(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039640
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】分散トレイ及びこれを備えた組合せ秤
(51)【国際特許分類】
G01G 19/387 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01G19/387 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146867
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000208444
【氏名又は名称】大和製衡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】本郷 栄助
(57)【要約】
【課題】供給される物品を充分に分散させて搬出できる分散トレイ及びそれを備えた組合せ秤を提供する。
【解決手段】振動駆動されて、中心部に供給される物品を外方へ分散搬送する分散トレイ7であって、中心側から外方へ向けて下がり傾斜した主搬送部7aと、外周部の全周に亘って外方へ向けて上がり傾斜したエッジ部7bとを備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動駆動されて、中心部に供給される物品を外方へ分散搬送する分散トレイであって、
中心側から前記外方へ向けて下がり傾斜した主搬送部と、外周部の全周に亘って前記外方へ向けて上がり傾斜したエッジ部とを備える、
ことを特徴とする分散トレイ。
【請求項2】
前記主搬送部と前記エッジ部との間に平坦部が、環状に形成されている、
請求項1に記載の分散トレイ。
【請求項3】
前記エッジ部は、前記外方へ向けて直線状に上がり傾斜している、
請求項1または2に記載の分散トレイ。
【請求項4】
当該分散トレイにおける前記主搬送部の中心側に、前記主搬送部の傾斜よりも急傾斜で前記外方へ向けて下がり傾斜した円錐状のセンターコーンを備える、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の分散トレイ。
【請求項5】
前記センターコーンが、当該分散トレイと別体に構成されていると共に、当該分散トレイを振動駆動する加振機構に対して、着脱自在である、
請求項4に記載の分散トレイ。
【請求項6】
供給される物品を外方に分散搬送する分散フィーダと、分散フィーダの周囲に設けられる複数の直進フィーダと、各直進フィーダにそれぞれ対応して設けられ、前記直進フィーダで搬送された物品を一時保持して排出する複数の供給ホッパと、各供給ホッパにそれぞれ対応して設けられ、前記供給ホッパから排出された物品を一時保持して物品の重量を計量する複数の計量ホッパとを備える組合せ秤であって、
前記分散フィーダは、中心部に前記物品が供給される分散トレイと、該分散トレイを振動駆動する加振機構とを有し、前記分散トレイが、前記請求項1ないし5のいずれか一項に記載の分散トレイである、
ことを特徴とする組合せ秤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組合せ秤の分散フィーダを構成する分散トレイ、及び、この分散トレイを備えた組合せ秤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に組合せ秤では、供給される物品を、分散フィーダによって、その周囲に配設されている複数の直進フィーダに分散搬送し、直進フィーダは、物品を更に外方へ搬送して、複数の供給ホッパに供給する。複数の供給ホッパは、複数の計量ホッパに物品を供給し、複数の計量ホッパで物品の重量を計量する。これら複数の計量ホッパの物品の重量を種々に組合せた組合せ重量が、所定重量範囲となる適量組合せの計量ホッパの物品を排出して、集合シュート等を介して下方の包装装置等に投入する。
【0003】
分散フィーダは、一般に、物品が落下供給される円錐形の分散トレイと、この分散トレイを振動駆動する加振機構とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分散フィーダでは、円錐形の分散トレイの中心部に落下供給される物品を、分散トレイを振動駆動することによって、外方へ分散搬送するのであるが、物品によっては、分散トレイ上で振動を充分に受けることなく、円錐面に沿ってその周囲の直進フィーダへ搬出されてしまう場合がある。このような場合には、分散トレイ上で物品を均一に分散させることができず、物品が纏まった状態で、直進フィーダの一部に偏って搬出されることがある。
【0006】
このように分散フィーダから直進フィーダへ物品が偏って搬出されると、直進フィーダから供給ホッパを介して計量ホッパへ供給される物品の供給量が安定せず、適量組合せが成立しにくくなり、組合せ精度が低下し、歩留りが悪くなる。
【0007】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、分散トレイ上における物品の分散性を高めて、物品が偏って搬出されるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
【0009】
(1)本発明に係る分散トレイは、振動駆動されて、中心部に供給される物品を外方へ分散搬送する分散トレイであって、中心側から前記外方へ向けて下がり傾斜した主搬送部と、外周部の全周に亘って前記外方へ向けて上がり傾斜したエッジ部とを備える。
【0010】
本発明の分散トレイによると、エッジ部が、物品が当該分散トレイの外周縁から外方に移動するのを適度の抵抗をもって堰き止める機能を発揮する。これによって、当該分散トレイ上の物品は、堰き止められて充分に振動を受けることができるので、その間に物品の纏まりがほぐされ、姿勢が揃えられて、エッジ部を乗り越えて搬出される。従って、当該分散トレイの外周縁から一部の物品が纏まった状態で偏って搬出されるのを抑制することができる。
【0011】
(2)本発明の一実施態様では、前記主搬送部と前記エッジ部との間に平坦部が、環状に形成されている。
【0012】
この実施態様によると、分散トレイの外周近くには、下がり傾斜した主搬送部、上がり傾斜したエッジ部及びその間の平坦部によって、浅い凹部が環状に形成されることになる。この凹部に、物品が適度の抵抗をもって堰き止められて滞留し、振動を充分に受けて均一に分散される。また、平坦部の幅等の設定によって、凹部に滞留する物品の量を調整することができる。
【0013】
(3)本発明の他の実施態様では、前記エッジ部は、前記外方へ向けて直線状に上がり傾斜している。
【0014】
この実施態様によると、当該分散トレイの外周端におけるエッジ部の高さや外方への上がり傾斜角度等の設定によって、物品の形状や大きさ等に応じた適度の抵抗をもって物品を堰き止めることができる。
【0015】
(4)本発明の更に他の実施態様では、当該分散トレイにおける前記主搬送部の中心側に、前記主搬送部の傾斜よりも急傾斜で前記外方へ向けて下がり傾斜した円錐状のセンターコーンを備える。
【0016】
この実施態様によると、急傾斜のセンターコーンは、落下供給される物品を速やかに外方へ流下案内して主搬送部に導くことができるので、主搬送部の物品を、センターコーンに沿って流下する後続の物品によって外方へ円滑に押し動かすことができ、外方へ円滑に移動しにくい物品を分散搬送する際に有効となる。
【0017】
(5)本発明の一実施態様では、前記センターコーンが、当該分散トレイと別体に構成されていると共に、当該分散トレイを振動駆動する加振機構に対して、着脱自在である。
【0018】
この実施態様によると、任意の傾斜角度等を有するセンターコーンを選択して取り替えることが容易となり、物品の形状、大きさ、あるいは、性状等に応じた好適な分散トレイを容易に構成することができる。
【0019】
(6)本発明に係る組合せ秤は、供給される物品を外方に分散搬送する分散フィーダと、分散フィーダの周囲に設けられる複数の直進フィーダと、各直進フィーダにそれぞれ対応して設けられ、前記直進フィーダで搬送された物品を一時保持して排出する複数の供給ホッパと、各供給ホッパにそれぞれ対応して設けられ、前記供給ホッパから排出された物品を一時保持して物品の重量を計量する複数の計量ホッパとを備える組合せ秤であって、前記分散フィーダは、中心部に前記物品が供給される分散トレイと、該分散トレイを振動駆動する加振機構とを有し、前記分散トレイが、上記(1)ないし(5)のいずれかの分散トレイである。
【0020】
本発明の組合せ秤によると、分散トレイから一部の物品が纏まった状態で直進フィーダへ偏って搬出されるのを抑制することができるので、直進フィーダを介して供給ホッパ及び計量ホッパへ供給される物品の供給量を安定させることができ、組合せ精度を向上させて、歩留りを良くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明の分散トレイによれば、物品を充分に分散させて搬出することができ、この分散フィーダを備えた組合せ秤では、精度の高い組合せ計量を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る組合せ秤の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は分散フィーダの分散トレイ部分の縦断面図である。
【
図4】
図4は分散フィーダの分散トレイ部分の一部を切欠いた斜視図である。
【
図6】
図6は物品の分散搬送状態を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る分散トレイを備えた組合せ秤の概略構成を示す模式図であり、
図2は、組合せ秤の上部を示す平面図である。
【0025】
この実施形態の組合せ秤は、各種の食品などの物品を所定量ずつ計量して、図示しない包装装置に排出して物品を袋詰めする包装ラインなどに利用される。
【0026】
組合せ秤の構成及び作動は基本的に従来と同様であり、組合せ秤の上部中央には、分散フィーダ1が配備され、供給装置2から投下された物品が、投入ファネル3を介して分散フィーダ1の中心部に案内供給され、分散フィーダ1によって、物品が外方に向けて分散搬送される。
【0027】
分散フィーダ1の周囲には、分散フィーダ1の外周部から搬出された物品を、更に外方に向けて直線的に振動搬送する複数台(この例では14台)の直進フィーダ4が、放射状に配設されている。
【0028】
各直進フィーダ4の搬送終端部の下方には、制御装置21によって開閉制御されるゲート5aを有する供給ホッパ5が配設され、各供給ホッパ5の下方には、制御装置21によって開閉制御されるゲート6aを有する計量ホッパ6がそれぞれ配設されている。
【0029】
分散フィーダ1は、平面形状が円形の分散トレイ7を、加振機構8によって振動駆動して、分散トレイ7の中心部に落下供給された物品を、半径方向の外方に向けて放射状に分散搬送するように構成されている。具体的には、分散トレイ7は、従来と同様に、加振機構8によって、円周方向の振動が与えられ、分散トレイ7上に供給された物品は、周方向に移動しながら半径方向の外方へ搬送される。
【0030】
加振機構8を支持する重量センサ9による検知出力が制御装置21に与えられ、制御装置21は、この検知出力に基づいて、分散トレイ7上の物品の重量が所定範囲内となるように、供給装置2から分散トレイ7への物品供給量を制御する。
【0031】
直進フィーダ4は、樋状のトラフ10を加振機構11によって振動駆動して、分散フィーダ1から搬出された物品を更に外方に向けて直線的に搬送する。
【0032】
供給ホッパ5は、直進フィーダ4から供給された物品を一時保持し、その下方に配置された計量ホッパ6が空になると、物品を計量ホッパ6へ供給する。
【0033】
計量ホッパ6には、ホッパ内の物品の重量を計量するための重量センサ12が連結され、各重量センサ12の検知出力が制御装置21へ与えられる。
【0034】
制御装置21は、計量ホッパ6で計量される物品の重量に基づいて、組合せ演算を行って、所定重量範囲となる計量ホッパ6の組合せである適量組合せを選択し、適量組合せとして選択された計量ホッパ6から物品を排出する。排出された物品は、集合シュート13及び集合ファネル14を介して集合ホッパ15に一旦保持される。制御装置21は、図示しない包装装置からの排出要求信号の入力に応答して集合ホッパ15のゲート15aを開放し、保持されている物品を排出して包装装置へ投入する。
【0035】
従来の組合せ秤では、物品によっては、分散トレイ上で振動を充分に受けることなく、円錐面に沿ってその周囲の直進フィーダへ搬出されてしまい、均一に分散されることなく、一部の物品が纏まった状態で、直進フィーダへ偏って搬出される場合がある。
【0036】
この実施形態では、分散フィーダ1の分散トレイ7上に落下供給された物品が、分散トレイ7上で充分に振動を受けて、周方向に適度に分散されて、周囲の直進フィーダ4に搬出されるように構成している。
【0037】
以下、その構成について詳細に説明する。
【0038】
図3は、分散フィーダ1の分散トレイ7部分の縦断面図であり、
図4は、分散フィーダ1の分散トレイ7部分の一部を切欠いた斜視図であり、
図5は、
図3の一部拡大断面図である。
【0039】
図3、
図4に示すように、分散トレイ7は、金属板材を円板形にプレス加工して、中心ボス部16に溶接等によって連結して構成されている。中心ボス部16が、加振機構8から延出された駆動軸部17に連結ボルト18によって締付け固定されることで、分散トレイ7が振動駆動されるようになっている。
【0040】
分散トレイ7における中心側の大部分には、緩傾斜で外方へ向けて下がり傾斜した主搬送部7aが形成されている。また、分散トレイ7の外周部には、外方へ向けて上がり傾斜したエッジ部7bが全周に亘って形成されている。更に、主搬送部7aとエッジ部7bとの間に、平坦な平坦部7cが環状に形成されている。
【0041】
図5に示される主搬送部7aの下がり傾斜の傾斜角度θは、例えば、3°以上10°以下であるのが好ましい。
【0042】
外上がり傾斜したエッジ部7bの
図5に示される外周端の高さHは、2mm以上5mm以下であるのが好ましい。また、エッジ部7bの幅W1は、5mm以上25mm以下であるのが好ましい。
【0043】
分散トレイ7の直径が、350mmである本実施形態では、エッジ部7bの高さHは、例えば2mmであり、幅W1は、例えば15mmである。
【0044】
図5に示される主搬送部7aとエッジ部7bとの間の平坦部7cの幅W2は、5mm以上であるのが好ましい。
【0045】
この実施形態によると、
図6に示すように、例えば、ペット用のビーフジャーキーのような細長い物品wが、分散フィーダ1上面の中心部に落下供給されると、分散トレイ7の円周方向の振動を受けて、物品wは周方向に移動しながら外方に向けて搬送され、物品wの長手方向が、次第に振動方向である円周方向に沿うように姿勢が変更される。
【0046】
分散トレイ7の外周近くに至った物品wは、下がり傾斜の主搬送部7a、平坦部7c、及び、上がり傾斜のエッジ部7bとで形成された浅い逆台形断面形状の環状凹部において、周方向に沿って滞留する。
【0047】
上り傾斜したエッジ部7bは、物品wがホッパ外周縁から直ちに外方へ移動する、すなわち、直進フィーダ4へ搬出されるのを適度の抵抗をもって堰き止める機能を発揮する。
【0048】
堰き止められた物品wは、滞留している間に振動を充分に受けることで、纏まった状態がほぐされると共に、姿勢が揃えられる。そして、引き続き物品wが主搬送部7aから外周に向けて徐々に搬送移動されるのに伴って、エッジ部7bで堰き止められていた物品wが、外周のものから順にエッジ部7bを乗り越えて外方に押し出され、直進フィーダ4の始端部へ搬出される。
【0049】
このように、分散トレイ7の外周部の全周に亘るエッジ部7bによって、物品wに対する適度な堰き止め機能が発揮されることで、物品wは、分散トレイ7上で、振動を充分に受けることができ、纏まった状態の物品は、ほぐされると共に、均一に分散され、分散トレイ7の周囲の直進フィーダ4へ偏りなく搬出される。
【0050】
また、分散トレイ7の下がり傾斜の主搬送部7a、平坦部7c及び上がり傾斜のエッジ部7bとで形成される環状凹部に、適量の物品wを滞留させることができ、直進フィーダ4へ物品wの搬出量を制御できると共に、滞留している物品に効果的に振動を与えて分散させることができる。更に、平坦部7cの上記幅W2等の設定によって、前記環状凹部に滞留する物品の量を調整することができる。
【0051】
上記のように本実施形態によれば、分散トレイ7上で、物品wは充分に振動を受けて均一に分散されるので、一部の物品が纏まった状態で直進フィーダ4に偏って搬出されるのを抑制して、直進フィーダ4を介して供給ホッパ5及び計量ホッパ6へ供給される物品wの供給量を安定させることができ、これによって、組合せ精度を向上させて、歩留りを良くすることができる。
【0052】
[他の実施形態]
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0053】
(1)
図7、
図8に示すように、上記した分散トレイ7の中心部に、別途製作されたセンターコーン19を配備して、連結ボルト20で中心ボス部16に固定する構造とすることもできる。このセンターコーン19は、分散トレイ7における主搬送部7aの傾斜角度より十分大きい外下がり傾斜角度に形成されており、分散トレイ7上で外周に向けて比較的移動しにくい物品を円滑に分散搬送する機能が高いものとなる。
【0054】
(2)エッジ部7bは必ずしも直線的な外上がり傾斜面である必要はなく、例えば、上向きに突曲した外上がり傾斜面、あるいは、上向きに凹曲した外上がり傾斜面に形成してもよい。
【0055】
(3)物品の大きさや形状、あるいは、物品の性状によっては、平坦部7cを省略し、主搬送部7aの外周端にエッジ部7bが直ちに連設される形態で実施することも可能である。
【0056】
(4)センターコーン19を分散トレイ7と一体形成することもできる。
【0057】
(5)エッジ部7bのみを備えた平坦な円板材の上面に、金属材あるいは樹脂材からなる別体の主搬送部7aを連結して分散トレイ7を構成することもできる。また、この別体の主搬送部7aにセンターコーン19を一体形成してもよい。
【0058】
(6)分散トレイの上面には、エンボス加工やコーティング加工を施してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 分散フィーダ
4 直進フィーダ
5 供給ホッパ
6 計量ホッパ
7 分散トレイ
7a 主搬送部
7b エッジ部
7c 平坦部
8 加振機構
19 センターコーン
w 物品