】
次に、波形観測部10は、PPG100から被測定物200を介さずに入力された被測定信号の損失挿入前の基準波形データを取得する。取得された基準波形データは記憶部21に記憶される(基準波形データ記憶ステップS2)。
【0058】
次に、ユーザにより、被測定物200を介してPPG100と波形観測装置1とが接続される(ステップS3)。
【0059】
次に、波形観測部10は、PPG100から被測定物200を介して入力された被測定信号の損失挿入後の損失挿入波形データを取得する。取得された損失挿入波形データは記憶部21に記憶される(損失挿入波形データ記憶ステップS4)。
【0060】
次に、フーリエ変換部31は、基準波形データ記憶ステップS2で基準波形データ記憶部21に記憶された基準波形データをフーリエ変換して、基準スペクトルを生成する。また、フーリエ変換部31は、損失挿入波形データ記憶ステップS4で損失挿入波形データ記憶部22に記憶された損失挿入波形データをフーリエ変換して、損失挿入スペクトルを生成する(フーリエ変換ステップS5)。
【0061】
次に、差分算出部32は、フーリエ変換ステップS5により生成された基準スペクトルと損失挿入スペクトルとの差分を算出して、被測定物200のS21パラメータを取得する(差分算出ステップS6)。
【0062】
次に、Sパラメータファイル出力部33は、差分算出ステップS6により取得されて透過特性記憶部37に記憶された被測定物200のS21パラメータのデータをSパラメータのファイル形式のデータに変換し、Sパラメータファイルとして出力する(Sパラメータファイル出力ステップS7)。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る波形観測装置1は、波形観測装置1とは独立したPPG100を被測定信号の信号源として用いるため、ユーザがその都度入手しやすい任意のPPG100の帯域に応じて被測定物200のS21パラメータを取得することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る波形観測装置1は、基準波形データ記憶部21に保存した基準波形データから基準スペクトルを生成するとともに、損失挿入波形データ記憶部22に保存した損失挿入波形データから損失挿入スペクトルを生成するようになっている。このため、波形データの測定タイミングとスペクトルの取得タイミングが同一でなくてもよく、例えば、被測定物200をPPG100と波形観測装置1とに再接続することなく、過去に測定した基準波形データと損失挿入波形データから被測定物200のS21パラメータを算出することが可能である。つまり、本実施形態に係る波形観測装置1は、再接続による誤差の影響を無くして、任意のタイミングで被測定物200のS21パラメータを取得することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る波形観測装置1は、被測定物200のS21パラメータをSパラメータファイルに変換して出力することができるため、例えば、このSパラメータファイルを他の波形観測装置や信号解析装置などの各種測定装置に適用することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る波形観測装置1は、被測定物200のS21パラメータから既知デバイス200AのS21パラメータを減算して、未知デバイス200BのS21パラメータを取得できるため、測定系における損失をキャンセルして所望の透過特性を取得することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る波形観測装置1は、あるPPG100からのパターン信号に基づく被測定物200のS21パラメータを、他のPPG100'からのパターン信号に基づく基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成することができる。例えば、本実施形態に係る波形観測装置1は、任意のロスボードを被測定物200としてS21パラメータを取得しておき、光トランシーバなどのデバイスに含まれる他のPPG100'の基準スペクトルに、任意のロスボードから得られたS21パラメータを損失として付加して、マージンテストを行うことができる。
【0068】
また、本実施形態に係る波形観測装置1は、差分算出部32により取得された被測定物200のS21パラメータを逆フーリエ変換することで、PPG100と波形観測装置1との間に存在する被測定物200以外の損失要素の影響を排除して、被測定物200の波形データを生成することができる。また、本実施形態に係る波形観測装置1は、擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換することで、擬似的な損失要素を付加した状態のPPG100'の波形データを取得することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る波形観測装置1は、ユーザによる操作部40への操作入力に応じて、基準波形データ、損失挿入波形データ、基準スペクトル、損失挿入スペクトル、S21パラメータ、及び、逆フーリエ変換部36により生成された被測定物200の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部50に表示制御するため、これらの波形データやスペクトルをユーザが確認することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 波形観測装置
10 波形観測部
20 波形データ記憶部
21 基準波形データ記憶部
22 損失挿入波形データ記憶部
30 波形データ処理部
31 フーリエ変換部
32 差分算出部
33 Sパラメータファイル出力部
34 損失補償部
35 損失挿入部
36 逆フーリエ変換部
37 透過特性記憶部
38 表示制御部
40 操作部
50 表示部
100,100' PPG
200 被測定物
200A,200B デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意のパルスパターン発生器(100,100')からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部(10)を備える波形観測装置(1)であって、
前記パルスパターン発生器から被測定物(200)を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶部(21)と、
前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶部(22)と、
前記基準波形データ記憶部に記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶部に記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換部(31)と、
前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出部(32)と、
前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力部(33)と、
前記被測定物が、前記差分算出部により透過特性が取得済みの既知デバイス(200A)と、透過特性が未知の未知デバイス(200B)とからなる場合に、前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性から前記既知デバイスの透過特性を減算して、前記未知デバイスの透過特性を取得する損失補償部(34)と、
あるパルスパターン発生器(100)からのパターン信号に基づく前記被測定物の透過特性を、他のパルスパターン発生器(100')からのパターン信号に基づく前記基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成する損失挿入部(35)と、を備えることを特徴とする波形観測装置。
【請求項2】
前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性、又は、前記損失挿入部により生成された擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換して、前記被測定物の波形データを生成する逆フーリエ変換部(36)を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の波形観測装置。
【請求項3】
操作部(40)への操作入力に応じて、前記基準波形データ、前記損失挿入波形データ、前記基準スペクトル、前記損失挿入スペクトル、前記透過特性、及び前記被測定物の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部(50)に表示制御する表示制御部(38)を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の波形観測装置。
【請求項4】
任意のパルスパターン発生器(100,100')からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部(10)を備えた波形観測装置(1)を用いる透過特性取得方法であって、
前記パルスパターン発生器から被測定物(200)を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶ステップ(S2)と、
前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶ステップ(S4)と、
前記基準波形データ記憶ステップで記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶ステップで記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換ステップ(S5)と、
前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出ステップ(S6)と、
前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力ステップ(S7)と、
前記被測定物が、前記差分算出ステップにより透過特性が取得済みの既知デバイス(200A)と、透過特性が未知の未知デバイス(200B)とからなる場合に、前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性から前記既知デバイスの透過特性を減算して、前記未知デバイスの透過特性を取得する損失補償ステップと、
あるパルスパターン発生器(100)からのパターン信号に基づく前記被測定物の透過特性を、他のパルスパターン発生器(100')からのパターン信号に基づく前記基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成する損失挿入ステップと、を含むことを特徴とする透過特性取得方法。
【請求項5】
前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性、又は、前記損失挿入ステップにより生成された擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換して、前記被測定物の波形データを生成する逆フーリエ変換ステップを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の透過特性取得方法。
【請求項6】
操作部(40)への操作入力に応じて、前記基準波形データ、前記損失挿入波形データ、前記基準スペクトル、前記損失挿入スペクトル、前記透過特性、及び前記被測定物の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部(50)に表示制御する表示制御ステップを更に含むことを特徴とする請求項5に記載の透過特性取得方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る波形観測装置は、任意のパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部を備える波形観測装置であって、前記パルスパターン発生器から被測定物を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶部と、前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶部と、前記基準波形データ記憶部に記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶部に記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換部と、前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出部と、前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力部と、前記被測定物が、前記差分算出部により透過特性が取得済みの既知デバイスと、透過特性が未知の未知デバイスとからなる場合に、前記差分算出部により取得された前記被測定物の透過特性から前記既知デバイスの透過特性を減算して、前記未知デバイスの透過特性を取得する損失補償部と、あるパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく前記被測定物の透過特性を、他のパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく前記基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成する損失挿入部と、を備える構成である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
この構成により、本発明に係る波形観測装置は、波形観測装置とは独立したPPGを被測定信号の信号源として用いるため、ユーザがその都度入手しやすい任意のPPGの帯域に応じて被測定物の透過特性(S21パラメータ)を取得することができる。
また、この構成により、本発明に係る波形観測装置は、被測定物のS21パラメータをSパラメータファイルに変換して出力することができるため、例えば、このSパラメータファイルを他の波形観測装置や信号解析装置などの各種測定装置に適用することができる。
また、この構成により、本発明に係る波形観測装置は、被測定物のS21パラメータから既知デバイスのS21パラメータを減算して、未知デバイスのS21パラメータを取得できるため、測定系における損失をキャンセルして所望の透過特性を取得することができる。
また、この構成により、本発明に係る波形観測装置は、あるPPGからのパターン信号に基づく被測定物のS21パラメータを、他のPPGからのパターン信号に基づく基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成することができる。例えば、本発明に係る波形観測装置は、任意のロスボードを被測定物としてS21パラメータを取得しておき、光トランシーバなどのデバイスに含まれる他のPPGの基準スペクトルに、任意のロスボードから得られたS21パラメータを損失として付加して、マージンテストを行うことができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
また、本発明に係る透過特性取得方法は、任意のパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく被測定信号をサンプリングして時系列データである離散デジタル波形データを取得する波形観測部を備えた波形観測装置を用いる透過特性取得方法であって、前記パルスパターン発生器から被測定物を介さずに前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを基準波形データとして記憶する基準波形データ記憶ステップと、前記パルスパターン発生器から前記被測定物を介して前記波形観測部に入力された前記被測定信号の離散デジタル波形データを損失挿入波形データとして記憶する損失挿入波形データ記憶ステップと、前記基準波形データ記憶ステップで記憶された前記基準波形データ、及び、前記損失挿入波形データ記憶ステップで記憶された前記損失挿入波形データをそれぞれフーリエ変換して、基準スペクトル及び損失挿入スペクトルを生成するフーリエ変換ステップと、前記基準スペクトルと前記損失挿入スペクトルとの差分を算出して、前記被測定物の透過特性を取得する差分算出ステップと、前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性をSパラメータファイルに変換して出力するSパラメータファイル出力ステップと、前記被測定物が、前記差分算出ステップにより透過特性が取得済みの既知デバイスと、透過特性が未知の未知デバイスとからなる場合に、前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性から前記既知デバイスの透過特性を減算して、前記未知デバイスの透過特性を取得する損失補償ステップと、あるパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく前記被測定物の透過特性を、他のパルスパターン発生器からのパターン信号に基づく前記基準スペクトルに加算して、擬似的な損失挿入スペクトルを生成する損失挿入ステップと、を含む構成である。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
また、本発明に係る透過特性取得方法は、前記差分算出ステップにより取得された前記被測定物の透過特性、又は、前記損失挿入ステップにより生成された擬似的な損失挿入スペクトルを逆フーリエ変換して、前記被測定物の波形データを生成する逆フーリエ変換ステップを更に含む構成であってもよい。
また、本発明に係る透過特性取得方法は、操作部への操作入力に応じて、前記基準波形データ、前記損失挿入波形データ、前記基準スペクトル、前記損失挿入スペクトル、前記透過特性、及び前記被測定物の波形データのうちのいずれか1つ以上を表示部に表示制御する表示制御ステップを更に含む構成であってもよい。