(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039746
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】判定装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/55 20190101AFI20230314BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G06F16/55
G01N21/27 A
G01N21/27 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147018
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和知 浩子
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】葉 永安
【テーマコード(参考)】
2G059
5B175
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB11
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF04
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM12
5B175DA02
5B175FA03
(57)【要約】
【課題】収穫されたタイミングで色の違いが存在する青果物の食べ頃について判定する判定装置を提供する。
【解決手段】青果物の表面が撮像された青果物画像の色に対する分析処理を実行する画像分析部101と、画像分析部101の分析処理の結果と、青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて青果物の食べ頃を判定する判定部102と、を備える、判定装置10が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物の表面が撮像された青果物画像の色に対する分析処理を実行する画像分析部と、
前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から前記青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、
を備える、判定装置。
【請求項2】
前記画像分析部は、前記青果物画像における前記青果物の、所定の色空間の色度を取得し、該色度と前記収穫日又は前記出荷日とに応じて前記青果物をグルーピングする分析処理を実行する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記所定の色空間はCIE1976(L*,a*,b*)色空間であり、前記画像分析部は、前記青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色度a*を色度として、又は色度比a*/b*を色度比として算出し、前記色度又は前記色度比に応じて前記青果物を複数のグループのいずれかにグルーピングする分析処理を実行する、請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記画像分析部は、前記青果物画像の前記色度が第1の値より大きい第1のグループ、第2の値以上前記第1の値以下の第2のグループ、前記第2の値より小さい第3のグループに、前記青果物をグループ分けする、請求項3に記載の判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、各前記グループのそれぞれに対して定められた評価関数に前記日数を当てはめて前記青果物の食べ頃を判定する、請求項3又は4に記載の判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記評価関数として、各前記グループのそれぞれに対して定められた保存期間中の前記青果物の成分の変化と前記日数との関係を示す評価関数を用いて前記青果物の食べ頃を判定する、請求項5に記載の判定装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記日数、前記色度、及び前記青果物の成分に基づいた該青果物の官能評価が格納されるデータベースへの参照結果に基づいて前記青果物の食べ頃を判定する、請求項2に記載の判定装置。
【請求項8】
前記判定部は、複数の段階の中のいずれの段階に前記青果物があるかどうかで該青果物の食べ頃を判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項9】
前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の判定装置。
【請求項10】
前記青果物画像は、前記青果物の果頂部を撮像したものである、請求項1に記載の判定装置。
【請求項11】
前記判定部は、同一種類の青果物において、前記青果物の成分の変化と、前記日数との関係を示す同一の評価関数を繰り返し使用する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項12】
前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を表示する表示部をさらに備える、請求項11に記載の判定装置。
【請求項13】
前記青果物はりんごである、請求項1に記載の判定装置。
【請求項14】
前記青果物は王林りんごである、請求項13に記載の判定装置。
【請求項15】
コンピュータを、
青果物の表面が撮像された青果物画像の色に対する分析処理を実行する画像分析部と、
前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が収穫又は出荷された日から前記青果物画像が撮像された日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、
を備える、判定装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品に付したICタグ等によって、賞味期限又は消費期限といった食品の鮮度に関わる情報を管理する技術がある。例えば、特許文献1には、食品に付したRFID(Radio Frequency Identification)タグを読み取ることでユーザの自宅の冷蔵庫に収納されている食品と、当該食品の賞味期限とを特定し、賞味期限が短い食品を使ったレシピ情報を出力する食品購入管理支援システム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る発明は、食品ごとに予め設定した賞味期限に従って鮮度を管理するものであり、収穫された青果物の食べ頃を判定するものではない。また、青果物によっては、収穫されたタイミングで人間には判別しづらい色の違いが存在するものがあり、出荷された日からの日数を用いるだけではそのような青果物の食べ頃を正しく判定できない。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、収穫されたタイミングで色の違いが存在する青果物の食べ頃について判定する判定装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のある観点による判定装置は、青果物の表面が撮像された青果物画像の色に対する分析処理を実行する画像分析部と、前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から前記青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、を備える。
【0007】
前記画像分析部は、前記青果物画像における前記青果物の、所定の色空間の色度を取得し、該色度と前記収穫日又は前記出荷日とに応じて前記青果物をグルーピングする分析処理を実行してもよい。
【0008】
前記所定の色空間はCIE1976(L*,a*,b*)色空間であり、前記画像分析部は、前記青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色度a*を算出し、前記色度に応じて前記青果物を複数のグループのいずれかにグルーピングする分析処理を実行してもよい。
【0009】
前記画像分析部は、前記青果物画像の前記色度が第1の値より大きい第1のグループ、第2の値以上前記第1の値以下の第2のグループ、前記第2の値より小さい第3のグループに、前記青果物をグループ分けしてもよい。
【0010】
前記判定部は、各前記グループのそれぞれに対して定められた評価関数に前記日数を当てはめて前記青果物の食べ頃を判定してもよい。
【0011】
前記判定部は、前記評価関数として、各前記グループのそれぞれに対して定められた保存期間中の前記青果物の成分の変化と前記日数との関係を示す評価関数を用いて前記青果物の食べ頃を判定してもよい。
【0012】
前記判定部は、前記日数、前記色度、及び前記青果物の成分に基づいた該青果物の官能評価が格納されるデータベースへの参照結果に基づいて前記青果物の食べ頃を判定してもよい。
【0013】
前記判定部は、複数の段階の中のいずれの段階に前記青果物があるかどうかで該青果物の食べ頃を判定してもよい。
【0014】
上記判定装置は、前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を出力する出力部をさらに備えてもよい。
【0015】
前記青果物画像は、前記青果物の果頂部を撮像したものであってもよい。
【0016】
前記判定部は、同一種類の青果物において、前記青果物の成分の変化と、前記日数との関係を示す同一の評価関数を繰り返し使用してもよい。また、前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0017】
前記青果物はりんごであってもよい。また、前記青果物は王林りんごであってもよい。
【0018】
上記目的を達成するために、本開示の別の観点によるコンピュータプログラムは、コンピュータを、青果物の表面が撮像された青果物画像の色に対する分析処理を実行する画像分析部と、前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が収穫又は出荷された日から前記青果物画像が撮像された日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、を備える、判定装置として機能させる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、青果物の表面が撮像された青果物画像の色に対する分析結果を用いて、収穫されたタイミングで色の違いが存在する青果物の食べ頃について判定する判定装置及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】開示の技術の実施形態に係る判定システムの概略構成を示す図である。
【
図2】判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】判定装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4】王林りんごの色度と、王林りんごが収穫された収穫日からの日数との関係を示すグラフである。
【
図5A】色度によって分けられた各グループに属する王林りんごと、スクロース換算糖量及びリンゴ酸量との関係例を示すグラフである。
【
図5B】色度によって分けられた各グループに属する王林りんごと、硬度との関係例を示すグラフである。
【
図5C】色度によって分けられた各グループに属する王林りんごと、発酵代謝物との関係例を示すグラフである。
【
図6A】スクロース換算糖量とリンゴ酸との比と、王林りんごの収穫日からの日数との関係例を示すグラフである。
【
図6B】王林りんごのpH値と、王林りんごの収穫日からの日数との関係例を示すグラフである。
【
図6C】王林りんごのエタノール量と、王林りんごの収穫日からの日数との関係例を示すグラフである。
【
図7A】王林りんごの成分の結果と、王林りんごの味覚の評価との関係例を示すグラフである。
【
図7B】王林りんごの成分の結果と、王林りんごの味覚の評価との関係例を示すグラフである。
【
図7C】王林りんごの成分の結果と、王林りんごの味覚の評価との関係例を示すグラフである。
【
図8】情報処理装置が出力する青果物の食べ頃に関する情報の例である。
【
図9】判定装置による青果物の食べ頃の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
図1は、本実施形態に係る判定システムの概略構成を示す図である。
【0023】
本実施形態に係る判定システムは、判定装置10、記憶装置20、及び情報処理装置30からなる。判定装置10、記憶装置20、及び情報処理装置30は、インターネット等のネットワークで相互に接続される。
【0024】
判定装置10は、青果物が食べ頃であるかどうかを判定する装置である。本実施形態に係る判定装置10は、青果物の食べ頃を、青果物の鮮度及び官能評価(外観、匂い、歯ごたえ、味覚の4項目)に基づいて判定する。より詳細には、判定装置10は、収穫直後の状態から完全に腐敗するまでの間を複数段階に分けて青果物の状態を評価し、所定の段階以上である場合、その青果物は食べ頃として、その青果物が今食べ頃であるかどうか、今食べ頃でなければいつ食べ頃になるかを判定する。表1は、本実施形態における官能評価の例であり、青果物の一例である王林りんごの状態を5段階に分けて、外観、匂い、歯ごたえ、味覚の4項目のそれぞれについて評価したものである。
【0025】
【0026】
表1に示した王林りんごの官能評価例では、店頭では見切り品となる状態の王林りんごを5段階中の3段階目に設定し、収穫時に相当する5段階目、店頭販売時に相当する4段階目、及び店頭では見切り品に相当する3段階目を王林りんごの食べ頃とする。判定装置10は、判定対象の王林りんごについて、成分の分析を行わずに食べ頃を判定することを特徴とする。
【0027】
具体的には、本実施形態に係る判定装置10は、青果物の表面、例えば青果物の果頂部が撮像された青果物画像の色に対する分析処理を行い、分析処理の結果と、青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて青果物の食べ頃を判定する。なお、本実施形態では、青果物として王林りんごの表面が撮像された青果物画像が分析対象となる。
【0028】
青果物の果頂部は、青果物の蔕の反対側、下部、底部であり、軸を上にして板上に置いた際に板に接する側である。王林りんごの場合、果頂部は萼又は萼窪ともいわれる。青果物画像は、青果物の収穫時に撮像されてもよく、青果物の出荷後にユーザがその青果物を店舗で購入し、自宅等で保存している間に撮像されてもよい。特に本実施形態に係る判定装置10は、青果物画像の色度を取得し、取得した色度に基づいてその青果物をグループ分けし、グループ毎に定められた評価関数に色度を当てはめることで、青果物の食べ頃を判定する。
【0029】
記憶装置20は、判定装置10が青果物の食べ頃を判定する際に用いる情報を記憶する。例えば、判定装置10が、機械学習の学習済みモデルを用いて青果物の食べ頃を判定する場合、記憶装置20は当該学習済みモデルを記憶する。
【0030】
情報処理装置30は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン等の装置である。情報処理装置30は、青果物の食べ頃の判定結果を知りたいユーザが使用する装置である。情報処理装置30は、青果物を撮像するための撮像装置を備える。情報処理装置30が青果物を撮像し、青果物が撮像された青果物画像を判定装置10に送信することで、判定装置10はその青果物の食べ頃を判定し、判定結果を情報処理装置30に送信する。
【0031】
図2は、判定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0032】
図2に示すように、判定装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0033】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12またはストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12またはストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12またはストレージ14には、青果物の食べ頃を判定する判定プログラムが格納されている。
【0034】
ROM12は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0035】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、およびキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0036】
表示部16は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0037】
通信インタフェース17は、記憶装置20、情報処理装置30等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0038】
上記の判定プログラムを実行する際に、判定装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。判定装置10が実現する機能構成について説明する。
【0039】
図3は、判定装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、判定装置10は、機能構成として、画像分析部101、判定部102および出力部103を有する。各機能構成は、CPU11がROM12またはストレージ14に記憶された青果物の食べ頃を判定する判定プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0041】
画像分析部101は、青果物が撮像された青果物画像に対する分析処理を行う。本実施形態では、画像分析部101は、分析処理として、青果物画像の色を分析する分析処理を行う。
【0042】
より詳細には、画像分析部101は、青果物画像に写っている青果物の、所定の色空間の色度を取得し、当該色度と、青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から、青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに応じて、青果物をグルーピングする分析処理を実行する。収穫日又は出荷日と、撮像日とが同一の日であれば、日数は0日である。所定の色空間がCIE1976(L*,a*,b*)色空間である場合、画像分析部101は、青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色度a*、又は色度比a*/b*を算出し、その色度又は色度比に応じて青果物を複数のグループのいずれかにグルーピングする分析処理を実行する。なお、色度a*だけを用いると装置間差が発生する可能性があるため、画像分析部101は、装置間差を打ち消すため、色度a*ではなく、色度比a*/b*を用いてもよい。
【0043】
画像分析部101は、収穫直後に撮像された青果物画像が無い場合、収穫日又は出荷日からの日数と、現時点での青果物の色度とから、どのグループに属するかを判定してもよい。
【0044】
判定部102は、画像分析部101による分析処理の結果と、青果物画像に写っている青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から、青果物画像が撮像された撮像日までの日数と、に応じて、その青果物の食べ頃を判定する。青果物の食べ頃は、青果物の官能評価(外観、匂い、歯ごたえ、味覚のそれぞれの評価)から得られるものである。本実施形態では、食べ頃は、収穫直後の状態から腐敗した食味不可の状態まで、各官能項目を1~5の範囲の5段階で数値化し、数値3の状態を見切り品として、3~5の範囲にあれば食べ頃であるとする。なお、判定部102は、各官能項目について、各数値が示す具体的な内容からユーザの好みの範囲にあるものを食べ頃であるとしてもよい。
【0045】
判定部102は、画像分析部101が分類した各グループのそれぞれに対して定められた評価関数に基づいて青果物の食べ頃を判定する。
【0046】
本実施形態における判定部102による判定処理の具体例を説明する。
図4は、王林りんごの色度と、王林りんごが収穫された収穫日又は出荷された出荷日からの日数との関係を示すグラフである。本件開示者は、収穫直後の王林りんごの色度と、王林りんごの成熟度とに所定の関係性があることを見出した。具体的には、本件開示者は、収穫直後又は出荷直後、すなわち収穫日又は出荷日から日数が0日の時点での王林りんごの目視による色識別から3グループに分けて、色度a*との関係を見たところ、王林りんごの色度a*が-5.3より大きい第1のグループ、王林りんごの色度a*が-6.8以上-5.3以下の第2のグループ、王林りんごの色度a*が-6.8より小さい第3のグループに分けられることを見出した。第1のグループは赤味があって成熟度が高いグループ、第2のグループは黄味があって成熟度が中程度のグループ、第3のグループは緑味があって成熟度が低いグループである。なお王林りんごは、冷蔵庫、冷蔵庫野菜室、室内等の平均温度2~25℃、平均相対湿度30~80%の範囲において保存されたものである。
【0047】
さらに、本件開示者は、
図4に示したグラフのように、収穫直後又は出荷直後の王林りんごの色度の差は、収穫日又は出荷日から日数が経過しても大きく変化しないことを見出した。従って、青果物画像における王林りんごの色度と、王林りんごの収穫日又は出荷日からの日数とが分かれば、りんごがどのグループに含まれるかが分かる。
【0048】
図5Aは、色度によって分けられた各グループに属する王林りんごと、スクロース換算糖量及びリンゴ酸量との関係例を示すグラフである。本実施形態では、官能で感じる甘味を表現するために、HPLC(High Performance Liquid Chromatography、高速液体クロマトグラフィー)によりスクロース、グルコース、フルクトースの含量、有機酸の含量を測定した。人が感じる甘味の強さは糖の種類によって異なるので、スクロース、グルコース、フルクトースの3種の糖の含量をそのまま合計した量と甘味の強度とにはズレが生じる。そこで、3種の糖にスクロース基準の甘味度を掛けてスクロース換算糖量を算出した。具体的には、スクロース含量に1.0、グルコース含量に0.65、フルクトース含量に1.3を掛けてスクロース換算糖量を算出した。
図5Aに示したように、赤味のある王林りんご、黄味のある王林りんご、緑味のある王林りんごの順にスクロース換算糖量が少なくなっている。そして、スクロース換算糖量が多い王林りんごの方が成熟している王林りんごとなる。また、王林りんごの果実中に含まれる有機酸の90%以上はリンゴ酸であり、その他の有機酸は、HPLCによる測定上で存在は確認できるが定量限界以下である。従って、リンゴ酸の含量と収穫後日数、色度、味覚との関係図を作成した。
【0049】
図5Bは、色度によって分けられた各グループに属する王林りんごと、硬度との関係例を示すグラフである。硬度は、硬度計により王林りんごの果実の皮上から測定して得られた値である。
図5Bに示したように、赤味のある王林りんご、黄味のある王林りんご、緑味のある王林りんごの順に王林りんごの硬度が高くなっている。そして、硬度が低い王林りんごの方が成熟している王林りんごとなる。
【0050】
図5Cは、色度によって分けられた各グループに属する王林りんごと、発酵代謝物との関係例を示すグラフである。
図5Cに示したように、赤味のある王林りんご、黄味のある王林りんご、緑味のある王林りんごの順にエタノール量が少なくなり、またアセトアルデヒド量も少なくなり、酵代謝物量が多い程、成熟している王林りんごとなる。
【0051】
このように、王林りんごの色味と、王林りんごの成熟の進み具合とには関係がある。従って、王林りんごの色味が分かれば、王林りんごがどの程度成熟しているかがわかる。判定部102は、王林りんごが写っている画像の分析により得られた王林りんごの色味の情報を用いることで、王林りんごの食べ頃を判定することができる。
【0052】
判定部102は、王林りんごのグループ毎に定められた評価関数を用いて、王林りんごの食べ頃がいつ頃になるかを判定する。評価関数は、青果物の収穫日からの日数と、青果物の官能評価の変化との関係を示した関数である。例えば、青果物の味覚は、グループ毎に、青果物の収穫日からの日数に応じて異なる変化をする。
【0053】
図6A~
図6Cは、王林りんごの収穫日からの日数と、王林りんごに含まれる成分との関係例を示すグラフである。
【0054】
図6Aは、スクロース換算糖量とリンゴ酸との比と、王林りんごの収穫日からの日数との関係例を示すグラフである。赤味があって成熟度が高い王林りんごは、スクロース換算糖量とリンゴ酸との比が、他のグループの王林りんごに比べて短い期間で急速に上昇する。一方、緑味があって成熟度が低い王林りんごは、スクロース換算糖量とリンゴ酸との比が、他のグループの王林りんごに比べて保存日数が進んでもなかなか上昇しない。すなわち、赤味があって成熟度が高い王林りんごは、成熟が早く進む一方、緑味があって成熟度が低い王林りんごは、なかなか成熟が進まない。
【0055】
図6Bは、王林りんごのpH値と、王林りんごの収穫日からの日数との関係例を示すグラフである。pH値は、果実を粉砕し、ろ過した搾汁をpH計により測定したものであり、pH値が4以上になると酸味が抜けてぼやけた味になる。また、
図6Cは、王林りんごのエタノール量と、王林りんごの収穫日からの日数との関係例を示すグラフである。pH値及びエタノール量と保存日数との関係は、
図6B及び
図6Cに示したように、赤味がある個体、黄味がある個体、緑味がある個体のいずれであっても線形に近似できる。なお、赤味があって成熟度が高い王林りんごは、同じ保存日数であっても、他のグループの王林りんごよりpH値が高く、エタノール量が多い。
【0056】
そこで、赤味がある個体、黄味がある個体、緑味がある個体のそれぞれについて、関数をフィッティングすることで、青果物の収穫日からの日数に応じた王林りんごの成熟度合いがわかる。
【0057】
図7A~
図7Cは、王林りんごの成分の結果と、王林りんごの味覚の評価との関係例を示すグラフである。王林りんごの味覚の評価は、複数の被験者に対して王林りんごを食べてもらうことで行った。ここでは、王林りんごの味覚を5段階で評価している。5は収穫直後の時点で、甘味の中にさわやかな酸味がある個体である。4は店頭販売の時点で、強い甘味とかすかな酸味がある個体である。3は見切り品扱いとなった時点で、薄い甘味がある個体である。2は家庭でなら食べられるもので、水っぽい個体である。1は食味ができない個体である。
図7A~
図7Cのグラフで塗りつぶされている部分は官能評価3未満の見切り品未満の領域を示す。
【0058】
図7Aに示したグラフは、横軸が王林りんごのリンゴ酸の含有量、縦軸が王林りんごの味覚の評価である。
図7Bに示したグラフは、横軸が王林りんごのスクロース換算糖量とリンゴ酸との比、縦軸が王林りんごの味覚の評価である。
図7Cに示したグラフは、横軸が王林りんごのpH値、縦軸が王林りんごの味覚の評価である。
【0059】
図7A~
図7Cに示したように、王林りんごの成分の結果と、王林りんごの味覚の評価とには所定の関係性が有る。例えば、王林りんごのリンゴ酸の含有量が増えれば、王林りんごの味覚の評価は悪化する。また例えば、スクロース換算糖量とリンゴ酸との比が大きくなれば、王林りんごの味覚の評価は悪化する。また例えば、王林りんごのpH値が高くなれば、王林りんごの味覚の評価は悪化する。
【0060】
そこで、判定部102は、王林りんごの成分がどの程度になれば食べ頃になるか、また、王林りんごの成分がどの程度になれば食べ頃ではなくなるかを、
図7A~
図7Cに示した評価関数に基づいて王林りんごの成分量を官能に変換し、
図6A~
図6Cに示したグラフにより定められる評価関数に基づいて王林りんごの食べ頃の時期を判定することができる。なお、
図6A~
図6Cのグラフの基となるデータはデータベースに格納されていてもよい。当該データベースは、例えば記憶装置20に記憶されていてもよい。そして、判定部102は、当該データベースを参照することで王林りんごの食べ頃を判定してもよい。
【0061】
判定部102は、エタノールとアセトアルデヒドとの比率から、王林りんごの匂いを評価することで、王林りんごの食べ頃を判定することができる。判定部102は、王林りんごの匂いを味覚と同じように5段階で評価し、3未満となるエタノールとアセトアルデヒドの範囲を、食べ頃を過ぎたものと判定してもよい。
【0062】
判定部102は、青果物の食べ頃を判定する際に、青果物画像の色度、収穫日又は出荷日から撮像日までの日数を入力とし、実際の青果物の状態を正解とした教師データを用いた機械学習を行って得られた学習済みモデルを用いてもよい。
【0063】
判定部102は、青果物の食べ頃を判定する際に、青果物の大きさの情報を用いて判定してもよい。同じ青果物でも、果実の大きさによって状態の進行度合いが変わりうるからである。
【0064】
出力部103は、判定部102による青果物の食べ頃の判定結果を、情報処理装置30等の外部の装置に出力する。出力部103は、判定部102による青果物の食べ頃の判定結果に加えて、判定部102の判定対象となった青果物の官能評価に関する情報を、情報処理装置30等の外部の装置に出力してもよい。
【0065】
図8は、情報処理装置30が出力する青果物の食べ頃に関する情報の例である。情報処理装置30は、青果物の食べ頃に関する情報として、青果物画像301、評価対象の青果物の官能評価の情報302、青果物の食べ頃の情報303を表示する。青果物画像301は、例えば、情報処理装置30によって撮像され、判定装置10に送信された画像である。評価対象の青果物の官能評価の情報302、及び青果物の食べ頃の情報303は、判定装置10が青果物画像を分析し、食べ頃を判定した結果である。この様に、測定した青果物の具体的な官能評価情報が表示されることにより、消費者は、嗜好によって異なる食べ頃に近いものか判断できる。
【0066】
本実施形態に係る判定装置10は、係る構成を有することで、青果物画像の色情報と、青果物の収穫日又は出荷日から青果物画像の撮像日までの日数とを用いて、青果物画像に写っている青果物の食べ頃を判定することができる。
【0067】
次に、判定装置10の作用について説明する。
【0068】
図9は、判定装置10による青果物の食べ頃の判定処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から判定プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、青果物の食べ頃の判定処理が行なわれる。
【0069】
まずCPU11は、ステップS101において、青果物画像を取得する。ここでは、CPU11は、情報処理装置30が撮像した青果物画像を取得する。青果物画像は、上述したように青果物の表面が撮像された画像であり、青果物が王林りんごである場合、青果物画像は王林りんごの果頂部が撮像された画像である。
【0070】
ステップS101において、青果物画像を取得すると、続いてCPU11は、ステップS102において、取得した青果物画像の分析処理を行う。具体的には、CPU11は、上述したように、青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色度a*又は色度比a*/b*を算出することで青果物画像の分析処理を行う。
【0071】
ステップS102において、青果物画像の分析処理を行うと、続いてCPU11は、ステップS103において、青果物画像の分析処理の結果に基づいて、対象の青果物のグルーピングを行う。具体的には、CPU11は、青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における色度a*又は色度比a*/b*を算出し、その色度又は色度比に応じて青果物を複数のグループのいずれかにグルーピングする分析処理を実行する。
【0072】
ステップS103において、青果物のグルーピングを行うと、続いてCPU11は、ステップS104において、青果物のグルーピング結果に応じて当該青果物の食べ頃を判定する。CPU11は、青果物が食べ頃にあるかどうかを、上述したように、例えば青果物の状態を5段階に分け、3段階目、すなわち見切り品以上の状態にあるかどうかで判断してもよい。
【0073】
ステップS104において、青果物の食べ頃を判定すると、続いてCPU11は、ステップS105において、青果物の食べ頃の判定結果を出力する。ここでは、CPU11は、青果物画像を送信した情報処理装置30に対して青果物の食べ頃の判定結果を出力する。
【0074】
本実施形態に係る判定装置10は、一連の処理を実行することで、青果物画像の色情報と、青果物の収穫日から青果物画像の撮像日までの日数とを用いて、青果物画像に写っている青果物の食べ頃を判定することができる。
【0075】
王林りんごのような青果物の色の違いは人間の目では分かりづらい。そこで、本実施形態に係る判定装置10は、青果物の色に関する情報を得て、色に基づいてグルーピングすることで、人間の目では分かりづらい違いを得ることができる。そして、本実施形態に係る判定装置10は、色に基づいてグルーピングすることで、グルーピングしない場合と比較して、青果物の食べ頃をより正確に判定することができる。
【0076】
上記実施形態では、青果物として王林りんごを例示したが、他の品種のりんご、例えばふじ、紅玉などについても、同様に色を分析し、グルーピングすることで、食べ頃を正確に判定することが可能である。
【0077】
また、判定装置10は、青果物の成分の変化と、青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から青果物画像が撮像された撮像日までの日数との関係を示す評価関数を記憶し、同一種類の青果物については、同一の評価関数を繰り返し使用してもよい。また、情報処理装置30に、判定装置10の機能を持たせて判定装置10として機能させてもよい。
【0078】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した青果物の食べ頃の判定処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、青果物の食べ頃の判定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0079】
また、上記各実施形態では、青果物の食べ頃の判定処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 判定装置
20 記憶装置
30 情報処理装置