(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039663
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】スラグ流の発生装置
(51)【国際特許分類】
B01F 25/40 20220101AFI20230314BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20230314BHJP
【FI】
B01F5/00 D
B01F3/08 Z
B01F5/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146897
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】515358023
【氏名又は名称】マックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小谷 研太朗
(72)【発明者】
【氏名】小谷 功
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AC01
4G035AC26
4G035AE13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液体を混合する装置から排出される流路内においてスラグ流を形成する装置を提供する。
【解決手段】第1の液体を流通させる第1流路と第2の液体を流通させる第2流路とを有する第1部材11aと、第1流路から排出された第1の液体と第2流路から排出された第2の液体とを混合するスリット孔121aを有する第2部材12aと、スリット孔で混合された第1及び第2の液体を装置外に排出する第3流路131aを備える第3部材13aとを備え、第1流路及び第2流路は、本流路と、本流路から交差する方向に延びる複数の支流路113a、116aとを備えており、第1流路の支流路と第2流路の支流路とは、第1部材上では連通することなく、交互に配置される構成であり、スリット孔は、第1流路の支流路と第2流路の支流路とをスリット孔を介して連通させるように配置され、第3流路は、内径が徐々に小さくなるテーパー部を備えるスラグ流発生装置。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体を流通させる少なくとも1本以上の第1流路と第2の液体を流通させる少なくとも1本以上の第2流路とを有する第1部材と、
第1流路から排出された第1の液体と第2流路から排出された第2の液体とを混合する少なくとも1本以上のスリット孔を有する第2部材と、
スリット孔で混合された第1の液体と第2の液体とを装置外に排出する第3流路を備える第3部材と、を備える装置であり、
第1流路及び第2流路は、一方向に延びる本流路と、本流路から分岐し、一方向に交差する方向に延びる複数の支流路とを備えており、
第1流路の支流路と第2流路の支流路とは、第1部材上では連通することなく、前記一方向に対して交互に配置される構成であり、
第2部材のスリット孔は、交互に配置された第1流路の支流路と第2流路の支流路とをスリット孔を介して連通させるように、前記一の方向に沿うように配置される構成であり、
第3部材の第3流路は、内径が徐々に小さくなるテーパー部を備え、テーパー部の内径が大きな部分が上流に配置され、テーパー部の内径が小さな部分が下流に配置される形状であるスラグ流の発生装置。
【請求項2】
第3部材には、テーパー部に連通する孔から構成される排出用の流路の接続部を備える請求項1に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項3】
テーパー部の上流の端部における内径は、スリット孔を包含する大きさである請求項1又は2に記載のスラグ流の発生装置。
【請求項4】
第1流路、及び第2流路は、第1部材を貫通する孔であり、
第1部材に接面するように配置される第4部材によって、第1流路、及び第2流路を流通する液体の漏出が防止される構成とした請求項1ないし3のいずれかに記載のスラグ流の発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラグ流の発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下から上に向かって順に、ベースプレート、分配プレート、合流プレート、及びトッププレートを積層して構成される混合装置が記載されている。
図4に示されているように、ベースプレートには、2つの貫通孔が設けられている。
図7に示されているように、一方の貫通孔からはA系統の液体が供給され、他方の貫通孔からはB系統の液体が供給される。A系統の液体と、B系統の液体は、分配プレートに設けられた櫛歯形の複数の支流路に流入して、合流プレートに設けられた複数のスリット溝において合流する。この際にA系統の液体と、B系統の液体とが混合される。スリット溝において混合された液体は、トッププレートに設けられた貯留部と出口流路を介して、装置の外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の装置は、櫛歯型の流路と、スリット溝とを利用して、A系統の液体とB系統の液体を混合するものであり、液体を効率よく混合することができる優れた装置である。
【0005】
複数の液体を混合する際には、スラグ流が利用される。スラグ流は、液体を搬送する流路内を、親水性の液体からなるスラグと疎水性の液体とからなるスラグとが交互に流れる。スラグ内には循環流が形成されるとされており、これによってスラグ内で液体の混合効率が上昇する利点がある。また、循環流によりスラグを構成する液体の界面において物質の移動が促進されて反応効率が上昇する利点がある。また、スラグのサイズは小さいため、スラグ流を回収すると、短時間で親水性の液と疎水性の液に分離するという利点がある。
【0006】
特許文献1の装置は、櫛歯型の複数の流路とスリット溝とを利用することによって、効率よく流体を混合できる。本発明者らが検討したところ、特許文献1の装置では、櫛歯型の流路と、スリットとを利用して混合し、その後、トッププレートに設けた出口流路に連結した流路から液体を排出する際に、スラグ流が形成されにくかった。貯留部は、断面形状が扁平であり、上側から見ると複数の細幅かつ長方形の流路が左右に延びる形状である。当該貯留部と出口流路とは、出口経路よりも径の小さい円筒状の孔により連通する。前記円筒状の孔と前記貯留部とが接続する部分は、ほぼ直角に折れ曲がる形状となっている。この形状により、スラグ流が形成されにくくなったものと推測される。
【0007】
本発明は、本流路と本流路から分岐する複数の支流路と、スリット孔とを利用して、液体を混合する装置において、装置から排出される混合液を搬送する流路内において、スラグ流が形成されやすい装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の液体を流通させる少なくとも1本以上の第1流路と第2の液体を流通させる少なくとも1本以上の第2流路とを有する第1部材と、第1流路から排出された第1の液体と第2流路から排出された第2の液体とを混合する少なくとも1本以上のスリット孔を有する第2部材と、スリット孔で混合された第1の液体と第2の液体とを装置外に排出する第3流路を備える第3部材と、を備える装置であり、第1流路及び第2流路は、一方向に延びる本流路と、本流路から分岐し、一方向に交差する方向に延びる複数の支流路とを備えており、第1流路の支流路と第2流路の支流路とは、第1部材上では連通することなく、前記一方向に対して交互に配置される構成であり、第2部材のスリット孔は、交互に配置された第1流路の支流路と第2流路の支流路とをスリット孔を介して連通させるように、前記一の方向に沿うように配置される構成であり、第3部材の第3流路は、内径が徐々に小さくなるテーパー部を備える略円錐状の空間を備えており、テーパー部の内径が大きな部分が上流に配置され、テーパー部の内径が小さな部分が下流に配置される形状であるスラグ流の発生装置により、上記の課題を解決する。
【0009】
本発明者らが検討したところ、第3部材の第3流路の形状を、内径が徐々に小さくなるテーパー部を備える略円錐状の空間とし、テーパー部の内径が大きな部分が上流に配置され、テーパー部の内径が小さな部分が下流に配置される形状とすることにより、第3部材に接続される混合液を排出するための流路内において、スラグ流が極めて発生しやすくなることを発見した。
【0010】
上記のスラグ流の発生装置において、第3部材は、テーパー部に連通する孔から構成される排出用の流路の接続部を備える構成とすることが好ましい。
【0011】
上記のスラグ流の発生装置において、テーパー部の上流の端部における内径は、スリット孔を包含する大きさとすることが好ましい。このようにすることにより、スリット孔から流出した混合液の流れがテーパー部の端部により妨げられず、よりスラグ流が形成されやすくなる。
【0012】
上記のスラグ流の発生装置において、第1流路、及び第2流路は、第1部材を貫通する孔であり、第1部材に接面するように配置される第4部材によって、第1流路、及び第2流路を流通する液体の漏出が防止される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本流路と本流路から分岐する複数の支流路と、スリット孔とを利用して、液体を混合する装置において、装置から排出される混合液を搬送する流路内において、スラグ流を形成させる装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係るスラグ流の発生装置を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係るスラグ流の発生装置を構成する第1部材の平面図である。
【
図3】
図2において二点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【
図4】
図2において二点鎖線で囲んだ部分の裏面を示す底面図である。
【
図5】第1実施形態に係るスラグ流の発生装置を構成する第2部材の平面図である。
【
図6】
図5において二点鎖線で囲んだ部分の拡大図である。
【
図7】第1実施形態に係るスラグ流の発生装置の平面図である。
【
図8】
図3のAA部でスラグ流の発生装置を切断した断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るスラグ流の発生装置において、
図3に対応する図面であり、第1部材の構成を示す拡大平面図である。
【
図10】第2実施形態に係るスラグ流の発生装置において、
図6に対応する図面であり、第2部材の構成を示す拡大平面図である。
【
図11】第3実施形態に係るスラグ流の発生装置の断面を示す図である。
【
図12】第4実施形態に係るスラグ流の発生装置において、
図4に対応する図面であり、第2部材の構成を示す拡大平面図である。
【
図13】比較例1に係るスラグ流の発生装置の断面を示す図である。
【
図14】第1実施形態のスラグ流発生装置を使用して形成されたスラグ流を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のスラグ流の発生装置の実施形態について説明する。以下に示す各実施形態は、本発明の限られた例に過ぎず、本発明の技術的範囲は例示した実施形態に限定されるものではない。
【0016】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るスラグ流の発生装置1aを、
図1ないし
図8に示す。本実施形態のスラグ流の発生装置1aは、第1の液体を流通させる1本の第1流路111aと第2の液体を流通させる2本の第2流路114aとを有する第1部材11aと、第1流路111aから排出された第1の液体と第2流路114aから排出された第2の液体とを混合する2本のスリット孔121aとを有する第2部材12aと、スリット孔121aで混合された第1の液体と第2の液体とを装置外に排出する第3流路131aを備える第3部材13aと、を備える。スラグ流の発生装置1aでは、第2流路114aの本数は、第1流路111aの本数に1を加えた本数とされる。
【0017】
第1流路111aは、
図2及び
図3に示したように、一方向に延びる本流路112aと、本流路112aから分岐し、一方向に交差する方向に延びる複数の支流路113aとを備える。同様に、第2流路114aは、一方向に延びる本流路115aと、本流路115aから分岐し、一方向に交差する方向に延びる複数の支流路116aとを備える。第1流路111aの支流路113aの長さは、本流路112aの長さに比して短い形状である。同様に、第2流路114aの支流路116aの長さは、本流路115aの長さに比して短い形状である。第1流路111aの本流路112aと第2流路114aの本流路115aとは、長手方向に延在する部分が、互いに対向するように、平行に配置される。第1流路111aの支流路113aと第2流路114aの支流路116aとは、第1部材11a上では連通することなく、前記一方向に対して交互に配置される構成である。
【0018】
第1流路111aの本流路112a、第1流路111aの支流路113a、第2流路114aの本流路115a、及び第2流路114aの支流路116aは、それぞれ、第1部材11aを貫通するスリット状の孔から構成される。第1流路111aの本流路112aの基端部には、第1部材11aを貫通する円形の孔117aと、第1部材11aの一方の面に設けられた凹穴118aとが配される。凹穴118aと円形の孔117aと本流路112aと支流路113aとは、連通している。凹穴118aの一端部は、円形の孔117aと連通する。凹穴118aの他端部は円弧状の形状とされている。凹穴118aと円形の孔117aには、本流路112aに流入する前の液体が一時的に溜める第1の液溜81aを構成する。この液溜により、液圧の変化や流量の変化が、緩和されて、本流路内における液圧や流量が変化しにくくなっている。
【0019】
同様に、第2流路114aの本流路115aの基端部には、第1部材11aを貫通する円形の孔119aと、第1部材11aの一方の面に設けられた凹穴120aとが配される。円形の孔119aと凹穴120aとによって、第2の液溜82aが構成される。凹穴120aと円形の孔119aと本流路116aと支流路115aとは、連通している。
【0020】
第1の液溜81aと第2の液溜82aとは、互いに対向するように、第1部材11aに配置される。第1の液溜81aから延びる第1流路111aの本流路112aと、第2の液溜82aから延びる第2流路114aの本流路115aとは、互いに交差せず、また連通もせず、互いの長辺が向かい合うように配置される。第1流路111aは、その長辺の両側に支流路113aを設けている。第2流路114aは、その長辺の一方にのみ支流路116aを設けている。片側のみに支流路を設けた本流路については、本流路の容積が、以下のようになるようにしている。「片側のみに支流路を設けた本流路1本の容積=両側に支流路を設けた本流路1本の容積×片側にのみ支流路を設けた本流路1本における支流路の総数÷両側に支流路を設けた本流路1本における支流路の総数」。
図3の例では、片側のみに支流路116aを設けた本流路115aの容積は、両側に支流路113aを設けた本流路112aの容積の1/2にしている。このように構成することで、第1流路111aと第2流路114aとから供給される液の混合比の調節と計算とが容易になるようにしている。
【0021】
第2部材12aには、
図5ないし
図8に示したように、第2部材12aを貫通するようにスリット孔121aが設けられる。スリット孔121aは、
図3及び
図4において一点鎖線でスリット孔121aを示したように、交互に配置された第1流路111aの支流路113aと第2流路114aの支流路116aとをスリット孔121aを介して連通させるように、前記一の方向に沿うように配置される。スリット孔121aの本数は、以下のようにすることが好ましい。すなわち、第1流路111a(本流路112a)の一方の長辺から対向する本流路115aに向かって分岐する支流路113aの群と、前記第1流路111a(本流路112a)に対して対向する第2流路114a(本流路115a)の一方の長辺から前記本流路112aに向かって分岐する支流路116aの群とを1組の支流路としたときに、スリット12aの本数は、支流路の組数と同数以上にすることが好ましい。
図3の例では、一点鎖線で示されるスリットの本数は2であり、支流路の組数も2である。スリット孔121aの長さは、
図3に示したように、1組の支流路が設けられる領域の長さと同等以上とされている。この構成によれば、全ての支流路から流出する液体をスリット孔に円滑に流入させて、スラグ流を形成することができる。スリット孔121aの幅方向の長さは、対向する本流路112a及び115aの間隔よりも小さく構成し、スリット孔121aと本流路112a及び115aとが連通しないように構成されている。
【0022】
第3部材13aは、
図7及び
図8に示したように、内径が徐々に小さくなるテーパー部132aを有する略円錐状の空間を有する第3流路131aを備える。テーパー部132aは、テーパー部132aの内径が大きな部分は上流に配置され、テーパー部132aの内径が小さな部分は下流に配置される形状である。具体的には、後述する比較的に小径の貫通孔を除いた形状は、円錐台形状とされる。後述するように、スラグ流の発生装置1aに導入された液体は、スリット孔121aから排出され、テーパー部132aへと流入する。
図8の例では、第3部材13aの下端部に配されたテーパー部132aの開口部133aが上流に位置し、テーパー部132aの上端部に配された液体の排出用の開口部134aが下流に位置する。テーパー部132aは、表面に凹凸のない円滑な傾斜面で構成される。
【0023】
図8に示したように、テーパー部132aの上流の端部における開口部133aの内径は、スリット孔121aを全て包含する大きさとされる。テーパー部132aは、円筒状の貫通孔135aに連通しており、貫通孔135aは、円筒形の貫通孔からなる排出用の流路97の接続部136aに連通する。貫通孔135aは、テーパー部132aの下流部と同一の内径を有する形状である。
【0024】
テーパー部132aを有する略円錐状の空間は、貫通孔136aよりも内径が比較的に小さい円筒状の貫通孔135aにより連通する。テーパー部132aを有する略円錐状の空間は、内面に角がなく、スリット孔121aから流出した混合液において乱流を生じさせにくい。これにより、液体の排出用の流路97において、スラグ流が生じやすくなる。また、テーパー部132aを有する略円錐状の空間と、比較的に内径が小さい円筒状の貫通孔135aとの角度の変化は、テーパー部132aの斜辺により、比較的に小さくなるように、抑えられている。これによって、乱流がより生じにくくなり、液体の排出用の流路97において、スラグ流がより生じやすくなる。なお、貫通孔135aの内径は、スリット孔121aの長手方向の長さよりも小さい。
【0025】
液体の排出用の流路97の端部には、フェラルと呼ばれる弾性樹脂で構成された貫通孔を有するシーリング部92と、螺子部931と摘み部932とを有し、貫通孔を備える操作部93とが嵌められている。シーリング部92は、下流に向かって外径が小さくなる第1テーパー部を有する形状である。操作部93は、シーリング部92よりも下流側に配置され、貫通孔の下端部の内面には下流に向かって外径が小さくなる第2テーパー部を備える。前記摘み部932は、螺子部931よりも径の大きな円筒状の部分として構成される。
【0026】
前記接続部136aは、円筒の内面に螺子溝が設けられた構成である。ユーザーは、前記操作部93の摘み部932を手指で摘まみ、螺子部931を前記接続部136aの螺子溝に螺合させる。前記操作部93の第2テーパー部が、前記シーリング部92の第1テーパー部に接面して、操作部93が下降する方向に加わる力を、前記流路97を径方向に向かって内側に締め付ける力に変換する。これにより、排出用の流路97をテーパー部132aに連通させ、かつ液密な状態で、排出用の流路97の端部を第3部材13aに対して固定する。
【0027】
排出用の流路97は、流路の内面が疎水性又は親水性のものを使用することができる。例えば、PTFE、PFAなどのフッ素樹脂などを含む可撓性の素材、ガラスなどの硬質の素材で構成された管を使用することができる。排出用の流路は、硬質の素材で構成してもよいが、可撓性を有する素材で構成すれば、装置1aの取り回しがよくなるので好ましい。
【0028】
本実施形態のスラグ流の発生装置1aは、第1の液体を流通させる第4流路141aと、第2の液体を流通させる第5流路142aとを有する第4部材14aを備える。第4流路141aは、第1部材11aに設けられた第1流路111aと連通する。第5流路142aは、第1部材11aに設けられた第2流路114aと連通する。第4部材14aには、第4流路141aと連通する注入用の流路の接続部143aと、第5流路142aと連通する注入用の流路の接続部144aとが設けられている。前記接続部143a及び144aには、注入用の流路が接続される。接続部143a及び144aは、円筒形状の孔から構成され、内周面に螺子溝が配される形状である。注入用の流路の末端に設けられた螺子部を、前記螺子溝に螺合させることで、注入用の流路を接続する。前記操作部93と同様の構成により、注入用の流路を接続してもよい。注入用の流路には、シリンジポンプなどの小型のポンプにより、混合又は化学反応を生じさせるべき所望の液体が供給される。
【0029】
第4流路141a、及び第5流路142aは、第4部材14aの側面と第4部材14aの上面に開口部が設けられており、側面の開口部と上面の開口部とを連結する屈曲した部分を有する形状である。第4部材14aの側面から液体をスラグ流の発生装置1aの内部に注入する構成となっている。このため、第4部材14aの底面が、例えば、実験台に接するようにスラグ流の発生装置1aを実験台に置いた状態で、スラグ流の発生装置1aを使用することができる。
【0030】
本実施形態のスラグ流の発生装置1aでは、上記の第1部材11aの上に、第2部材12aが第1部材11aに接するように積層される。第2部材12aの上に、第3部材13aが第2部材に接するように積層される。上記の第1部材11aの下には、第4部材14aが第1部材11aと接するように積層される。これにより、第5流路142aと第2流路114aとが連通し、第4流路141aと第1流路111aとが連通し、第1流路111aと第2流路114aとスリット孔121aとが連通し、スリット孔121aと第3流路131aとが連通する。
【0031】
第1部材11a、第2部材12a、第3部材13a、及び第4部材14aは、
図1に示したように、それぞれの部材に設けられた貫通孔に雄螺子91を挿通して、雄螺子91と第4部材14aに設けられた雌螺子とを螺合することにより、積層された状態で固定される。
図1の例では、各部材を重ね合わせる際に、各部材の位置を定めやすくするために、位置決め用の棒状の部材102が複数本設けられている。当該部材102は、第1部材11a、第2部材12a、第3部材13a、及び第4部材14aに設けられた貫通孔又は凹穴に挿通される。
【0032】
第4部材14aと第1部材11aとの間、第1部材11aと第2部材12aとの間、第2部材12aと第3部材13aとの間には、それぞれ、環状の弾性材から構成されるシール材が配される。第4部材14aと第1部材11aとの間に配されるシール材94は、第4流路141a、第5流路142a、第1流路111a、貫通孔117a、凹穴118a、第2流路114a、貫通孔119a、及び凹穴120a、それぞれの開口部の全てを、その円周内に包含するように配置される。第1部材11aと第2部材12aとの間に配されるシール材95は、スリット孔121a、第1流路111a、貫通孔117a、第2流路114a、及び貫通孔119a、それぞれの開口部の全てを、その円周内に包含するように配置される。第2部材12aと第3部材13aとの間に配されるシール材96は、スリット孔121a、及び第3流路131aの開口部133a、それぞれの開口部の全てを、その円周内に包含するように配置される。このようにすることにより、スリット孔121aから流出した混合液の流れがテーパー部132aの端部の角によって妨げられず、液密な状態で、よりスラグ流が形成されやすくなる。第4部材14aの上面、第1部材11aの上面、及び第3部材13aの下面には、各シール材を納める凹溝が形成されている。
【0033】
本実施形態のスラグ流の発生装置1aでは、第4流路141aに流入した第1の液体は、第1流路111aの本流路112a及び複数の支流路113aを経て、スリット孔121aから流出する。第5流路142aに流入した第2の液体は、第2流路114aの本流路115a及び複数の支流路116aを経て、スリット孔121aから流出する。第1流路111aの支流路113aと第2流路114aの支流路116aとは、スリット孔121aが延びる一の方向に交互に配置されている。詳細な機構は不明であるが、第1流路111aの支流路113aからスリット孔121aに第1の液体が流出し、第2流路114aの支流路116aからスリット孔121aに第2の液体が流出する過程で、スラグ流が形成されると推測される。第3の流路131aの内部は、テーパー面となっているため、形成されるスラグ流が破壊されることなく、そのまま、排出用の流路へと流入すると推測される。
【0034】
上述の通り、スラグ流においては、スラグ内に循環流が形成される。このため、第1の液体内、又は第2の液体内に所望の物質を複数添加しておけば、スラグ内で複数の物質を効率よく混合することができる。また、上述の通り、スラグ流においては、スラグを構成する液体の界面において物質の移動が促進される。例えば、第1の液体及び第2の液体のうち一方の液体に含まれる物質を、他方の液体に効率的に移動させることができる。これを利用して、所望の物質を抽出することができる。
【0035】
[第2実施系体]
第2実施形態に係るスラグ流の発生装置1bは、
図9及び
図10に示したように、第1部材の構成と、第2部材の構成とが、第1実施形態に係るスラグ流の発生装置1aとは、異なる。その他の点では、第2実施形態に係るスラグ流の発生装置1bの構成は、第1実施形態に係るスラグ流の発生装置1aの構成と同様である。第1実施形態に係る装置と、第2実施形態に係る装置とで共通する構成については、図面において同じ符号を使用する(後述する第3実施形態、比較例1についても同様である)。
【0036】
図9に示したように、本実施形態の第1部材11bは、計2本の第1流路111bと、計3本の第2流路114bとを備える。そして、第1の液溜81bには、2本の第1流路111bの基端部が連通する。第2の液溜82bには、3本の第2流路114bの基端部が連通する。第1の液溜81b、及び第2の液溜bの構成は、第1実施形態に係るスラグ流の発生装置1aの第1の液溜81a、及び第2の液溜82aの構成と、基本的に同様の構成であり、
図9に記載の通り、円形の孔117b及び119bの数と、凹穴118b及び120bの容量が異なる。
【0037】
第2部材12bは、
図10に示したように、スリット孔121bの本数が4本である。
図9に示したように、支流路116bの組数も4である。なお、支流路113b、116bの本数は、本流路112b、115b一本につき、4本である。
【0038】
本実施形態の装置では、第1流路111b、第2流路114b、及びスリット孔121bの長さが、第1実施形態の装置に比して、長く構成されている。テーパー部132aを有する略円錐状の空間内に、スリット孔121bは包含される。スリット孔121bによって、スリット孔121bから流出した混合液は、排出用の流路97に導かれるため、乱流が生じにくく、スラグ流が発生しやすい状態とされる。
【0039】
第1流路、又は第2流路の本数は、特に限定されず、単位時間当たり流路を流れる液量、すなわち流量に応じて、適宜定めることができる。支流路の数も、特に限定されず、求められる流量に応じて、適宜定めることができる。
【0040】
上記の実施形態に係るスラグ流の発生装置1a、1bでは、第1部材、第2部材、第3部材、及び第4部材は、四角のうちの一つが斜めに角取された、直方体として構成される。そのうち、第1部材11a及び第2部材については、厚みの薄い板状である。角取部97を設けることによって、第1部材11a、第2部材、第3部材、及び第4部材14を積層する際に、表裏面の取り違えや嵌め間違いを防ぐことができる。
【0041】
上記の実施形態に係るスラグ流の発生装置1a、1bでは、第1部材11a、11bに設けられる第1流路111a、111bと第2流路114a、114bと、第2部材12a、12bに設けられたスリット孔121a、121bとを貫通孔で構成している。そして、第4部材14aを第1部材11aの下面に積層することで、第4部材14aの上面が第1部材11aの下面に接した状態となり、第1流路111a、111bと第2流路114a、114bから液体が漏出しないように閉じた構成としている。このような構成では、第1流路111a、111bと、第2流路114a、114bと、スリット孔121a、121bとを、例えば、ワイヤを利用した放電加工により、成形することができる。このような加工方法によれば、第1流路、第2流路、及びスリット孔の寸法を微細化して、スラグ流の発生装置を小規模化することができる。
【0042】
[第3実施形態]
上記の実施形態に係るスラグ流の発生装置1a、1bは、
図11に示したように、第4部材14aを備えるが、第4部材14aは省略し、第3部材に設けられた第1流路111a及び111bと、第2流路114a及び114bとを、スリット状の貫通孔ではなく、底部を有する凹溝としたスラグ流の発生装置1cとしてもよい。すなわち、本流路と支流路113c及び116cを、底部を有する凹溝とすることにより、第3部材から装置内に注入した液が漏れ出すことがなくなる。これにより、スラグ流の発生装置を構成する部材の数を減らして、スラグ流の発生装置1cの組み立て又は分解を簡素化することができるし、軽量化を図ることができる。
【0043】
[第4実施形態]
第4実施形態に係るスラグ流の発生装置1dは、第1部材の構成のみが、第2実施形態に係るスラグ流の発生装置1bとは、異なる。その他の点では、第4実施形態に係るスラグ流の発生装置1dの構成は、第2実施形態に係るスラグ流の発生装置1bの構成と同様である。第4実施形態に係る装置と、第2実施形態に係る装置とで共通する構成については、図面において同じ符号を使用する
【0044】
第4実施形態に係るスラグ流の発生装置1dは、
図12に示したように、第1流路111d(本流路112d)の片側に一方向に沿って、複数本の支流路112aを一組にして配置した構成である。同様に、第2流路114d(本流路115d)の片側に一方向に沿って、複数本の支流路116dを一組にして配置した構成である。対向する本流路112d及び116dにおいて、一組の支流路113dと一組の支流路116dとが、前記一方向に沿って交互に配置される。「第1流路の支流路と第2流路の支流路とは、第1部材上では連通することなく、前記一方向に対して交互に配置される構成」には、一組の支流路と対向する本流路から分岐する一組の支流路とが、前記一方向に沿って交互に配置される構成が含まれるものとする。
【0045】
[変形例]
【0046】
第1部材、第2部材、第3部材、又は第4部材は、直方体状に限定されず、円柱状、立方体状など任意の形状にすることができる。
【0047】
第1部材、又は第2部材は、厚みの薄い板状に限定されず、反応時間、滞留時間を長くとる目的で、厚みを大きく構成してもよい。
【0048】
図8に示したように、テーパー部の傾斜角度θは、2~45°とすることが好ましく、2~10°とすることがより好ましく、2~6°とすることがさらに好ましい。上記の傾斜角度θは、円筒形の貫通孔の円筒内面から延在する鉛直線を基準とする。
【0049】
第1部材、第2部材、第3部材、及び第4部材は、装置内に流入させる液体に応じて、構成素材を適宜変更することができる。例えば、耐食性に優れた金属、合成樹脂、ガラス、セラミクスなどで構成することができる。そのような金属としては、ハステロイ(登録商標)の名で知られるニッケル合金、ステンレス鋼などが挙げられる。
【実施例0050】
以下、本発明の実施例を挙げて、具体的に説明する。以下に示す実施例は、一例にすぎず、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
上記のスラグ流の発生装置1aの使用例について、以下、説明する。以下の使用例では、上記の第1実施形態に係るスラグ流の発生装置1aを使用して、第4流路141aから疎水性の液体としてドデカンを供給し、第5流路142aから親水性の液体として水を供給する。なお、第4流路141aから親水性の液体を供給し、第5流路142aから疎水性の液体を供給するように変更してもよい。
【0052】
注入用の流路の接続部143aに接続されたシリンジポンプとPTFE製のチューブを介して、第4流路141aにドデカン液を供給した。注入用の流路の接続部144aに接続されたシリンジポンプとEFFE製のチューブを介して、第5流路142aに水を供給した。ドデカン液と水との混合比率は1:1である。第4流路に流入したドデカン液は第1流路111aの本流路112a及び支流路113aを経てスリット孔121aへと流出する。第5流路142aに流入した水は第2流路114aの本流路115a及び支流路116aを経てスリット孔121aへ流出する。スリット孔121aで、水とドデカン液とは混合されて、テーパー部132aを経て、排出用の流路の接続部136aに固定された、PTFE製のチューブ(流路97)へと流入する。PTFEのチューブの端部は、三角フラスコの口に差し込まれており、混合液は三角フラスコ内に排出される。
【0053】
図14に示したように、実施例1のスラグ流の発生装置1aによれば、スラグ流の発生装置1aに接続された排出用のチューブにおいて、水とドデカン液とによるスラグ流が形成されていることが確認された。
【0054】
[比較例1]
比較のために、
図13に示した構成を有するスラグ流の発生装置1eを使用して、水とドデカン液とを混合する実験を行った。比較例1に係るスラグ流の発生装置1dは、
図13の断面図に示したように、第3部材13eの構成のみが上記の第1実施形態に係るスラグ流の発生装置1aとは異なる。第1実施形態に係るスラグ流の発生装置1aでは、スリット孔121aから流出した混合液は、テーパー部132aを有する第3流路131aに流入する構成としたが、比較例1に係るスラグ流の発生装置1eでは、スリット孔121aから流出した混合液は、貯留部132eに流入し、貯留部132eと円筒形の貫通孔135eとを連結する比較的に小径の円筒状の孔を経て、円筒形の貫通孔135eに連通する排出用の流路の接続部136aに接続された、PTFE製のチューブを経て三角フラスコ内へ排出される。貯留部132eは、非円錐状であり、断面形状が扁平であり、上側から見ると複数の細幅かつ方形の流路が左右に延びる形状である。貯留部132dと前記小径の円筒状の孔とがなす角度は、90°に近い形状である。なお、比較例1のスラグ流の発生装置1eの構成は、上記の点を除いて、第1実施形態に係るスラグ流の発生装置と同様である。
【0055】
比較例1のスラグ流の発生装置1dでは、スラグ流の発生装置1dに接続された排出用のチューブにおいて、スラグ流が形成されにくかった。すなわち、スラグ流の油滴と水滴との間隔があいたり、油滴と水滴の間隔が不均一になったり、油滴と水滴との界面が不明瞭になったりすることがあった。
【0056】
以上のように、本発明のスラグ流の発生装置は、スラグ流の形成に適した装置であることがわかる。