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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039628
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】亜鉛電池用の負極及び亜鉛電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20230314BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20230314BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20230314BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01M4/62 C
H01M4/42
H01M4/24 H
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146847
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 有広
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA02
5H017BB16
5H017DD05
5H017EE01
5H017HH05
5H050AA07
5H050BA11
5H050BA20
5H050CA02
5H050CA03
5H050CA12
5H050CB13
5H050DA04
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA12
5H050EA28
5H050FA18
5H050GA24
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることが可能な亜鉛電池用負極、及び当該亜鉛電池用負極を備える亜鉛電池を提供する。
【解決手段】負極集電体と、負極集電体に支持された負極材と、を有し、前記負極材は、亜鉛を含む負極活物質と、結着剤と、を含有し、前記結着剤が、スチレン由来の構造単位と、(メタ)アクリル酸由来の構造単位と、を有する共重合体である、亜鉛電池用負極、及び当該亜鉛電池用負極を備える亜鉛電池。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、負極集電体に支持された負極材と、を有し、前記負極材は、亜鉛を含む負極活物質と、結着剤と、を含有し、
前記結着剤が、スチレン由来の構造単位と、(メタ)アクリル酸由来の構造単位と、を有する共重合体である、亜鉛電池用負極。
【請求項2】
前記負極材は、ビスマス及びインジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含む金属酸化物を、含有する、請求項1に記載の亜鉛電池用負極。
【請求項3】
前記負極集電体は、表面のうち少なくとも一部を錫メッキが被覆する、請求項1又は2に記載の亜鉛電池用負極。
【請求項4】
正極と、請求項1~3のいずれか一項に記載の負極と、を備える亜鉛電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛電池用の負極及び亜鉛電池に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛電池としては、ニッケル亜鉛電池、空気亜鉛電池、銀亜鉛電池等が知られている。
例えば、ニッケル亜鉛電池は、水酸化カリウム水溶液等の水系電解液を用いる水系電池であることから、高い安全性を有すると共に、亜鉛電極とニッケル電極との組み合わせにより、水系電池としては高い起電力を有することが知られている。さらに、ニッケル亜鉛電池は、優れた入出力性能に加えて低コストであることから、産業用途(例えば、バックアップ電源等の用途)及び自動車用途(例えば、ハイブリッド自動車等の用途)等への適用可能性が検討されている。
【0003】
亜鉛電池用の負極を構成する負極材には、負極材層の形成性の観点から、亜鉛を含む負極活物質に加えて、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられる場合がある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-188213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニッケル亜鉛電池等の亜鉛電池には、寿命性能の更なる向上が求められる。しかしながら、特許文献1に記載されているポリテトラフルオロエチレンを用いた亜鉛電池では、寿命性能の更なる向上に課題がある。
【0006】
本発明の一側面は、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることが可能な亜鉛電池用負極を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、当該亜鉛電池用負極を備える亜鉛電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、負極集電体と、負極集電体に支持される負極材と、を有し、上記負極材は、亜鉛を含む負極活物質と、結着剤と、を含有し、
上記結着剤が、スチレン由来の構造単位と、(メタ)アクリル酸由来の構造単位と、を有する共重合体である、亜鉛電池用負極を提供する。
【0008】
本発明の一側面は、上述の負極材が、ビスマス及びインジウムからなる群より選択される少なくとも一種を含む金属酸化物を、含有する、亜鉛電池を提供する。
【0009】
本発明の一側面は、上述の負極集電体の表面のうち、少なくとも一部を錫メッキが被覆する、亜鉛電池を提供する。
【0010】
本発明の一側面は、正極と、上述の負極と、電解液と、を備える亜鉛電池を提供する。
【0011】
上述の亜鉛電池用負極及び亜鉛電池によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることが可能な亜鉛電池用負極を提供することができる。本発明の他の一側面は、当該亜鉛電池用負極を備える亜鉛電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実験例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の使用量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。本明細書において「膜」又は「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
本実施形態に係る亜鉛電池用負極(以下、場合により、単に「負極」という)は、亜鉛電池(例えば亜鉛二次電池)の負極として用いられる。本実施形態に係る亜鉛電池は、少なくとも、正極と、本実施形態に係る負極と、電解液と、を備える。亜鉛電池としては、正極がニッケル電極であるニッケル亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛二次電池);正極が空気極である空気亜鉛電池(例えば空気亜鉛二次電池);正極が酸化銀極である銀亜鉛電池(例えば銀亜鉛二次電池)等が挙げられる。
【0016】
以下、ニッケル亜鉛電池及びニッケル亜鉛電池用の負極を例に挙げて、本実施形態の亜鉛電池及び亜鉛電池用の負極の詳細を説明する。
【0017】
本実施形態の亜鉛電池は、少なくとも、正極と、負極(亜鉛電極)と、を備える。亜鉛電池は、例えば、電槽と、電解液と、正極及び負極を備える電極群(例えば極板群)と、を備える。電解液及び電極群は、電槽内に収納されている。亜鉛電池は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
【0018】
電極群は、例えば、正極(例えば正極板)と、負極(例えば負極板)と、セパレータと、を備える。正極と負極とは、一又は複数のセパレータを介して隣り合っている。すなわち、隣り合う正極と負極との間には、一又は複数のセパレータが設けられている。電極群は、複数の正極、負極及びセパレータを備えていてよい。電極群が複数の正極及び/又は複数の負極を備える場合、正極と負極は、セパレータを介して交互に積層されてよい。複数の正極同士及び複数の負極同士は、例えば、ストラップで連結されていてよい。
【0019】
本実施形態に係る亜鉛電池において負極は、負極集電体と、負極集電体に支持された負極材と、を有し、上記負極材は、亜鉛を含む負極活物質と、結着剤と、を含有し、上記結着剤が、スチレン由来の構造単位と、(メタ)アクリル酸由来の構造単位と、を有する共重合体である。負極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。本実施形態に関わる負極によれば、亜鉛電池において優れた寿命性能を得ることができる
【0020】
このような効果が得られる要因としては、例えば下記の要因が挙げられるが、下記要因に限定されない。すなわち、従来の亜鉛電池においては、充放電に伴い亜鉛の溶解析出反応が不均一に進行することにより、シェイプチェンジや内部短絡などといった負極の劣化が生じて、寿命性能が低くなることが知られているが、本実施形態の負極を用いる場合、上記スチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体により活物質同士又は活物質と集電体の間の密着性が向上するため、亜鉛の溶解析出反応が均一化されることで優れた寿命性能が得られると推察している。
【0021】
負極集電体は、負極材からの電流の導電路を構成する。負極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状であってもよい。負極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成される3次元網目構造の集電体等であってもよい。負極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成されてもよい。このような材料としては、例えば、負極の反応電位でも安定である材料(負極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料等)を用いることができる。
また、負極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し水素ガスが発生するが、水素過電圧の高い材料を用いることにより、このような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。負極集電体を構成する材料の具体例としては、亜鉛;鉛;スズ等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼、ニッケル等)などが挙げられる。
【0022】
負極材は、例えば、層を成していてもよい。すなわち、負極は、負極材層を有していてよい。負極材層は、負極集電体上に形成されていてよい。負極集電体の負極材を支持する部分が3次元網目構造を有する場合、当該集電体の網目の間に負極材が充填されて負極材層が形成されていてもよい。
【0023】
負極材は、亜鉛を含む負極活物質(電極活物質)を含有する。負極活物質としては、例えば、金属亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛が挙げられる。負極活物質は、これらの成分のうちの一種を単独で含んでいてよく、複数種を含んでいてもよい。負極材は、例えば、満充電状態では金属亜鉛を含有し、放電末状態では酸化亜鉛及び水酸化亜鉛を含有する。負極活物質は例えば粒子状であってもよい。すなわち、負極材は、金属亜鉛粒子、酸化亜鉛粒子及び水酸化亜鉛粒子からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてよい。
【0024】
負極活物質の含有量は、負極材の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。負極活物質の含有量は、優れたサイクル寿命性能と優れた高率放電性能とを両立しやすい観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、75質量%以上が更に好ましい。負極活物質の含有量は、優れたサイクル寿命性能と優れた高率放電性能とを両立しやすい観点から、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。これらの観点から、負極活物質の含有量は、50~95質量%が好ましい。
【0025】
負極材は、結着剤として、少なくともスチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体を含む。
【0026】
スチレン由来の構造単位とは、スチレン由来の構造に由来するモノマー単位である。スチレン由来の構造とは、ベンゼンの水素原子の一つがビニル基に置換したスチレン構造を基本骨格として有する単量体である。例えば、スチレン由来の構造単位の90モル%以上がスチレン単位であればよい。
【0027】
(メタ)アクリル酸由来の構造単位とは、(メタ)アクリル酸由来の構造に由来するモノマー単位である。(メタ)アクリル酸由来の構造とは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸誘導体またはメタクリル酸誘導体を基本骨格として有する単量体である。以下、アクリル酸とメタクリル酸とを(メタ)アクリル酸と総称する。
【0028】
(メタ)アクリル酸由来の構造の具体例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。
【0029】
スチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体の含有量は、優れた寿命性能と負極材の集電体に対する十分な密着性を得やすい観点から、負極材の全質量を基準として、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%であり、更に好ましくは2質量%以上である。スチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体の含有量は、優れた放電特性を確保する観点から、負極材の全質量を基準として、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%であり、更に好ましくは6質量%である。これらの観点からスチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体の含有量は、負極材の全質量を基準として、0.5~10質量%が好ましい。
【0030】
負極材は、スチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体以外の結着剤を更に含有することができる。結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。スチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体以外の結着剤の含有量は、例えば、負極活物質100質量%に対して0.5~10質量%であってよい。
【0031】
負極材は、添加剤を更に含有することができる。添加剤としては、分散剤、導電材等が挙げられる。分散剤としては、ポリカルボン酸(カルボン酸系共重合体)、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリメチルシロキサン等が挙げられる。分散剤の含有量は、例えば、負極活物質100質量%に対して0.1~1質量%であってよい。
【0032】
負極材は、自己放電の抑制効果、電解液の減液の抑制効果等が得られやすく、サイクル寿命性能をより向上できる観点から、導電材として、ビスマス(Bi)、インジウム(In)、鉛(Pb)、カドミウム(Cd)、タリウム(Tl)及びスズ(Sn)を更に含有してもよい。これらの中でも、ビスマス及びインジウムからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0033】
導電材の平均粒子径は、サイクル寿命性能をより向上できる観点から、0.30μm以下又は0.25μm以下であってよい。導電材の平均粒子径は、混練工程におけるハンドリング性の観点から、0.02μm以上、0.04μm以上又は0.06μm以上であってよい。これらの観点から、導電材の平均粒子径は、0.02μm以上0.32μm未満、0.04~0.30μm又は0.06~0.25μmであってよい。導電材の平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、商品名:マイクロトラックHRA9320-X100)によって測定され、メジアン径(d50)として算出される粒子径である。
【0034】
負極材における導電材の含有量は、サイクル寿命性能をより向上できる観点から、電極材の全質量を基準として、1質量%以上、3質量%以上又は5質量%以上であってよい。また、第2の粒子の含有量は、サイクル寿命性能をより向上できる観点から、50質量%以下、30質量%以下又は10質量%以下であってよい。
【0035】
負極材には、酸化亜鉛の溶解度を低減し、負極の形態変化を抑制しやすくする観点から、フッ化カリウム等の金属ハロゲン化物、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩を更に含有してもよい。金属ハロゲン化物の含有量は、例えば、負極活物質100質量%に対して0.1~1質量%であってよい。
【0036】
負極の厚さは、優れたサイクル寿命性能と優れた高率放電性能とを両立しやすい観点から、好ましくは0.3~0.5mmである。ここで、負極の厚さとは、負極の全厚(集電体に負極材を充填し、ローラー等を用いてプレスして所定の密度にした後の厚さ(例えば負極材層の厚さ))を意味する。
【0037】
正極は、例えば、正極集電体と、当該正極集電体に支持された正極材と、を備えている。正極は、化成前及び化成後のいずれであってもよい。
【0038】
正極集電体は、正極材からの電流の導電路を構成する。正極集電体は、例えば、平板状、シート状等の形状であってもよい。正極集電体は、発泡金属、エキスパンドメタル、パンチングメタル、金属繊維のフェルト状物等によって構成された3次元網目構造の集電体等であってもよい。正極集電体は、導電性及び耐アルカリ性を有する材料で構成される。 このような材料としては、例えば、正極の反応電位でも安定である材料(正極の反応電位よりも貴な酸化還元電位を有する材料、アルカリ水溶液中で基材表面に酸化被膜等の保護被膜を形成して安定化する材料等)を用いることができる。
また、正極においては、副反応として電解液の分解反応が進行し酸素ガスが発生するが、酸素過電圧の高い材料はこのような副反応の進行を抑制できる点で好ましい。正極集電体を構成する材料の具体例としては、白金;ニッケル(発泡ニッケル等);ニッケル等の金属メッキを施した金属材料(銅、真鍮、鋼等)などが挙げられる。これらの中でも、発泡ニッケルで構成する正極集電体が好ましく用いられる。高率放電性能を更に向上できる観点から、少なくとも正極集電体における正極材を支持する部分(正極材支持部)を発泡ニッケルで構成するのが好ましい。
【0039】
正極材は、例えば、層を成してもよい。すなわち、正極は、正極材層を有していてよい。正極材層は、正極集電体上に形成されていてよい。正極集電体の正極材支持部が3次元網目構造を有する場合、当該集電体の網目の間に正極材が充填されて正極材層が形成されてもよい。
【0040】
正極材は、ニッケルを含む正極活物質(電極活物質)を含有する。正極活物質としては、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、水酸化ニッケル等が挙げられる。正極材は、例えば、満充電状態ではオキシ水酸化ニッケルを含有し、放電末状態では水酸化ニッケルを含有する。正極活物質の含有量は、例えば、正極材の全質量を基準として50~95質量%であってもよい。
【0041】
正極材は、添加剤として、正極活物質以外の他の成分を更に含有してよい。添加剤としては、結着剤、導電剤、膨張抑制剤等が挙げられる。
【0042】
結着剤としては、親水性又は疎水性のポリマー等が挙げられる。具体的には、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリアクリル酸ナトリウム(SPA)、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等)などを結着剤として用いることができる。結着剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量%に対して0.01~5質量%が好ましい。
【0043】
導電剤としては、コバルト化合物(金属コバルト、酸化コバルト、水酸化コバルト等)などが挙げられる。導電剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量%に対して1~20質量%が好ましい。
【0044】
膨張抑制剤としては、酸化亜鉛等が挙げられる。膨張抑制剤の含有量は、例えば、正極活物質100質量%に対して0.01~5質量%が好ましい。
【0045】
セパレータは、例えば、平板状、シート状等の形状であってもよい。セパレータとしては、ポリオレフィン系微多孔膜、ナイロン系微多孔膜、耐酸化性のイオン交換樹脂膜、セロハン系再生樹脂膜、無機-有機セパレータ、ポリオレフィン系不織布等が挙げられる。セパレータは、正極及び/又は負極を収納可能な、袋状に加工されていてもよい。この場合、正極及び/又は負極はセパレータに収納されていてよい。セパレータは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてよい。
【0046】
電解液は、アルカリ金属水酸化物と、界面活性剤、糖質及び溶媒を含有してよい。溶媒としては、水(例えばイオン交換水)等が挙げられる。
【0047】
電解液は、例えば、リン酸カリウム、フッ化カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、二酸化チタン等を含有してもよい。
【0048】
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は、水溶液中で電離(解離)していてよく、塩として存在していてもよい。アルカリ金属水酸化物は、亜鉛電池を保存したときの放電容量の低下を抑制しやすい観点、及び、優れた高率放電性能を得やすい観点から、水酸化カリウム及び水酸化リチウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、水酸化カリウムを含むことがより好ましい。
【0049】
電解液におけるアルカリ金属水酸化物の含有量(アルカリ金属水酸化物の合計質量)は、亜鉛電池を保存したときの放電容量の低下を抑制しやすい観点、及び、優れた高率放電性能を得やすい観点から、電解液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。アルカリ金属水酸化物の含有量は、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は、30質量%以上が好ましい。アルカリ金属水酸化物の含有量は、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は、35質量%以下が好ましい。これらの観点から、アルカリ金属水酸化物の含有量は、10~50質量%が好ましい。
【0050】
電解液における水酸化カリウムの含有量は、亜鉛電池を保存したときの放電容量の低下を抑制しやすい観点、及び、優れた高率放電性能を得やすい観点から、電解液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。水酸化カリウムの含有量は、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は、30質量%以上が好ましい。水酸化カリウムの含有量は、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は、35質量%以下が好ましい。これらの観点から、水酸化カリウムの含有量は、10~50質量%が好ましい。
【0051】
電解液における水酸化リチウムの含有量は、亜鉛電池を保存したときの放電容量の低下を抑制しやすい観点、及び、優れた高率放電性能を得やすい観点から、電解液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。水酸化リチウムの含有量は、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、又は、1質量%以上が好ましい。水酸化リチウムの含有量は、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、又は、1.2質量%以下が好ましい。これらの観点から、水酸化リチウムの含有量は、0.1~3質量%が好ましい。
【0052】
電解液における界面活性剤としては、ジドデシルジメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。優れたサイクル寿命性能を得やすい観点、及び、放電容量の低下を抑制しやすい観点から、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、を含むことが好ましい。
【0053】
電解液における界面活性剤の含有量(界面活性剤の合計質量)は、電解液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。界面活性剤の含有量は、亜鉛電池の放電性能の低下を抑制しやすい観点から、0.001量%以上、0.003質量%以上、0.005質量%以上、又は、0.01質量%以上が好ましい。界面活性剤の含有量は、優れたサイクル寿命性能を得やすい観点、及び、放電容量の低下を抑制しやすい観点から、5質量%以下、2.5質量%以下、1質量%以下、0.7質量%以下、又は、0.5質量%以下が好ましい。これらの観点から、界面活性剤の含有量は、0.001~5質量%が好ましい。界面活性剤の含有量は、更に優れたサイクル寿命性能を得やすい観点、及び、放電容量の低下を抑制しやすい観点から、0.01~0.5質量%が特に好ましい。
【0054】
糖質としては、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類(二糖類又は三糖類に該当する糖類を除く)等を用いることができる。単糖類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、アラビノース、リボース、マンノース、キシロース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース、及び、これらの水和物等が挙げられる。二糖類としては、スクロース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース、及び、これらの水和物等が挙げられる。三糖類としては、ケストース、メレチトース、ゲンチアノース、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース、及び、これらの水和物等が挙げられる。多糖類としては、シクロデキストリン(例えばγ-シクロデキストリン)、スタキオース等が挙げられる。
【0055】
電解液における糖質の含有量は、電解液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。糖質の含有量は、亜鉛電池を保存したときの放電容量の低下を抑制しやすい観点、及び、優れた高率放電性能を得やすい観点から、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、又は、1質量%以上が好ましい。糖質の含有量は、亜鉛電池を保存したときの放電容量の低下を抑制しやすい観点、及び、優れた高率放電性能を得やすい観点から、5質量%以下、4.5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、又は、3質量%以下が好ましい。
これらの観点から、糖質の含有量は、0.1~5質量%が好ましい。糖質の含有量は、亜鉛電池を保存したときの放電容量の低下を更に抑制しやすい観点から、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、2質量%以上、2.2質量%以上、2.5質量%以上、2.7質量%以上又は3質量%以上が好ましい。糖質の含有量は、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上、又は、5質量%以上であってよい。
【0056】
糖質の含有量は、更に優れた高率放電性能を得やすい観点から、2.7質量%以下、2.5質量%以下、2.2質量%以下、2質量%以下、1.7質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、又は、1質量%以下が好ましい。糖質の含有量は、電解液の全量を基準として0.5mol/L未満であってよい。
【0057】
以上、説明したニッケル亜鉛電池の製造方法は、例えば、亜鉛電池の構成部材を得る構成部材製造工程と、構成部材を組み立てて亜鉛電池を得る組立工程と、を備える。構成部材製造工程では、少なくとも電極(正極及び負極)を得る。
【0058】
電極は、例えば、電極材(正極材及び負極材)の原料に対して溶媒(例えば水)を加えて混練することにより電極材ペースト(ペースト状の電極材)を得た後、電極材ペーストを集電体に充填し、電極材層を形成することにより得ることができる。
【0059】
正極材の原料としては、正極活物質の原料(例えば水酸化ニッケル)、添加剤(例えば前記結着剤)等が挙げられる。負極材の原料としては、負極活物質の原料(例えば金属亜鉛、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛)、添加剤(例えば結着剤)等が挙げられる。
【0060】
電極材層を形成する方法としては、例えば、電極材ペーストを集電体に塗布又は充填した後に乾燥することで電極材層を得る方法が挙げられる。電極材層は、必要に応じて、ローラーを用いたプレス等によって密度を高めてもよい。
【0061】
組立工程では、例えば、構成部材製造工程で得られた正極及び負極を、セパレータを介して交互に積層した後、正極同士及び負極同士をストラップで連結させて電極群を作製する。次いで、この電極群を電槽内に収納した後、電槽の上面に蓋体を接着して未化成の亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。
【0062】
続いて、電解液を未化成の亜鉛電池の電槽内に注入した後、一定時間放置する。次いで、所定の条件にて充電を行うことで化成することにより亜鉛電池(ニッケル亜鉛電池)を得る。化成条件は、電極活物質(正極活物質及び負極活物質)の性状に応じて調整することができる。例えば、雰囲気温度25℃、32mA、12時間の条件で充電を行うことにより、化成後のニッケル亜鉛電池を作製できる。
【0063】
以上、正極がニッケル電極であるニッケル亜鉛電池(例えばニッケル亜鉛二次電池)の例を説明したが、亜鉛電池は、正極が空気極である空気亜鉛電池(例えば空気亜鉛二次電池)であってもよく、正極が酸化銀極である銀亜鉛電池(例えば銀亜鉛二次電池)であってもよい。
【0064】
空気亜鉛電池の空気極としては、空気亜鉛電池に使用される公知の空気極を用いることができる。空気極は、例えば、空気極触媒、電子伝導性材料等を含む。空気極触媒としては、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒を用いることができる。
【0065】
空気極触媒としては、空気亜鉛電池における正極として機能するものを用いることが可能であり、酸素を正極活物質として利用可能な種々の空気極触媒が使用できる。空気極触媒としては、酸化還元触媒機能を有するカーボン系材料(黒鉛等)、酸化還元触媒機能を有する金属材料(白金、ニッケル等)、酸化還元触媒機能を有する無機酸化物材料(ペロブスカイト型酸化物、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、スピネル酸化物等)などが挙げられる。空気極触媒の形状は、特に限定されないが、例えば粒子状であってもよい。空気極における空気極触媒の使用量は、空気極の合計体積に対して、5~70体積%であってもよく、5~60体積%であってもよく、5~50体積%であってもよい。
【0066】
電子伝導性材料としては、導電性を有し、かつ、空気極触媒とセパレータとの間の電子伝導を可能とするものを用いることができる。電子伝導性材料としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類;鱗片状黒鉛のような天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等のグラファイト類;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維類;銅、銀、ニッケル、アルミニウム等の金属粉末類;ポリフェニレン誘導体等の有機電子伝導性材料;これらの任意の混合物等が挙げられる。
電子伝導性材料の形状は、粒子状であってもよく、その他の形状であってもよい。電子伝導性材料は、空気極において厚さ方向に連続した相をもたらす形態で用いられることが好ましい。例えば、電子伝導性材料は、多孔質材料であってもよい。また、電子伝導性材料は、空気極触媒との混合物又は複合体の形態であってもよく、前述したように、電子伝導性材料としても機能する空気極触媒であってもよい。
空気極における電子伝導性材料の使用量は、空気極の合計体積に対して、10~80体積%であってもよく、15~80体積%であってもよく、20~80体積%であってもよい。
【0067】
銀亜鉛電池の酸化銀極としては、銀亜鉛電池に使用される公知の酸化銀極を用いることができる。酸化銀極は、例えば酸化銀(I)を含む。
【実施例0068】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
<負極の作製>
負極集電体として開孔率50%のスズメッキを施した鋼板パンチングメタルを用意した。次いで、酸化亜鉛(三井金属鉱業株式会社製、一般品)、金属亜鉛(三井金属鉱業株式会社製、MA-ZB(商品名))、酸化ビスマス(コアフロント株式会社製、4115CB(商品名))、酸化インジウム酸化ビスマス(コアフロント株式会社製、1710CY(商品名))、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、住友精化株式会社製、AV-15F(商品名))、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体(以下、スチレン-アクリレート樹脂と称する。)及びイオン交換水を所定量加えて混練し、負極材ペーストを作製した。この際、固形分の質量比を「酸化亜鉛:金属亜鉛:酸化ビスマス:酸化インジウム:ヒドロキシエチルセルロース:スチレン-アクリレート樹脂=70.0:23.2:2.5:1.0:0.3:3.0」に調整した。
なお、スチレン-アクリレート樹脂には、水を分散媒とする水系エマルジョン(昭和電工株式会社製のポリゾールLB-300、固形分比率40%)から水を揮発させて得た固形分を用いた。負極材ペーストの水分量は、負極材ペーストの全質量基準で22.5質量%に調整した。次いで、負極材ペーストを負極集電体に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスにて加圧成形し、負極材(負極材層)を有する未化成の負極を得た。
【0070】
<正極の作製>
空隙率95%の発泡ニッケルからなる格子体を用意し、格子体を加圧成形することで正極集電体を得た。次いで、コバルトコート水酸化ニッケル粉末(Gold Shine Energy Material Co.,Ltd.製、Y6(商品名))、金属コバルト(ニッコーシ株式会社製、EXTRA FINE(商品名))、水酸化コバルト(伊勢化学工業株式会社製)、酸化イットリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)、カルボキシメチルセルロース(CMC、威怡化工(蘇州)有限公司製、BH90―3(商品名))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、ダイキン工業株式会社製、D210-C(商品名))、及びイオン交換水を所定量秤量加えて混練し、正極材ペーストを作製した。
この際、固形分の質量比を、「水酸化ニッケル:金属コバルト:酸化イットリウム:水酸化コバルト:CMC:PTFE=88.0:10.3:1.0:0.3:0.3:0.1」に調整した。正極材ペーストの水分量は、正極材ペーストの全質量基準で27.5質量%に調整した。次いで、正極材ペーストを正極集電体の正極材支持部に塗布した後、80℃で30分乾燥した。その後、ロールプレスを用いて加圧成形し、正極材層を有する未化成の正極を得た。
【0071】
<セパレータの準備>
セパレータには、微多孔膜として、UP3355(宇部興産株式会社製、商品名、透気度:440sec/100mL)、不織布として、不織布(ニッポン高度紙工業株式会社製、商品名:VL-100、透気度:0.3sec/100mL)を、それぞれ用いた。
微多孔膜は、電池組立て前に、界面活性剤Triton-X100(シグマアルドリッチジャパン合同会社製、商品名)で、親水化処理した。親水化処理は、Triton-X100が1質量%の量で含まれる水溶液に微多孔膜を24時間浸漬した後、室温(25℃)で1時間乾燥する方法で行った。なお、微多孔膜の透気度は親水化処理後の値を示す。さらに、微多孔膜は、所定の大きさに裁断し、それを半分に折り、折り部を底部として側面を熱溶着することで袋状に加工した。不織布は、所定の大きさに裁断したものを使用した。尚、ここでいう透気度は、JIS P 8117:2009に準ずる方法で測定される値である。
【0072】
<電解液の調整>
イオン交換水、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、スクロースを混合することにより電解液(電解液全質量に対し、水酸化カリウム:30.0質量%、水酸化リチウム:1.0質量%、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド:0.1質量%、スクロース:2.0質量%、イオン交換水:66.9質量%)を調製した。
【0073】
<ニッケル亜鉛電池の作製>
袋状に加工した微多孔膜に、正極(未化成の正極)及び負極(未化成の負極)をそれぞれ1枚ずつ収納した。袋状の微多孔膜に収納された正極と、袋状の微多孔膜に収納された負極と、不織布とを積層した後、同極性の極板同士をストラップで連結させて電極群(極板群)を作製した。電極群は、正極2枚及び負極3枚で、正極と負極の間(正極側の微多孔膜と負極側の微多孔膜との間)に不織布を1枚ずつ配置した構成とした。この電極群を電槽内に配置した後、電槽の上面に蓋体を接着し、上記電解液を電槽内に注入することにより、未化成のニッケル亜鉛電池を得た。その後、雰囲気温度25℃、32mA、12時間の条件で充電を行い、公称容量が320mAhのニッケル亜鉛電池を作製した。
【0074】
(実施例2)
スチレン-アクリレート樹脂の含有量が表1に示す量となるように、各成分の配合量を調整したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のニッケル亜鉛電池を作製した。なお、表1に示す含有量は、化成後の負極材の全質量を基準とした含有量である。
【0075】
(比較例1)
スチレン-アクリレート樹脂に代えてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のニッケル亜鉛電池を作製した。
【0076】
<電極の評価>
実施例1~2及び比較例1~2で作製した負極を用いて、負極の密着性の評価を行った。具体的な評価方法を以下に示し、結果を表1に示す。
【0077】
負極を高さ1mから床面に自然落下させた後、質量を測定し、落下試験前と落下試験後の負極質量から下記式に従って密着率(%)を算出した。以下に示すA~Cの評価基準で密着性を評価した。
密着率(%)=(落下試験後の負極質量/落下試験前の負極質量)X100
A:密着率が95%以上
B:密着率が90%以上95%未満
C:密着率が90%未満
【0078】
<サイクル寿命性能の評価>
実施例1~2及び比較例1~2の負極を用いたニッケル亜鉛電池のサイクル寿命性能の評価を行った。具体的な評価方法を以下に示し、結果を表1に示す。
【0079】
雰囲気温度70℃において、電流値が16mA(0.05C)に減衰するまで105.7mA(0.33C)、1.88Vの定電圧でニッケル亜鉛電池の充電を行った後、電池電圧が1.1Vに到達するまで105.7mA(0.33C)の定電流でニッケル亜鉛電池の放電を行うことを1サイクルとする試験を行った。1サイクル目の放電容量を100%として、放電容量が70%まで低下したサイクル回数をサイクル寿命とし、以下に示すa~cの評価基準でサイクル寿命性能を評価した。
a:サイクル回数が60サイクル以上
b:サイクル回数が30サイクル以上60サイクル未満
c:サイクル回数が30サイクル未満
【0080】
なお、上記「C」とは、満充電状態から定格容量を定電流放電するときの電流の大きさを相対的に表したものである。上記「C」は、「放電電流値(A)/電池容量(Ah)」を意味する。例えば、定格容量を1時間で放電できる電流を「1C」、2時間で放電できる電流を「0.5C」と定義する。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例1~2は、比較例1と比較して、負極の密着性、及びサイクル寿命性能ともに優位であった。スチレン由来の構造単位と(メタ)アクリル酸由来の構造単位とを有する共重合体により活物質同士又は活物質と集電体の間の密着性が向上し、亜鉛の溶解析出反応が均一化されることにより優れた寿命性能が得られた。