(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039694
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】位置測定システム及び位置測定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20230314BHJP
G01S 3/46 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G01S7/02 218
G01S3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146940
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 浩章
(72)【発明者】
【氏名】中田 大平
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AA02
5J070AC01
5J070AC02
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD06
5J070AD08
5J070AE04
5J070AF01
5J070AF06
5J070AH31
(57)【要約】
【課題】1か所の測定点で電波を受信することで電波発信源の位置を特定する位置測定システム及び位置測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態に係る位置測定システムは、電波を受信し、前記電波を処理して、直接波の到来した第1方向角及び第1仰角とマルチパス波の到来した第2仰角とを算出し、前記電波を受信した測定点の高度情報と前記第1方向角と前記第1仰角と前記第2仰角とに基づいて前記電波の発射源の位置を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を受信するアンテナと、
前記アンテナが受信した前記電波を処理して、直接波の到来した第1方向角及び第1仰角とマルチパス波の到来した第2仰角とを算出する到来方向推定処理部と、
前記電波を受信した測定点の高度情報と前記第1方向角と前記第1仰角と前記第2仰角とに基づいて前記電波の発射源の位置を測定する位置測定処理部とを備える位置測定システム。
【請求項2】
前記到来方向推定処理部は、受信強度がしきい値以上でありかつ前記第1仰角がしきい値以上である電波を前記直接波として選択する請求項1に記載の位置測定システム。
【請求項3】
前記到来方向推定処理部は、前記直接波よりも受信強度の小さい電波を前記マルチパス波として選択する請求項2に記載の位置測定システム。
【請求項4】
前記位置測定処理部は、前記測定点を基準とした前記発射源の相対位置を測定する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の位置測定システム。
【請求項5】
前記位置測定処理部は、前記測定点の絶対位置に基づいて前記発射源の絶対位置を測定する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の位置測定システム。
【請求項6】
電波を受信し、
前記電波を処理して、直接波の到来した第1方向角及び第1仰角とマルチパス波の到来した第2仰角とを算出し、
前記電波を受信した測定点の高度情報と前記第1方向角と前記第1仰角と前記第2仰角とに基づいて前記電波の発射源の位置を測定する位置測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電波発射源の位置を特定する位置測定システム及び位置測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位置測定システムは、離れた場所にある複数の電波到来方位測定装置を用いて、それぞれの装置で同一の電波放射源の方位を測定し、それらの方位を線で結ぶことで、電波発射源の位置を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのシステムにおいては、複数の電波到来方位測定装置が同じタイミングで同じ信号を測定する必要があり、各電波到来方位測定装置の位置情報に誤差がある場合、求められる電波発射源の位置にも誤差が生じる。また各電波到来方位測定装置が異なるタイミングで同じ信号を取得した場合、固定目標のように電波放射源が移動しないのであれば問題とはならないが、移動目標のように電波放射源が移動するのであれば、それぞれの装置で同一の電波放射源の方位を測定したとしても、それらの方位を線で結んでも、その交点は電波発射源の位置を示さない。また、同じタイミングで同じ信号を測定したとしても、電波到来方位測定装置の位置情報に誤差がある場合は、それらの方位を線で結んでもその交点は電波発射源の位置を示さない。また、複数の電波到来方位測定装置間で測定するタイミングを同期させたり、電波到来方位測定装置の位置情報を電波到来方位測定装置間で共有させたりするためには、そのための仕組みをシステムに組み込む必要が生じる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、1か所の測定点で電波を受信することで電波発信源の位置を特定する位置測定システム及び位置測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る位置測定システムは、電波を受信し、前記電波を処理して、直接波の到来した第1方向角及び第1仰角とマルチパス波の到来した第2仰角とを算出し、前記電波を受信した測定点の高度情報と前記第1方向角と前記第1仰角と前記第2仰角とに基づいて前記電波の発射源の位置を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る位置測定装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る位置測定装置による位置推定の原理を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る位置測定装置による位置推定の処理例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、変形例に係る位置測定装置による位置推定の第1例を示す図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る位置測定装置による位置推定の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態)
本実施形態においては、飛翔体等の地面又は水面から離れた位置にいる相手方が放射する電波の直接波とマルチパス波を用いることで、こちらから電波を放射することなく、相手方の位置(方位、距離)を特定する例を示す。
【0009】
図1は、本実施形態に係る位置測定装置1の構成例を示す機能ブロック図である。
【0010】
位置測定装置1は、電波を受信し、受信した信号やデータに基づいて電波発信源の位置を測定する。位置測定装置1は、CPU、メモリなどを含むコンピュータ機能を備えていてもよい。
【0011】
受信アンテナ部10は、航空機等の飛翔体のように地面又は水面などから離れた場所に位置するアレーアンテナで構成され、同一周波数帯の電波を受信できる。受信アンテナ部10は、たとえば複数のn個のアンテナ素子a1~anから構成され、たとえば1つの平面上にアンテナ素子a1~anを縦(垂直)及び横(水平)方向に配置することでもよい。
【0012】
なお、受信アンテナ部10を構成するアンテナ素子の総数、あるいは、アンテナ素子の形状や種類、アンテナ素子を配置する間隔などは、測定対象あるいは測定目的などによって任意に設定できる。アンテナ素子a1~anで受信された受信信号は、周波数変換部30に送られる。
【0013】
高度測定部20は、位置測定装置1の測定点O(例えば受信アンテナ部10上の特定点など)の高度情報を取得する。具体的には、位置測定装置1が飛翔体などの移動体に設置されている場合は、高度測定部20は、例えば飛翔体が搭載しているGlobal Position System(GPS)受信機であってもよいし、高度センサを備えた高度計などであってもよい。また位置測定装置1がタワーなどの固定の構造物に設置されている場合は、高度測定部20は予め測定した高度を図示せぬメモリなどに格納しておくことでもよい。
【0014】
周波数変換部30は、受信信号を中間周波数に周波数変換する。
【0015】
AD変換部40は、周波数変換部30から順に取り出されたアンテナ素子a1~anの受信信号を、同時サンプリングによってAnalog Digital変換(AD変換)し、デジタル化した受信データに変換する。
【0016】
到来方向推定処理50は、AD変換部40から送られる受信データを処理する。この処理は、アレーアンテナの各アンテナ素子において、同じ時間に受信された受信信号どうしの位相差などを検出し、電波発射源Tの方位方向の方位角(例えば水平方向)および仰角方向(例えば垂直方向)を推定する。方位方向および仰角方向の推定方法は、例えばアレーアンテナの受信波に対する一般的な信号処理などの手法でよく、ここでは詳細の説明を省略する。この推定結果は位置測定処理部60に送られる。
【0017】
位置測定処理部60は、電波発射源Tまでの距離及び電波発射源Tの高度を推定する。
【0018】
図2は、本実施形態に係る位置測定装置による位置推定の原理を示す図であり、航空機の飛翔体などに設置されている位置測定装置1(測定点Oを含む)が、航空機の飛翔体など電波発射源Tの位置を推定する例である。
【0019】
位置測定処理部60は、到来方向推定処理50から入力される方位角から、電波発射源Tの方向106を推定する。方向106は、測定点Oから降ろした垂線と反射面122上の平面105との交点を中心点とした平面105上の円方向の移動量であってもよい。また位置測定処理部60は、到来方向推定処理50から入力される電波発射源Tからの直接波111を測定した仰角113(θ1とする)、電波発射源Tからの間接波124(地面又は水面などの反射面122から反射してから到来した波)を測定した仰角126(θ2とする)、及び高度測定部20から入力される高度情報131(高度H1とする)とから、測定点Oから電波発射源Tまでの距離(dとする)及び電波発射源Tの高度132(高度H2とする)を推定する。
【0020】
位置測定処理部60で推定した電波発射源Tまでの方向106及び距離dを表示部70で、画面上に表示することで、電波発射源Tの位置測定を行う。以下に位置測定の原理をより詳細に示す。
【0021】
図2中の高度H1は測定点Oの高度を表し、高度測定部20で測定される値である。仰角θ1は、測定点Oにおける電波発射源Tからの直接波113の到来仰角を表し、到来方向推定処理部50で推定される値である。仰角θ2は、測定点Oにおける電波発射源Tから発射された電波121が地表面又は水平面などの反射面122で反射され、測定点Oに到来した間接波124の到来仰角を表し、到来方向推定処理部50で推定される値である。
【0022】
位置測定処理部60は、この3つの値から、測定点Oから電波発射源Tまでの距離d及び電波発射源Tの高度H2を以下のように計算する。
【0023】
【0024】
【0025】
到来方向推定処理部50で推定される電波発射源Tの直接波111の到来方位角106、位置測定処理部60で計算される測定点Oから電波発射源Tまでの距離d及び電波発射源Tの高度H2を表示部70で表示することで位置測定が可能となる。
【0026】
図3は、本実施形態に係る位置測定装置による位置推定の処理例を示すフローチャートである。
【0027】
受信アンテナ部10が電波(受信信号)を受信すると、到来方向推定処理部50は、周波数変換部30、AD変換部40を介して受信データを受信し、ある強度の電波(直接波と)を受信したことを認識し(ステップS101)、その受信データを用いて直接波の方位方向106および仰角方向(仰角θ1)を算出する(ステップS102)。ステップS101、S102において、到来方向推定処理部50は、例えば、受信データを確認して、仰角θ1が0(しきい値で設定してもよい)より大きな値でかつ電波の強度があるしきい値以上であることを認識した場合に、直接波を受信したと判断することでもよい。
【0028】
到来方向推定処理部50は、さらに受信データから例えば直接波と同様の方位方向(水平方向とする)に対して垂直方向に受信電波のサーチをして、間接波を特定し、間接波の仰角方向(仰角θ1)を算出する(ステップS103、S104)。より具体的には、ステップS103において、ステップS101で測定した直接波の電波強度と比較して、電波強度の小さい受信電波を間接波として1つ選択することでもよい。直接波よりも電波強度の小さい間接波が複数確認された場合は、その中で一番強度の大きな間接波を選択することでもよい。また間接波の選択には、直接波よりも後に検出されたことをも考慮してもよい。位置測定処理部60は、高度測定部20から測定点Oの高度H1を取得する(ステップS105)。位置測定処理部60は、仰角θ1と仰角θ2と高度H1から、測定点Oから電波発射源Tまでの距離d及び電波発射源Tの高度H2を算出する(ステップS106)。位置測定処理部60は、必要に応じて表示部70にデータ(距離d、高度H2、方位方向106)を出力し、表示部70は、データに基づいて、測定点Oを基準とする相対位置などを表示することでもよい(ステップS107)。
【0029】
以上の手順により、受信アンテナ部10が電波を受信し、到来方向推定処理部50は、処理された電波から直接波の到来した第1方向角及び第1仰角と、マルチパス波の到来した第2仰角とを算出し、さらに電波を受信した測定点の高度情報と算出した第1方向角と前記第1仰角到来と前記第2方向角とに基づいて、電波を発信する電波発信源の位置(方位、距離、高度)を求めることができる。
(変形例)
高度測定部20において、測定点Oの高度情報131だけでなく、現在地の位置情報を取得できたならば、位置測定処理部60を経由して、表示部70に位置情報を入力し、位置測定処理部60で推定した電波発射源Tまでの方向106及び距離dを座標変換などすることで、電波発射源Tの位置(絶対位置)を求めることができる。これにより、電波発射源Tの位置を地図上に表示することが可能となる。現在地の位置情報は、例えばGPSによる測定点Oの位置情報でもよい。
【0030】
また、位置測定システムの受信アンテナ部10は、航空機等の飛翔体ではなく、
図4に示すようにタワー等の構造体150によって、地面又は水面から離れた場所に位置してもよい。同様に、電波発射源が航空機等の飛翔体ではなく、
図5に示すようにタワー等の構造体152によって地面又は水面から離れた場所に位置していても、本発明の位置測定システムは作用する。その場合、位置測定システムの受信アンテナ部10は、航空機等の飛翔体に搭載されていても、タワー等の構造体に据え付けられていても構わない。
【0031】
以上に述べた少なくとも1つの実施形態、変形例によれば、1か所の測定点で電波を受信することで電波発信源の位置を特定する位置測定システム及び位置測定方法を提供することできる。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、フローチャート、シーケンスチャートなどに示す処理は、ICチップ、デジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal ProcessorまたはDSP)などのハードウェアもしくはマイクロコンピュータを含めたコンピュータなどで動作させるソフトウェア(プログラムなど)またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現してもよい。また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、及び前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0033】
1…位置測定装置、10…受信アンテナ、20…高度測定部、30…周波数変換部、40…AD変換部、50…到来方向推定処理部、60…位置測定処理部、70…表示部、O…測定点、T…電波発射源。