(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039747
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】判定装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/55 20190101AFI20230314BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G06F16/55
G01N21/27 A
G01N21/27 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147019
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和知 浩子
(72)【発明者】
【氏名】中山 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】葉 永安
【テーマコード(参考)】
2G059
5B175
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB11
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF01
2G059FF04
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM12
5B175DA02
5B175FA03
(57)【要約】
【課題】収穫された日と出荷された日との間に所定の期間が存在する青果物の食べ頃について判定する判定装置を提供する。
【解決手段】青果物の表面が撮像された青果物画像の明るさに対する分析処理を実行する画像分析部101と、画像分析部101の分析処理の結果と、青果物が出荷された出荷日から青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて青果物の食べ頃を判定する判定部102と、を備える、判定装置10が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青果物の表面が撮像された青果物画像の明るさに対する分析処理を実行する画像分析部と、
前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が出荷された出荷日から前記青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、
を備える、判定装置。
【請求項2】
前記画像分析部は、前記青果物画像における前記青果物の、所定の色空間の明度を取得し、該明度に基づいた分析処理を実行する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記所定の色空間はCIE1976(L*,a*,b*)色空間であり、前記画像分析部は、前記青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における明度L*を算出する、請求項2に記載の判定装置。
【請求項4】
前記画像分析部は、前記明度に基づいて前記出荷日から前記撮像日までの日数を前記青果物が収穫された収穫日から前記撮像日までの日数を算出する、請求項2に記載の判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記日数、前記明度、及び前記青果物の成分に基づいた該青果物の官能評価が格納されるデータベースへの参照結果に基づいて前記青果物の食べ頃を判定する、請求項2に記載の判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記青果物の成分の変化と前記日数との関係を示す評価関数を用いて、複数の段階の中のいずれの段階に前記青果物があるかどうかで該青果物の食べ頃を判定する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項7】
前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の判定装置。
【請求項8】
前記青果物画像は、前記青果物の果頂部を撮像したものである、請求項1に記載の判定装置。
【請求項9】
前記判定部は、同一種類の青果物において、前記青果物の成分の変化と、前記日数との関係を示す同一の評価関数を繰り返し使用する、請求項1に記載の判定装置。
【請求項10】
前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を表示する表示部をさらに備える、請求項9に記載の判定装置。
【請求項11】
前記青果物は、収穫後に所定期間貯蔵されてから出荷される柑橘類である、請求項1に記載の判定装置。
【請求項12】
前記青果物は、みかんである、請求項11に記載の判定装置。
【請求項13】
前記青果物は、温州みかんである、請求項12に記載の判定装置。
【請求項14】
コンピュータを、
青果物の表面が撮像された青果物画像の明るさに対する分析処理を実行する画像分析部と、
前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が出荷された出荷日から前記青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、
を備える、判定装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、判定装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品に付したICタグ等によって、賞味期限又は消費期限といった食品の鮮度に関わる情報を管理する技術がある。例えば、特許文献1には、食品に付したRFID(Radio Frequency Identification)タグを読み取ることでユーザの自宅の冷蔵庫に収納されている食品と、当該食品の賞味期限とを特定し、賞味期限が短い食品を使ったレシピ情報を出力する食品購入管理支援システム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る発明は、食品ごとに予め設定した賞味期限に従って鮮度を管理するものであり、収穫された青果物の食べ頃を判定するものではない。また、青果物によっては、収穫された日と出荷された日との間に所定の期間が存在するものがあり、出荷された日からの日数を用いるだけではそのような青果物の食べ頃を正しく判定できない。
【0005】
本開示は、上記の点に鑑みてなされたものであり、収穫された日と出荷された日との間に所定の期間が存在する青果物の食べ頃について判定する判定装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のある観点による判定装置は、青果物の表面が撮像された青果物画像の明るさに対する分析処理を実行する画像分析部と、前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が出荷された出荷日から前記青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、を備える。
【0007】
前記画像分析部は、前記青果物画像における前記青果物の、所定の色空間の明度を取得し、該明度に基づいた分析処理を実行してもよい。
【0008】
前記所定の色空間はCIE1976(L*,a*,b*)色空間であり、前記画像分析部は、前記青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における明度L*を算出してもよい。
【0009】
前記画像分析部は、前記明度に基づいて前記出荷日から前記撮像日までの日数を前記青果物が収穫された収穫日から前記撮像日までの日数を算出してもよい。
【0010】
前記判定部は、前記日数、前記明度、及び前記青果物の成分に基づいた該青果物の官能評価が格納されるデータベースへの参照結果に基づいて前記青果物の食べ頃を判定してもよい。
【0011】
前記判定部は、前記青果物の成分の変化と前記日数との関係を示す評価関数を用いて、複数の段階の中のいずれの段階に前記青果物があるかどうかで該青果物の食べ頃を判定してもよい。
【0012】
前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を出力する出力部をさらに備えてもよい。
【0013】
前記青果物画像は、前記青果物の果頂部を撮像したものであってもよい。
【0014】
前記判定部は、同一種類の青果物において、前記青果物の成分の変化と、前記日数との関係を示す同一の評価関数を繰り返し使用してもよい。また、前記判定部が判定した前記青果物の食べ頃に関する情報を表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0015】
前記青果物は、収穫後に所定期間貯蔵されてから出荷される柑橘類であってもよい。
【0016】
前記青果物は、みかんであってもよい。また、前記青果物は、温州みかんであってもよい。
【0017】
上記目的を達成するために、本開示の別の観点によるコンピュータプログラムは、コンピュータを、青果物の表面が撮像された青果物画像の明るさに対する分析処理を実行する画像分析部と、前記画像分析部の分析処理の結果と、前記青果物が出荷された出荷日から前記青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて前記青果物の食べ頃を判定する判定部と、を備える、判定装置として機能させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、青果物が撮像された青果物画像の明るさの情報を用いることで、収穫された日と出荷された日との間に所定の期間が存在する青果物の食べ頃について判定する判定装置及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】開示の技術の実施形態に係る判定システムの概略構成を示す図である。
【
図2】判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】判定装置の機能構成の例を示すブロック図である。
【
図4A】温州みかんの保存日数と温州みかんの外観の評価との関係例を示したグラフである。
【
図4B】温州みかんの保存日数と温州みかんの味覚の評価との関係例を示したグラフである。
【
図4C】温州みかんの保存日数と温州みかんの匂いの評価との関係例を示したグラフである。
【
図4D】温州みかんの保存日数と温州みかんの歯ごたえの評価との関係例を示したグラフである。
【
図5A】温州みかんの保存日数と、青果物画像から分析された温州みかんの明度Lとの関係例を示すグラフである。
【
図5B】出荷日からの日数を補正した後の、温州みかんの保存日数と、青果物画像から分析された温州みかんの明度Lとの関係例を示すグラフである。
【
図6A】温州みかんの保存日数を補正する前の、温州みかんの保存日数と、温州みかんの味覚評価との関係例を示す図である。
【
図6B】温州みかんの保存日数を補正した後の、温州みかんの保存日数と、温州みかんの味覚評価との関係例を示す図である。
【
図7A】温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんの味覚の評価との関係例を示すグラフである。
【
図7B】温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんのスクロース換算糖量を有機酸量で割った値との関係例を示すグラフである。
【
図8A】温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんの歯応えの評価との関係例を示すグラフである。
【
図8B】温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんの果実比重との関係例を示すグラフである。
【
図9】温州みかんの果実比重と温州みかんの歯応えの評価との関係例を示すグラフである。
【
図10】情報処理装置が出力する青果物の食べ頃に関する情報の例を示す図である。
【
図11】判定装置による青果物の食べ頃の判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
図1は、本実施形態に係る判定システムの概略構成を示す図である。
【0022】
本実施形態に係る判定システムは、判定装置10、記憶装置20、及び情報処理装置30からなる。判定装置10、記憶装置20、及び情報処理装置30は、インターネット等のネットワークで相互に接続される。
【0023】
判定装置10は、青果物が食べ頃であるかどうかを判定する装置である。本実施形態に係る判定装置10は、青果物の食べ頃を、青果物の鮮度及び官能評価(外観、匂い、歯ごたえ、味覚の4項目)に基づいて判定する。より詳細には、判定装置10は、収穫直後の状態から完全に腐敗するまでの間を複数段階に分けて青果物の状態を評価し、所定の段階以上である場合、その青果物は食べ頃として、その青果物が今食べ頃であるかどうか、今食べ頃でなければいつ食べ頃になるかを判定する。表1は、本実施形態における官能評価の例であり、青果物の一例であるみかん、特に温州みかんの状態を5段階に分けて、外観、匂い、歯ごたえ、味覚の4項目のそれぞれについて評価したものである。
【0024】
【0025】
表1に示した温州みかんの官能評価例では、店頭では見切り品となる状態の温州みかんを5段階中の3段階目に設定し、収穫時に相当する5段階目、店頭販売時に相当する4段階目、及び店頭では見切り品に相当する3段階目を温州みかんの食べ頃とする。判定装置10は、判定対象の温州みかんについて、成分の分析を行わずに食べ頃を判定することを特徴とする。
【0026】
具体的には、本実施形態に係る判定装置10は、青果物の表面、例えば青果物の果頂部が撮像された青果物画像の色に対する分析処理を行い、分析処理の結果と、青果物が出荷された出荷日から青果物画像が撮像された撮像日までの日数とに基づいて青果物の食べ頃を判定する。なお、本実施形態では、青果物として温州みかんの表面が撮像された青果物画像が分析対象となる。
【0027】
ここで、出荷された青果物が消費者によって購入された後の、消費者の家庭における保存日数と、青果物の食べ頃とには相関関係がある。従って、青果物の出荷日が分かれば、青果物の出荷日からの日数に基づいて青果物の食べ頃を判定することが可能である。しかし、温州みかん等の柑橘類には酸抜き貯蔵期間と呼ばれる期間がある。近年、消費者は酸味が少なく甘味の強い柑橘類を好む傾向にあり、収穫直後は酸っぱ過ぎて食べられない、好みに合わないと感じられることがある。そのため、柑橘類は収穫されると貯蔵場所に輸送されて、所定の期間、冷暗所に貯蔵される。柑橘類は、冷暗所に貯蔵されることで、自然に酸味が抜けて、甘さと酸っぱさがちょうど良くなり、このような状態になるのを待って出荷される。この冷暗所での貯蔵期間が酸抜き貯蔵期間である。そのため、温州みかんのような酸抜き貯蔵期間がある青果物は、出荷日からの日数だけでは食べ頃を正確に予測できない。なお、冷暗所とは、例えば冷蔵庫又は秋冬期の屋外施設等であり、保存期間の平均温度が5~20℃、平均相対湿度が30~80%の範囲にある場所である。
【0028】
そこで、本実施形態に係る判定装置10は、温州みかんの明度を取得し、取得した明度によって、出荷日からの日数を補正し、補正後の日数に基づいて温州みかんの食べ頃を予測する。本実施形態に係る判定装置10は、明度によって出荷日からの日数を補正することで、補正しない場合と比較して、温州みかんのような収穫から出荷までのタイムラグがある青果物の食べ頃を正確に予測することができる。
【0029】
記憶装置20は、判定装置10が青果物の食べ頃を判定する際に用いる情報を記憶する。例えば、判定装置10が、機械学習の学習済みモデルを用いて青果物の食べ頃を判定する場合、記憶装置20は当該学習済みモデルを記憶する。
【0030】
情報処理装置30は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン等の装置である。情報処理装置30は、青果物の食べ頃の判定結果を知りたいユーザが使用する装置である。情報処理装置30は、青果物を撮像するための撮像装置を備える。情報処理装置30が青果物を撮像し、青果物が撮像された青果物画像を判定装置10に送信することで、判定装置10はその青果物の食べ頃を判定し、判定結果を情報処理装置30に送信する。
【0031】
図2は、判定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0032】
図2に示すように、判定装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0033】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12またはストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12またはストレージ14に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12またはストレージ14には、青果物の食べ頃を判定する判定プログラムが格納されている。
【0034】
ROM12は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)またはフラッシュメモリ等の記憶装置により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。
【0035】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、およびキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0036】
表示部16は、たとえば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0037】
通信インタフェース17は、記憶装置20、情報処理装置30等の他の機器と通信するためのインタフェースであり、たとえば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0038】
上記の判定プログラムを実行する際に、判定装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。判定装置10が実現する機能構成について説明する。
【0039】
図3は、判定装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0040】
図3に示すように、判定装置10は、機能構成として、画像分析部101、判定部102および出力部103を有する。各機能構成は、CPU11がROM12またはストレージ14に記憶された青果物の食べ頃を判定する判定プログラムを読み出し、実行することにより実現される。
【0041】
画像分析部101は、青果物が撮像された青果物画像に対する分析処理を行う。本実施形態では、画像分析部101は、分析処理として、青果物画像の明るさを分析する分析処理を行う。
【0042】
より詳細には、画像分析部101は、青果物画像に写っている青果物の、所定の色空間の明度を取得する分析処理を実行する。所定の色空間がCIE1976(L*,a*,b*)色空間である場合、画像分析部101は、青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における明度L*を取得する。
【0043】
判定部102は、画像分析部101による分析処理の結果と、青果物画像に写っている青果物が出荷された出荷日から、青果物画像が撮像された撮像日までの日数と、に応じて、その青果物の食べ頃を判定する。青果物の食べ頃は、青果物の官能評価(外観、匂い、歯ごたえ、味覚のそれぞれの評価)から得られるものである。本実施形態では、食べ頃は、収穫直後の状態から腐敗した食味不可の状態まで、各官能項目を1~5の範囲の5段階で数値化し、数値3の状態を見切り品として、3~5の範囲にあれば食べ頃であるとする。なお、判定部102は、各官能項目について、各数値が示す具体的な内容からユーザの好みの範囲にあるものを食べ頃であるとしてもよい。なお青果物は、出荷日から撮像日まで、冷蔵庫、冷蔵庫野菜室等の、室内の平均温度が2~25℃、平均相対湿度が30~80%の範囲の環境で保存されたものである。
【0044】
判定部102は、出荷日から撮像日までの日数を、画像分析部101の分析結果に基づいて補正する。具体的には、判定部102は、予め用意された、出荷日から撮像日までの日数と、明度との関係式に基づいて出荷日から撮像日までの日数を補正する。
【0045】
ここで、判定部102が明度との関係式に基づいて出荷日から撮像日までの日数を補正する理由を説明する。
【0046】
図4A~
図4Dは、温州みかんの保存日数と、食べ頃の評価に用いられる官能4項目との関係例を示す図である。ここでは、温州みかんの保存日数は、温州みかんが出荷されてからの日数であるとする。なお、
図4A~
図4Dに示したグラフは、同じ時期に出荷された温州みかんについて、複数の個体に対して保存日数を変えて評価者に食べてもらって官能4項目のそれぞれについて評価した結果をプロットしたものである。また、評価に用いた温州みかんは、ハウス栽培のSサイズの温州みかん、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかん、露地栽培のSサイズの温州みかんである。
【0047】
図4Aは、温州みかんの保存日数と温州みかんの外観の評価との関係例を示したグラフである。保存日数が0日の時点で、ハウス栽培のSサイズの温州みかん、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかん、露地栽培のSサイズの温州みかんの外観評価に差がある。そして、その差は保存日数が経過しても大きく変化することは無い。
【0048】
図4Bは、温州みかんの保存日数と温州みかんの味覚の評価との関係例を示したグラフである。保存日数が0日の時点で、ハウス栽培のSサイズ温州のみかん、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかん、露地栽培のSサイズの温州みかんの味覚評価に差がある。そして、その差は保存日数が経過しても大きく変化することは無い。
【0049】
図4Cは、温州みかんの保存日数と温州みかんの匂いの評価との関係例を示したグラフである。保存日数が0日の時点で、ハウス栽培のSサイズの温州みかん、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかん、露地栽培のSサイズの温州みかんの匂い評価に差がある。そして、その差は保存日数が経過しても大きく変化することは無い。
【0050】
図4Dは、温州みかんの保存日数と温州みかんの歯ごたえの評価との関係例を示したグラフである。保存日数が0日の時点で、ハウス栽培のSサイズの温州みかん、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかん、露地栽培のSサイズの温州みかんの匂い評価に差がある。そして、その差は保存日数が経過しても大きく変化することは無い。
【0051】
これらの官能評価の違いは、酸抜き貯蔵期間が終わって店舗に入荷された時点で既に鮮度に差があったためと考えられる。そのため、単に出荷日からの日数だけでは、温州みかんの食べ頃を正確に評価することはできない。
【0052】
図5Aは、温州みかんの保存日数と、青果物画像から分析された温州みかんの明度Lとの関係例を示すグラフである。
図5Aに示したように、ハウス栽培のSサイズの温州みかんと、露地栽培のSサイズの温州みかんとは、同じ明度でも保存日数に差がある。同様に、
図5Aに示したように、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかんと、露地栽培のSサイズの温州みかんとは、同じ明度でも保存日数に差がある。
【0053】
そこで判定部102は、温州みかんの食べ頃を正確に評価するために、温州みかんの表面が撮像された青果物画像の明るさに基づいて、出荷日からの日数を補正する。
【0054】
具体的には、判定部102は、露地栽培のSサイズの温州みかんの保存日数と明度Lとの関係に合わせるように、出荷日からの日数を補正する。
図5Bは、出荷日からの日数を補正した後の、温州みかんの保存日数と、青果物画像から分析された温州みかんの明度Lとの関係例を示すグラフである。
図5Bのように出荷日からの日数を収穫後保存日数に補正することで、判定部102は、青果物画像の分析により、温州みかんの食べ頃を正確に評価することができる。
【0055】
判定部102は、青果物の出荷日からの日数を補正する際に、モデルとなる出荷日からの日数と明度との関係式に合わせるように、出荷日からの日数を収穫後保存日数に補正する。そして判定部102は、青果物の明度L*が所定の値以下となる日を、出荷日からの日数と明度L*との関係式から決定し、青果物の明度L*が所定の値以下となる日までであればその青果物は食べ頃であり、その日を過ぎれば青果物は食べ頃を過ぎたと判定する。
【0056】
なお、酸抜き貯蔵期間のように収穫日と出荷日との間に大きなタイムラグがあるような青果物については、判定装置10は、出荷日の情報に加えて、収穫日の情報を用いることで、出荷日の情報だけを用いる場合に比べて、青果物の食べ頃の判定精度をより高めることができる。
【0057】
図6Aは、温州みかんの保存日数を補正する前の、温州みかんの保存日数と、温州みかんの味覚評価との関係例を示す図である。
図6Aのように、温州みかんの保存日数を補正する前では、ハウス栽培のSサイズの温州みかん、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかん、露地栽培のSサイズの温州みかんで、味覚評価の結果が揃っていない。そのため、温州みかんの保存日数を補正しない場合は、温州みかんの味覚が正しく評価できない。
【0058】
図6Bは、温州みかんの保存日数を補正した後の、温州みかんの保存日数と、温州みかんの味覚評価との関係例を示す図である。
図6Bのように、温州みかんの保存日数を補正した後では、ハウス栽培のSサイズの温州みかん、ハウス栽培の2Sサイズの温州みかん、露地栽培のSサイズの温州みかんで、味覚評価の結果が揃うようになる。同様の方法にて、外観、匂い、歯ごたえの保存日数を収穫後保存日数に修正することで、各評価結果が揃うようになる。
【0059】
判定部102は、青果物の食べ頃を判定する際に、青果物画像の色度、収穫日又は出荷日から撮像日までの日数を入力とし、実際の青果物の状態を正解とした教師データを用いた機械学習を行って得られた学習済みモデルを用いてもよい。
【0060】
判定部102は、青果物の食べ頃を判定する際に、青果物の大きさの情報を用いて判定してもよい。同じ青果物でも、果実の大きさによって状態の進行度合いが変わりうるからである。
【0061】
ここで、青果物画像の明度と、青果物の評価との関係について説明する。なお、青果物の評価に用いた温州みかんはハウス栽培のSサイズの温州みかんである。
【0062】
図7Aは、温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんの味覚の評価との関係例を示すグラフである。
【0063】
図7Aに示したように、温州みかんの味覚の評価が3.5以上であれば、食べた時に温州みかんの酸味を感じる。温州みかんの味覚の評価が3.5以上となる温州みかんの尻側の明度Lが分かれば、食べた時に温州みかんの酸味を感じるかどうかの評価が可能となる。
【0064】
図7Bは、温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんのスクロース換算糖量を有機酸量で割った値との関係例を示すグラフである。本実施形態では、HPLC(High Performance Liquid Chromatography、高速液体クロマトグラフィー)により糖3種(スクロース、グルコース、フルクトース)の含量、有機酸3種(クエン酸、リンゴ酸、コハク酸)の含量を測定した。官能で感じる甘味を表現するために、スクロース含量に1.0、グルコース含量に0.65、フルクトース含量に1.3を掛けてスクロース換算糖量を算出した。有機酸含量は、3種の酸の含量の合計値とした。
【0065】
図7Bに示したように、温州みかんのスクロース換算糖量を有機酸量で割った値が10以下であれば、食べた時に温州みかんの酸味を感じる。温州みかんのスクロース換算糖量を有機酸量で割った値が10以下となる温州みかんの尻側の明度Lが分かれば、食べた時に温州みかんの酸味を感じるかどうかの評価が可能となる。
【0066】
図8Aは、温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんの歯応えの評価との関係例を示すグラフである。
【0067】
図8Aに示したように、温州みかんの歯応えの評価が3.5以上であれば、食べた時に温州みかんの歯ごたえを感じる。温州みかんの歯応えの評価が3.5以上となる温州みかんの尻側の明度Lが分かれば、食べた時に温州みかんの歯ごたえを感じるかどうかの評価が可能となる。
【0068】
図8Bは、温州みかんの尻側(果頂部)の明度Lと、温州みかんの果実比重との関係例を示すグラフである。温州みかんの果実比重とは、アルキメデス法により測定した果実密度である、
図9は、温州みかんの果実比重と温州みかんの歯応えの評価との関係例を示すグラフである。概ね0.90以上であれば歯ごたえの評価が3.5以上となり、その温州みかんは見切り品以前の食べ頃であると考えられる。尚、この食べ頃判断の範囲は、個人の嗜好又は消費目的に応じて、変更してもよい。
【0069】
図8Bに示したように、温州みかんの果実比重が0.90以上であれば、食べた時に温州みかんの歯ごたえを感じる。温州みかんの果実比重が0.90以上となる温州みかんの尻側の明度Lが分かれば、食べた時に温州みかんの歯ごたえを感じるかどうかの評価が可能となる。
【0070】
そして、
図7A~
図8Bに示したように、食べた時に温州みかんの歯ごたえを感じるかどうかの温州みかんの尻側の明度Lの境界は、概ね55程度にあることが分かる。従って、判定部102は、温州みかんの尻側の明度Lが55以上であれば、その温州みかんは食べ頃であり、55を下回れば、その温州みかんは食べ頃で無くなると判断できる。
【0071】
なお、
図7A~
図8Bのグラフの基となるデータはデータベースに格納されていてもよい。当該データベースは、例えば記憶装置20に記憶されていてもよい。判定部102は、当該データベースを参照することで青果物の食べ頃を判定してもよい。
【0072】
出力部103は、判定部102による青果物の食べ頃の判定結果を、情報処理装置30等の外部の装置に出力する。出力部103は、判定部102による青果物の食べ頃の判定結果に加えて、判定部102の判定対象となった青果物の官能評価に関する情報を、情報処理装置30等の外部の装置に出力してもよい
【0073】
図10は、情報処理装置30が出力する青果物の食べ頃に関する情報の例を示す図である。情報処理装置30は、青果物の食べ頃に関する情報として、青果物画像301、評価対象の青果物の官能評価の情報302、青果物の食べ頃の情報303を表示する。青果物画像301は、例えば、情報処理装置30によって撮像され、判定装置10に送信された画像である。評価対象の青果物の官能評価の情報302、及び青果物の食べ頃の情報303は、判定装置10が青果物画像を分析し、食べ頃を判定した結果である。この様に、測定した青果物の具体的な官能評価情報が表示されることにより、消費者は、嗜好によって異なる食べ頃に近いものか判断できる。
【0074】
本実施形態に係る判定装置10は、係る構成を有することで、青果物画像の色情報と、青果物の収穫日又は出荷日から青果物画像の撮像日までの日数とを用いて、青果物画像に写っている青果物の食べ頃を判定することができる。
【0075】
次に、判定装置10の作用について説明する。
【0076】
図11は、判定装置10による青果物の食べ頃の判定処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から判定プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、青果物の食べ頃の判定処理が行なわれる。
【0077】
まずCPU11は、ステップS101において、青果物画像を取得する。ここでは、CPU11は、情報処理装置30が撮像した青果物画像を取得する。青果物画像は、上述したように青果部の表面が撮像された画像であり、青果部が温州みかんである場合、青果物画像は温州みかんの果頂部が撮像された画像である。
【0078】
ステップS101において、青果物画像を取得すると、続いてCPU11は、ステップS102において、取得した青果物画像の分析処理を行う。具体的には、CPU11は、上述したように、青果物画像のCIE1976(L*,a*,b*)色空間における明度L*を算出することで青果物画像の分析処理を行う。
【0079】
ステップS102において、青果物画像の分析処理を行うと、続いてCPU11は、ステップS103において、ステップS102で算出した明度L*の情報を用いて、青果物の出荷日からの日数を補正する。CPU11は、青果物の出荷日からの日数を補正する際に、モデルとなっている青果物の、出荷日からの日数と明度L*との関係式を用いる。
【0080】
ステップS103において、青果物の出荷日からの日数を補正すると、続いてCPU11は、ステップS104において、当該青果物の食べ頃を判定する。CPU11は、青果物が食べ頃にあるかどうかを、上述したように、例えば青果物の状態を5段階に分け、3段階目、すなわち見切り品以上の状態にあるかどうかで判断してもよい。
【0081】
そして、CPU11は、青果物の明度L*が所定の値以下となる日を、出荷日からの日数と明度L*との関係式から決定し、青果物の明度L*が所定の値以下となる日までであればその青果物は食べ頃であり、その日を過ぎれば青果物は食べ頃を過ぎたと判定する。
【0082】
ステップS104において、青果物の食べ頃を判定すると、続いてCPU11は、ステップS105において、青果物の食べ頃の判定結果を出力する。ここでは、CPU11は、青果物画像を送信した情報処理装置30に対して青果物の食べ頃の判定結果を出力する。
【0083】
温州みかんのような青果物の明るさの違いは人間の目では分かりづらい。また、温州みかんのように酸抜き貯蔵期間がある青果物は、出荷日からの日数だけでは食べ頃を正確に評価することが難しい。そこで、本実施形態に係る判定装置10は、青果物の明るさに関する情報を得て、明るさに関する情報に基づいて出荷されてからの日数を補正する。本実施形態に係る判定装置10は、出荷されてからの日数を補正することで、日数を補正しない場合と比較して、温州みかんのように酸抜き貯蔵期間がある青果物の食べ頃を正確に評価することができる。
【0084】
上記実施形態では、青果物として温州みかんを例示したが、他の品種の柑橘類についても、同様に明るさを分析し、出荷されてからの日数を補正することで、食べ頃を正確に判定することが可能である。
【0085】
また、判定装置10は、青果物の成分の変化と、青果物が収穫された収穫日又は出荷された出荷日から青果物画像が撮像された撮像日までの日数との関係を示す評価関数を記憶し、同一種類の青果物については、同一の評価関数を繰り返し使用してもよい。また、情報処理装置30に、判定装置10の機能を持たせて判定装置10として機能させてもよい。
【0086】
なお、上記各実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した青果物の食べ頃の判定処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、青果物の食べ頃の判定処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0087】
また、上記各実施形態では、青果物の食べ頃の判定処理のプログラムがROMまたはストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 判定装置
20 記憶装置
30 情報処理装置