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特開2023-39670コークス製造プロセスの制御装置、方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039670
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】コークス製造プロセスの制御装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   C10B 21/10 20060101AFI20230314BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C10B21/10
G05B11/36 K
G05B11/36 505A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146906
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 稜二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 章
【テーマコード(参考)】
4H012
5H004
【Fターム(参考)】
4H012AA02
4H012AA05
4H012AA08
4H012AA09
5H004GB01
5H004HA01
5H004HB01
5H004HB02
5H004JA03
5H004KC22
5H004KC24
5H004KC27
(57)【要約】
【課題】コークスの乾留状態を表す物理量を目標値に応じた値にすることと、コークスの乾留状態を表す物理量のばらつきを抑制することと、を実現する。
【解決手段】コークス製造プロセスの制御装置100は、コークス温度を目標温度に近づけるように投入熱量を制御する。目標炉温算出部102は、炉団温度を含む影響因子に基づいてコークス温度を予測するコークス温度予測モデルを用いて、コークス温度予測モデルにより予測したコークス温度と、目標温度との差を表す項を含む評価関数に基づいて、コークス温度が目標温度に応じた値になるように、将来の複数の通り時間の目標炉団温度を算出する。投入熱量算出部103は、目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度に応じた投入熱量を算出する。このように、炉団温度によって各通りのコークス温度がどのように変化するかを考慮して、将来の複数の通り時間の目標炉団温度を動的に算出することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭化室と複数の燃焼室とを備えるコークス炉において、コークスの乾留状態を表す物理量が目標値に応じた値になるように前記燃焼室に対する投入熱量を制御するコークス製造プロセスの制御装置であって、
前記燃焼室の温度である炉温を含む第1影響因子に基づいて前記物理量を予測する物理量予測モデルと、前記第1影響因子の実績値及びスケジュール値のうちの少なくとも一方と、を用いて、前記物理量を予測し、予測した前記物理量と前記物理量の目標値との差を表す項を含む第1の評価関数の値を算出し、算出した第1の評価関数の値に基づいて、目標炉温を算出する目標炉温算出部と、
前記目標炉温算出部で算出した前記目標炉温に応じた投入熱量を算出する投入熱量算出部と、を備える、コークス製造プロセスの制御装置。
【請求項2】
前記投入熱量算出部は、投入熱量を含む第2影響因子に基づいて炉温を予測する炉温予測モデルと、前記第2影響因子の実績値及びスケジュール値の少なくとも一方と、を用いて、前記目標炉温に応じた投入熱量を算出する、請求項1に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項3】
前記投入熱量算出部は、前記炉温予測モデルにより予測した炉温と、目標炉温との差を表す項を含む第2の評価関数に基づいて、前記目標炉温算出部で算出した前記目標炉温を、前記第2の評価関数に含まれる目標炉温として使用して、投入熱量を算出する、請求項2に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項4】
前記第2の評価関数は、投入熱量の変化量を表す項をさらに含む、請求項3に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項5】
前記目標炉温算出部は、将来の目標炉温の複数の候補を生成し、複数の候補のそれぞれを、前記物理量予測モデルにおける前記第1影響因子に含まれる前記炉温として使用して、前記物理量の予測と、前記第1の評価関数の値の算出と、をそれぞれ実行し、実行した前記第1の評価関数の値に基づいて、前記複数の候補の中から前記目標炉温を求める、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項6】
前記目標炉温算出部は、投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす炉温を、前記物理量予測モデルにおける前記第1影響因子として用いて、前記目標炉温を算出する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項7】
前記投入熱量算出部は、前記目標炉温として確定していない炉温に応じた投入熱量として、投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす投入熱量を算出し、
前記目標炉温算出部は、前記投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす投入熱量でコークス製造プロセスを制御した場合の炉温の予測値を、前記投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす場合の炉温として、前記目標炉温を算出する、請求項6に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項8】
前記目標炉温算出部は、将来の目標炉温の複数の候補を生成し、
前記投入熱量算出部は、前記第2の評価関数に基づいて、前記目標炉温算出部で生成した前記目標炉温の候補のそれぞれを、前記第2の評価関数に含まれる目標炉温として使用して、投入熱量を算出し、
前記目標炉温算出部は、前記投入熱量算出部で算出した投入熱量に応じた炉温に基づいて、前記目標炉温を求める、請求項3又は4に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項9】
前記目標炉温算出部により目標炉温を算出するサイクルに比べて、前記投入熱量算出部により投入熱量を算出するサイクルが短い、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項10】
前記コークス製造プロセスは、複数の炭化室を複数の通りに分割し、通り単位で窯出し装炭作業を行うコークス製造プロセスであり、
前記目標炉温は、将来の複数の通り時間における目標炉温の推移である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項11】
前記目標炉温算出部は、通り時間の周期で前記目標炉温を算出する処理を実行する、請求項10に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項12】
前記物理量予測モデルは、炉温を含む前記第1影響因子に基づいて前記物理量を予測する回帰モデルと、前記回帰モデルの予測誤差を推定し、それを補正するための機械学習による推定モデルとを備える、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項13】
前記物理量は、コークス温度、又は炉壁温度である、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項14】
前記コークス製造プロセスは、前記複数の燃焼室の投入熱量を一括で調整するコークス製造プロセスであり、
前記投入熱量算出部は、前記目標炉温算出部で算出した前記目標炉温に応じた投入熱量として、前記複数の燃焼室に対して一括で調整する投入熱量を算出する、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項15】
前記炉温は、前記複数の燃焼室の温度の代表値である炉団温度である、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項16】
前記物理量予測モデルは、前記第1影響因子として乾留予定時間を含み、
窯出しの遅れ又は取戻しが発生した場合、その遅れ又は取戻し時間を用いて乾留予定時間を補正する乾留時間補正部を備えた、請求項1乃至15のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項17】
前記目標炉温算出部は、通り終了時及び通り開始時のうち少なくともいずれか一方で前記目標炉温を算出する処理を実行し、
前記乾留時間補正部は、前記目標炉温算出部が前記目標炉温を算出する際に、前記補正を実行する、請求項16に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項18】
前記乾留時間補正部は、少なくとも1つの通りにおける補正後の乾留予定時間を、その他の少なくとも1つの通りにおける補正後の乾留予定時間と異なる時間にする、請求項16又は17に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項19】
前記乾留時間補正部は、時間的に後の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値を、時間的に前の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値よりも大きくせずに、少なくとも2つの通りについて、時間的に後の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値を、時間的に前の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値よりも小さくする、請求項18に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項20】
前記目標炉温算出部で算出した前記目標炉温を、前記物理量の目標値と実績値との差に応じて補正する目標炉温補正部をさらに備え、
前記投入熱量算出部は、前記目標炉温補正部で補正した後の前記目標炉温に応じた投入熱量を算出する、請求項1乃至19のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置。
【請求項21】
複数の炭化室と複数の燃焼室とを備えるコークス炉において、コークスの乾留状態を表す物理量が目標値に応じた値になるように前記燃焼室に対する投入熱量を制御するコークス製造プロセスの制御方法であって、
前記燃焼室の温度である炉温を含む第1影響因子に基づいて前記物理量を予測する物理量予測モデルと、前記第1影響因子の実績値及びスケジュール値のうちの少なくとも一方と、を用いて、前記物理量を予測し、予測した前記物理量と前記物理量の目標値との差を表す項を含む第1の評価関数の値を算出し、算出した第1の評価関数の値に基づいて、目標炉温を算出する目標炉温算出工程と、
前記目標炉温算出工程で算出した前記目標炉温に応じた投入熱量を算出する投入熱量算出部工程、を備える、コークス製造プロセスの制御方法。
【請求項22】
請求項1乃至20のいずれか1項に記載のコークス製造プロセスの制御装置の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス製造プロセスの制御装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コークス製造プロセスの制御に関する技術として、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1では、ブロック窯出し法を用いており、コークス炉が備える全炭化室を複数の通り(ブロック)にグループ分けしている。そして、将来の装入炭の予測装炭量、予想水分、計画乾留時間、及び実績炉温から各通りの目標炉温をモデルにより演算し、重み付け平均して目標炉団温度(適正炉温)を求め、該目標炉団温度となるよう投入熱量を算出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-302350号公報
【特許文献2】特開2009-75737号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Flower Pollination Algorithm for Grobal Optimization, arXiv.org, Dec 19, 2013
【非特許文献2】モデル予測制御-III:一般化予測制御(GPC)とその周辺、増田士朗、山本透、大嶋正裕、システム/制御/情報、2002、Vol46(9)、pp.578-584
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1では、各通りの目標炉温を重み付け平均して目標炉団温度を求めるため、目標炉団温度は各通りの目標炉温と異なる値となる。つまり、この最終決定した目標炉団温度によって各通りのコークス温度がどのような値となるかは考慮されておらず、静的な計算となっている。このため、乾留後のコークス温度を目標温度に近づけることと、乾留後のコークス温度のばらつきを抑制することと、を実現するのが難しい。
【0006】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、コークスの乾留状態を表す物理量を目標値に応じた値にすることと、コークスの乾留状態を表す物理量のばらつきを抑制することと、を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコークス製造プロセスの制御装置は、複数の炭化室と複数の燃焼室とを備えるコークス炉において、コークスの乾留状態を表す物理量が目標値に応じた値になるように前記燃焼室に対する投入熱量を制御するコークス製造プロセスの制御装置であって、前記燃焼室の温度である炉温を含む第1影響因子に基づいて前記物理量を予測する物理量予測モデルと、前記第1影響因子の実績値及びスケジュール値のうちの少なくとも一方と、を用いて、前記物理量を予測し、予測した前記物理量と前記物理量の目標値との差を表す項を含む第1の評価関数の値を算出し、算出した第1の評価関数の値に基づいて、目標炉温を算出する目標炉温算出部と、前記目標炉温算出部で算出した前記目標炉温に応じた投入熱量を算出する投入熱量算出部と、を備える。
本発明のコークス製造プロセスの制御方法は、複数の炭化室と複数の燃焼室とを備えるコークス炉において、コークスの乾留状態を表す物理量が目標値に応じた値になるように前記燃焼室に対する投入熱量を制御するコークス製造プロセスの制御方法であって、前記燃焼室の温度である炉温を含む第1影響因子に基づいて前記物理量を予測する物理量予測モデルと、前記第1影響因子の実績値及びスケジュール値のうちの少なくとも一方と、を用いて、前記物理量を予測し、予測した前記物理量と前記物理量の目標値との差を表す項を含む第1の評価関数の値を算出し、算出した第1の評価関数の値に基づいて、目標炉温を算出する目標炉温算出工程と、前記目標炉温算出工程で算出した前記目標炉温に応じた投入熱量を算出する投入熱量算出部工程、を備える。
本発明のプログラムは、前記コークス製造プロセスの制御装置の各部としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コークスの乾留状態を表す物理量を目標値に応じた値にすることと、コークスの乾留状態を表す物理量のばらつきを抑制することと、を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るコークス製造プロセスの制御装置の機能構成を示す図である。
図2】コークス炉の概略構成を示す図である。
図3A】乾留中のコークス炉の様子の概略を示す図である。
図3B】窯出し(押出)作業中のコークス炉の様子の概略を示す図である。
図4】一の炭化室における装炭から押出までのコークス温度及び炉団温度の変化を示す図である。
図5】第1実施形態における目標炉温算出部の処理を示すフローチャートである。
図6図5のフローチャートにおける処理の概要を説明するための図である。
図7】第1実施形態における投入熱量算出部の処理を示すフローチャートである。
図8】炉団温度、コークス温度、及び投入熱量の関係を示す図である。
図9】第2実施形態におけるコークス温度予測モデルを説明するための図である。
図10】実施例1の結果を示す特性図である。
図11】第3実施形態における目標炉温算出部及び投入熱量算出部の処理を示すフローチャートである。
図12図11のフローチャートにおける処理の概要を説明するための図である。
図13】実施例2の結果を示す特性図である。
図14】窯出しの遅れがコークス温度に与える影響を説明するための図である。
図15】第4実施形態に係るコークス製造プロセスの制御装置の機能構成を示す図である。
図16】第4実施形態における目標炉温算出部、投入熱量算出部、及び乾留時間補正部の処理を示すフローチャートである。
図17】窯出しの遅れの一例を説明するための図である。
図18】窯出しの遅れの他の一例を説明するための図である。
図19】実施例3の結果を示す特性図である。
図20】窯出しの遅れの発生時のオペレータの判断による操業がコークス温度に与える影響を説明するための図である。
図21】乾留予定時間の補正の方法を説明するための図である。
図22】第6実施形態に係るコークス製造プロセスの制御装置の機能構成を示す図である。
図23】第6実施形態における目標炉温算出部、投入熱量算出部、及び目標炉温補正部の処理を示すフローチャートである。
図24】目標炉団温度パターンを補正する処理の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図2図3A及び図3Bを参照して、コークス炉1の概略構成、及びコークス製造プロセスの概要を説明する。
コークス炉1では、炭化室(窯)2と燃焼室3とが炉壁4を介して交互に配置されている。炭化室2は、装炭された石炭を乾留してコークスを得る。燃焼室3は、燃料ガスを燃焼させることにより、炭化室2を高温に保つ。
【0011】
コークス炉1によるコークス製造プロセスにおいて、窯出し装炭作業には、所謂ブロック窯出し法が採用される。窯出し装炭作業とは、押出機により炭化室2からコークスを押し出す作業(窯出し作業)と、引き続きその炭化室2に石炭を供給する作業(装炭作業)とで構成される。なお、以下では、窯出しのことを押出とも呼ぶ。ブロック窯出し法では、全炭化室2を複数のブロック(以下、通りと呼ぶ)に分割する。本実施形態では5の通りに分割している。具体的には1の通り(炭化室No.1、6、11、16…)、2の通り(炭化室No.2、7、12、17…)、3の通り(炭化室No.3、8、13、18…)、4の通り(炭化室No.4、9、14、19…)、及び5の通り(炭化室No.5、10、15、20…)のように5窯間隔で分割している。そして、窯出し装炭順序は、例えば1の通り、3の通り、5の通り、2の通り、4の通りの順として、急激な温度低下を防止するようにしている。また、各通りの中では、若番から順に窯出し装炭作業を行う。ある通りで窯出し装炭作業を終了したタイミングから、次の通り(上記例では例えば1の通りの次の3の通り)で窯出し装炭作業を終了するタイミングまでの時間を通り時間と呼ぶ。通り時間は、一般的に3~6時間程度になる。なお、本実施形態は、ブロック窯出し法に限定されない。例えば、以下の説明において、通り(ブロック)を個々の炭化室2として扱えば、1つの炭化室2の単位で窯出し装炭作業を実行する場合についても適用することができる。
【0012】
また、コークス炉製造プロセスにおいては、全燃焼室3の投入熱量を一括で調整し、各通りの平均的な乾留状態を制御する炉団制御を行う。すなわち、コークス炉1への投入熱量は、全燃焼室3に対して設置された一の調整弁5を操作するにより制御される。調整弁5は、燃料ガス及び燃焼用空気の混合気体の流量を調整するための弁である。また、調整弁5は、後述するコークス製造プロセスの制御装置100の制御下で、不図示のアクチュエータを介して操作される。全燃焼室3の温度の代表値を炉団温度と呼ぶ。例えば全燃焼室3のうちの複数の燃焼室3に、燃焼室3の雰囲気温度を測定する温度計6を設置し、温度計6が設置された燃焼室の平均温度を炉団温度とする。本実施形態では、コークス炉1の燃焼室3における温度である炉温が炉団温度であるものとする。なお、本実施形態の手法は、全燃焼室3の投入熱量を一括で調整する場合に限定されない。例えば、1つの炭化室2の単位で窯出し装炭作業を実行する場合、各燃焼室3に調整弁及びアクチュエータを設置し、炭化室2ごとに乾留状態(投入熱量)を制御しても良い。また、温度計6は、全燃焼室3のそれぞれに設置されていても、一部の燃焼室3にのみ設置されていても良い。例えば、全ての燃焼室3に温度計6を設置し、炉団温度に代えて各燃焼室3の温度を炉温として用いても良い。
【0013】
上述したようにコークスは、押出機により炭化室2から押し出される。図3Bに示す例では、押出機に備わる押出ラム7により炭化室2から押し出されたコークス10は、ガイド車9を経由して、ガイド車9の下方に配置された不図示の消火車に排出され、当該消火車により下工程に運搬される。なお、ガイド車9は、窯出し装炭作業を行う炭化室2の位置に移動する。図3Bでは、図3Bの下に位置する炭化室2で製造されたコークス10を、ガイド車9を経由して不図示の消火車に排出して窯出し装炭作業が終了した後、ガイド車9が図3Bの上に位置する炭化室2に移動することを、移動後のガイド車9を二点鎖線で示すことにより表している。また、図3Bでは、ガイド車9の内部に、非接触でコークス10の温度を測定する温度計8が設置されているものとする。温度計8は、ガイド車9に設けられている窓部を介してガイド車9の内部のコークス10の通過経路を臨むように設置されている。このように本実施形態では、コークス10の窯出し作業の最中(押出時)に炭化室2から出た直後のコークスの温度を測定するものとする。しかしながら、炭化室2から出たコークスの温度を測定していれば、コークス10の温度は、必ずしもこのようにして測定される必要はない。このような炭化室2から排出された際(押出時)のコークス10の温度をコークス温度と呼ぶ。
【0014】
コークス温度は、例えば、図3Bに示す温度計8による測定値により算出される。押出ラム7により炭化室2からコークス10を押し出しているときに、炭化室2から順次排出されるコークス10の温度を、温度計8で測定し、測定した各時刻及び各位置における温度の平均値(測定した各時刻及び各位置における温度の和を、温度の測定数で割った値)を、当該炭化室2で製造されたコークス10の温度とする。そして、1つの通りに属する炭化室2で製造されたコークス10の温度の平均値を、コークス温度(通り平均値)とする。通り平均値は、算術平均値(1つの通りに属する炭化室2で製造されたコークスの温度の和を、当該通りに属する炭化室2の数で割った値)である。なお、コークス温度は、炭化室2から排出された直後のコークス10の温度であることが好ましいため、図3Bに示すようにしてコークス温度を定めるものとするが、コークス温度を測定するための温度計やコークス温度の定め方自体は、例えば、コークス工場で採用されているものを用いればよく、以上のようなものに限定されない。
【0015】
図1に、第1実施形態に係るコークス製造プロセスの制御装置100(以下、単に制御装置と呼ぶ)の機能構成を示す。なお、制御装置100のハードウェアは、例えば、中央処理装置などのプロセッサ、主記憶装置、補助記憶装置、入力装置、及び出力装置を備える情報処理装置を用いることにより実現される。また、処理装置300のハードウェアは、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
制御装置100は、入力部101と、目標炉温算出部102と、投入熱量算出部103と、投入熱量設定部104とを備え、コークス温度(つまり、押出時のコークス温度)が、予め定められた目標温度に応じた値になるように投入熱量を制御する。
【0016】
入力部101は、コークス製造プロセスの操業データを入力する。操業データには、現在から過去の操業の実績値と、将来の操業のスケジュール値とが含まれる。より詳細には、操業の実績値は、コークス製造プロセスの制御内容と操業状態を示すデータを含み、例えば上述した各温度計8の測定値や炉団温度などのコークス温度へ影響を及ぼす影響因子である第1影響因子や、投入熱量などの炉団温度への影響因子である第2影響因子、コークス炉1に押し入れられる前のコークスの情報を含む。また、操業のスケジュール値には、例えば、コークス温度の目標値(目標温度)や、コークス炉の稼働率、装炭量等の各種のスケジュール値が含まれる。記憶部200は、コークス製造プロセスの操業データを時刻などの時系列が分かる情報と共に記憶しており、入力部101は、記憶部200から操業データを入力する。例えば、温度計8による測定値など、コークス製造プロセスを監視するために設置された各種センサのセンサ値が記憶部200に周期的に格納されることで、コークス製造プロセスの状態をリアルタイムに監視することが可能になっている。また、上述のようにして温度計6の測定値から得られるコークス温度(通り平均値)も操業データの1つ(コークス温度の実績値)として記憶部200に記憶されているものとする。なお、入力部101が記憶部200から操業データを入力する例としたが、入力部101は、外部機器からネットワークを介して操業データを入力したり、ユーザが操業データを直接入力したりする形態としてもよい。制御装置100が記憶部200を備えていても良い。
【0017】
目標炉温算出部102は、炉団温度を含むコークス温度への影響因子(第1影響因子)に基づいてコークス温度を予測するためのコークス温度予測モデルを用いて、上述したようにして測定されるコークス温度が目標温度(目標値)に応じた値になるように、将来の複数の通り時間(=N×通り時間(Nは2以上の整数。図2ではN=5))の目標炉団温度を算出する。目標炉温算出部102は、詳細は後述するが、コークス温度予測機能と、炉団温度最適化機能とを有する。コークス温度予測機能は、コークス温度予測モデルを用いて、コークス温度を予測する。炉団温度最適化機能は、コークス温度予測モデルにより予測したコークス温度と、コークス温度の目標温度との差を表す項を含む評価関数に基づいて、目標炉団温度を算出する。
【0018】
投入熱量算出部103は、目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度に応じた投入熱量を算出する。投入熱量算出部103は、詳細は後述するが、炉団温度予測機能と、投入熱量最適化機能とを有する。炉団温度予測機能は、投入熱量を含む炉団温度への影響因子(第2影響因子)に基づいて炉団温度を予測する炉団温度予測モデルを用いて、炉団温度を予測する。投入熱量最適化機能は、炉団温度予測モデルにより予測した炉団温度と、目標炉団温度との差を表す項を含む評価関数に基づいて、目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度を使用して、投入熱量を算出する。
【0019】
投入熱量設定部104は、投入熱量算出部103で算出した投入熱量をコークス製造プロセスに反映させるように、不図示のアクチュエータの制御装置に出力する。当該アクチュエータの制御装置は、不図示のアクチュエータを介して調整弁5(図2参照)を操作して、調整弁5の開度を、投入熱量算出部103で算出した投入熱量に対応する開度にする。
【0020】
以下、目標炉温算出部102及び投入熱量算出部103について詳述する。
まず、投入熱量算出部103で用いる炉団温度予測モデルについて説明する。
炉団温度予測モデルは、投入熱量を含む第2影響因子に基づいて炉団温度を予測するモデルである。本実施形態では、式(1)に示すように、予測対象の炉団温度よりも過去の炉団温度を説明変数として含む回帰モデルを採用する。Troは炉団温度[℃]、Qは投入熱量[GJ/h]、Sは装炭量[トン]、Wは石炭水分量[%]を表す。また、tは現在時刻の規定時間先(以下は規定時間を1時間として説明)の時間を表す。目的変数とするΔTro(t)、説明変数とするΔQ(t-i)、ΔTro(t-i)、ΔS(t-i)、ΔW(t-i)は、それぞれ、炉団温度Tro、投入熱量Q、炉団温度Tro、装炭量S、石炭水分量Wの1時間前からの変化量で表される。
【0021】
【数1】
【0022】
表1に、本実施形態で用いる炉団温度予測モデルの説明変数(○)と目的変数(★)との関係を示す。時間遅れを考慮するために、1時間周期で連続する複数の期間分の実績値、(炉団温度Tro以外については)将来1時間先のスケジュール値を説明変数に与える値として用いて、炉団温度予測モデルにより、目的変数である将来1時間先の炉団温度を予測する。詳細には、1時間先(t)~5時間前(t-6)までの○で示す各項目を説明変数に採用している。炉団温度には、操業起因の周期的な変動が存在するため、前処理として移動平均フィルタを適用し、周期変動を抑制するのが好ましい。
【0023】
【表1】
【0024】
炉団温度予測モデルにおける目的変数および説明変数の具体的な内容について以下に説明する。
<目的変数>
ΔTro(t):時刻t-1から時刻tまでの炉団温度Troの変化分(ΔTro(t)=Tro(t)-Tro(t-1))
<説明変数>
ΔQ(t-i):時刻t-i-1から時刻t-iまでの投入熱量Qの変化分(ΔQ(t-i)=Q(t-i)-Q(t-i-1)
ΔTro(t-i):時刻t-i-1から時刻t-iまでの炉団温度Troの変化分(ΔTro(t-i)=Tro(t-i)-Tro(t-i-1)
ΔS(t-i):時刻t-i-1から時刻t-iまでの装炭量Sの変化分(ΔS(t-i)=S(t-i)-S(t-i-1)
ΔW(t-i)は、時刻t-i-1から時刻t-iまでの石炭水分量Wの変化分(ΔW(t-i)=W(t-i)-W(t-i-1)
【0025】
式(1)の係数ai、bi、ci、diは、それぞれ、説明変数であるΔQ(t-i)、ΔTro(t-i)、ΔS(t-i)、ΔW(t-i)に対する係数である。係数ai、bi、ci、diとして、コークス炉1の過去の操業結果に式(1)の形が最も合うときの係数が別途求められる。例えば、コークス炉1の過去の操業結果から得られる、一組のΔQ(t-i)、ΔTro(t-i)、ΔS(t-i)、及びΔW(t-i)のデータを1つの教師データとして多数の教師データを作成し、教師データを用いて重回帰分析を実行することにより係数ai、bi、ci、diを求めればよい。
【0026】
なお、装炭量Sは、予測対象のコークス炉1に含まれる全ての炭化室2における値の合計値であり、石炭水分量Wは、予測対象のコークス炉1に含まれるすべての炭化室2における値の平均値である。なお、石炭水分量Wは、例えば、石炭の質量割合(質量%)で表される。また、説明変数であるΔQ(t-i)、ΔTro(t-i)、ΔS(t-i)、ΔW(t-i)を求める際に過去の値については実績値を用い、将来の値についてはスケジュール値(操業スケジュールで定められている値)又は既に式(1)で算出したΔTro(t)により求められる炉団温度Tro(t)を用いる。tの値を1時間ずつ更新することで、将来の各時刻tにおける炉団温度Tro(t)が算出される。本実施形態においては、式(1)が本発明でいう炉温予測モデルに相当する。
【0027】
なお、本発明を適用する上で、炉団温度予測モデルは必ずしもこの形でなくてもよく、例えば、変化量の与え方を変更したり、目的変数の絶対値を直接予測したりしてもよい。また、モデルの構築手法としても、必ずしも式(1)の線形式(線形回帰モデル)でなくてよく、例えば物理モデル(物理現象を表す微分方程式(又は当該微分方程式を離散化した式)を含むモデル)や、式(1)以外の機械学習による予測モデル等としてもよい。
【0028】
次に、目標炉温算出部102で用いるコークス温度予測モデルについて説明する。
ここで、一の炭化室2における装炭作業の開始から窯出し作業の終了までの時間を乾留サイクルと呼ぶ。本実施形態では、乾留サイクルにおける1サイクルは、連続して窯出し装炭作業が行われる5つの各通りの通り時間の和となる。コークス温度予測モデルは、炉団温度を含む第1影響因子に基づいてコークス温度を予測するモデルである。本実施形態では、式(2)に示すように、単一の炭化室2の物理現象に基づく回帰モデルを採用する。Tcoはコークス温度[℃]、Troは炉団温度[℃]、ttは通り時間[hr]、tkは乾留時間[hr]、Sは装炭量[トン]、Wは石炭水分量[%]を表す。また、n-j(図4に示すn-9~n)は、乾留サイクルを通りの数で分割した期間を特定する変数であり、各期間は、通り時間と同じ時間である。本実施形態では、5窯間隔で窯出し装炭が行われるため、一の炭化室2における装炭から押出までは5つの通り時間(n~n-4の5つの期間とn-5~n-9の5つの期間)に分割される。2つの変数n-jの値が連続する値である場合、当該2つの変数で特定される期間は、連続する期間であることを表す(例えば、nの期間とn-1の期間とは連続する期間である)。連続するn、n-1の期間について、窯出し装炭順序が、1の通り、3の通り、5の通り、2の通り、4の通りの順であり、nの期間で1の通りにおける窯出し装炭作業が行われる場合についてより具体的に説明すると、nの期間は、1の通りにおける窯出し装炭作業が行われる期間であり、当該1の通りの通り時間と同じ時間の期間である。また、n-1の期間は、4の通りにおける窯出し装炭作業が行われる期間であり、当該4の通りの通り時間と同じ期間である。以下では、n-jの期間で窯出し装炭作業が行われる通りをn-jの期間に対応する通りと呼ぶこととする。
【0029】
【数2】
【0030】
式(2)において目的変数とするΔTco(n)、説明変数とするΔTro(n)、Δtt(n)、Δtk(n)、ΔS(n)、ΔW(n)は、それぞれ、コークス温度Tco、炉団温度Tro、通り時間tt、乾留時間tk、装炭量S、石炭水分量Wの、同じ炭化室の乾留サイクルにおける1サイクル前(5通り前)からの変化量で表される。図4に、一の炭化室における装炭から押出までのコークス温度及び炉団温度の変化を示す。図4は、一の炭化室における装炭から押出までの乾留サイクルにおける2サイクル(2回の乾留サイクル)分を示す。
【0031】
表2に、本実施形態で用いるコークス温度予測モデルの説明変数(○)と目的変数(★)との関係を示す。乾留中の操業データを説明変数として用いて、コークス温度予測モデルにより、目的変数である各炭化室のコークス温度を予測する。詳細には、炉団温度及び通り時間は、装炭から押出までの通り毎の値をそれぞれ使用する。乾留時間、装炭量、石炭水分量は、乾留サイクルにおける最初の装炭時等において与えられる乾留サイクル毎の値をそれぞれ使用する。
【0032】
【表2】
【0033】
コークス温度予測モデルにおける目的変数および説明変数の具体的な内容について、図4を参照しながら以下に説明する。図4においては、nの期間に対応する通りにおけるコークス温度を、nの期間に対応する通りの直前の通り(の最後の窯出し作業)が終了したタイミング、又は、nの期間に対応する通り(の最初の装炭作業)が開始するタイミングで予測するものとする。この場合、nの期間よりも前の各期間n-9~n-1は、既にコークス温度の予測が終了している期間になる。例えば、期間nの直前に行われるコークス温度の予測は、n-1の期間に対応する通りにおけるコークス温度の予測である。この場合、以下の説明において、n-1~n~9の期間をそれぞれn-2~n~10の期間としてn-1の期間に対する通りにおけるコークス温度の予測が行われている。なお、窯出し作業及び装炭作業の開始時は、例えば、コークス工場の操業マニュアルにより各作業において最初に行うとされている処理が開始する時刻とすればよい。同様に、窯出し作業及び装炭作業の終了時は、例えば、コークス工場の操業マニュアルにより各作業において最後に行うとされている処理が終了する時刻とすればよい。また、図4において、nの期間を含むn-4~nの期間を今回の乾留サイクルと呼び、当該乾留サイクルの1つ前の乾留サイクルをn-9~n-5の期間とし、前回の乾留サイクルと呼ぶこととする。
【0034】
<目的変数>
ΔTco(n):ある炭化室2の今回の乾留サイクルにおけるコークス温度の、当該炭化室2の前回の乾留サイクルにおけるコークス温度からの変化量(ΔTco(n)=Tco(n)-Tco(n-5))
なお、上述したようにコークス温度は、窯出し作業が行われなければ得られないため、乾留サイクルのサイクルで算出される。また、n-5の「5」は、通りの数であり、通りの数に応じて変更される(このことは説明変数においても同じである)。
【0035】
<説明変数>
ΔTro(n-j):ΔTro(n-j)の算出方法は、nの期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合と、n+1の期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合と、で異なる。
<<nの期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合>>
j=0の場合:(n-jの期間における目標炉団温度)-(n-j-5の期間における実績炉団温度)(ΔTro(n-j)=Tro(n-j)-Tro(n-j-5))
j=1、2、・・・(j≧1の場合):(n-jの期間における実績炉団温度)-(n-j-5の期間における実績炉団温度)(ΔTro(n-j)=Tro(n-j)-Tro(n-j-5))。
【0036】
<<n+1の期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合>>
j=0、1(0≦j≦1)の場合:(n-jの期間における目標炉団温度)-(n-j-5の期間における実績炉団温度)(ΔTro(n+1-j)=Tro(n+1-j)-Tro(n+1-j-5))
j=2、3、・・・(j≧2)の場合:(n+1-jの期間における実績炉団温度)-(n+1-j-5の期間における実績炉団温度)(ΔTro(n+1-j)=Tro(n+1-j)-Tro(n+1-j-5))
【0037】
なお、炉団温度は1時間毎に得られるため、ここでの炉団温度は、通り時間毎の代表値(本実施形態では通り時間毎の平均値)とする。また、n-j-5の「5」は、通りの数であり、通りの数に応じて変更される(このことは、その他の説明変数においても同じである)。また、n-j-5の期間は、前回の乾留サイクルに属する期間であり、今回の乾留サイクルに属するn-jの期間の、乾留サイクルにおける1サイクル前の期間である。n-jの期間において実績値が得られている場合には実績値を用い、実績値が得られていない場合には、目標値を用いる。
【0038】
Δtt(n-j):Δtt(n-j)の算出方法も、ΔTro(n-j)と同様に、nの期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合と、n+1の期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合と、で異なる。
<<nの期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合>>
j=0の場合:(n-jの期間における計画通り時間)-(n-j-5の期間における実績通り時間)(Δtt(n-j)=tt(n-j)-tt(n-j-5))
j=1、2、・・・(j≧1の場合):(n-jの期間における実績通り時間)-(n-j-5の期間における実績通り時間)(Δtt(n-j)=tt(n-j)-tt(n-j-5))。
【0039】
<<n+1の期間に対応する通りにおけるコークス温度を予測する場合>>
j=0、1(0≦j≦1)の場合:(n-jの期間における計画通り時間)-(n-j-5の期間における実績通り時間)(Δtt(n+1-j)=tt(n+1-j)-tt(n+1-j-5))
j=2、3、・・・(j≧2)の場合:(n+1-jの期間における実績通り時間)-(n+1-j-5の期間における実績通り時間)(Δtt(n+1-j)=tt(n+1-j)-tt(n+1-j-5))
ΔTro(n-j)と同様に、Δtt(n-j)においても、n-jの期間において実績値が得られている場合には実績値を用い、実績値が得られていない場合には、計画値を用いる。
【0040】
Δtk(n):ある炭化室2の今回の乾留サイクルにおける乾留予定時間-当該炭化室2の前回の乾留サイクルにおける実績乾留時間(Δtk=tk(n)-tk(n-5))
ΔS(n):ある炭化室2の今回の乾留サイクルにおける装炭量-当該炭化室2の前回の乾留サイクルにおける実績装炭量(ΔS=S(n)-S(n-5))
ΔW:ある炭化室2の今回の乾留サイクルにおける石炭水分量-当該炭化室2の前回の乾留サイクルにおける実績石炭水分量(ΔW=W(n)-W(n-5))
【0041】
なお、式(2)において、今回の乾留サイクルにおける乾留時間、装炭量、及び石炭水分量の実績値が得られているタイミングでnの期間におけるコークス温度Tco(n)を算出(予測)する場合には、当該実績値を用い、そうでない場合には、スケジュール値を用いる。
また、今回の乾留サイクルにおける装炭量および石炭水分量は、前回の乾留サイクルにおける最後の通り(n-5の期間に対応する通り)で得られるため、表2では、n-5の欄に〇を付している。
また、本発明を適用する上で、コークス温度予測モデルは必ずしも上述の形でなくてもよく、例えば、変化量の与え方を変更したり、目的変数の絶対値を直接予測したりしてもよい。また、モデルの構築手法としても、必ずしも式(2)の線形式でなくてよく、例えば式(2)以外の機械学習による予測モデルや物理モデル等としてもよい。本実施形態においては、式(2)が本発明でいう物理量予測モデルに相当する。
【0042】
式(2)の係数aj、bj、c、d、eは、それぞれ、説明変数であるΔTro(n-j)、Δtt(n-j)、Δtk(n)、ΔS(n)、ΔW(n)に対する係数である。係数ai、bi、ci、diとして、コークス炉1の過去の操業結果に式(2)の形が最も合うときの係数が別途求められる。例えば、コークス炉1の過去の操業結果から得られる、一組のTro(n-j)、Δtt(n-j)、Δtk(n)、ΔS(n)、及びΔW(n)のデータを1つの教師データとして多数の教師データを作成し、教師データを用いて重回帰分析を実行することにより係数aj、bj、c、d、eを求めればよい。
【0043】
次に、図5図6を参照して、第1実施形態における目標炉温算出部102の処理を説明する。
図5は、目標炉温算出部102の処理を示すフローチャートである。図5のフローチャートは、新たな通り時間が到来する度など通り時間毎に実行される。図5のフローチャートを開始するタイミングは、図4を参照しながら説明したように、各通りにおける最後の窯出し作業が終了したタイミングであるものとする。ただし、図5のフローチャートを開始するタイミングは、各通りにおける最初の装炭作業を開始するタイミングであってもよい。
【0044】
ステップS501で、目標炉温算出部102は、入力部101を介して、炭化室2毎に、現在から過去の複数の通り時間分のコークス温度に影響する影響因子のデータ(以下、炭化情報データと呼ぶ)を取り込む。この炭化情報データ(上記影響因子の時系列)は、実績値のみで構成されても良いし、実績値が不足している場合など必要がある場合にはスケジュール値を含んでも良い。炭化情報データは、装炭時の石炭の特性や押出時のコークスの状態、乾留中の炉団温度等を表すデータであり、具体的に炭化情報データは、例えば、下記のようなデータを含むものである。
・コークス温度、乾留時間
・装炭量、石炭水分量
・炉団温度、通り時間
本実施形態では、コークス温度及び乾留時間は、各炭化室2におけるコークスの窯出し作業の終了時又は終了後に得られる(上述したように、コークス温度はコークスの押出時に測定されるが、最終的なコークス温度は、窯出し作業の終了時又は終了後に得られる)。装炭量は、各炭化室2における装炭作業の終了時又は終了後に得られる。石炭水分量は、石炭の乾留を開始する前(装炭作業の開始前(例えばコークス炉1に搬送される前))に得られる。炉団温度は、上述した通り、温度計6が設置された全燃焼室の温度の通り時間毎の平均値である。また、炭化情報データにおいて、コークス温度、装炭量、石炭水分量及び炉団温度として、実績値が用いられる。ただし、例えば、スケジュール値の信頼性が高い場合には、これらの実績値にかえてスケジュール値を用いてもよい。また、炭化情報データにおいて、乾留時間及び通り時間として、実績値およびスケジュール値の双方が用いられる。
【0045】
ステップS502で、目標炉温算出部102は、予め定められた制約条件内で、将来の連続した複数の通り時間にわたる目標炉団温度の推移(以下、目標炉団温度パターンと呼ぶ)の候補となる、目標炉団温度パターンの初期値を1または複数生成する。なお、将来の連続した複数の通り時間の最初の通りは、装炭窯出し作業が実行されている現在の通りの次の通りであるのが好ましい。コークス炉1は時定数(投入熱量を変化させてから、その変化がコークス温度に影響するまでの時間遅れ)が大きいためである。ただし、将来の連続した複数の通り時間の最初の通りは、当該現在の通りの2以上先の通りであってもよい。上記の制約条件としては、例えば炉団温度の上下限値や、炉団温度の変化量の上下限値がある。図6(a)に、目標炉団温度パターン601の例を示す。なお、図6(a)及び(b)において制御開始は、制御装置100による制御が開始したタイミングであることを示す。図6(a)及び(b)では、制御開始と示している時刻が現在時刻になる。目標炉団温度パターン601は、将来の複数の通り時間において、通り時間tt毎に階段状に変化する目標炉団温度を表す。目標炉温算出部102は、例えば通り時間tt毎の目標炉団温度を制約範囲内で乱数によって決めて、所定数(ここでは例えば50個)の目標炉団温度パターンの初期値を生成する。なお、所定数の目標炉団温度パターンの初期値は、全ての炭化室2において共通のものである。
【0046】
ステップS503で、目標炉温算出部102は、炭化室2毎に、目標炉団温度パターンの候補(ステップS502で生成した目標炉団温度パターンの初期値又は後述するステップS507で生成した目標炉団温度パターン)と、ステップS501で取り込んだ炭化情報データ(乾留時間、装炭量、石炭水分量、炉団温度、通り時間)を用いて、式(2)のコークス温度予測モデルの右辺の計算を実行して、式(2)のコークス温度予測モデルの左辺の値を算出し、算出した値から、各炭化室2の将来のコークス温度を予測する。各炭化室2の将来のコークス温度は、目標炉団温度パターン601が示す期間(将来の連続した複数の通り時間)の範囲内において算出される。
【0047】
ステップS504で、目標炉温算出部102は、ステップS503において予測した各炭化室2の将来のコークス温度を、通り毎の平均値である通り平均値に変換する(以下、コークス温度の予測値602と呼ぶ)。図6(b)に、コークス温度の予測値602を得る処理の概要を示す。通り時間tt毎にいずれかの通りで押出が行われるので、目標炉温算出部102は、通り時間tt毎に、押出が行われる通りでのコークス温度の予測値602を求める。具体的には、コークス温度の予測値602は、押出が行われる通りに属する複数(図2の例では13)の炭化室2について、ステップS503において予測した各炭化室2のコークス温度同士を加算して、当該通りに属する炭化室2の数で割ることにより求められる。なお、コークス温度の予測値602を表すのに、通り毎の将来のコークス温度の代表値として、通り平均値を用いる例を説明したが、例えば通り毎の将来のコークス温度の最小値を用いるようにしてもよい。このように通り毎の将来のコークス温度の代表値として最小値を用いれば、コークス温度が低くなりすぎることにより、所謂コークスの生焼けが生じることをより確実に防止することができる。
【0048】
ステップS505で、目標炉温算出部102は、式(3)の評価関数J1を計算する。評価関数J1は、ステップS504において算出した、通り毎の将来のコークス温度の代表値であるコークス温度の予測値602と、当該通りにおけるコークス温度の目標温度603との差を表す項(右辺第1項)を含む(図6(b)を参照)。なお、右辺第2項は、コークス温度が予め設定された下限制約を満たすようにするために設けた項である。コークス温度はコークスの品質に影響することから、コークス温度として、所謂コークスの生焼けを防止するために最低限必要な温度を確保するためである。また、右辺第3項は、目標炉団温度の変化量、図6(a)でいえば目標炉団温度パターン601の階段状の変化分が大きくなるのを抑えるために設けた項である。目標炉団温度が急激に変化することは、操炉の安定性の面等から好ましくないからである。また、右辺第4項は、目標炉団温度が高温になるのを抑えるために設けた項である。目標炉団温度が高温になり過ぎることは、操炉の安定性やコストの面等から好ましくないからである。なお、本実施形態においては、評価関数J1が本発明でいう第1の評価関数に相当する。
1=(コークス温度の目標温度-コークス温度の予測値)+(コークス温度の下限制約)+(目標炉団温度の変化量)+(目標炉団温度) ・・・(3)
なお、ステップS505を表すのに、通り毎の将来のコークス温度の代表値を用いて評価関数を計算する例を説明したが、例えばステップS503において予測した各炭化室2の将来のコークス温度と、各炭化室2におけるコークス温度の目標温度との差を用いて評価関数J1の右辺第1項を計算するようにしてもよい。
【0049】
ステップS506で、目標炉温算出部102は、計算終了条件に達したか否かを判定する。例えば予め定められた繰り返し計算の回数に達したことを計算終了条件としてもよい。或いは、繰り返し計算の中で評価関数J1の値が収束することを計算終了条件としてもよい。計算終了条件に達していないと判定した場合、ステップS507に進む。計算終了条件に達したと判定した場合、ステップS508に進む。
【0050】
ステップS507で、目標炉温算出部102は、目標炉団温度パターンの候補となる1または複数の目標炉団温度パターンを新たに生成し、ステップS503に戻る。なお、ステップS502で生成される目標炉団温度パターンの初期値の数と、ステップS507で新たに生成される目標炉団温度パターンの数は、同じであるのが好ましい。例えばメタヒューリスティクスアルゴリズムであるFPA(Flower Pollination Algorithm)(例えば非特許文献1を参照)に基づいて、評価関数J1を小さくする方向の目標炉団温度パターンを探索し、50個の目標炉団温度パターンを新たに生成する。なお、最適化手法(最適化問題を求解するアルゴリズム)としてFPAを利用する例としたが、GA(Genetic Algorithm)やPSO(Particle Swarm Optimization)等の最適化手法を利用してもよい。このようにステップS506で計算終了条件に達するまで、ステップS507で目標炉団温度パターンを新たに生成し、ステップS503~ステップS505の処理を繰り返す。
【0051】
ステップS508で、目標炉温算出部102は、目標炉団温度パターンの候補のうち、評価関数J1を最小にする目標炉団温度パターンを投入熱量算出部103に出力する。なお、例えば、式(3)の右辺の各項に(-1)を乗算したものを評価関数J1とする場合、目標炉温算出部102は、評価関数J1を最大にする目標炉団温度パターンを探索することになる。
【0052】
以上のように、炉団温度を変化させた場合におけるコークス温度を予測し、目標を満足するような(評価関数J1を最小にするような)最適な炉団温度パターンを決定する。これにより、図8(a)に示すように、コークス温度の予測値602が、コークス温度の目標温度603に応じた値になるように、目標炉団温度パターン601を算出することができる。
【0053】
次に、図7を参照して、第1実施形態における投入熱量算出部103の処理を説明する。
図7は、投入熱量算出部103の処理を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、コークス炉1に対する投入熱量の制御周期(ここでは例えば1時間周期など)で実行される。このように、図7に示す投入熱量を算出するサイクルは、図5に示す目標炉団温度パターンを算出するサイクルに比べて短い。
ステップS701で、投入熱量算出部103は、入力部101を介して、炭化室2毎に、現在から過去の1時間周期で連続する複数の期間分の炉団温度に影響する影響因子のデータ(以下、燃焼情報データと呼ぶ)を取り込む(表1に示す例では、各期間は1時間である)。この燃焼情報データ(上記影響因子の時系列)は、実績値のみで構成されても良いし、実績値が不足している場合など必要がある場合にはスケジュール値を含んでも良い。燃焼情報データは、コークス炉への投入熱量や装炭時の石炭の特性等を表すデータであり、具体的に燃焼情報データは、例えば、炉団温度、投入熱量、全炭化室2の合計の装炭量、石炭水分量を含むものである。
【0054】
ステップS702で、投入熱量算出部103は、式(1)のように炉団温度予測モデルが線形式で表せることを利用し、一般化予測制御(GPC)(例えば非特許文献2を参照)により、式(4)の評価関数J2を最小にする、1時間毎の投入熱量を算出する。炉団温度予測モデルの入力データには、ステップS701で取り込んだ燃焼情報データを使用する。また、GPCの目標値には、図5で説明したように目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度パターンで表される目標炉団温度を使用する。評価関数J2の右辺第1項は、炉団温度予測モデルにより予測した炉団温度(以下、炉団温度の予測値と呼ぶ)と、図5で説明したように目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度パターンで表される目標炉団温度との差を表す。この項により、目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度パターンを実現する投入熱量を算出することができる。なお、右辺第2項は、調整弁5を操作することにより制御される投入熱量の変化量、ここでは隣り合う時間帯の投入熱量の変化分が大きくなるのを抑えるために設けた項である。投入熱量が急激に変化するということは、調整弁5を大きく操作する必要があるということであり、操炉の安定性や実現性の面から好ましくないからである。なお、本実施形態においては、評価関数J2が本発明でいう第2の評価関数に相当する。
2=(目標炉団温度-炉団温度の予測値)2+(投入熱量の変化量)2 ・・・(4)
GPCでは、式(1)の炉団温度予測モデル、式(4)の評価関数J2をそれぞれベクトル形式に記述し、ベクトル形式の炉団温度予測モデルをベクトル形式の評価関数に代入する。このようにして得た評価関数を投入熱量について偏微分することにより、式(4)の評価関数J2を最小にする投入熱量を求める。
【0055】
ステップS703で、投入熱量算出部103は、評価関数J2を最小にする投入熱量を投入熱量設定部104に出力する。これを受けて、投入熱量設定部104は、投入熱量算出部103で算出した投入熱量をコークス製造プロセスに反映させるように、不図示のアクチュエータの制御装置に出力する。当該アクチュエータの制御装置は、不図示のアクチュエータを介して調整弁5(図2参照)を操作して、調整弁5の開度を、投入熱量算出部103で算出した投入熱量に対応する開度にする。なお、例えば、式(4)の右辺の各項に(-1)を乗算したものを評価関数J2とする場合、投入熱量算出部103は、評価関数J2を最大にする投入熱量を求めることになる。
【0056】
以上のように、投入熱量を変化させた場合における炉団温度を予測し、目標を満足するような(評価関数J2を最小にするような)最適な投入熱量を決定する。これにより、図8(b)に示すように、炉団温度の予測値801が、目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度パターン601に応じた値になるように、1時間毎の投入熱量802を算出することができる。すなわち、図8(a)に示す目標炉団温度パターン601を実現する投入熱量802を算出することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、投入熱量算出部103においてGPCを利用して投入熱量を制御するようにしたが、これに限られるものではない。例えば図5のフローチャートと同様、投入熱量の候補を与え、評価関数J2を最小にする投入熱量を探索するようにしてもよい。或いは、実炉団温度が、目標炉温算出部102で算出した目標炉団温度パターン601に応じた値になるように投入熱量を変えるPID制御を実行するようにしてもよい。
【0058】
以上述べたように、コークス温度が目標温度に応じた値になるように投入熱量を制御するに際して、炉団温度を含む第1影響因子によって各通りのコークス温度がどのように変化するかを考慮して、将来の複数の通り時間の目標炉団温度(目標炉団温度パターン)を動的に算出することができる。これにより、コークス温度の目標追従及びばらつき抑制を実現することができ、生産コスト低減(例えば過乾留による過剰乾留熱量の低減)、生産安定化(例えば未乾留や過乾留による押出時の押詰まりリスクの回避)、品質安定化(乾留状態のばらつきによる品質ばらつきの抑制)といった効果が期待される。
【0059】
上述した実施形態では、コークス温度が、予め定められた目標温度に応じた値になるように投入熱量を制御する例を説明したが、これに限られるものではない。コークスの乾留状態を表す物理量が、予め定められた目標値に応じた値になるように投入熱量を制御するものであれば、本発明を適用することができる。コークスの乾留状態を表す物理量としては、コークス温度以外に、例えば炉壁4の温度がある。なお、コークスの乾留状態とは、製造されたコークスにおいて石炭がどの程度乾留(熱分解)された状態であるのかを示し、コークスの品質を表す指標である。
【0060】
[第2実施形態]
次に、図9を参照して、第2実施形態を説明する。第2実施形態では、コークス温度予測モデルの変形例を説明する。
第1実施形態で述べたコークス温度予測モデルは、単一の炭化室2の物理現象に基づく回帰モデルであるが、単一の炭化室2の物理現象に着目するだけでは十分とはいえないことがある。単一の炭化室2の物理現象に着目するだけでは、隣接する炭化室2の温度変化の傾向や、操業条件の変化の傾向を捉えられないからである。また、石炭の熱物性値の変化や、各通りの炉団温度の影響の仕方等による非線形性を捉えられないからである。
【0061】
そこで、図9に示すように、目標炉温算出部102で用いるモデルとして、コークス温度を予測する回帰モデル901と、回帰モデル901の予測誤差を推定し、推定誤差を出力するビッグデータモデル902とを備える。
回帰モデル901は、例えば式(2)のように表され、操業データを入力として、各炭化室のコークス温度の予測値を出力する。
ビッグデータモデル902は、機械学習による推定モデルであり、本実施形態では、ビッグデータ機械学習手法で構成される非線形モデルとして構築される。ビッグデータモデル902は、操業データ及び回帰モデル901の予測値を入力として、回帰モデル901の予測誤差を推定し、推定誤差を出力する。この推定誤差に所定のゲインKを乗算した値を回帰モデル901の予測値に加算することにより、予測値を補正する。ビッグデータ機械学習手法には、勾配ブースティング決定木(特許文献2や、特許文献2で挙げられている非特許文献8を参照)を採用する。表3に、本実施形態で用いるビッグデータモデルの説明変数(○)と目的変数(★)との関係を示す。詳細には、1通り先の操業データ(スケジュール値含)と、現在から過去5通り前の操業データとを説明変数に採用している。
【0062】
【表3】
【0063】
このように、本実施形態のコークス温度予測モデルは、回帰モデル901の予測誤差をビッグデータ機械学習手法で推定し、補正を行うハイブリッドモデル構成となっている。これにより、隣接する炭化室の温度変化の傾向、操業条件の変化の傾向、石炭の熱物性値の変化、各通りの炉団温度の影響の仕方等による非線形性を捉えることができる。
なお、勾配ブースティング決定木を利用してビッグデータモデル902を構築する例としたが、ニューラルネットやディープラーニング等の機械学習手法を利用してビッグデータモデル902を構築してもよい。
【0064】
[実施例1]
過去の実績データを使用して、第2実施形態による制御手法(以下、実施例1の説明で本制御手法と呼ぶ)のオフラインシミュレーションを実施した。
図10(a)~(c)に、オフラインシミュレーションを実施した結果である、コークス温度、炉団温度、投入熱量を示す。図中の点線が本制御手法による結果である。また、比較例(以下、オペレータ操業手法と呼ぶ)として、オペレータの判断で調整弁5を操作することにより操業した結果を実線で示す。
オペレータ操業の場合、将来のコークス温度を予測するのが難しいため、操業変化や外乱の影響を受け、図10(a)に示すように、検証区間A~Cのいずれにおいてもコークス温度にばらつきが生じている。
それに対して、本制御手法では、検証区間A~Cのいずれにおいてもオペレータ操業手法に比べ将来を予測した積極的なアクションが可能となり(図10(b)、(c))、図10(a)に示すように、コークス温度を目標温度に応じた値にすることができるとともに、コークス温度のばらつきを抑制することができている。これにより、生産コスト低減、生産安定化、品質安定化といった効果が期待される。
【0065】
[第3実施形態]
第3実施形態は、目標炉温算出部102において将来の複数の通り時間の目標炉団温度(目標炉団温度パターン)を算出するときに、投入熱量の制御の観点から見た目標炉団温度パターンの実現性を考慮するようにした例である。
目標炉団温度パターンを実現するのに投入熱量の変化量を大きくする必要がある場合、調整弁5を大きく操作しなければならず、操炉の安定性や実現性の面から好ましくなく、この目標炉団温度パターンは実現性が良いとはいえない。目標炉団温度パターンの実現性が良くない場合、コークス温度を目標温度に応じた値にすることと、コークス温度のばらつきを抑制することとを、高精度に実行することができなくなることが懸念される。
そこで、第3実施形態では、目標炉温算出部102において目標炉団温度パターンを算出するときに、投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす炉団温度をコークス温度予測モデルに与えることにより、目標炉団温度パターンの実現性を良くする。
【0066】
以下、第3実施形態を説明する。第1実施形態と共通する内容の説明は省略し、第1実施形態との相違を中心に説明する。
第1実施形態では、目標炉温算出部102が単独で目標炉団温度パターンを算出し、それを投入熱量算出部103に渡す構成となっている。それに対して、第3実施形態では、目標炉温算出部102は、投入熱量算出部103と協働して目標炉団温度パターンを算出し、それを投入熱量算出部103に渡す構成となっている。本実施形態に係る制御装置100の機能構成は、図1に示す機能構成に対し、目標炉温算出部102から投入熱量算出部103に向かう片矢印線を、目標炉温算出部102と投入熱量算出部103とを結ぶ両矢印線に変更したものである(第3実施形態をベースとして説明する後述の第4、第6実施形態の図15図22に示す機能構成を参照)。また、第3実施形態においては、目標炉温算出部102及び投入熱量算出部103の機能の一部が第1実施形態と異なる。したがって、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の図示を省略すると共に、入力部101、目標炉温算出部102、投入熱量算出部103、及び投入熱量設定部104について第1実施形態に係る制御装置100と同一の部分についての詳細な説明を省略する。
【0067】
図11図12を参照して、第3実施形態において目標炉団温度パターンを算出する処理を説明する。
図11は、目標炉温算出部102及び投入熱量算出部103の処理を示すフローチャートである。図11のフローチャートは、通り時間周期で実行される。図11のフローチャートを開始するタイミングは、例えば、図5のフローチャートを開始するタイミングと同様に、各通りにおける窯出し作業が終了したタイミングであるが、必ずしもこのタイミングに限定されず、例えば、各通りにおける装炭作業を開始するタイミングであってもよい。また、図12は、図11のフローチャートにおける処理の概要を説明するための図である。図12の上段は、図6(a)の上段と同様、コークス温度の目標温度603の例を示す。
ステップS1101で、目標炉温算出部102は、入力部101を介して、炭化情報データを、現在から過去の複数の通り時間分取り込む。ステップS1101は、図5のステップS501と同様の処理である。
【0068】
ステップS1102で、投入熱量算出部103は、入力部101を介して、燃焼情報データを、現在から過去の1時間周期で連続する複数の期間分取り込む。ステップS1102は、図7のステップS701と同様の処理である。
【0069】
ステップS1103で、目標炉温算出部102は、目標炉団温度パターンの候補となる目標炉団温度パターンの初期値を1または複数生成する。ステップS1103は、図5のステップS502と同様の処理であり、図12の中段に、目標炉団温度パターン601の例を示す。目標炉温算出部102は、生成した目標炉団温度パターンの初期値を投入熱量算出部103に渡す。
【0070】
ステップS1104で、投入熱量算出部103は、式(1)のように炉団温度予測モデルが線形式で表せることを利用し、一般化予測制御(GPC)により、式(4)の評価関数J2を最小にする投入熱量を算出する。炉団温度予測モデルの入力データには、ステップS1102で取り込んだ燃焼情報データを使用する。また、GPCの目標値には、目標炉団温度パターンの候補(ステップS1103で生成した目標炉団温度パターンの初期値又は後述するステップS1111で生成した目標炉団温度パターン)で表される目標炉団温度を使用する。評価関数J2の右辺第1項は、炉団温度予測モデルにより予測した炉団温度(炉団温度の予測値)と、目標炉団温度パターンの候補で表される目標炉団温度の差を表す。上述したように投入熱量算出部103において投入熱量を算出するサイクルは1時間周期で実行されることから、図12の下段に示すように、1時間毎に式(4)の評価関数J2を最小にする投入熱量1201を算出することができる。図12の下段の各棒の幅が1時間を、長さが投入熱量を表す。なお、第1実施形態でも述べたように、投入熱量算出部103においてGPCを利用する例を述べるが、これに限られるものではない。
【0071】
ステップS1105で、投入熱量算出部103は、ステップS1104で算出した投入熱量と、ステップS1102で取り込んだ燃焼情報データと、を用いて、式(1)の炉団温度予測モデルの右辺の計算を実行して、式(1)の炉団温度予測モデルの左辺の値を算出し、算出した値から、炉団温度の予測値を算出する。これにより、図12の中段に示すように、投入熱量算出部103で算出した1時間毎の投入熱量1201に応じた炉団温度として、1時間毎の炉団温度の予測値(以下、炉団温度の制御波形と呼ぶ)1202を算出することができる。投入熱量算出部103は、炉団温度の制御波形1202を目標炉温算出部102に渡す。炉団温度の予測値は、目標炉団温度パターン601が示す期間(将来の連続した複数の通り時間)の範囲内において算出される。
【0072】
ステップS1106で、目標炉温算出部102は、ステップS1105で算出した炉団温度の制御波形1202を、通り時間tt毎の平均値に変換する。目標炉温算出部102では、通り時間周期で処理を実行することから、ここで扱うパラメータを通り時間単位とする必要がある。そこで、1時間毎の炉団温度で表される炉団温度の制御波形1202を、目標炉団温度パターン601のように通り時間単位で階段状に変化する目標炉団温度パターンに変換する。具体的には、通り時間tt毎に、そこに含まれる炉団温度の制御波形1202で表される炉団温度の平均値を求め、各平均値を各通り時間の目標炉団温度とすることにより、目標炉団温度パターンに変換することができる。
【0073】
ステップS1107で、目標炉温算出部102は、ステップS1106で変換した目標炉団温度パターンと、ステップS1101で取り込んだ炭化情報データを用いて、式(2)のコークス温度予測モデルの右辺の計算を実行して、式(2)のコークス温度予測モデルの左辺の値を算出し、算出した値から、各炭化室2の将来のコークス温度を予測する。各炭化室2の将来のコークス温度は、目標炉団温度パターン601が示す期間(将来の連続した複数の通り時間)の範囲内において算出される。
【0074】
ステップS1108で、目標炉温算出部102は、ステップS1107において予測した各炭化室2の将来のコークス温度を、通り毎の平均値である通り平均値(コークス温度の予測値)に変換する。ステップS1108は、図5のステップS504と同様の処理である(図6(b)を参照)。
【0075】
ステップS1109で、目標炉温算出部102は、式(5)の評価関数J1´を計算する。評価関数J1´は、第1実施形態で述べた評価関数J1と同じ右辺第1項~右辺第3項を有する。右辺第4項は、投入熱量が大きくなるのを抑えるために設けた項である。投入熱量が大きくなり過ぎることは、操炉の安定性やコストの面等から好ましくないからである。また、右辺第5項は、炉団温度を、ステップS1106で変換した目標炉団温度パターンで表される目標炉団温度に応じた値にするために設けた項である。なお、本実施形態においては、評価関数J1´が本発明でいう第1の評価関数に相当する。
1´=(コークス温度の目標温度-コークス温度の予測値)+(コークス温度の下限制約)+(目標炉団温度の変化量)+(投入熱量の大きさ)+(目標炉団温度-炉団温度の予測値) ・・・(5)
【0076】
ステップS1110で、目標炉温算出部102は、計算終了条件に達したか否かを判定する。ステップS1110は、図5のステップS506と同様の処理である。計算終了条件に達していないと判定した場合、ステップS1111に進む。計算終了条件に達したと判定した場合、ステップS1112に進む。
【0077】
ステップS1111で、目標炉温算出部102は、目標炉団温度パターンの候補となる1または複数の目標炉団温度パターンを新たに生成し、ステップS1104に戻る。ステップS1111は、図5のステップS507と同様の処理である。目標炉温算出部102は、新たに生成した目標炉団温度パターンを投入熱量算出部103に渡し、これを受けて、投入熱量算出部103は、ステップS1104、S1105の処理を実行する。このようにステップS1110で計算終了条件に達するまで、ステップS1111で目標炉団温度パターンを新たに生成し、ステップS1104~ステップS1109の処理を繰り返す。
【0078】
ステップS1112で、目標炉温算出部102は、ステップS1106で変換した目標炉団温度パターンのうち、評価関数J1´を最小にする目標炉団温度パターンを投入熱量算出部103に出力する。なお、例えば、式(5)の右辺の各項に(-1)を乗算したものを評価関数J1´をする場合、目標炉温算出部102は、評価関数J1´を最大にする目標炉団温度パターンを探索することになる。
【0079】
以上のように、炉団温度を変化させた場合におけるコークス温度を予測し、目標を満足するような(評価関数J1´を最小にするような)最適な炉団温度パターンを決定する。これにより、図8(a)に示すように、コークス温度の予測値602を、コークス温度の目標温度603に応じた値にするように、目標炉団温度パターン601を算出することができる。このときに、投入熱量の変化量についての所定の評価、本実施形態では上述したように式(4)の評価関数J2を最小にするといった評価を満たす場合の炉団温度を用いるようにする。投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす場合の炉団温度は、例えば、以下のようにして得られる。まず、目標炉団温度パターンの候補を式(4)の評価関数J2を与えて式(4)の評価関数J2を最小にする投入熱量1201を算出する。そして、このようにして算出された投入熱量1201を式(1)に示す炉団温度予測モデルに入力して投入熱量1201に対応する炉団温度の制御波形1202を算出する。このように、目標炉団温度パターン601を算出する際に、投入熱量1201に対応する炉団温度の制御波形1202を、式(4)の評価関数J2を最小にするといった評価を満たす場合の炉団温度として用いることにより、目標炉団温度パターンの実現性を良くすることができる。本実施形態においては、式(4)の評価関数J2を最小にする投入熱量1201が、本発明でいう投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす投入熱量に相当する。また、本実施形態においては、投入熱量1201に対応する炉団温度の制御波形1202が、本発明でいう、投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす場合の炉団温度に相当する。また、本実施形態においては、投入熱量1201に対応する炉団温度の制御波形1202は、投入熱量の変化量についての所定の評価を満たす投入熱量でコークス製造プロセスを制御した場合の炉温の予測値にも相当する。
【0080】
次に、投入熱量算出部103は、図11の処理により算出した目標炉団温度に応じた投入熱量を算出し、コークス製造プロセスに反映させるが、その処理は第1実施形態で図7を参照して説明したとおりであり、ここではその説明を省略する。なお、投入熱量算出部103では、ステップS1102で燃焼情報データを取り込み済みであるので、ステップS701をあらためて行う必要はない。
【0081】
以上述べたように、第1実施形態と同様、コークス温度を目標温度に応じた値にするように投入熱量を制御するに際して、炉団温度を含む第1影響因子によって各通りのコークス温度がどのように変化するかを考慮して、将来の複数の通り時間の目標炉団温度(目標炉団温度パターン)を動的に算出することができる。これにより、コークス温度を目標温度に応じた値にすることと、コークス温度のばらつきを抑制することと、を実現することができ、生産コスト低減(例えば過乾留による過剰乾留熱量の低減)、生産の安定化(例えば未乾留や過乾留による押出時の押詰まりリスクの回避)、品質の安定化(乾留状態のばらつきによる品質ばらつきの抑制)といった効果が期待される。そして、目標炉温算出部102において目標炉団温度パターンを算出するときに、投入熱量の変化量が大きくなるのを抑えるようにした所定の評価を満たすようにすることにより、目標炉団温度パターンの実現性を良くして、コークス温度を目標温度に応じた値にすることと、コークス温度のばらつきを抑制することと、を高精度に実現することができる。
【0082】
[実施例2]
過去の実績データを使用して、第3実施形態による制御手法(以下、実施例2の説明で本制御手法と呼ぶ)のオフラインシミュレーションを実施した。なお、実施例1(図10を参照)と同様、目標炉温算出部102で用いるモデルとして、第2実施形態で述べた、コークス温度を予測する回帰モデル901と、回帰モデル901の予測誤差を推定し、推定誤差を出力するビッグデータモデル902とを備えるものを利用した。
図13(a)~(c)に、オフラインシミュレーションを実施した結果である、コークス温度、炉団温度、投入熱量を示す。図中の点線が本制御手法による結果である。また、比較例として、オペレータの判断で調整弁5を操作することにより操業した結果を実線で示す。実施例2は、実施例1と同じ条件下でオフラインシミュレーションを行ったものであり、実施例2での比較例は、実施例1での比較例と同じである。
実施例1と同様、本制御手法では、将来を予測した積極的なアクションが可能となり(図13(b)、(c))、図13(a)に示すように、コークス温度を目標温度に応じた値にすることができるとともに、コークス温度のばらつきを抑制することができている。これにより、生産コスト低減、生産安定化、品質安定化といった効果が期待される。
また、実施例1では、図10(c)に示すように、3月16日前後で投入熱量がやや大きく変化するかたちになっている。それに対して、実施例2では、図13(c)に示すように、投入熱量の大きな変化が抑えられている。なお、図10及び図13ではコークス温度、炉団温度、投入熱量の具体的な数値を省略するとともに、図10図13とで縦横のスケールが異なるが、実施例2において、実施例1と比較して、投入熱量の変化が抑えられていることが確認された。
【0083】
[第4実施形態]
第4実施形態は、窯出しの遅れ又は早まり(取戻しと呼ばれる)が発生した場合、その影響を考慮するようにした例である。
図14は、窯出しの遅れがコークス温度に与える影響を説明するための図であり、(a)がコークス温度の時系列変化を示し、(b)が乾留時間の時系列変化を示す。図14(a)において、傍らに目標と付している時間軸に平行な線は、コークス温度の目標温度を示し、図14(b)において、傍らに標準と付している間軸に平行な線は、標準的な乾留時間を示す。また、窯出し遅れ影響範囲は、設備トラブル等により窯出しの遅れが発生したときに装炭されている通りを示す。窯出し遅れ影響範囲内の通りでは、窯出しの遅れの分だけ余計に乾留されることになる。また、図中の[1]、・・・、[5]は、それぞれ1の通り(炭化室No.1、6、11、16…)、・・・、5の通り(炭化室No.5、10、15、20…)を表す。図14(b)に示すように、例えば1の通り[1]の開始前に、設備トラブル等により窯出しの遅れが発生したとする。この場合、図中の窯出し遅れ影響範囲に示すように、当該1の通り[1]と以降の四つの通り[3]、[5]、[2]、[4]は装炭された状態にあり、窯出しの遅れの分だけ乾留時間が長くなる(図14(b)の上向きの矢印線を参照)。そして、乾留時間が長くなると、図14(a)に示すように、コークス温度が上昇することになる(図14(a)の上向きの矢印線を参照)。なお、図14では窯出しの遅れを説明したが、窯出しの取戻しの場合は、窯出しの取戻しの分だけ乾留時間が短くなり、コークス温度が下降することになる。
そこで、第4実施形態では、目標炉温算出部102においてコークス温度を予測するときに、窯出しの遅れ又は取戻しの影響を考慮して、コークス温度をより正確に予測できるようにする。
【0084】
以下、第4実施形態を説明する。第1乃至3実施形態と共通する内容の説明は省略し、第1乃至3実施形態との相違を中心に説明する。
第4実施形態では、目標炉温算出部102のコークス温度予測機能が、窯出しの遅れ又は取戻しが発生した場合、その遅れ又は取戻し時間を用いて乾留予定時間を補正する補正機能を有する。乾留予定時間は、コークス温度予測モデルの説明変数であり、乾留予定時間を補正することにより、目標炉温算出部102においてコークス温度を予測するときに、窯出しの遅れ又は取戻しの影響を考慮することができる。
【0085】
図15乃至図18を参照して、第4実施形態において目標炉団温度パターンを算出する処理を説明する。
まず、図17及び図18を参照して、窯出しの遅れ又は取戻しが発生した場合、その遅れ又は取戻し時間を用いて乾留予定時間を補正する具体例を説明する。
本実施形態では、2棟のコークス炉1があり(A炉、B炉)、A炉及びB炉で押出機を共通化する例を説明する。A炉及びB炉は同構成を有し、いずれも1の通り~5の通りのように5窯間隔で分割し、通り単位で若番から順に窯出し装炭作業を行う。窯出し装炭順序は、例えばA炉の1の通り、B炉の1の通り、A炉の3の通り、B炉の3の通り、A炉の5の通り、B炉の5の通り、A炉の2の通り、B炉の2の通り、A炉の4の通り、B炉の4の通りの順とする。
また、制御装置100は、A炉を対象として、A炉におけるコークス温度を目標温度に追従するように投入熱量を制御することを実施しているものとする。
【0086】
図17は、A炉において窯出しの遅れが発生した場合を示す。図17及び図18において〇はA炉における一つの炭化室2(以下、窯と呼ぶ)を表し、●はB炉における一つの炭化室2(以下、窯と呼ぶ)を表す。A炉及びB炉共に、各通りには13窯が含まれるものとし、各通りにおいて若番から順に窯出し装炭作業が行われる。
各窯の窯出しピッチ(1つの窯の窯出し作業の完了時刻から、次に窯出し作業を行う窯の窯出し作業の完了時刻までの時間)が8分であるとする。A炉の一つの通りにおいて最初の窯における窯出し作業を開始してから最終の窯における窯出し作業を終了するまでに掛かる予定時間は、8分ピッチ×(13窯-1)=96分である。したがって、A炉のある通りの窯出し終了タイミングにおいて、当該通りで、(最初の窯における窯出し作業の開始時刻+予定時間(96分))と(最終の窯における窯出し作業の実績終了時刻)とに時間差があるとき、当該通りで窯出しの遅れ又は取戻しが発生したものと判定することができ、その時間差が、窯出し遅れ又は取戻し時間になる。図17の例では、A炉の4の通り[4]では通常操業となっているが、次のA炉の1の通り[1]で30分の窯出しの遅れが発生している。
【0087】
この場合は、上記A炉で発生した窯出し遅れ時間を、A炉における以降の四つの通り分の乾留予定時間に加算するようにして補正する。本例の場合、1の通り[1]の窯出し作業終了時に30分の窯出しの遅れを検出しており、次の3の通り[3]、次の5の通り[5]、次の2の通り[2]、及び次の4の通り[4]が装炭された状態にある。そこで、次の3の通り[3]、次の5の通り[5]、次の2の通り[2]、及び次の4の通り[4]で、それぞれ乾留予定時間に30分を加算する。また、例えば、5の通り[5]の窯出し作業終了時に30分の窯出しの遅れを検出した場合、次の2の通り[2]、次の4の通り[4]、次の1の通り[1]、次の3の通り[3]で、それぞれ乾留予定時間に30分を加算する。
このようにA炉の各通りの窯出し終了タイミングで、A炉の各通りでの窯出しの遅れ又は取戻しの発生を判定することができる。
【0088】
図18は、B炉において窯出しの遅れが発生した場合を示す。
A炉及びB炉の組における一つの通りにおいてA炉の最初の窯における窯出し作業を開始してからB炉の最終の窯における窯出し作業を終了するまでに掛かる予定時間は、稼働率(窯出スケジュール)より決定され、例えば4時間である。したがって、A炉のある通りの窯出し作業の開始タイミングにおいて、(A炉の当該通りの1つ前の通りにおける最初の窯における窯出し作業の開始時刻+予定時間(4時間))と(A炉の当該通りにおける最初の窯における窯出し開始時刻)との時間差があるとき、今回のA炉の最初の窯における窯出し作業の開始時刻よりも前にA炉又はB炉において窯出しの遅れ又は取戻しが発生したものと判定することができ、その時間差が、窯出し遅れ時間又は窯出し取戻し時間になる。図18の例では、A炉及びB炉の組における4の通り[4]では通常操業となっているが、次の1の通り[1]で0.5時間(30分)の窯出しの遅れが発生している。
【0089】
ここで、図18で説明した、各通りの窯出し開始タイミングでの判定では、窯出しの遅れ又は取戻しがA炉で発生したのか、B炉で発生したのかは検出することができない。そこで、図17で説明した、各通りの窯出し終了タイミングでの判定を併用する。図17で説明した、各通りの窯出し作業の終了タイミングでの判定では、A炉で発生した窯出しの遅れ又は取戻しを検出する。したがって、図18の各通りの窯出し作業の開始タイミングでの判定により検出した結果(窯出し遅れ時間又は窯出し取戻し時間)から、図17の各通りの窯出し作業の終了タイミングでの判定により検出した結果(窯出し遅れ又は窯出し取戻し時間)を減算するかたちで、B炉で発生した窯出の遅れ又は取戻しを検出することができる。また、各通りの窯出し作業の開始及び終了のタイミングにおける窯出しの遅れ又は取戻しの有無の判定を併用することにより、窯出しの遅れ又は取戻しを早期に検出することが可能になる。
【0090】
この場合は、上記B炉で発生した窯出し遅れ時間を、現在の通り(窯出し作業の開始タイミングに窯出しの遅れの検出を行った通り)とA炉における以降の四つの通り分の乾留予定時間に加算するようにして乾留予定時間を補正する。図18に示す例の場合、3の通り[3]の窯出し作業の開始タイミングに30分の窯出しの遅れを検出しており、当該3の通り[3]、次の5の通り[5]、次の2の通り[2]、次の4の通り[4]、及び次の1の通り[1]が装炭された状態にある。そこで、当該3の通り[3]、次の5の通り[5]、次の2の通り[2]、次の4の通り[4]、及び次の1の通り[1]で、それぞれ乾留予定時間に30分を加算する。
このようにA炉の各通りの窯出し作業の開始タイミングで、B炉での窯出しの遅れ又は取戻しの発生を判定することができる。
【0091】
図15は、第4実施形態に係る制御装置100の機能構成を示す。図15に示す機能構成は、図1に示す機能構成に対し、乾留予定時間を補正する乾留時間補正部105が追加されると共に、目標炉温算出部102から投入熱量算出部103に向かう片矢印線を、目標炉温算出部102と投入熱量算出部103とを結ぶ両矢印線に変更したものである(第3実施形態の図1に示す機能構成に対する変更点の説明を参照)。したがって、入力部101、目標炉温算出部102、投入熱量算出部103、及び投入熱量設定部104について第1実施形態に係る制御装置100と同一の部分についての詳細な説明を省略する。図16は、目標炉温算出部102、投入熱量算出部103、及び乾留時間補正部105の処理を示すフローチャートである。本実施形態では、第3実施形態をベースにして説明し、図11のフローチャートと共通する処理には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本実施形態では、A炉を対象として最適な炉団温度パターンを決定するようにしており、図16のフローチャートは、A炉の通り終了時(例えばA炉の各通りの窯出し作業の終了タイミング)、及びA炉の通り開始時(例えばA炉の各通りの窯出し作業の開始タイミング)に実行される。計算のフローは「通り終了時」、「通り開始時」において変わりがなく、得られている操業実績データとスケジュールデータに、乾留予定時間のみ窯出しの遅れ又は取戻しの補正を加えて計算を実施する。例えば図17の通り開始時の計算では、4の通り[4]までの実績データが得られているため、4の通り[4]以前の実績データ及び将来のスケジュールを用いて計算を行う。将来のスケジュールには、1の通り[1]開始時に検出した窯出し遅れ又は取戻し時間を反映する。
【0092】
ステップS1101及びS1102で目標炉温算出部102が炭化情報データを取り込み、投入熱量算出部103が燃焼情報データを取り込んだ後、ステップS1601で、乾留時間補正部105は、窯出しの遅れ又は取戻しの発生の有無を検出する。図17で説明したように、A炉のある通りの窯出し作業の終了タイミングで窯出しの遅れ又は取戻しの発生の有無を検出する場合であれば、乾留時間補正部105は、当該通りで(最初の窯における窯出し作業の開始時刻+予定時間)と(最終の窯における窯出し作業の実績終了時刻)との時間差があるときに、当該通りで窯出しの遅れ又は取戻しが発生したものと判定することができる。(最初の窯における窯出し作業の開始時刻+予定時間)が(最終の窯における窯出し作業の実績終了時刻)よりも早い時刻である場合、A炉において窯出しの遅れが発生しており、遅い場合、A炉において窯出しの取戻しが発生していることになる。
【0093】
また、図18で説明したように、A炉のある通りの窯出し作業の開始タイミングで窯出しの遅れ又は取戻しの発生の有無を検出する場合であれば、乾留時間補正部105は、(A炉における当該通りの1つ前の通りの最初の窯における窯出し作業の開始時刻+予定時間)と、(A炉における当該通りの最初の窯における窯出し作業の開始時刻)との時間差があるときに、A炉における当該通りの最初の窯出し作業の開始時刻よりも前にA炉又はB炉において窯出しの遅れ又は取戻しが発生したものと判定することができる。(A炉における当該通りの1つ前の通りの最初の窯における窯出し作業の開始時刻+予定時間)が(A炉における当該通りの最初の窯における窯出し作業の開始時刻)よりも早い場合、A炉又はB炉において窯出しの遅れが発生しており、遅い場合、A炉又はB炉において窯出しの取戻しが発生していることになる。
なお、いずれの場合にも、時間差に対する閾値を設定しておき、時間差が閾値を超えたときのみ、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したものと検出するようにしてもよい。
【0094】
ステップS1602で、乾留時間補正部105は、ステップS1601で窯出しの遅れ又は取戻しの発生を検出した場合、その時間差を窯出し遅れ時間又は窯出し取戻し時間として、乾留予定時間を補正した後、ステップS1103に進む。このように目標炉温算出部102が目標炉団温度パターンを算出する際に、乾留予定時間の補正を実行する。図17及び図18で説明したように窯出しの遅れが発生している場合、乾留時間補正部105は、乾留予定時間に窯出し遅れ時間を加算する。また、窯出しの取戻しが発生している場合、乾留時間補正部105は、乾留予定時間から窯出し取戻し時間を減算する。乾留予定時間は、コークス温度予測モデルの説明変数であり、乾留予定時間を補正することにより、ステップS1107でコークス温度を予測するときに、窯出しの遅れ又は取戻しの影響を反映させることができる。
【0095】
以降のステップS1103~S1112の処理は、図11と同様である。
なお、図17及び図18に示す例では、窯出しの遅れ又は取戻しの検出を早期に行えるようにするために、窯出し遅れ又は取戻しの有無の判定を、A炉の通り終了時及びA炉の通り開始時に行うものとした。しかしながら、窯出し遅れ又は取戻しの有無の判定は、このようなタイミングに限られない。例えば、A炉の通り終了時及びA炉の通り開始時の一方のみで窯出遅れ又は取戻しの有無の判定を行ってもよい。また、例えばB炉についても制御装置100による投入熱量の制御の対象としている場合には、A炉の通り終了時及びA炉の通り開始時の少なくとも一方に加えて又は代えて、B炉の通り終了時及びB炉の通り開始時の少なくとも一方で窯出遅れ又は取戻しの有無の判定を行ってもよい。また、本実施形態では、第3実施形態をベースにして説明したが、第1、2実施形態に、本実施形態で説明した補正機能を適用してもかまわない。
【0096】
以上述べたように、目標炉温算出部102においてコークス温度を予測するときに、窯出しの遅れ又は取戻しの影響を考慮することができ、コークス温度をより正確に予測することができる。コークス温度をより正確に予測することにより、コークス温度を目標温度に応じた値にすることができるとともに、生産コストの低減(過乾留による過剰な乾留熱量の低減)を図ることができる。
【0097】
[実施例3]
過去の実績データを使用して、第4実施形態のように窯出しの遅れを考慮した(乾留予定時間の補正あり)制御手法(以下、実施例3の説明で本制御手法と呼ぶ)のオフラインシミュレーションを実施した。また、比較手法として、窯出しの遅れを考慮しない(乾留予定時間の補正なし)制御手法のオフラインシミュレーションを実施した。
図19は、実施例3の結果を示す特性図であり、(a)がコークス温度の時系列変化を示し、(b)が炉団温度の時系列変化を示す。図中の実線(〇)が本制御手法による結果であり、点線(△)が比較例による結果である。
図19(a)に示すように、本制御手法により、コークス温度を目標温度に応じた値にすることを高精度に実現することができている。また、図19(b)に示すように、本制御手法では、窯出しの遅れにより乾留時間が長くなるといった影響が考慮された結果、炉団温度を減少させるアクションが実行され、生産コスト低減(過乾留による過剰乾留熱量の低減)を図ることができている。
【0098】
[第5実施形態]
第5実施形態は、窯出しの遅れ又は取戻しが発生した場合にオペレータが自身の判断で窯出し装炭作業の時間を標準作業時間に対し短縮又は延長することを考慮するようにした例である。以下、第5実施形態を説明する。第1乃至4実施形態と共通する内容の説明は省略し、第1乃至4実施形態との相違を中心に説明する。
【0099】
図20は、窯出しの遅れの発生時のオペレータの判断による操業がコークス温度に与える影響を説明するための図であり、(a)はコークス温度の時系列変化を示し、(b)は乾留時間の時系列変化を示す。図20(a)において、傍らに目標と付している時間軸に平行な線は、コークス温度の目標温度を示し、図20(b)において、傍らに標準と付している間軸に平行な線は、標準的な乾留時間を示す。また、図14(a)及び(b)において説明したように、窯出し遅れ影響範囲は、設備トラブル等により窯出しの遅れが発生したときに装炭されている通りを示す。窯出し遅れ影響範囲内の通りでは、窯出しの遅れの分だけ余計に乾留されることになる。また、図20(a)及び(b)でも図14(a)及び(b)と同様に、図中の[1]、・・・、[5]は、それぞれ1の通り(炭化室No.1、6、11、16…)、・・・、5の通り(炭化室No.5、10、15、20…)を表す。また、図20(b)でも図14(b)と同様に、例えば1の通り[1]の開始前に、設備トラブル等により窯出しの遅れが発生したとする。この場合、図中の窯出し遅れ影響範囲に示すように、当該1の通り[1]と以降の四つの通り[3]、[5]、[2]、[4]は装炭された状態にあり、窯出しの遅れの分だけ乾留時間が長くなるため、コークス温度も高くなる(図20(a)及び(b)の上向きの白抜き矢印線を参照)。このような場合、オペレータは、コークス炉1における減産を回避するために、自身の判断で、窯出し装炭作業が標準作業時間よりも短くなるような操業(取戻し)を行う傾向がある。これは、コークス温度が目標温度よりも高くなったことから乾留時間を短くしても、コークスの適切な乾留が可能と判断されることによる。例えば、オペレータは、次の乾留サイクルの開始に影響しないように、窯出し遅れ影響範囲の後半以降の通りにおいて取戻しを行う傾向があることを、本発明者らは見出している。図中、取戻しが行われている期間を取戻し期間と示している。なお、窯出し遅れ影響範囲の後の最初の[1]の通りは、窯出しの遅れの影響を受けないため、乾留時間は長くならず、窯出しの遅れにより、乾留時間の影響を受けない。上述した制御によれば、窯出しの遅れ時間分だけ追加でコークスが炭化室2に留まることを前提として投入熱量(炉の温度)を低下させる。このため、オペレータの独自判断による取戻しが行われると、投入熱量を低下させたにもかかわらず、取戻しによる乾留時間の短縮が行われることになるため、意図した以上にコークス温度が低下する可能性がある(図20(a)及び(b)の下向きの白抜き矢印線を参照)。なお、取戻し期間は図20(a)に示す期間に限定されず、オペレータの判断に応じて決まるものである。
【0100】
図21は、乾留予定時間の補正の方法を説明するための図であり、(a)は第4実施形態の方法における補正後の乾留予定時間の時系列データの一例であり、(b)は本実施形態の方法における補正後の乾留予定時間の時系列データの一例である。第4実施形態では、図21(a)に示すように、窯出しの遅れが発生すると、窯出し遅れ影響範囲内の各通りにおける乾留予定時間に対して一律に窯出し遅れ時間として同じ時間を加算する。したがって、乾留予定時間を長くした状態で、目標炉団温度パターンの算出と投入熱量の算出とが行われる。このような場合にオペレータ判断による取戻しが行われると、上述のようにコークス温度が低下するため、コークスが所謂生焼けの状態になり、コークスの品質が低下する虞がある。なお、ここでは、窯出しの遅れが発生した場合について説明したが、窯出しの取戻しが発生した場合には、オペレータは窯出し装炭作業が標準作業時間よりも長くなるような操業(遅出しと呼ばれる)を行う傾向があるため、コークス温度が過剰に高くなる虞がある。
【0101】
そこで、第5実施形態では、図21(b)に示すように、窯出しの遅れ又は取戻しが発生した場合にオペレータの判断による操業が行われることを見越して、少なくとも1つの通りにおける補正後の乾留予定時間を、その他の少なくとも1つの通りにおける補正後の乾留予定時間と異なる時間にする。上述したようなオペレータの判断による傾向を考慮する場合、時間的に後の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値を、時間的に前の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値よりも大きくせずに、少なくとも2つの通りについて、時間的に後の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値を、時間的に前の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値よりも小さくする。すなわち、時間的に後の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値と、時間的に前の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値とでは、前者と後者とが同じである場合があってもよいが、前者が後者よりも小さくなる場合はなく、且つ、後者が前者よりも小さくなる場合があるようにする。
【0102】
第5の実施形態に係るコークス製造プロセスの制御装置の機能構成は、図15に示した機能構成と同様であり、乾留時間補正部105の一部が第4実施形態と異なる。したがって、入力部101、目標炉温算出部102、投入熱量算出部103、投入熱量設定部104、及び乾留時間補正部105について第1乃至第4実施形態に係る制御装置100と同一の部分についての詳細な説明を省略する。また、第5実施形態に係る目標炉温算出部102及び投入熱量算出部103の処理を示すフローチャートは、図16のステップS1602を以下のように変更したものとなり、本実施形態では、乾留時間補正部105は、図16のステップS1602で以下の処理を行う。
【0103】
すなわち、ステップS1602で、乾留時間補正部105は、ステップS1601で窯出しの遅れ又は取戻しの発生を検出した場合、その時間差を窯出し遅れ時間又は窯出し取戻し時間として算出する。第4実施形態で説明したように、窯出し遅れが発生している場合、乾留時間補正部105は、乾留予定時間に窯出し遅れ時間を加算する。また、窯出しの取戻しが発生している場合、乾留時間補正部105は、乾留予定時間から窯出し取戻し時間を減算する。
【0104】
ステップS1601で窯出しの遅れ又は取戻しの発生を検出した場合、目標炉温算出部102が、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミングで装炭されている状態の通り(図20に示す窯出し遅れ影響範囲内)におけるコークス温度Tco(n)を式(2)により算出するために、ステップS1602で、乾留時間補正部105は、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミング以降の、窯出し遅れ影響範囲内の通りにおける乾留予定時間を補正する(このことは、第4実施形態でも同じである)。
上述したように第4実施形態では、乾留時間補正部105は、それぞれの乾留予定時間に対し、窯出し遅れ時間の加算又は窯出し取戻し時間の減算を行うため、各通りにおける乾留予定時間は同じ時間に変更される。
【0105】
これに対し上述したように本実施形態では、乾留時間補正部105は、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミング以降の窯出し遅れ影響範囲内の通りのうち、少なくとも1つの通りにおける補正後の乾留予定時間を、それ以外の少なくとも1つの通りのものとは異なる時間にする。より具体的には、乾留時間補正部105は、時間的に後の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値を、時間的に前の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値よりも大きくせずに、少なくとも2つの通りについて、時間的に後の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値を、時間的に前の通りにおける補正前の乾留予定時間に対する補正量の絶対値よりも小さくする。
【0106】
例えば、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミング以降の各通りにおける乾留予定時間を補正するために窯出し遅れ時間及び窯出し取戻し時間に乗算される正の係数を通り毎に予め設定しておく。このようにする場合、時間的に後の通りに対する係数を、時間的に前の通りに対する係数よりも大きくせずに、少なくとも2つの通りについて、時間的に後の通りに対する係数の値を、時間的に前の通りにおける係数の値よりも小さくする。本実施形態でも5窯間隔で窯出し装炭が行われるため、5通り先までの係数を予め設定しておけば良い。例えば、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミングにおける窯出し影響範囲内の最後の2つの通りに対する係数を「0.5」に設定すると共に、残りの通りに対する係数を「1.0」に設定する。
そして、乾留時間補正部105は、窯出し遅れ時間及び窯出し取戻し時間に、各通りに対して設定されている係数を乗算した値を補正時間として算出し、補正前の乾留予定時間に対して補正時間を加減算することにより、補正後の乾留予定時間を算出する。
【0107】
ここで、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミングの次に窯出し装炭作業が行われる各通りを次の通りと呼ぶこととする。
第4実施形態で説明した図17に示す例では、A炉の1の通りで窯出しの遅れが発生している。したがって、窯出し遅れが発生したタイミング以降のA炉における窯出し遅れ影響範囲内の通りは、次の3の通り、次の5の通り、次の2の通り、及び次の4の通りであり、窯出し装炭作業の実行順はこの順である。よって、上述した例では、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミングにおける窯出し影響範囲内の最後の2つの通りは、次の2の通り及び次の4の通りであり、残りの通りは、次の3の通りおよび次の5の通りである。以上のことから、次の3の通り、次の5の通り、次の2の通り、次の4の通りに対する係数は、それぞれ、「1.0」、「1.0」、「0.5」、「0.5」になる。したがって、窯出し遅れ時間が30分であるとすると、乾留時間補正部105は、以下のように、次の3の通り、次の5の通り、次の2の通り、次の4の通りの補正時間を算出し、(補正前の)乾留予定時間に補正時間を加算した時間を補正後の乾留予定時間とする。
次の3の通りの補正時間:30分(=30分×1.0)
次の5の通りの補正時間:30分(=30分×1.0)
次の2の通りの補正時間:15分(=30分×0.5)
次の4の通りの補正時間:15分(=30分×0.5)
【0108】
また、第4実施形態で説明した図18に示す例では、B炉の1の通りで窯出しの遅れが発生している。したがって、窯出しの遅れが発生したタイミング以降のA炉における窯出し遅れ影響範囲内の通りは、次の3の通り、次の5の通り、次の2の通り、次の4の通り、及び次の1の通りであり、窯出し装炭作業の実行順はこの順である。よって、上述した例では、窯出しの遅れ又は取戻しが発生したタイミングにおける窯出し影響範囲内の最後の2つの通りは、次の4の通り及び次の1の通りであり、残りの通りは、次の3の通り、次の5の通り、及び次の2の通りである。以上のことから、次の3の通り、次の5の通り、次の2の通り、次の4の通り、次の1の通りに対する係数は、それぞれ、「1.0」、「1.0」、「1.0」、「0.5」、「0.5」になる。したがって、窯出し遅れ時間が30分であるとすると、乾留時間補正部105は、以下のように、次の3の通り、次の5の通り、次の2の通り、次の4の通り、次の1の通りの補正時間を算出し、(補正前の)乾留予定時間に補正時間を加算した時間を補正後の乾留予定時間とする。
次の3の通りの補正時間:30分(=30分×1.0)
次の5の通りの補正時間:30分(=30分×1.0)
次の2の通りの補正時間:30分(=30分×1.0)
次の4の通りの補正時間:15分(=30分×0.5)
次の1の通りの補正時間:15分(=30分×0.5)
【0109】
なお、乾留予定時間の補正の方法は上述した計算に限定されない。例えば、全ての通りに対する係数を異なる値にしてもよい。また、コークス炉1の特性や操業条件やオペレータの判断による操業の傾向等に応じて、時間的に後の通りに対する係数を、時間的に前の通りに対する係数よりも大きい値に設定してもよい。また、計算式も上述したものに限定されない。例えば、時間的に後の通りに対する補正時間が指数関数的に短くなるように補正時間を算出してもよい。
また、本実施形態でも第4実施形態と同様に、第3実施形態をベースにして説明したが、第1、2実施形態に、本実施形態で説明した補正機能を適用してもかまわない。
【0110】
以上述べたように、目標炉温算出部102においてコークス温度を予測するときに、窯出しの遅れ又は取戻しが発生した場合のオペレータの判断による操業の影響を考慮することができ、コークス温度をより正確に予測することができる。コークス温度をより一層正確に予測することにより、コークス温度を目標温度に応じた値にすることを高精度に実現することができるとともに、生産コストのより一層の低減(過乾留による過剰な乾留熱量の低減)を図ることができる。
【0111】
[第6実施形態]
第6実施形態は、目標炉温算出部102において算出される将来の複数の通り時間の目標炉団温度(目標炉団温度パターン)を補正する例である。
第2実施形態で説明したコークス温度予測モデルを用いればコークス温度の予測精度は向上するものの予測誤差は残る。また、ビッグデータモデル902を用いると計算負荷が高くなると共に機械学習のために膨大な学習データが必要になる。したがって、例えば、計算負荷を低減することを目的とする場合や学習データを用意することができない場合にはビッグデータモデル902を用いることは好ましくない。このような場合に、回帰モデル901(第1実施形態で説明したコークス温度予測モデル)を用いると、ビッグデータモデル902を用いる場合に比べて予測誤差が大きくなる。また、第3実施形態では、目標炉団温度パターンを算出する際に炉団温度予測モデルを用いるので、炉団温度予測モデルの予測誤差も目標炉団温度パターンに影響を与える。また、コークス温度予測モデルを含む予測モデルに用いるスケジュール値が実績値と大きく乖離していることも考えられる。これらのコークス温度予測モデルを含む予測モデルの予測誤差やスケジュール値の実績値との乖離は、目標炉団温度パターンの精度の低下の要因となる。
そこで、第6実施形態では、目標炉温算出部102において算出した目標炉団温度パターンを、コークスの乾留状態を表す物理量の目標値と実績値との差に応じて補正することにより、目標炉団温度パターンの実現性をより良くする。
【0112】
以下、第6実施形態を説明する。第1乃至第5実施形態と共通する内容の説明は省略し、第1乃至第5実施形態との相違を中心に第3実施形態をベースにして説明する。第1実施形態で説明したように、コークスの乾留状態を表す物理量は、コークス温度以外に、例えば炉壁4の温度でもよいが、ここではコークスの乾留状態を表す物理量がコークス温度であるものとして説明を行う。
【0113】
図22は、第6実施形態に係る制御装置100の機能構成を示す。図22に示す機能構成は、図1に示す機能構成に対し、目標炉団温度パターンを補正する目標炉温補正部106が追加されると共に、目標炉温算出部102から投入熱量算出部103に向かう片矢印線を、目標炉温算出部102と投入熱量算出部103とを結ぶ両矢印線に変更したものである(第3実施形態の図1に示す機能構成に対する変更点の説明を参照)。したがって、入力部101、目標炉温算出部102、投入熱量算出部103、及び投入熱量設定部104について第1乃至第5実施形態に係る制御装置100と同一の部分についての詳細な説明を省略する。図23は、目標炉温算出部102、投入熱量算出部103、及び目標炉温補正部106の処理を示すフローチャートである。上述したように本実施形態では第3実施形態をベースにして説明する。そこで、図23のフローチャートにおいて、図11のフローチャートと共通する処理には同一の符号を付し、その説明は省略する。図24は、目標炉団温度パターンを補正する処理の概要を説明するための図である。
【0114】
図22乃至図24を参照して、第6実施形態において目標炉団温度パターンを補正する処理を説明する。
図24において、制御開始は、制御装置100による制御が開始したタイミングであることを示す。現在時刻は、図23のフローチャートを開始したタイミングであることを示す。第3実施形態で説明した図11のフローチャートと同様に、図23のフローチャートを開始するタイミングは、例えば、各通りにおける窯出し作業が終了したタイミングであるが、必ずしもこのタイミングに限定されず、例えば、各通りにおける装炭作業を開始するタイミングであってもよい。また、図23のフローチャートは、通り時間周期で実行される。
【0115】
図24の上段は、コークス温度の時系列変化を示す。ここでは、コークス温度2411の実績値を黒丸で示し、予測値を白丸で示す。また、コークス温度の実績値を実線で繋ぐと共に予測値を一点鎖線で繋いでコークス温度の時系列変化を示す。また、図24の上段には、コークス温度2411と共にコークス温度の目標温度2412を示す。
図24の中段は、炉団温度の時系列変化を示す。炉団温度は1時間毎に得られるが、ここでは、炉団温度2421の実績値を実線で示し、予測値を一点鎖線で示す。また、図24の中段には、目標炉温算出部102で算出された目標炉団温度パターン2422と、目標炉温補正部106で補正された補正後の目標炉団温度パターン2423とを示す。
図24の下段には、投入熱量の時系列変化を示す。ここでは、投入熱量2431の実績値を実線で示し、将来の値を一点鎖線で示す。
【0116】
第3実施形態で説明したように、ステップS1101乃至S1111の処理を行うことで、ステップS1106で変換した目標炉団温度パターンのうち、評価関数J1´を最小にする目標炉団温度パターン2422が得られる。図24の中段において、現在時刻よりも先の目標炉団温度パターン2422が現在時刻において算出される。
【0117】
ステップS1110の後に、ステップS2301が行われる。ステップS2301で、目標炉温補正部106は、目標炉団温度パターン2422を、コークス温度の目標値(目標温度2412)と実績値との差に応じて補正する。例えば、目標炉温補正部106は、コークス温度の目標値(目標温度2412)から、現在時刻を起点として乾留サイクルで過去1サイクル分の各通りにおけるコークス温度の実績値をそれぞれ減算した値の重み付き平均値を算出する。例えば、窯出し装炭順序が、1の通り、3の通り、5の通り、2の通り、4の通りの順であり、図23のフローチャートを開始するタイミングが、各通りにおける窯出し作業が終了したタイミングであり、現在時刻が、1の通りにおける窯出し作業が終了したタイミングである(図24の上段において現在時刻の下に示している[1]はこのことを表す)ものとする。この場合、直前の1の通り、4の通り、2の通り、5の通り、3の通りにおけるコークス温度の実績値が用いられる(図24の上段において、現在時刻の下に示している[1]の左側に、左側に向けて順に示している[4]、[2]、[5]、[3]はこれらのことを表す)。
【0118】
kを、通りを識別する変数とし、重み付き平均値の算出対象となる通りの数をK(本実施形態ではK=5)とすると、目標炉団温度パターン2422に加算される補正量FBは、例えば、以下の式(6a)及び式(6b)で表される。
【0119】
【数3】
【0120】
ここで、G1、G2は、予め設定される正のゲインである。wkは、通りkに対する予め設定される正の重み係数である。Tco_p_kは、通りkにおけるコークス温度の目標値である。Tco_m_kは、通りkにおけるコークス温度の実績値である。補正量FBが正であることは、コークス温度の目標値の方が実績値よりも高いためにコークス温度が低くなっていることに対応する。この場合、コークス温度をなるべく早く目標温度2412に到達させるために投入熱量を大きく上昇させることが考えられる。一方、補正量FBが負であることは、コークス温度の目標値の方が実績値よりも低いためにコークス温度が高くなっていることに対応する。この場合、コークス温度を急激に低下させると、コークス温度が低くなり過ぎる虞があるため、投入熱量を徐々に小さくすることが考えられる。このような場合、ゲインG1をゲインG2よりも大きくするのが好ましい。ただし、ゲインG1、G2の値は、当該値の大小関係を含め、コークス炉1の特性や操業条件等に応じて適宜決定すればよい。
【0121】
重み係数wkは、コークス炉1の特性や操業条件等に応じて適宜決定すればよい。例えば、現在時刻に近い時刻におけるコークス温度の目標値と実績値との差を重要視する場合、時間的に後の通りに対する重み係数wkを、時間的に前の通りに対する重み係数wkよりも小さくせずに、少なくとも2つの通りについて、時間的に後の通りに対する重み係数wkを、時間的に前の通りに対する重み係数wkよりも大きくする。
【0122】
図24の上段に示す例では、コークス温度2411の実績値は目標温度2412よりも高いため、式(6b)により補正量FBが算出される。この場合、補正量FBは負の値を有する。
ここで、目標炉団温度パターンをあまりに急激に変化させることは、安定的な操業を行う観点等から好ましくない。そこで、目標炉温補正部106は、補正量FBが予め設定された上下限値の範囲内(下限値≦FB≦上限値)でない場合、補正量FBを上限値及び下限値のうち当該補正量に近い方の値に変更する。補正量FBが予め設定された上下限値の範囲内(下限値≦FB≦上限値)である場合、目標炉温補正部106は、このような補正量FBの変更を行わない。
【0123】
目標炉温補正部106は、ステップS1101乃至S1111の処理を行うことで算出された目標炉団温度パターン2422に、以上のようにして得られた補正量FBを加算することにより、補正後の目標炉団温度パターン2423を算出する。図24の上段に示す例では、負の値の補正量FBが算出されるため、補正後の目標炉団温度パターン2423は、目標炉団温度パターン2422よりも低い温度を示すことになる(図24の中段の下向きの白抜きの矢印線を参照)。
【0124】
以上のようにしてステップS2301で補正後の目標炉団温度パターンが算出される。そして、ステップS2302で、目標炉温補正部106は、補正後の目標炉団温度パターンを投入熱量算出部103に出力する。本実施形態では、投入熱量算出部103は、図7のフローチャートにおいて、目標炉温算出部102で算出された目標炉団温度パターンではなく、目標炉温補正部106で算出された目標炉団温度パターンを使用して、投入熱量を算出する。なお、ステップS1104においては、投入熱量算出部103は、目標炉温補正部106で算出された目標炉団温度パターンではなく、目標炉団温度パターンの候補(ステップS1103で生成した目標炉団温度パターンの初期値又はステップS1111で生成した目標炉団温度パターン)を使用して投入熱量を算出する。
【0125】
以上述べたように、コークス温度の実績値をフィードバックすることにより、目標炉温算出部102で算出された目標炉団温度パターンを、コークス温度の実績値と目標値との差が小さくなるように補正することができ、投入熱量の制御をより一層高精度に実行することができる。これにより、コークス温度を目標温度に応じた値にすることをより一層高精度に実現することができるとともに、生産コストのより一層の低減(過乾留による過剰な乾留熱量の低減)を図ることができる。
なお、本実施形態では、第3実施形態をベースにして説明したが、第1、2、4、5実施形態に、本実施形態で説明した補正機能を適用してもかまわない。
【0126】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明を適用したコークス製造プロセスの制御装置は、例えばCPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ装置により構成可能であり、CPUが所定のプログラムを実行することによりその機能が実現される。
また、本発明は、本発明のコークス製造プロセスの制御を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0127】
1 コークス炉
2 炭化室
3 燃焼室
4 炉壁
5 調整弁
6 炉温測定用の温度計
7 押出ラム
8 コークス温度測定用の温度計
9 ガイド車
10 コークス
100 コークス製造プロセスの制御装置
101 入力部
102 目標炉温算出部
103 投入熱量算出部
104 投入熱量設定部
105 乾留時間補正部
106 目標炉温補正部
200 記憶部
601 目標炉団温度パターン
602 コークス温度の予測値
603 コークス温度の目標温度
801 炉団温度の予測値
802 投入熱量
901 回帰モデル
902 ビッグデータモデル
1201 評価関数を最小にする投入熱量
1202 炉団温度の制御波形
2411 コークス温度(実績値、予測値)
2412 コークス温度の目標温度
2421 炉団温度(実績値、予測値)
2422 補正前の炉団温度パターン
2423 補正後の炉団温度パターン
2421 投入熱量
S 装炭量
W 石炭水分量
co コークス温度
ro 炉団温度
k 乾留時間
t 通り時間
図1
図2
図3A
図3B
図4
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図16
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図21
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図23
図24