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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039825
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ループベルト製造方法及び巻回装置
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/44 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
B29D30/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147131
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】岩本 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和生
(72)【発明者】
【氏名】皆川 雅孝
【テーマコード(参考)】
4F215
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215AP04
4F215AP08
4F215AR04
4F215AR12
4F215VA11
4F215VD07
4F215VD08
(57)【要約】
【課題】コード部材を適切にコアベルトに巻き付けることができるループベルト製造方法及び巻回装置を提供する。
【解決手段】ガイド部4から供給されるコード部材2を環状のコアベルト1に巻き付けるループベルト製造方法であって、コアベルト1とガイド部4との相対的な位置関係において、コアベルト1を前記コアベルトの周方向に回転させるベルト回転工程と、ガイド部4を、コアベルト1における前記周方向と直交する外周に沿って回転させるガイド部回転工程と、ガイド部4とコアベルト1との間の距離を一定に制御する距離制御工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド部から供給されるコード部材を環状のコアベルトに巻き付けるループベルト製造方法であって、
前記コアベルトと前記ガイド部との相対的な位置関係において、
前記コアベルトを前記コアベルトの周方向に回転させるベルト回転工程と、
前記ガイド部を、前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周に沿って回転させるガイド部回転工程と、
前記ガイド部と前記コアベルトとの間の距離を一定に制御する距離制御工程と、を含むループベルト製造方法。
【請求項2】
前記距離制御工程は、前記ガイド部と前記コアベルトとの間の前記コード部材の長さを一定に制御する請求項1に記載のループベルト製造方法。
【請求項3】
前記距離制御工程は、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの短辺と前記ガイド部との距離を一定に制御する短辺距離制御工程と、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの長辺と前記ガイド部との距離を一定に制御する長辺距離制御工程と、を含む請求項1又は2に記載のループベルト製造方法。
【請求項4】
前記ベルト回転工程は、前記コアベルトの一回転ごとに、直前に巻き付けられた前記コード部材に隣接して次の前記コード部材が巻き付けられるように、前記コアベルトの回転位相を前記ガイド部の回転位相に対してずらす請求項1から3のいずれか一項に記載のループベルト製造方法。
【請求項5】
前記コアベルトとの間の前記コード部材の張力を制御する張力制御工程を更に含む請求項1から4のいずれか一項に記載のループベルト製造方法。
【請求項6】
前記張力制御工程は、前記コード部材が前記コアベルトの幅方向の端部で折り返しされる際に、前記コード部材の張力を弱める請求項5に記載のループベルト製造方法。
【請求項7】
制御部と、
環状のコアベルトを当該コアベルトの周方向に回転させるドラム部と、
前記コアベルトにコード部材を巻き付けるガイド部と、を備え、
前記コアベルトと前記ガイド部との相対的な位置関係において、
前記ドラム部は、前記コアベルトを前記周方向に回転させ、
前記ガイド部は、前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周に沿って回転し、
前記制御部は、前記ガイド部と前記コアベルトとの間の距離を一定に制御する巻回装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ガイド部と前記コアベルトとの間の前記コード部材の長さを一定に制御する請求項7に記載の巻回装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの短辺と前記ガイド部との距離を一定に制御し、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの長辺と前記ガイド部との距離を一定に制御する請求項7又は8に記載の巻回装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記コアベルトが一回転するごとに、直前に巻回された前記コード部材に隣接して次の前記コード部材が巻回されるように、前記ドラム部の回転位相を前記ガイド部の回転位相に対してずらす請求項7から9のいずれか一項に記載の巻回装置。
【請求項11】
前記ガイド部は、前記コアベルトの表面に前記コード部材を押し当てるヘッド部を有する請求項7から10のいずれか一項に記載の巻回装置。
【請求項12】
前記ガイド部は、前記ヘッド部に前記コード部材を供給するボビンを有し、
前記制御部は、前記ボビンと前記ヘッド部との間の前記コード部材の張力を制御する請求項11に記載の巻回装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記コード部材が前記コアベルトの幅方向の端部で折り返しされる際に、前記コード部材の張力を弱める請求項12に記載の巻回装置。
【請求項14】
前記ドラム部は、前記コアベルトの内側に嵌り、前記コアベルトと同軸心で回転するドラムを有し、
前記ドラムは、当該ドラムの周方向に対して傾斜するスリットを有する請求項7から13の何れか一項に記載の巻回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループベルト製造方法及び巻回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コード部材を環状のコアベルト(芯材)における幅方向端部で折り返しながらコアベルトの周方向に沿って螺旋状に巻き付けて製造されるループベルトが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。以下の説明では、コード部材をコアベルトにおける幅方向の端部で折り返しながらコアベルトの周方向に沿って螺旋状に巻き付けることを、単に、コアベルトにコード部材を巻き付ける、などと記載する場合がある。
【0003】
特許文献1,2には、環状でゴム製の芯体の表面に、ゴム被覆コードをゴム製の芯体の幅方向端部で折り返しながら芯体の周方向に沿って螺旋状に巻き付けたゴム・コード複合材が記載されている。
【0004】
特許文献1には、環状に連続する芯体の軸廻りにゴム被覆コードを巻き付ける装置が記載されている。この装置は、芯体を周方向に回転させる駆動装置と、芯体を内側に通過させながら芯体の軸廻りに回転自在のターンテーブルとを備え、ターンテーブル上にゴム被覆コードを供給するドラムが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-018981号公報
【特許文献2】特開2005-205778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載されるように、ループベルトは、環状のコアベルトにコード部材を巻き付けて製造される場合がある。このようなループベルトの製造方法にあっては、以下の不具合が生じる場合がある。コード部材を巻回する際に、コアベルトの幅方向の端部が撚れて、コード部材の折り返し部分が浮いてしまう場合がある。コアベルトが撚れないように、コアベルトにかける張力を大きくすると、撚れが緩和することもあるが、コアベルトが伸びて設計通りにループベルトを製造できない場合がある。また、コード部材を巻き付ける際の張力が小さすぎると、コアベルト上においてコード部材の位置が安定しない場合がある。また、コード部材を巻き付ける際の張力が大きすぎると、コアベルトに巻回した後のコード部材の残留応力によりループベルトが変形してしまう場合がある。そして、これらの不具合が生じた場合は、人手による修正が必要となる場合があり、非効率であった。
【0007】
そのため、コード部材を適切にコアベルトに巻き付けることができるループベルト製造方法及び巻回装置が望まれる。
【0008】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、コード部材を適切にコアベルトに巻き付けることができるループベルト製造方法及び巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るループベルト製造方法は、
ガイド部から供給されるコード部材を環状のコアベルトに巻き付けるループベルト製造方法であって、
前記コアベルトと前記ガイド部との相対的な位置関係において、
前記コアベルトを前記コアベルトの周方向に回転させるベルト回転工程と、
前記ガイド部を、前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周に沿って回転させるガイド部回転工程と、
前記ガイド部と前記コアベルトとの間の距離を一定に制御する距離制御工程と、を含む。
【0010】
上記のループベルト製造方法によれば、コード部材をガイド部に案内させて適切にコアベルトに巻き付けることができる。すなわち、ベルト回転工程及びガイド部回転工程によって、コード部材を、コアベルトにおける幅方向の端部で折り返されるように、螺旋状にコアベルトの周囲に巻き付けること、すなわち巻回を行える。この巻回の際、距離制御工程においてガイド部とコアベルトとの間の距離を一定に制御することで、コード部材をコアベルト上における適切な位置で巻き付け、且つ、コアベルトを変形させずにループベルトを製造することができる。これにより精度の高い巻回を行える。以下の説明では、コード部材をコアベルトにおける幅方向の端部で折り返しながらコアベルトの周方向に沿って螺旋状に巻き付けることを、コアベルトにコード部材を巻き付ける、更には、単に、巻回する、などと記載する場合がある。
【0011】
本発明に係るループベルト製造方法では、更に、
前記距離制御工程は、前記ガイド部と前記コアベルトとの間の前記コード部材の長さを一定に制御してもよい。
【0012】
上記方法によれば、ガイド部と、コアベルトの表面との間の距離が一定に制御される。これにより、コード部材をコアベルト上における更に適切な位置で巻き付け、且つ、コアベルトを変形させずにループベルトを製造することができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0013】
本発明に係るループベルト製造方法では、更に、
前記距離制御工程は、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの短辺と前記ガイド部との距離を一定に制御する短辺距離制御工程と、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの長辺と前記ガイド部との距離を一定に制御する長辺距離制御工程と、を含んでもよい。
【0014】
上記方法によれば、ガイド部とコアベルトの短辺との間の距離及びガイド部とコアベルトの長辺との間の距離がそれぞれ一定に制御される。これにより、コード部材を更に適切な位置で巻き付け、且つ、コアベルトを変形させずにループベルトを製造することができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0015】
本発明に係るループベルト製造方法では、更に、
前記ベルト回転工程は、前記コアベルトの一回転ごとに、直前に巻き付けられた前記コード部材に隣接して次の前記コード部材が巻き付けられるように、前記コアベルトの回転位相を前記ガイド部の回転位相に対してずらしてもよい。
【0016】
上記方法によれば、直前に巻き付けられたコード部材に隣接して次のコード部材を巻き付けることができる。
【0017】
本発明に係るループベルト製造方法では、更に、
前記コアベルトとの間の前記コード部材の張力を制御する張力制御工程を更に含んでもよい。
【0018】
上記方法によれば、コード部材をコアベルト上における更に適切な位置で巻き付け、且つ、コアベルトを変形させずにループベルトを製造することができる。また、コード部材の余分な残留応力を低減させ、コード部材の残留応力によるループベルトの変形、特に、コード部材の巻回に沿った蛇行するようなループベルトの変形を低減することができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0019】
本発明に係るループベルト製造方法では、更に、
前記制御部は、前記コード部材が前記コアベルトの幅方向の端部で折り返しされる際に、前記コード部材の張力を弱めてもよい。
【0020】
上記構成によれば、巻回時におけるコアベルトの端部の撚れを低減することができる。
【0021】
上記目的を達成するための本発明に係る巻回装置では、
制御部と、
環状のコアベルトを当該コアベルトの周方向に回転させるドラム部と、
前記コアベルトにコード部材を巻き付けるガイド部と、を備え、
前記コアベルトと前記ガイド部との相対的な位置関係において、
前記ドラム部は、前記コアベルトを前記周方向に回転させ、
前記ガイド部は、前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周に沿って回転し、
前記制御部は、前記ガイド部と前記コアベルトとの間の距離を一定に制御する。
【0022】
上記構成の巻回装置によれば、上記ループベルト製造方法を実現し、当該方法が奏する作用効果を享受できる。
【0023】
本発明に係る巻回装置では、更に、
前記制御部は、前記ガイド部と前記コアベルトとの間の前記コード部材の長さを一定に制御してもよい。
【0024】
上記構成によれば、ガイド部とコアベルトとの間の距離を一定に制御できる。これにより、コード部材をコアベルト上における更に適切な位置で巻き付け、且つ、コアベルトを変形させずにループベルトを製造することができる。また、コード部材の余分な残留応力を低減させ、コード部材の残留応力によるループベルトの変形、特に、コード部材の巻回に沿った蛇行するようなループベルトの変形を低減することができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0025】
本発明に係る巻回装置では、更に、
前記制御部は、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの短辺と前記ガイド部との距離を一定に制御し、
前記コアベルトにおける前記周方向と直交する外周における前記コアベルトの長辺と前記ガイド部との距離を一定に制御してもよい。
【0026】
上記構成によれば、制御部の制御によってコアベルトの短辺や長辺とガイド部との距離を一定に制御することができる。これにより、コード部材を更に適切な位置で巻き付け、且つ、コアベルトを変形させずにループベルトを製造することができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0027】
本発明に係る巻回装置では、更に、
前記制御部は、前記コアベルトが一回転するごとに、直前に巻回された前記コード部材に隣接して次の前記コード部材が巻回されるように、前記ドラム部の回転位相を前記ガイド部の回転位相に対してずらしてもよい。
【0028】
上記構成によれば、直前に巻き付けられたコード部材に隣接して次のコード部材を巻き付けることができる。
【0029】
本発明に係る巻回装置では、更に、
前記ガイド部は、前記コアベルトの表面に前記コード部材を押し当てるヘッド部を有してもよい。
【0030】
上記構成によれば、ヘッド部がコード部材をコアベルトに押し当てて、コード部材をコアベルトに粘着させ、これによりコード部材をコアベルト上における更に適切な位置で巻き付けることができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0031】
本発明に係る巻回装置では、更に、
前記ガイド部は、前記ヘッド部に前記コード部材を供給するボビンを有し、
前記制御部は、前記ボビンと前記ヘッド部との間の前記コード部材の張力を制御してもよい。
【0032】
上記構成によれば、ボビンとコアベルトとの間のコード部材の張力に対応するボビンとヘッド部との間のコード部材の張力を制御して、コアベルトの変形を回避しつつ、コード部材をコアベルト上における更に適切な位置で巻き付けることができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0033】
本発明に係る巻回装置では、更に、
前記制御部は、前記コード部材が前記コアベルトの幅方向の端部で折り返しされる際に、前記コード部材の張力を弱めてもよい。
【0034】
上記構成によれば、巻回時におけるコアベルトの端部の撚れを低減することができる。
【0035】
本発明に係る巻回装置では、更に、
前記ドラム部は、前記コアベルトの内側に嵌り、前記コアベルトと同軸心で回転するドラムを有し、
前記ドラムは、当該ドラムの周方向に対して傾斜するスリットを有してもよい。
【0036】
上記構成によれば、ドラムの外周面でコアベルトの内周面を支持できる。これにより、コアベルトに過剰な張力を与えなくてもコアベルトにコード部材を巻回可能となる。特に、コアベルトの外周面側から内周面側に向けてコード部材を巻き付ける際に、コアベルトの端部が撚れることを回避できる。また、コアベルトの内周面においては、コード部材をスリットに沿わせてコアベルトに巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ループベルトの製造方法の概念を説明する図である。
図2】ループベルトの展開図である。
図3】巻回装置の構成を示す図である。
図4】ドラムの構成を説明する図である。
図5】ガイド部の移動の軌跡を説明する図である。
図6】Cリングの位相がゼロの場合の巻回装置の状態を示す図である。
図7図6の状態から、Cリングが位相45°回転した巻回装置の状態を示す図である。
図8図6の状態から、Cリングが位相90°回転した巻回装置の状態を示す図である。
図9図6の状態から、Cリングが位相180°回転した巻回装置の状態を示す図である。
図10図6の状態から、Cリングが位相270°回転した巻回装置の状態を示す図である。
図11図6の状態から、Cリングが位相315°回転した巻回装置の状態を示す図である。
図12図6の状態から、Cリングが位相360°回転した巻回装置の状態を示す図である。
図13】ガイド部の移動の別の軌跡を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係るループベルト製造方法及び巻回装置について説明する。
【0039】
なお、本実施形態においてループベルトとは、車両用のタイヤの構成要素である。具体的には、ループベルトは、タイヤのトレッドとカーカスとの間において、タイヤの周方向に沿って張られた補強帯である。
【0040】
(概要の説明)
図1には、本実施形態に係るループベルト製造方法を説明する概念図を示している。本実施形態に係る以下で説明するループベルト製造方法は、図1に示すように、ガイド部4から供給されるコード部材2を環状のコアベルト1に巻き付けることにより、図2に示すループベルトVを製造する方法に係るものである。なお、図2では、ループベルトVの環の周方向に沿う一部の区間を切り出して平面状に展開した展開図を示している。なお、図2では、説明の便宜上、コード部材2が巻き付けられていないコアベルト1の部分を図示している。
【0041】
本実施形態に係るループベルト製造方法は、コアベルト1とガイド部4との相対的な位置関係において、コアベルト1をその周方向に回転させるベルト回転工程と、ガイド部4を、コアベルト1における周方向と直交する外周に沿って回転させるガイド部回転工程と、ガイド部4とコアベルト1との間の距離を一定に制御する距離制御工程と、を含む。
【0042】
図3には、本実施形態に係るループベルト製造方法を実現する装置の一例である巻回装置100を示している。
【0043】
巻回装置100は、制御部Cと、環状のコアベルト1をその周方向に回転させるドラム部3と、コアベルト1にコード部材2を巻き付けるガイド部4と、を備えている。
【0044】
コアベルト1とガイド部4との相対的な位置関係において、ドラム部3は、コアベルト1をその周方向に回転させる。ガイド部4は、コアベルト1における周方向と直交する外周に沿って回転する。制御部Cは、ガイド部4とコアベルト1との間の距離を一定に制御する。
【0045】
巻回装置100では、ドラム部3によりコアベルト1をその周方向に回転させながら、ガイド部4を、コアベルト1における周方向と直交する外周に沿って回転させることで、コード部材2を、コアベルト1における幅方向の端部で折り返しながら、コアベルト1の周方向に沿って螺旋状に巻き付けること、すなわち巻回を行える。以下の説明では、コード部材2をコアベルト1における幅方向の端部で折り返しながらコアベルト1の周方向に沿って螺旋状に巻き付けることを、コアベルト1にコード部材2を巻き付ける、更には、単に、巻回する、などと記載する場合がある。この巻回の際、制御部Cがガイド部4とコアベルト1との間の距離を一定に制御するため、コード部材2をコアベルト1上における適切な位置で巻き付け、且つ、コアベルト1を変形させずにループベルトV(図2参照)を製造することができる。すなわち、ガイド部4とコアベルト1との間の距離を一定に制御することで、精度の高い巻回を行える。
【0046】
以下の説明では、コアベルト1の周方向及びこれと同じ方向を、単に環の周方向と称する場合がある。また、コアベルト1における周方向と直交する外周に沿う方向、すなわち、環の周方向に直交し、コアベルト1の外周に沿って環の内側と外側とに回る方向及びこれと同じ方向を、帯の周方向と称する場合がある。
【0047】
(詳細説明)
以下では、本実施形態に係るループベルト製造方法が本実施形態に係る巻回装置100により実現される場合を例示して説明する。
【0048】
図2に示すループベルトVを製造するためのコアベルト1は、周方向に対して傾斜して延在するコード状部材材料が、周方向全域に亘って略平行に配置されており、これらコード状部材がインシュレーションゴムで無端ベルト状に一体化されたものを用いてよい。但し、コアベルト1は、例えば、複数本のコード状材料を周方向に連続的に巻回してインシュレーションゴムでベルト状に一体化したものであってもよい。また、ループベルトVを製造するためのコード部材2は、コード状材料をインシュレーションゴムで被覆したものを用いてよい。コード状材料としては、一例としてスチールや樹脂製の線材、有機繊維部材を用いてよい。その他の線材、繊維状部材をコード状材料として用いることは排除されない。
【0049】
巻回装置100は、図3に示すように、巻回装置100の動作を制御する制御部Cと、環状のコアベルト1を、軸心Gを回転軸心として当該環の周方向に回転させるドラム部3と、コアベルト1にコード部材2を巻き付けるガイド部4と、に加えて、更に、コアベルト1の環の周方向に沿い、且つ、コアベルト1の環の内側と外側とを交互に移動するように帯の周方向に沿ってガイド部4を回転させる駆動機構と、これら部材等を支持する枠体や板材で構成される座部9とを備えている。上記のドラム部3とガイド部4との動作は、座部9に支持された状態における、ドラム部3とガイド部4との関係における相対的な動作である。なお、図3では、環の周方向を方向αとして、帯の周方向を方向βとして示している。
【0050】
駆動機構は、ガイド部4を支持し、ガイド部4を帯の周方向に沿う方向に回転させるガイド部回転機構5と、ガイド部4をドラム部3の回転の軸心Gに沿う方向に駆動する第一駆動機構61と、ガイド部回転機構5によるガイド部4の回転平面に沿い、且つ、ドラム部3の回転の軸心Gと直交する方向にガイド部4を駆動する第二駆動機構62と、を含む。これら駆動機構については後述する。なお、図3では、一例として、x方向は水平方向に沿う方向、y方向は鉛直方向である場合を例示している。図3では、軸心Gは、x方向と平行に配置した場合を例示している。
【0051】
制御部Cは、巻回装置100の各部の動作を制御する機能部である。本実施形態の制御部Cは、CPUなどの中央演算装置と一時メモリとを少なくとも含むコンピュータによりソフトウェア的に実現されてよい。コンピュータの一例は、パーソナルコンピュータや、組み込み用のコンピュータ又はPLCなどの制御装置である。制御部Cは、駆動機構を制御してガイド部4とコアベルト1との間の距離を一定に制御する。この制御についての詳細は後述する。
【0052】
ドラム部3は、コアベルト1を円形状の環状に保持した状態で、軸心Gをコアベルト1の回転軸心として回転させる機構である。ドラム部3は、図3に示すように、コアベルト1と同軸心、すなわち軸心Gを回転軸心として回転するドラム30と、ドラム30を回転させるための、電動モータなどのドラム駆動部39と、ドラム駆動部39の回転動力をドラム30に伝達する回転軸39a及び回転軸39aとドラム30とに連結する複数の枠体39bとを有する。
【0053】
ドラム30は、コアベルト1の環の内側に嵌り、ドラム30の外周面でコアベルト1の内周面を支持することでコアベルト1を円形状の環状に保持しつつ、コアベルト1を、軸心Gを回転軸心として回転させる枠体である。ドラム30がコアベルト1の内周面を支持することで、コアベルト1に過剰な張力を与えなくてもコアベルト1にコード部材2を巻回可能となる。また、ドラム30がコアベルト1の内周面を支持することで、特にコアベルトの外周面側から内周面側に向けてコード部材2を巻き付ける際に、コアベルト1の端部が撚れることを防止できる。
【0054】
ドラム30の幅は、コアベルト1の幅と同じ幅かそれ以上の長さの幅とすることが好ましい。ドラム30の幅がコアベルト1の幅よりも短いと、コアベルト1の端部の撚れを適切に防止できない場合がある。
【0055】
ドラム30は、図3,4に示すように、ドラム30の周方向、すなわち、コアベルト1の環の周方向に対して傾斜し、コアベルト1の環の周方向に対してドラム30を分断する少なくとも一つのスリット35を有する。図3に示すように、ドラム30は、ドラム駆動部39が生み出した回転力により回転させられる。ドラム30は、制御部Cの指令に基づいて、所定の回転周速度で回転させられる。
【0056】
スリット35は、図3,4に示すように、ドラム30の環の周方向に対して傾斜するように設けてよい。なお、本実施形態においては、ドラム30の環の周方向は、コアベルト1の環の周方向と同じ方向である。スリット35を二つ以上設ける場合は、ドラム30を平面状に展開した場合において隣接するスリット35,35が平行になるように形成してよい。スリット35を設けることで、コード部材2をコアベルト1の内周面に巻き付ける際に、ドラム30が物理的な障害となることを回避できる。すなわち、図3に示すように、コアベルト1の内周面においては、コード部材2を、スリット35に沿わせてコアベルト1に巻き付けることができるようになる。
【0057】
また、図3,4に示すように、スリット35を設けることで、ドラム30をコアベルト1の環の内側に嵌め込む作業が容易になる。ドラム30をコアベルト1の環の内側に嵌める際は、スリット35のスリット幅を狭めるようにしてドラム30の直径を縮小させてドラム30をコアベルト1の環の内側に嵌めるとよい。
【0058】
本実施形態では、図3に、ドラム30が、2つのスリット35をドラム30の周方向において等間隔で有する場合を示している。また、図4には、ドラム30が、4つのスリット35をドラム30の周方向において等間隔で有する。なお、ドラム30においてスリット35が形成される個数は、2つや4つなどの偶数個に限られず、1つや3つなどの奇数個であってもよい。また、ドラム30においてスリット35が形成される個数は4つを超えてもよい。
【0059】
図4に示す例では、ドラム30は、4つのスリット35により4つのピース31~34に分割されている。ピース31~34のそれぞれは、ドラム30として一体回転可能となっている。ドラム30を平面状に展開した場合において4つのスリット35は互いに平行である。
【0060】
図3に示す例では、ドラム30は、2つのスリット35により2つのピースに分割されている。それぞれのピースは、ドラム30として一体回転可能となっている。ドラム30を平面状に展開した場合において2つのスリット35は互いに平行である。ドラム30におけるそれぞれのピースは、少なくとも一つの枠体39bに支持されて、ドラム30として一体回転可能となっている。以下では、図3に示すように、ドラム30が二つのピースに分割されている場合を例示して説明する。
【0061】
図3に示すように、ガイド部4は、コード部材2をコアベルト1に巻き付けるための案内装置である。ガイド部4は、コアベルト1の表面にコード部材2を押し当てるヘッド部41と、コード部材2をヘッド部41に供給するボビン40と、ヘッド部41を支持するアーム42とを有する。ガイド部4は、本実施形態ではガイド部回転機構5に支持されており、ヘッド部41、ボビン40及びアーム42の相対的な位置関係は固定されている。すなわち、ボビン40とヘッド部41との間のコード部材2の長さは一定である。
【0062】
ボビン40は、コード部材2の供給装置である。ボビン40には、コード部材2が巻き取られている。巻き取られたコード部材2がボビン40から引き出され、ヘッド部41に供給される。
【0063】
ヘッド部41は、コード部材2をコアベルト1の表面に案内、すなわち、コード部材2をコアベルト1の表面に当接させて添わせる部材である。本実施形態においてヘッド部41は、コード部材2をコアベルト1の表面に押圧することで、コード部材2をコアベルト1の表面に当接させて添わせている。ヘッド部41は、弾性部材などにより付勢されて、コード部材2をコアベルト1の表面に付勢してもよい。
【0064】
ヘッド部41における、コード部材2をコアベルト1の表面に押圧する先端部分の形状は、コード部材2をコアベルト1との間で挟み込むへら状、ローラ及びその他の形状を採用しうる。
【0065】
ヘッド部41は、コアベルト1との相対的な位置関係において、コアベルト1の環の周方向に沿い、且つ、コアベルト1の環の内側と外側とを交互に移動するように帯の周方向に沿って回転し、更に、コアベルト1の表面に沿いながら移動する。これにより、ヘッド部41は、コード部材2を、コアベルト1における幅方向の端部で折り返しながら、コアベルト1の表面に対して、コアベルト1の環の周方向に沿って螺旋状にコード部材2を張り付ける。ヘッド部41における、コアベルト1の表面に沿い、コアベルト1の環の周方向に沿って螺旋状に移動する動作については後述する。
【0066】
図5には、コアベルト1及びガイド部4を、コアベルト1の環の周方向に沿う視点で見た場合における、ガイド部4がコアベルト1の帯の周方向に沿って移動する軌跡の概念図を示している。本実施形態においては、コード部材2をコアベルト1の表面に押圧するために、図5に示すように、ヘッド部41がコード部材2を介してコアベルト1の表面に当接した状態を維持してよい。これによりガイド部4としてのボビン40と、コアベルト1の表面との間の距離、すなわち、ボビン40と、コアベルト1の表面とのコード部材2の長さL(図3参照)が一定に保たれる。なお、本実施形態において、ボビン40と、コアベルト1の表面との間のコード部材2の長さLは、ボビン40からコード部材2が離れる地点から、コード部材2がコアベルト1に当接する地点までの距離に対応する。
【0067】
図5には、ヘッド部41がコアベルト1の外周面に対向する領域を区間S1、ヘッド部41がコアベルト1の内周面に対向する領域を区間S3、ヘッド部41がコアベルト1の側面に対向する領域をそれぞれS2,S4として示している。図5に示す例では、区間S1からS4の全区間において、すなわち、コアベルト1の帯の周方向における全周にわたって、ヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位、すなわち、コード部材2を押圧する部位と、コアベルト1の表面との間の最短の距離は、おおよそコード部材2の厚みに相当する一定の距離に保っている。なお、図5では、コアベルト1との相対的な位置関係における、ヘッド部41がコアベルト1の表面に沿って動く軌跡を仮想線Kで示している。仮想線Kは、四隅が丸められた矩形状となる。ヘッド部41がローラである場合を例示して説明すると、ローラの回転中心の軌跡が仮想線Kに対応する。仮にヘッド部41と、コアベルト1の表面との間の距離が一定に保たれず、ヘッド部41がコアベルト1から離間してしまう場合、ヘッド部41はコード部材2を案内できなくなり、コード部材2をコアベルト1上における適切な位置で巻き付けられなく場合がある。
【0068】
本実施形態においては、図3に示すように、制御部Cが、第一駆動機構61及び第二駆動機構62でガイド部4の位置を調節する。これによりボビン40と、コアベルト1の表面との間の距離が一定に保たれる。第一駆動機構61及び第二駆動機構62については後述する。
【0069】
コード部材2は、ゴムで被覆されているため、ゴムで被覆されたコアベルト1の表面に押圧されることにより、互いの粘着力によってコアベルト1の表面に貼付された状態となる。
【0070】
また、コード部材2がコアベルト1の表面に押圧された状態で、ヘッド部41に対して相対的にコアベルト1が動くと、コアベルト1とコード部材2との相互の摩擦力により、コード部材2におけるコアベルト1と接している部分がコアベルト1の表面の相対的な移動に連れて移動する。これにより、新たにボビン40からコード部材2が引き出される。新たにボビン40から引き出されたコード部材2は、上記同様にヘッド部41によりコード部材2に押圧され、コアベルト1の表面の相対的な移動に連れて移動する。このようにして、ヘッド部41によりコード部材2がコアベルト1の表面の配置されていく。
【0071】
ボビン40とヘッド部41との間のコード部材2の張力は、必要に応じて制御されてもよい(張力制御工程の一例)。本実施形態では、ボビン40の回転軸と一体の張力制御機構45によりボビン40とヘッド部41との間のコード部材2の張力が、制御部Cにより制御可能とされている。これにより、コアベルト1の変形を回避しつつ、コード部材2をコアベルト1上における更に適切な位置で巻き付けることができる。また、コード部材2の余分な残留応力を低減させ、コード部材2の残留応力によるループベルトV(図2参照)の変形、特に、コード部材2の巻回に沿った、蛇行するようなループベルトVの変形を低減することができる。すなわち、精度の高い巻回を行える。
【0072】
張力制御機構45は、ボビン40の回転軸に直結したトルクセンサや回転電機で構成してよい。例えば、ボビン40からコード部材2が引き出される際のボビン40の回転トルクをトルクセンサで検知し、これに基づいて、制御部Cが回転電機によってボビン40の回転を規制し、コアベルト1とボビン40との間の張力、例えば、ボビン40とヘッド部41との間のコード部材2の張力を制御してよい。この制御の際、ボビン40の回転軸の摩擦や、ヘッド部41とコード部材2との摩擦、ボビン40とコード部材2との摩擦はもちろん考慮されてよい。
【0073】
上述のごとく、本実施形態における巻回装置100では、コアベルト1がドラム30により軸心Gを回転軸心として回転されるため、ヘッド部41とコアベルト1との相対的な位置関係において、ヘッド部41のコアベルト1の表面に沿うコアベルト1の環の周方向への移動は、コアベルト1の回転により実現される。ヘッド部41とコアベルト1との相対的な位置関係において、ヘッド部41のコアベルト1の帯の周方向に沿った相対的な回転は、ヘッド部41がコアベルト1の帯の周方向に沿った回転をすること、すなわち、コアベルト1の帯の周方向に沿った、いわゆる公転運動により実現される。ヘッド部41の回転は、後述するように上記のガイド部回転機構5が実現する。
【0074】
ガイド部回転機構5は、ガイド部4を支持するCリング50及びCリング50を回転駆動させるリング回転機構59を含む。ガイド部回転機構5は、第一駆動機構61及び第二駆動機構62を介して座部9に支持されている。
【0075】
Cリング50は、アルファベットのC字形状をした板状の部材である。Cリング50は、弧の周方向に沿って回転、すなわち自転する。Cリング50は、ボビン40、ヘッド部41及びアーム42を支持している。そして、Cリング50は、自己が自転しながら、更に第一駆動機構61及び第二駆動機構62によって移動させられることにより、これらボビン40、ヘッド部41及びアーム42をコアベルト1の環の周方向に沿い、且つ、コアベルト1の環の内側と外側とを交互に移動するように帯の周方向に沿って回転、すなわち公転させる。
【0076】
Cリング50は、Cリング50におけるC字形状の弧の内側に、ドラム30及びコアベルト1の環の一部が嵌る位置関係で配置されるとよい。本実施形態では、Cリング50は、軸心Gと重複し、y方向に沿う平面上で回転している場合を例示して説明している。
【0077】
本実施形態では、Cリング50には、ボビン40、ヘッド部41及びアーム42が固定されて支持されている。ボビン40は、Cリング50におけるC字形状の中央部分の片面に設けられている。アーム42は、Cリング50におけるC字形状の中央部分の内周面からC字形状の弧の内側に延出するように設けられている。なお、ヘッド部41はアーム42先端に固定されており、アーム42を介してCリング50に固定されている。そして、Cリング50における、ボビン40が設けられた面とは反対側の面には、Cリング50の弧の周方向に沿って設けられたCリング側歯車部51が形成されている。
【0078】
リング回転機構59は、Cリング50に回転駆動するための動力を伝達する駆動側歯車59aと、Cリング50の回転を案内するガイドレール59bとを有する。ガイドレール59bは、環状又はアルファベットのC字形状のレール状の枠体などでよい。駆動側歯車59aは、電動モータなどによって生じさせた動力により回転駆動されてよい。駆動側歯車59aは、Cリング側歯車部51と噛み合って、Cリング側歯車部51を介してCリング50に動力を伝達する。Cリング50はCリング側歯車部51を駆動側歯車59aにより駆動され、また、ガイドレール59bに案内されて、Cリング50の弧の周方向に回転する。
【0079】
第一駆動機構61は、Cリング50を、軸心Gに沿う方向にスライド移動させる機構である。第一駆動機構61は、ボールねじ式アクチュエータなどのアクチュエータ、ガイド部回転機構5を支持する板材や枠材、ガイド部回転機構5やこれら板材や枠材をスライドさせるための案内用のレール、第二駆動機構62に支持されるための板材や枠材を含んでよい。
【0080】
第二駆動機構62は、Cリング50を、軸心Gと交差する方向、例えば、y方向に沿う方向にスライド移動させる機構である。第二駆動機構62は、ボールねじ式アクチュエータなどのアクチュエータ、ガイド部回転機構5を支持する板材や枠材、ガイド部回転機構5やこれら板材や枠材をスライドさせるための案内用のレール、第一駆動機構61を支持するための板材や枠材、第一駆動機構61やこれら板材や枠材をスライドさせるための案内用のレール、を含んでよい。なお、本実施形態では、ガイド部回転機構5は第一駆動機構61を介して第二駆動機構62に移動させられる。
【0081】
図6から図12に基づいて、コアベルト1、コード部材2、ドラム部3、ガイド部4、ガイド部回転機構5、第一駆動機構61及び第二駆動機構62動きの一例を説明する。以下では、図6から図12に基づいて、図6に示す状態を起点として、ガイド部回転機構5のCリング50が一回転するまでの動きを説明する。以下の説明では、一例として、Cリング50が時計回りに回転する場合を例示して説明する。以下の説明では、図3に示すx方向及びy方向を方向の説明の基準とし、x方向において、Cリング50から見てドラム駆動部39の側(図3では右側)を奥、ドラム駆動部39から見てCリング50の側(図3では左側)を手前と記載する。また、y方向は鉛直方向であるが、y方向の鉛直方向上向きを単に上、鉛直方向の下向きを単に下と記載する。
【0082】
図7は、図6に示す状態から、Cリング50が位相45°回転した状態を示す。図8は、図6に示す状態から、Cリング50が位相90°回転した状態を示す。図9は、図6に示す状態から、Cリング50が位相180°回転した状態を示す。図10は、図6に示す状態から、Cリング50が位相270°回転した状態を示す。図11は、図6に示す状態から、Cリング50が位相315°回転した状態を示す。図12は、図6に示す状態から、Cリング50が位相360°回転した状態を示す。
【0083】
図6から図12にかけて、Cリング50が一回転する過程で、ドラム30及びコアベルト1は、本実施形態では約90°回転する。なお、ドラム30の背面側にドラム駆動部39が位置する状態で軸心Gに沿う方向で見た場合、本実施形態においてドラム30は、反時計回りに回転している。
【0084】
図6から図9は、ヘッド部41が、コアベルト1における、手前側の側面部(図6参照)からコアベルト1の環の内側(内周面側)に回り込み(図7参照)、スリット35に沿いつつ(図7,8参照)、コアベルト1における奥側の側面部まで移動する(図9参照)過程を示している。この過程において、ヘッド部41は、コアベルト1における手前側から奥側まで、スリット35に沿って移動する。コード部材2は、コアベルト1における、手前側の端部から内周面を経て奥側の端部まで張り付けられる。
【0085】
図6から図9に示す過程において、制御部C(図3参照)は、第一駆動機構61により、Cリング50を、手前側から奥側に移動させる。同時に、第二駆動機構62は、図6から図8に示す過程において、Cリング50を、下方向に移動さる。また更に、図8から図9に示す過程において、Cリング50を、上方向に移動させて、図6の場合と同じ高さに戻す。
【0086】
図9から図12は、ヘッド部41が、コアベルト1における、奥側の側面部(図9参照)からコアベルト1の環の外側(外周面側)に回り込み(図10参照)、コアベルト1の表面に沿いつつ(図10,11参照)、コアベルト1における手前側の側面部まで移動する(図12参照)過程を示している。この過程において、ヘッド部41は、コアベルト1における奥側から手前側まで移動する。コード部材2は、コアベルト1における、奥側の端部から外周面を経て手前側の端部まで張り付けられる。
【0087】
図9から図12に示す過程において、制御部C(図3参照)は、第一駆動機構61により、Cリング50を、奥側から手前側に移動させる。同時に、第二駆動機構62は、図9から図10に示す過程において、Cリング50を、上方向に移動させる。そして更に、図10から図12に示す過程において、Cリング50を、下方向に移動させて、図6の場合と同じ高さに戻す。
【0088】
なお、図9に示す状態は、コード部材2がコアベルト1の環の内側から外側に折り返しされている時点である。
【0089】
図9から図12は、ヘッド部41が、コアベルト1における、ドラム駆動部39と近接している側の側面部からコアベルト1の環の内側に回り込み、スリット35に沿いつつ、コアベルト1における他方の側面部、すなわち、ドラム駆動部39と離間している手前側の側面部まで移動する過程を示している。この過程において、ヘッド部41は、スリット35の一端から他端まで移動する。コード部材2は、コアベルト1における、ドラム駆動部39と近い奥側の側面部からドラム駆動部39と離間している手前側の側面部まで張り付けられる。このように、図6から図12に示す動作の過程で、コード部材2は、コアベルト1の帯の周方向に沿って一周する。
【0090】
図6から図12に示す動作の過程において、制御部C(図3参照)は、ヘッド部41がコアベルト1の表面に当接した状態を維持するように第一駆動機構61及び第二駆動機構62を制御している。図6から図12に示した動作では、図5に示したヘッド部41の軌跡と同様に、図6から図12に示す動作の過程におけるコアベルト1及びガイド部4を、コアベルト1の環の周方向に沿う視点で見た場合のヘッド部41の軌跡は、四隅が丸められた矩形状となる。
【0091】
Cリング50が一回転して図12に示す状態に戻ると、コード部材2がコアベルト1の環の外側から内側に折り返しされる。その後、同様に巻回が進行する。
【0092】
なお、Cリング50が一回転する過程において、制御部Cは、Cリング50やドラム30を一定の速度で回転させてよいが、必要に応じてCリング50又はドラム30の回転速度を変化させてもよい。例えば、コード部材2がコアベルト1の環の外側と内側とで折り返しされる際に、Cリング50とドラム30との回転速度を減少させて、コアベルト1の端部の撚れをより確実に低減することもできる。また、Cリング50が一回転する過程において、制御部Cは、張力制御機構45によりコード部材2の張力を制御してよい。例えば、コード部材2がコアベルト1の幅方向の端部において環の外側と内側とで折り返しされる際に、コード部材2の張力を弱めてコアベルト1の端部の撚れをより確実に低減することもできる。
【0093】
本実施形態では、図6から図12に示す動作と同様の動作を2周期行うことで、コード部材2がコアベルト1の環の周方向においておおよそ一周する。コアベルト1及びドラム30の一回転ごとに、直前に巻き付けられたコード部材2に隣接して次のコード部材2が巻き付けられるように、コアベルト1の回転位相をガイド部4の回転位相に対してずらすように、制御部Cがドラム駆動部39を制御して、ドラム30の回転位相をずらすことができるようになっている。
【0094】
本実施形態では、制御部Cは、ドラム30及びコアベルト1の一回転ごとに、コアベルト1の環の周方向における、コード部材2の幅に対応する位相だけ、ドラム30の回転位相を後退する側へずらしている。すなわち、ガイド部4のヘッド部41がコアベルト1の帯の周方向に沿って2回転するごとに、ドラム30は1回転弱回転し、コアベルト1の回転に伴う環の周方向への回転移動について、コアベルト1の環の周方向における、コード部材2の幅に対応する距離だけ遅延させている。これにより、制御部Cは、コード部材2は、直前に巻き付けられたコード部材2に対し、コアベルト1及びドラム30の回転方向における前方側に隣接して次のコード部材2が巻き付けていく動作を実現する。なお、位相をずらす制御は、コアベルト1が一回転している過程で連続的、つまり、少しずつ行うことが好ましい。
【0095】
なお、制御部Cは、ドラム30及びコアベルト1の一回転ごとに、コアベルト1の環の周方向における、コード部材2の幅に対応する位相だけ、ドラム30の回転位相を前進する側へずらしてもよい。
【0096】
以上のようにして、コード部材を適切にコアベルトに巻き付けることができるループベルト製造方法及び巻回装置を提供することができる。
【0097】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、ガイド部4とコアベルト1との間の距離を一定に制御するにあたり、ガイド部4としてのボビン40とコアベルト1の表面との間の距離、すなわち、ボビン40と、コアベルト1の表面とのコード部材2の長さLを一定に保つ場合を説明した。しかし、ガイド部4の構成や構造によっては、ボビン40と、コアベルト1の表面とのコード部材2の長さLを一定に保つ以外の態様でガイド部4と、コアベルト1の表面との間の距離を一定に保ってもよい。例えば、ボビン40の回転中心となる回転軸とコアベルト1の表面との距離を一定に保つように制御してもよい。このようにすれば、制御部Cによる制御が簡便になるメリットがある。
【0098】
(2)上記実施形態では、図5において、ヘッド部41がコアベルト1の外周面に対向する領域を区間S1、ヘッド部41がコアベルト1の内周面に対向する領域を区間S3、ヘッド部41がコアベルト1の側面に対向する領域をそれぞれS2,S4として示した。そして、区間S1からS4の全区間において、すなわち、コアベルト1の帯の周方向における全周にわたって、ヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位と、コアベルト1の表面との間の最短の距離がおおよそコード部材2の厚みに相当する一定の距離に保たれている場合を説明した。しかしながら、コアベルト1に最も近接する部位と、コアベルト1の表面との間の最短の距離は、必ずしもコアベルト1の帯の周方向における全周にわたって一定である必要はない。
【0099】
例えば、コアベルト1における環の周方向と直交する外周におけるコアベルト1の短辺とガイド部4との距離を一定に制御(短辺距離制御工程の一例)し、これとは別に、コアベルト1における環の周方向と直交する外周におけるコアベルト1の長辺とガイド部4との距離を一定に制御(長辺距離制御工程の一例)してもよい。具体的には、区間S2,S4におけるコアベルト1の表面とガイド部4との距離を一定とし、区間S1,S3におけるコアベルト1の表面とガイド部4との距離を一定とし、区間S2,S4におけるコアベルト1の表面とガイド部4との距離と区間S1,S3におけるコアベルト1の表面とガイド部4との距離とを違えてもよい。
【0100】
図13には、区間S2,S4におけるコアベルト1の表面とガイド部4のヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位との距離を一定とし、また、区間S1,S3におけるコアベルト1の表面とガイド部4のヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位との距離を一定とし、区間S2,S4におけるコアベルト1の表面とガイド部4のヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位との距離を区間S1,S3におけるコアベルト1の表面とガイド部4のヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位との距離よりも大きくした場合を示している。すなわち、区間S2,S4では、ヘッド部41でコード部材2をコアベルト1の表面に押圧する力を弱めている。なお、本実施形態において、ガイド部4のヘッド部41、ボビン40及びアーム42の相対的な位置関係は固定されているため、ヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位との距離が変化した場合は、これに対応して、ガイド部4におけるボビン40とコアベルト1の表面との距離は変化する。
【0101】
このように、区間S2,S4におけるコアベルト1の表面とガイド部4のヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位との距離を区間S1,S3におけるコアベルト1の表面とガイド部4のヘッド部41における、コアベルト1に最も近接する部位との距離よりも大きくして、区間S2,S4において、ヘッド部41でコード部材2をコアベルト1の表面に押圧する力を弱めることで、コード部材2をコアベルト1に巻回する際に、コアベルト1の幅方向の端部の撚れをより確実に回避できる場合がある。
【0102】
(3)上記実施形態では、コード部材2の張力を制御する張力制御機構45がボビン40の回転軸に直結したトルクセンサや回転電機で構成される場合を例示して説明した。しかし、張力制御機構45の態様は上記に限られない。張力制御機構45は、ボビン40とヘッド部41との間に配置され、コード部材2の引き出しを直接規制してコード部材2の張力を制御するものであってもよい。
【0103】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、ループベルト製造方法及び巻回装置に適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 コアベルト
100 巻回装置
2 コード部材
3 ドラム部
30 ドラム
31 ピース
32 ピース
33 ピース
34 ピース
35 スリット
39 ドラム駆動部
39a 回転軸
39b 枠体
4 ガイド部
40 ボビン
41 ヘッド部
42 アーム
45 張力制御機構
5 ガイド部回転機構
50 リング
51 リング側歯車部
59 リング回転機構
59a 駆動側歯車
59b ガイドレール
61 第一駆動機構
62 第二駆動機構
9 座部
C 制御部
G 軸心
K 仮想線
L 長さ
S1 区間
S2 区間
S3 区間
V ループベルト
α 方向
β 方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13