(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039671
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】排水トラップ
(51)【国際特許分類】
E03C 1/28 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
E03C1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146908
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】316012083
【氏名又は名称】シナネン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】早川 聡
(72)【発明者】
【氏名】山崎 一高
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DA04
2D061DD01
2D061DD08
2D061DD11
2D061DD14
(57)【要約】
【課題】 排水トラップ本体内部の部品を取り出しやすくして容易にメンテナンスが可能な洗濯機用防水パンに適しており、トラップ内部に異物があっても部材を傷つけることがなく、不具合を生じさせることのない排水トラップを提供することを目的とする。
【解決手段】 排水トラップ1におけるトラップ底部3の内側底面に載置されて封水部を形成する椀状のオワン部材11を備え、オワン部材11は、天面が開口された略円筒形状を有し、オワン部材11の外側底面のオワン底部13に、排水トラップ1におけるトラップ底部3の内側底面からオワン部材11を底上げする脚部14を備え、脚部14は、オワン部材11の底面の略円形と同心円上で複数個に分割されて配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水トラップの内側底面に載置されて封水部を形成する椀状のオワン部材を備え、
前記オワン部材は、オワン部材の外側底面に、排水トラップの内側底面からオワン部材を底上げする脚部を備える
ことを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】
前記オワン部材は、天面が開口された略円筒形状を有し、
前記脚部は、前記オワン部材の底面の略円形と同心円上で複数個に分割されて配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の排水トラップ。
【請求項3】
前記オワン部材は、さらに、側部の一部を切り欠いて形成される切欠き部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水装置に関し、特に洗濯機用防水パンに用いられる排水トラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機を載置する洗濯機用防水パンにおいては、洗濯機からの排水と、ホースが外れる等によって洗濯機用防水パン上に漏れ出た水の排水とを処理するために排水トラップが取り付けられている。洗濯機用防水パンの排水トラップは、その上方に洗濯機が載置されることがあるので、洗濯機に阻害されて排水口から排水トラップの内部を清掃しにくい場合がある。そのため、特許文献1に開示されているように、排水トラップの構成パーツをオワン部材の内部に配置して、排水口からオワン部材を取り外して、各パーツ単位で清掃できるようにしたものがある。
【0003】
このオワン部材は、オワン部分と、リング部分と、オワン部分とリング部分とをつなぐリブ部分とからなり、排水口にリング部分をひっかけてオワン部材を吊り下げる形で排水トラップの内部に着脱可能に配置するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の洗濯機用防水パンの排水トラップには、オワン部材の全高が高いと、洗濯機用防水パンに取り付けられた排水トラップからオワン部材を取り出す際に、上方に載置されている洗濯機等の障害物によって、オワン部材が取り出しにくく、メンテナンスが行い難いという問題がある。また、オワン部材の全高が高いと、オワン部材を取り出すために嵩上型洗濯機用防水パンの全高が高くなり、洗濯機の設置高さも高くなることで洗濯物の出し入れがしづらいといった作業性の問題がある。
【0006】
ここで、オワン部材の全高を低くするために、オワン部材からリング部分とリブ部分とを無くしてオワン部分だけでオワン部材を構成することが考えられる。このような構成にすると、リング部分を無くした結果としてオワン部材を排水口から吊り下げられなくなるので、トラップ本体内部にオワン部材を載置する構成とせざるをえない。
【0007】
この場合、トラップ本体からの排出口がトラップ側面にあると、トラップ本体内部にゴミや砂等が溜まりやすくなり、容易に排出することができなくなるという問題が生じうる。
【0008】
さらに、ゴミや砂等の異物が残っているトラップ本体内部にオワン部材を載置すると、残留している異物がオワン部材の底とトラップ本体内部の底との間に挟まって当たり、オワン部材やトラップ本体内部の底を傷つけてしまうという問題がある。また、残留している異物でオワン部材を平行に載置することができず、オワン部材の高さ位置も不安定となるので、排水装置全体として不具合が生じるおそれもある。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、排水トラップ内部の部品を取り出しやすくして容易にメンテナンスが可能で洗濯機用防水パンに適しており、トラップ本体内部に異物があっても部材を傷つけることがなく、不具合を生じさせることのない排水トラップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る排水トラップは、排水トラップの内側底面に載置されて封水部を形成する椀状のオワン部材を備え、前記オワン部材は、オワン部材の外側底面に、排水トラップの内側底面からオワン部材を底上げする脚部を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記オワン部材は、天面が開口された略円筒形状を有し、前記脚部は、前記オワン部材の底面の略円形と同心円上で複数個に分割されて配置されているのが好ましい。
【0012】
これによれば、オワン部材の外側底面に、オワン部材を底上げする脚部を備えることで、オワン部材を底上げし、オワン部材の外側底面と排水トラップの内側底面との間に空間を生じさせるので、排水トラップのトラップ本体内部に異物が残留しても、オワン部材の外側底面や排水トラップの内側底面を傷つけることが無く、また、オワン部材を平行状態を維持して載置し、排水トラップに不具合を生じさせることのない排水トラップが実現される。
【0013】
また、前記オワン部材は、さらに、側部の一部を切り欠いて形成される切欠き部を備えるのが好ましい。
【0014】
これによれば、トラップ本体内部の部品を取り出しやすくしてメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る洗濯機用防水パンの排水トラップによれば、オワン部材を底上げする脚部によってオワン部材とトラップ本体内部の載置面との間に空隙を形成するので、トラップ本体内部に異物があっても部材を傷つけることがなく、不具合を生じさせることのない排水トラップが得られる。天面が開口された、略円筒形状のオワン部材は、特許文献1にあるオワン部材に比べ、リング部分とオワン部分をつなぐリブ部分がないため排水面積が大きくなり、排水効率を向上させることができる。また、オワン部材を低くすることで、嵩上型洗濯機用防水パンの全高を低くすることができ、ひいては洗濯機の設置高さも低くなって洗濯物の出し入れ時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る排水トラップの構造を示す図である。
【
図2】排水トラップに用いられるオワン部材の平面図である。
【
図3】排水トラップに用いられるオワン部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る排水トラップについて、実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る洗濯機用防水パンの排水トラップの構造を示す図である。
【0019】
排水トラップ1は、洗濯機を載置する洗濯機用防水パンの排水口に取り付けられる排水装置である。排水トラップ1は、排水トラップ1のトラップ本体2からの水の排出口であるトラップ本体排出口5を、排水トラップ1の側面に備えている。また、排水トラップ1は、トラップ本体2内にオワン部材11を備えており、排水トラップ1の底部であるトラップ底部3にオワン部材11が載置されて取り付けられている。
【0020】
トラップ本体2は、有底円筒状にして、その側面にトラップ本体排出口5を備えてなり、上方の開口部分が洗濯機用防水パンに取り付けられる。また、その内部に、オワン部材11や防臭筒6、泡止め筒7等の部材が収納配置される。
【0021】
防臭筒6は、円筒形状の部材であって、上端側は、排水の流入部分に水密に接続され、下端側はオワン部材11内部に配置される。オワン部材11内部に排水が封水として溜まることで、排水の流路の一部が満水状態となり、臭気などが屋内側に逆流することを防止できる。
【0022】
泡止め筒7は、円筒形状の部材であって、上端側は、洗濯機からの配管が接続され、下端側はオワン部材11の内側の底に当接するように配置される。泡止め筒7は、目皿などを介して、上下方向の位置を固定される。泡止め筒7がオワン底部13を抑えることで、オワン部材11が浮き上がることを防止できる。
【0023】
オワン部材11は、排水トラップ1の内部に載置されて封水部を形成する椀状の部材である。オワン部材11は、封水部を構成する各部材(防臭筒6など)を部材単位で清掃等のメンテナンスができるようにそれぞれ分離可能に収納しており、オワン部材11の全体は洗濯機用防水パンの排水口から取り外しできるように構成されている。
【0024】
このオワン部材11は、オワン部材11の底面であるオワン底部13に脚部14を備えている。オワン部材11が脚部14を備えることにより、排水トラップ1のトラップ本体2内部に空隙部4が形成される。
【0025】
空隙部4は、トラップ本体2のトラップ底部3とオワン底部13との間に形成される空間である。トラップ本体排出口5が排水トラップ1の側面に備えられていることで排水トラップ1のトラップ本体2内部にゴミや砂等の異物が残留することになっても、この空隙部4が形成されていることで、トラップ本体2のトラップ底部3とオワン底部13との間に異物が挟まって、これらを傷つけることを無くすことができる。また、異物が残留していても、オワン部材11を平行状態を維持してトラップ底部3に載置することができるので、オワン部材11の高さ位置を安定させることができ、排水トラップ1全体として不具合が生じるおそれも無くすることができる。
【0026】
以下、オワン部材11の構成について詳しく説明する。
【0027】
図2はオワン部材11の平面図であり、
図3はオワン部材11の底面図である。また、
図4は、
図2のA-A線断面を示す図である。
【0028】
オワン部材11は、天面が開放された略円筒形状の全体形状とされ、側部に切欠き部12と、オワン底部13に脚部14とを備えている。
【0029】
切欠き部12は、オワン部材11の側部の一部を切り欠いて形成され、オワン部材11を排水トラップ1から取り外す際の指掛け部分となる。この切欠き部12に設けた指掛け部分に指を掛けることで、オワン部材11を排水トラップ1から取り外す操作を容易にすることができる。なお、取り外しのための取手を略円筒形状のオワン部材11の外側へ凸状に形成することも考えられるが、排水トラップ1の内部は限られた空間であるため、他の部材と干渉しないようにオワン部材11の側部の一部を切り欠いた切欠き部12とするのが好ましい。
【0030】
脚部14は、オワン部材11の外側の底面であるオワン底部13に下方へ突出して形成される脚部である。すなわち、脚部14は、オワン部材11が排水トラップ1の内部に載置されたときに、オワン底部13とトラップ底部3の排水トラップ1の内側底面とを面接触させないようにする、オワン部材11の底上げ部材ということができる。
【0031】
この脚部14は、底面視でオワン部材11全体を構成する略円形と同心円上に分割されて配置されている。脚部14を同心円上で分割せずに連続的に配置するとした場合、脚部14とトラップ底部3との間に異物が挟まり、オワン部材11の平行状態が維持できなくなる場合も生じうるので、脚部14は複数個に分割して形成するのが好ましい。また、同様の観点から脚部14の大きさや個数も、オワン部材11がトラップ底部3において垂立できる程度の最小限度の大きさや個数とするのが好ましい。さらに、オワン部材11を底上げするという機能から見れば、脚部14の配置箇所はオワン部材11の底面の略円形と同心円上でなくてもよい。
【0032】
このように、本実施形態の洗濯機用防水パンの排水トラップによれば、オワン部材11の外側底面のオワン底部13に、オワン部材11を排水トラップ1の内部に載置したときにオワン部材11を底上げする脚部14を備えることで、オワン底部13と排水トラップ1の内側底面との間に空隙部4が形成されるので、排水トラップ1のトラップ本体2内部にゴミや砂等の異物が残留しても、オワン底部13と排水トラップ1の内側底面との間に異物が挟まり、それぞれの面を傷つけることが無くなる。また、オワン部材11を平行のままトラップ底部3に載置可能となるので、オワン部材11の高さ位置を安定させることができ、排水トラップ1全体としての不具合を生じさせることも防止することができる。
また、従来例と比べて、オワン部材11から、リング部分とリブ部分を無くしたことで、脚部14を設けたことを考慮しても、オワン部材11の全高を低くすることができ、洗濯機下部と洗濯機用防水パン上面との狭い部分からでも、オワン部材11が取り出しやすくなっている。
【0033】
以上、本発明に係る排水トラップについて実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0034】
例えば、上記実施の形態では、洗濯機用防水パンに用いられる排水トラップとして説明したが、排水トラップの上方に障害物があって排水トラップ内部の部品が取り出しにくい使用場所に設置される排水トラップに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る排水トラップは、洗濯機用防水パンに用いられる排水トラップとして好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 排水トラップ
2 トラップ本体
3 トラップ底部
4 空隙部
5 トラップ本体排出口
6 防臭筒
7 泡止め筒
11 オワン部材
12 切欠き部
13 オワン底部
14 脚部