(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039797
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20230314BHJP
H02K 33/14 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B06B1/04
H02K33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147093
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】水津 貴之
(72)【発明者】
【氏名】古木 茂
【テーマコード(参考)】
5D107
5H633
【Fターム(参考)】
5D107AA01
5D107CC09
5H633BB08
5H633GG02
5H633HH03
(57)【要約】
【課題】左右方向の振動(加速度)の大きさと前後方向の振動(加速度)の大きさとの間の適切なバランスを実現できる振動発生装置を提供すること。
【解決手段】振動発生装置101は、筐体HSと、筐体HS内に収納された可動体MBと、可動体MBを左右方向(Y軸方向)に沿って第1固有振動数で振動可能に支持するとともに前後方向(X軸方向)に沿って第1固有振動数よりも大きい第2固有振動数で振動可能に支持する支持部材7と、可動体MBに取り付けられる固定磁界発生部5と、筐体HSに取り付けられる交番磁界発生部としてのコイル4とを有する。斜め方向DXと左右方向(Y軸方向)との間の角度は45°未満である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
前記固定体内に収納された可動体と、
前記可動体を左右方向に沿って第1固有振動数で振動可能に支持するとともに前後方向に沿って前記第1固有振動数よりも大きい第2固有振動数で振動可能に支持する支持部材と、
前記固定体及び前記可動体のうちの一方に取り付けられるとともに、左右方向と前後方向の間の斜め方向に沿って並設されて上下方向に延びる磁界を発生させるS極部分及びN極部分を有する固定磁界発生部と、
前記固定体及び前記可動体のうちの他方に取り付けられるとともに、前記斜め方向に沿って前記固定磁界発生部に対して前記可動体を一方向に相対移動させる駆動力と他方向に相対移動させる駆動力とが交互に発生するよう交番磁界を発生させる交番磁界発生部とを有し、
前記斜め方向と前記左右方向との間の角度は45°未満であることを特徴とする振動発生装置。
【請求項2】
前記斜め方向と前記左右方向との間の角度は5°以上40°以下である、
請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記固定磁界発生部は、前記斜め方向に平行な一対の短辺又は長辺と前記斜め方向に垂直な一対の長辺又は短辺とを有する長方形状の表面を有する前記S極部分、及び、前記斜め方向に平行な一対の短辺又は長辺と前記斜め方向に垂直な一対の長辺又は短辺とを有する長方形状の表面を有する前記N極部分が前記斜め方向に並設されてなる四角形状を有する、
請求項1又は請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記斜め方向と前記左右方向との間の角度は30°以下である、
請求項3に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の共振周波数の振動及び複数の方向の振動を出力可能なアクチュエータが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のアクチュエータは、比較的低い共振周波数で可動体を左右方向に振動させ、且つ、比較的高い共振周波数で可動体を前後方向に振動させることができるように構成されている。
【0005】
しかしながら、上述の構成は、前後方向及び左右方向のそれぞれに対して45°傾いた方向に駆動力(推力)を発生させるように構成されている。そのため、左右方向の振動(加速度)の大きさが前後方向の振動(加速度)の大きさよりも過度に大きくなってしまい、左右方向の振動(加速度)の大きさと前後方向の振動(加速度)の大きさとの間のバランスが悪くなってしまうおそれがある。
【0006】
そこで、左右方向の振動(加速度)の大きさと前後方向の振動(加速度)の大きさとの間の適切なバランスを実現できる振動発生装置を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る振動発生装置は、固定体と、前記固定体内に収納された可動体と、前記可動体を左右方向に沿って第1固有振動数で振動可能に支持するとともに前後方向に沿って前記第1固有振動数よりも大きい第2固有振動数で振動可能に支持する支持部材と、前記固定体及び前記可動体のうちの一方に取り付けられるとともに、左右方向と前後方向の間の斜め方向に沿って並設されて上下方向に延びる磁界を発生させるS極部分及びN極部分を有する固定磁界発生部と、前記固定体及び前記可動体のうちの他方に取り付けられるとともに、前記斜め方向に沿って前記固定磁界発生部に対して前記可動体を一方向に相対移動させる駆動力と他方向に相対移動させる駆動力とが交互に発生するよう交番磁界を発生させる交番磁界発生部とを有し、前記斜め方向と前記左右方向との間の角度は45°未満である。
【発明の効果】
【0008】
上述の振動発生装置は、左右方向の振動(加速度)の大きさと前後方向の振動(加速度)の大きさとの間の適切なバランスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図7】可動体、コイル、及び支持部材の上面図である。
【
図8】コイルに供給される交流電流の周波数と可動体の振動の大きさ(加速度)との関係を示すグラフである。
【
図9】コイル及び固定磁界発生部の概略上面図である。
【
図10】コイル、固定磁界発生部、及び磁石ホルダの概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係る振動発生装置101について説明する。
図1は、振動発生装置101の図である。具体的には、
図1の上図は、振動発生装置101の斜視図であり、
図1の下図は、振動発生装置101の上面図である。
図2は、振動発生装置101の分解斜視図である。
【0011】
図1の上図におけるX1は三次元直交座標系を構成するX軸の一方向を表し、X2はX軸の他方向を表す。また、Y1は三次元直交座標系を構成するY軸の一方向を表し、Y2はY軸の他方向を表す。同様に、Z1は三次元直交座標系を構成するZ軸の一方向を表し、Z2はZ軸の他方向を表す。図示例では、振動発生装置101のX1側は、振動発生装置101の前側(正面側)に相当し、振動発生装置101のX2側は、振動発生装置101の後側(背面側)に相当する。また、振動発生装置101のY1側は、振動発生装置101の左側に相当し、振動発生装置101のY2側は、振動発生装置101の右側に相当する。そして、振動発生装置101のZ1側は、振動発生装置101の上側に相当し、振動発生装置101のZ2側は、振動発生装置101の下側に相当する。他の図においても同様である。
【0012】
振動装置VEは、制御部CTR及び振動発生装置101を有する。振動発生装置101は、固定体としての筐体HSと、筐体HS内に少なくとも一部が収容される可動体MBと、筐体HSに取り付けられるコイル4と、を有する。制御部CTRは、筐体HSに固定された基板3を介してコイル4に接続されている。なお、
図1の上図の破線は、制御部CTRと基板3上に設けられた端子部30とが電気的に接続されていることを模式的に示している。
【0013】
筐体HSは、
図1の上図に示すように、略直方体の外形を有し、XY平面に平行な面(上面及び下面)の面積が最も広くなるように構成されている。図示例では、筐体HSは、蓋体1及び箱状体2で構成されている。
【0014】
蓋体1は、筐体HSの一部を形成するように構成されている。図示例では、蓋体1は平板状の磁性部材(強磁性体)であり、筐体HSの天板部を構成している。
【0015】
箱状体2は、筐体HSの一部を形成するように構成されている。図示例では、箱状体2は板状の磁性部材(強磁性体)で形成され、筐体HSの側板部及び底板部を構成している。具体的には、箱状体2は、平板状に形成された四つの側板部2Aと底板部2Bとを備えている。より具体的には、側板部2Aは、
図2に示すように、互いに対向する第1側板部2A1及び第3側板部2A3と、第1側板部2A1及び第3側板部2A3のそれぞれに垂直で且つ互いに対向する第2側板部2A2及び第4側板部2A4とを有する。底板部2Bは、第1側板部2A1~第4側板部2A4のそれぞれの下端部を連結するように構成されている。
【0016】
コイル4は、駆動手段DMを構成する部材である。図示例では、コイル4は、絶縁材料で表面を被覆された導電線が巻回されて形成される巻き線コイルであり、蓋体1に固定されるように構成されている。
図2は、明瞭化のため、導電線の詳細な巻回状態の図示を省略している。コイル4を図示する他の図においても同様である。コイル4は、積層コイル又は薄膜コイル等であってもよい。具体的には、コイル4は、蓋体1の下側(Z2側)の面に固定される上側コイル4Uと、箱状体2の底板部2Bの上側(Z1側)の面に固定される下側コイル4Dと、を含む。図示例では、上側コイル4Uは、蓋体1の下面に接着固定され、下側コイル4Dは、箱状体2の底板部2Bの上面に接着固定されている。
【0017】
基板3は、コイル4と制御部CTRとを接続できるように構成されている。図示例では、基板3は、フレキシブル回路基板であり、その表面には端子部30が形成されている。具体的には、基板3は、上側コイル4Uと制御部CTRとを接続する上側基板3U、及び、下側コイル4Dと制御部CTRとを接続する下側基板3Dを含む。
【0018】
上側基板3Uは、上側端子部30Uを有する。上側端子部30Uは、第1上側端子部30U1~第4上側端子部30U4を含む。第1上側端子部30U1及び第2上側端子部30U2は、上側端子部30Uのうち、筐体HSの外側に配置される部分に形成されている。第3上側端子部30U3及び第4上側端子部30U4は、上側端子部30Uのうち、筐体HSの内側に配置される部分に形成されている。第1上側端子部30U1は、導体パターンを介して第3上側端子部30U3に接続され、第3上側端子部30U3は、上側コイル4Uを構成する導電線の一端に半田付けされている。第2上側端子部30U2は、導体パターンを介して第4上側端子部30U4に接続され、第4上側端子部30U4は、上側コイル4Uを構成する導電線の他端に半田付けされている。
【0019】
下側基板3Dは、下側端子部30Dを有する。下側端子部30Dは、第1下側端子部30D1~第4下側端子部30D4を含む。第1下側端子部30D1及び第2下側端子部30D2は、下側端子部30Dのうち、筐体HSの外側に配置される部分に形成されている。第3下側端子部30D3及び第4下側端子部30D4は、下側端子部30Dのうち、筐体HSの内側に配置される部分に形成されている。第1下側端子部30D1は、導体パターンを介して第3下側端子部30D3に接続され、第3下側端子部30D3は、下側コイル4Dを構成する導電線の一端に半田付けされている。第2下側端子部30D2は、導体パターンを介して第4下側端子部30D4に接続され、第4下側端子部30D4は、下側コイル4Dを構成する導電線の他端に半田付けされている。
【0020】
制御部CTRは、可動体MBの動きを制御できるように構成されている。図示例では、制御部CTRは、電子回路及び不揮発性記憶装置等を含む装置であり、コイル4を流れる電流の向き及び大きさを制御できるように構成されている。制御部CTRは、コンピュータ等の外部装置からの制御指令に応じてコイル4を流れる電流の向き及び大きさを制御するように構成されていてもよく、外部装置からの制御指令を受けずにコイル4を流れる電流の向き及び大きさを制御するように構成されていてもよい。なお、図示例では、制御部CTRは、筐体HSの外部に設置されているが、筐体HSの内部に設置されていてもよい。
【0021】
可動体MBは、筐体HSを振動させることができるように構成されている。図示例では、可動体MBは、筐体HS内に取り付けられた状態で往復動することにより、筐体HSを振動させることができるように構成されている。
【0022】
次に、
図3~
図5を参照し、可動体MBの詳細について説明する。
図3~
図5は、支持部材7が取り付けられた可動体MBの詳細図である。具体的には、
図3の上図は、支持部材7が取り付けられた可動体MBの斜視図であり、
図3の下図は、支持部材7が取り外された可動体MBの分解斜視図である。
図4の上図は、支持部材7が取り付けられた可動体MBの上面図であり、
図4の下図は、支持部材7を介して箱状体2に取り付けられた可動体MBの上面図である。
図5の上図は、支持部材7が取り付けられた可動体MBとコイル4の上面図であり、
図5の下図は、支持部材7が取り付けられた可動体MBとコイル4の正面図である。
【0023】
可動体MBは、固定磁界発生部5及び磁石ホルダ6を含むように構成されている。具体的には、可動体MBは、所定方向に延びる振動軸VAに沿って筐体HS(箱状体2)に対して往復動(振動)できるように構成されている。図示例では、振動軸VAは、上面視で互いに垂直な第1振動軸VA1及び第2振動軸VA2を含む。そして、可動体MBは、左右方向(Y軸方向)に延びる第1振動軸VA1に沿って筐体HS(箱状体2)に対して往復動(振動)できるように構成され、且つ、前後方向(X軸方向)に延びる第2振動軸VA2に沿って筐体HS(箱状体2)に対して往復動(振動)できるように構成されている。
【0024】
固定磁界発生部5は、駆動手段DMを構成する部材であり、磁束を発生させることができるように構成されている。図示例では、固定磁界発生部5は、左側磁石5L及び右側磁石5Rを含む。左側磁石5L及び右側磁石5Rは何れも、上下方向(Z軸方向)に二極に着磁された永久磁石であり、
図4の上図に示すように、斜め方向DXに沿って並置されている。斜め方向DXは、上面視で第1振動軸VA1と斜め方向DXとの間に角度αが形成されるように設計されている。また、斜め方向DXは、境界面BDに対して垂直となるように設計されている。境界面BDは、固定磁界発生部5を構成する磁石のN極部分とS極部分との間の境界に対応する面である。図示例では、境界面BDは、上面視で第2振動軸VA2と境界面BDとの間に角度βが形成されるように設定されている。図示例では、角度αと角度βとは等しい。具体的には、境界面BDは、左側磁石5LのN極部分と右側磁石5RのS極部分との間の境界に対応する。なお、
図3~
図5では、明瞭化のため、永久磁石のN極部分にはクロスパターンが付され、永久磁石のS極部分には細かいクロスパターンが付されている。後掲の
図6、
図7、
図9、及び
図10においても同様である。
【0025】
固定磁界発生部5は、左側磁石5Lと右側磁石5Rとを一体化した磁石に相当する一つの四極磁石で構成されていてもよい。或いは、固定磁界発生部5は、左側磁石5LのN極部分と右側磁石5RのS極部分とを一体化した磁石に相当する二極磁石と、左側磁石5LのS極部分と右側磁石5RのN極部分とを一体化した磁石に相当する二極磁石との組み合わせで構成されていてもよい。或いは、固定磁界発生部5は、左側磁石5LのN極部分と右側磁石5RのS極部分とを一体化した磁石に相当する二極磁石のみ、又は、左側磁石5LのS極部分と右側磁石5RのN極部分とを一体化した磁石に相当する二極磁石のみで構成されていてもよい。
【0026】
磁石ホルダ6は、固定磁界発生部5を保持できるように構成されている。図示例では、磁石ホルダ6は、非磁性部材で形成された矩形枠状の部材であり、左側磁石5Lと右側磁石5Rとが斜め方向DXに沿って並んだ状態で左側磁石5L及び右側磁石5Rを保持できるように構成されている。また、磁石ホルダ6は、左側磁石5Lと右側磁石5Rとの間の境界が境界面BDと一致するように左側磁石5L及び右側磁石5Rを保持できるように構成されている。図示例では、固定磁界発生部5は、磁石ホルダ6に接着固定されている。また、図示例では、左側磁石5L及び右側磁石5Rは、境界面BDを挟んで僅かな間隔を空けて対向するように配置されているが、左側磁石5Lと右側磁石5Rとが境界面BDで互いに接触するように配置されていてもよい。
【0027】
磁石ホルダ6を構成する非磁性部材は、例えば、非磁性金属である。好適には、非磁性金属としては、比較的比重の大きい金属が採用される。可動体MBの重量を大きくすることで可動体MBによってもたらされる振動力を大きくするためである。この場合、磁石ホルダ6は錘として機能する。但し、非磁性部材は、合成樹脂で形成されていてもよい。
【0028】
可動体MBは、支持部材7によって前後方向(X軸方向)及び左右方向(Y軸方向)のそれぞれに移動できるように支持されている。
【0029】
支持部材7は、固定体に対して可動体MBを移動可能に支持できるように構成されている。図示例では、支持部材7は、可動体MBが左右方向(Y軸方向)に沿って第1固有振動数で振動するとともに前後方向(X軸方向)に沿って第1固有振動数よりも大きい第2固有振動数で振動するように可動体MBを支持している。なお、第1固有振動数及び第2固有振動数は、可動体MBの重量及び支持部材7の形状等によって決まる値であり、可動体MBの重量及び支持部材7の形状等を変更することによって任意に設定され得る。
【0030】
図示例では、支持部材7は、金属板にプレス加工等を施すことによって作製される板ばねであり、左側支持部材7L及び右側支持部材7Rを含む。具体的には、支持部材7は、
図4の下図に示すように、箱状体2の側板部2Aと磁石ホルダ6の突出部6Pとの間に配置されるV字状の弾性部材である。
【0031】
磁石ホルダ6の突出部6Pは、支持部材7の一端部が固定される部分である。具体的には、突出部6Pは、
図4の上図に示すように、左側支持部材7Lの一端部(内側(Y2側)の端部)が固定される左側突出部6PL、及び、右側支持部材7Rの一端部(内側(Y1側)の端部)が固定される右側突出部6PRを含む。
【0032】
より具体的には、左側突出部6PLは、
図5の上図及び下図に示すように、磁石ホルダ6の本体部6M(突出部6P以外の部分)の左端部から左方に突出し、且つ、上方及び下方のそれぞれに突出するように構成されている。そして、
図5の下図に示すように、左側突出部6PLの上面と本体部6Mの上面との間には左上側端面S1Lが形成され、左側突出部6PLの下面と本体部6Mの下面との間には左下側端面S2Lが形成されている。また、右側突出部6PRの上面と本体部6Mの上面との間には右上側端面S1Rが形成され、右側突出部6PRの下面と本体部6Mの下面との間には右下側端面S2Rが形成されている。そして、左上側端面S1L、右上側端面S1R、左下側端面S2L、及び右下側端面S2Rのそれぞれは、境界面BDと平行に延びるように構成されている。具体的には、左上側端面S1Lは、上側コイル4Uの左上側束線部40ULと平行に延びるように構成され、右上側端面S1Rは、上側コイル4Uの右上側束線部40URと平行に延びるように構成されている。左下側端面S2L及び右下側端面S2Rについても同様である。
【0033】
左上側端面S1Lは、
図5の下図に示すように、上下方向(Z軸方向)における長さ(高さ)が、上側コイル4Uの下面と本体部6Mの上面との間の間隔GUと略同じになるように形成されている。右上側端面S1Rについても同様である。また、左下側端面S2Lは、
図5の下図に示すように、上下方向(Z軸方向)における長さ(高さ)が、下側コイル4Dの上面と本体部6Mの下面との間の間隔GDと略同じになるように形成されている。右下側端面S2Rについても同様である。
【0034】
コイル4の束線部40は、上側コイル4Uの上側束線部40U、及び、下側コイル4Dの下側束線部40D(
図6参照)を含む。上側コイル4Uの上側束線部40Uは、左上側束線部40UL及び右上側束線部40URを含む。下側コイル4Dの下側束線部40Dは、左下側束線部40DL(
図6参照)及び右下側束線部40DR(
図6参照)を含む。
【0035】
束線部40は、コイル4を構成している導電線が直線状に配置される部分である。
図5の上図では、明瞭化のため、上側束線部40Uにはドットパターンが付されている。後掲の
図7及び
図9においても同様である。
【0036】
磁石ホルダ6は、
図5の上図に示すように、斜め方向DXにおける左上側端面S1Lと上側コイル4Uの左上側束線部40ULとの間の距離が距離DS1となるように、且つ、斜め方向DXにおける右上側端面S1Rと上側コイル4Uの右上側束線部40URとの間の距離が距離DS2となるように構成されている。なお、図示例では、振動発生装置101の初期状態において、距離DS1と距離DS2とは同じ大きさを有する。振動発生装置101の初期状態は、コイル4に電流が供給されていないときの振動発生装置101の状態を意味する。また、
図5の上図では不可視であるが、磁石ホルダ6は、斜め方向DXにおける左下側端面S2Lと下側コイル4Dの左下側束線部40DLとの間の距離も距離DS1となるように、且つ、斜め方向DXにおける右下側端面S2Rと下側コイル4Dの右下側束線部40DRとの間の距離も距離DS2となるように構成されている。
【0037】
この構成は、可動体MBが第1振動軸VA1に沿って左右方向に移動したときにコイル4と支持部材7とが接触するのを防止しながらも、左上側端面S1L、右上側端面S1R、左下側端面S2L、及び右下側端面S2Rのそれぞれと境界面BDとが平行でない場合に比べ、左右方向における可動体MBの可動範囲を大きくできるという効果をもたらす。
【0038】
なお、
図5の上図では、破線で表される図形G4Lは、第1振動軸VA1に沿って可動体MBが最も右方(Y2方向)に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示し、破線で表される図形G4Rは、第1振動軸VA1に沿って可動体MBが最も左方(Y1方向)に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示す。なお、二点鎖線で表される図形G4Fは、第2振動軸VA2に沿って可動体MBが最も後方(X2方向)に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示し、二点鎖線で表される図形G4Bは、第2振動軸VA2に沿って可動体MBが最も前方(X1方向)に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示す。
【0039】
磁石ホルダ6は、
図4の上図に示すように、中心軸CXに関して上面視で二回回転対称となるように構成されている。そして、左側支持部材7L及び右側支持部材7Rは、中心軸CXに関して上面視で二回回転対称となるように配置されてそれぞれの一端部が磁石ホルダ6に取り付けられている。
【0040】
振動発生装置101の中心軸CXは、Z軸方向に平行に延びる軸であり、振動発生装置101は、第1振動軸VA1及び第2振動軸VA2のそれぞれと中心軸CXとが互いに直交するように構成されている。そのため、この構成は、第1振動軸VA1及び第2振動軸VA2のそれぞれに沿った可動体MBの振動を安定化させることができるという効果をもたらす。
【0041】
また、左側支持部材7Lの他端部(外側(Y1側)の端部)は、箱状体2の第2側板部2A2の内面に固定されている。右側支持部材7Rの他端部(外側(Y2側)の端部)は、箱状体2の第4側板部2A4の内面に固定されている。
【0042】
支持部材7の端部には、ハードストップ8が取り付けられている。ハードストップ8は、支持部材7と他の部材とが直接的に接触するのを防止するための部材である。図示例では、ハードストップ8は、左側支持部材7Lに取り付けられる左側ハードストップ8Lと、右側支持部材7Rに取り付けられる右側ハードストップ8Rとを含む。なお、ハードストップ8は、例えば、ステンレス製材料からなる。
【0043】
左側ハードストップ8Lは、左側支持部材7Lの外端部の外面(Y1側の面)と第2側板部2A2の内面(Y2側の面)との間に取り付けられる第1左側ハードストップ8L1と、左側支持部材7Lの外端部の内面(Y2側の面)に取り付けられる第2左側ハードストップ8L2と、左側支持部材7Lの内端部の外面(Y1側の面)に取り付けられる第3左側ハードストップ8L3とを含む。
【0044】
そして、第1左側ハードストップ8L1は、左側支持部材7Lの外端部の外面と第2側板部2A2の内面とが互いに直接的に接触するのを防止できるように構成されている。また、第2左側ハードストップ8L2及び第3左側ハードストップ8L3は、左側支持部材7Lの外端部の内面と左側支持部材7Lの内端部の外面とが互いに直接的に接触するのを防止できるように構成されている。
【0045】
同様に、右側ハードストップ8Rは、右側支持部材7Rの外端部の外面と第4側板部2A4の内面との間に取り付けられる第1右側ハードストップ8R1と、右側支持部材7Rの外端部の内側に取り付けられる第2右側ハードストップ8R2と、右側支持部材7Rの内端部の外側に取り付けられる第3右側ハードストップ8R3とを含む。
【0046】
そして、第1右側ハードストップ8R1は、右側支持部材7Rの外端部の外面と第4側板部2A4の内面とが互いに直接的に接触するのを防止できるように構成されている。また、第2右側ハードストップ8R2及び第3右側ハードストップ8R3は、右側支持部材7Rの外端部の内面と右側支持部材7Rの内端部の外面とが互いに直接的に接触するのを防止できるように構成されている。
【0047】
また、ハードストップ8は、左右方向における可動体MBの過度の移動を抑制するストッパとして機能するように構成されている。
【0048】
次に、
図6及び
図7を参照し、駆動手段DMの詳細について説明する。
図6は、振動発生装置101の断面図である。具体的には、
図6は、
図1の下図の一点鎖線(切断線VI-VI)を含むYZ平面に平行な平面における振動発生装置101の断面を矢印で示すようにX1側から見たときの図である。
図7は、可動体MB、コイル4、及び支持部材7の上面図であり、
図5の上図に対応している。具体的には、
図7の上図は、点線矢印AR1で示すように上側コイル4Uにおいて上面視で反時計回りに電流が流れたときに駆動手段DMによって生成される駆動力(推力)を黒いブロック矢印で示す。
図7の下図は、点線矢印AR11で示すように上側コイル4Uにおいて上面視で時計回りに電流が流れたときに駆動手段DMによって生成される推力を黒いブロック矢印で示す。
【0049】
駆動手段DMは、推力を生成することによって可動体MBを振動軸VAに沿って振動させることができるように構成されている。本実施形態では、駆動手段DMは、制御部CTRを通じてコイル4に供給される電流の向き及び大きさに応じた電磁力を利用し、可動体MB(固定磁界発生部5)を振動軸VAに沿って振動させることができるように構成されている。具体的には、駆動手段DMは、
図7に示すように、斜め方向DXに沿った推力(黒いブロック矢印参照)を発生させることにより、可動体MBを第1振動軸VA1及び第2振動軸VA2のそれぞれに沿って振動させることができるように構成されている。
【0050】
典型的には、駆動手段DMは、
図6に示すように、コイル4及び固定磁界発生部5で構成されている。より具体的には、駆動手段DMは、蓋体1、箱状体2(底板部2B)、及び固定磁界発生部5で構成される磁気回路と、その磁気回路によって形成される磁界が貫通するように配置されたコイル4とによって構成されている。制御部CTRは、コイル4に交流電流を流すことによって交番磁界を発生させる。交流電流が供給されるコイル4は交番磁界発生部として機能する。コイル4が発生させる交番磁界は、向きが交互に変化する磁界を意味し、固定磁界発生部5が発生させる固定磁界は、向きが固定された磁界を意味する。
【0051】
図6は、固定磁界発生部5が発生させる固定磁界の向きを表す磁束線の一部を破線矢印で示している。
図6の破線矢印で示すように、コイル4は、振動発生装置101の初期状態において、固定磁界発生部5が発生させる磁束が束線部40を垂直に貫通するように配置されている。すなわち、コイル4は、振動発生装置101の初期状態において、束線部40を構成する導電線の延在方向と磁束線の延在方向と駆動手段DMが発生させる電磁力の方向とが互いに垂直になるように配置されている。
【0052】
制御部CTRは、
図7の上図における点線矢印AR1で示すように、上側コイル4Uにおいて上面視で反時計回りに電流が流れるように上側コイル4Uに電流を供給することにより、黒いブロック矢印で示す推力を発生させることができる。
【0053】
具体的には、制御部CTRは、黒いブロック矢印AR2で表されるローレンツ力に基づく電磁力を上側コイル4Uの左上側束線部40ULに作用させることができ、且つ、黒いブロック矢印AR3で表されるローレンツ力に基づく電磁力を上側コイル4Uの右上側束線部40URに作用させることができる。
【0054】
同様に、制御部CTRは、
図7の下図における点線矢印AR11で示すように、上側コイル4Uにおいて上面視で時計回りに電流が流れるように上側コイル4Uに電流を供給することにより、黒いブロック矢印で示す推力を発生させることができる。
【0055】
具体的には、制御部CTRは、黒いブロック矢印AR12で表されるローレンツ力に基づく電磁力を上側コイル4Uの左上側束線部40ULに作用させることができ、且つ、黒いブロック矢印AR13で表されるローレンツ力に基づく電磁力を上側コイル4Uの右上側束線部40URに作用させることができる。
【0056】
なお、電磁力が作用する上側コイル4Uは、蓋体1の下面に接着材等で固定されているため、固定体(蓋体1)に対して相対移動できない。そのため、固定体(蓋体1)に対して相対移動可能な可動体MBが上側コイル4Uの代わりに移動する。具体的には、可動体MBは、ローレンツ力に基づく電磁力の反力を受け、支持部材7としての板ばねの反発力に逆らいながら、斜め方向DXにおいて電磁力の向きとは反対の向きに移動しようとする。
【0057】
このときの可動体MBの移動方向は、上側コイル4Uに供給される交流電流の周波数に応じて異なる。支持部材7は、第1固有振動数f1で振動するときに第1振動軸VA1に沿った方向(Y軸方向)における振動が支配的となる一方で、第2固有振動数f2で振動するときには第2振動軸VA2に沿った方向(X軸方向)における振動が支配的となるためである。
【0058】
具体的には、交流電流の周波数と第1固有振動数f1とが等しい場合、可動体MBは、斜め方向DXに沿った電磁力の反力を受け、白いブロック矢印で示すように、第1振動軸VA1に沿った方向(Y軸方向)に振動する。より具体的には、可動体MBは、
図7の上図における点線矢印AR1で示すように、上側コイル4Uにおいて上面視で反時計回りに電流が流れるように上側コイル4Uに電流が供給されているときには、白いブロック矢印AR4で示す向き(右方)に移動する。破線で表される図形G4Lは、可動体MBが右方に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示す。また、可動体MBは、
図7の下図における点線矢印AR11で示すように、上側コイル4Uにおいて上面視で時計回りに電流が流れるように上側コイル4Uに電流が供給されているときには、白いブロック矢印AR14で示す向き(左方)に移動する。破線で表される図形G4Rは、可動体MBが左方に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示す。
【0059】
一方、交流電流の周波数と第2固有振動数f2とが等しい場合には、可動体MBは、斜め方向DXに沿った電磁力の反力を受け、斜線パターンが付されたブロック矢印で示すように、第2振動軸VA2に沿った方向(X軸方向)に振動する。より具体的には、可動体MBは、
図7の上図における点線矢印AR1で示すように、上側コイル4Uにおいて上面視で反時計回りに電流が流れるように上側コイル4Uに電流が供給されているときには、ブロック矢印AR5で示す向き(後方)に移動する。二点鎖線で表される図形G4Fは、可動体MBが後方に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示す。また、可動体MBは、
図7の下図における点線矢印AR11で示すように、上側コイル4Uにおいて上面視で時計回りに電流が流れるように上側コイル4Uに電流が供給されているときには、ブロック矢印AR15で示す向き(前方)に移動する。二点鎖線で表される図形G4Bは、可動体MBが前方に移動したときの、可動体MBに対する上側コイル4Uの位置を示す。
【0060】
なお、上述の説明は、上側コイル4Uに交流電流が流れるときの可動体MBの動きに関するが、下側コイル4Dに交流電流が流れるときの可動体MBの動きに対しても同様に適用される。また、図示例では、制御部CTRは、上側コイル4U及び下側コイル4Dのそれぞれに同時に交流電流を供給して可動体MBを効率的に振動させることができるように構成されている。すなわち、制御部CTRは、上側束線部40Uに作用する推力の向きと下側束線部40Dに作用する推力の向きとが同じになるように上側コイル4U及び下側コイル4Dのそれぞれに同時に交流電流を供給して可動体MBを効率的に振動させることができるように構成されている。
【0061】
このように、制御部CTRは、第1固有振動数f1に対応する周波数を有する交流電流をコイル4に供給することにより、可動体MBを第1振動軸VA1に沿って振動させることができ、且つ、第2固有振動数f2に対応する周波数を有する交流電流をコイル4に供給することにより、可動体MBを第2振動軸VA2に沿って振動させることができる。また、支持部材7は、コイル4に供給される交流電流の周波数に応じて可動体MBの移動方向が異なるように可動体MBを支持している。
【0062】
図8は、コイル4に供給される交流電流の周波数とそのときの可動体MBの振動の大きさ(加速度)との関係を示すグラフである。
図8では、横軸に周波数が配され、縦軸に加速度が配されている。
【0063】
図8に示す例では、制御部CTRは、支持部材7の第1固有振動数f1と同じ周波数を有する交流電流をコイル4に供給することにより、第1振動軸VA1に沿って加速度AC1の大きさで可動体MBを振動させることができる。また、制御部CTRは、支持部材7の第2固有振動数f2と同じ周波数を有する交流電流をコイル4に供給することにより、第2振動軸VA2に沿って加速度AC2の大きさで可動体MBを振動させることができる。なお、
図8に示す例では、第1固有振動数f1は、第2固有振動数f2よりも小さい。また、
図8に示す例では、振動発生装置101は、第1振動軸VA1に沿った可動体MBの振動の大きさ(加速度AC1)と第2振動軸VA2に沿った可動体MBの振動の大きさ(加速度AC2)とが略等しくなるように構成されている。但し、第1振動軸VA1に沿った可動体MBの振動の大きさ(加速度AC1)と第2振動軸VA2に沿った可動体MBの振動の大きさ(加速度AC2)との大小関係は、第1振動軸VA1と斜め方向DXとの間に形成される角度α(
図4の上図参照)を変更することによって調整され得る。
【0064】
例えば、図示例では、振動発生装置101は、例えば、5°以上45°以下の範囲内の角度に設定される角度αを45°に近付けるほど、加速度AC1よりも大きい加速度AC2と加速度AC1との間の差が大きくなるように構成されている。
【0065】
次に、
図9を参照し、コイル4及び固定磁界発生部5のそれぞれの望ましい形状について説明する。
図9は、上側コイル4U及び固定磁界発生部5の概略上面図である。具体的には、
図9の上段は、略正方形の上端面を有する固定磁界発生部5と略正方形環状の上側コイル4Uとの組み合わせを示す。
図9の中段は、略正方形の上端面を有する固定磁界発生部5と略長方形環状の上側コイル4Uとの組み合わせを示す。
図9の下段は、略長方形の上端面を有する固定磁界発生部5と略長方形環状の上側コイル4Uとの組み合わせを示す。
【0066】
また、
図9の上段及び中段に示す略正方形の上端面を有する固定磁界発生部5は、直角二等辺三角形の上端面を有するN極部分5Nと直角二等辺三角形の上端面を有するS極部分5Sとを含む。
【0067】
図9の上段に示す構成では、上側コイル4Uは、四つの上側束線部40U(後上側束線部40UB、前上側束線部40UF、左上側束線部40UL、及び右上側束線部40UR)を有する。四つの上側束線部40Uは、上面視で正方形の固定磁界発生部5の各辺に沿って延びるように配置されている。すなわち、四つの上側束線部40Uは、それぞれの延在方向が固定磁界発生部5を構成する磁石のN極部分5NとS極部分5Sとの間の境界に対応する面である境界面BDに対して非平行となるように配置されている。
【0068】
この構成では、境界面BDに垂直な方向である斜め方向DXに沿って推力を発生させて可動体MB(固定磁界発生部5)を移動させる際に、四つの上側束線部40Uのそれぞれに作用する電磁力の一部が互いに相殺し合ってしまう。そのため、この構成は、駆動力を効率的に発生させることができない。
【0069】
図9の中段に示す構成では、上側コイル4Uは、二つの上側束線部40U(左上側束線部40UL及び右上側束線部40UR)を有する。二つの上側束線部40Uは、上面視で境界面BDに沿って延びるように配置されている。すなわち、二つの上側束線部40Uは、それぞれの延在方向が境界面BDに対して平行となるように配置されている。
【0070】
この構成では、N極部分5Nの大部分(範囲ZRを含む部分)が上側コイル4Uと対向しておらず、且つ、S極部分5Sの大部分(範囲ZLを含む部分)が上側コイル4Uと対向していない。そのため、この構成は、駆動力を効率的に発生させることができない。
【0071】
図9の上段及び中段のそれぞれに示す構成に対し、
図9の下段に示す構成では、二つの上側束線部40Uは、上面視で境界面BDに沿って延びるように配置されている。すなわち、二つの上側束線部40Uは、それぞれの延在方向が境界面BDに対して平行となるように配置されている。そして、N極部分5N及びS極部分5Sのそれぞれの上端面は、その大部分が上側コイル4Uに対向するように、長方形となるように構成されている。具体的には、N極部分5N及びS極部分5Sのそれぞれの上端面は、斜め方向DXに平行な一対の短辺と斜め方向DXに垂直な一対の長辺とを有する長方形状を有するように構成されている。
【0072】
図5の上図に示すような本発明の実施形態に係る構成は、
図9の下段に概略的に示す構成に対応するものであり、
図9の上段及び中段のそれぞれに示す構成に比べ、駆動力を効率的に発生させることができるという効果をもたらす。上側束線部40Uのそれぞれの延在方向が境界面BDに対して平行となるように配置されているためである。また、N極部分5Nの大部分が上側コイル4Uと対向し、且つ、S極部分5Sの大部分が上側コイル4Uと対向するように構成されているためである。
【0073】
次に、
図10を参照し、第1振動軸VA1と斜め方向DXとの間に形成される角度αの望ましい大きさについて説明する。
図10は、上側コイル4U、固定磁界発生部5、及び磁石ホルダ6の概略上面図である。具体的には、
図10の上段左図、中段左図、及び下段左図のそれぞれは、境界面BDに平行に延びる左上側束線部40UL及び右上側束線部40URを含む上側コイル4Uと、直角二等辺三角形の上端面を有するN極部分5Nと直角二等辺三角形の上端面を有するS極部分5Sとを含む正方形の上端面を有する固定磁界発生部5と、前後方向の長さが値DTである磁石ホルダ6との組み合わせを示す。
図10の上段右図、中段右図、及び下段右図のそれぞれは、境界面BDに平行に延びる左上側束線部40UL及び右上側束線部40URを含む上側コイル4Uと、長方形の上端面を有するN極部分5Nと長方形の上端面を有するS極部分5Sとを含む正方形の上端面を有する固定磁界発生部5と、前後方向の長さが値DTである磁石ホルダ6との組み合わせを示す。
【0074】
また、
図10の上段左図及び上段右図は、角度αの大きさが15°の構成を示し、
図10の中段左図及び中段右図は、角度αの大きさが30°の構成を示し、
図10の下段左図及び下段右図は、角度αの大きさが45°の構成を示す。
【0075】
なお、
図10の上段左図、上段右図、中段左図、中段右図、下段左図、及び下段右図のそれぞれにおける上側コイル4Uは、同じ形状及び同じ大きさを有する。そして、
図10の上段左図及び上段右図のそれぞれにおける上側コイル4Uは配置方向が同じであり、
図10の中段左図及び中段右図のそれぞれにおける上側コイル4Uは配置方向が同じであり、
図10の下段左図及び下段右図のそれぞれにおける上側コイル4Uは配置方向が同じである。すなわち、
図10の上段左図、上段右図、中段左図、中段右図、下段左図、及び下段右図のそれぞれにおける上側コイル4Uは、左上側束線部40UL及び右上側束線部40URのそれぞれが境界面BDに平行に延びるように配置されている。
【0076】
図10の上段左図、中段左図、及び下段左図は、磁石ホルダ6の前後方向における長さが同じ値DTを有する場合、角度αが大きくなるほど大きなサイズの固定磁界発生部5を磁石ホルダ6が搭載できることを示している。具体的には、
図10の上段左図に示す構成では、磁石ホルダ6は、一辺の長さが値LT1である正方形の上端面を有する固定磁界発生部5を搭載できる。また、
図10の中段左図に示す構成では、磁石ホルダ6は、一辺の長さが値LT2(>値LT1)である正方形の上端面を有する固定磁界発生部5を搭載できる。また、
図10の下段左図に示す構成では、磁石ホルダ6は、一辺の長さが値LT3(>値LT2)である正方形の上端面を有する固定磁界発生部5を搭載できる。
【0077】
一方で、
図10の上段右図、中段右図、及び下段右図は、磁石ホルダ6の前後方向における長さが同じ値DTを有する場合、角度αが小さくなるほど大きなサイズの固定磁界発生部5を磁石ホルダ6が搭載できることを示している。具体的には、
図10の下段右図に示す構成では、磁石ホルダ6は、一辺の長さが値LT4である正方形の上端面を有する固定磁界発生部5を搭載できる。
図10の中段右図に示す構成では、磁石ホルダ6は、一辺の長さが値LT5(>値LT4)である正方形の上端面を有する固定磁界発生部5を搭載できる。
図10の上段右図に示す構成では、磁石ホルダ6は、一辺の長さが値LT6(>値LT5)である正方形の上端面を有する固定磁界発生部5を搭載できる。
【0078】
また、
図10の上段右図に示す構成における固定磁界発生部5の一辺の長さの値LT6は、
図10の上段左図に示す構成における固定磁界発生部5の一辺の長さの値LT1よりも大きい。すなわち、角度αが15°の場合には、
図10の上段右図に示す構成(N極部分5N及びS極部分5Sのそれぞれが長方形の上端面を有する構成)は、
図10の上段左図に示す構成(N極部分5N及びS極部分5Sのそれぞれが直角二等辺三角形の上端面を有する構成)に比べ、固定磁界発生部5のサイズを大きくできるという効果をもたらす。この効果は、磁石ホルダ6の前後方向の長さが大きくなるのを抑えながら駆動力を増大できることを意味する。
【0079】
上述のように、本発明の実施形態に係る振動発生装置101は、
図2に示すように、固定体(筐体HS)と、固定体(筐体HS)内に収納された可動体MBと、可動体MBを左右方向(Y軸方向)に沿って第1固有振動数f1で振動可能に支持するとともに前後方向(X軸方向)に沿って第1固有振動数f1よりも大きい第2固有振動数f2で振動可能に支持する支持部材7と、可動体MBに取り付けられるとともに、左右方向(Y軸方向)と前後方向(X軸方向)の間の斜め方向DXに沿って並設され上下方向(Z軸方向)に延びる磁界を発生させるS極部分5S及びN極部分5Nを有する固定磁界発生部5と、固定体(筐体HS)に取り付けられるとともに、斜め方向DXに沿って固定磁界発生部5に対して可動体MBを一方向に相対移動させる駆動力と他方向に相対移動させる駆動力とが交互に発生するよう交番磁界を発生させる交番磁界発生部(コイル4)とを有する。そして、振動発生装置101は、
図4の上図に示すように、上面視において斜め方向DXと左右方向(第1振動軸VA1の軸方向(Y軸方向))との間の角度αが45°未満となるように構成されている。なお、
図2に示す例では、固定磁界発生部5は、可動体MBに取り付けられているが、固定体(筐体HS)に取り付けられていてもよい。この場合、交番磁界発生部(コイル4)は、可動体MBに取り付けられていてもよい。
【0080】
この構成は、左右方向の振動(加速度)の大きさと前後方向の振動(加速度)の大きさとの間の適切なバランスを実現できる。例えば、この構成は、
図8に示すように、左右方向の振動(加速度AC1)の大きさと前後方向の振動(加速度AC2)の大きさとを略同じにすることができる。なお、
図8に示す例では、振動発生装置101は、可動体MBが第1固有振動数f1で左右方向(Y軸方向)に振動し、第1固有振動数f1よりも大きい第2固有振動数f2で前後方向(X軸方向)に振動するように構成されている。
【0081】
固定磁界発生部5は、
図9の下段に示すように、斜め方向DXに平行な一対の短辺と斜め方向DXに垂直な一対の長辺とを有する長方形状の表面を有するS極部分5S、及び、斜め方向DXに平行な一対の短辺と斜め方向DXに垂直な一対の長辺とを有する長方形状の表面を有するN極部分5Nが斜め方向DXに並設されてなる四角形状を有していてもよい。なお、固定磁界発生部5は、例えば束線部40がより短くてより幅広である場合には、斜め方向DXに平行な一対の長辺と斜め方向DXに垂直な一対の短辺とを有する長方形状の表面を有するS極部分5S、及び、斜め方向DXに平行な一対の長辺と斜め方向DXに垂直な一対の短辺とを有する長方形状の表面を有するN極部分5Nが斜め方向DXに並設されてなる四角形状を有していてもよい。
【0082】
この構成は、例えば
図9の中段に示すような直角二等辺三角形の上端面を有するN極部分5Nと直角二等辺三角形の上端面を有するS極部分5Sとで構成される固定磁界発生部5を含む構成に比べ、駆動力をより効率的に発生させることができるという効果をもたらす。固定磁界発生部5の表面全体に占めるコイル4と対向する部分の割合を大きくできるためである。
【0083】
斜め方向DXと左右方向(第1振動軸VA1の軸方向(Y軸方向))との間の角度αは、望ましくは、5°以上40°以下である。また、斜め方向DXと左右方向(第1振動軸VA1の軸方向(Y軸方向))との間の角度αは、より望ましくは、30°以下であり、例えば、10°以上30°以下である。
【0084】
この構成(例えば
図10の上段右図及び中段右図参照)では、振動発生装置101は、角度αが45°となる構成(例えば
図10の下段右図参照)に比べ、発生可能な駆動力を大きくすることができるという効果をもたらす。この構成は、コイル4及び磁石ホルダ6のサイズを維持しながら、固定磁界発生部5のサイズを大きくできるためである。
【0085】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形又は置換等が適用され得る。また、上述の実施形態を参照して説明された特徴のそれぞれは、技術的に矛盾しない限り、適宜に組み合わされてもよい。
【0086】
例えば、上述の実施形態では、コイル4は、固定磁界発生部5の上側に配置される上側コイル4Uと、固定磁界発生部5の下側に配置される下側コイル4Dとを含むが、上側コイル4U及び下側コイル4Dの何れか一方は省略されてもよい。
【0087】
また、上述の実施形態では、上側コイル4Uは、一つの巻き線コイルで構成されているが、複数の巻き線コイルで構成されていてもよい。下側コイル4Dについても同様である。典型的には、上側コイル4Uを構成する巻き線コイルの数と下側コイル4Dを構成する巻き線コイルの数とは同じである。この場合、固定磁界発生部5は、巻き線コイルの数に対応する数の磁石で構成されていてもよい。また、この場合、複数の巻き線コイルのそれぞれは直列に接続されるが、並列に接続されていてもよい。すなわち、複数の巻き線コイルのそれぞれには別々に電流が供給されてもよい。また、複数の巻き線コイルは、複数の積層コイル又は複数の薄膜コイル等であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1・・・蓋体 2・・・箱状体 2A・・・側板部 2A1・・・第1側板部 2A2・・・第2側板部 2A3・・・第3側板部 2A4・・・第4側板部 2B・・・底板部 3・・・基板 3D・・・下側基板 3U・・・上側基板 4・・・コイル 4D・・・下側コイル 4U・・・上側コイル 5・・・固定磁界発生部 5L・・・左側磁石 5N・・・N極部分 5R・・・右側磁石 5S・・・S極部分 6・・・磁石ホルダ 6M・・・本体部 6P・・・突出部 6PL・・・左側突出部 6PR・・・右側突出部 7・・・支持部材 7L・・・左側支持部材 7R・・・右側支持部材 8・・・ハードストップ 8L・・・左側ハードストップ 8L1・・・第1左側ハードストップ 8L2・・・第2左側ハードストップ 8L3・・・第3左側ハードストップ 8R・・・右側ハードストップ 8R1・・・第1右側ハードストップ 8R2・・・第2右側ハードストップ 8R3・・・第3右側ハードストップ 30・・・端子部 30D・・・下側端子部 30D1・・・第1下側端子部 30D2・・・第2下側端子部 30D3・・・第3下側端子部 30D4・・・第4下側端子部 30U・・・上側端子部 30U1・・・第1上側端子部 30U2・・・第2上側端子部 30U3・・・第3上側端子部 30U4・・・第4上側端子部 40・・・束線部 40D・・・下側束線部 40DL・・・左下側束線部 40DR・・・右下側束線部 40U・・・上側束線部 40UB・・・後上側束線部 40UF・・・前上側束線部 40UL・・・左上側束線部 40UR・・・右上側束線部 101・・・振動発生装置 BD・・・境界面 CTR・・・制御部 CX・・・中心軸 DM・・・駆動手段 DX・・・斜め方向 HS・・・筐体 MB・・・可動体 S1L・・・左上側端面 S1R・・・右上側端面 S2L・・・左下側端面 S2R・・・右下側端面 VA・・・振動軸 VA1・・・第1振動軸 VA2・・・第2振動軸 VE・・・振動装置 ZL、ZR・・・範囲