(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039774
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】複合体とその製造方法及び表示装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20230314BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20230314BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/16
B29C65/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147055
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】393032125
【氏名又は名称】MCCアドバンスドモールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】武田 整
【テーマコード(参考)】
4F206
4F211
【Fターム(参考)】
4F206AA13
4F206AA25
4F206AA28
4F206AA45
4F206AD04
4F206AD05
4F206AD35
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB22
4F206JF05
4F206JN12
4F206JQ81
4F211AA25
4F211AA28
4F211AA45
4F211AD04
4F211AG03
4F211AH42
4F211TA08
4F211TC08
4F211TN82
(57)【要約】
【課題】肉薄なガラス製の表示パネルの背面側に、筐体に固定するための結合部位などの適度な硬度を備えた樹脂成形体を一体に設けるにあたり、表示パネルの表面にうねりを表出させることなく、樹脂成形体を安定的に固着させる。
【解決手段】ガラス基材2の背面側に設ける樹脂成形体3を、そのガラス基材2との接合部に熱可塑性エラストマー層からなるベース部32を配し、これに重ねて成形時の収縮力が大きな樹脂材料からなる本体部31を配して一体に成形する。ベース部32を前記接合部に配することで、成形時の樹脂の圧縮力を小さく押さえ、ガラス基材2の正面側にヒケやうねりの発生することを抑制する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材の一面に樹脂成形体を配したガラスと樹脂部材の複合体であって、
前記樹脂成形体が、熱可塑性エラストマー層を介して前記ガラス基材に接合されていることを特徴とする複合体。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマー層がポリエステル系熱可塑性エラストマーである請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記樹脂成形体が、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂又はポリブチレンテレフタレート系樹脂の少なくとも一つを主成分とする請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記ガラス基材はその表面に部分的に印刷層と接着剤層が積層されてなり、この接着剤層の表面に前記樹脂成形体が配されてなる請求項1から3の何れかに記載の複合体。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の複合体を表示パネルとして用いた表示装置。
【請求項6】
ガラス基材の表面に樹脂成形体を配したガラスと樹脂部材の複合体を製造する方法において、
一次側成形金型で第1の樹脂成形体を射出成形する工程と、
前記第1の樹脂成形体を二次側成形領域に移送するとともに、当該領域内にガラス基材を挿入する工程と、
二次側成形金型を閉じて前記ガラス基材と前記第1の樹脂成形体との間に第2の樹脂成形体を射出成形する工程と、
前記二次側成形金型を開いて前記ガラス基材と樹脂部材の複合体を取り出す工程と、
を有することを特徴とする複合体の製造方法。
【請求項7】
一次側成形樹脂はABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂又はポリブチレンテレフタレート系樹脂の少なくとも一つを主成分とする樹脂材料、二次側成形樹脂はポリエステル系熱可塑性エラストマーである請求項6に記載の複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーナビゲーションなどの情報や映像を表示する機器の表示パネルに利用される、ガラスと樹脂部材の複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の情報や映像を表示する装置の表示パネルとしては、合成樹脂製のものとガラス製のものがあるが、高級志向の装置では艶のあるパネルの質感が高級感を醸し出すことからガラス製のものが多く用いられている。
表示パネルは電子機器を収納した筐体の前側枠部に取り付けられ、ガラス製のものではその背面側を、粘着テープなどを使用して前記前側枠部に貼り付けて取り付けたものが多い。
【0003】
粘着テープなどで表示パネルを筐体に貼り付けて固定する方法は、固定に必要な粘着テープの準備や、固定位置を正確に位置決めするための調整などの作業が煩雑であった。また、表示パネルが傷ついたり破損したりするなどして表示パネルの交換が必要な場合に、粘着テープ等で表示パネルを固定されていたのでは交換が困難であった。
【0004】
そこで、前記貼り付けによる固定方法に代えて、ガラス製の表示パネルの背面側にアウトサート成形により樹脂部材からなるリブなどの結合部位を一体に取り付け、前記筐体の前側枠部に設けた被結合部位に前記結合部位を結合して表示パネルを筐体に取り付ける態様が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アウトサート成形によりガラス製の表示パネルの背面側に結合部位を設ける場合、結合部位が太く肉厚であると、ガラスと樹脂の熱収縮差により、表示パネル背面への結合部位の固着が不十分となって結合部位が剥れやすいという問題があった。
【0007】
また、例えばカーナビゲーションの表示パネルでは意匠性の観点から、湾曲した薄いガラス基材により形成された表示パネルを筐体に固定することが望まれているが、湾曲させることが可能な薄いガラス基材の背面側にアウトサート成形により結合部位を設ける態様では、結合部位に用いた樹脂の熱収縮により、ガラス基材の正面側にヒケやうねりが発生しやすく、表示パネルの外観の品質を低下させることがあった。
【0008】
この場合、後述のように、材料である樹脂として成形時の樹脂の収縮力が小さい性状のもの、例えばエラストマーなどの弾性を有する柔らかい高分子材料を用いることで、前記ヒケやうねりの発生を抑制可能であると推測されるが、エラストマーで成形された結合部位は柔らかいため、留めネジを使用して結合部位を被結合部位に締結することで表示パネルを筐体に取り付ける固定の仕方は採用が難しいとう問題がある。
【0009】
本発明は従来の技術が有するこのような問題点に鑑み、肉薄なガラス製の表示パネルの背面側に、筐体に固定するための結合部位となる樹脂成形体を一体に設けるにあたり、表示パネルの正面側にヒケやうねりを表出させることなく、留めネジを使用して固定可能な程度の硬度を備えた樹脂成形体を、表示パネルの背面側に安定的に固着して成形することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため本発明者が、表示パネルを構成するガラス基材の背面側に樹脂成形体を設けた際に、ガラス基材の正面側にヒケやうねりが表出する条件を調べたところ、樹脂成形体の厚みに対してガラス基材が十分に厚い場合はうねりができないが、肉薄のガラス基材に樹脂成形体を設けた場合には、樹脂成形体の厚みが小さくても、ガラス基材の表面側にヒケやうねりが表出しやすいことが判った。
【0011】
このヒケやうねりは、ガラス基材が肉薄であると、ガラス基材に接する樹脂が成形体の形状に固まる際にガラス基材表面に加わる樹脂の収縮力が、当該ガラス基材を平面状に保持する力(ガラスの静止力)よりも勝り、この収縮力が作用してガラス基材の樹脂成形体が設けられた部分を局所的に凸状に変形せしめ、この凸状の変形がガラス基材の表面に表出したヒケやうねりの原因であると推測され、かかる推測に基づけば、樹脂成形体の使用材料を選定し、エラストマーなどの成形時の収縮力が小さい樹脂を用いれば、ヒケやうねりの発生を抑制できると想定される。
よって、樹脂成形体を全体として留めネジで締結可能な程度の硬さに成形する場合に、当該樹脂成形体のガラス基材に接する部分に前記成形時の収縮力が小さい樹脂が配されていれば、ガラス基材に前記ヒケやうねりが表出することを抑制することできると考えられる。
【0012】
本発明は前記のような知見と想定に基づくものである。すなわち、本発明の複合体は、ガラス基材の一面に樹脂成形体を配したガラスと樹脂部材の複合体であって、
前記樹脂成形体が、熱可塑性エラストマー層を介して前記ガラス基材に接合されていることを特徴とする。
【0013】
エラストマーはゴムのような弾性を有する柔らかい高分子であり、これを含む樹脂材料は高温で流動性があるため加工が容易で、充填材を含ませなくても強度を有するという特性を備える。前述の結合部位である樹脂成形体のガラス基材との接合部分に熱可塑性エラストマー層を設けることで、樹脂成形体をガラス表面に安定的に固着させることができ、併せて成形時の樹脂の収縮力が小さく、前記ガラスの静止力を下回ることでガラス表面にヒケやうねりが生じることを抑制することが可能となる。
【0014】
前記熱可塑性エラストマー層は、熱可塑性エラストマーを含む樹脂が材料として用いられ、熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマーなどを挙げることができる。接着層との接着の観点から、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエスル系エラストマーが好ましく、なかでもポリエステル系エラストマーが好ましい。
熱可塑性エラストマー層は、熱可塑性エラストマー単体が好ましいが、公知の熱可塑性樹脂が1種以上含有されていてもよい。熱可塑性樹脂としては、ABS系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、POM樹脂、PMMA樹脂、PBT樹脂、PC-ABS樹脂等を挙げることができる。
【0015】
樹脂成形体は、ガラス基材に接合する部分に前記熱可塑性エラストマー層を配し、その他の部分を剛性(引張強さ、曲げ強さ)が大きな樹脂を用いて成形することで、留めネジで締結可能な程度の硬度を確保することができる。
前記剛性(引張強さ、曲げ強さ)が大きな樹脂としては、ABS系樹脂やポリカーボネート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂の少なくとも一つを主成分とする樹脂材料を用いることが好ましい。
【0016】
本発明の複合体は、ガラス基材上に印刷層と接着剤層を積層し、この接着剤層の表面に部分的に樹脂成形体を配したと構成することができる。
例えば本発明の複合体がカーナビゲーションの表示パネルの場合、ガラス基材は、平面視矩形状のガラス板の背面側に、当該ガラス板の四側周辺部に沿って帯状に黒色の印刷層を形成し、この印刷層の表面に接着剤層を積層し、この接着層の表面に樹脂成形体を形成して構成することができる。
【0017】
印刷層を形成するインクは、ガラス板に直接印刷できるものであればよい。ガラス板印刷用に市販されているもの使用することができる。
ガラスとの密着性の観点から、シランカップリング剤が添加されているインクが好ましい。
前記インクは、カーボンブラック等の黒色の着色剤を含ませて使用され、印刷層はガラス板の表面に黒色の着色部を形成する。
【0018】
接着剤層は、印刷層と射出成形する樹脂成形体と接合できるものであればよい。射出成形に用いられる市販されているバインダーインキ、密着補強剤を使用することできる。
【0019】
前記ガラス板の一側の面に印刷層と接着剤層が積層されてなるガラス基材は、その厚みが0.2mm以上、2.0mm以下であることが好ましく、ガラスを湾曲させ曲面形状に保持して固定する用途では0.5mm以下であることがより好ましい。
0.5mm以下であれば、ガラス基材を曲面形状に湾曲させる加工が可能であり、且つ曲面形状に保持して筐体に設置することが可能となるので好ましい。0.2mm以上であれば、ガラス基材を湾曲させた場合であっても、割れにくいので好ましい。
【0020】
前記ガラス基材としては、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス等が挙げられる。また、これらのガラス等の低アルカリガラス及び無アルカリガラスなどが挙げられる。さらには、シリカガラスやソーダ石灰ガラス等が挙げられる。これらのうち、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス及びこれらの低アルカリガラスが好ましく、さらにはこれらの無アルカリガラスが好ましい。
ガラス基材は、無色或いは着色されていても構わないが、ディスプレイの視認性をあげるため、無色透明であることが好ましい。
【0021】
本発明の複合体は、各種の情報や映像を表示する装置の表示パネルに利用することが可能である。表示装置としては、カーナビゲーションなどの車載用機器、その他の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどパネルディスプレイを備えた電子機器が挙げられる。
【0022】
また、本発明は、ガラス基材の表面に樹脂成形体を配したガラスと樹脂部材の複合体を製造する方法において、
一次側成形金型で第1の樹脂成形体を射出成形する工程と、
前記第1の樹脂成形体を二次側成形領域に移送するとともに、当該領域内にガラス基材を挿入する工程と、
二次側成形金型を閉じて前記ガラス基材と前記第1の樹脂成形体との間に第2の樹脂成形体を射出成形する工程と、
前記二次側成形金型を開いて前記ガラス基材と樹脂部材の複合体を取り出す工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
前記一次側成形樹脂として、ABS系樹脂、ポリカーボネート系樹脂又はポリブチレンテレフタレート系樹脂の少なくとも一つを主成分とする樹脂材料を用い、前記二次側成形樹脂として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いることで、前記構成のガラスと樹脂部材の複合体が製造される。
【0024】
この場合に、第1の樹脂成形体を成形する際に、第1の樹脂成形体にその厚み方向に沿って貫通した少なくとも一つの孔部を設けておき、次いで第2の樹脂成形体を成形するときに、前記孔部から二次側成形樹脂をガラス基材と第1の樹脂成形体との間に流入させて、第1,第2の樹脂成形体とガラス基材とを固化一体化することが好ましい。
前記複合体の製造方法において、第1の樹脂成形体とガラス基材の間に二次側成形樹脂を流入するにあたり、前記両部材の端から二次側成形樹脂を流入させることも可能であるが、その場合に樹脂成形体の縁部に二次側成形樹脂のバリができやすく、とりわけエラストマーが二次側成形樹脂のときはバリの発生が顕著である。前記のように、第1の樹脂成形体に設けられた孔部から、つまり第1の樹脂成形体の面内から二次側成形樹脂を流入させることで、二次側成形樹脂のバリができにくくなり、また、第1の樹脂成形体とガラス基材の間の空隙内に均等な速度で二次側成形樹脂が流入し、成形時のガラス基材に作用する収縮力の偏在を防止することができる。
【0025】
また、前記複合体の製造方法において、第1の樹脂成形体と、これとガラス基材の間に流入される二次側成形樹脂との接触面積が大きくなるように、第1の樹脂成形体の前記ガラス基材に対向する内面には、エンボスやシボ加工による凹凸や、複数列や碁盤目のように配した溝が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の複合体によれば、肉薄なガラス製の表示パネルの背面側に、筐体に固定するための結合部位などの樹脂成形体を一体に設けた場合でも、表示パネルの正面側にヒケやうねりを表出させることなく、留めネジを使用して固定可能な程度の硬度を備えた樹脂成形体を、表示パネルの背面側に安定的に固着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の複合体の一実施形態である表示パネルの正背両面を分割して示した図である。
【
図2】
図1の表示パネルの樹脂成形体が設けられた部分の拡大破断斜視図である。
【
図3】(A),(B)は
図1の表示パネルの成形工程を説明するための図であって一次側成形金型の概略切断端面図であり、同図(B)は第1の樹脂成形体の孔部を設ける位置の切断端面を示している。
【
図4】(A),(B)は
図1の表示パネルの成形工程を説明するための図であって二次側成形金型の概略切断端面図である。
【
図5】二次側成形金型から取り出した表示パネルの拡大部分切断端面図である。
【
図6】ゲート処理した表示パネルの拡大部分切断端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の複合体について実施例に基づいて説明する。
なお、以下に示す実施例は本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の形態のものには限定されない。
【0029】
図1は、本発明の複合体をカーナビゲーションの表示パネルに適用した一例の形態を示している。
図示した形態の表示パネル1は、横長矩形状のガラス基材2の背面側に、結合部位である複数の樹脂成形体3を一体に配置して構成してある。
表示パネル1は、電子機器を収納したカーナビゲーションの筐体(図示せず)の前側枠部に設けた被結合部位に、前記ガラス基材2の背面側に設けられた結合部位である樹脂成形体3を結合することで、前記筐体の前面に一体に取り付けられてカーナビゲーションの表示面を構成するようになっている。
【0030】
ガラス基材2は、透明な横長矩形状のガラス板21の背面側の四側周辺部に沿って帯状に黒色の着色部22を設け、全体として0.35mm程度の厚みに形成してある。
【0031】
着色部22は、ガラス板21の背面側に設けられた印刷層22aに、接着剤層22bを積層して形成してある。
【0032】
詳しくは、着色部22は、黒色の着色剤が含有された、シランカップリング剤入りのアクリルウレタン系樹脂からなるインクを、ガラス板21の背面側周縁に沿って枠状に塗布して印刷層22aを形成し、印刷層22aの乾燥後、その表面に二液硬化ポリウレタンインクを塗布し、乾燥させて接着剤層22bを印刷層22aの上面に重ねて形成してある。
【0033】
樹脂成形体3は、
図1に示されるように、ガラス基材2の背面側に形成された前記着色部22の表面であって当該ガラス基材2の上辺と左右側辺に各々一体に取り付けてある。
【0034】
詳しくは、
図2に示されるように、樹脂成形体3は、前記筐体の被結合部に結合する略円筒形の本体部31を、ガラス基材2との接合部に配したベース部32を介してガラス基材2の表面に一体に固着して形成してある。
前記本体部31は、ポリカーボネート系樹脂などを主成分とする剛性(引張強さ、曲げ強さ)が大きな樹脂材料、ベース部32は成形時の収縮力が小さなポリエステル系熱可塑性エラストマーをそれぞれ用いて形成されており、樹脂成形体3はガラス基材2の接合部にポリエステル系熱可塑性エラストマーからなるベース部32を配することで成形時にガラス基材2にヒケやうねりが表出することを抑制する一方、剛性が大きな樹脂材料からなる本体部31をべース部32に重ねて設けることで、樹脂成形体3全体として前記筐体の被結合部に強固に結合し得る程度の硬さが確保されるようになっている。
【0035】
このような構成の表示パネル1は、
図3と
図4に示される、一次側成形金型と二次側成形金型からなる二色成形金型を用いて製作することができる。
【0036】
具体的には、表示パネル1の成形は、先ず、
図3(A)に示されるように、コア42に一次成形金型4のキャビ41を被せて一次側成形金型4を閉じ、金型内部に前記剛性が大きなポリカ―ボネート系樹脂などを主成分とする一次側成形樹脂を流入させて、第1の樹脂成形体である前記本体部31を射出成形する。このとき、同図(B)に示されるように、本体部31には、その厚み方向に沿って貫通した孔部31aを設けておく。
【0037】
次いで、一次成形金型4を開き、コア42とともに前記第1の樹脂成形体である本体部31を二次成形金型5の成形領域に移送するとともに、
図4(A)に示されるように、この成形領域内にガラス基材2を挿入する。なお、二次成形金型5のコア(図示せず)は前記コア42と同形に形成されており、前記コア42及び本体部31の移送と同時に一次成形金型4の成形領域に移送される。
【0038】
二次成形金型5内にガラス基材2が挿入されたならば、二次成形金型5のキャビ51を前記コア42に被せて二次成形金型5を閉じ、同図(B)に示されるように前記本体部31に設けられた孔部31aから、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなる二次側成形樹脂を前記ガラス基材2と前記本体部31との間に流入させて、第2の樹脂成形体であるベース部32を射出成形し、このベース部32を介して本体部31とガラス基材2とを固化一体化させる。
剛性が高い(収縮力が比較的大きな)本体部31が、固化或いは半固化した後に、収縮力が比較的小さな二次側成形樹脂(第2の樹脂成形体)を前記ガラス基材2と前記本体部31(第1の樹脂成形体)との間に流入させて固化一体化することで、本体部31が固化する際に熱収縮力の影響がガラス基材2に伝播せず、ガラス基材2にヒケやうねりが発生することを防止することができる。
【0039】
そして、前記二次側成形金型5を開いて、前記ベース部32を介して本体部31が背面側に固着されたガラス基材2を金型から取り出し、
図5に示されるように、取り出されたガラス基材2の、前記樹脂成形体3の本体部31の孔部31aから突出したベース部32のゲート32aを切断処理することで、
図6に示されるように、ガラス基材2の背面側に樹脂成形体3が一体に固着した表示パネル1が製作される。
【0040】
なお、図示した形態では、カーナビゲーションの表示パネルに本発明の複合体を適用したが、他の情報表示装置の表示パネルにも適用可能である。この場合、表示パネルは、表示装置に応じたサイズに形成され、ガラス基材の背面側に設ける樹成形体は、表示装置のサイズに応じて適宜な数が、ガラス基材の裏面の適宜な位置に設置される。
また、表示パネルの結合部位である樹脂成形体を略円筒形に形成したが、樹脂成形体は表示装置の筐体に設けられた被結合部位との結合態様に応じて、凸形状のボスや凹形状、先端が太い突起形、留めネジが螺合するネジ孔形など適宜な形状に形成することができる。
本発明の複合体を構成するガラス基材と樹脂成形体の形状や組み合わせは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 複合体(表字パネル)、2 ガラス基材、21 ガラス板、22 着色部、22a 印刷層、22b 接着剤層、3 樹脂成形体、31 本体部、31a 孔部、32 ベース部、4 一次側成形金型、41 キャビ、42 コア、5 二次側成形金型、51 キャビ