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特開2023-39667角パイプの接合構造とそれを用いた搬送容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039667
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】角パイプの接合構造とそれを用いた搬送容器
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20230314BHJP
   B65D 19/08 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F16B7/04 301H
B65D19/08
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146902
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【テーマコード(参考)】
3E063
3J039
【Fターム(参考)】
3E063AA07
3E063BA01
3E063BB01
3E063CA08
3E063CB04
3E063CC06
3E063CD11
3E063EE03
3J039AA08
3J039BB02
3J039GA01
(57)【要約】
【課題】互いに直交するように配置された2本の角パイプ同士を容易に、かつ、両者の位置関係を正確に維持したまま連結することが可能であって、しかも、トラックなどで運搬する際に積載率が低下したり、他の搬送容器や内部に収納される製品の表面に傷をつけたりするおそれのない角パイプの接合構造とそれを用いた搬送容器を提供する。
【解決手段】本発明の搬送容器は、水平方向及び鉛直方向と平行に配置された複数本の第1の角パイプ1、10、12及び第2の角パイプ6、13によって組まれたフレーム14を有している。フレーム14では、第1の角パイプ1、10、12の第2の側板の外面が第2の角パイプ6、13の第3の側板及び第4の側板の外面よりも突出した部分が存在しない構造となっている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するように配置された金属製の2本の角パイプ同士を連結してなる角パイプの接合構造であって、
2本の前記角パイプは、
平行に配置された一対の第1の側板の少なくとも一方に対し、端面から長手方向と平行に設けられた第1の切れ込み及び切除部分によって固定部が形成されるとともに、前記固定部の基端において前記第1の側板に垂直な一対の第2の側板の一方に接続されている側へ向かって前記固定部から前記長手方向と垂直に設けられた第2の切れ込みによって係止部が形成された第1の角パイプと、
平面視矩形をなす第1の開口部が第3の側板に設けられた第2の角パイプと、からなり、
前記第1の切れ込み及び前記切除部分は、前記端面からの前記長手方向に平行な方向の長さが等しく、
一対の前記第2の側板の他方は、その長手方向と平行な方向へ端面が前記固定部の前記基端よりも前記第1の側板の板厚以上には前記係止部側へ突出しないように形成されており、
前記第1の開口部に係る前記矩形は、前記第3の側板の長手方向に平行な第1の辺と、この第1の辺に垂直な一対の第2の辺と、を有し、
前記第1の開口部は前記係止部を嵌挿可能に、前記第1の辺の長さが一対の前記第1の側板の外面間の距離よりも長く、一対の前記第2の辺の長さから前記第3の側板に垂直な第4の側板の板厚を引いた長さは前記係止部の前記第1の側板の前記長手方向に平行な長さよりも長く、かつ、一対の前記第2の辺が前記第4の側板の外面に達するように形成されており、
前記第2の切れ込みは、前記第4の側板を内部に嵌挿配置可能に、前記第2の角パイプの前記第4の側板の前記板厚よりも幅が広いことを特徴とする角パイプの接合構造。
【請求項2】
前記第1の側板は、前記固定部を前記第1の側板の前記外面側へ折り曲げる際に谷折り線となる位置に形成された切れ込み又は貫通孔を有していることを特徴とする請求項1に記載の角パイプの接合構造。
【請求項3】
互いに直交するように配置された2本の角パイプ同士を連結してなる角パイプの接合構造であって、
2本の前記角パイプは、
平行に配置された一対の第1の側板の少なくとも一方において一部が外側へ直角に曲折されるようにして端部に形成された固定部と、この固定部の基端において前記第1の側板に垂直な一対の第2の側板の一方に接続されている側へ向かって前記固定部から前記第1の側板の長手方向と垂直に設けられた第2の切れ込みによって係止部が形成された第1の角パイプと、
平面視矩形をなす第1の開口部が第3の側板に設けられた第2の角パイプと、からなり、
一対の前記第2の側板の他方は、その長手方向と平行な方向へ端面が前記固定部の前記基端よりも前記第1の側板の板厚以上には前記係止部側へ突出しないように形成されており、
前記第1の開口部に係る前記矩形は、前記第3の側板の長手方向に平行な第1の辺と、この第1の辺に垂直な一対の第2の辺と、を有し、
前記第1の開口部は前記係止部を嵌挿可能に、前記第1の辺の長さが一対の前記第1の側板の外面間の距離よりも長く、一対の前記第2の辺の長さから前記第3の側板に垂直な第4の側板の板厚を引いた長さは前記係止部の前記第1の側板の前記長手方向に平行な長さよりも長く、かつ、一対の前記第2の辺が前記第4の側板の外面に達するように形成されており、
前記第2の切れ込みは、前記第4の側板を内部に嵌挿配置可能に、前記第2の角パイプの前記第4の側板の前記板厚よりも幅が広いことを特徴とする角パイプの接合構造。
【請求項4】
前記第2の角パイプは、前記第4の側板に平面視矩形をなす第2の開口部が設けられ、
前記第2の開口部に係る前記矩形は、前記第4の側板の長手方向に平行な第3の辺と、この第3の辺に垂直な一対の第4の辺と、を有し、
前記第2の開口部は前記係止部を嵌挿可能に、前記第3の辺の長さが一対の前記第1の側板の前記外面間の距離よりも長く、一対の前記第4の辺の長さが前記係止部の前記第1の側板の前記長手方向に垂直な長さから前記第2の切れ込みの長さを引いた長さと等しく、かつ、前記第4の辺が前記第3の側板に達するように形成されるとともに、一対の前記第4の辺が前記第1の開口部における一対の前記第2の辺とそれぞれ同一平面を形成していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の角パイプの接合構造。
【請求項5】
前記第1の角パイプの前記固定部にボルト挿通孔が設けられるとともに、内周面に雌ネジが形成されたボルト孔が前記第2の角パイプの前記第4の側板に設けられ、
前記第4の側板を平面視した場合に、前記第3の側板の外面から前記ボルト孔の中心までの前記第3の側板に垂直な距離は、前記係止部に近い側の前記第2の側板の外面から前記ボルト挿通孔の中心までの前記第2の側板に垂直な距離に等しく、一対の前記第4の辺のうち前記ボルト孔に近い側の辺から前記ボルト孔の中心までの前記第3の側板及び前記第4の側板に平行な距離は、前記固定部の前記基端から前記ボルト挿通孔の中心までの前記固定部の外面及び前記第2の側板に平行な距離に等しいことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の角パイプの接合構造。
【請求項6】
前記ボルト挿通孔は、両端が円弧状をなす長孔であって、前記第1の側板の前記長手方向と平行に細長く形成されていることを特徴とする請求項5に記載の角パイプの接合構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の角パイプの接合構造を備え、複数本の前記第1の角パイプ及び前記第2の角パイプによって組まれたフレームを有することを特徴とする搬送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の角パイプによって組まれたフレームを有する搬送容器に係り、特に、フレームの組み立てや分解が容易な角パイプの接合構造とそれを用いた搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品などのように剛性の高い重量物を客先等に納入する場合、複数本の棒状体からなるフレームを備えた金属製の搬送容器が用いられることがある。図9は、そのような搬送容器のフレームの外観の一例を示した斜視図である。なお、図が煩雑になるのを避けるため、棒状体に関する符号については一部にのみ付している。
図9に示すように、略直方体をなす搬送容器のフレーム50は、水平方向及び鉛直方向と平行に配置された複数本の棒状体51によって形成されており、フレーム50の底にはフォークリフトの爪を差し込むための挿入部50aが設けられている。
平行に配置された一対の棒状体51、51の側面51a、51aには他の棒状体51の両端面がそれぞれ溶接されている。すなわち、上述の一対の棒状体51、51は他の棒状体51を介して互いに連結されている。なお、棒状体51の接合部分には補強板52が取り付けられる場合もある。
このように、互いに直交する2本の棒材を溶接によって接合する場合、棒材の側面が平坦でないと、溶接作業中に棒材同士のなす角度が変化し易い。そのため、両者の直交状態を維持することが難しい。そこで、溶接を行う棒材には、横断面の外形線が矩形状をなすものが用いられることが多い。また、搬送容器を構成する棒材は本数が多く、それらの重量は搬送容器全体の重量の大部分を占めていることから、当該棒材は中空構造であることが望ましい。このような理由から、図9に示すような搬送容器を構成する棒状体51には、通常、角パイプが用いられる。
【0003】
互いに直交するように配置された2本の棒状体51、51において、棒状体51が角パイプであれば、一方の棒状体51を他方の棒状体51に溶接する際に、横断面の外形線が矩形状でない場合に比べて両者の直交関係を維持し易い。しかしながら、溶接作業は、ある程度の熟練した技術を必要とするため、経験の浅い作業者にとって、互いに直交するように配置された角パイプからなる2本の棒状体同士を溶接する際に、両者のなす角度を変化させないようにすることは決して容易なことではない。すなわち、搬送容器のフレームを構成する棒状体同士を溶接する必要がある場合、このような搬送容器を製造することは、経験の浅い作業者には困難である。
そのため、近年では、搬送容器のフレームを構成する金属製の棒状体同士の接合にボルトが用いられることが多い。そして、それに関して既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には「角パイプを正面T型またはL型に着脱可能に接続する方法」という名称で、角パイプを用いて棚枠等を組み立てる際に角パイプ同士をボルト止めによってL型又はT型に接続する技術に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、内部に鉄鋼製ナットが嵌め込み固定されるとともにねじ孔が側面に設けられたT型のアルミニウム製継手の三方の接続手と、ボルト孔を有し、接続手の側面にボルト・ナット結合される平面視略二等辺三角形の接続板を用いることを特徴とする。
このような方法によれば、角パイプの接続操作を容易かつ迅速に行うことが可能であり、しかも三方の接続手にそれぞれボルト・ナット結合により接続された角パイプの相互位置が共通の接続板によって固定化されるため、ボルト・ナット結合に経時的な緩みが発生し難い。
【0005】
また、特許文献2には「ユニットボックスフレームの接合構造」という名称で、鉄骨製の四隅の柱の上端間及び下端間に天井の大梁及び床の大梁を接合したユニットボックスフレームにおいて、対向する大梁間に溝形又は角パイプ状の小梁を接合する構造に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、対面する一対の側板部を上下板部よりも延長させてその延長部分を外側へ折曲してなる折曲片を小梁が有し、この折曲片が大梁の側面にボルト接合されることを特徴とする。
このようなユニットボックスフレームの接合構造によれば、小梁の端部に切欠加工と折曲作業で接合片となる折曲片を形成することができるため、小梁の接合片の形成から大梁への接合までの全てが溶接によらずに実現化される。
【0006】
さらに、特許文献3には「嵌合組合型接合部材」という名称で、2本の角形鋼管同士を縦向き又は横向きにT字をなすように突き合わせて接合する部材に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、一方の角形鋼管の側面に設けられた矩形状の係止穴に、他方の角形鋼管の端面に設けられた凸形状の係止部を嵌挿させるようにして2本の角形鋼管同士をT字状に突き合わせて接合することを特徴とする。
このような構造の接合部材によれば、使用目的や用途に応じた接合構造を選択することができる。また、加工時間の短縮化と寸法精度の向上が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-105184号公報
【特許文献2】特開平10-2008号公報
【特許文献3】実用新案登録第3135898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
搬送容器のフレームを構成する角パイプ同士の接合に特許文献1に開示された発明を利用した場合、角パイプの接合部において接続板が角パイプの側面よりも突出した状態となるため、その搬送容器をトラックなどの荷台に複数個積載する場合、トラック1台に対して積載可能な搬送容器の数量が減少する、すなわち、積載率が低下する可能性が高い。その上、他の搬送容器や内部に収納される製品の表面に傷をつけてしまうおそれもある。
また、特許文献2に開示された発明では、小梁の折曲片を大梁の側面にボルトを用いて固定することによって小梁が大梁に接合される構造であることから、小梁に対する拘束力が不十分となるおそれがある。また、折曲片と平行な平面内における小梁の位置決めに対し、折曲片に設けられた挿通孔の内径とボルトの外径の差が影響するため、大梁に対する小梁の位置決めを正確に行うことができないという課題があった。
さらに、特許文献3に開示された考案では、矩形状の係止穴が設けられた角形鋼管(便宜上、第1の角形鋼管と呼ぶことにする。)を挟んで対称に配置された2本の角形鋼管(便宜上、第2の角形鋼管と呼ぶことにする。)を第1の角形鋼管に接合させる場合、2本の第2の角形鋼管の係止部が干渉し合うため、第1の角形鋼管に接合できないという課題があった。また、第1の角形鋼管に第2の角形鋼管を接合した場合、第1の角形鋼管の係止穴から第2の角形鋼管の係止片の先端部が突出した状態になるため、搬送容器のフレームを構成する角形鋼管同士の接合に本考案を利用した場合、その搬送容器をトラックなどの荷台に複数個積載した際に積載率が低下したり、他の搬送容器や内部に収納される製品の表面に傷をつけたりする可能性がある。
【0009】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、互いに直交するように配置された2本の角パイプ同士を容易に、かつ、両者の位置関係を正確に維持したまま連結することが可能であって、しかも、トラックなどで運搬する際に積載率が低下したり、他の搬送容器や内部に収納される製品の表面に傷をつけたりするおそれのない角パイプの接合構造とそれを用いた搬送容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1の発明は、互いに直交するように配置された金属製の2本の角パイプ同士を連結してなる角パイプの接合構造であって、2本の角パイプは、平行に配置された一対の第1の側板の少なくとも一方に対し、端面から長手方向と平行に設けられた第1の切れ込み及び切除部分によって固定部が形成されるとともに、固定部の基端において第1の側板に垂直な一対の第2の側板の一方に接続されている側へ向かって固定部から長手方向と垂直に設けられた第2の切れ込みによって係止部が形成された第1の角パイプと、平面視矩形をなす第1の開口部が第3の側板に設けられた第2の角パイプと、からなり、第1の切れ込み及び切除部分は、端面からの長手方向に平行な方向の長さが等しく、一対の第2の側板の他方は、その長手方向と平行な方向へ端面が固定部の基端よりも第1の側板の板厚以上には係止部側へ突出しないように形成されており、第1の開口部に係る矩形は、第3の側板の長手方向に平行な第1の辺と、この第1の辺に垂直な一対の第2の辺と、を有し、第1の開口部は係止部を嵌挿可能に、第1の辺の長さが一対の第1の側板の外面間の距離よりも長く、一対の第2の辺の長さから第3の側板に垂直な第4の側板の板厚を引いた長さは係止部の第1の側板の長手方向に平行な長さよりも長く、かつ、一対の第2の辺が第4の側板の外面に達するように形成されており、第2の切れ込みは、第4の側板を内部に嵌挿配置可能に、第2の角パイプの第4の側板の板厚よりも幅が広いことを特徴とする。
【0011】
第1の発明では、第1の角パイプが金属製であるため、ペンチなどの工具を用いることにより、固定部を第1の側板の外面側へ容易に折り曲げることが可能である。固定部を第1の側板の外面側へ直角に折り曲げると、第2の切れ込みを構成する一対の平行な2つの内面のうち、係止部に対向する側の内面が固定部の内面とともに同一平面を形成する。このように固定部を折り曲げた場合、固定部の内面と同一平面を形成する係止部の上記内面を固定部の内面とともに第2の角パイプの第4の側板の外面に当接させた状態で第2の角パイプの第1の開口部に係止部が嵌挿可能になる。そして、第1の角パイプの係止部を第2の角パイプの第1の開口部に嵌挿すると、第3の側板を平面視した場合に一対の第2の辺をそれぞれ構成する第1の開口部の内面が一対の第1の側板の外面に当接することにより、第3の側板の長手方向に平行な方向への第1の角パイプの移動が拘束されるとともに、第1の角パイプの係止部が第2の角パイプの第4の側板に係止することにより、第3の側板の長手方向に垂直な方向への第1の角パイプの移動が拘束される。このとき、固定部の内面が第4の側板の外面に当接しているため、固定部も第4の側板に垂直な方向への第1の角パイプの移動を拘束するという作用を有する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、第1の側板は、固定部を第1の側板の外面側へ折り曲げる際に谷折り線となる位置に形成された切れ込み又は貫通孔を有していることを特徴とする。
第2の発明では、第1の発明の作用を有することに加え、第1の側板に対して上述の切れ込みや貫通孔が形成されている箇所における曲げに対する剛性が、他の箇所に比べて低いため、当該箇所を谷折り線とすることで、固定部の第1の側板の外面側への折り曲げ作業が容易になるという作用を有する。
【0013】
第3の発明は、互いに直交するように配置された2本の角パイプ同士を連結してなる角パイプの接合構造であって、2本の角パイプは、平行に配置された一対の第1の側板の少なくとも一方において一部が外側へ直角に曲折されるようにして端部に形成された固定部と、この固定部の基端において第1の側板に垂直な一対の第2の側板の一方に接続されている側へ向かって固定部から第1の側板の長手方向と垂直に設けられた第2の切れ込みによって係止部が形成された第1の角パイプと、平面視矩形をなす第1の開口部が第3の側板に設けられた第2の角パイプと、からなり、一対の第2の側板の他方は、その長手方向と平行な方向へ端面が固定部の基端よりも第1の側板の板厚以上には係止部側へ突出しないように形成されており、第1の開口部に係る矩形は、第3の側板の長手方向に平行な第1の辺と、この第1の辺に垂直な一対の第2の辺と、を有し、第1の開口部は係止部を嵌挿可能に、第1の辺の長さが一対の第1の側板の外面間の距離よりも長く、一対の第2の辺の長さから第3の側板に垂直な第4の側板の板厚を引いた長さは係止部の第1の側板の長手方向に平行な長さよりも長く、かつ、一対の第2の辺が第4の側板の外面に達するように形成されており、第2の切れ込みは、第4の側板を内部に嵌挿配置可能に、第2の角パイプの第4の側板の板厚よりも幅が広いことを特徴とする。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、角パイプが金属ではなく、例えばプラスチックのように固定部の折り曲げが容易でないもので形成されている場合を想定したものである。したがって、第3の発明の構成は、予め第1の側板の一部が外面側へ直角に曲折されるようにして固定部が第1の側板の端部に設けられている点以外は、第1の発明と同じである。そのため、第3の発明においては、第1の発明において固定部を折り曲げた場合と同様に、固定部の内面と同一平面を形成する係止部の内面を第2の角パイプの第4の側板の外面に当接させた状態で係止部が第2の角パイプの第1の開口部に嵌挿可能になる。そして、第1の角パイプの係止部を第2の角パイプの第1の開口部に嵌挿した場合に、第3の側板を平面視して一対の第2の辺をそれぞれ構成する第1の開口部の内面が一対の第1の側板の外面に当接することで、第2の角パイプの長手方向に平行な方向への第1の角パイプの移動が拘束され、第1の角パイプの係止部が第2の角パイプの第4の側板に係止することで、第3の側板の長手方向に垂直な方向への第1の角パイプの移動が拘束されるという第1の発明の作用が同様に発揮される。また、このとき第4の側板の外面に当接している固定部の内面によって、第4の側板の長手方向に垂直な方向への第1の角パイプの移動も拘束される。
【0015】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、第2の角パイプは、第4の側板に平面視矩形をなす第2の開口部が設けられ、第2の開口部に係る矩形は、第4の側板の長手方向に平行な第3の辺と、この第3の辺に垂直な一対の第4の辺と、を有し、第2の開口部は係止部を嵌挿可能に、第3の辺の長さが一対の第1の側板の外面間の距離よりも長く、一対の第4の辺の長さが係止部の第1の側板の長手方向に垂直な長さから第2の切れ込みの長さを引いた長さと等しく、かつ、第4の辺が第3の側板に達するように形成されるとともに、一対の第4の辺が第1の開口部における一対の第2の辺とそれぞれ同一平面を形成していることを特徴とする。
なお、第4の発明において、「一対の第4の辺の長さが係止部の第1の側板の長手方向に垂直な長さから第2の切れ込みの長さを引いた長さに等しい」場合には、「一対の第4の辺の長さが係止部の第1の側板の長手方向に垂直な長さから第2の切れ込みの長さを引いた長さに略等しい」場合も含まれる。また、「第4の辺が第3の側板に達する」とは「第4の辺が第3の側板の外面に達する」ことを意味している。
第4の発明は、第2の角パイプの第1の開口部と同時に第2の開口部にも第1の角パイプの係止部を嵌挿可能な構造となっている。したがって、第1の開口部及び第2の開口部に第1の角パイプの係止部を嵌挿した場合、第4の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、第1の角パイプの第2の側板の外面と第2の角パイプの第3の側板の外面が同一平面を形成するという作用を有する。
【0016】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、第1の角パイプの固定部にボルト挿通孔が設けられるとともに、内周面に雌ネジが形成されたボルト孔が第2の角パイプの第4の側板に設けられ、第4の側板を平面視した場合に、第3の側板の外面からボルト孔の中心までの第3の側板に垂直な距離は、係止部に近い側の第2の側板の外面からボルト挿通孔の中心までの第2の側板に垂直な距離に等しく、一対の第4の辺のうちボルト孔に近い側の辺からボルト孔の中心までの第3の側板及び第4の側板に平行な距離は、固定部の基端からボルト挿通孔の中心までの固定部の外面及び第2の側板に平行な距離に等しいことを特徴とする。
第5の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、第2の角パイプに対して垂直に第1の角パイプを配置し、第2の角パイプの第1の開口部に第1の開口部の係止部を嵌挿すると、ボルト挿通孔に挿通されたボルトがボルト孔に対して螺入可能になるという作用を有する。
【0017】
第6の発明は、第5の発明において、ボルト挿通孔は、両端が円弧状をなす長孔であって、第1の側板の長手方向と平行に細長く形成されていることを特徴とするものである。
第6の発明においては、第5の発明の作用に加え、第2の角パイプのボルト孔に螺入されるボルトの中心に対する第1の角パイプのボルト挿通孔の中心のずれがある程度許容されるという作用を有する。
【0018】
第7の発明は、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明に係る角パイプの接合構造を備え、複数本の第1の角パイプ及び第2の角パイプによって組まれたフレームを有することを特徴とする搬送容器に係るものである。
このような構造の搬送容器においては、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明に係る角パイプの接合構造における作用と同様の作用が発揮される。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明では、第1の角パイプと第2の角パイプを互いに直交するように配置し、第1の角パイプの第1の側板の外面側へ直角に折り曲げた固定部の内面を第2の角パイプの第4の側板の外面に当接させた状態で第1の角パイプの係止部を第2の角パイプの第1の開口部に嵌挿すると、第2の角パイプの長手方向と平行及び垂直な方向への第1の角パイプの移動が拘束されるため、溶接を行うことなく、第1の角パイプを第2の角パイプに接合することが可能である。したがって、第1の発明によれば、溶接を行う場合よりも安い費用で角パイプ同士を接合することができる。
また、第1の発明では、第1の角パイプ及び第2の角パイプの側板に対して切れ込みや開口部、あるいは切除部分を形成するだけで、両者の接合が可能になるため、角パイプの加工費用が安い。さらに、これらの加工が施された第1の角パイプ及び第2の角パイプは、いずれも側板の外面側に突出した部分が存在しないため、両者を区別せずに一まとめにして束ねることが可能である。そして、ペンチなどの工具を用いれば、固定部を折り曲げる作業を客先でも容易に行うことができるため、複数本の第1の角パイプと第2の角パイプは上述のように一まとめに束ねた状態で客先に納入することが可能である。この場合、嵩張らないため、トラック等で運搬する際の積載率を高めるとともに、保管スペースの節約を図ることができる。
【0020】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、切れ込みや貫通孔が設けられている箇所を谷折り線とすることにより、固定部を第1の側板と直角をなすように外面側へ正確に折り曲げることができるという効果を奏する。
【0021】
第3の発明では、第1の角パイプと第2の角パイプを互いに直交するように配置し、第1の角パイプの固定部の内面を第2の角パイプの第4の側板の外面に当接させた状態で第1の角パイプの係止部を第2の角パイプの第1の開口部に嵌挿すると、第2の角パイプの長手方向と平行及び垂直な方向への第1の角パイプの移動が拘束されるため、接着剤等を用いなくとも、第1の角パイプを第2の角パイプに接合することができるという効果が発揮される。したがって、第3の発明によれば、接着剤等を用いる場合よりも簡単に角パイプ同士を接合することが可能である。
【0022】
第4の発明では、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の効果に加え、第1の角パイプ及び第2の角パイプによって搬送容器を形成した場合に、第1の角パイプの第2の側板の外面が第2の角パイプの第3の側板の外面よりも突出した状態にならないため、複数の搬送容器をトラックなどの荷台に積載した際に積載率の低下を招いたり、他の搬送容器や内部に収納される製品の表面に傷をつけたりするおそれがないという効果を奏する。また、第2の側板の外面が搬送容器の内側を向くように第1の角パイプが設置されている場所では、第2の角パイプの第3の側板の外面よりも第1の角パイプの第2の側板の外面が搬送容器の内側へ向かって突出した状態にならないため、搬送容器内に製品が収納される空間を広くとることができる。
【0023】
第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、第2の角パイプに対して垂直に第1の角パイプを配置し、第2の角パイプの第1の開口部に第1の角パイプの係止部を嵌挿した場合、第1の角パイプの固定部に設けられたボルト挿通孔に挿通されたボルトを第2の角パイプのボルト孔に螺入することができるため、このボルトを締め付けて固定部を第2の角パイプに固定することで、第2の角パイプに対する第1の角パイプの接合強度が高められるという効果を奏する。
【0024】
第5の発明では、固定部と第1の側板のなす角度が正確に直角をなしていないと、ボルト挿通孔に挿通されたボルトをボルト孔に螺入することができないのに対し、第6の発明では、ボルト孔に螺入されるボルトの中心に対するボルト挿通孔の中心のずれがある程度許容される構造となっていることから、固定部と第1の側板のなす角度が完全な直角でない場合にもボルト挿通孔に挿通されたボルトを第2の角パイプのボルト孔に螺入することができる。すなわち、第6の発明では、第1の側板に対する固定部の曲折状態が不完全な場合であっても第1の角パイプを第2の角パイプにボルト接合することが可能となっている。したがって、第6の発明によれば、第5の発明の効果に加え、第1の角パイプを第2の角パイプにボルト接合する際の作業性に優れるという効果を奏する。
【0025】
第7の発明に係る搬送容器によれば、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明に係る角パイプの接合構造における効果と同様の効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係る角パイプの接合構造を備えた第1の角パイプの外観斜視図であり、(c)は同図(a)におけるA方向矢視図である。
図2】(a)は図1(a)において固定部が第1の角パイプの外側へ直角に折り曲げられた状態を示す斜視図であり、(b)及び(c)はそれぞれ同図(a)におけるB方向矢視図及びB方向矢視図である。
図3】(a)は本発明の実施の形態に係る角パイプの接合構造を備えた第2の角パイプの外観斜視図であり、(b)及び(c)はそれぞれ同図(a)におけるC方向矢視図及びD方向矢視図である。
図4】(a)は第1の角パイプと第2の角パイプが接合された状態を示す外観斜視図であり、(b)は同図(a)におけるE-E線矢視断面図である。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ図1(a)に示した第1の角パイプ及び図3(a)に示した第2の角パイプの第1の変形例の外観斜視図であり、(c)は同図(a)に示した第1の角パイプが同図(b)に示した第2の角パイプに接合された状態を示す外観斜視図である。
図6】(a)は図1(a)に示した第1の角パイプの第2の変形例の外観斜視図であり、(b)は図3(a)に示した第2の角パイプの第2の変形例の外観斜視図である。
図7】(a)は図6(b)に示した第2の角パイプの2つの側板に図1(a)に示した第1の角パイプがそれぞれ接合された状態を示す外観斜視図であり、(b)は同図(a)におけるF-F線矢視断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係る搬送容器のフレームの外観斜視図である。
図9】従来技術に係る搬送容器のフレームの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の搬送容器とそれに用いられる角パイプの接合構造について図1乃至図8を用いて具体的に説明する。なお、本発明の角パイプの接合構造では、第1の角パイプにおいて一対の第1の側板に挟まれた部分を第2の側板というものとする。また、本実施例では、角パイプを金属製としているが、角パイプがプラスチック製であっても角パイプの接合構造に係る本発明の作用及び効果の一部は同様に発揮される。さらに、当該角パイプは、側面に開口部や切り欠きが設けられているが、これらの加工は、後述するように3次元レーザ加工機を用いれば、容易に行うことができる。
【実施例0028】
図1(a)及び図1(b)は本発明の実施の形態に係る角パイプの接合構造を備えた第1の角パイプの外観の一例を示した斜視図である。また、図1(c)は図1(a)におけるA方向矢視図である。なお、図1(b)は図1(a)よりも拡大された状態で示されている。また、図2(a)は図1(a)において固定部が第1の角パイプの外側へ直角に折り曲げられた状態を示しており、図2(b)及び図2(c)はそれぞれ図2(a)におけるB方向矢視図及びB方向矢視図である。
図1(a)乃至図1(c)並びに図2(a)乃至図2(c)に示すように、第1の角パイプ1は、平行に配置された一対の第1の側板1a、1aと、この第1の側板1aと直交するように配置された一対の第2の側板1b、1cによって構成されている。
第1の側板1aは、両端の一部が矩形状に切除されることによって(図1(c)の切除部分1d、1e参照)、端面2a、2bが第1の側板1aの長手方向に対して垂直にそれぞれ形成されるとともに、切除部分1eと、端面2c(図1(c)参照)から長手方向と平行に設けられた第1の切れ込み4aにより、矩形板状の固定部3が形成されている。なお、切除部分1eは矩形を構成する4辺のうちの2辺が第1の側板1aの長手方向と平行をなすことから、第1の切れ込み4aと同様に、第1の側板1aの端面から長手方向と平行に設けられていると言える。また、第1の切れ込み4a及び切除部分1eは、上記端面からの第1の側板1aの長手方向に平行な方向の長さが等しい。
固定部3には、両端が円弧状をなす長孔からなるボルト挿通孔3aが第1の側板1aの長手方向と平行に細長く形成されている。なお、端面2cは、第1の側板1aにおいて切除部分1d、1eが設けられることによって新たに形成された上述の端面2a、2bとは異なり、そのような加工を施す前の側板1aの端面の一部に相当する。
また、第1の側板1aには、固定部3の基端3c(図1(c)参照)において第2の側板1bに接続されている側へ向かって、後述する第2の角パイプ6の第4の側板6c(図3(a)参照)を内部に嵌挿配置可能に直線状の第2の切れ込み4bが第1の側板1aの長手方向と垂直に設けられている。そして、前述のとおり、この第2の切れ込み4bと切除部分1dによって矩形板状の係止部5が形成されている。なお、第1の切れ込み4a(図1(c)参照)によって、係止部5は固定部3から切り離されている。
さらに、固定部3の基端3c側の2つの角部を形成するように一対のL字状の第3の切れ込み4c、4cが設けられており、第3の切れ込み4c、4cのうち第1の側板1aの長手方向に対して垂直な部分と略同一直線上に配置されるように貫通孔4dが第3の切れ込み4c、4cの間に形成されている。一方、第2の側板1b、1cには、両端が矩形状に切除されることによって(図2(b)の切除部分1f及び図2(c)の切除部分1gを参照)、端面2d、2d及び端面2e、2eがそれらの長手方向に対して垂直となるようにそれぞれ形成されている。なお、第2の側板1cの端面2eは第1の側板1aの端面2bと同一平面を形成している。すなわち、第2の側板1cは、その長手方向と平行な方向へ端面2eが固定部3の基端3cよりも第1の側板1aの板厚以上には係止部5側へ突出しない状態となっている。
【0029】
第3の切れ込み4c、4cのうち第1の側板1aの長手方向に対して垂直な部分と貫通孔4dが形成されている箇所は、他の箇所に比べて曲げに対する剛性が低いため、当該箇所を谷折り線1h(図1(c)参照)とすると、固定部3の折り曲げ作業が容易になるため、第1の側板1aと直角をなすように外面側へ固定部3を正確に折り曲げることができる。なお、第2の切れ込み4bは、係止部5に対向する側の内面8c(図1(c)参照)が端面2b、2eと同一平面を形成するように第1の側板1aに設けられている。また、第3の切れ込み4c、4cのうち第1の側板1aの長手方向に対して垂直な部分と貫通孔4dは、第1の側板1aを平面視した場合に上述の谷折り線1hが第1の側板1aの板厚だけ端面2bから離れる方向にずれた位置に形成されるように第1の側板1aに設けられている。そのため、図2(a)乃至図2(c)に示すように固定部3を第1の側板1aに対して直角にその外面側へ折り曲げた場合、固定部3の内面3bは、第2の切れ込み4bの係止部5に対向する側の内面8c及び端面2b、2eとともに同一平面を形成する。なお、この平面は後述するように、第1の角パイプ1を他の角パイプに接合する際の当接面となる。
【0030】
図3(a)は本発明の実施の形態に係る角パイプの接合構造を備えた第2の角パイプの外観の一例を示した斜視図であり、図3(b)及び図3(c)はそれぞれ図3(a)におけるC方向矢視図及びD方向矢視図である。また、図4(a)は第1の角パイプと第2の角パイプが接合された状態を示す外観斜視図であり、図4(b)は図4(a)におけるE-E線矢視断面図である。
図3(a)乃至図3(c)に示すように、第2の角パイプ6は、互いに平行な第3の側板6a、6bと、この第3の側板6a、6bに垂直な第4の側板6c、6dによって構成されている。
第3の側板6a及び第4の側板6cには、平面視した場合に矩形をなし、その矩形を構成する4辺のうち、垂直な2辺がそれぞれ第3の側板6a及び第4の側板6cの長手方向に対して垂直及び平行となるような第1の開口部7a及び第2の開口部7bが形成されている。そして、第1の開口部7aは上記矩形において第3の側板6aの長手方向と垂直な第2の辺15b、15b(図3(b)参照)が第4の側板6cの外面に達するように形成されており、第2の開口部7bは上記矩形において第4の側板6cの長手方向と垂直な第4の辺15d、15d(図3(c)参照)が第3の側板6aの外面に達するように形成されている。これにより、第1の開口部7a及び第2の開口部7bは断面視L字をなす切り欠きを構成し、第1の開口部7a及び第2の開口部7bにおいて第3の側板6a及び第4の側板6cの長手方向とそれぞれ垂直な内面8a、8bは同一平面上に配置されている。
【0031】
第1の開口部7a及び第2の開口部7bは一対の係止部5、5を嵌挿可能に形成されている。具体的に説明すると、第3の側板6a及び第4の側板6cの長手方向とそれぞれ平行な上記矩形の第1の辺15a(図3(b)参照)及び第3の辺15c(図3(c)参照)の長さL図3(b)及び図3(c)参照)は第1の角パイプ1における一対の第1の側板1a、1aの外面間の距離w図2(b)参照)よりも長く、第1の開口部7aにおいて第3の側板6aの長手方向と垂直な第2の辺15bの長さs図3(b)参照)から第4の側板6cの板厚を引いた長さは第1の角パイプ1における係止部5の第1の側板1aの長手方向に平行な長さw図1(c)参照)よりも長い。すなわち、第2の角パイプ6の第3の側板6aに設けられた第1の開口部7aは、図4(a)に示すように第1の角パイプ1の端部に設けられた一対の係止部5、5(図1(a)参照)を嵌挿可能な構造となっている。
また、第2の開口部7bでは、第4の側板6cの長手方向に垂直な第4の辺15dの長さs図3(c)参照)が第1の角パイプ1における係止部5の第1の側板1aの長手方向に垂直な長さw図1(c)参照)から第2の切れ込み4bの長さを引いた長さw図1(c)参照)と等しい。すなわち、第2の開口部7bも第1の角パイプ1の端部に設けられた一対の係止部5、5(図1(a)参照)を内部に嵌挿可能であって、かつ、図4(a)に示すように第1の開口部7a及び第2の開口部7bの内部に第1の角パイプ1の端部に設けられた一対の係止部5、5(図1(a)参照)を嵌挿した際に、第1の角パイプ1の第2の側板1bの外面と第2の角パイプ6の第3の側板6aの外面が略同一平面を形成するような構造となっている。このとき、図4(b)に示すように第4の側板6cの上部が第2の切れ込み4b(図1(a)参照)の内部に配置され、係止部5(図1(a)参照)は第4の側板6cの上部に係止する。これにより、第1の角パイプ1は第2の角パイプ6における第3の側板6aの長手方向に垂直な方向への移動が拘束される。また、第1の開口部7aにおいて第3の側板6aの長手方向に垂直な一対の内面8a、8a(図3(b)参照)が第1の角パイプ1における一対の第1の側板1a、1aの外面に当接することにより、第3の側板6aの長手方向に平行な方向への第1の角パイプ1の移動が拘束される。さらに、第2の角パイプ6の第4の側板6cの外面に内面3b(図2(b)及び図2(c)参照)が当接している固定部3によって、第4の側板6cに垂直な方向への第1の角パイプ1の移動が拘束される。
【0032】
第4の側板6cには、第1の角パイプ1の固定部3に設けられたボルト挿通孔3a(図1(a)参照)に挿通されるボルト9(図4(a)参照)に螺合する雌ネジ部が内周面に形成された一対のボルト孔7c、7cが、第2の開口部7bの幅(第4の側板6cの長手方向に平行な長さ)の中心を通るとともに第4の側板6cの長手方向に垂直な平面に関して対称に設けられている。なお、第3の側板6aの外面からボルト孔7cの中心までの第3の側板6aに垂直な距離s図3(c)参照)は第1の角パイプ1において第2の側板1bの外面からボルト挿通孔3aの中心までの第2の側板1bに垂直な距離w図1(c)参照)に等しく、第2の角パイプ6において第4の側板6cを平面視した場合のボルト孔7cの中心から第2の開口部7bの内面8bまでの第3の側板6a及び第4の側板6cに平行な距離L図3(c)参照)は第1の角パイプ1において第1の側板1aを平面視した場合の固定部3の基端3c(図1(c)参照)からボルト挿通孔3aの中心までの固定部3の外面及び第2の側板1bに平行な距離w図1(c)参照)に等しい。すなわち、ボルト孔7c、7cは、図4(a)に示すように第2の角パイプ6に対して垂直に第1の角パイプ1を配置し、第1の開口部7a及び第2の開口部7b(図3(a)参照)に一対の係止部5、5(図1(a)参照)を嵌挿するとともに、第2の切れ込み4bの係止部5に対向する側の内面8c(図1(c)参照)、端面2b、2e及び固定部3の内面3b(図2(b)及び図2(c)参照)を第4の側板6cに当接させた状態で、一対のボルト挿通孔3a、3a(図1(a)参照)に挿通された2本のボルト9、9(図4(a)参照)をそれぞれ同時に螺入可能な構造となっている。そこで、一対のボルト挿通孔3a、3aに挿通したボルト9、9をボルト孔7c、7cに螺入すると、固定部3が第2の角パイプ6に固定される。これにより、第2の角パイプ6に対する第1の角パイプ1の接合強度が高められる。なお、両端が円弧状をなし、第1の側板1aの長手方向と平行に細長く形成された長孔からなるボルト挿通孔3aは、ボルト孔7cに螺入されるボルト9の中心に対して中心がずれている場合でも、ある程度、このずれが許容される構造となっている。したがって、固定部3と第1の側板1aのなす角度が直角からずれている場合や、固定部3は第1の側板1aに対して垂直に折り曲げられているものの、ボルト挿通孔3aの加工時の不具合などにより固定部3の内面3bを第3の側板6cの外面に当接した状態においてボルト挿通孔3aの中心とボルト孔7cの中心の間に僅かなずれが生じている場合であっても、ボルト挿通孔3aに挿通されたボルト9をボルト孔7cに螺入することが可能である。すなわち、第1の角パイプ1及び第2の角パイプ6はボルト接合する際の作業性に優れた構造であるといえる。
【0033】
図5(a)及び図5(b)はそれぞれ図1(a)に示した第1の角パイプ及び図3(a)に示した第2の角パイプの第1の変形例の外観斜視図であり、図5(c)は図5(a)に示した第1の角パイプが図5(b)に示した第2の角パイプに接合された状態を示している。また、図6(a)は図1(a)に示した第1の角パイプの第2の変形例の外観斜視図であり、図6(b)は図3(a)に示した第2の角パイプの第2の変形例の外観斜視図である。さらに、図7(a)は図6(b)に示した第2の角パイプの2つの側板に図1(a)に示した第1の角パイプがそれぞれ接合された状態を示しており、図7(b)は図7(a)におけるF-F線矢視断面図である。なお、図1乃至図4を用いて既に説明した第1の角パイプ1及び第2の角パイプ6の構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
【0034】
図5(a)に示すように、第1の角パイプ10は、第1の角パイプ1(図1(a)乃至図1(c)参照)において、一対の第1の側板1a、1aのうち一方の側板にのみ固定部3が形成された構造となっている。固定部3が形成されていない第1の側板1aは、一部が矩形状に切除されることによって、端面2fが第1の側板1aの長手方向に対して垂直に、かつ、第2の切れ込み4bの係止部5に対向する側の内面8c(図1(c)参照)及び端面2b、2eとともに同一平面を形成するように設けられている。
図5(b)に示すように、第2の角パイプ11は、第2の角パイプ6(図3(a)乃至図3(c)参照)において、第1の開口部7a及び第2の開口部7bは平面視した場合に矩形を構成する4辺のうち、第3の側板6a及び第4の側板6cの長手方向と平行な第1の辺15a及び第3の辺15c(図3(b)及び図3(c)参照)が端縁11aに達するように形成されるとともに、第4の側板6cにボルト孔7cが1つだけ設けられた構造となっている。
図5(c)に示すように第2の角パイプ11に対して平面視L字をなすように第1の角パイプ10を配置し、第1の開口部7a及び第2の開口部7b(図5(b)参照)に係止部5(図5(a)参照)を嵌挿するとともに、第2の切れ込み4bの係止部5に対向する側の内面8c(図1(c)参照)、端面2b、2e、2f及び固定部3の内面3b(図2(b)及び図2(c)参照)を第4の側板6cに当接させた状態で、ボルト挿通孔3aに挿通されたボルト9をボルト孔7cに螺入すると、第2の角パイプ11に第1の角パイプ10が接合される。すなわち、第1の角パイプ10及び第2の角パイプ11は、2本の角パイプが平面視L字をなすように接合される場合に用いることができる。
【0035】
第1の角パイプ12は、図6(a)に示すように第1の角パイプ1(図1(a)乃至図1(c)参照)において、第1の側板1a及び第2の側板1bに第1の開口部7a及び第2の開口部7bが設けられるとともに、第2の側板1bにも一対のボルト孔7c、7cが設けられた構造となっている。また、第2の角パイプ13は、第2の角パイプ6(図3(a)乃至図3(c)参照)において、第4の側板6c及び第3の側板6bに加えて第4の側板6d及び第3の側板6bにも第1の開口部7a及び第2の開口部7bが設けられるとともに、第4の側板6cに加えて第3の側板6bにも一対のボルト孔7c、7cが設けられた構造となっている。
第2の角パイプ13の第3の側板6b及び第4の側板6cに対し、図7(a)に示すように2本の第1の角パイプ1、1をそれぞれ垂直に配置し、図7(b)に示すように第4の側板6d及び第3の側板6bに設けられた第1の開口部7a及び第2の開口部7bに一方の第1の角パイプ1の端部に設けられた一対の係止部5、5を嵌挿するとともに、第3の側板6a及び第4の側板6cに設けられた第1の開口部7a及び第2の開口部7bに他方の第1の角パイプ1の端部に設けられた一対の係止部5、5を嵌挿する。さらに、一方の第1の角パイプ1における第2の切れ込み4bの係止部5に対向する側の内面8c(図1(c)参照)、端面2b、2e及び固定部3の内面3b(図2(b)参照)を第3の側板6bに当接させた状態で、ボルト挿通孔3aに挿通された2本のボルト9、9(図4(a)参照)を第3の側板6bのボルト孔7c、7cに螺入するとともに、他方の第1の角パイプ1における第2の切れ込み4bの係止部5に対向する側の内面8c(図1(b)参照)、端面2b、2e及び固定部3の内面3b(図2(b)参照)を第4の側板6cに当接させた状態で、ボルト挿通孔3aに挿通された2本のボルト9、9(図4(a)参照)を第4の側板6cのボルト孔7c、7cに螺入する。これにより、互いに直交するように配置された2本の第1の角パイプ1、1がそれぞれ第2の角パイプ13に対して垂直に接合される。このように、第2の角パイプ13は、平面視L字をなすように配置された2本の角パイプのコーナーにそれらの角パイプにそれぞれ直交するように配置された別の角パイプを接合する場合(図7(a)参照)に用いることができる。
【0036】
図1乃至図7を参照しながら説明したように、本発明の角パイプの接合構造は、第1の角パイプ1、10、12及び第2の角パイプ6、11、13を備えたことを特徴としている。第1の角パイプ1、10、12は金属製であるため、ペンチなどの工具を用いることにより、固定部3を第1の側板1aの外面側へ容易に折り曲げることができる。そこで、第1の角パイプ1、10、12のいずれかと第2の角パイプ6、11、13のいずれかを互いに直交するように配置するとともに、第1の角パイプの第1の側板1aの外面側へ直角に折り曲げた固定部3の内面3bを第2の角パイプの第4の側板6cの外面に当接させた状態で第1の角パイプの係止部5を第2の角パイプの第1の開口部7a及び第2の開口部7bに嵌挿すると、第2の角パイプの長手方向と平行及び垂直な方向への第1の角パイプの移動が拘束される。そのため、第1の角パイプを第2の角パイプに接合してフレーム14を製造する場合、溶接作業を行う必要がない。この場合、溶接を行う設備は不要であり、熟練者でなくとも角パイプの接合作業を行うことができる。すなわち、本発明の角パイプの接合構造によれば、安い費用で容易に角パイプ同士を接合することが可能である。
また、第1の角パイプ1、10、12及び第2の角パイプ6、11、13は通常の角パイプの側板に切れ込みや開口部を加工するだけで、簡単に製造することができるため、安い費用で製造することができる。さらに、第1の角パイプ1、10、12及び第2の角パイプ6、11、13は、いずれも側板の外面側に突出した部分が存在しないため、両者を区別せずに一まとめにして束ねることが可能である。そして、ペンチなどの工具を用いれば、固定部3を折り曲げる作業も客先で容易に実施可能である。そのため、第1の角パイプ1、10、12及び第2の角パイプ6、11、13をトラックの荷台等に積載する場合には、複数本を一まとめに束ねて嵩張らない状態にすることで、積載率を高めることができる。また、このように束ねることで、保管スペースの節約も可能である。
【0037】
図8は本発明の実施の形態に係る搬送容器のフレームの外観の一例を示した斜視図である。なお、図が煩雑になるのを避けるため、第1の角パイプ及び第2の角パイプに関する符号については一部にのみ付している。また、図1乃至図7に示した構成要素については、同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
図8に示すように、本発明の搬送容器は略直方体をなしており、水平方向及び鉛直方向と平行に配置された複数本の第1の角パイプ1、10、12及び第2の角パイプ6、13によって組まれたフレーム14を有している。フレーム14では、第1の角パイプ1、10、12の第2の側板1bの外面が第2の角パイプ6、13の第3の側板6b及び第4の側板6cの外面よりも突出した部分が存在せず、第2の角パイプ6、13の第3の側板6a及び第4の側板6dの外面よりも第1の角パイプ1、10、12の第2の側板1cの外面が搬送容器の内側へ向かって突出していないため、複数個の当該搬送容器をトラックなどの荷台に積載して運搬する際に積載率の低下を招いたり、他の搬送容器や内部に収納される製品の表面に傷をつけたりするおそれがない。また、第2の側板1bの外面が搬送容器の内側を向くように第1の角パイプ1、10、12が設置された場合にも、第2の角パイプ6、13の第3の側板6a及び第4の側板6dの外面よりも第1の角パイプ1、10、12の第2の側板1bの外面が搬送容器の内側へ向かって突出した状態にならないため、搬送容器内に製品が収納される空間を広くとることができる。
【0038】
本実施例では、第2の角パイプ6の第4の側板6cに対して、内周面に雌ネジ部を有するボルト孔7cが設けられた構造となっているが、ボルト孔7cは、このような構造に限定されるものではない。例えば、第4の側板6cにボルト9(図4(a)参照)が挿通される孔を穿設するとともに、この孔に挿通された状態のボルト9を螺入可能なナットが第4の側板6cの内面側に設置された構造とすることもできる。この場合、第4の側板6cに穿設された孔と第4の側板6cの内面側に設置されたナットがボルト孔7cとなる。
また、本実施例では、搬送容器を構成する第1の角パイプ1、10、12及び第2の角パイプ6、11、13を金属製としているが、これらの角パイプはプラスチック製であっても良い。ただし、第1の角パイプ1、10、12がプラスチックで形成されている場合、固定部3を第1の側板1aの外面側に折り曲げることが容易でないため、予め第1の側板1aの一部が外面側へ直角に曲折されるようにして固定部3が第1の側板1aの端部に設けられている構造とする必要がある。この場合、第1の角パイプ1、10、12のいずれかと第2の角パイプ6、11、13のいずれかを互いに直交するように配置し、第1の角パイプの固定部3の内面3bを第2の角パイプの第3の側板6b及び第4の側板6cの外面に当接させた状態で第1の角パイプの係止部5を第1の開口部7a及び第2の開口部7bに嵌挿すると、第2の角パイプの長手方向と平行及び垂直な方向への第1の角パイプの移動が拘束されるため、接着剤等を用いる場合よりも簡単に第1の角パイプを第2の角パイプに接合することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の角パイプの接合構造は互いに直交するように配置された2本の角パイプ同士を接合する際に利用可能であり、本発明の搬送容器は、トラックなどの荷台に複数個を積載して運搬する際に利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…第1の角パイプ 1a…第1の側板 1b、1c…第2の側板 1d~1g…切除部分 1h…谷折り線 2a~2f…端面 3…固定部 3a…ボルト挿通孔 3b…内面 3c…基端 4a…第1の切れ込み 4b…第2の切れ込み 4c…第3の切れ込み 4d…貫通孔 5…係止部 6…第2の角パイプ 6a、6b…第3の側板 6c、6d…第4の側板 7a…第1の開口部 7b…第2の開口部 7c…ボルト孔 8a~8c…内面 9…ボルト 10、12…第1の角パイプ 11、13…第2の角パイプ 11a…端縁 14…フレーム 15a…第1の辺 15b…第2の辺 15c…第3の辺 15d…第4の辺 50…フレーム 50a…挿入部 51…棒状体 51a…側面 52…補強板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9