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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003981
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】空中映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20230110BHJP
   G02B 5/124 20060101ALI20230110BHJP
   G02B 5/136 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/124
G02B5/136
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021105395
(22)【出願日】2021-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 雅彦
【テーマコード(参考)】
2H042
2H199
【Fターム(参考)】
2H042EA04
2H042EA11
2H042EA15
2H042EA21
2H199BA32
2H199BA45
2H199BA49
2H199BB10
2H199BB18
2H199BB20
(57)【要約】
【課題】空中映像が見える位置が分かりやすく他者からのぞき見されにくい空中映像表示装置を提供する。
【解決手段】映像表示器3と、ビームスプリッタ4と、再帰反射シート5と、再帰反射シート5の表面に設けられ、領域ごとに、光を透過する透過状態および光の透過を制限する制限状態の2つの状態を持った第一透過光制御シート6とを備え、第一透過光制御シート6のそれぞれの領域は、透過状態として観察者11に届く光を透過させる透過領域あるいは第一透過光制御シート6における透過領域を除く領域である被制御領域のいずれかであり、制御器8は、センサ7によって観察者11が検出されたときに、センサ7の出力に応じて第一透過光制御シート6の被制御領域を制限状態とし、センサ7によって観察者11が検出されていないときに、第一透過光制御シート6のすべての領域を透過状態とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像表示器と、
光を透過または反射させるビームスプリッタと、
前記映像表示器から出射され前記ビームスプリッタで反射された光を再帰反射させる再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの表面に設けられ、領域ごとに、光を透過する透過状態および光の透過を制限する制限状態の2つの状態を持った第一透過光制御シートと、
観察者の位置を検出するセンサと、
前記センサの出力に応じて、前記第一透過光制御シートのそれぞれの領域を前記透過状態または前記制限状態のいずれかに切り替える制御器とを備え、
前記第一透過光制御シートのそれぞれの領域は、前記透過状態として前記観察者に届く光を透過させる透過領域あるいは前記第一透過光制御シートにおける前記透過領域を除く領域である被制御領域のいずれかであり、
前記制御器は、
前記センサによって前記観察者が検出されたときに、前記センサの出力に応じて前記第一透過光制御シートの前記被制御領域を前記制限状態とし、
前記センサによって前記観察者が検出されていないときに、前記第一透過光制御シートのすべての領域を前記透過状態とすることを特徴とする空中映像表示装置。
【請求項2】
前記透過領域は前記第一透過光制御シートのあらかじめ定められた位置にあり、
前記制御器は、
前記センサにおいて前記透過領域を透過する光によって空中映像の全体を見ることができる位置に前記観察者が検出されたときに、前記第一透過光制御シートの前記被制御領域を前記制限状態とすることを特徴とする請求項1に記載の空中映像表示装置。
【請求項3】
前記第一透過光制御シートは、前記透過状態と前記制限状態との2つの状態を持った透過光制御素子がタイル状に並べられたものであり、
前記制御器は、
前記センサによって検出された前記観察者の位置情報をもとに、
前記観察者に届く光を透過する前記第一透過光制御シートの領域を前記透過領域に設定し、前記透過領域を除く前記第一透過光制御シートの領域を前記被制御領域に設定し、前記透過領域にある前記透過光制御素子を前記透過状態とし、前記被制御領域にある前記透過光制御素子を前記制限状態とすることを特徴とする請求項1に記載の空中映像表示装置。
【請求項4】
前記第一透過光制御シートは、
光を透過する前記透過状態と光の透過を制限する前記制限状態との2つの状態を持った帯状の第一帯状シートが互いの長辺を接して並べられた第一シート層と、
光を透過する前記透過状態と光の透過を制限する前記制限状態との2つの状態を持った帯状の第二帯状シートが互いの長辺を接して並べられた第二シート層とが、
前記第一帯状シートの長辺に沿った方向と前記第二帯状シートの長辺に沿った方向とが異なった方向で重ねられたものであり、
前記制御器は、
前記センサによって検出された前記観察者の位置情報をもとに、
前記観察者に届く光を透過させる前記第一シート層の領域を第一透過領域に設定し、前記第一透過領域を除く前記第一シート層の領域を第一被制御領域に設定し、前記第一透過領域にある前記第一帯状シートを前記透過状態とし、前記第一被制御領域にある前記第一帯状シートを前記制限状態とし、
前記観察者に届く光を透過させる前記第二シート層の領域を第二透過領域に設定し、前記第二透過領域を除く前記第二シート層の領域を第二被制御領域に設定し、前記第二透過領域にある前記第二帯状シートを前記透過状態とし、前記第二被制御領域にある前記第二帯状シートを前記制限状態とすることを特徴とする請求項1に記載の空中映像表示装置。
【請求項5】
前記第一透過光制御シートは、前記制限状態において透過する光を遮断することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空中映像表示装置。
【請求項6】
前記第一透過光制御シートは、前記制限状態において透過する光を散乱させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空中映像表示装置。
【請求項7】
前記第一透過光制御シートは、前記制限状態において透過する光を減衰させることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の空中映像表示装置。
【請求項8】
映像表示器と、
光を透過または反射させるビームスプリッタと、
前記映像表示器から出射され前記ビームスプリッタで反射された光を再帰反射させる再帰反射シートと、
前記ビームスプリッタの前記再帰反射シートに向かい合う面と反対側の表面に設けられ、領域ごとに、光を透過する透過状態および光の透過を制限する制限状態の2つの状態を持った第二透過光制御シートと、
観察者の位置を検出するセンサと、
前記センサの出力に応じて、前記第二透過光制御シートのそれぞれの領域を前記透過状態または前記制限状態のいずれかに切り替える制御器とを備え、
前記第二透過光制御シートのそれぞれの領域は、前記透過状態として前記観察者に届く光を透過させる透過領域あるいは前記第二透過光制御シートにおける前記透過領域を除く領域である被制御領域のいずれかであり、
前記制御器は、
前記センサによって前記観察者が検出されたときに、前記センサの出力に応じて前記第二透過光制御シートの前記被制御領域を前記制限状態とし、
前記センサによって前記観察者が検出されていないときに、前記第二透過光制御シートの前記被制御領域を前記透過状態とすることを特徴とする空中映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、空中映像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特殊なメガネが不要で、霧などのスクリーンを使用せずに空中に映像を表示することができる空中映像表示装置が知られている。例えば、ビームスプリッタと再帰反射シートとを用いて、映像表示器に表示された映像をビームスプリッタに対して面対称な位置の空間に結像させて映像を表示する空中映像表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-25776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された空中映像表示装置では、空中に表示された映像(以下、空中映像と記す)を観察する観察者の位置として、空中映像の全体が見える観察位置が存在する。観察位置から観察者が見る空中映像の視点の先には、ビームスプリッタおよび再帰反射シートが存在する。これに対して、観察位置の外から観察者が見る空中映像の視点の先にはビームスプリッタまたは再帰反射シートの少なくとも一方が存在しないため、観察位置の外から観察者が見る空中映像は端部が切れた映像となる。空中映像の全体を見ようとする観察者は、観察位置を探しながら移動することとなる。
【0005】
空中映像の全体を見ようとする観察者は、観察位置を探しながら移動することとなるので、観察位置はなるべく広い方が、すなわち、ビームスプリッタおよび再帰反射シートはなるべく大きい方が、空中映像が見える位置が分かりやすい。一方、観察位置において空中映像表示装置を操作している観察者にとっては、観察位置が広いと他者からのぞき見されるため、観察位置はなるべく狭い方が、すなわち、ビームスプリッタおよび再帰反射シートはなるべく小さい方が良い。そのため、空中映像が見える位置が分かりやすく、さらに、他者からのぞき見されにくい空中映像表示装置の実現が困難であるという課題があった。
【0006】
本願は、上述の課題を解決するためになされたものであり、空中映像が見える位置が分かりやすく、他者からのぞき見されにくい空中映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される空中映像表示装置は、映像表示器と、光を透過または反射させるビームスプリッタと、映像表示器から出射されビームスプリッタで反射された光を再帰反射させる再帰反射シートと、再帰反射シートの表面に設けられ、領域ごとに、光を透過する透過状態および光の透過を制限する制限状態の2つの状態を持った第一透過光制御シートと、観察者の位置を検出するセンサと、センサの出力に応じて、第一透過光制御シートのそれぞれの領域を透過状態または制限状態のいずれかに切り替える制御器とを備え、第一透過光制御シートのそれぞれの領域は、透過状態として観察者に届く光を透過させる透過領域あるいは第一透過光制御シートにおける透過領域を除く領域である被制御領域のいずれかであり、制御器は、センサによって観察者が検出されたときに、センサの出力に応じて第一透過光制御シートの被制御領域を制限状態とし、センサによって観察者が検出されていないときに、第一透過光制御シートのすべての領域を透過状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本願に開示される空中映像表示装置は、映像表示器と、光を透過または反射させるビームスプリッタと、映像表示器から出射されビームスプリッタで反射された光を再帰反射させる再帰反射シートと、再帰反射シートの表面に設けられ、領域ごとに、光を透過する透過状態および光の透過を制限する制限状態の2つの状態を持った第一透過光制御シートと、観察者の位置を検出するセンサと、センサの出力に応じて、第一透過光制御シートのそれぞれの領域を透過状態または制限状態のいずれかに切り替える制御器とを備え、第一透過光制御シートのそれぞれの領域は、透過状態として観察者に届く光を透過させる透過領域あるいは第一透過光制御シートにおける透過領域を除く領域である被制御領域のいずれかであり、制御器は、センサによって観察者が検出されたときに、センサの出力に応じて第一透過光制御シートの被制御領域を制限状態とし、センサによって観察者が検出されていないときに、第一透過光制御シートのすべての領域を透過状態とするので、空中映像が見える位置が分かりやすく、他者からのぞき見されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1による空中映像表示装置の模式図である。
図2】実施の形態1による第一透過光制御シートの一例を示す図である。
図3】実施の形態1による第一透過光制御シートの一例を示す図である。
図4】実施の形態1による第一透過光制御シートの一例を示す図である。
図5】実施の形態1による第一透過光制御シートにおける透過領域の設定方法を説明するための図である。
図6】実施の形態2による空中映像表示装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る空中映像表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1による空中映像表示装置1の模式図である。空中映像表示装置1は、筐体2と、筐体2の内部に配置された映像表示器3と、筐体2の開口部に設けられたビームスプリッタ4と、筐体2の内部に配置された再帰反射シート5と、透過状態および制限状態の2つの状態を持つ第一透過光制御シート6と、観察者11の位置を検出するセンサ7と、センサ7の出力に応じて第一透過光制御シート6を制御する制御器8とを備えている。映像表示器3は、例えばディスプレイである。映像表示器3から出射された光はビームスプリッタ4に入射し、その一部が反射されて第一透過光制御シート6を透過して再帰反射シート5に入射する。再帰反射シート5は、入射した光を入射方向へ反射する特性を有している。再帰反射シート5は、ビームスプリッタ4から入射した光をビームスプリッタ4に向かって反射させる。再帰反射シート5からビームスプリッタ4に向かって反射された光は、再び第一透過光制御シート6を透過して、一部がビームスプリッタ4を透過する。このようにして、映像表示器3から出射された光は、ビームスプリッタ4を通過して筐体2の外側で結像され、空中映像10となる。観察者11は、この空中映像10を観察することができる。
【0012】
センサ7は、観察者の位置を検出するものであり、例えば、空間領域内の物体の位置を検出する三次元距離センサである。三次元距離センサとしては、例えば、ToFセンサ(Time of Flight Sensor)、ステレオカメラなどを用いることができる。センサ7は、例えば、観察者11の目の位置を検出してもよい。センサ7によって複数の人が検出されたときは、例えば、空中映像10の中心とビームスプリッタ4の中心を結ぶ直線に目の位置が最も近い人を観察者11としてもよく、空中映像10の中心と再帰反射シート5の中心を結ぶ直線に目の位置が最も近い人を観察者11としてもよく、目の位置が空中映像10に最も近い人を観察者11としてもよい。また、センサ7は、例えば、観察者11の手あるいは指の位置を検出してもよい。観察者11の手あるいは指が空中映像10を含むあらかじめ定められたエリアにある場合、観察者11が空中映像表示装置1を操作していると判断することができる。
【0013】
第一透過光制御シート6は、再帰反射シート5の表面に設けられ、領域ごとに、光を透過する透過状態と、光の透過を制限する制限状態との、2つの状態を持つものである。制御器8は、センサ7の出力に応じて、第一透過光制御シート6のそれぞれの領域の2つの状態を制御する。第一透過光制御シート6において、観察者11に届く光を透過させる領域を透過領域とし、透過領域を除く領域を被制御領域としたときに、制御器8は、例えば、センサ7によって観察者11が検出されたときには、センサ7の出力に応じて第一透過光制御シート6の被制御領域を制限状態とする。第一透過光制御シート6の制限状態は、例えば、光を遮断する、光を散乱させる、光の透過率を下げるなどにより実現する。図1に示す第一透過光制御シート6は、周辺部の斜線部分において制限状態になっていることを示している。これにより、観察者11は空中映像10の全体を見ることができるが、他者12aおよび他者12bは空中映像10の一部しか見ることができず、のぞき見を防止することができる。
【0014】
第一透過光制御シート6は、制限状態において光を遮断することにより、他者12aおよび他者12bは空中映像10の一部を除いてまったく見ることができなくなる。第一透過光制御シート6は、制限状態において光を散乱させることにより、他者12aおよび他者12bは空中映像10の一部を除いた領域において、空中映像10の内容を確認することができないが空中映像10が存在することを確認することができる。第一透過光制御シート6は、制限状態において光の透過率を下げて透過する光を減衰させることにより、他者12aおよび他者12bから見える空中映像10の一部は暗くなり、空中映像10のすべての内容を確認することができなくなる。
【0015】
また、第一透過光制御シート6は、再帰反射シート5の表面に設けられているため、映像表示器3から空中映像10までの光路の他の位置に第一透過光制御シート6が設けられた場合と比べて、第一透過光制御シート6において光の透過が制限されたときに他者12aあるいは他者12bから見える空中映像10をより小さくできる。
【0016】
センサ7によって観察者が検出されていないときは、第一透過光制御シート6のすべての領域を透過状態とすることにより、ビームスプリッタ4から再帰反射シート5に向かう全ての光を透過させる。これにより、空中映像があることの認知性を高めることができる。
【0017】
図2は、第一透過光制御シート6の一例を示す図である。図2に示す第一透過光制御シート61は、透過領域61aと被制御領域61bの2つの領域を持っており、図2においては被制御領域61bが斜線で示されている。透過領域61aは、あらかじめ定められた位置にあり、例えば、第一透過光制御シート61の中央に設けられている。透過領域61aは、図1に示す空中映像表示装置1において観察者11から空中映像10の全体を見るのに必要な光を透過する領域であり、常に光を透過する。センサ7において、透過領域61aを透過する光によって空中映像10の全体を見ることができる位置に観察者11が検出されたときには、制御器8は、第一透過光制御シート61の被制御領域61bを制限状態とし、被制御領域61bの光の透過を制限する。これにより、観察者11は空中映像10の全体を見ることができるが、他者12aおよび他者12bは空中映像10の一部しか見ることができず、のぞき見を防止することができる。なお、第一透過光制御シート6は、観察者11に届く光が通過する位置に穴を持った、図2の被制御領域61bに示すような形であってもよく、この場合は、第一透過光制御シート6のすべての領域が被制御領域となる。センサ7において、透過領域61aを透過する光によって空中映像10の全体を見ることができる位置に観察者11が検出されていないときには、制御器8は、第一透過光制御シート61の被制御領域61bを透過状態とする。これにより、観察者11が所定の位置にいないときには広い範囲から空中映像10の全体を確認することができる。このように、第一透過光制御シート61の被制御領域61bを観察者11に届く光を透過する領域を除く領域とすることにより、第一透過光制御シート61の被制御領域61bを制限状態とするだけで、のぞき見を防止することができる。
【0018】
センサ7によって観察者が検出されていないときは、制御器8は、第一透過光制御シート61のすべての領域を透過状態とする。これにより、第一透過光制御シート61においてビームスプリッタ4から再帰反射シート5に向かうすべての光が透過されることとなり、空中映像10があることの認知性を高めることができる。
【0019】
図3は、第一透過光制御シート6の別の一例を示す図である。図3の上の図に示す第一透過光制御シート62は、光を透過する透過状態と光の透過を制限する制限状態との2つの状態を持った透過光制御素子621がタイル状に並べられたものである。センサ7が観察者11の位置を検出したときには、制御器8は、センサ7によって検出された観察者11の位置情報をもとに、第一透過光制御シート62に透過領域62aと被制御領域62bの2つの領域を設定する。透過領域62aは、図1に示す空中映像表示装置1において観察者11に届く光を透過する領域であり、被制御領域62bは、第一透過光制御シート62における透過領域62aを除く領域である。制御器8は、透過領域62aにある透過光制御素子621を透過状態とし、被制御領域62bにある透過光制御素子621を制限状態とする。
【0020】
図3の真中の図は、透過領域62aが第一透過光制御シート62の中央に設定された例を示している。図3の真中の図では、第一透過光制御シート62の中央に空白で示された領域が透過領域62aであり、斜線で示された領域が被制御領域62bである。制御器8は、透過領域62aにある透過光制御素子621を透過状態とし、被制御領域62bにある透過光制御素子621を制限状態とするため、図3の真中の図で示された第一透過光制御シート62では、空白で示された透過光制御素子621が透過状態となっており、斜線で示された透過光制御素子621が制限状態となっている。図3の下の図は、透過領域62aが左上に設定された例を示している。図3の真中の図および図3の下の図で示されるように、制御器8は、センサ7で検出された観察者11の位置に応じて第一透過光制御シート62の透過領域62aを移動させることができ、観察者11が移動しても観察者11は常に空中映像10の全体を見ることができる。
【0021】
なお、センサ7において観察者11の手あるいは指の位置を検出し、さらに、センサ7において観察者11の目の位置を検出し、制御器8は、観察者11の手あるいは指が空中映像10を含むあらかじめ定められたエリアにある場合に観察者11が空中映像表示装置1を操作していると判断し、操作が開始されたときに観察者11に届く光を透過する領域を透過領域に設定して、観察者11による操作が継続していると判断されるときは透過領域の位置を固定してもよい。
【0022】
センサ7によって観察者が検出されていないときは、制御器8は、第一透過光制御シート62のすべての透過光制御素子621を透過状態とすることにより、第一透過光制御シート62のすべての領域を透過状態とする。これにより、第一透過光制御シート62においてビームスプリッタ4から再帰反射シート5に向かうすべての光が透過されることとなり、空中映像10があることの認知性を高めることができる。
【0023】
図4は、第一透過光制御シート6の別の一例を示す図である。図4の真中の図は、第一シート層64を示している。第一シート層64は、光を透過する透過状態と光の透過を制限する制限状態との2つの状態を持った帯状の第一帯状シート641が互いの長辺を接して並べられたものである。図4の下の図は、第二シート層65を示している。第二シート層65は、光を透過する透過状態と光の透過を制限する制限状態との2つの状態を持った帯状の第二帯状シート651が互いの長辺を接して並べられたものである。第一シート層64と第二シート層65が重ねられたものが図4の上の図に示す第一透過光制御シート63となる。なお、図4に示す第一透過光制御シート63では、第一シート層64の第一帯状シート641の長辺に沿った方向と、第二シート層65の第二帯状シート651の長辺に沿った方向とが、直交して重ねられている例を示しているが、第一シート層64の第一帯状シート641の長辺に沿った方向および第二シート層65の第二帯状シート651の長辺に沿った方向が異なった方向であればよい。
【0024】
図5は、図4に示す第一透過光制御シート63における透過領域の設定方法を説明するための図である。センサ7が観察者11を検出したときには、制御器8は、センサ7によって検出された観察者11の位置情報をもとに、図5の真中の図に示すように、第一シート層64に第一透過領域64aと第一被制御領域64bの2つの領域を設定する。図5の真中の図では、第一シート層64の中央に空白で示された領域が第一透過領域64aであり、斜線で示された領域が第一被制御領域64bである。第一透過領域64aは、図1に示す空中映像表示装置1において観察者11に届く光を透過する領域であり、第一被制御領域64bは、第一シート層64における第一透過領域64aを除く領域である。制御器8は、第一透過領域64aにある第一帯状シート641を透過状態とし、第一被制御領域64bにある第一帯状シート641を制限状態とする。
【0025】
同様に、センサ7が観察者11を検出したときには、制御器8は、センサ7によって検出された観察者11の位置情報をもとに、図5の下の図に示すように、第二シート層65に第二透過領域65aと第二被制御領域65bの2つの領域を設定する。図5の下の図では、第二シート層65の中央に空白で示された領域が第二透過領域65aであり、斜線で示された領域が第二被制御領域65bである。第二透過領域65aは、図1に示す空中映像表示装置1において観察者11に届く光を透過する領域であり、第二被制御領域65bは、第二シート層65における第二透過領域65aを除く領域である。制御器8は、第二透過領域65aにある第二帯状シート651を透過状態とし、第二被制御領域65bにある第二帯状シート651を制限状態とする。
【0026】
その結果、図5の上の図に示すように、第一シート層64と第二シート層65が重ねられた第一透過光制御シート63において、透過領域63aおよび被制御領域63bが設定された状態となる。制御器8は、センサ7で検出された観察者11の位置に応じて第一透過光制御シート63の透過領域63aを移動させることができ、観察者11が移動しても常に空中映像10の全体を見ることができる。さらに、全ての第一帯状シート641および第二帯状シート651の短辺が、第一透過光制御シート63の端部にあるため、制御器8と第一帯状シート641との接続および制御器8と第二帯状シート651との接続が容易となる。
【0027】
なお、センサ7において観察者11の手あるいは指の位置を検出し、さらに、センサ7において観察者11の目の位置を検出し、制御器8は、観察者11の手あるいは指が空中映像10を含むあらかじめ定められたエリアにある場合に観察者11が空中映像表示装置1を操作していると判断し、操作が開始されたときに観察者11に届く光を透過する領域を透過領域に設定して、観察者11による操作が継続していると判断されるときは透過領域の位置を固定してもよい。
【0028】
センサ7があらかじめ定められたエリア内に観察者を検出していないときは、制御器8は、第一シート層64および第二シート層65のすべての領域を透過状態とする。これにより、第一透過光制御シート63においてビームスプリッタ4から再帰反射シート5に向かうすべての光が透過されることとなり、空中映像10があることの認知性を高めることができる。
【0029】
以上のように、実施の形態1による空中映像表示装置1は、映像表示器3と、光を透過または反射させるビームスプリッタ4と、映像表示器3から出射されビームスプリッタ4で反射された光を再帰反射させる再帰反射シート5と、再帰反射シート5の表面に設けられ、領域ごとに、光を透過する透過状態および光の透過を制限する制限状態の2つの状態を持った第一透過光制御シート6と、観察者11の位置を検出するセンサ7と、センサ7の出力に応じて、第一透過光制御シート6のそれぞれの領域を透過状態または制限状態のいずれかに切り替える制御器8とを備え、第一透過光制御シート6のそれぞれの領域は、透過状態として観察者に届く光を透過させる透過領域あるいは第一透過光制御シート6における透過領域を除く領域である被制御領域のいずれかであり、制御器8は、センサ7によって観察者11が検出されたときに、センサ7の出力に応じて第一透過光制御シート6の被制御領域を制限状態とし、センサ7によって観察者11が検出されていないときに、第一透過光制御シート6のすべての領域を透過状態とするので、空中映像が見える位置が分かりやすく、他者からのぞき見されにくくすることができる。
【0030】
実施の形態2.
図6は、実施の形態2による空中映像表示装置1aの模式図である。図6に示す実施の形態2による空中映像表示装置1aを図1に示す実施の形態1による空中映像表示装置1と比較すると、第一透過光制御シート6の代わりに第二透過光制御シート9が設けられており、制御器8が制御器8aになっている。実施の形態2による空中映像表示装置1aの他の構成は、実施の形態1による空中映像表示装置1と同じである。
【0031】
第二透過光制御シート9は、光の透過を制限する制限状態との、2つの状態を持つものである。第二透過光制御シート9は、ビームスプリッタ4の観察者11の側の表面、すなわち、ビームスプリッタ4の再帰反射シート5に向かい合う面と反対側の表面に設けられている。ビームスプリッタ4が筐体2に設けられた透明な窓の内側に設けられている場合は、第二透過光制御シート9は、ビームスプリッタ4の観察者11の側に筐体2を挟んで設けられてもよい。制御器8aは、センサ7の出力に応じて第二透過光制御シート9を制御する。
【0032】
第二透過光制御シート9の構造および動作は、実施の形態1による第一透過光制御シート6と同じであり、例えば、図2から図5に示した第一透過光制御シート6のいずれかと同じであり、制御器8aの第二透過光制御シート9に対する制御は、実施の形態1による制御器8の第一透過光制御シート6に対する制御と同じである。第一透過光制御シート6が再帰反射シート5の表面に設けられていたのに対して、第二透過光制御シート9がビームスプリッタ4の観察者11の側の表面に設けられている点が異なっている。
【0033】
実施の形態2による空中映像表示装置1aでは、実施の形態1による空中映像表示装置1と同様に、空中映像が見える位置が分かりやすく、他者からのぞき見されにくくすることができる。実施の形態1による空中映像表示装置1では、観察者11が空中映像10を見るときには、第一透過光制御シート6の透過領域を2回透過した光を見ることになる。一方、実施の形態2による空中映像表示装置1aでは、観察者11が空中映像10を見るときには、第二透過光制御シート9の透過領域を1回透過した光を見ることになる。よって、光が透過領域を通るときに光量が減る場合、実施の形態2による空中映像表示装置1aでは、実施の形態1による空中映像表示装置1に比べて明るい空中映像10を見ることができる。
【0034】
本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0035】
1、1a 空中映像表示装置、2 筐体、3 映像表示器、4 ビームスプリッタ、5 再帰反射シート、6 第一透過光制御シート、7 センサ、8、8a 制御器、9 第二透過光制御シート、10 空中映像、11 観察者、12a、12b 他者、61 第一透過光制御シート、61a 透過領域、61b 被制御領域、62 第一透過光制御シート、62a 透過領域、62b 被制御領域、63 第一透過光制御シート、63a 透過領域、63b 被制御領域、64 第一シート層、64a 第一透過領域、64b 第一被制御領域、65 第二シート層、65a 第二透過領域、65b 第二被制御領域、621 透過光制御素子、641 第一帯状シート、651 第二帯状シート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6