(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039706
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/08 20060101AFI20230314BHJP
B61D 17/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021146959
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞野 優太
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(57)【要約】
【課題】
溶接歪による側外板の変形を抑えることが可能な鉄道車両を提供すること。
【解決手段】
側外板25は、所定の隙間G11を持って軌道方向に隣接して並ぶ第1分割外板311と第2分割外板321とを備えること、第1分割外板311は、車両構体2の内方側の内面311aに、軌道方向に延在する第1横骨312を備え、第2分割外板321は、車両構体2の内方側の内面321aに、軌道方向に延在する第2横骨322を備えること、側構体22は、隙間G11に沿って延在する柱部材41を備えること、柱部材41は、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持する支持部(例えば平板材411)と、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方に結合する結合部412cと、を備えること。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構体の側面部を構成する側構体を備え、前記側構体が前記車両構体の外面を形成する側外板を備える鉄道車両において、
前記側外板は、所定の隙間を持って軌道方向に隣接して並ぶ第1分割外板と第2分割外板とを備えること、
前記第1分割外板は、前記車両構体の内方側の内面に、軌道方向に延在する第1横骨を備え、前記第2分割外板は、前記車両構体の内方側の内面に、軌道方向に延在する第2横骨を備えること、
前記側構体は、前記隙間に沿って延在する柱部材を備えること、
前記柱部材は、前記第1分割外板および前記第2分割外板を、前記内面の側から支持する支持部と、前記第1横骨および前記第2横骨の少なくとも一方に結合する結合部と、を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両において、
前記結合部は、前記第1横骨および前記第2横骨の少なくとも一方の、前記内面の側とは反対側の端部に接合されること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両において、
前記第1横骨と前記第2横骨との間には、前記隙間に沿って、前記柱部材を配置するための配置空間が設けられていること、
前記柱部材は、
前記配置空間において、前記隙間を前記車両構体の内方側から覆い隠すように位置される前記支持部としての平板材と、
前記平板材に結合される第1フランジ、および前記配置空間から前記第1横骨または前記第2横骨側に張り出す、前記結合部としての第2フランジを備えるZ形材と、
から構成されること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項2に記載の鉄道車両において、
前記第1横骨と前記第2横骨との間には、前記隙間に沿って、前記柱部材を配置するための配置空間が設けられていること、
前記柱部材は、
前記配置空間において、前記隙間を前記車両構体の内方側から覆い隠すように位置される前記支持部としての本体部と、
前記本体部から延伸し、前記配置空間から前記第1横骨側に張り出す、前記結合部としての第1フランジと、
前記本体部から延伸し、前記配置空間から前記第2横骨側に張り出す、前記結合部としての第2フランジと、
からなるハット形材であること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の鉄道車両において、
前記側構体は、前記第1横骨と前記第2横骨とを横架する補強部材を備えること、
前記柱部材は、前記補強部材に結合される第2結合部を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両構体の側面部を構成する側構体を備え、側構体が車両構体の外面を形成する側外板を備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、台車と、台車に支持される車両構体を有しており、車両構体は、鉄道車両の床部をなす台枠と、台枠の軌道方向の両端部に立設されることで車両構体の連結部を形成する一対の妻構体(例えば切妻構体)と、台枠の枕木方向の両端部に立設されることで車両構体の側面部を形成する一対の側構体と、一対の妻構体の上端部および一対の側構体の上端部に結合されることで車両構体の屋根部を形成する屋根構体とにより6面体をなすように構成されることが一般的である。
【0003】
側構体は、車両構体の外面を形成する側外板と、側外板を車両構体の内側から支持する縦骨および横骨と、を備える。側外板は、車両構体の軌道方向の全長分の長さ(約20m)を必要とする。このため、側外板を一枚板から構成すると、側構体の組み立ての際に、作業スペースの確保が困難であることや溶接装置に入りきらないこと等、製造性の観点から問題が生じる場合がある。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されるように、側構体を、窓部分を構成するブロック(以下、窓ブロックという)と出入口部分を構成するブロック(以下、側入口ブロックという)とに分割し、隣接するブロック同士を溶接により接合することで側構体を構成することが提案されている。これにより、側外板は、車両構体の全長分の長さを有する一枚板から形成する必要がなくなり、上記した製造性の問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば優等用車両等、出入口の数が少ない鉄道車両において、特許文献1に開示される側構体の構造を用いると、窓ブロックの軌道方向の長さが長くなってしまう。そうすると、上記した製造性の問題が生じるおそれがあるため、窓ブロックを、さらに複数のブロックに分割する必要がある。特許文献1に開示される側構体のように、窓ブロックと側入口ブロックを接合する場合、その継ぎ目は、出入口の枠部材等により補強されるが、窓ブロックを複数のブロックから構成されるものとすると、その継ぎ目は、上記枠部材のような補強する部材がないため、構造的弱点となる。このような構造的弱点の部分において溶接による接合を行うと、溶接歪みにより、側外板が、車両構体の内側に向かってに凹むようにして変形するおそれがある。このように側外板が変形してしまうと、車両構体の外面が平坦でなくなり、外観上の問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、溶接歪による側外板の変形を抑えることが可能な鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(1)車両構体の側面部を構成する側構体を備え、前記側構体が前記車両構体の外面を形成する側外板を備える鉄道車両において、前記側外板は、所定の隙間を持って軌道方向に隣接して並ぶ第1分割外板と第2分割外板とを備えること、前記第1分割外板は、前記車両構体の内方側の内面に、軌道方向に延在する第1横骨を備え、前記第2分割外板は、前記車両構体の内方側の内面に、軌道方向に延在する第2横骨を備えること、前記側構体は、前記隙間に沿って延在する柱部材を備えること、前記柱部材は、前記第1分割外板および前記第2分割外板を、前記内面の側から支持する支持部と、前記第1横骨および前記第2横骨の少なくとも一方に結合する結合部と、を備えること、を特徴とする。
【0009】
(1)に記載の鉄道車両によれば、第1分割外板と第2分割外板とを、車両構体の外方から、第1分割外板と第2分割外板との隙間に沿って溶接を行うことができる。この場合、柱部材の支持部が、第1分割外板および第2分割外板を、内面の側から支持するため、柱部材は、溶接部(すなわち第1分割外板と第2分割外板との隙間の部分)を、溶接部のすぐ裏側で支持することができる。さらに、柱部材の結合部が、第1分割外板の第1横骨および第2分割外板の第2横骨の少なくとも一方に結合されるため、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方が、結合部を介して柱部材を支持することができる。
【0010】
以上のように、溶接部を支持する柱部材が、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方により支持されるため、溶接部は強固に固定され、溶接歪によって第1分割外板および第2分割外板が変形しようとする力に抗することができる。つまり、溶接による第1分割外板および第2分割外板(ひいては側外板)の変形を抑えることができ、車両構体の美観を確保することができる。なお、所定の隙間とは、第1分割外板と第2分割外板とを、例えば同一平面上に並べた際に、突合わせ溶接することが可能な程度の大きさの隙間である。
【0011】
(2)(1)に記載の鉄道車両において、前記結合部は、前記第1横骨および前記第2横骨の少なくとも一方の、前記内面の側とは反対側の端部に接合されること、を特徴とする。
【0012】
(3)(2)に記載の鉄道車両において、前記第1横骨と前記第2横骨との間には、前記隙間に沿って、前記柱部材を配置するための配置空間が設けられていること、前記柱部材は、前記配置空間において、前記隙間を前記車両構体の内方側から覆い隠すように位置される前記支持部としての平板材と、前記平板材に結合される第1フランジ、および前記配置空間から前記第1横骨または前記第2横骨側に張り出す、前記結合部としての第2フランジを備えるZ形材と、から構成されること、を特徴とする。
【0013】
(4)(2)に記載の鉄道車両において、前記第1横骨と前記第2横骨との間には、前記隙間に沿って、前記柱部材を配置するための配置空間が設けられていること、前記柱部材は、前記配置空間において、前記隙間を前記車両構体の内方側から覆い隠すように位置される前記支持部としての本体部と、前記本体部から延伸し、前記配置空間から前記第1横骨側に張り出す、前記結合部としての第1フランジと、前記本体部から延伸し、前記配置空間から前記第2横骨側に張り出す、前記結合部としての第2フランジと、からなるハット形材であること、を特徴とする。
【0014】
第1横骨および第2横骨の少なくとも一方が、柱部材の結合部を介して、柱部材をより有効に支持するためには、結合部が、溶接部よりも車両構体の内方側に可能な限り離れた位置で、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方に結合されることが望ましい。(2)または(3)または(4)に記載の鉄道車両によれば、結合部は、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方の、分割外板の内面の側とは反対側の端部に接合される。これは、結合部が、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方の枕木方向の厚みの分だけ、溶接部から車両構体の内方側に離れた位置で、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方に結合されることを意味する。よって、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方が、結合部を介して、柱部材をより有効に支持することが可能であり、より確実に溶接歪によって第1分割外板および第2分割外板が変形しようとする力に抗することができる。つまり、より確実に、第1分割外板および第2分割外板(ひいては側外板)の変形を抑えることができる。
【0015】
(5)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の鉄道車両において、前記側構体は、前記第1横骨と前記第2横骨とを横架する補強部材を備えること、前記柱部材は、前記補強部材に結合される第2結合部を備えること、を特徴とする。
【0016】
(5)に記載の鉄道車両によれば、第1横骨および第2横骨の少なくとも一方が、結合部を介して、柱部材を支持することに加え、第2結合部が補強部材に結合されるため、補強部材も柱部材を支持する。よって、より確実に溶接歪によって側外板が変形しようとする力に抗することができる。つまり、より確実に、第1分割外板および第2分割外板(ひいては側外板)の変形を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鉄道車両によれば、溶接歪による側外板の変形を抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図4】第1ブロックと第2ブロックの結合を行う工程を示す図である。
【
図5】第1ブロックと第2ブロックの結合を行う工程を示す図である。
【
図6】第2の実施形態を説明するための図であり、
図2に対応する断面図である。
【
図8】第3の実施形態を説明するための図であり、
図2に対応する断面図である。
【
図9】第4の実施形態を説明するための図であり、
図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態について)
本発明に係る鉄道車両の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
まず本実施形態に係る鉄道車両1の構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、鉄道車両1の側面図である。
【0021】
鉄道車両1は、軌道6上を走行する、例えば優等車両である。この鉄道車両1は、
図1に示すように、車両構体2と車両構体2を支持する台車3とにより構成されている。
【0022】
車両構体2は、鉄道車両1の床部をなす台枠21と、台枠21の軌道方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の連結部を形成する一対の切妻構体24と、台枠21の枕木方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の側面部を形成する一対の側構体22と、切妻構体24および側構体22の上端部に結合されることで、鉄道車両1の屋根部を形成する屋根構体23と、により6面体をなすように構成される。また、車両構体2には、内部の客室に通じる乗客乗降口4および窓5が設けられている。なお、本実施形態における鉄道車両1は、軌道方向の両端部に連結部が形成される中間車両であるが、これに限定されるものではなく、先頭車両であっても良い。
【0023】
側構体22は、車両構体2の側面を形成する側外板25を備える。側外板25は、窓5が形成される部分の吹寄部252と、吹寄部252の上方の幕板部251と、吹寄部252の下方の腰板部253と、から構成される。
【0024】
また、側構体22は、第1ブロック31と、第2ブロック32と、第3ブロック33と、第4ブロック34と、第5ブロック35と、が軌道方向に並び、隣接するブロック同士が結合されることで構成されている。
【0025】
具体的には、第1ブロック31と第2ブロック32とは、幕板部251における溶接部43Aおよび腰板部253における溶接部43Bにより結合されている。吹寄部252は、窓5が設けられているため、結合されていない。
【0026】
第2ブロック32と第3ブロック33とは、幕板部251における溶接部43Cおよび腰板部253における溶接部43Dにより結合されている。吹寄部252は、窓5が設けられているため、結合されていない。
【0027】
第3ブロック33と第4ブロック34とは、幕板部251における溶接部43Eにより結合されている。吹寄部252および腰板部253は、乗客乗降口4が設けられているため、結合されていない。
【0028】
第4ブロック34と第5ブロック35とは、幕板部251と吹寄部252と腰板部253にかけて連続する溶接部43Fにより結合されている。
【0029】
各ブロック31-35の構成および各ブロック31-35がどのように結合されているのか、
図2および
図3を用いて、第1ブロック31と第2ブロック32を例にして説明する。
図2は、
図1のA-A断面図である。
図3は、
図2の矢視Bを示す矢視図である。なお、
図3中、高さ方向中央の結合部412cの部分を部分断面図で表している。また、
図2および
図3は、第1ブロック31と第2ブロック32とを結合する溶接部43Bにおける構成を示す図であるが、その他の溶接部43A,43C,43D,43E,43Fにおいても同様の構成である。
【0030】
第1ブロック31は、
図2に示すように、第1分割外板311と第1横骨312とを備え、第2ブロック32は、第2分割外板321と第2横骨322とを備えている。なお、第3ブロック33、第4ブロック34、第5ブロック35も同様に、それぞれ第3分割外板331、第4分割外板341、第5分割外板351(
図1参照)と、その内面に横骨(不図示)を備えている。
【0031】
分割外板311,321,331,341,351は、厚み約2mmの、ステンレス鋼または鋼の板材である。第1分割外板311と、第2分割外板321とは、
図2に示すように、所定の隙間G11を持って、軌道方向に、同一平面上に並んでいる。この隙間G11が溶接部43Bとなり、第1分割外板311と第2分割外板321とが結合されている。よって、隙間G11の大きさは、第1分割外板311と第2分割外板321とを溶接することが可能な程度の大きさである。なお、この溶接は、例えばアーク溶接により行われる。また、第2分割外板321と第3分割外板331、第3分割外板331と第4分割外板341、第4分割外板341と第5分割外板351も、上記隙間G11と同様の隙間を持って、軌道方向に、同一平面上に並んでいる。そして、当該隙間を利用した溶接(例えばアーク溶接による)により、第2分割外板321と第3分割外板331の結合、第3分割外板331と第4分割外板341の結合、第4分割外板341と第5分割外板351の結合が行われる。このように、それぞれ隣接する分割外板311,321,331,341,351同士が溶接されることで、側外板25が構成されている。
【0032】
第1横骨312(第2横骨322)は、ステンレス鋼等により断面ハット形に形成された、軌道方向に延在する長尺部材であり、
図3に示すように、車両構体2の高さ方向(
図3中の上下方向)に、複数本が平行に設けられている。なお、第1横骨312(第2横骨322)は、断面Z形の長尺部材であっても良い。
【0033】
これら第1横骨312(第2横骨322)は、
図2に示すように、第1分割外板311(第2分割外板321)の側に開口312a(322a)が位置し、反対側には閉塞する端部312b(322b)が位置するように、第1分割外板311(第2分割外板321)の内面311a(321a)に接合されている。
【0034】
第1横骨312(第2横骨322)の軌道方向の長さは、第1分割外板311(第2分割外板321)よりも短くされている。すなわち、第1分割外板311(第2分割外板321)の軌道方向の両端部は、第1横骨312(第2横骨322)の軌道方向の両端部よりも突出している。これにより、第1横骨312と第2横骨322との間には、隙間G11に沿って、柱部材41を配置するための配置空間S11が形成されている。
【0035】
柱部材41は、平板材411(支持部の一例)とZ形材412とが結合されてなる。平板材411は、厚み約2mmのステンレス鋼等により、隙間G11に沿って長手方向を有した矩形状に形成されている。また、平板材411は、配置空間S11において、隙間G11を車両構体2の内方側(
図2中の上方側)から覆い隠すように、第1分割外板311と第2分割外板321とを横架している。これにより、平板材411は、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持している。平板材411は、第1分割外板311の内面311aと第2分割外板321の内面321aとに接した状態で、第1分割外板311と第2分割外板321に溶接により結合されている。この溶接は、レーザー溶接により行うことが最も好ましい。例えば、栓溶接、スポット溶接によっても、平板材411を、第1分割外板311と第2分割外板321とに結合することは可能であるが、栓溶接は、第1分割外板311と第2分割外板321にこげや溶け落ちが生じるおそれがあること、スポット溶接は、第1分割外板311と第2分割外板321に圧痕が生じることから、車両構体2の外観に問題が生じるおそれがある。
なお、本実施形態では、平板材411は第1分割外板311の内面311aおよび第2分割外板321の内面321aの双方に溶接により結合されているが、平板材411は、少なくとも第2分割外板321の内面321aに結合されていれば良い。平板材411は、第2分割外板321の内面321aに結合されていれば、第1分割外板311の内面311aに、結合を行わずに接した状態とするのみであっても、十分に第1分割外板311と第2分割外板321とを支持することが可能である。
【0036】
Z形材412は、ステンレス鋼等により断面Z形に形成された、隙間G11に沿って延在する長尺部材である。また、Z形材412は、平板材411と平行な第1フランジ412aと、第2横骨322の端部322bと平行な第2フランジ412bと、を備えている。
【0037】
第1フランジ412aは、平板材411の第1分割外板311とは反対側の面に接した状態で、平板材411に溶接により結合されている。これにより平板材411とZ形材412が結合されている。なお、この溶接は、栓溶接、レーザー溶接、スポット溶接等により行われる。
【0038】
第2フランジ412bの先端には、配置空間S11から第2横骨322側に張り出す結合部412cが設けられている。この結合部412cは、
図3に示すように、複数配置される第2横骨322の位置に合わせて設けられているため、第2フランジ412bは櫛歯状となっている。そして、結合部412cは、
図2に示すように、第2横骨322の端部322bと第2分割外板321との間の空間に挿し込まれた上、端部322bの第2分割外板321側の端面に、溶接により結合される。この溶接は、栓溶接、レーザー溶接等により行われる。
【0039】
なお、
図2に示すZ形材412は、左右反転させても良い。すなわち、
図2においては、第1フランジ412aが第1横骨312側(図中左側)に向かって延伸し、第2フランジ412bが第2横骨322側(図中右側)に向かって延伸するものとしているが、第1フランジ412aが第2横骨322側(図中右側)に向かって延伸し、第2フランジ412bが第1横骨312側(図中左側)に向かって延伸するものとしても良い。そして、この場合、第2フランジ412bの先端に設けられた結合部412cは、第1横骨312の端部312bと第1分割外板311との間の空間に挿し込まれた上、端部312bの第1分割外板311側の端面に、溶接(栓溶接、レーザー溶接等)により結合される。また、この場合、平板材411は、第1分割外板311の内面311aおよび第2分割外板321の内面321aの双方に結合しても良いし、第1分割外板311の内面311aのみに結合するものとしても良い。
【0040】
また、側構体22は、
図2に示すように、各ブロック31-35間の結合を補強するための補強部材42を備えている。補強部材42は、厚み約2mmの、ステンレス鋼等からなる板材である。この補強部材42は、配置空間S11を車両構体2の内方側(
図2中の上方側)から覆うように、第1横骨312と第2横骨322とを横架している。また、補強部材42は、第1横骨312の端部312b、または第2横骨322の端部322bと接する箇所に、車両構体2の内方側の面から反対側の面までを貫通する貫通孔421を備えている。そして、補強部材42は、この貫通孔421を利用して、栓溶接またはリング溶接により、第1横骨312の端部312bおよび第2横骨322の端部322bに結合されている。
【0041】
次に、各ブロック31-35を結合する工程について説明する。ここでは、
図4および
図5を用いて、第1ブロック31と第2ブロック32とを結合する工程を例として説明する。
図4および
図5は、第1ブロック31と第2ブロック32の結合を行う工程を示す図である。
【0042】
予め、第1分割外板311と第1横骨312とを結合して第1ブロック31構成し、第2分割外板321と第2横骨322と結合して第2ブロック32を構成する。さらに、この第2ブロック32には、
図4に示すように、第2横骨322に柱部材41(Z形材412)の結合部412cを結合し、第2分割外板321に柱部材41の平板材411を結合することで、第1ブロック31に隣接する側の端部に、柱部材41を結合しておく。
【0043】
第1ブロック31と、第2ブロック32の結合を行うにあたっては、まず、
図4に示すように、第1ブロック31に対し、第2ブロック32を、第1分割外板311の内面311aの側から近接させていく。そして、
図5に示すように、柱部材41の平板材411が第1分割外板311の内面311aに接するように、かつ、第1分割外板311と第2分割外板321との間に隙間G11が生じるように、第2ブロック32の位置調整を行う。
【0044】
この第2ブロック32の位置調整を行う際には、側構体22のキャンバーの調整も行われる。車両構体2は、車両構体2の自重や乗客の重量によって、軌道方向の中央部が下方にたわみ、下方の車両限界を侵すおそれがある。これを防止するため、予め側構体22にキャンバーを設け、側構体22を軌道方向の中央部が上方(
図1中の上方)に反った弓なり状に形成する必要がある。よって、車両構体2の高さ方向の上方に向かうほど隙間G11が大きくなるようにするなど、第1ブロック31に対する第2ブロック32の位置の調整を行うことで、側構体22を弓なり状に形成する。
【0045】
第2ブロック32の位置調整が完了した後、補強部材42(
図2参照)の結合、および第1分割外板311と第2分割外板321との結合を行う。なお、補強部材42の結合と、分割外板311,321の結合は、どちらを先に行っても良い。
【0046】
補強部材42は、
図2に示すように、第1横骨312および第2横骨322に結合される。
【0047】
第1分割外板311と第2分割外板321とは、隙間G11を利用して、溶接により結合される。この溶接を行う際、柱部材41の平板材411が、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持しているため、柱部材41は、溶接部43B(
図2参照)を、溶接部43Bのすぐ裏側で支持している状態である。さらに、柱部材41の結合部412cが、第2横骨322に結合されているため、第2横骨322が、結合部412cを介して柱部材41を支持している状態である。
【0048】
以上のように、溶接部43Bを支持する柱部材41が、第2横骨322により支持されているため、溶接部43Bは強固に固定され、溶接歪によって第1分割外板311および第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、溶接による第1分割外板311および第2分割外板321の変形を抑えることができ、車両構体2の美観を確保することができる。
【0049】
補強部材42の結合と、分割外板311,321の結合の完了により、第1ブロック31と第2ブロック32の結合が完了される。また、第2ブロック32と第3ブロック33の結合、第3ブロック33と第4ブロック34の結合、第4ブロック34と第5ブロック35の結合も、上に説明した第1ブロック31と第2ブロック32を結合する工程と同様に行われる。なお、各ブロック31-35を結合する工程について、第1ブロック31と第2ブロック32の結合を例に説明したが、第1ブロック31と第2ブロック32を最初に結合しなければならないのではなく、結合する順番は問わない。
【0050】
以上説明したように、第1の実施形態の鉄道車両1は、車両構体2の側面部を構成する側構体22を備え、側構体22が車両構体2の外面を形成する側外板25を備える鉄道車両1において、側外板25は、所定の隙間G11を持って軌道方向に隣接して並ぶ第1分割外板311と第2分割外板321とを備えること、第1分割外板311は、車両構体2の内方側の内面311aに、軌道方向に延在する第1横骨312を備え、第2分割外板321は、車両構体2の内方側の内面321aに、軌道方向に延在する第2横骨322を備えること、側構体22は、隙間G11に沿って延在する柱部材41を備えること、柱部材41は、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持する支持部(例えば平板材411)と、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方に結合する結合部412cと、を備えること、を特徴とする。
【0051】
上記の鉄道車両1によれば、第1分割外板311と第2分割外板321とを、車両構体2の外方から、第1分割外板311と第2分割外板321との隙間G11に沿って溶接を行うことができる。この場合、柱部材41の支持部(例えば平板材411)が、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持するため、柱部材41は、溶接部43B(すなわち、第1分割外板311と第2分割外板321との隙間G11の部分)を、溶接部43Bのすぐ裏側で支持することができる。さらに、柱部材41の結合部412cが、第1分割外板311の第1横骨312および第2分割外板321の第2横骨322の少なくとも一方に結合されるため、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方が、結合部412cを介して柱部材41を支持することができる。
【0052】
以上のように、溶接部43Bを支持する柱部材41が、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方により支持されるため、溶接部43Bは強固に固定され、溶接歪によって第1分割外板311および第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、溶接による第1分割外板311および第2分割外板321(ひいては側外板25)の変形を抑えることができ、車両構体2の美観を確保することができる。なお、所定の隙間G11とは、第1分割外板311と第2分割外板321とを、例えば同一平面上に並べた際に、突合わせ溶接することが可能な程度の大きさの隙間である。
【0053】
さらに、第1の実施形態の鉄道車両1は、結合部412cは、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方の、内面311a,321aの側とは反対側の端部312b,322bに接合されること、を特徴とする。
【0054】
さらに、第1の実施形態の鉄道車両1は、第1横骨312と第2横骨322との間には、隙間G11に沿って、柱部材41を配置するための配置空間S11が設けられていること、柱部材41は、配置空間S11において、隙間G11を車両構体2の内方側から覆い隠すように位置される支持部としての平板材411と、平板材411に結合される第1フランジ412a、および配置空間S11から第1横骨312または第2横骨322側に張り出す、結合部412cとしての第2フランジ412bを備えるZ形材と、から構成されること、を特徴とする。
【0055】
第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方が、柱部材41の結合部412cを介して、柱部材41をより有効に支持するためには、結合部412cが、溶接部43Bよりも車両構体2の内方側に可能な限り離れた位置で、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方に結合されることが望ましい。上記の鉄道車両1によれば、結合部412cは、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方の、内面311a,321aの側とは反対側の端部312b,322bに接合される。これは、結合部412cが、第1横骨312または第2横骨322の枕木方向の厚みの分だけ、溶接部43Bから車両構体2の内方側に離れた位置で、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方に結合されることを意味する。よって、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方が、結合部412cを介して、柱部材41をより有効に支持することが可能であり、より確実に溶接歪によって第1分割外板311および第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、より確実に、第1分割外板311および第2分割外板321(ひいては側外板25)の変形を抑えることができる。
【0056】
(第2の実施形態について)
次に、本発明に係る鉄道車両の第2の実施形態について、
図6を参照しながら詳細に説明する。
図6は、第2の実施形態を説明するための図であり、
図2に対応する断面図である。
【0057】
第2の実施形態に係る鉄道車両1は、柱部材51の構成が、第1の実施形態における柱部材41と異なっており、その他の構成は、第1の実施形態に係る鉄道車両1と同一である。
【0058】
柱部材51は、平板材511とZ形材512とが結合されてなる。平板材511は、第1の実施形態に係る平板材411(
図2、
図3参照)と同一の部材であり、第1分割外板311と第2分割外板321に、溶接により結合されている。なお、平板材511は、第1の実施形態に係る平板材411と同様に、第2分割外板321のみに結合するものとしても良い。
【0059】
Z形材512は、ステンレス鋼等により断面Z形に形成された、隙間G11に沿って延在する長尺部材である。また、Z形材512は、第1フランジ512aと、第2フランジ512bと、を備えている。
【0060】
第1フランジ512aは、第1の実施形態に係る第1フランジ412a(
図2、
図3参照)と同様に、平板材511の第1分割外板311とは反対側の端面に接した状態で、平板材511に溶接により結合されている。
【0061】
第2フランジ512bは、補強部材42と平行に、かつ、補強部材42の分割外板311,321側の面に接する位置に設けられている。そして、第2フランジ512bの補強部材42に接触する端面512d(第2結合部の一例)は、補強部材42に、溶接により結合されている。この溶接は、補強部材42に設けられた貫通孔422を用いて、栓溶接またはリング溶接により行われる。
【0062】
また、第2フランジ512bの先端には、段差部512eを介して、配置空間S11から第2横骨322側に張り出す結合部512cが設けられている。第2フランジ512bは、枕木方向の位置が、第2横骨322の端部322bと略同一位置となっているが、段差部512eにより、結合部512cは、第2フランジ512bよりも一段(第2横骨322の板厚と同程度)低くされている。これにより、
図6に示すように、結合部512cは、第2横骨322の端部322bと第2分割外板321との間の空間に挿し込まれている。そして、結合部512cは、端部322bの第2分割外板321側の面に、溶接により結合されている。
【0063】
なお、
図6に示すZ形材512は左右反転させても良い。すなわち、
図6においては、第1フランジ512aが第1横骨312側(図中左側)に向かって延伸し、第2フランジ512bが第2横骨322側(図中右側)に向かって延伸するものとしているが、第1フランジ512aが第2横骨322側(図中右側)に向かって延伸し、第2フランジ512bが第1横骨312側(図中左側)に向かって延伸するものとしても良い。そして、この場合、第2フランジ512bの先端に設けられた結合部512cは、第1横骨312の端部312bと第1分割外板311との間の空間に挿し込まれた上、端部312bの第1分割外板311側の面に、溶接(栓溶接、レーザー溶接等)により結合される。また、この場合、平板材511は、第1分割外板311の内面311aおよび第2分割外板321の内面321aの双方に結合しても良いし、第1分割外板311の内面311aのみに結合するものとしても良い。
【0064】
次に、第1ブロック31と第2ブロック32とを結合する工程について説明する。予め、第1分割外板311と第1横骨312とを結合して第1ブロック31構成し、第2分割外板321と第2横骨322と結合して第2ブロック32を構成する。さらに、この第2ブロック32には、第2横骨322に柱部材51(Z形材512)の結合部512cを結合し、第2分割外板321に柱部材51の平板材511を結合することで、第1ブロック31に隣接する側の端部に、柱部材51を結合しておく。
【0065】
第1ブロック31と、第2ブロック32の結合を行うにあたっては、まず、第1ブロック31に対し、第2ブロック32を、第1分割外板311の内面311aの側から近接させていく。そして、柱部材51の平板材511が第1分割外板311の内面311aに接するように、かつ、第1分割外板311と第2分割外板321との間に隙間G11が生じるように、第2ブロック32の位置調整を行う。この第2ブロック32の位置調整を行う際には、側構体22のキャンバーの調整も行われる。
【0066】
第2ブロック32の位置調整が完了した後、補強部材42を、第1横骨312と、第2横骨322と、柱部材51(Z形材512)の端面512dに結合する。
【0067】
その後、隙間G11を利用して、第1分割外板311と第2分割外板321とを溶接により結合する。この溶接を行う際、柱部材51の平板材511が、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持しているため、柱部材51は、溶接部43Bを、溶接部43Bのすぐ裏側で支持している状態である。さらに、柱部材51(Z形材512)の結合部512cが、第2横骨322に結合されているため、第2横骨322が、結合部512cを介して、柱部材51を支持している状態である。加えて、柱部材51(Z形材512)は、端面512dが、補強部材42に結合されているため、補強部材42によっても支持されている状態である。
【0068】
以上のように、溶接部43Bを支持する柱部材51が、第2横骨322および補強部材42により支持されているため、溶接部43Bは強固に固定され、溶接歪によって第1分割外板311および第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、溶接による第1分割外板311および第2分割外板321の変形を抑えることができ、車両構体2の美観を確保することができる。
【0069】
そして、第1分割外板311と第2分割外板321との結合が完了することにより、第1ブロック31と第2ブロック32の結合が完了される。
【0070】
なお、上に説明した第2の実施形態のように、柱部材51を補強部材42の結合を行う場合、
図7に示す補強部材72のように、補強部材72を、第1横骨312と、Z形材512の第2フランジ512bの端面512dとを横架するように設けても良い。この補強部材72は、第1横骨312の端部312bに、貫通孔721を利用した栓溶接により結合されるとともに、第2フランジ512bの端面512dに、貫通孔722を利用した栓溶接またはリング溶接により結合されている。補強部材72は、第2横骨322に結合されないが、第2横骨322に結合されるZ形材512と結合することにより、第1ブロック31と第2ブロック32の間の結合を十分に補強することが可能である。
【0071】
(第3の実施形態について)
次に、本発明に係る鉄道車両の第3の実施形態について、
図8を参照しながら詳細に説明する。
図8は、第3の実施形態を説明するための図であり、
図2に対応する断面図である。
【0072】
第3の実施形態に係る鉄道車両1は、柱部材61および補強部材62の構成が、第1の実施形態における柱部材41および補強部材42と異なっており、その他の構成は、第1の実施形態に係る鉄道車両1と同一である。
【0073】
柱部材61は、平板材611とZ形材612とが結合されてなる。平板材611は、第1の実施形態に係る平板材411(
図2、
図3参照)と同一の部材であり、第1分割外板311と第2分割外板321に溶接により結合されている。なお、平板材611は、第1の実施形態に係る平板材411と同様に、第2分割外板321のみに結合するものとしても良い。
【0074】
Z形材612は、ステンレス鋼等により断面Z形に形成された、隙間G11に沿って延在する長尺部材である。また、Z形材612は、第1フランジ612aと、第2フランジ612bと、を備えている。
【0075】
第1フランジ612aは、第1の実施形態に係る第1フランジ412a(
図2、
図3参照)と同様に、平板材611の第1分割外板311とは反対側の端面に接した状態で、平板材611に溶接により結合されている。
【0076】
第2フランジ612bは、第2横骨322の端部322bと平行で、かつ、第2フランジ612bの第2分割外板321側の面が、端部322bの第2分割外板321側と反対側の面と同一平面上となる位置に設けられている。また、第2フランジ612bの先端には、配置空間S11から第2横骨322側に張り出す結合部612cが設けられている。そして、結合部612cは、端部322bの第2分割外板321側とは反対側の面に、溶接により結合されている。また、結合部612cの第2横骨322と反対側の端面612d(第2結合部の一例)は、補強部材62と結合している。
【0077】
補強部材62は、背切部623により、第1横骨312側の端部621と第2横骨322側の端部622との間に段差が設けられている。補強部材62の端部621は、第1の実施形態に係る補強部材42同様に、第1横骨312の端部312bに溶接により結合されている。この溶接は、貫通孔621aを利用した栓溶接またはリング溶接である。そして、補強部材62の端部622は、Z形材612の結合部612cの上に重ねられる。端部622には貫通孔622aが設けられており、この貫通孔622aを利用した栓溶接により、補強部材62の端部622と、結合部612cの端面612dとが結合されている。
【0078】
なお、
図8に示すZ形材612および補強部材62は、左右反転させても良い。すなわち、
図8においては、第1フランジ612aが第1横骨312側(図中左側)に向かって延伸し、第2フランジ612bが第2横骨322側(図中右側)に向かって延伸するものとしているが、第1フランジ612aが第2横骨322側(図中右側)に向かって延伸し、第2フランジ612bが第1横骨312側(図中左側)に向かって延伸するものとしても良い。そして、この場合、第2フランジ612bの先端に設けられた結合部612cは、第1横骨312の端部312bの分割外板311側とは反対側の面に、溶接(栓溶接、レーザー溶接等)により結合される。そして、補強部材62は、第1横骨312側の端部621が、第1横骨312に結合された結合部612cの上に重ねられ、結合されるとともに、第2横骨322側の端部622が、第2横骨322の端部322bに溶接により結合される。また、この場合、平板材611は、第1分割外板311の内面311aおよび第2分割外板321の内面321aの双方に結合しても良いし、第1分割外板311の内面311aのみに結合するものとしても良い。
【0079】
次に、第1ブロック31と第2ブロック32とを結合する工程について説明する。予め、第1分割外板311と第1横骨312とを結合して第1ブロック31構成し、第2分割外板321と第2横骨322と結合して第2ブロック32を構成する。さらに、この第2ブロック32には、第2横骨322に柱部材61(Z形材612)の結合部612cを結合し、第2分割外板321に柱部材51の平板材611を結合することで、第1ブロック31に隣接する側の端部に、柱部材61を結合しておく。
【0080】
第1ブロック31と、第2ブロック32の結合を行うにあたっては、まず、第1ブロック31に対し、第2ブロック32を、第1分割外板311の内面311aの側から近接させていく。そして、柱部材61の平板材611が第1分割外板311の内面311aに接するように、かつ、第1分割外板311と第2分割外板321との間に隙間G11が生じるように、第2ブロック32の位置調整を行う。この第2ブロック32の位置調整を行う際には、側構体22のキャンバーの調整も行われる。
【0081】
第2ブロック32の位置調整が完了した後、補強部材62を、第1横骨312と、第2横骨322と、柱部材61(Z形材612)の端面612dに結合する。
【0082】
その後、隙間G11を利用して、第1分割外板311と第2分割外板321とを溶接により結合する。この溶接を行う際、柱部材61の平板材611が、第1分割外板311および第2分割外板321を内面311a,321aの側から支持しているため、柱部材61は、溶接部43Bを、溶接部43Bのすぐ裏側で支持している状態である。さらに、柱部材61(Z形材612)の結合部612cが、第2横骨322に結合されているため、第2横骨322が、結合部612cを介して、柱部材61を支持している状態である。加えて、柱部材61(Z形材612)は、端面612dが補強部材62に結合されているため、補強部材62によっても支持されている状態である。
【0083】
以上のように、溶接部43Bを支持する柱部材61が、第2横骨322および補強部材62により支持されているため、溶接部43Bは強固に固定され、溶接歪によって第1分割外板311および第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、溶接による第1分割外板311および第2分割外板321の変形を抑えることができ、車両構体2の美観を確保することができる。
【0084】
そして、第1分割外板311と第2分割外板321との結合が完了することにより、第1ブロック31と第2ブロック32の結合が完了される。
【0085】
以上説明したように、第2の実施形態また第3の実施形態の鉄道車両1は、側構体22は、第1横骨312と第2横骨322とを横架する補強部材42,62を備えること、柱部材51,61は、補強部材42,62に結合される第2結合部(例えば、端面512d,端面612d)を備えること、を特徴とする。
【0086】
上記の鉄道車両1によれば、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方が、結合部512c,612cを介して、柱部材51,61を支持することに加え、第2結合部(例えば、端面512d,端面612d)が補強部材42,62に結合されるため、補強部材42,62も柱部材51,61を支持する。よって、より確実に溶接歪によって第1分割外板311、第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、より確実に、第1分割外板311および第2分割外板321(ひいては側外板25)の変形を抑えることができる。
【0087】
(第4の実施形態について)
次に、本発明に係る鉄道車両の第4の実施形態について、
図9を参照しながら詳細に説明する。
図9は、第4の実施形態を説明するための図であり、
図2に対応する断面図である。
【0088】
第4の実施形態に係る鉄道車両1は、柱部材71の構成が、第1の実施形態における柱部材41と異なっている。また、第1の実施形態における補強部材42に相当する部材を用いない。その他の構成は、第1の実施形態に係る鉄道車両1と同一である。
【0089】
柱部材71は、ハット形材711とチャンネル材712とが結合されてなる。ハット形材711は、ステンレス鋼等により断面ハット形に形成された、隙間G11に沿って延在する長尺部材である。また、ハット形材711は、断面コの字状の本体部711a(支持部の一例)と、本体部711aの軌道方向の両端部のうち、第1横骨312側の端部に設けられた第1フランジ711b(結合部の一例)と、第2横骨322側の端部に設けられた第2フランジ711c(結合部の一例)を備える。
【0090】
本体部711aは、配置空間S11において、開口している側とは反対側の端面711dが隙間G11を車両構体2の内方側(
図9中の上方側)から覆い隠すように、第1分割外板311と第2分割外板321とを横架している。これにより、本体部711aは、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持している。そして、端面711dが第1分割外板311と第2分割外板321とに接した状態で、本体部711aが第1分割外板311と第2分割外板321に溶接により結合されている。なお、本体部711aは、第2分割外板321のみに結合するものとしても良い。
【0091】
第1フランジ711bは、第1横骨312の端部312bと平行に設けられており、配置空間S11から第1横骨312側に張り出している。そして、第1フランジ711bは、第1横骨312の端部312bに車両構体2内方側から重ねられた状態で、溶接により端部312bに結合されている。この溶接は、第1フランジ711bに設けられた貫通孔711eを用いて、栓溶接により行われる。ただし、栓溶接に限定されるものでなく、レーザー溶接等でも良い。
【0092】
第2フランジ711cは、第2横骨322の端部322bと平行に設けられており、配置空間S11から第2横骨322側に張り出している。そして、第2フランジ711cは、第2横骨322の端部322bに車両構体2の内方側から重ねられた状態で、溶接により端部322bに結合されている。この溶接は、栓溶接、レーザー溶接等により行われる。
【0093】
チャンネル材712は、ステンレス鋼等により断面コの字状に形成された補強部材であり、ハット形材711の本体部711aに、開口している側から組付けられ、溶接により固定されている。このチャンネル材712は、車両構体2の高さ方向に沿って、複数個が、ハット形材711に固定されている。ハット形材711におけるチャンネル材712を固定する位置は、特に限定されないが、例えば、高さ方向に複数設けられる横骨312,322(
図3参照)の位置に合わせて、ハット形材711に固定される。
【0094】
ハット形材711にチャンネル材712が固定されていることにより、ハット形材711は、補強され、軌道方向の両端部から(横骨312,322から)負荷される引張り荷重や圧縮荷重に対する耐久性を備えている。よって、柱部材71は、第1の実施形態における補強部材42の機能を兼ねることが可能である。なお、ハット形材711を補強のためには、必ずしもチャンネル材712を用いる必要はなく、板状のリブを立てるなどしても良い。
【0095】
次に、第1ブロック31と第2ブロック32を結合する工程について説明する。予め、第1分割外板311と第1横骨312とを結合して第1ブロック31構成し、第2分割外板321と第2横骨322と結合して第2ブロック32を構成する。さらに、この第2ブロック32には、第2横骨322に柱部材71(ハット形材711)の第2フランジ711cを結合し、第2分割外板321に柱部材71(ハット形材711)の本体部711aを結合することで、第2ブロック32の第1ブロック31に隣接する側の端部に、柱部材71を結合しておく。
【0096】
第1ブロック31と、第2ブロック32の結合を行うにあたっては、まず、第1ブロック31に対し、第2ブロック32を、第1分割外板311の内面311aの側から近接させていく。そして、柱部材71(ハット形材711)の本体部711aが第1分割外板311の内面311aに接するように、かつ、柱部材71(ハット形材711)の第1フランジ711bが第1横骨312の端部312bに接するように、かつ、第1分割外板311と第2分割外板321との間に隙間G11が生じるように、第2ブロック32の位置調整を行う。この第2ブロック32の位置調整を行う際には、側構体22のキャンバーの調整も行われる。
【0097】
第2ブロック32の位置調整が完了した後、隙間G11を利用して、第1分割外板311と第2分割外板321とを溶接により結合する。これにより、第1ブロック31と第2ブロック32の結合が完了される。この溶接を行う際、柱部材71(ハット形材711)の本体部711aが、第1分割外板311および第2分割外板321を、内面311a,321aの側から支持しているため、柱部材71は、溶接部43Bを、溶接部43Bのすぐ裏側で支持している状態である。さらに、柱部材71(ハット形材711)の第1フランジ711bが第1横骨312に結合され、第2フランジ711cが第2横骨322に結合されているため、第1横骨312,第2横骨322が、第1フランジ711b,第2フランジ711cを介して、柱部材71を支持している状態である。
【0098】
以上のように、溶接部43Bを支持する柱部材71が、第1横骨312,第2横骨322により支持されているため、溶接部43Bは強固に固定され、溶接歪によって第1分割外板311および第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、溶接による第1分割外板311および第2分割外板321の変形を抑えることができ、車両構体2の美観を確保することができる。
【0099】
以上説明したように、第4の実施形態の鉄道車両1は、第1横骨312と第2横骨322との間には、隙間G11に沿って、柱部材71を配置するための配置空間S11が設けられていること、柱部材71は、配置空間S11において、隙間G11を車両構体2の内方側から覆い隠すように位置される支持部としての本体部711aと、本体部711aから延伸し、配置空間S11から第1横骨312側に張り出す、結合部としての第1フランジ711bと、本体部711aから延伸し、配置空間S11から第2横骨322側に張り出す、結合部としての第2フランジ711cと、からなるハット形材711であること、を特徴とする。
【0100】
第1横骨312および第2横骨322が、柱部材71の結合部(第1フランジ711bおよび第2フランジ711c)を介して、柱部材71をより有効に支持するためには、結合部(第1フランジ711bおよび第2フランジ711c)が、溶接部43Bよりも車両構体2の内方側に可能な限り離れた位置で、第1横骨312および第2横骨322に結合されることが望ましい。上記の鉄道車両1によれば、結合部(第1フランジ711bおよび第2フランジ711c)は、第1横骨312および第2横骨322の、内面311a,321aの側とは反対側の端部312b,322bに接合される。これは、結合部(第1フランジ711bおよび第2フランジ711c)が、第1横骨312および第2横骨322の枕木方向の厚みの分だけ、溶接部43Bから車両構体2の内方側に離れた位置で、第1横骨312および第2横骨322に結合されることを意味する。よって、第1横骨312および第2横骨322の少なくとも一方が、結合部(第1フランジ711bおよび第2フランジ711c)を介して、柱部材71をより有効に支持することが可能であり、より確実に溶接歪によって第1分割外板311および第2分割外板321が変形しようとする力に抗することができる。つまり、より確実に、第1分割外板311および第2分割外板321(ひいては側外板25)の変形を抑えることができる。
【0101】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、鉄道車両1としては、優等車両に限定されるものではなく、通勤車両等でも良い。
【符号の説明】
【0102】
1 鉄道車両
2 車両構体
22 側構体
25 側外板
41 柱部材
311 第1分割外板
311a 内面
312 第1横骨
321 第2分割外板
321a 内面
322 第2横骨
411 平板材(支持部の一例)
412c 結合部
G11 隙間