(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039776
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】有機性廃棄物処理システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20230314BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
C02F11/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147058
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】仕入 英武
(72)【発明者】
【氏名】木内 智明
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 真梨子
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059AA23
4D059BA12
4D059BA21
4D059BC02
4D059BE00
4D059BK11
4D059BK12
4D059CA07
4D059DA43
4D059DA44
4D059EA11
4D059EA20
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】オゾン法において過酸化水素の供給量を適正化することができる有機性廃棄物処理システムを提供する。
【解決手段】有機性廃棄物処理システムは、有機物を含む処理対象物を嫌気性消化してバイオガスを生成する消化設備と、処理対象物を可溶化して消化設備に供給する可溶化設備と、を備える。可溶化設備は、可溶化槽と、可溶化槽の処理対象物を循環させて可溶化槽に戻す経路である循環経路と、循環経路の処理対象物を加圧する加圧ポンプと、循環経路において処理対象物にオゾンを供給するオゾン供給部と、循環経路において処理対象物に過酸化水素を供給する過酸化水素供給部と、循環経路に設けられ、少なくとも乱流と加圧のいずれかによって処理対象物の可溶化を促進する溶解反応部と、オゾン供給部から供給されたオゾンの濃度と流量に基づいて、過酸化水素供給部から供給する過酸化水素の供給量を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む処理対象物を嫌気性消化してバイオガスを生成する消化設備と、
前記処理対象物を可溶化して前記消化設備に供給する可溶化設備と、
を備え、
前記可溶化設備は、
前記処理対象物を貯留する可溶化槽と、
前記可溶化槽の前記処理対象物を循環させて前記可溶化槽に戻す経路である循環経路と、
前記循環経路の前記処理対象物を加圧する加圧ポンプと、
前記循環経路において前記処理対象物にオゾンを供給するオゾン供給部と、
前記循環経路において前記処理対象物に過酸化水素を供給する過酸化水素供給部と、
前記循環経路に設けられ、少なくとも乱流と加圧のいずれかによって前記処理対象物の可溶化を促進する溶解反応部と、
前記オゾン供給部から供給されたオゾンの濃度を計測するオゾン濃度計測部と、
前記オゾン供給部から供給されたオゾンの流量を計測するオゾン流量計測部と、
前記オゾン供給部から供給されたオゾンの濃度と流量に基づいて、前記過酸化水素供給部から供給する過酸化水素の供給量を制御する制御部と、
を備える有機性廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記オゾン供給部から供給されたオゾンの濃度と流量に基づいて、前記過酸化水素供給部から供給する過酸化水素水の供給量を制御する場合に、前記処理対象物に対するオゾン添加量50mg/Lに対して過酸化水素水添加量が10~40ppm、より好ましくは20~30ppmとなるようにする、請求項1に記載の有機性廃棄物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、有機性廃棄物処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚泥や工場排水などの有機性廃棄物の処理方法の一つに嫌気性消化がある。嫌気性消化では、廃棄物中の有機物を、消化槽で低分子化してメタンと二酸化炭素を主成分とするバイオガスに転換することで、処理液から除去する。
【0003】
また、嫌気性消化は廃棄物からのエネルギー回収にも用いられる。バイオガスには可燃性ガスであるメタンが約70%含まれており、このメタンをガスボイラーで熱に変換して消化槽の加温に用いたり、ガス発電機で発電して処理施設で使用したりすることにより、処理施設全体の購入電力量を低減できる。また、売電することで、直接的な利益を得ることもできる。
【0004】
バイオガスが増量するとエネルギー回収量が増える。バイオガス増量の方法として可溶化がある。可溶化は、廃棄物中の固形物を低分子化、液化することで、嫌気性消化反応を進行しやすくして、バイオガスの増量に寄与する。可溶化の方法として、例えば、オゾン法がある。例えば、従来技術のオゾン法で、汚泥に100ppm以下の添加量で過酸化水素を供給することで、オゾン添加量を低減してバイオガス発生量を増加する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5916971号公報
【特許文献2】特許第4339775号公報
【特許文献3】特開2019-25428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
なお、オゾン法で過酸化水素を加える場合、過酸化水素が適量より少ないと可溶化の効果も小さい。また、過酸化水素が適量を超えると、コストが増えるだけでなく、可溶化の効果が低減するというデメリットもある。また、有機性廃棄物処理システムでは、汚泥に供給するオゾンの濃度やオゾンガスのガス流量が変動することは多い。
【0007】
しかしながら、従来技術では、汚泥に供給するオゾンの濃度やオゾンガスのガス流量が変動することを考慮せずに過酸化水素を供給しており、過酸化水素の供給量が適量になっていないことがあり、改善の余地がある。
【0008】
そこで、本発明は、オゾン法において過酸化水素の供給量を適正化することができる有機性廃棄物処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の有機性廃棄物処理システムは、有機物を含む処理対象物を嫌気性消化してバイオガスを生成する消化設備と、前記処理対象物を可溶化して前記消化設備に供給する可溶化設備と、を備える。前記可溶化設備は、前記処理対象物を貯留する可溶化槽と、前記可溶化槽の前記処理対象物を循環させて前記可溶化槽に戻す経路である循環経路と、前記循環経路の前記処理対象物を加圧する加圧ポンプと、前記循環経路において前記処理対象物にオゾンを供給するオゾン供給部と、前記循環経路において前記処理対象物に過酸化水素を供給する過酸化水素供給部と、前記循環経路に設けられ、少なくとも乱流と加圧のいずれかによって前記処理対象物の可溶化を促進する溶解反応部と、前記オゾン供給部から供給されたオゾンの濃度を計測するオゾン濃度計測部と、前記オゾン供給部から供給されたオゾンの流量を計測するオゾン流量計測部と、前記オゾン供給部から供給されたオゾンの濃度と流量に基づいて、前記過酸化水素供給部から供給する過酸化水素の供給量を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、従来の有機性廃棄物処理システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図2は、従来の有機性廃棄物処理システムにおけるオゾン濃度とオゾンガス流量の経時変化を示すグラフである。
【
図3】
図3は、第1実施形態における第1実験装置の全体構成を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態における第2実験装置の全体構成を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態における有機性廃棄物処理システムの全体構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態における有機性廃棄物処理システムの全体構成を示す図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態における有機性廃棄物処理システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の有機性廃棄物処理システムの実施形態(第1実施形態~第3実施形態)等について説明する。以下の例示的な従来技術や実施形態や変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号を付すとともに、重複する説明を適宜省略する。実施形態や変形例に含まれる部分は、他の実施形態や変形例の対応する部分と置き換えて構成されることができる。また、実施形態や変形例に含まれる部分の構成や位置等は、特に言及しない限りは、他の実施形態や変形例と同様である。
【0012】
(従来技術)
まず、理解を助けるために、従来の有機性廃棄物処理システムについて説明する。
図1は、従来の有機性廃棄物処理システム100の全体構成を示す図である。有機性廃棄物処理システム100は、消化設備12と、可溶化設備14と、を備える。
【0013】
消化設備12は、有機物を含む有機性廃棄物を嫌気性消化してメタンを含むバイオガスを生成するとともに、有機物を除去した後の消化汚泥を排出する。消化設備12は、消化槽22を有する。
【0014】
消化槽22は、可溶化設備14によって可溶化された可溶化汚泥を受け取る。消化槽22は、嫌気性微生物を内部に含み、可溶化設備14から受け取った可溶化汚泥を嫌気性微生物によって嫌気性消化する。消化槽22は、メタンを含むバイオガスを発電設備90等に供給するとともに、消化汚泥を脱水設備92等へ送る。
【0015】
可溶化設備14は、循環経路32と、可溶化槽34と、加圧ポンプ36と、過酸化水素水タンク38と、過酸化水素注入ポンプ40と、オゾン発生装置42と、エジェクター44と、溶解反応部46と、を有する。
【0016】
可溶化槽34の消化汚泥は、循環経路32を循環し、その途中で加圧ポンプ36、エジェクター44、溶解反応部46を通過し、可溶化槽34に戻る。
【0017】
可溶化槽34は、汚泥(消化汚泥、可溶化汚泥)を貯留する。可溶化槽34は、可溶化汚泥を消化槽22へと送る。
【0018】
過酸化水素注入ポンプ40は、過酸化水素水タンク38から供給された過酸化水素を、循環経路32において、加圧ポンプ36によって加圧された汚泥にエジェクター44の下流側で注入する。
【0019】
オゾン発生装置42は、循環経路32上でエジェクター44を流れる汚泥にオゾンを供給する。
【0020】
溶解反応部46は、ノズル50と、内筒52と、溶解反応タンク54とを有する。ノズル50は、エジェクター44から送られるオゾンと過酸化水素が混合された汚泥を溶解反応タンク54内に噴射する。これによって、汚泥の可溶化が促進する。溶解反応部46は、可溶化汚泥を可溶化槽34へ送る。
【0021】
このような従来の有機性廃棄物処理システム100において、汚泥に供給するオゾンの濃度やオゾンガスのガス流量が変動することは多い。ここで、
図2は、従来の有機性廃棄物処理システム100におけるオゾン濃度とオゾンガス流量の経時変化を示すグラフである。オゾン濃度やオゾンガスのガス流量を一定にしようとしても、
図2に示すように、それらは変動することが多い。しかしながら、オゾン濃度やオゾンガスのガス流量が変動することを考慮せずに過酸化水素を供給しており、過酸化水素の供給量が適量になっていないことがあり、改善の余地がある。
【0022】
そこで、以下では、オゾン法において過酸化水素の供給量を適正化することができる技術について説明する。
【0023】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について説明する。まず、
図3を参照して、オゾン添加量と、可溶化率やバイオガス発生量との関係を調べた第1実験について説明する。次に、
図4を参照して、オゾン添加量に対する過酸化水素水添加量の適正範囲を調べた第2実験について説明する。次に、
図5を参照して、第1実施形態における有機性廃棄物処理システム10について説明する。
【0024】
(第1実験)
まず、第1実験について説明する。
図3は、第1実施形態における第1実験装置200の全体構成を示す図である。第1実験装置200は、例えば、実験室に設置される。第1実験装置200は、循環経路32と、可溶化槽34と、加圧ポンプ36と、オゾン発生装置42(オゾン供給部)と、エジェクター44と、溶解反応部46と、圧力調整バルブ71と、を備える。溶解反応部46は、ノズル50と、内筒52と、溶解反応タンク54と、を有する。
【0025】
第1実験装置200を用いて、オゾン添加のみで汚泥の可溶化実験を実施した。可溶化槽34に入れた汚泥を加圧ポンプ36で溶解反応部46に送る途中のエジェクター44で、オゾン発生装置42からオゾンが吸引される。そのオゾン吸引による圧力変動により汚泥のフロック(塊)が粉砕されるとともにオゾン混合汚泥となる。オゾン混合汚泥は、内部が加圧された溶解反応部46内のノズル50から噴射され、溶解反応部46内に設置された内筒52と接触することで、溶解反応部46内で、乱流撹拌する。これにより、マイクロバブル溶解したオゾンと汚泥が反応して可溶化する。
【0026】
汚泥は下水処理場の消化汚泥(VS1.5%)を使用して、汚泥に対するオゾン添加量は、0~150mg/Lとした。これは、汚泥のVS当たりのオゾン注入率では、0~0.01mg-O3/mg-VSに相当する。
【0027】
第1実験装置200では、オゾンガス流量と加圧ポンプ36の流量の気液比は0.08を超えて設定することができないため、気液比は固定して、オゾン添加量は処理時間で調整した。オゾン添加量0mg/Lは、第1実験装置200において、オゾン以外の効果を得るために、オゾン発生装置42で電圧を印加しない無放電状態での酸素供給で実施したことを意味する。
【0028】
実験後の汚泥サンプルのVSS(浮遊物質の強熱減量)を分析し、式(1)を用いて可溶化率を得た。
可溶化率[%]=(1-汚泥サンプルVSS[%]÷未処理汚泥VSS[%])×
100 ・・・・式(1)
【0029】
次に、ガス発生量を得るための消化試験を下記の通り実施した。200mLのバイアル瓶に、処理汚泥サンプル、種汚泥としての消化汚泥を1:1の比で入れ、気相部を窒素置換して封入した。37℃の恒温振とう機にセットし、発生したガス量を、30日を超えるまで測定した。測定値から、汚泥サンプルVS量当たりのガス発生量と未処理汚泥に対するガス増加比を式(2)、式(3)を用いて求めた。
【0030】
ガス発生量[L/g-VS]
=ガス発生量測定値(mL)×10-3÷(汚泥サンプル量[mL]×VS[%]×
10-2) ・・・・式(2)
ガス増加比[-]=処理液ガス発生量[mL]÷未処理汚泥ガス発生量[mL]
・・・・式(3)
【0031】
【0032】
実験結果は表1の通りである。A-1の未処理汚泥は、第1実験装置200に入れる前の汚泥である。A-1とA-2の比較から、オゾンを供給しなくても、汚泥を第1実験装置200に通すことで、可溶化率は9.8ポイント増加し、ガス増加比も0.07ポイント増加した。これは、汚泥が圧力変動管路であるエジェクター44で気体と混合される際、生じた圧力変動に伴い生じた剪断力で汚泥の固形物が破砕され、低分子化した効果と考えられる。
【0033】
また、A-2~A-5から、オゾンの供給量が多いほど、汚泥の可溶化と発生ガス量が増加したことがわかる。
【0034】
以上のことから、汚泥の固形物を破砕した後、オゾンを注入して、マイクロバブル化したオゾンを汚泥に加圧溶解することで、少なくともオゾン添加量150mg/L以下では、オゾン添加量と比例して高い可溶化率とバイオガス増量が得られることが示唆された。
【0035】
(第2実験)
次に、第2実験について説明する。
図4は、第1実施形態における第2実験装置300の全体構成を示す図である。第2実験装置300は、例えば、実験室に設置される。
【0036】
第2実験装置300は、
図3の第1実験装置200に、濃度30%の過酸化水素水を貯留する過酸化水素水タンク38と、過酸化水素注入ポンプ40(過酸化水素供給部)と、を追加したものである。そして、過酸化水素注入ポンプ40によって、所定の速度で過酸化水素水を汚泥に注入した。実験結果を表2に示す。
【0037】
【0038】
B-1の未処理汚泥は、第2実験装置300に入れる前の汚泥である。B-2~B-9ではオゾン添加量を50mg/Lとして、過酸化水素水添加量を0~100ppmの範囲で添加した。
【0039】
過酸化水素を添加しないB-2の可溶化率は10.4%、ガス増加比は1.19であった。過酸化水素水添加量を10~100ppmとしたB-3~B-9の可溶化率は9.8~11.9%の範囲にあり、平均値は約10.6%で明確な差異は認められなかった。一方、ガス増加比は過酸化水素水添加量10ppmでは1.29で、20ppmでは1.31で、30ppmでは1.33と、30ppmまでは増加した。40ppmではB-2よりも大きいものの30ppmに対しては減少に転じ、60ppm以降はB-2と同程度以下のガス増加比となった。
【0040】
過酸化水素水を添加しても可溶化率に大きな変化が見られなかったことから、過酸化水素の添加効果は、オゾンのように浮遊性の汚泥(固体)を完全な溶解性まで酸化分解しているのではないことが示唆された。一方、30ppmまではガス増加比が増加していることから、過酸化水素の添加により汚泥中の有機物の細胞壁を切断して浮遊性のまま消化しやすい状態にしているものと推察された。さらに、過酸化水素水添加量30ppmでガス増加比が最大となったことから、過酸化水素水添加量には最適値があり、それより少ないと可溶化効果が十分に得られず、それより多い場合は可溶化効果が十分に得られないことに加えて過酸化水素水の費用が過大となることが示唆された。なお、過酸化水素水添加量が最適値よりも多くなればなるほど、オゾンと水が反応して生成される酸化力の強いヒドロキシラジカル(OH)を過酸化水素が多く消費してしまうため、可溶化率やガス増加比が低下すると考えられる。
【0041】
ガス増加比がB-2よりも大きくなる過酸化水素水添加量は10~40ppmで、特にガス増加比が大きかった20~30ppm辺りに過酸化水素水添加量の最適値があるものと考えられる。以上のことから、過酸化水素水添加量の最適範囲は、汚泥に対するオゾン添加量50mg/Lに対して少なくとも10~40ppm、より好ましくは20~30ppmと示唆された。
【0042】
(有機性廃棄物処理システムの構成と動作)
次に、本実施形態の有機性廃棄物処理システム10の構成と動作について説明する。
図5は、第1実施形態における有機性廃棄物処理システム10の全体構成を示す図である。有機性廃棄物処理システム10は、例えば、下水処理設備等に設置される。
【0043】
有機性廃棄物処理システム10は、下水汚泥等の有機性廃棄物である汚泥(処理対象物)に含まれる有機物から嫌気性消化によってメタンと二酸化炭素とを生成して有機物を除去する。有機性廃棄物処理システム10は、嫌気性消化によって生成したメタンが約70%含まれるバイオガスをエネルギーとして回収して利用する。例えば、有機性廃棄物処理システム10は、バイオガスに含まれるメタンをガスボイラーで熱に変換して、消化槽22の加温に利用する。また、有機性廃棄物処理システム10は、バイオガスに含まれるメタンを発電設備90のガス発電機での発電に利用し、発電した電力を有機性廃棄物処理システム10内で利用することにより、購入電力量を低減し、または、売電することで利益を得る。
【0044】
有機性廃棄物処理システム10は、消化設備12と、可溶化設備14と、制御装置16(制御部)と、を備える。
【0045】
消化設備12は、有機物を含む汚泥を嫌気性消化してメタンを含むバイオガスを生成するとともに、有機物を除去した消化後の汚泥(消化汚泥)を排出する。消化設備12は、消化槽22を有する。
【0046】
消化槽22には、外部からの有機性廃棄物と、可溶化設備14によって可溶化された可溶化汚泥と、が送られる。消化槽22は、嫌気性微生物を内部に含み、可溶化設備14から供給される可溶化汚泥を嫌気性微生物によって嫌気性消化する。嫌気性微生物は、加水分解菌、酸生成菌、及び、メタン生成菌等である。例えば、消化槽22は、加水分解菌によって、汚泥の有機物に含まれる炭水化物、タンパク質、脂質等の高分子有機物を低分子有機物へと分解する。次に、消化槽22は、酸生成菌によって低分子有機物を酢酸、プロピオン酸等の低級脂肪酸へ分解する。更に、消化槽22は、メタン生成菌によって低級脂肪酸をメタンと二酸化炭素とに分解してバイオガスを生成し、一部の有機物が除去された消化汚泥をバイオガスから分離する。消化槽22は、メタンを含むバイオガスを発電設備90等に供給するとともに、消化汚泥を脱水設備92等へ送る。
【0047】
可溶化設備14は、消化槽22から受け取った消化汚泥を可溶化して消化設備12に返す。可溶化設備14は、循環経路32と、可溶化槽34と、加圧ポンプ36と、過酸化水素水タンク38と、過酸化水素注入ポンプ40と、オゾン発生装置42と、エジェクター44と、溶解反応部46と、オゾンガス流量計61と、オゾン濃度計62と、を有する。
【0048】
循環経路32は、可溶化槽34と、加圧ポンプ36と、エジェクター44と、溶解反応部46と、可溶化槽34と、を接続する経路である。循環経路32は、可溶化槽34の汚泥を、加圧ポンプ36、エジェクター44、溶解反応部46の順で循環させて、可溶化槽34へと戻す。
【0049】
可溶化槽34は、消化槽22と、循環経路32と、に接続されている。可溶化槽34は、消化槽22から受け取った消化汚泥と、溶解反応部46から受け取った可溶化汚泥とが混合された汚泥を一時的に貯留する。
【0050】
加圧ポンプ36は、循環経路32において、可溶化槽34とエジェクター44の間に配置されている。加圧ポンプ36は、循環経路32の汚泥を加圧する。つまり、加圧ポンプ36は、可溶化槽34の汚泥を加圧して循環経路32に流し、エジェクター44へ送る。
【0051】
オゾン発生装置42は、循環経路32上のエジェクター44に接続されている。オゾン発生装置42は、汚泥に混合する気体であるオゾンを発生させる。オゾン発生装置42は、循環経路32において、エジェクター44を流れる汚泥に酸化剤としてのオゾンを供給する。
【0052】
エジェクター44は、循環経路32において、加圧ポンプ36と溶解反応部46の間に配置されている。エジェクター44は、例えば、ポンプの一種である圧力変動管路である。エジェクター44は、オゾン発生装置42から供給されたオゾンを吸引する。エジェクター44は、加圧ポンプ36で加圧された汚泥とオゾンを混合する。エジェクター44は、オゾンの供給による圧力変動によって生じたせん断力により汚泥中の固形物を破砕して低分子化するとともに、オゾンをマイクロバブル化する。エジェクター44は、マイクロバブル化したオゾンが混合された汚泥を溶解反応部46へ送る。
【0053】
過酸化水素水タンク38は、過酸化水素注入ポンプ40を介して、エジェクター44よりも下流側で循環経路32に接続されている。過酸化水素水タンク38は、循環経路32を流れる汚泥に注入(供給)するための過酸化水素を生成する。過酸化水素水タンク38は、過酸化水素を含む液状の過酸化水素水を酸化剤として汚泥に供給する。
【0054】
過酸化水素注入ポンプ40は、過酸化水素水タンク38に接続されるとともに、エジェクター44の下流側と溶解反応部46の上流側との間の循環経路32に接続されている。過酸化水素注入ポンプ40は、過酸化水素水タンク38から供給された酸化剤としての過酸化水素を、循環経路32において汚泥に注入する。
【0055】
溶解反応部46は、循環経路32において、エジェクター44と可溶化槽34の間に配置されている。溶解反応部46は、少なくとも乱流と加圧のいずれかによって汚泥の可溶化を促進する。溶解反応部46は、循環経路32上でオゾンと過酸化水素が供給された汚泥を可溶化させて可溶化槽34に送る。溶解反応部46は、ノズル50と、内筒52と、溶解反応タンク54と、を有する。ノズル50は、溶解反応タンク54内に設置され、エジェクター44から延びる循環経路32に接続されている。ノズル50は、エジェクター44から送られるオゾンと過酸化水素が混合された汚泥を溶解反応タンク54内に噴射する。内筒52は、溶解反応タンク54内に設置されている。内筒52は、溶解反応タンク54内に噴射された汚泥の流れを乱す。これにより、内筒52は、マイクロバブル状のオゾンと汚泥内の固形物との接触を増加させ、オゾン混合汚泥中の有機物の細胞壁をオゾンの酸化力によって破壊し、細胞内部の炭水化物及びタンパク質等の有機物の可溶化を促進する。また、過酸化水素と汚泥内の固形物との接触も増加し、有機物の可溶化が促進する。溶解反応タンク54は、汚泥を内部で加圧する。
【0056】
オゾンガス流量計61は、オゾン発生装置42から供給されたオゾンの流量(オゾンガス流量)を計測し、計測結果を制御装置16に出力する。
【0057】
オゾン濃度計62は、オゾン発生装置42から供給されたオゾンの濃度を計測し、計測結果を制御装置16に出力する。
【0058】
制御装置16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサと、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置とを有するコンピュータである。制御装置16は、制御プログラムを読み込むことによって、有機性廃棄物処理システム10を制御する。具体的には、制御装置16は、過酸化水素注入ポンプ40、オゾンガス流量計61およびオゾン濃度計62と、データを含む電気信号を送受信可能に接続されている。
【0059】
制御装置16は、オゾンガス流量計61からオゾンの流量の計測結果を受信するとともに、オゾン濃度計62からオゾンの濃度の計測結果を受信する。制御装置16は、オゾン発生装置42から供給されたオゾンの濃度と流量に基づいて、過酸化水素注入ポンプ40から供給する過酸化水素の供給量を制御する。その場合に、例えば、制御装置16は、汚泥に対するオゾン添加量50mg/Lに対して過酸化水素水添加量が10~40ppm、より好ましくは20~30ppmとなるようにする。
【0060】
次に、有機性廃棄物処理システム10における汚泥の処理に関する動作について説明する。まず、有機性廃棄物が消化槽22に送られる。次に、消化槽22で汚泥を消化する。次に、消化槽22から可溶化槽34に消化汚泥が供給される。次に、加圧ポンプ36は、可溶化槽34に供給されて貯留されている汚泥を加圧して、循環経路32に流す。
【0061】
エジェクター44は、加圧された汚泥にオゾン発生装置42から供給されたオゾンを混合するとともに、汚泥中の固形の有機物を破砕する。過酸化水素注入ポンプ40は、過酸化水素水タンク38から供給された過酸化水素を循環経路32中の汚泥に注入する。溶解反応部46は、汚泥内の固形の有機物とオゾンや過酸化水素との接触を高めて可溶化させ、可溶化汚泥を可溶化槽34へ送る。
【0062】
可溶化槽34は、可溶化汚泥を貯留しつつ、一部を消化槽22へ送るとともに、残りを可溶化設備14内で循環させる。消化槽22は、可溶化汚泥を嫌気性消化することによって、メタンを含むバイオガスと、可溶化汚泥から有機物が除去された消化汚泥とを生成する。消化槽22は、バイオガスを発電設備90等に送るとともに、消化汚泥を脱水設備92等に送る。
【0063】
このように、有機性廃棄物処理システム10では、「消化槽22から可溶化槽34へ消化汚泥を引き抜く第1工程」、「可溶化槽34の消化汚泥を可溶化設備14で可溶化処理する第2工程」、「可溶化槽34から消化槽22へ可溶化汚泥を返送する第3工程」、の3つ工程をバッチ処理で繰り返し行うことにより消化槽22の消化汚泥を可溶化処理する。そして、第2工程でオゾン発生装置42からオゾンガスの供給が行われるが、
図2に示すように、特にオゾン発生装置42の運転初期などにオゾン濃度とオゾンガス流量が安定しない場合が多い。
【0064】
有機性廃棄物処理システム10において、オゾン発生装置42で生成したオゾンガスのオゾン濃度とオゾンガス流量とを計測して、計測したオゾン濃度とオゾンガス流量から、オゾン添加量を計算して、汚泥に対するオゾン添加量50mg/Lに対して過酸化水素水添加量が20~30ppmとなるように過酸化水素注入ポンプ40における過酸化水素水の流量を制御した。その場合、過酸化水素注入ポンプ40における過酸化水素水の流量を式(4)で計算した。
【0065】
QH2O2=RH2O2÷RO3×(QO3×CO3÷60) ・・・・式(4)
各パラメータについては、以下の通りである。
QH2O2 :過酸化水素注入ポンプ流量 [mL/min]
RH2O2 :過酸化水素水添加量 20[ppm]
RO3 :オゾン添加量 50[mg/L]
QO3 :オゾンガス流量 [Nm3/h]
CO3 :オゾン濃度 [g/Nm3]
【0066】
これにより、オゾン添加量に対して適切な過酸化水素水添加量が維持されるようになり、消化槽22に返送された可溶化汚泥の消化により高いガス増加比が維持でき、バイオガス発生量を安定して増加できた。
【0067】
このように、第1実施形態の有機性廃棄物処理システム10によれば、汚泥に供給するオゾンの濃度やオゾンガス流量が変動して不安定であっても、制御装置16によって、汚泥に対するオゾン添加量50mg/Lに対して過酸化水素水添加量が10~40ppm、より好ましくは20~30ppmとなるようにする。これにより、汚泥に供給する過酸化水素の供給量を適正化し、汚泥の可溶化を促進することができる。
【0068】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態における有機性廃棄物処理システム10aの全体構成を示す図である。第1実施形態では、消化槽22の消化汚泥を可溶化槽34に送り、可溶化設備14で可溶化処理した可溶化汚泥を消化槽22に返送した。第2実施形態では、
図6に示すように、有機性廃棄物を可溶化槽34に送り、可溶化設備14で可溶化処理した可溶化汚泥を消化槽22に返送する。このような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0069】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態における有機性廃棄物処理システム10bの全体構成を示す図である。第3実施形態では、
図7に示すように、消化設備12aは、1次消化槽22aと、2次消化槽22bと、を備える。1次消化槽22aは有機性廃棄物を受け取って1次消化を行い、消化汚泥を可溶化槽34に送る。そして、可溶化設備14で可溶化処理した可溶化汚泥を2次消化槽22bに返送する。1次消化槽22aと2次消化槽22bから発電設備90にバイオガスが送られる。2次消化槽22bから脱水設備92に消化汚泥が送られる。このような第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
10、10a、10b…有機性廃棄物処理システム、12、12a…消化設備、14…可溶化設備、16…制御装置、22…消化槽、22a…1次消化槽、22b…2次消化槽、32…循環経路、34…可溶化槽、38…過酸化水素水タンク、40…過酸化水素注入ポンプ、42…オゾン発生装置、44…エジェクター、46…溶解反応部、61…オゾンガス流量計、62…オゾン濃度計、90…発電設備、92…脱水設備。