(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039651
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法及び監視プログラム
(51)【国際特許分類】
C21B 7/24 20060101AFI20230314BHJP
C21B 7/10 20060101ALI20230314BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20230314BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C21B7/24 306
C21B7/10 301
F27D1/00 V
F27D21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146882
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】松崎 眞六
(72)【発明者】
【氏名】夏井 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 伸治
【テーマコード(参考)】
4K015
4K051
4K056
【Fターム(参考)】
4K015CA04
4K015KA01
4K015KA06
4K051AA01
4K051AB03
4K051BH00
4K056AA01
4K056BA01
4K056CA02
4K056FA11
(57)【要約】
【課題】還元材比の増加を抑制可能な監視装置、監視方法及び監視プログラムを提供する。
【解決手段】監視装置1は、高炉の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて複数のステーブ温度を、高炉の休風期間を含めて、一定の時間間隔毎に取得するステーブ温度取得部21と、複数のステーブ温度から、高炉の炉壁の所定の位置における温度の所定の時間間隔での変化量である複数の温度変化量を演算する温度変化量演算部22と、複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算するステーブ温度変動指数演算部23と、ステーブ温度変動指数が所定の下限しきい値以下であるか否かを判定する操業異常判定部24とを有し、下限しきい値の初期値は、休風期間におけるステーブ温度変動指数から抽出される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて複数のステーブ温度を、前記高炉の休風期間を含めて、一定の時間間隔毎に取得するステーブ温度取得部と、
前記複数のステーブ温度から、高炉の炉壁の所定の位置における温度の所定の時間間隔での変化量である複数の温度変化量を演算する温度変化量演算部と、
前記複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算するステーブ温度変動指数演算部と、
前記ステーブ温度変動指数が所定の下限しきい値以下であるか否かを判定する操業異常判定部と、を有し、
前記下限しきい値の初期値は、前記休風期間における前記ステーブ温度変動指数から抽出される、ことを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記下限しきい値の初期値は、前記休風期間において、前記複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間における前記ステーブ温度変動指数の最大値と推定される値である、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記下限しきい値の初期値は、前記休風期間を含む期間において演算された前記ステーブ温度変動指数の相対頻度が最大である第1極大値と、前記相対頻度が前記第1極大値に次ぐ大きさである第2極大値との間の最小値に対応する前記ステーブ温度変動指数である、請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記ステーブ温度変動指数に基づいて、炉壁部不活性が発生しているか否かを判定し、
前記炉壁部不活性が発生していると判定されたときに、炉壁部不活性領域における少なくとも前記休風期間を含む期間での前記ステーブ温度変動指数の最大値を前記下限しきい値に変更する下限しきい値変更部を更に有する請求項1~3の何れか一項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記下限しきい値変更部は、前記炉壁部不活性領域における前記休風期間での前記ステーブ温度変動指数の最大値を前記下限しきい値とする、請求項4に記載の監視装置。
【請求項6】
高炉の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて複数のステーブ温度を、前記高炉の休風期間を含めて、一定の時間間隔毎に取得し、
前記複数のステーブ温度から、高炉の炉壁の所定の位置における温度の所定の時間間隔での変化量である複数の温度変化量を演算し、
前記複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算し、
前記ステーブ温度変動指数が所定の下限しきい値以下であるか否かを判定する、ことを含み、
前記下限しきい値の初期値は、前記休風期間における前記ステーブ温度変動指数から抽出される、ことを特徴とする監視方法。
【請求項7】
高炉の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて複数のステーブ温度を、前記高炉の休風期間を含めて、一定の時間間隔毎に取得し、
前記複数のステーブ温度から、高炉の炉壁の所定の位置における温度の所定の時間間隔での変化量である複数の温度変化量を演算し、
前記複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算し、
前記ステーブ温度変動指数が所定の下限しきい値以下であるか否かを判定する、処理をコンピュータに実行させ、
前記下限しきい値の初期値は、前記休風期間における前記ステーブ温度変動指数から抽出される、ことを特徴とする監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の操業を監視する監視装置、監視方法及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産計画に沿った出銑の達成は、高炉操業の重要な目的の一つである。生産計画に沿った出銑に加えて、高炉内の熱分布の安定化、出銑コストの低減、消費エネルギの低減、出銑する溶銑の品質の安定化、溶銑に含まれるシリコン等の不純物の含有率の低減も高炉操業の重要な課題である。これらの課題を解決するためには、高炉を安定的に操業することが望まれる。
【0003】
高炉を安定的に操業するために、高炉の炉壁の周方向及び高さ方向により規定される2次元平面内における所定の時間でのステーブ温度変化量から標準偏差を用いて、高炉の安定性を判定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載される技術では、所定の時間間隔でのステーブ温度変化量に基づいて高炉の操業異常の有無を判定するため、気温が変化することでステーブクーラーの冷却配管に流れる冷却水の温度が変化した場合でも、精度よく高炉の操業異常の有無を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される技術では、高炉の操業異常の有無を判定するために使用される上限及び下限のしきい値である第1しきい値及び第2しきい値は、過去の高炉操業データを参照したオペレータが自らの経験に基づいて設定される。特許文献1に記載される技術では、第1しきい値及び第2しきい値は、オペレータの経験に基づいて設定されるため、適正な値ではなく、適正な値よりも高め又は低めの値に設定されるおそれがある。
【0006】
例えば、下限しきい値である第2しきい値が高めの値に設定されたとき、標準偏差が第2しきい値を下回ったことに応じて還元材が高炉に過剰に投入され、コークス比すなわち還元材比が増加して高炉の操業が不安定になるおそれがある。また、下限しきい値である第2しきい値が低めの値に設定されたとき、炉壁部不活性の検出が遅れるおそれがある。高炉の壁面に付着する付着物が生成及び成長の検出が遅れると、大きく成長した付着物が高炉の壁面から剥離し、高炉内の充填構造が乱れ、高炉内のガス流れが変動するおそれがある。高炉内のガス流れが変動すると、シャフト圧が変動する等の高炉操業が不安定となり、還元材比を大幅に増加させ、出銑コストが増加するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、還元材比の増加を抑制可能な監視装置、監視方法及び監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決する本発明は、以下の監視装置、監視方法及び監視プログラムを要旨とするものである。
(1)高炉の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて複数のステーブ温度を、高炉の休風期間を含めて、一定の時間間隔毎に取得するステーブ温度取得部と、
複数のステーブ温度から、高炉の炉壁の所定の位置における温度の所定の時間間隔での変化量である複数の温度変化量を演算する温度変化量演算部と、
複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算するステーブ温度変動指数演算部と、
ステーブ温度変動指数が所定の下限しきい値以下であるか否かを判定する判定部と、を有し、
下限しきい値の初期値は、休風期間におけるステーブ温度変動指数から抽出される、ことを特徴とする監視装置。
(2)下限しきい値の初期値は、休風期間において、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間におけるステーブ温度変動指数の最大値と推定される値である、(1)に記載の監視装置。
(3)下限しきい値の初期値は、休風期間を含む期間において演算されたステーブ温度変動指数の相対頻度が最大である第1極大値と、相対頻度が第1極大値に次ぐ大きさである第2極大値との間の最小値に対応するステーブ温度変動指数である、(2)に記載の監視装置。
(4)ステーブ温度変動指数に基づいて、炉壁部不活性が発生しているか否かを判定し、
炉壁部不活性が発生していると判定されたときに、炉壁部不活性領域における少なくとも休風期間を含む期間での前記ステーブ温度変動指数の最大値を下限しきい値に変更する下限しきい値変更部を更に有する(1)~(3)の何れか一つに記載の監視装置。
(5)下限しきい値変更部は、炉壁部不活性領域における休風期間でのステーブ温度変動指数の最大値を前記下限しきい値とする、(4)に記載の監視装置。
(6)高炉の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて複数のステーブ温度を、前記高炉の休風期間を含めて、一定の時間間隔毎に取得し、
複数のステーブ温度から、高炉の炉壁の所定の位置における温度の所定の時間間隔での変化量である複数の温度変化量を演算し、
複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算し、
ステーブ温度変動指数が所定の下限しきい値以下であるか否かを判定する、ことを含み、
下限しきい値の初期値は、前記休風期間における前記ステーブ温度変動指数から抽出される、ことを特徴とする監視方法。
(7)高炉の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて複数のステーブ温度を、高炉の休風期間を含めて、一定の時間間隔毎に取得し、
複数のステーブ温度から、高炉の炉壁の所定の位置における温度の所定の時間間隔での変化量である複数の温度変化量を演算し、
複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算し、
ステーブ温度変動指数が所定の下限しきい値以下であるか否かを判定する、処理をコンピュータに実行させ、
下限しきい値の初期値は、前記休風期間における前記ステーブ温度変動指数から抽出される、ことを特徴とする監視プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る監視装置、監視方法及び監視プログラム監視装置は、還元材比の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る監視装置を含む高炉操業システムを示す図である。
【
図2】
図1に示す監視装置が操業異常の有無を監視しながら高炉の操業を監視する監視処理のフローチャートである。
【
図3】(a)は
図1に示す温度変化量演算部によって演算される高炉の炉壁について周方向及び高さ方向により規定される2次元平面内における温度変化量の等値線の一例を示す図であり、(b)は
図1に示す温度変化量演算部によって温度変化量が推定される温度推定点の一例を示す図である。
【
図4】
図2に示すS106の処理で使用される下限しきい値の初期値を
図1に示す監視装置が決定する初期値決定処理のフローチャートである。
【
図5】(a)は初期値抽出期間の第1例を示す図であり、(b)は初期値抽出期間の第2例を示す図であり、(c)は初期値抽出期間の第3例を示す図である。
【
図6】S106に示す下限しきい値の初期値を決定する処理を説明するための図である。
【
図7】
図2に示すS106の処理で使用される下限しきい値を
図1に示す監視装置が変更する下限しきい値変更処理のフローチャートである。
【
図9】特許文献1に記載される技術における還元材の装入量と、本発明に係る技術における還元材の装入量との比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して、監視装置、監視方法及び監視プログラムについて説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されない。
【0012】
(実施形態に係る監視装置の概要)
実施形態に係る監視装置は、高炉の操業異常の有無を判定する下限しきい値として、高炉の休風期間における標準偏差から決定される値を使用することで、オペレータの経験に基づいて下限しきい値を設定するよりも適正な値で下限しきい値を設定できる。
【0013】
(実施形態に係る監視装置の構成及び機能)
図1は、第1実施形態に係る監視装置を含む高炉操業システムを示す図である。
【0014】
高炉操業システム100は、監視装置1と、高炉110の炉壁に全体に亘って配置される複数のステーブクーラのステーブ温度を検出する複数のステーブ温度センサ101とを有する。複数のステーブ温度センサ101は、監視装置1とLAN(Local Area Network)102を介して接続される。ステーブ温度センサ101は、1つのステーブクーラーに1つずつ配置されてもよく、1つのステーブクーラーに複数配置されてもよい。
【0015】
実施形態に係る監視装置1は、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、処理部20とを有する。通信部11、記憶部12、入力部13、出力部14及び処理部20は、バス15を介して互いに接続される。監視装置1は、高炉の操業異常の有無を判定するときに使用される下限しきい値を決定及び変更すると共に、演算されたステーブ温度変動指数が下限しきい値以下であるか否かを判定する監視制御装置である。
【0016】
通信部11は、イーサネット(登録商標)などの有線の通信インターフェース回路を有する。通信部11は、LAN102を介して複数のステーブ温度センサ101及び不図示の上位制御装置等と通信を行う。
【0017】
記憶部12は、例えば、半導体記憶装置、磁気テープ装置、磁気ディスク装置、又は光ディスク装置のうちの少なくとも一つを備える。記憶部12は、処理部20での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部12は、アプリケーションプログラムとして、高炉の操業を監視する監視処理を処理部20に実行させるための監視プログラムを記憶する。また、記憶部12は、監視処理で使用される下限しきい値の初期値を決定する初期値決定処理を処理部20に実行させるための初期値決定プログラムを記憶する。また、記憶部12は、監視処理で使用される下限しきい値を変更する下限しきい値変更処理を処理部20に実行させるための下限しきい値変更プログラムを記憶する。監視プログラム、初期値決定プログラム及び下限しきい値変更プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部12にインストールされてもよい。
【0018】
また、記憶部12は、監視処理で使用される種々のデータを記憶する。さらに、記憶部12は、所定の処理に係る一時的なデータを一時的に記憶してもよい。
【0019】
入力部13は、データの入力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネル、キーボード等である。不図示のオペレータは、入力部13を用いて、文字、数字、記号等を入力することができる。入力部13は、オペレータにより操作されると、その操作に対応する信号を生成する。そして、生成された信号は、オペレータの指示として、処理部20に供給される。
【0020】
出力部14は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。出力部14は、処理部20から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、出力部14は、紙などの表示媒体に、映像、画像又は文字等を印刷する出力装置であってもよい。
【0021】
処理部20は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部20は、監視装置1の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部20は、記憶部12に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部20は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0022】
処理部20は、ステーブ温度取得部21と、温度変化量演算部22と、ステーブ温度変動指数演算部23と、操業異常判定部24と、警報信号出力部25と、初期値決定部26と、下限しきい値変更部27とを有する。これらの各部は、処理部20が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして監視装置1に実装されてもよい。
【0023】
(実施形態に係る監視装置による監視処理)
図2は、監視装置1が高炉110の操業異常の有無を監視しながら高炉を操業する監視処理のフローチャートである。
図2に示す監視処理は、予め記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部20により監視装置1の各要素と協働して実行される。
【0024】
まず、ステーブ温度取得部21は、高炉110の炉壁に配置される複数のステーブクーラーについて、ステーブ温度センサ101からLAN102を介して複数のステーブ温度を取得する(S101)。複数のステーブ温度センサ101の配置されているステーブクーラーや、ステーブ温度センサ101の配置されていないステーブクーラーが存在する場合がある。ステーブクーラーとステーブ温度センサ101、及びステーブクーラーとステーブ温度は、それぞれ必ずしも一対一対応するものではない。ただし、1つのステーブクーラーに対し1つのステーブ温度センサが配置され1つのステーブ温度が取得される場合、複数のステーブ温度を対応するステーブクーラーの識別番号と関連付けて記憶部12に記憶することができる。ステーブ温度取得部21は、取得した複数のステーブ温度のそれぞれを、ステーブ温度センサ101の配置位置、又は、対応するステーブクーラーの識別番号と関連付けて、記憶部12に記憶する。ステーブ温度取得部21は一定の時間間隔毎にステーブ温度を取得し、時間間隔は、例えば、1秒、1分又は5分等であってもよい。
【0025】
次いで、温度変化量演算部22は、S101の処理で取得された複数のステーブ温度のそれぞれの所定の時間間隔での変化量を示す複数の温度変化量を演算する(S102)。まず、温度変化量演算部22は、S101の処理で取得された複数のステーブ温度のそれぞれについて、所定の時間間隔前の監視処理で取得したステーブ温度と、今回の監視処理で取得したステーブ温度との差から所定の時間間隔での温度変化量を演算する。温度変化量演算部22は、演算した温度変化量のそれぞれを、ステーブ温度センサ101の配置位置、又は、対応するステーブクーラーの識別番号と関連付けて、記憶部12に記憶する。なお、所定の時間間隔は一定とすることができ、ステーブ温度を取得する時間間隔と同一でも同一でなくともよく、例えば、1分間又は5分間であってもよい。また、温度変化量の算出に当たっては、例えば特開2002-317217号公報に開示されているようにステーブ温度の影響度を考慮する重み係数を任意に設定することができ、例えば忘却の強さを定義する忘却係数を用いて設定することができる。
【0026】
次いで、温度変化量演算部22は、高炉110の炉壁について周方向及び高さ方向により規定される2次元平面内における温度変化量の等値線を演算する。温度変化量演算部22は、S201の処理で演算されたステーブ温度変化量、及び演算されたステーブ温度変化量のそれぞれに対応するステーブ温度センサ101の配置位置から、2次元平面内における温度変化量の等値線を演算する。温度変化量演算部22は、例えば、特開2002-194405号公報及び特開2002-317217号公報等に記載される等値線探索手法によって等値線を演算することができる。
【0027】
図3(a)は、温度変化量演算部22によって演算される高炉110の炉壁について周方向及び高さ方向により規定される2次元平面内における温度変化量の等値線の一例を示す図である。
図3(a)において、横軸は高炉110の周方向を示し、縦軸は高炉110の高さ方向を示す。
【0028】
次いで、温度変化量演算部22は、高炉110の炉壁について周方向及び高さ方向により規定される2次元平面内に格子状に配置される複数の温度推定点における温度変化量を推定する。温度変化量は、例えば5分間等の所定の時間に変化した温度の変化量である。温度変化量演算部22は、演算された等値線と、温度推定点との間の位置関係から、温度推定点における温度変化量を推定する。温度変化量演算部22は、例えば、多項式補間、スプライン補間等の公知の内挿方法によって温度推定点における温度変化量を推定する。
【0029】
図3(b)は、温度変化量演算部22によって温度変化量が推定される温度推定点の一例を示す図である。
図3(b)において、横軸は高炉110の周方向を示し、縦軸は高炉110の高さ方向を示す。
図3(b)において、温度推定点は、高炉の周方向及び高さ方向にそれぞれ延伸する破線の交点に配置される白丸で示される。
図3(b)において、温度推定点は、12×7の格子状に配置される。
【0030】
次いで、ステーブ温度変動指数演算部23は、S102の処理で演算された複数の温度変化量の標準偏差であるステーブ温度変動指数を演算する(S103)。ステーブ温度変動指数演算部23は、演算したステーブ温度変動指数を記憶部12に記憶する。ステーブ温度変動指数演算部23は、ステーブ温度変動指数を演算する毎に、演算したステーブ温度変動指数を記憶部12に記憶してもよい。また、ステーブ温度変動指数演算部23は、一定期間に亘って演算したステーブ温度変動指数の平均値を記憶部12に記憶してもよい。例えば、ステーブ温度変動指数演算部23は、60分に亘って5分毎に演算したステーブ温度変動指数の平均値を、ステーブ温度変動指数として記憶部12に記憶してもよい。
【0031】
次いで、操業異常判定部24は、記憶部12に記憶されたステーブ温度変動指数が下限しきい値以下であるか否かを判定する(S104)。下限しきい値は、
図4~6を参照して説明される初期値決定処理及び下限しきい値変更処理が実行されることにより、決定及び変更され、記憶部12に記憶される。操業異常判定部24は、記憶部12に記憶されたステーブ温度変動指数が下限しきい値以下であると判定する(S104-YES)と、炉下部不活性となったことを示す操業異常フラグを記憶部12に記憶する(S105)。
【0032】
次いで、警報信号出力部25は、記憶部12に操業異常フラグが記憶されているか否かを判定する(S106)。警報信号出力部25は、記憶部12に第2操業異常フラグが記憶されていると判定する(S106-YES)と、高炉110の炉壁に付着した付着物の厚さが厚くなったことを示す警報信号を出力する(S107)。
【0033】
(実施形態に係る監視装置による初期値決定処理)
図4は、
図2に示すS106の処理で使用される下限しきい値の初期値を監視装置1が決定する初期値決定処理のフローチャートである。
図4に示す初期値決定処理は、予め記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部20により監視装置1の各要素と協働して実行される。S201~S203の処理は、S101~S103の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0034】
S203の処理に次いで、初期値決定部26は、下限しきい値の初期値を決定することを示す初期値決定指示が入力されたか否かを判定する(S204)。初期値決定部26は、オペレータにより入力部13を介して初期値決定指示が入力されたか否かを判定する。初期値決定部26によって初期値決定指示が入力されたと判定される(S204-YES)まで、S201~S204の処理が繰り返される。S201~S204の処理が繰り返されることにより、ステーブ温度変動指数が繰り返し演算され、演算されたステーブ温度変動指数が記憶部12に記憶される。
【0035】
初期値決定部26は、初期値決定指示が入力されたと判定する(S204-YES)と、高炉110が休風する期間である休風期間を少なくとも1回含む初期値抽出期間に演算されたステーブ温度変動指数を取得する(S205)。初期値決定部26は、オペレータによって入力部13を介して初期値抽出期間が入力されることに応じて、初期値抽出期間に演算されたステーブ温度変動指数を取得する。高炉110の休風期間は、羽口からの送風を停止してから、羽口からの送風を開始するまでの期間である。
【0036】
次いで、初期値決定部26は、初期値抽出期間に演算されたステーブ温度変動指数に基づいて、高炉110の操業異常の有無を判定するときに使用される下限しきい値の初期値を決定する(S206)。初期値決定部26は、休風期間において、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間におけるステーブ温度変動指数の最大値と推定される値を、下限しきい値の初期値に決定する。送風の影響を受けていないと推定される期間は、例えば変動指数が0.0005以下となる期間である。
【0037】
図5(a)は初期値抽出期間の第1例を示す図であり、
図5(b)は初期値抽出期間の第2例を示す図であり、
図5(c)は初期値抽出期間の第3例を示す図である。
図5(a)~5(c)において、横軸は時間を示し、縦軸はステーブ温度変動指数を示す。また、
図5(a)~5(c)において、双方向矢印Aは休風期間を示し、双方向矢印Bは複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間を示す。
【0038】
図5(a)に示す第1例では、休風期間は3時から24時までの21時間であり、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間は4時から24時までの20時間である。第1例では、複数のステーブクーラーは、休風期間が開始してから約2時間後と比較的早い時期から送風の影響を受けていない。複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間でのステーブ温度変動指数の最大値は、0.0005程度である。
【0039】
図5(b)に示す第2例では、休風期間は3時から24時までの21時間であり、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間は9時から24時までの15時間である。第2例では、複数のステーブクーラーは、休風期間が開始してから約9時間後と比較的遅い時期から送風の影響を受けなくなる。複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間でのステーブ温度変動指数の最大値は、0.0004程度である。
【0040】
図5(c)に示す第3例では、休風期間は6時から翌日の9時までの27時間であり、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間は9時から翌日の9時までの24時間である。第3例では、複数のステーブクーラーは、休風期間が開始してから約3時間後と比較的速い時期から送風の影響を受けなくなる。複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間でのステーブ温度変動指数の最大値は、0.0003程度である。
【0041】
休風期間が開始してから複数のステーブクーラーが送風の影響を受けなくなるまでの間の長さは、高炉110の炉況、ステーブクーラーの位置等により相違するため、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていない期間を推定することは、容易ではない。以下、初期値決定部26が、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていないと推定される期間におけるステーブ温度変動指数の最大値を推定する方法について説明する。
【0042】
初期値決定部26は、演算されたステーブ温度変動指数の相対頻度が最大である第1極大値と、相対頻度が第1極大値に次ぐ大きさである第2極大値との間の最小値に対応するステーブ温度変動指数を抽出する。初期値決定部26は、抽出したステーブ温度変動指数を、複数のステーブクーラーが送風の影響を受けていない期間におけるステーブ温度変動指数の最大値と推定し、下限しきい値の初期値に決定する。
【0043】
図6は、S206に示す下限しきい値の初期値を決定する処理を説明するための図である。
図6において、横軸はステーブ温度変動指数を対数表示で示し、縦軸は初期値抽出期間に検出されたステーブ温度から演算されるステーブ温度変動指数の数を正規化した相対頻度を示す。
【0044】
まず、初期値決定部26は、ステーブ温度変動指数の相対頻度が最大である第1極大値に対応するステーブ温度変動指数を抽出する。
図4に示す例では、
図6において矢印Cで示される「1.0」の相対頻度に対応する「0.0002」を抽出し、抽出したステーブ温度変動指数を第1極大値に対応するステーブ温度変動指数として記憶部12に記憶する。
【0045】
次いで、初期値決定部26は、ステーブ温度変動指数の相対頻度が第1極大値に次ぐ大きさである第2極大値に対応するステーブ温度変動指数を抽出する。
図4に示す例では、
図6において矢印Dで示される「0.8」の相対頻度に対応する「0.001」を抽出し、抽出したステーブ温度変動指数を最小値に対応するステーブ温度変動指数として記憶部12に記憶する。
【0046】
そして、初期値決定部26は、第1極大値と第2極大値との間の最小値に対応するステーブ温度変動指数を、下限しきい値の初期値に決定する。初期値決定部26は、第1極大値に対応するステーブ温度変動指数「0.0002」と第2極大値に対応するステーブ温度変動指数「0.001」との間で、相対頻度が最小となるステーブ温度変動指数「0.0035」を抽出する。初期値決定部26は、抽出した対頻度が最小となるステーブ温度変動指数「0.0035」を下限しきい値の初期値として記憶部12に記憶する。
【0047】
監視装置1は、
図6を参照して説明されるように、相対頻度が最大である第1極大値と、相対頻度が第1極大値に次ぐ大きさである第2極大値との間の最小値に対応するステーブ温度変動指数を、下限しきい値の初期値に決定する。第1極大値及び第2極大値の一方は休風期間のステーブ温度変動指数であり、第1極大値及び第2極大値の他方は休風期間のステーブ温度変動指数であると推定される。休風期間に移行するとき、ステーブ温度変動指数は、急激に低下するので、休風期間に移行する間のステーブ温度変動指数の相対頻度は、休風期間に移行する前、及び休風期間に移行した後のステーブ温度変動指数の相対頻度よりも小さくなる。休風期間に移行すると、ステーブクーラーの周囲のガスの流れが急激に停滞し、ステーブクーラーに流れる冷却水の温度変化量が小さくなるので、ステーブ温度変動指数は、休風期間に移行するときに急激に低下する。第1極大値と第2極大値との間の最小値に対応するステーブ温度変動指数を、下限しきい値の初期値に決定することで、送風の影響を受けていない期間におけるステーブ温度変動指数の最大値に近いステーブ温度変動指数を下限しきい値の初期値に決定できる。
【0048】
(実施形態に係る監視装置による下限しきい値変更処理)
図7は、
図2に示すS106の処理で使用される下限しきい値を監視装置1が変更する下限しきい値変更処理のフローチャートである。
図7に示す下限しきい値変更処理は、予め記憶部12に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部20により監視装置1の各要素と協働して実行される。
【0049】
監視装置1は、ステーブ温度変動指数と炉壁部不活性との相関性に基づいて、下限しきい値を変更する。炉壁部不活性は、高炉110の炉壁の近傍に配置されるステーブクーラーにガスが接触しなくなる状態である。炉壁部不活性が発生する原因は、ステーブクーラーと前面に位置する装入物との間に粉原料が侵入する現象、あるいは軟化した後に再固化した原料がステーブクーラーの前面に付着する現象等があげられる。また、炉壁部不活性が発生する原因となる現象が複合して発生して、強固な付着物がステーブクーラーの前面に生成して、炉壁部不活性が発生することがある。
【0050】
炉壁部不活性が発生すると、ステーブ温度が低下して、熱負荷が低下する。熱負荷は、ステーブクーラーの冷却配管を流れる冷却水の抜熱量であり、ステーブクーラーの冷却配管を流れる冷却水の温度上昇から算出される。炉壁部不活性が発生して、ステーブ温度が低下することに従って、ステーブ温度変化量が低下して、ステーブ温度変動指数が低下する。ステーブ温度変動指数の低下を精度良く検知することにより、炉壁部不活性の発生を精度良く検知することができる。
【0051】
S301~S303の処理は、S101~S103の処理と同様なので、ここでは詳細な説明は省略する。S303の処理に次いで、下限しきい値変更部27は、下限しきい値を変更することを示す下限しきい値変更指示が入力されたか否かを判定する(S304)。下限しきい値変更部27は、オペレータにより入力部13を介して下限しきい値変更指示が入力されたか否かを判定する。下限しきい値変更部27によって下限しきい値変更指示が入力されたと判定される(S304-YES)まで、S301~S304の処理が繰り返される。S301~S304の処理が繰り返されることにより、ステーブ温度変動指数が繰り返し演算され、演算されたステーブ温度変動指数が記憶部12に記憶される。
【0052】
下限しきい値変更部27は、下限しきい値変更指示が入力されたと判定する(S304-YES)と、高炉110の休風期間を少なくとも1回含む炉壁部不活性判定期間に演算されたステーブ温度変動指数を取得する(S305)。下限しきい値変更部27は、オペレータによって入力部13を介して炉壁部不活性判定期間が入力されることに応じて、炉壁部不活性判定期間に演算されたステーブ温度変動指数を取得する。
【0053】
次いで、下限しきい値変更部27は、S305の処理で取得されたステーブ温度変動指数に基づいて、炉壁部不活性が発生しているか否かを判定する(S306)。
【0054】
下限しきい値変更部27は、休風期間におけるステーブ温度変動指数と、休風期間外のステーブ温度変動指数とを比較して、炉壁部不活性が発生しているか否かを判定する。例えば、下限しきい値変更部27は、高炉110の何れかの領域において、休風期間外のステーブ温度変動指数の最大値のオーダが、休風期間におけるステーブ温度変動指数の最大値のオーダと同一であるとき、場合、炉壁部不活性が発生していると判定する。また、下限しきい値変更部27は、炉壁部不活性が発生していることを確認したオペレータによって入力部13を介して入力される情報に基づいて、炉壁部不活性が発生していると判定してもよい。
【0055】
下限しきい値変更部27によって、炉壁部不活性が発生していないと判定される(S306-NO)と、下限しきい値変更処理は終了する。
【0056】
下限しきい値変更部27は、炉壁部不活が性発生していると判定する(S306-YES)と、炉壁部不活性が発生している炉壁部不活性領域における少なくとも休風期間を含む最大値抽出期間でのステーブ温度変動指数の最大値を抽出する(S307)。
【0057】
図8は、S307の処理を説明するための図である。
図8において、横軸は時間を示し、縦軸はステーブ温度変動指数を示す。また、
図8において、双方向矢印Aは休風期間を示し、双方向矢印Eは最大値抽出期間を示す。
【0058】
図8に示す例では、休風期間は6時から翌日の9時までの27時間であり、最大値抽出期間は前日の18時から翌日の21時までの51時間である。
図8に示す例において、最大値抽出期間は、休風期間、並びに休風期間の開始前12時間及び休風期間終了後12時間である。本実施形態において、休風期間を少なくとも含めばよく、休風期間ではない期間(例えば、休風期間の開始前12時間および、休風期間終了後12時間)を含んでいてもよい。また、休風期間ではない期間として、休風期間の開始前12時間および、休風期間終了後12時間としたが、12時間に限られず、適宜設定してもよい。
【0059】
次いで、下限しきい値変更部27は、S307の処理で抽出されたステーブ温度変動指数の最大値が下限しきい値となるように、記憶部12に記憶された下限しきい値を変更して(S308)、下限しきい値変更処理は終了する。
【0060】
(実施形態に係る監視装置の作用効果)
監視装置1は、高炉110の休風期間におけるステーブ温度変動指数から下限しきい値の初期値を決定することで、適切な下限しきい値により炉下部不活性を早期に検出し、高炉110における操業異常の有無を判定することができる。炉下部不活性を早期に検出できないと、高炉101内のガスの流れが変動し、シャフト圧が変動して、高炉の操業が不安定となる。高炉の操業が不安定になるとコークスの使用量が増加し、還元材比が大幅に増加すると共に出銑コストが増加する。これに対し、高炉操業装置1では、炉壁部不活性を早期に検出することができるので、高炉101内のガスの流れの変動が抑制されて、シャフト圧の変動が抑制される。これによって、高炉の操業が安定化する。よって、監視装置1では、コークスの使用量を増やす必要がなく、還元材比の増加及び出銑コスト増加が抑制される。
【0061】
高炉110が休風する間、送風によるガスは、高炉110の炉内に吹き込まないため、高炉110の炉内の温度は基本的に変化せず、ステーブ温度の変化量は小さく、ステーブ温度変動指数はゼロに限りなく近づく。高炉110が休風する間、ステーブ温度変動指数は、高炉110の炉内の温度変化ではなく、ステーブクーラーの冷却配管を流れる冷却水の温度変化、及び高炉110の炉内に装入された装入物のわずかな移動等の影響により若干変動する。監視装置1は、高炉110の休風期間におけるステーブ温度変動指数から下限しきい値の初期値を決定することで、適切な下限しきい値を決定することができる。
【0062】
より具体的には、監視装置1は、休風期間において、高炉110が有する複数のステーブクーラーが羽口からの送風の影響を受けていないと推定される期間におけるステーブ温度変動指数の最大値と推定される値を、下限しきい値の初期値として使用する。羽口からの送風の影響を複数のステーブクーラーが受けていないと推定される期間におけるステーブ温度変動指数の最大値を下限しきい値の初期値として使用することで、送風の影響を受けていない期間の最大値を下限しきい値の初期値に設定できる。
【0063】
また、監視装置1は、炉壁部不活性領域における休風期間を含む期間でのステーブ温度変動指数の最大値を下限しきい値に変更することで、炉壁部不活性が発生した実測値に応じたステーブ温度変動指数を下限しきい値として使用できる。
【0064】
監視装置1は、送風の影響を受けていない期間の最大値を下限しきい値の初期値に設定することで、還元材比の低減等、より厳しい操業条件を追求しつつ操業安定を達成することができる。
【0065】
図9は、特許文献1に記載される技術における還元材の装入量と、本発明に係る技術における還元材の装入量との比率を示す図である。
【0066】
本発明に係る技術では、高炉110に装入される還元材の量を、特許文献1に記載される技術において高炉110に装入される還元材の量よりも5%程度低減できる。
【符号の説明】
【0067】
1 監視装置
21 ステーブ温度取得部
22 温度変化量演算部
23 ステーブ温度変動指数演算部
24 操業異常判定部
25 警報信号出力部
26 初期値決定部
27 下限しきい値変更部