(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039661
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】配管検査システム
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01M3/20 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146893
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】奥平 宏行
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067BB02
2G067BB03
2G067BB15
2G067CC16
2G067DD04
2G067DD10
2G067DD11
2G067EE08
2G067EE11
2G067EE13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】空気圧機器システムの配管において、配管の漏洩検査を実施した場合、着色剤が空気圧機器の内部に流入する。空気圧機器に着色剤が残留した状態であると、空気圧機器に腐食又は故障が発生する懸念がある。上述した課題を解決することを目的とする。
【解決手段】配管16の被検査部分32に対して、圧縮エアの漏洩検査を行う。配管検査システム30は、第1分岐管34と第2分岐管46とを有する。第1分岐管34は、被検査部分32よりも上流で配管16から分岐し、被検査部分32よりも上流で配管16に合流する。第2分岐管46は、被検査部分32よりも下流で配管16から分岐する。第1分岐管34には、被検査部分に蛍光溶剤44を供給する蛍光溶剤供給部40が設けられる。第2分岐管46には、被検査部分から蛍光溶剤を回収する蛍光溶剤回収部52が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアが流通する配管の被検査部分に圧縮エアの漏洩箇所が存在するか否かを検査する配管検査システムであって、
前記被検査部分の上流で前記配管から分岐し、且つ前記配管に合流する第1分岐管と、
前記第1分岐管に設けられて前記被検査部分に蛍光溶剤を供給する蛍光溶剤供給部と、
前記被検査部分の下流で前記配管から分岐する第2分岐管と、
前記第2分岐管に設けられて前記被検査部分から前記蛍光溶剤を回収する蛍光溶剤回収部と、
を備える配管検査システム。
【請求項2】
請求項1記載の配管検査システムにおいて、前記蛍光溶剤供給部は、蛍光溶剤をミスト化するミスト発生器を有し、ミストとなった蛍光溶剤を前記被検査部分に供給する配管検査システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配管検査システムにおいて、前記蛍光溶剤が、蛍光剤の水溶液又はエマルジョン水溶液である配管検査システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の配管検査システムにおいて、前記配管の、前記第1分岐管が分岐する箇所から合流する箇所までの間に設けられた第1弁と、前記第1分岐管の、前記蛍光溶剤供給部よりも上流に設けられた第2弁と、前記配管の、前記第2分岐管が分岐する箇所よりも下流に設けられた第3弁と、前記第2分岐管の、前記蛍光溶剤回収部よりも上流に設けられた第4弁とを備える配管検査システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の配管検査システムにおいて、前記第2分岐管の、前記蛍光溶剤回収部よりも下流に設けられ、大気に開放された排気部を備える配管検査システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の配管検査システムにおいて、前記被検査部分に紫外線を照射するブラックライトを備える配管検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮エアが流通する配管を検査する配管検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧シリンダ等の空気圧機器(以下、単に「機器」と表記することもある)は、圧縮エアが供給又は排出されることで動作する。従って、機器に接続された配管から圧縮エアが漏洩している場合、機器が正常に動作しない。これを回避するため、配管を介して圧縮エア供給源と機器とを接続した後、配管に対し、圧縮エアの漏洩箇所が存在するか否かを検査する。例えば、配管に石鹸水をスプレーする。圧縮エアが漏洩している場合、石鹸水が泡になる。検査員が泡を視認することにより、圧縮エアの漏洩箇所が特定される。しかしながら、この検査では、配管の全体にわたって石鹸水をスプレーする必要がある。従って、検査が煩雑である。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されるように、着色された検査ガスを用いることが考えられる。特許文献1記載の検査方法では、燃料電池から検査ガスの漏洩が起こるか否かを検査する。この場合、蛍光染料と油(オリーブオイル等)との混合液が着色剤として用いられている。混合液はミスト化され、圧縮エア又は水素ガスに伴われて燃料電池に供給される。燃料電池に対しては、光が照射される。この状態で、カメラによって燃料電池がモニタリングされる。
【0004】
燃料電池に圧縮エアの漏洩箇所が存在する場合、漏洩箇所からミストが噴出する。このとき、ミスト中の蛍光染料が光照射によって強調される。従って、カメラによって蛍光を撮影することが容易である。これにより、燃料電池から検査ガスの漏洩が起こっていると判断される。検査ガスが漏洩していることを視覚で確認できることから、この検査は可視化検査である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の検査システムには、配管から着色剤を除去する構成が設けられていない。従って、空気圧機器システムの配管において、この検査システムで配管の漏洩検査を実施した場合、着色剤が空気圧機器の内部に流入する。空気圧機器に着色剤が残留した状態であると、空気圧機器に腐食又は故障が発生する懸念がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、圧縮エアが流通する配管の被検査部分に圧縮エアの漏洩箇所が存在するか否かを検査する配管検査システムであって、
前記被検査部分の上流で前記配管から分岐し、且つ前記配管に合流する第1分岐管と、
前記第1分岐管に設けられて前記被検査部分に蛍光溶剤を供給する蛍光溶剤供給部と、
前記被検査部分の下流で前記配管から分岐する第2分岐管と、
前記第2分岐管に設けられて前記被検査部分から前記蛍光溶剤を回収する蛍光溶剤回収部と、
を備える配管検査システムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検査部分から蛍光が観察されるか否かに基づき、被検査部分に圧縮エアの漏洩箇所が存在するか否かを容易に判断することができる。このように、本発明においては、圧縮エアの漏洩があるか否かを容易且つ迅速に判断し得る。さらに、蛍光の起点を確認することで、圧縮エアの漏洩箇所を迅速に特定することも可能である。しかも、この判断を行うとき、検査員が特別の技術又は知識を有する必要がない。
【0010】
蛍光溶剤は、被検査部分を流通した後、蛍光溶剤回収部によって回収される。このため、配管の、被検査部分よりも下流に蛍光溶剤が流通することが回避される。すなわち、蛍光溶剤が、配管に接続された空気圧機器等に流入することが防止される。また、配管又は空気圧機器の内部に蛍光溶剤が滞留することも回避される。このため、蛍光溶剤に起因して空気圧機器が故障又は腐食する懸念が払拭される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、空気圧機器システムの模式回路図である。
【
図2】
図2は、空気圧シリンダの第2内室に圧縮エアを供給し、且つ空気圧シリンダの第1内室から圧縮エアを排出する状態を示した模式回路図である。
【
図3】
図3は、空気圧シリンダの第1内室に圧縮エアを供給し、且つ空気圧シリンダの第2内室から圧縮エアを排出する状態を示した模式回路図である。
【
図4】
図4は、配管の被検査部分から蛍光が発生している状態を示した模式説明図である。
【
図5】
図5は、1個の空気圧シリンダ(又は1個の管継手)から蛍光が発生している状態を示した模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明における文言「漏洩箇所」は、圧縮エアが漏洩する箇所を意味する。また、文言「上流」は、圧縮エアの流通方向における上流を表す。文言「下流」は、圧縮エアの流通方向における下流を表す。
【0013】
図1は、空気圧機器システム10の模式回路図である。空気圧機器システム10は、圧縮機12と、圧縮機12に接続された主配管14とを有する。圧縮機12は、大気を吸引して圧縮することで圧縮エアを生成する。
【0014】
主配管14に対しては、複数個の第1副配管16が接続される。1個の第1副配管16には、複数個(この場合、3個)の第2副配管18が接続される。個々の第2副配管18には、第1空気圧シリンダ20、第2空気圧シリンダ22及び第3空気圧シリンダ24がそれぞれ接続されている。第1~第3空気圧シリンダ20、22、24は、空気圧機器の1種である。圧縮機12で得られた圧縮エアは、主配管14、第1副配管16及び第2副配管18を流通する。圧縮エアは、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24に個別に供給される。第1~第3空気圧シリンダ20、22、24は、この圧縮エアを作動エアとして個別に動作する。
【0015】
第1副配管16には、配管検査システム30が組み込まれている。すなわち、配管検査システム30は、第1副配管16の被検査部分32に漏洩箇所があるか否かを検査するシステムである。
【0016】
配管検査システム30は、第1分岐管34を有する。第1分岐管34の上流は、被検査部分32の上流で第1副配管16から分岐する。第1分岐管34の下流は、第1副配管16に合流する。第1分岐管34と第1副配管16との合流箇所は、第1分岐管34の分岐箇所よりも下流であり、且つ被検査部分32よりも上流である。第1副配管16において、被検査部分32よりも上流には、第1弁36が設けられる。第1弁36は、第1副配管16の、第1分岐管34の分岐箇所から合流箇所までの間に位置する。
【0017】
第1分岐管34には、第2弁38が設けられる。第1弁36が開状態で且つ第2弁38が閉状態であるとき、圧縮エアは、第1副配管16を流通し且つ第1分岐管34には流通しない。これとは逆に、第1弁36が閉状態で且つ第2弁38が開状態であるとき、圧縮エアは、第1分岐管34を流通し且つ第1副配管16には流通しない。
【0018】
第1分岐管34において、第2弁38よりも下流には、第1蛍光溶剤供給部40が設けられる。第1蛍光溶剤供給部40は、第1ミスト発生器42を有する。第1ミスト発生器42の具体例としては、ルブリケータが挙げられる。ルブリケータは、潤滑油を収容する容器として公知である。又は、公知のバブラーを第1ミスト発生器42として用いることも可能である。
【0019】
第1ミスト発生器42内には、第1蛍光溶剤44が収容されている。本実施形態において、第1蛍光溶剤44は、蛍光剤を溶媒で希釈することで得られる。第1蛍光溶剤44の溶媒は、例えば、水である。この場合、第1蛍光溶剤44は蛍光剤の水溶液である。代替的に、油が添加された水を溶媒としてもよい。この場合、第1蛍光溶剤44は、蛍光剤のエマルジョン水溶液である。なお、蛍光剤の具体例としては、クマリン又はビタミンB2等が挙げられる。
【0020】
上記したように、第1分岐管34には圧縮エアが流通する。第1ミスト発生器42内で第1蛍光溶剤44に向かって圧縮エアが吐出されると、第1蛍光溶剤44がミスト化される。すなわち、第1蛍光溶剤44のミストが発生する。ミストは、圧縮エアに伴われて第1分岐管34を流通し、第1副配管16の被検査部分32に移動する。
【0021】
配管検査システム30は、第2分岐管46を有する。第2分岐管46の上流は、被検査部分32の下流で第1副配管16から分岐する。本実施形態では、第2分岐管46の下流は、第1副配管16に合流する。第2分岐管46と第1副配管16との合流箇所は、第2分岐管46の分岐箇所よりも下流であり、且つ被検査部分32よりも下流である。第1副配管16において、被検査部分32よりも下流には、第3弁48が設けられる。第3弁48は、第1副配管16の、第2分岐管46の分岐箇所から合流箇所までの間に位置する。
【0022】
第2分岐管46には、第4弁50が設けられる。第3弁48が開状態で且つ第4弁50が閉状態であるとき、圧縮エアは、第1副配管16を流通し且つ第2分岐管46には流通しない。これとは逆に、第3弁48が閉状態で且つ第4弁50が開状態であるとき、圧縮エアは、第2分岐管46を流通し且つ第1副配管16には流通しない。
【0023】
第2分岐管46において、第4弁50よりも下流には、第1蛍光溶剤回収部52が設けられる。第1蛍光溶剤回収部52は、第1フィルタ54を有する。第1フィルタ54は、圧縮エアに含まれた第1蛍光溶剤44(ミスト)を圧縮エアから除去する。従って、第1フィルタ54よりも下流には、ミストを含まない圧縮エアが流通する。
【0024】
第2分岐管46において、第1フィルタ54よりも下流では、第2分岐管46から第1排気管56(排気部)が分岐している。第1排気管56の末端には、第5弁58が設けられている。第5弁58の出口ポートは、第1サイレンサ60を介して大気に開放されている。
【0025】
第1~第5弁36、38、48、50、58は、例えば、自動開閉弁である。第1~第5弁36、38、48、50、58は、手動開閉弁であってもよい。
【0026】
配管検査システム30は、第1ブラックライト62を備える。第1ブラックライト62は、例えば、不図示の架台に支持される。架台には、不図示のキャスタが設けられている。従って、架台及び第1ブラックライト62は、キャスタが転動することによって移動することが可能である。第1ブラックライト62は、被検査部分32に対して接近又は離間する。
【0027】
第1ブラックライト62は、被検査部分32に紫外線を照射する。被検査部分32に漏洩箇所が存在し、該漏洩箇所から圧縮エアが漏洩しているときには、圧縮エアと、蛍光溶剤(ミスト)とが漏洩箇所から噴出する。紫外線が蛍光溶剤を照らすと、
図4に模式的に示すように、強調された蛍光Fが観察される。
【0028】
第1副配管16において、第2分岐管46の合流箇所よりも下流には、レギュレータ64が設けられる。第1副配管16において、レギュレータ64よりも下流には、機器検査システム70が組み込まれている。
【0029】
機器検査システム70は、圧縮エアの漏洩が生じている第1~第3空気圧シリンダ20、22、24又は管継手128、130が接続された第1副配管16を、複数個の第1副配管16の中から特定するシステムである。また、機器検査システム70は、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24又は管継手128、130のうちのいずれから圧縮エアが漏洩しているのかを特定するシステムでもある。
【0030】
機器検査システム70は、第1分枝管72を有する。第1分枝管72の上流は、第1副配管16から分岐する。第1分枝管72の下流は、第1副配管16に合流する。第1分枝管72と第1副配管16との合流箇所は、第1分枝管72の分岐箇所よりも下流であり、且つ第2副配管18よりも上流である。第1副配管16において、第1分枝管72の分岐箇所よりも下流には、第1電磁弁74が設けられる。
【0031】
第1分枝管72には、第2電磁弁76が設けられる。第1電磁弁74が開状態で且つ第2電磁弁76が閉状態であるとき、圧縮エアは、第1副配管16を流通し且つ第1分枝管72には流通しない。これとは逆に、第1電磁弁74が閉状態で且つ第2電磁弁76が開状態であるとき、圧縮エアは、第1分枝管72を流通し且つ第1副配管16には流通しない。
【0032】
第1分枝管72において、第2電磁弁76よりも下流には、第2蛍光溶剤供給部78が設けられる。第1蛍光溶剤供給部40と同様に、第2蛍光溶剤供給部78は第2ミスト発生器80を有する。第2ミスト発生器80の具体例としては、第1ミスト発生器42と同様にルブリケータ又はバブラーが挙げられる。
【0033】
第2ミスト発生器80内には、第2蛍光溶剤82が収容されている。本実施形態において、第2蛍光溶剤82は、上記したような蛍光剤を、溶媒で希釈することで得られる。第2蛍光溶剤82の溶媒は、例えば、揮発性の高い有機溶媒である。特に、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24内のシール材又はグリス等に対する溶解度が小さい有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒の好適な例は、アルコール類である。有機溶媒は、希釈されたアルコール類であってもよい。アルコール類の具体例としては、エタノールが挙げられる。この場合、第2蛍光溶剤82は、蛍光剤のエタノール溶液である。
【0034】
上記したように、第1分枝管72には圧縮エアが流通する。第2ミスト発生器80内で第2蛍光溶剤82に向かって圧縮エアが吐出されると、第2蛍光溶剤82がミスト化される。すなわち、第2蛍光溶剤82のミストが発生する。第2蛍光溶剤82のミストは、圧縮エアに伴われて第1分枝管72を流通し、第1副配管16に移動する。
【0035】
第1分枝管72には、第2排気管84が設けられる。第2排気管84には、第2蛍光溶剤回収部86が設けられる。第2蛍光溶剤回収部86は、第2フィルタ88を有する。第2フィルタ88は、圧縮エアに含まれた第2蛍光溶剤82(ミスト)を圧縮エアから除去する。従って、第2排気管84において、第2フィルタ88よりも下流には、ミストを含まない圧縮エアが流通する。
【0036】
第2排気管84の末端には、第6弁90が設けられている。第6弁90は、自動開閉弁又は手動開閉弁である。第6弁90の出口ポートは、第2サイレンサ92を介して大気に開放されている。
【0037】
機器検査システム70は、第2分枝管94を有する。第2分枝管94の上流は、第1副配管16から分岐する。第2分枝管94の下流は、第1副配管16に合流する。第2分枝管94と第1副配管16との合流箇所は、第2分枝管94の分岐箇所よりも下流であり、且つ第2副配管18よりも上流である。
【0038】
第2分枝管94には、第3電磁弁96と、デジタルフロースイッチ98とが設けられる。第3電磁弁96は、デジタルフロースイッチ98よりも上流に位置する。デジタルフロースイッチ98は、第2分枝管94を流通する圧縮エアの流量を測定する。すなわち、デジタルフロースイッチ98は流量測定器である。デジタルフロースイッチ98は、流量調整弁としても機能する。
【0039】
第1電磁弁74、第2電磁弁76及び第3電磁弁96は、弁制御装置100に電気的に接続されている。弁制御装置100は、第1電磁弁74、第2電磁弁76及び第3電磁弁96を制御して、第1電磁弁74、第2電磁弁76及び第3電磁弁96を開閉する。すなわち、第1電磁弁74、第2電磁弁76及び第3電磁弁96は、弁制御装置100によって自動的に開閉される。また、デジタルフロースイッチ98は、パーソナルコンピュータ(PC)102に電気的に接続されている。デジタルフロースイッチ98は、第2分枝管94を流通する圧縮エアが如何なる流量であるかを測定する。PC102は、測定された流量を記録する。すなわち、PC102は記憶装置である。
【0040】
図1では、1個の第1副配管16から3個の第2副配管18が分岐する場合を例示している。3個の第2副配管18には、第4電磁弁104、第5電磁弁106及び第6電磁弁108がそれぞれ設けられる。なお、第2副配管18の個数は3個に特に限定されない。電磁弁の個数は、典型的には第2副配管18の個数と同一である。
【0041】
図2に示すように、第4電磁弁104は、第1ポート110、第2ポート112、第3ポート114、第4ポート116及び第5ポート118を有する。第1ポート110には、第1排出管120が接続される。第2ポート112には、第2副配管18が接続される。第3ポート114には、第2排出管122が接続される。第4ポート116には、第1接続管124が接続される。第5ポート118には、第2接続管126が接続される。第1接続管124は、第1管継手128を介して第4電磁弁104と第1空気圧シリンダ20とを接続する。同様に、第2接続管126は、第2管継手130を介して第4電磁弁104と第1空気圧シリンダ20とを接続する。
【0042】
第1空気圧シリンダ20の内部には、第1内室140と第2内室142とが形成されている。圧縮エアは、第1接続管124を介して第1内室140に対して供給又は排気される。圧縮エアは、第2接続管126を介して第2内室142に対して供給又は排気される。
【0043】
図2には、第2内室142に圧縮エアを供給し、且つ第1内室140から圧縮エアを排出する場合を示している。このとき、第2副配管18を流通した圧縮エアは、第4電磁弁104内を第2ポート112から第5ポート118に移動する。圧縮エアは、その後、第5ポート118を介して第2接続管126を流通し、第2内室142に流入する。第2内室142内の圧縮エアは、矢印X方向に向かってピストン144を押圧する。その結果、ピストン144が
図2中の矢印X方向に移動する。
【0044】
その一方で、第1内室140内の圧縮エアがピストン144によって第1接続管124に押し出される。圧縮エアは、その後、第4電磁弁104内を第4ポート116から第1ポート110に移動する。さらに、圧縮エアは、第1ポート110を介して第1排出管120に排出される。以上の過程において、第3ポート114は閉状態である。
【0045】
図3に示すように、ピストン144を、X方向とは反対方向のY方向に移動させる場合、第1内室140に圧縮エアを供給し、且つ第2内室142から圧縮エアを排出する。このとき、第2副配管18を流通した圧縮エアは、第4電磁弁104内を第2ポート112から第4ポート116に移動する。圧縮エアは、その後、第4ポート116を介して第1接続管124を流通し、第1内室140に流入する。第1内室140内の圧縮エアは、矢印Y方向に向かってピストン144を押圧する。ピストン144は、
図3中の矢印Y方向に移動する。
【0046】
その一方で、第2内室142内の圧縮エアがピストン144によって第2接続管126に押し出される。圧縮エアは、その後、第4電磁弁104内を第5ポート118から第3ポート114に移動する。さらに、圧縮エアは、第3ポート114を介して第2排出管122に排出される。以上の過程において、第1ポート110は閉状態である。
【0047】
上記した構成及び動作については、第5電磁弁106と、該第5電磁弁106に接続された第2空気圧シリンダ22とにおいても同様である。従って、上記と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。第6電磁弁108と、該第6電磁弁108に接続された第3空気圧シリンダ24とに関しても同様に、上記と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0048】
全ての第1排出管120及び全ての第2排出管122は、1本の第3排気管150(排気部)に接続される。第3排気管150には、第3蛍光溶剤回収部152が設けられる。第3蛍光溶剤回収部152は、第3フィルタ154を有する。第3フィルタ154は、第1フィルタ54及び第2フィルタ88と同様に、圧縮エアに含まれた第2蛍光溶剤82(ミスト)を圧縮エアから除去する。従って、第3フィルタ154よりも下流には、ミストを含まない圧縮エアが流通する。第3排気管150の、第3フィルタ154よりも下流は、第3サイレンサ156を介して大気に開放されている。
【0049】
機器検査システム70は、第2ブラックライト158を備える。第2ブラックライト158は、例えば、不図示の架台に支持される。架台には、不図示のキャスタが設けられている。従って、架台及び第2ブラックライト158は、キャスタが転動することによって移動することが可能である。第2ブラックライト158は、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24に対して接近又は離間する。
【0050】
第2ブラックライト158は、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24及びその周辺に紫外線を照射する。第1~第3空気圧シリンダ20、22、24のいずれか、第1管継手128又は第2管継手130に漏洩箇所が存在するときには、
図5に模式的に示すように、該漏洩箇所から、圧縮エアと、蛍光溶剤(ミスト)とが噴出する。紫外線が蛍光溶剤を照らすと、強調された蛍光Fが観察される。
【0051】
図1では、理解を容易にするため、第1副配管16及び第2副配管18を、直線形状のシームレス管として示している。しかしながら、第1副配管16及び第2副配管18は、直線形状のシームレス管に限定されない。代替的に、第1副配管16及び第2副配管18は、所定角度で折曲されたシームレス管であってもよい。第1副配管16及び第2副配管18は、複数個のシームレス管が管継手を介して接続された連結管であってもよい。
【0052】
本実施形態において、配管検査システム30及び機器検査システム70を含む空気圧機器システム10は、基本的には以上のように構成される。次に、これら配管検査システム30及び機器検査システム70の作用効果について、漏洩検査方法との関係で説明する。漏洩検査方法は、以下に詳述する工程を有する。なお、漏洩検査方法には、配管及び機器の漏洩検査方法が含まれる。
【0053】
配管の漏洩検査と、空気圧機器(本実施形態では、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24)の漏洩検査とは、例えば、空気圧機器システム10の運転を開始する前に実施される。以下、この場合を例示して説明する。
【0054】
先ず、
図1に示す第1副配管16の被検査部分32に漏洩箇所が存在するか否かを検査する。具体的には、第1ブラックライト62から被検査部分32に紫外線を照射する。且つ、第1副配管16に設けられた第1弁36及び第3弁48を閉状態とする。この状態で、圧縮機12から主配管14に圧縮エアを供給する。圧縮エアは、複数個の第1副配管16の各々に分配される。第1弁36が閉止されているので、圧縮エアが、第1副配管16の、第1弁36よりも下流に流通することが防止される。
【0055】
次に、第2弁38及び第4弁50を開状態とする。なお、圧縮機12から主配管14に圧縮エアを供給するよりも前に、第2弁38及び第4弁50を開状態としてもよい。必要に応じ、第5弁58も開状態とする。
【0056】
第2弁38が開放されることにより、圧縮エアが第1分岐管34に流通する。圧縮エアは、第1ミスト発生器42内で第1蛍光溶剤44に向かって吐出される。その結果、第1蛍光溶剤44のミストが発生する。ミストは、圧縮エアに伴われて第1分岐管34を流通した後、第1副配管16の被検査部分32に流入する。
【0057】
従って、被検査部分32に、ミストを伴った圧縮エアが流通する。第3弁48が閉止され且つ第4弁50が開放されているので、ミストを伴った圧縮エアは、被検査部分32を流通した後、第2分岐管46に流入する。ここで、第1蛍光溶剤44の溶媒は、水又はエマルジョン水溶液等である。水又はエマルジョン水溶液の蒸気圧は、比較的低い。このため、第1副配管16、第1分岐管34、第2分岐管46、第1ミスト発生器42及び第1フィルタ54等を、ミストが蒸発したときの蒸気圧を考慮した耐圧構造とする必要は特にない。
【0058】
第2分岐管46には、第1蛍光溶剤回収部52が設けられている。第1蛍光溶剤回収部52は、第1フィルタ54を有する。圧縮エアに含まれたミスト(第1蛍光溶剤44)は、第1フィルタ54に捕集される。この捕集により、ミストが圧縮エアから除去される。ミストが除去された圧縮エアは、第1排気管56に流入する。第5弁58が開状態である場合、圧縮エアは、第5弁58から第1サイレンサ60を介して大気に放出される。
【0059】
これに対し、第5弁58が閉状態である場合、ミストが除去された圧縮エアは、第2分岐管46を介して第1副配管16に戻る。圧縮エアが第1副配管16に戻る箇所は、第1副配管16の、第3弁48よりも下流である。その後、圧縮エアは、機器検査システム70に供給される。圧縮エアからミストが除去されているので、溶媒である水が、第1電磁弁74~第6電磁弁108又は第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等に流入する懸念が払拭される。従って、第1電磁弁74~第6電磁弁108又は第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等に腐食が生じることが回避される。
【0060】
以上の圧縮エアの流通過程で、被検査部分32に漏洩箇所が存在していない場合、被検査部分32から蛍光が観察されることはない。なお、漏洩箇所は、例えば、穴、亀裂又は管継手の締め付け不足等であり得る。これに対し、被検査部分32に漏洩箇所が存在している場合、漏洩箇所から、圧縮エアとミスト(第1蛍光溶剤44)とが噴出する。ミストには蛍光剤が含まれている。蛍光剤に紫外線が照射されると、
図4に示すように、強調された蛍光Fが観察される。検査員は、蛍光Fが観察されたことに基づいて、圧縮エアが漏洩していることを認識することができる。
【0061】
図4の図示例では、蛍光Fは、一点から放射状に拡散している。蛍光Fの拡散の起点が、漏洩箇所である。このように、蛍光Fの拡散の起点を調べることで、漏洩箇所を短時間で容易に特定することができる。
【0062】
また、圧縮エアの漏洩量が微量であるときであっても、蛍光Fが観察される。従って、例えば、漏洩箇所が微細な穴である場合にも、検査員は、該漏洩箇所を見落とすことなく検出できる。しかも、漏洩箇所の有無を判断するに当たって、検査員が特別の知識等を有する必要はない。漏洩箇所を特定するときも同様に、検査員が特別の知識等を有する必要はない。
【0063】
さらに、検査員は、蛍光Fが発生したか否かに基づいて、漏洩箇所が存在するか否かを短時間で判断することができる。すなわち、検査員は、熟練の度合い、又は習得知識の度合い等に拘わらず、漏洩の有無を容易に判断することができる。検査員が漏洩箇所を特定することも容易である。
【0064】
次に、機器検査システム70によって、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(及び管継手128、130)に漏洩があるか否かを検査する。このためには第5弁58を閉じ、上記のようにして第1分岐管34、被検査部分32及び第2分岐管46を流通した圧縮エアを、レギュレータ64を介して第1~第3空気圧シリンダ20、22、24に供給する。この場合、配管(被検査部分32)の漏洩検査と、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(及び管継手128、130)の漏洩検査とを同時に実施することができる。
【0065】
又は、第1弁36及び第3弁48を開状態に切り替え、且つ第2弁38及び第4弁50を閉状態に切り替える。その結果、圧縮エアは、第1分岐管34及び第2分岐管46に流通することなく、第1副配管16のみを流通する。この圧縮エアが、レギュレータ64を通過して第1~第3空気圧シリンダ20、22、24に供給される。
【0066】
弁制御装置100は、第1~第3電磁弁74、76、96を制御して、第1電磁弁74及び第2電磁弁76を閉状態とし、且つ第3電磁弁96を開状態とする。その結果、レギュレータ64を通過した圧縮エアは、第2分枝管94のみに流入する。このように、機器の漏洩検査を行う場合、第1副配管16に代替して第2分枝管94に圧縮エアが流通される。デジタルフロースイッチ98は、第2分枝管94を流通する圧縮エアの流量を測定し、当該流量を情報信号に変換する。PC102は、情報信号を流量として記録する。PC102のディスプレイは、横軸を経過時間とし且つ縦軸を流量とするグラフを表示する。
【0067】
第2分枝管94を流通した圧縮エアは、複数個の第2副配管18の各々に流入する。圧縮エアは、第4電磁弁104、第5電磁弁106及び第6電磁弁108を経て、第2接続管126から第1~第3空気圧シリンダ20、22、24の第2内室142に導入される(
図2参照)。従って、ピストン144がX方向に向かって移動する。第1内室140内の圧縮エアは、第1接続管124を経て第4電磁弁104、第5電磁弁106及び第6電磁弁108を通過する。第1内室140内の圧縮エアは、第1排出管120を経た後、第3排気管150から第3サイレンサ156を介して大気に放出される。
【0068】
第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(及び管継手128、130)に漏洩箇所が存在しない場合、所定時間が経過してピストン144が前進端に到達すると、見掛け上、第2副配管18から第1~第3空気圧シリンダ20、22、24の各第2内室142への圧縮エアの流通が停止する。同時に、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24の各第1内室140から大気への圧縮エアの放出も、見掛け上停止する。このとき、第2分枝管94における圧縮エアの流量は0である。
【0069】
これに対し、例えば、第1空気圧シリンダ20に漏洩箇所が存在する場合、ピストン144が前進端に到達した後も、第2分枝管94から第1空気圧シリンダ20に向かって圧縮エアが流通する。第1空気圧シリンダ20に供給された圧縮エアは、漏洩箇所から大気に噴出する。従って、第2分枝管94から第1~第3空気圧シリンダ20、22、24に圧縮エアを供給開始してから所定時間が経過した後、第2分枝管94における圧縮エアの流量は、0よりも大きな値である。検査員は、デジタルフロースイッチ98の表示器、又はPC102のディスプレイの表示を確認することにより、第2分枝管94における圧縮エアの流量が0よりも大きいことを認識することができる。
【0070】
換言すれば、検査員は、第2分枝管94における圧縮エアの流量が0よりも大きいことに基づき、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)のいずれかに漏洩箇所が存在すると判断することができる。次に、検査員は、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)のいずれが漏洩しているのかを特定する作業を行う。
【0071】
具体的には、第1電磁弁74の閉状態を維持しつつ、検査員が弁制御装置100を操作して、第2電磁弁76を閉状態に切り替える。また、検査員が弁制御装置100を操作して、第3電磁弁96を開状態に切り替える。以上の操作により、圧縮エアが第1分枝管72のみに流通する。さらに、第2ブラックライト158から、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24の周辺に紫外線を照射する。
【0072】
第1分枝管72を流通する圧縮エアは、第2ミスト発生器80内で第2蛍光溶剤82に向かって吐出される。その結果、第2蛍光溶剤82のミストが発生する。ミストは、圧縮エアに伴われて第1分枝管72を流通した後、第1副配管16を経て、複数個の第2副配管18の各々に分配される。
【0073】
ミストを伴った圧縮エアは、その後、第4電磁弁104~第6電磁弁108をそれぞれ通過し、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24にそれぞれ供給される。好ましくは、先ず、第1内室140(又は第2内室142)に圧縮エアを供給し且つ第2内室142(又は第1内室140)から圧縮エアを排出する。所定時間が経過した後、圧縮エアの供給先を切り替える。すなわち、第2内室142(又は第1内室140)に圧縮エアを供給し且つ第1内室140(又は第2内室142)から圧縮エアを排出する。
【0074】
第1空気圧シリンダ20を例示して説明する。第2内室142に圧縮エアが供給されたとき、第1内室140内の圧縮エアは、第1接続管124、第4電磁弁104の第4ポート116、該第4電磁弁104の第1ポート110、第1排出管120、第3排気管150の順に流通する(
図2参照)。逆に、第1内室140に圧縮エアが供給されたとき、第2内室142内の圧縮エアは、第2接続管126、第4電磁弁104の第5ポート118、該第4電磁弁104の第3ポート114、第2排出管122、第3排気管150の順に流通する(
図3参照)。第2空気圧シリンダ22では、圧縮エアは、第4電磁弁104に代わって第5電磁弁106を通過する。第3空気圧シリンダ24では、圧縮エアは、第4電磁弁104に代わって第6電磁弁108を通過する。
【0075】
第3排気管150には、第3蛍光溶剤回収部152が設けられている。第3蛍光溶剤回収部152は、第3フィルタ154を有する。圧縮エアに含まれたミスト(第2蛍光溶剤82)は、第3フィルタ154に捕集される。この捕集により、ミストが圧縮エアから除去される。ミストが除去された圧縮エアは、第3サイレンサ156を介して第3排気管150から大気に放出される。
【0076】
例えば、第1空気圧シリンダ20のみに漏洩がある場合、上記の流通過程において、
図5に示すように、第1空気圧シリンダ20の漏洩箇所を起点として拡散する蛍光Fが観察される。これに対し、第2空気圧シリンダ22及び第3空気圧シリンダ24において蛍光Fが観察されることはない。従って、検査員は、第1空気圧シリンダ20にて蛍光Fが観察され、且つ第2空気圧シリンダ22及び第3空気圧シリンダ24にて蛍光Fが観察されないことに基づいて、圧縮エアの漏洩箇所が第1空気圧シリンダ20であると判断することができる。
【0077】
第1空気圧シリンダ20と第2接続管126とを接続する第2管継手130に漏洩がある場合を説明する。この場合、例えば、第1内室140に圧縮エアを供給し且つ第2内室142から圧縮エアを排出する最中に、第1空気圧シリンダ20の第2管継手130を起点として拡散する蛍光Fが観察される。これに対し、第2空気圧シリンダ22及び第3空気圧シリンダ24の各第2管継手130において蛍光Fが観察されることはない。検査員は、この観察結果に基づいて、圧縮エアの漏洩箇所が第1空気圧シリンダ20の第2管継手130であると判断することができる。
【0078】
このように、機器検査システム70によれば、先ず、複数個の第1副配管16のうちから、ミストを含む圧縮エアの漏洩が生じている第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)が接続された第1副配管16が特定される。この場合、漏洩が生じていると判断された第1~第3空気圧シリンダ20、22、24及びその周辺にのみ紫外線が照射される。次に、紫外線によって蛍光Fが強調されることに基づき、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)のうちから、漏洩が生じている空気圧シリンダ(又は管継手128、130)が特定される。
【0079】
上記した手順とすることにより、他の第1副配管16の第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)に対して紫外線を照射することが不要となる。ここで、「他の第1副配管16」とは、デジタルフロースイッチ98によって測定された流量が0である第1副配管16である。換言すれば、他の第1副配管16では、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)に漏洩が生じていないと判断される。すなわち、漏洩が生じていない第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)に、紫外線を照射する必要はない。このため、第2ブラックライト158の小型化を図ることができる。
【0080】
機器の漏洩検査においても、検査員の熟練の度合い又は習得知識の度合い等に拘わらず、検査員が、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24(又は管継手128、130)から圧縮エアが漏洩しているか否かを判断することが容易である。また、検査員は、漏洩箇所を容易に且つ短時間で特定することができる。
【0081】
第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等には、第2蛍光溶剤82のミストを含んだ圧縮エアが流通する。ここで、第2蛍光溶剤82の溶媒は、例えば、高揮発性の有機溶媒である。この場合、ミストが速やかに蒸発する。このため、第2副配管18、第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等の内部にミストが滞留することはほとんどない。従って、第2蛍光溶剤82のミストに起因して、第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等に故障又は腐食が生じることが回避される。
【0082】
また、ミストが速やかに蒸発するので、第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24内の潤滑剤(グリス等)がミストに溶出することもほとんどない。従って、第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24のシール又は動作性能等に影響が及ぶことが回避される。
【0083】
第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等の主な素材は金属材である。金属材は、有機溶媒に対して化学的に安定である。このため、第2蛍光溶剤82の溶媒が有機溶媒である場合、第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等に故障又は腐食が生じることが一層回避される。
【0084】
特に、金属材は、エタノール等のアルコール類に対して化学的に安定である。しかも、アルコール類は高揮発性である。従って、第2蛍光溶剤82の溶媒は、エタノール等のアルコール類であることが好ましい。
【0085】
また、第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等は、耐圧構造である。従って、ミストが蒸発したときであっても、第4電磁弁104~第6電磁弁108及び第1~第3空気圧シリンダ20、22、24等が蒸気圧によって変形する懸念はない。
【0086】
以上のようにして漏洩検査が終了した後、漏洩箇所が存在すると判断された被検査部分32又は機器が交換される。その後、漏洩が確認されなくなるまで、上記の漏洩検査が繰り返される。
【0087】
全ての漏洩検査が終了した後、第5弁58を開状態とする。これに伴い、ミスト及び圧縮エアが第1分枝管72から第2サイレンサ92を介して大気に放出される。従って、第1分枝管72にミストが滞留することが回避される。
【0088】
空気圧機器システム10を運転する場合、第1弁36、第3弁48及び第1電磁弁74を開状態とし、且つ第2弁38、第4弁50、第5弁58、第2電磁弁76及び第3電磁弁96を閉状態とする。これにより、圧縮機12を出発した圧縮エアが、主配管14を経て各々の第1副配管16に分配される。圧縮エアは、その後、各々の第2副配管18に分配され、第1~第3空気圧シリンダ20、22、24を動作させる作動エアとなる。このとき、第1分岐管34及び第1分枝管72を圧縮エアが流通することはない。従って、ミストが圧縮エアに伴われて流通することもない。
【0089】
上記したように、検査員は、蛍光Fが発生したか否かに基づいて、漏洩箇所が存在するか否かを短時間で判断することができる。従って、例えば、空気圧機器システム10の運転中に不測の事態によって圧縮エアの漏洩が生じたとき、空気圧機器システム10の運転を停止して、配管又は機器の漏洩検査を短時間で終了することができる。換言すれば、空気圧機器システム10を長時間にわたって停止する必要はない。従って、空気圧機器システム10を早期に復旧させることが可能である。
【0090】
以上説明したように、本実施形態は、圧縮エアが流通する配管(16)の被検査部分(32)に圧縮エアの漏洩箇所が存在するか否かを検査する配管検査システム(30)であって、
前記被検査部分の上流で前記配管から分岐し、且つ前記配管に合流する第1分岐管(34)と、
前記第1分岐管に設けられて前記被検査部分に蛍光溶剤(44)を供給する蛍光溶剤供給部(40)と、
前記被検査部分の下流で前記配管から分岐する第2分岐管(46)と、
前記第2分岐管に設けられて前記被検査部分から前記蛍光溶剤を回収する蛍光溶剤回収部(52)と、
を備える配管検査システムを開示する。
【0091】
この場合、被検査部分から蛍光が観察されるか否かに基づき、被検査部分に漏洩箇所が存在するか否か等を容易且つ迅速に判断することができる。しかも、検査員がこの判断を行うとき、特別の技術又は知識は不要である。
【0092】
また、蛍光溶剤は、被検査部分を流通した後、蛍光溶剤回収部によって回収される。このため、配管の、被検査部分よりも下流に蛍光溶剤が流通することが回避される。すなわち、蛍光溶剤が、配管の末端に接続された空気圧機器等に流入することが防止される。また、配管又は空気圧機器の内部に蛍光溶剤が滞留することも回避される。このため、蛍光溶剤に起因して空気圧機器が故障又は腐食する懸念が払拭される。
【0093】
本実施形態は、前記蛍光溶剤供給部が、蛍光溶剤をミスト化するミスト発生器(42)を有し、ミストとなった蛍光溶剤を前記被検査部分に供給する配管検査システムを開示する。
【0094】
ミストは、液滴に比べて容易に拡散する。従って、圧縮エアにミストを伴わせることで、ミスト(蛍光溶剤)を被検査部分に到達させることが容易である。また、被検査部分からミスト(蛍光溶剤)を流出させることも容易である。
【0095】
本実施形態は、前記蛍光溶剤が、蛍光剤の水溶液又はエマルジョン水溶液である配管検査システムを開示する。
【0096】
水又はエマルジョン水の蒸気圧は、比較的低い。従って、配管の内部でミストが蒸発することは容易ではない。従って、配管検査システムを、ミストの蒸気圧を考慮した耐圧構造とする必要は特にない。このため、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0097】
本実施形態は、前記配管の、前記第1分岐管が分岐する箇所から合流する箇所までの間に設けられた第1弁(36)と、前記第1分岐管の、前記蛍光溶剤供給部よりも上流に設けられた第2弁(38)と、前記配管の、前記第2分岐管が分岐する箇所よりも下流に設けられた第3弁(48)と、前記第2分岐管の、前記蛍光溶剤回収部よりも上流に設けられた第4弁(50)とを備える配管検査システムを開示する。
【0098】
この構成では、第1弁~第4弁の開閉を個別に切り替えることができる。この切り替えにより、被検査部分に流通する流体を、ミストを含まない圧縮エア、又はミストを伴った圧縮エアのいずれかに選択的に切り替えることができる。すなわち、被検査部分に流通する流体の切替えが容易である。
【0099】
本実施形態は、前記第2分岐管の、前記蛍光溶剤回収部よりも下流に設けられ、大気に開放された排気部(56)を備える配管検査システムを開示する。
【0100】
圧縮エアに伴われた蛍光溶剤は、蛍光溶剤回収部によって圧縮エアから分離される。従って、蛍光溶剤回収部よりも下流には、蛍光溶剤が除去された圧縮エアが流通する。しかしながら、不測の事態により、蛍光溶剤回収部での蛍光溶剤の除去が不十分となることが想定される。上記の構成によれば、このような状況において、圧縮エアを大気に放出することが可能である。このため、配管の末端に接続された空気圧機器等に蛍光溶剤が流入することを回避することができる。
【0101】
本実施形態は、前記被検査部分に紫外線を照射するブラックライト(62)を備える配管検査システムを開示する。
【0102】
配管に漏洩があるときには、漏洩箇所から、ミストを伴った圧縮エアが噴出する。紫外線を照射する場合、紫外線によって蛍光が強調される。従って、圧縮エアの漏洩箇所を容易に特定することができる。
【0103】
工場において、配管は相当の長尺物である。特許文献1に記載される構成を配管の漏洩検査に適用した場合、配管の全体にわたって光源及びカメラを配置しなければならない。このため、数十台の光源及びカメラが必要となる。その結果、設備投資が高騰する。
【0104】
これに対し、本実施形態によれば、ブラックライトは、被検査部分に対して紫外線を照射可能な大きさで十分である。このため、設備投資の低廉化を図ることができる。
【0105】
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【0106】
例えば、配管からの圧縮エアの漏洩検査のみを行う場合、第5弁58から第1サイレンサ60を介して圧縮エアを大気に放出することも可能である。これに対し、機器からの圧縮エアの漏洩検査のみを行う場合、第1弁36及び第3弁48を開状態とし、且つ第2弁38、第4弁50及び第5弁58を閉状態として、圧縮エアを第1分枝管72に供給する。
【0107】
このことから理解されるように、配管の漏洩検査と、機器の漏洩検査とを個別に実施することも可能である。また、配管検査システム30を機器検査システム70と同時に空気圧機器システム10に組み込む必要は特にない。すなわち、配管検査システム30のみを空気圧機器システム10に組み込んでもよい。
【0108】
空気圧機器は、空気圧シリンダに特に限定されない。空気圧機器の他の具体例としては、空気圧チャック又は空気圧アクチュエータ等が挙げられる。
【符号の説明】
【0109】
10…空気圧機器システム 12…圧縮機
14…主配管 16…第1副配管
18…第2副配管 20、22、24…空気圧シリンダ
30…配管検査システム 32…被検査部分
34…第1分岐管 36…第1弁
38…第2弁 40…第1蛍光溶剤供給部
42…第1ミスト発生器 44…第1蛍光溶剤
46…第2分岐管 48…第3弁
50…第4弁 52…第1蛍光溶剤回収部
54…第1フィルタ 56…第1排気管
58…第5弁 62…第1ブラックライト
70…機器検査システム 72…第1分枝管
74…第1電磁弁 76…第2電磁弁
78…第2蛍光溶剤供給部 80…第2ミスト発生器
82…第2蛍光溶剤 84…第2排気管
86…第2蛍光溶剤回収部 88…第2フィルタ
90…第6弁 94…第2分枝管
96…第3電磁弁 98…デジタルフロースイッチ
100…弁制御装置 102…パーソナルコンピュータ
104、106、108…電磁弁 128、130…管継手
144…ピストン 150…第3排気管
152…第3蛍光溶剤回収部 154…第3フィルタ
158…第2ブラックライト F…蛍光