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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039637
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】超微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/14 20060101AFI20230314BHJP
   H05H 1/42 20060101ALI20230314BHJP
   B01J 19/08 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
B22F9/14 Z
H05H1/42
B01J19/08 K
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146858
(22)【出願日】2021-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】591173855
【氏名又は名称】杉山重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大介
【テーマコード(参考)】
2G084
4G075
4K017
【Fターム(参考)】
2G084AA15
2G084CC02
2G084CC23
2G084CC33
2G084DD12
2G084HH35
4G075AA27
4G075BB02
4G075BB03
4G075CA13
4G075CA17
4G075CA47
4G075DA02
4G075DA03
4G075DA05
4G075EB01
4G075EB41
4G075EC12
4G075EC21
4G075ED03
4G075FB02
4K017AA02
4K017BA01
4K017BA06
4K017CA08
4K017EF01
4K017EF02
4K017FA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低コストで超微粒子を製造できる超微粒子の製造方法を提供すること、及び放電容器内で生成した超微粒子を効率的に回収できる超微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】放電容器11と、放電容器11の内部に配置された複数の放電電極31と、放電電極31へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置10を用い、放電容器11に入れた金属材料と複数の放電電極31の間でアーク放電を生じさせ、放電容器11内にプラズマを発生させて、金属材料から超微粒子を生成する超微粒子の製造方法であって、金属材料として金属繊維60の集合体を放電容器11に充填することを特徴とする超微粒子の製造方法である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用い、放電容器に入れた金属材料と複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料から超微粒子を生成する超微粒子の製造方法であって、
金属材料として金属繊維の集合体を放電容器に充填することを特徴とする。
【請求項2】
放電電極にコンデンサから直流の高電圧を所定時間印加し、高電圧の印加終了とともに放電電極に直流の低電圧大電流を印加するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の超微粒子の製造方法。
【請求項3】
放電容器として縦型の円筒体を用い、
外径が放電容器の内径と略同じ螺旋状の放電電極を螺旋の中心線と放電容器の中心線が一致するように配置するとともに、放電容器の底面に中心線に沿って延びる針状の放電電極を立設し、螺旋状の放電電極をプラス極通電線に接続し、針状の放電電極をマイナス極通電線に接続したことを特徴とする請求項1に記載の超微粒子の製造方法。
【請求項4】
螺旋状の放電電極を放電容器の内壁面に摺接しながら、放電容器の中心線の周りに回転可能に放電容器に組み付け、
螺旋状の放電電極を回転させて放電容器の内壁面に付着した超微粒子を掻き落すようにしたことを特徴とする請求項3に記載の超微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超微粒子の製造方法の一形式として、特開2019‐136694号公報(特許文献1)及び特開2014‐194059号公報(特許文献2)には、放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用いる超微粒子の製造方法が開示されている。
【0003】
引用文献1に開示されている超微粒子の製造方法では、放電容器に粒子状の金属材料を入れ、複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料の粒子から超微粒子を生成している。
また、引用文献2に開示されている超微粒子の製造方法では、放電容器にブロック状の金属材料を入れて、アーク放電を生じさせ、超微粒子を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019‐136694号公報
【特許文献2】特開2014‐194059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に記載の超微粒子の製造方法に用いる製造装置では、放電容器の下部に材料供給装置を設け、材料供給装置から材料供給管を放電容器の内部中央まで配管し、材料供給管を通してキャリアガスとともに粒子状の金属材料を放電容器中に供給している。
この製造方法に用いる製造装置は、材料供給装置や材料供給管が不可欠なため構造が複雑で大型化し、製造コストが高くなる。
【0006】
引用文献2に記載の超微粒子製造方法に用いる製造装置では、放電容器の内壁面に付着した超微粒子をワイパーで掻き落としている。このワイパーの先端にブラシが取り付けられており、ワイパーを回転させると、ブラシが放電容器の内壁面に摺接して回動し、内壁面から超微粒子が放電容器の底部へ落下する。
この製造装置では、放電容器の内壁面の上部から斜め下方に放電電極が突出しているため、ワイパーを回転させるとき、放電電極がワイパー回転の障害となる。そのため、ワイパーは半回転ごとに回転方向が逆になるように駆動するので、超微粒子を効率的に回収できない。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、低コストで超微粒子を製造できる超微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
また、放電容器内で生成した超微粒子を効率的に回収できる超微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用い、放電容器に入れた金属材料と複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料から超微粒子を生成する超微粒子の製造方法であって、
金属材料として金属繊維の集合体を放電容器に充填することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超微粒子の製造方法において、
放電電極にコンデンサから直流の高電圧を所定時間印加し、高電圧の印加終了とともに放電電極に直流の低電圧大電流を印加するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超微粒子の製造方法において、
放電容器として縦型の円筒体を用い、
外径が放電容器の内径と略同じ螺旋状の放電電極を螺旋の中心線と放電容器の中心線が一致するように配置するとともに、放電容器の底面に中心線に沿って延びる針状の放電電極を立設し、螺旋状の放電電極をプラス極通電線に接続し、針状の放電電極をマイナス極通電線に接続したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の超微粒子の製造方法において、
螺旋状の放電電極を放電容器の内壁面に摺接しながら、放電容器の中心線の周りに回転可能に放電容器に組み付け、
螺旋状の放電電極を回転させて放電容器の内壁面に付着した超微粒子を掻き落すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、放電電極に高電圧を印加すると放電電極と金属繊維の間にアーク電路が形成され、金属繊維が溶融蒸発して超微粒子が生成される。
本発明によれば、粒子状やブロック状の金属材料を放電容器に入れるのではなくて、金属繊維の集合体を放電容器に充填する。金属繊維の集合体は、粒子状の金属材料から超微粒子を生成するときのように、金属材料をキャリアガスとともに放電容器に供給する材料供給装置を備えていなくても簡単に放電容器に充填できる。そのため、簡素で小型な構造の製造装置を用いることができ、製造コストを低減できる。
【0012】
金属繊維は粒子と違って長いので、放電電極との距離が短くなり、電気抵抗を低くすることができ、大電流を流すことができる。
また、金属繊維は表面積が大きいので、純粋金属材料を入れた放電容器に酸化金属微粒子を生成するため酸素を封入するとき、あるいは窒化金属微粒子を生成するため窒素を封入するとき、酸化反応や窒化反応が効率的に発生する。
【0013】
生成される超微粒子の粒形や粒度分布を、金属繊維の線径、線長、充填密度を選択することで調整できる。
【0014】
金属繊維の表面に不純物が付着していると電気抵抗が増大する。金属繊維の集合体を放電容器に充填し、高電圧を放電電極に印加したとき、金属繊維のうち電気抵抗が増大した部分が未通電となり、溶融蒸発しないで金属繊維の形態のまま残ってしまうおそれがある。
【0015】
一般に、導体は交流電流を流せば、また、交流電流の周波数が高くなるほど、抵抗が増す。導体を流れる電流によって磁束が生じ、これが導体中心部で、抵抗となり電流は導体表面にそって流れるようになる(一般的に表皮効果と呼ばれている)。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、放電電極にコンデンサから直流の高電圧を所定時間印加するが、コンデンサからの直流放電において、この放電電圧は減衰波となり、コンデンサ容量と接続された負荷インピーダンスによって数KHz~数百KHzの交流となり、表皮効果が生じる。
導体の断面積は直径の3乗に比例し、導体の表面積は直径の2乗に比例するので、導体の単位断面積あたりに大きな電流を流すには細い導体を沢山束ねたものが有利である。金属繊維は細い断面積を有するので、コンデンサから直流の高電圧を印加したときに生じる表皮効果を有効に低減でき、大きな電流を流すことができる。そのため、集合体の大部分を溶融蒸発させるとともに、高電圧の印加終了直前に直流の低電圧大電流を印加することにより、溶融蒸発していなかった金属繊維を溶融蒸発させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、放電容器に金属繊維の集合体を充填したとき、金属繊維が螺旋状の放電電極と針状の放電電極に絡み易い。そのため、放電電極と金属繊維間の抵抗がより低くなるので、アーク放電の発生効率が向上する。
【0018】
放電による温度上昇はマイナス極の方が大きく、アーク放電により蒸発し、生成された超微粒子が下蓋に立設した針状のマイナス極に集まり易く、回収が容易になる。また、プラス極の螺旋状の放電電極が高温にならないので、放電容器の破損を防止できる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、螺旋状の放電電極中心に針状の放電電極を立設したので、螺旋状の放電電極を回転させることができ、針状の放電電極が螺旋状の放電電極の回転の妨げにならない。そのため、螺旋状の放電電極を一方向に連続して回転させることができ、放電容器の内壁面に付着した超微粒子を効率的に掻き落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施例に係る超微粒子の製造方法に用いる超微粒子製造装置を示す一部破断した断面図である。
図2】同超微粒子製造装置を示す平面図である。
図3】同超微粒子製造装置を示す側面図である。
図4】同超微粒子製造装置の電源部に内蔵された電源回路図である。
図5】同超微粒子製造装置の電源部に内蔵された操作盤回路図である。
図6】同超微粒子製造装置の電源部に設けられた操作盤を操作したときの電源回路と操作盤回路の動作説明図である。
図7】同超微粒子製造装置の放電容器に金属繊維を充填した状態を示す一部破断した断面図である。
図8】本発明の第2実施例に係る超微粒子の製造方法に用いる超微粒子製造装置の主要部を示す分解斜視図である。
【実施例0021】
以下に本発明を図面に基づき説明する。図1図3には本発明の第1実施例に係る超微粒子の製造方法に用いる超微粒子製造装置10が示されている。当該超微粒子製造装置10は放電容器11と電源部12を備えている。この放電容器11は縦型円筒形の本体13と、本体13の上面開口を覆蓋する上蓋14と、本体12の下面開口を覆蓋する下蓋15で組み立てられている。本体13は耐熱石英ガラス管製であり、上蓋14と下蓋15はステンレス製である。
【0022】
本体13の上部にはステンレス製の上側筒体16が嵌められ、耐熱性の接着剤で固着されている。上側筒体16の上端部にはフランジ16aが形成されている。一方、上蓋14にもフランジ14aが形成されている。上蓋14は、そのフランジ14aと上側筒体16のフランジ16aを合体し、合体した両フランジ14a,16aをリング状のクランプ17で挟持し、ネジ17aで締め付けて本体13に組み付けられている。ネジ17aを緩めてクランプ17を外せば、本体13から上蓋14を取り外すことができる。
【0023】
同様に、本体13の下部にはステンレス製の下側筒体18が嵌められ、耐熱性の接着剤で固着されている。下側筒体18の下端部にはフランジ18aが形成され、下蓋15にもフランジ15aが形成されている。下蓋15は、そのフランジ15aと下側筒体18のフランジ18aを合体し、合体した両フランジ15a,18aをリング状のクランプ19で挟持し、ネジで締め付けて本体13に着脱可能に組み付けられている。
【0024】
放電容器は左右のフレーム20によって支承されている。放電容器11の本体13の上部に固着した上側筒体16の下部に板状のブラケット21が溶接され、本体13から径方向に延びている。各フレーム20の上端部には絶縁碍子22が固定され、絶縁碍子22の上端部に蝶ナット23でブラケット21とプラス極通電線24の端子24aを重ねて着脱可能に固着されている。蝶ナット23を緩めれば放電容器11をフレーム20から取り外すことができる。
【0025】
上蓋14には複数個のネジポート14bが設けられている。これらのネジポート14bは、本体13内部を真空排気する真空ポンプと接続したり、不活性ガスの供給管と接続したり、あるいは本体13内部の酸素濃度用のセンサを接続するために設けられている。また、本体13内部の圧力を監視するため圧力計25と、本体13内部の圧力が急激に上昇したとき、本体13が破裂する危険を回避するため、上蓋14に形成した排気口14cを開放して本体13の内圧を逃がす安全弁26、及び上蓋14を持ち上げるための把手14dが設けられている。
【0026】
上蓋14の裏面には螺旋状の放電電極27がビス28で固着されている。螺旋状の放電電極27の外径は本体13の内径とほぼ同寸法であり、上蓋14を本体13に被せると本体13の内周面に接するように組み込まれる。
【0027】
下蓋15にはマイナス極通電線29の端子29aがネジ30で締め付けられている。下蓋15には、針状の放電電極31が螺旋状のプラス放電電極27の中心に沿って、本体13の中程まで延伸するように立設されている。
【0028】
超微粒子製造装置10には電源部12からプラス極通電線24とマイナス極通電線29を介して電力が供給される。この電源部12には操作盤12aが設けられ、図4に示す電源回路40及び図5に示す操作盤回路50が内蔵されている。
【0029】
電源回路40bは入力電源がAC200V、出力がDC60V~26V、出力電流が200Aの第1DC電源41と、出力が200Vの第2DC電源42を備えている。第1DC電源41のプラス極はライン1を介して放電容器11の螺旋状の放電電極27に接続され、第1DC電源41のマイナス極がライン2を介して放電容器27の針状の放電電極31に接続されている。
【0030】
第2DC電源42のプラス極はライン3を介して放電容器11の螺旋状の放電電極27に接続され、第2DC電源42のマイナス極がライン2を介して放電容器11の針状の放電電極31に接続されている。
【0031】
ライン1にはスイッチMCCとダイオードD1が直列に接続されている。ライン3にはスイッチMCAとスイッチMCB及びダイオードD1が直列に接続されている。ライン2とライン3を接続するライン4にはスイッチMCAとコンデンサC1が接続されている。ライン3とライン4を結ぶライン5にコンデンサC2とスイッチMCAが組み込まれている。また、ライン4とライン5を結ぶライン6にスイッチMCAが組み込まれている。
【0032】
操作盤回路50はAC100Vのコンセントに接続して使用される。コンセントと操作盤回路50のライン7及びライン8の間はメインスイッチCP1で断続される。ライン7とライン8を結ぶライン9には常開スイッチS1と2個のスイッチMCAが組み込まれている。2個のスイッチMCAは並列に配置されている。同様にライン10には常開スイッチS1とタイマT1、スイッチMCB、スイッチMCCが組み込まれている。スイッチMCBは常閉スイッチS2を介して常開スイッチS1に接続されている。スイッチMCCは常開スイッチS3を介して常開スイッチS1に接続されている。
【0033】
超微粒子製造装置10の構成は以上の通りであって以下にその作動を説明する。蝶ナット23を緩めて放電容器11の上蓋14とともに螺旋状の放電電極27を本体13から取り外し、図7に示すように、本体13に金属繊維60の集合体を充填する。そして、上蓋14を本体13に被せて、蝶ナット23を締め付け、上蓋14を本体13に固定する。上蓋14のネジポート14bは閉栓する。本実施例では一例として、線径が20~50μm、線長が50~200mm、嵩密度0.2~0.3g/ccのアルミ繊維を充填される。
【0034】
操作盤12aを切り替え操作して超微粒子製造装置10を稼働する。操作時の動作チャートを図6に示す。操作盤12aを「切」から「充電」に切り替えると、スイッチMCAが閉じて2個のコンデンサC1,C2が並列配置になり第2DC電源42から充電される。操作盤12aを「充電」から「放電」に切り替えるとタイマT1が作動し、タイマT1で設定された所定時間中、2個のコンデンサC1とC2が直列配置になり、第2DC電源42から放電容器11に200Vの高電圧が印加される。そして、所定時間が経過して高電圧の印加が終了するとともに、スイッチMCCが閉じて第1DC電源41から低電圧大電流が印加される。
【0035】
本実施例に係る超微粒子の製造方法によれば、放電容器11の放電電極27,31に高電圧を印加すると、放電電極27,31と金属繊維60の間にアーク電路が形成され、金属繊維60が溶融蒸発してアルミの超微粒子が生成される。生成した超微粒子の大部分は放電容器11の下蓋15の上に溜まるので、下蓋15を取り外して回収する。
【0036】
本実施例に係る超微粒子の製造方法では、粒子状やブロック状の金属材料を放電容器11に入れるのではなくて、アルミ繊維等の金属繊維60の集合体を放電容器11に充填する。一般に導体は電流を多く流せば流すほど、抵抗が増す。これはフレミングの法則で流れる電流と方向と直角に磁力線が発生し、導体中心を流れる電流を阻害する表皮効果が生じるからである。導体の断面積は直径の3乗に比例し、導体の表面積は直径の2乗に比例するので、導体の単位断面積あたりに大きな電流を流すには細い導体を沢山束ねたものが有利である。金属繊維60は細い断面積を有するので、大きな電流を流すことができ、アーク放電が効果的に発生する。
【0037】
金属繊維60は粒子と違って長いので、放電電極27,31との距離が短くなり、電気抵抗を低くすることができ、大電流を流すことができる。
また、金属繊維60は表面積が大きいので、純粋金属材料を入れた放電容器に酸化金属微粒子を生成するため酸素を封入するとき、あるいは窒化金属微粒子を生成するため窒素を封入するとき、酸化反応や窒化反応が効率的に発生する。
【0038】
金属繊維60の集合体は、粒子状の金属材料から超微粒子を生成するときのように、金属材料をキャリアガスとともに放電容器11に供給する材料供給装置を備えていなくても簡単に放電容器11に充填できる。そのため、簡素で小型な構造の製造装置を用いることができ、製造コストを低減できる。
【0039】
放電容器11に金属繊維60の集合体を充填したとき、金属繊維60が螺旋状の放電電極27と針状の放電電極31に絡み易い。そのため、放電電極27,31と金属繊維60間の抵抗がより低くなるので、アーク放電の発生効率が向上する。
【0040】
金属繊維60の表面に不純物が付着していると電気抵抗が増大する。金属繊維60の集合体を放電容器11に充填し、高電圧を放電電極11に印加したとき、金属繊維60のうち電気抵抗が増大した部分が未通電となり、溶融蒸発しないで金属繊維60の形態のまま残ってしまうおそれがある。
本実施例では、高電圧を所定時間印加することにより、集合体の大部分を溶融蒸発させるとともに、高電圧の印加終了とともに低電圧大電流を印加することにより、溶融蒸発していなかった金属繊維60を溶融蒸発させることができる。
【実施例0041】
第2実施例に係る超微粒子の製造方法に用いた超微粒子製造装置10Aの主要部を図8に示す。螺旋状の放電電極32の上端部には中心軸33が組み付けられている。この中心軸33は上蓋34の中心に設けた軸受35により支承され、上蓋34から突出している。中心軸33の突出端部にはスプロケット36が組み付けられている。一方、上蓋34にはモータ37が固設され、モータ37の駆動軸にスプロケット38が組み付けられている。そして、中心軸33のスプロケット36とモータ37のスプロケット38がチェーン39で連結されている。上蓋34には高電圧が印加されるので、モータ37やその配線と上蓋34の間はセラミックスで絶縁されている。また、中心軸33のスプロケット36とモータ37のスプロケット38の間を絶縁するためセラミックス製のチェーン39が用いられている。
【0042】
螺旋状の放電電極32には螺旋のピッチが変わってグラつかないように3本の金属棒32aが等角度の間隔をあけて溶接されている。
なお、第2実施例に係る超微粒子製造装置10Aの他の構成は第1実施例に係る超微粒子製造装置10と同じであるので、同一の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施例に係る超微粒子製造装置10Aでは、上蓋34を取り外して金属繊維60を放電容器11の本体13に充填した後、本体13に上蓋34を被せると、第1実施例に係る螺旋状の放電電極27と同様に、螺旋状の放電電極32が本体13の内周面に接するように組み込まれる。放電電極32と放電電極31に印加して超微粒子を生成した後、モータ37を稼働させると螺旋状の放電電極32が本体の内周面に摺接しながら針状の放電電極31を回転中心として回転する。これに伴い、本体13の内周面に付着している超微粒子が螺旋状の放電電極32によって掻き落とされ、下蓋15の上に溜まるので、下蓋15を取り外して回収する。
【0044】
本実施例によれば、針状の放電電極31を中心にして螺旋状の放電電極32を回転させることができ、針状の放電電極31が螺旋状の放電電極32の回転の妨げにならない。そのため、螺旋状の放電電極32を一方向に連続して回転させることができ、放電容器11の内壁面に付着した超微粒子を螺旋状の放電電極32の回転によって効率的に掻き落として回収できる。
なお、本実施例では金属繊維60としてアルミ繊維を用いたが、本発明に係る超微粒子の製造方法はこれに限定されるものではなく、ステンレス鋼繊維や各種合金の繊維に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
10,10A…超微粒子製造装置
11…放電容器
12…電源部
13…本体
14…上蓋
15…下蓋
16…上側筒体
17…クランプ
18…下側筒体
19…クランプ
20…フレーム
21…ブラケット
22…絶縁碍子
23…蝶ナット
24…プラス極通電線
25…圧力計
26…安全弁
27…螺旋状の電極
29…マイナス極通電線
31…針状の電極
32…螺旋状の電極
33…中心軸
34…上蓋
35…軸受
36…スプロケット
37…モータ
38…スプロケット
39…チェーン
40…電源回路
50…操作盤回路
60…金属繊維(アルミ繊維)
C1…コンデンサ
C2…コンデンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用い、放電容器に入れた金属材料と複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料から超微粒子を生成する超微粒子の製造方法であって、
金属材料として金属繊維の集合体を放電容器に充填し、
放電電極にコンデンサから直流の高電圧を所定時間印加し、高電圧の印加終了とともに放電電極に直流の低電圧大電流を印加するようにしたことを特徴とする超微粒子の製造方法。
【請求項2】
放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用い、放電容器に入れた金属材料と複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料から超微粒子を生成する超微粒子の製造方法であって、
放電容器として縦型の円筒体を用い、
外径が放電容器の内径と略同じ螺旋状の放電電極を螺旋の中心線と放電容器の中心線が一致するように配置するとともに、放電容器の底面に中心線に沿って延びる針状の放電電極を立設し、螺旋状の放電電極をプラス極通電線に接続し、針状の放電電極をマイナス極通電線に接続し、
金属材料として金属繊維の集合体を放電容器に充填したことを特徴とする超微粒子の製造方法。
【請求項3】
螺旋状の放電電極を放電容器の内壁面に摺接しながら、放電容器の中心線の周りに回転可能に放電容器に組み付け、
螺旋状の放電電極を回転させて放電容器の内壁面に付着した超微粒子を掻き落すようにしたことを特徴とする請求項2に記載の超微粒子の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超微粒子の製造方法の一形式として、特開2019‐136694号公報(特許文献1)及び特開2014‐194059号公報(特許文献2)には、放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用いる超微粒子の製造方法が開示されている。
【0003】
引用文献1に開示されている超微粒子の製造方法では、放電容器に粒子状の金属材料を入れ、複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料の粒子から超微粒子を生成している。
また、引用文献2に開示されている超微粒子の製造方法では、放電容器にブロック状の金属材料を入れて、アーク放電を生じさせ、超微粒子を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019‐136694号公報
【特許文献2】特開2014‐194059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に記載の超微粒子の製造方法に用いる製造装置では、放電容器の下部に材料供給装置を設け、材料供給装置から材料供給管を放電容器の内部中央まで配管し、材料供給管を通してキャリアガスとともに粒子状の金属材料を放電容器中に供給している。
この製造方法に用いる製造装置は、材料供給装置や材料供給管が不可欠なため構造が複雑で大型化し、製造コストが高くなる。
【0006】
引用文献2に記載の超微粒子製造方法に用いる製造装置では、放電容器の内壁面に付着した超微粒子をワイパーで掻き落としている。このワイパーの先端にブラシが取り付けられており、ワイパーを回転させると、ブラシが放電容器の内壁面に摺接して回動し、内壁面から超微粒子が放電容器の底部へ落下する。
この製造装置では、放電容器の内壁面の上部から斜め下方に放電電極が突出しているため、ワイパーを回転させるとき、放電電極がワイパー回転の障害となる。そのため、ワイパーは半回転ごとに回転方向が逆になるように駆動するので、超微粒子を効率的に回収できない。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、低コストで超微粒子を製造できる超微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
また、放電容器内で生成した超微粒子を効率的に回収できる超微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用い、放電容器に入れた金属材料と複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料から超微粒子を生成する超微粒子の製造方法であって、
金属材料として金属繊維の集合体を放電容器に充填し、
放電電極にコンデンサから直流の高電圧を所定時間印加し、高電圧の印加終了とともに放電電極に直流の低電圧大電流を印加するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
放電容器と、放電容器の内部に配置された複数の放電電極と、放電電極へ電力を供給する電源部を備えた超微粒子製造装置を用い、放電容器に入れた金属材料と複数の放電電極の間でアーク放電を生じさせ、放電容器内にプラズマを発生させて、金属材料から超微粒子を生成する超微粒子の製造方法であって、
放電容器として縦型の円筒体を用い、
外径が放電容器の内径と略同じ螺旋状の放電電極を螺旋の中心線と放電容器の中心線が一致するように配置するとともに、放電容器の底面に中心線に沿って延びる針状の放電電極を立設し、螺旋状の放電電極をプラス極通電線に接続し、針状の放電電極をマイナス極通電線に接続し、
金属材料として金属繊維の集合体を放電容器に充填したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の超微粒子の製造方法において、
螺旋状の放電電極を放電容器の内壁面に摺接しながら、放電容器の中心線の周りに回転可能に放電容器に組み付け、
螺旋状の放電電極を回転させて放電容器の内壁面に付着した超微粒子を掻き落すようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、放電電極に高電圧を印加すると放電電極と金属繊維の間にアーク電路が形成され、金属繊維が溶融蒸発して超微粒子が生成される。
【0011】
本発明によれば、粒子状やブロック状の金属材料を放電容器に入れるのではなくて、金属繊維の集合体を放電容器に充填する。金属繊維の集合体は、粒子状の金属材料から超微粒子を生成するときのように、金属材料をキャリアガスとともに放電容器に供給する材料供給装置を備えていなくても簡単に放電容器に充填できる。そのため、簡素で小型な構造の製造装置を用いることができ、製造コストを低減できる。
【0012】
金属繊維は粒子と違って長いので、放電電極との距離が短くなり、電気抵抗を低くすることができ、大電流を流すことができる。
また、金属繊維は表面積が大きいので、純粋金属材料を入れた放電容器に酸化金属微粒子を生成するため酸素を封入するとき、あるいは窒化金属微粒子を生成するため窒素を封入するとき、酸化反応や窒化反応が効率的に発生する。
【0013】
生成される超微粒子の粒形や粒度分布を、金属繊維の線径、線長、充填密度を選択することで調整できる。
【0014】
金属繊維の表面に不純物が付着していると電気抵抗が増大する。金属繊維の集合体を放電容器に充填し、高電圧を放電電極に印加したとき、金属繊維のうち電気抵抗が増大した部分が未通電となり、溶融蒸発しないで金属繊維の形態のまま残ってしまうおそれがある。
【0015】
一般に、導体は交流電流を流せば、また、交流電流の周波数が高くなるほど、抵抗が増す。導体を流れる電流によって磁束が生じ、これが導体中心部で、抵抗となり電流は導体表面にそって流れるようになる(一般的に表皮効果と呼ばれている)。
【0016】
本発明によれば、放電電極にコンデンサから直流の高電圧を所定時間印加するが、コンデンサからの直流放電において、この放電電圧は減衰波となり、コンデンサ容量と接続された負荷インピーダンスによって数KHz~数百KHzの交流となり、表皮効果が生じる。
導体の断面積は直径の3乗に比例し、導体の表面積は直径の2乗に比例するので、導体の単位断面積あたりに大きな電流を流すには細い導体を沢山束ねたものが有利である。金属繊維は細い断面積を有するので、コンデンサから直流の高電圧を印加したときに生じる表皮効果を有効に低減でき、大きな電流を流すことができる。そのため、集合体の大部分を溶融蒸発させるとともに、高電圧の印加終了直前に直流の低電圧大電流を印加することにより、溶融蒸発していなかった金属繊維を溶融蒸発させることができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、放電容器に金属繊維の集合体を充填したとき、金属繊維が螺旋状の放電電極と針状の放電電極に絡み易い。そのため、放電電極と金属繊維間の抵抗がより低くなるので、アーク放電の発生効率が向上する。
【0018】
放電による温度上昇はマイナス極の方が大きく、アーク放電により蒸発し、生成された超微粒子が下蓋に立設した針状のマイナス極に集まり易く、回収が容易になる。また、プラス極の螺旋状の放電電極が高温にならないので、放電容器の破損を防止できる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、螺旋状の放電電極中心に針状の放電電極を立設したので、螺旋状の放電電極を回転させることができ、針状の放電電極が螺旋状の放電電極の回転の妨げにならない。そのため、螺旋状の放電電極を一方向に連続して回転させることができ、放電容器の内壁面に付着した超微粒子を効率的に掻き落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施例に係る超微粒子の製造方法に用いる超微粒子製造装置を示す一部破断した断面図である。
図2】同超微粒子製造装置を示す平面図である。
図3】同超微粒子製造装置を示す側面図である。
図4】同超微粒子製造装置の電源部に内蔵された電源回路図である。
図5】同超微粒子製造装置の電源部に内蔵された操作盤回路図である。
図6】同超微粒子製造装置の電源部に設けられた操作盤を操作したときの電源回路と操作盤回路の動作説明図である。
図7】同超微粒子製造装置の放電容器に金属繊維を充填した状態を示す一部破断した断面図である。
図8】本発明の第2実施例に係る超微粒子の製造方法に用いる超微粒子製造装置の主要部を示す分解斜視図である。
【実施例0021】
以下に本発明を図面に基づき説明する。図1図3には本発明の第1実施例に係る超微粒子の製造方法に用いる超微粒子製造装置10が示されている。当該超微粒子製造装置10は放電容器11と電源部12を備えている。この放電容器11は縦型円筒形の本体13と、本体13の上面開口を覆蓋する上蓋14と、本体12の下面開口を覆蓋する下蓋15で組み立てられている。本体13は耐熱石英ガラス管製であり、上蓋14と下蓋15はステンレス製である。
【0022】
本体13の上部にはステンレス製の上側筒体16が嵌められ、耐熱性の接着剤で固着されている。上側筒体16の上端部にはフランジ16aが形成されている。一方、上蓋14にもフランジ14aが形成されている。上蓋14は、そのフランジ14aと上側筒体16のフランジ16aを合体し、合体した両フランジ14a,16aをリング状のクランプ17で挟持し、ネジ17aで締め付けて本体13に組み付けられている。ネジ17aを緩めてクランプ17を外せば、本体13から上蓋14を取り外すことができる。
【0023】
同様に、本体13の下部にはステンレス製の下側筒体18が嵌められ、耐熱性の接着剤で固着されている。下側筒体18の下端部にはフランジ18aが形成され、下蓋15にもフランジ15aが形成されている。下蓋15は、そのフランジ15aと下側筒体18のフランジ18aを合体し、合体した両フランジ15a,18aをリング状のクランプ19で挟持し、ネジで締め付けて本体13に着脱可能に組み付けられている。
【0024】
放電容器11は左右のフレーム20によって支承されている。放電容器11の本体13の上部に固着した上側筒体16の下部に板状のブラケット21が溶接され、本体13から径方向に延びている。各フレーム20の上端部には絶縁碍子22が固定され、絶縁碍子22の上端部に蝶ナット23でブラケット21とプラス極通電線24の端子24aを重ねて着脱可能に固着されている。蝶ナット23を緩めれば放電容器11をフレーム20から取り外すことができる。
【0025】
上蓋14には複数個のネジポート14bが設けられている。これらのネジポート14bは、本体13内部を真空排気する真空ポンプと接続したり、不活性ガスの供給管と接続したり、あるいは本体13内部の酸素濃度用のセンサを接続するために設けられている。また、本体13内部の圧力を監視するため圧力計25と、本体13内部の圧力が急激に上昇したとき、本体13が破裂する危険を回避するため、上蓋14に形成した排気口14cを開放して本体13の内圧を逃がす安全弁26、及び上蓋14を持ち上げるための把手14dが設けられている。
【0026】
上蓋14の裏面には螺旋状の放電電極27がビス28で固着されている。螺旋状の放電電極27の外径は本体13の内径とほぼ同寸法であり、上蓋14を本体13に被せると本体13の内周面に接するように組み込まれる。
【0027】
下蓋15にはマイナス極通電線29の端子29aがネジ30で締め付けられている。下蓋15には、針状の放電電極31が螺旋状のプラス放電電極27の中心に沿って、本体13の中程まで延伸するように立設されている。
【0028】
超微粒子製造装置10には電源部12からプラス極通電線24とマイナス極通電線29を介して電力が供給される。この電源部12には操作盤12aが設けられ、図4に示す電源回路40及び図5に示す操作盤回路50が内蔵されている。
【0029】
電源回路40bは入力電源がAC200V、出力がDC60V~26V、出力電流が200Aの第1DC電源41と、出力が200Vの第2DC電源42を備えている。第1DC電源41のプラス極はライン1を介して放電容器11の螺旋状の放電電極27に接続され、第1DC電源41のマイナス極がライン2を介して放電容器11の針状の放電電極31に接続されている。
【0030】
第2DC電源42のプラス極はライン3を介して放電容器11の螺旋状の放電電極27に接続され、第2DC電源42のマイナス極がライン2を介して放電容器11の針状の放電電極31に接続されている。
【0031】
ライン1にはスイッチMCCとダイオードD1が直列に接続されている。ライン3にはスイッチMCAとスイッチMCB及びダイオードD1が直列に接続されている。ライン2とライン3を接続するライン4にはスイッチMCAとコンデンサC1が接続されている。ライン3とライン4を結ぶライン5にコンデンサC2とスイッチMCAが組み込まれている。また、ライン4とライン5を結ぶライン6にスイッチMCAが組み込まれている。
【0032】
操作盤回路50はAC100Vのコンセントに接続して使用される。コンセントと操作盤回路50のライン7及びライン8の間はメインスイッチCP1で断続される。ライン7とライン8を結ぶライン9には常開スイッチS1と2個のスイッチMCAが組み込まれている。2個のスイッチMCAは並列に配置されている。同様にライン10には常開スイッチS1とタイマT1、スイッチMCB、スイッチMCCが組み込まれている。スイッチMCBは常閉スイッチS2を介して常開スイッチS1に接続されている。スイッチMCCは常開スイッチS3を介して常開スイッチS1に接続されている。
【0033】
超微粒子製造装置10の構成は以上の通りであって以下にその作動を説明する。蝶ナット23を緩めて放電容器11の上蓋14とともに螺旋状の放電電極27を本体13から取り外し、図7に示すように、本体13に金属繊維60の集合体を充填する。そして、上蓋14を本体13に被せて、蝶ナット23を締め付け、上蓋14を本体13に固定する。上蓋14のネジポート14bは閉栓する。本実施例では一例として、線径が20~50μm、線長が50~200mm、嵩密度0.2~0.3g/ccのアルミ繊維を充填される。
【0034】
操作盤12aを切り替え操作して超微粒子製造装置10を稼働する。操作時の動作チャートを図6に示す。操作盤12aを「切」から「充電」に切り替えると、スイッチMCAが閉じて2個のコンデンサC1,C2が並列配置になり第2DC電源42から充電される。操作盤12aを「充電」から「放電」に切り替えるとタイマT1が作動し、タイマT1で設定された所定時間中、2個のコンデンサC1とC2が直列配置になり、第2DC電源42から放電容器11に200Vの高電圧が印加される。そして、所定時間が経過して高電圧の印加が終了するとともに、スイッチMCCが閉じて第1DC電源41から低電圧大電流が印加される。
【0035】
本実施例に係る超微粒子の製造方法によれば、放電容器11の放電電極27,31に高電圧を印加すると、放電電極27,31と金属繊維60の間にアーク電路が形成され、金属繊維60が溶融蒸発してアルミの超微粒子が生成される。生成した超微粒子の大部分は放電容器11の下蓋15の上に溜まるので、下蓋15を取り外して回収する。
【0036】
本実施例に係る超微粒子の製造方法では、粒子状やブロック状の金属材料を放電容器11に入れるのではなくて、アルミ繊維等の金属繊維60の集合体を放電容器11に充填する。一般に導体は電流を多く流せば流すほど、抵抗が増す。これはフレミングの法則で流れる電流と方向と直角に磁力線が発生し、導体中心を流れる電流を阻害する表皮効果が生じるからである。導体の断面積は直径の3乗に比例し、導体の表面積は直径の2乗に比例するので、導体の単位断面積あたりに大きな電流を流すには細い導体を沢山束ねたものが有利である。金属繊維60は細い断面積を有するので、大きな電流を流すことができ、アーク放電が効果的に発生する。
【0037】
金属繊維60は粒子と違って長いので、放電電極27,31との距離が短くなり、電気抵抗を低くすることができ、大電流を流すことができる。
また、金属繊維60は表面積が大きいので、純粋金属材料を入れた放電容器に酸化金属微粒子を生成するため酸素を封入するとき、あるいは窒化金属微粒子を生成するため窒素を封入するとき、酸化反応や窒化反応が効率的に発生する。
【0038】
金属繊維60の集合体は、粒子状の金属材料から超微粒子を生成するときのように、金属材料をキャリアガスとともに放電容器11に供給する材料供給装置を備えていなくても簡単に放電容器11に充填できる。そのため、簡素で小型な構造の製造装置を用いることができ、製造コストを低減できる。
【0039】
放電容器11に金属繊維60の集合体を充填したとき、金属繊維60が螺旋状の放電電極27と針状の放電電極31に絡み易い。そのため、放電電極27,31と金属繊維60間の抵抗がより低くなるので、アーク放電の発生効率が向上する。
【0040】
金属繊維60の表面に不純物が付着していると電気抵抗が増大する。金属繊維60の集合体を放電容器11に充填し、高電圧を放電電極27,31に印加したとき、金属繊維60のうち電気抵抗が増大した部分が未通電となり、溶融蒸発しないで金属繊維60の形態のまま残ってしまうおそれがある。
本実施例では、高電圧を所定時間印加することにより、集合体の大部分を溶融蒸発させるとともに、高電圧の印加終了とともに低電圧大電流を印加することにより、溶融蒸発していなかった金属繊維60を溶融蒸発させることができる。
【実施例0041】
第2実施例に係る超微粒子の製造方法に用いた超微粒子製造装置10Aの主要部を図8に示す。螺旋状の放電電極32の上端部には中心軸33が組み付けられている。この中心軸33は上蓋34の中心に設けた軸受35により支承され、上蓋34から突出している。中心軸33の突出端部にはスプロケット36が組み付けられている。一方、上蓋34にはモータ37が固設され、モータ37の駆動軸にスプロケット38が組み付けられている。そして、中心軸33のスプロケット36とモータ37のスプロケット38がチェーン39で連結されている。上蓋34には高電圧が印加されるので、モータ37やその配線と上蓋34の間はセラミックスで絶縁されている。また、中心軸33のスプロケット36とモータ37のスプロケット38の間を絶縁するためセラミックス製のチェーン39が用いられている。
【0042】
螺旋状の放電電極32には螺旋のピッチが変わってグラつかないように3本の金属棒32aが等角度の間隔をあけて溶接されている。
なお、第2実施例に係る超微粒子製造装置10Aの他の構成は第1実施例に係る超微粒子製造装置10と同じであるので、同一の構成要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
本実施例に係る超微粒子製造装置10Aでは、上蓋34を取り外して金属繊維60を放電容器11の本体13に充填した後、本体13に上蓋34を被せると、第1実施例に係る螺旋状の放電電極27と同様に、螺旋状の放電電極32が本体13の内周面に接するように組み込まれる。放電電極32と放電電極31に印加して超微粒子を生成した後、モータ37を稼働させると螺旋状の放電電極32が本体の内周面に摺接しながら針状の放電電極31を回転中心として回転する。これに伴い、本体13の内周面に付着している超微粒子が螺旋状の放電電極32によって掻き落とされ、下蓋15の上に溜まるので、下蓋15を取り外して回収する。
【0044】
本実施例によれば、針状の放電電極31を中心にして螺旋状の放電電極32を回転させることができ、針状の放電電極31が螺旋状の放電電極32の回転の妨げにならない。そのため、螺旋状の放電電極32を一方向に連続して回転させることができ、放電容器11の内壁面に付着した超微粒子を螺旋状の放電電極32の回転によって効率的に掻き落として回収できる。
なお、本実施例では金属繊維60としてアルミ繊維を用いたが、本発明に係る超微粒子の製造方法はこれに限定されるものではなく、ステンレス鋼繊維や各種合金の繊維に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
10,10A…超微粒子製造装置
11…放電容器
12…電源部
13…本体
14…上蓋
15…下蓋
16…上側筒体
17…クランプ
18…下側筒体
19…クランプ
20…フレーム
21…ブラケット
22…絶縁碍子
23…蝶ナット
24…プラス極通電線
25…圧力計
26…安全弁
27…螺旋状の放電電極
29…マイナス極通電線
31…針状の放電電極
32…螺旋状の放電電極
33…中心軸
34…上蓋
35…軸受
36…スプロケット
37…モータ
38…スプロケット
39…チェーン
40…電源回路
50…操作盤回路
60…金属繊維(アルミ繊維)
C1…コンデンサ
C2…コンデンサ