(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023039851
(43)【公開日】2023-03-22
(54)【発明の名称】編地の編成方法、及び編地
(51)【国際特許分類】
D04B 1/00 20060101AFI20230314BHJP
D04B 15/48 20060101ALI20230314BHJP
D04B 15/56 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
D04B1/00 Z
D04B15/48
D04B15/56 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021147175
(22)【出願日】2021-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】登尾 佳史
(72)【発明者】
【氏名】窪田 茉優
(72)【発明者】
【氏名】由井 学
(72)【発明者】
【氏名】島崎 宜紀
【テーマコード(参考)】
4L002
4L054
【Fターム(参考)】
4L002BA00
4L002EA00
4L002FA01
4L002FA02
4L054AA01
4L054AB02
4L054AB03
4L054FA06
4L054FA07
4L054NA01
4L054NA03
(57)【要約】
【課題】第一糸と第二糸との切り替え箇所の切断と糸始末とを不要にできる編地の編成方法を提供する。
【解決手段】つなぎ目を介してつながれた第一糸と第二糸とを含む編糸を用いてベース編地部を編成する編地の編成方法であって、前記第一部分の編成中又は編成後に、前記編糸を用いて、前記ベース編地部とは異なる微小編地部の基点となる複数の第一編目を編成する工程Aと、前記編糸を用いて、前記複数の第一編目を含む微小編地部を編成する工程Bと、前記微小編地部のウエール方向の終端を構成する少なくとも一つの端部編目を、前記ベース編地部の裏側に重ねる工程Cとを備え、前記工程Bでは、微小編地部に前記つなぎ目が含まれるように、前記編糸が前記第一糸から前記第二糸に切り替わるまで前記微小編地部を編成する、編地の編成方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前針床及び後針床と、つなぎ目を介してつながれた第一糸と第二糸とを含む編糸を給糸するヤーンフィーダーとを備える横編機を用いて、
前記第一糸によって構成される第一部分と、前記第二糸によって構成される第二部分とを含むベース編地部を編成する編地の編成方法において、
前記第一部分の編成中又は編成後に、前記編糸を用いて、前記ベース編地部とは異なる微小編地部の基点となる複数の第一編目を編成する工程Aと、
前記編糸を用いて、前記複数の第一編目を含む前記微小編地部を編成する工程Bと、
前記微小編地部のウエール方向の終端を構成する少なくとも一つの端部編目を、前記ベース編地部の裏側に重ねる工程Cとを備え、
前記工程Bでは、前記微小編地部に前記つなぎ目が含まれるように、前記編糸が前記第一糸から前記第二糸に切り替わるまで前記微小編地部を編成する、編地の編成方法。
【請求項2】
前記工程Bにおいて、前記前針床と前記後針床との間で前記複数の第一編目の少なくとも一つを移動させながら前記ヤーンフィーダーを往復させることで、前記編糸を前記複数の第一編目の外周に巻き付ける、請求項1に記載の編地の編成方法。
【請求項3】
前記工程Bにおいて、前記第二糸に切り替わった後、前記第二糸によって前記少なくとも一つの端部編目を編成し、
前記工程Cにおいて、前記少なくとも一つの端部編目を前記第二部分の裏側に重ねる、請求項1又は請求項2に記載の編地の編成方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの端部編目が複数の端部編目からなり、
前記工程Cでは、前記複数の端部編目のそれぞれを、前記第二部分における異なる編目に重ねる、請求項3に記載の編地の編成方法。
【請求項5】
前記ベース編地部を、前記前針床と前記後針床において総針状態で編成し、
前記工程Aの前に、前記ベース編地部の一部の編目を移動させることで前記ベース編地部の編幅内に複数の空針を形成し、前記複数の空針を前記工程A及び前記工程Bに利用する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の編地の編成方法。
【請求項6】
第一糸によって編成された第一部分と、第二糸によって編成された第二部分とを含むベース編地部を備え、
前記第一糸と前記第二糸とがつなぎ目を介してつながっている編地において、
更に、前記第一部分の終端編目と、前記第二部分の始端編目とにつながる微小編地部を備え、
前記微小編地部は、前記つなぎ目を含み、
前記微小編地部のウエール方向の終端に配置される少なくとも一つの端部編目が前記ベース編地部の編目の裏側に接合されている、編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機を用いた編地の編成方法、及び横編機を用いて編成された編地に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、つなぎ目を介してつながれた第一糸と第二糸とを含む編糸を用いて、編地における複数の部分を編成する編地の編成方法が開示されている。特許文献1の編地の編成方法の概要は以下の通りである。
【0003】
特許文献1の
図9に示されるように、まず編糸における第一糸によって第一部分(特許文献1の柄81参照)が編成された後、ヤーンフィーダーから編糸が引き出されている。その引き出された編糸は編針(針57参照)にひっかけられ、折り返されている。編糸における折り返された部分にはつなぎ目(結目85参照)が含まれる。つまり、上記折り返された部分は、第一糸と第二糸の切り替え箇所である。切り替え箇所が形成されたら、編糸における第二糸によって第二部分(柄82参照)が編成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
編糸が折り返されてなる切り替え箇所は、編地において邪魔となり易い。例えば編地を使用する際、切り替え箇所に指などが引っかかる恐れがある。そのため、切り替え箇所を切断すると共に、切断した編糸を糸始末する必要がある。しかし、切り替え箇所が多いと、切断と糸始末の手間がかかる。この手間をなくし、編地を完成させるための時間を短縮したいというニーズがある。
【0006】
本発明の目的の一つは、第一糸と第二糸との切り替え箇所の切断と糸始末とを不要にできる編地の編成方法を提供することにある。また、本発明の目的の一つは、切断と糸始末が不要な切り替え箇所を有する編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>本発明の編地の編成方法は、
前針床及び後針床と、つなぎ目を介してつながれた第一糸と第二糸とを含む編糸を給糸するヤーンフィーダーとを備える横編機を用いて、
前記第一糸によって構成される第一部分と、前記第二糸によって構成される第二部分とを含むベース編地部を編成する編地の編成方法であって、
前記第一部分の編成中又は編成後に、前記編糸を用いて、前記ベース編地部とは異なる微小編地部の基点となる複数の第一編目を編成する工程Aと、
前記編糸を用いて、前記複数の第一編目を含む前記微小編地部を編成する工程Bと、
前記微小編地部のウエール方向の終端を構成する少なくとも一つの端部編目を、前記ベース編地部の裏側に重ねる工程Cとを備え、
前記工程Bでは、前記微小編地部に前記つなぎ目が含まれるように、前記編糸が前記第一糸から前記第二糸に切り替わるまで前記微小編地部を編成する。
【0008】
工程Aにおける第一編目は、空針に形成された編目、又は割増やしによって形成された編目でも良い。前者の場合、第一部分の編成中又は編成後に、ベース編地部が係止されていない空針に第一編目を編成する。後者の場合、第一部分のウエール方向の端部の近傍において第一部分を編成しつつ割増やしを行う。割増やしとは、針床Xの編針X1に係止される旧編目を、針床Xに対向する針床Yに移動させると共に、旧編目から引き出される新規編目を編針X1に形成する編成動作である。割増やしによれば、旧編目又は新規編目が、第一編目として機能する。
【0009】
上記微小編地部としては、(1)複数の第一編目の外周に編糸を巻き付けたもの、(2)複数の第一編目のウエール方向に続けて更に編目を編成したもの、(3)上記(1)及び(2)を組み合わせたもの、のいずれかである。上記(1)の場合、工程Aにおいて編成した第一編目が、微小編地部の端部編目としてベース編地部の裏側に重ねられる。ベース編地部の裏側とは、編地の使用時に外部から隠れる側である。例えばベース編地部が筒状に編成される場合、筒の内側がベース編地部の裏側である。端部編目を含む重ね目のウエール方向に続けてベース編地部の編目が編成されることで、端部編目がベース編地部に接合される。後述する実施形態1には上記(3)の編成例が示されている。
【0010】
第一編目の数は2以上であるが、端部編目の数は1以上である。つまり、第一編目の数と端部編目の数は一致していなくても良い。例えば、2つの第一編目の外周に編糸を巻き付けた後、二つの第一編目を重ねた重ね目を形成する。その重ね目のウエール方向に続けて端部編目を編成すれば、端部編目の数は1つである。
【0011】
微小編地部の端部編目は、工程Cを実施する際、針床に係止されるベース編地部のどの部分に重ねられても良い。例えば、端部編目は、ベース編地部の第一部分に重ねられても良いし、第二部分に重ねられても良いし、第一部分及び第二部分以外の部分に重ねられても良い。
【0012】
<2>本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記工程Bにおいて、前記前針床と前記後針床との間で前記複数の第一編目の少なくとも一つを移動させながら前記ヤーンフィーダーを往復させることで、前記編糸を前記複数の第一編目の外周に巻き付ける形態が挙げられる。
【0013】
<3>本発明の編地の編成方法の一形態として、
前記工程Bにおいて、前記第二糸に切り替わった後、前記第二糸によって前記少なくとも一つの端部編目を編成し、
前記工程Cにおいて、前記少なくとも一つの端部編目を前記第二部分の裏側に重ねる形態が挙げられる。
【0014】
<4>上記形態<3>に係る編地の編成方法の一形態として、
前記少なくとも一つの端部編目が複数の端部編目からなり、
前記工程Cでは、前記複数の端部編目のそれぞれを、前記第二部分における異なる編目に重ねる形態が挙げられる。
【0015】
<5>上記形態<2>から形態<4>のいずれかに係る編地の編成方法の一形態として、
前記ベース編地部を、前記前針床と前記後針床において総針状態で編成し、
前記工程Aの前に、前記ベース編地部の一部の編目を移動させることで前記ベース編地部の編幅内に複数の空針を形成し、前記複数の空針を前記工程A及び前記工程Bに利用する形態が挙げられる。
【0016】
総針状態とは、編幅方向に隣接する編目の間に空針が配置されていない状態を意味する。ベース編地部における前針床に係止される部分と、後針床に係止される部分とは筒状につながっていても良いし、C字状につながっていても良い。上記複数の空針は、工程Aにおいては第一編目の編成に利用される。また、上記複数の編目は、工程Bにおいては第一編目を前針床と後針床との間で移動させる際に、第一編目を一時的に係止することに利用される。
【0017】
<6>本発明の編地は、
第一糸によって編成された第一部分と、第二糸によって編成された第二部分とを含むベース編地部を備え、
前記第一糸と前記第二糸とがつなぎ目を介してつながっている編地であって、
更に、前記第一部分の終端編目と、前記第二部分の始端編目とにつながる微小編地部を備え、
前記微小編地部は、前記つなぎ目を含み、
前記微小編地部のウエール方向の終端に配置される少なくとも一つの端部編目が前記ベース編地部の編目の裏側に接合されている。
【0018】
本明細書において『微小編地部がベース編地部の編目に接合される』とは、微小編地部に含まれる編目がベース編地部の編目に重ねられ、その重ね目のウエール方向に連続するベース編地部の編目が編成された状態を意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の編地の編成方法によって形成される微小編地部は邪魔になり難いので、切断して除去する必要がない。従って、本発明の編成方法によって得られた編地では、微小編地部の切断と編糸の糸始末を省略できる。
【0020】
上記形態<2>の編成方法によれば、微小編地部が小さくまとまり易い。従って、編地の使用時に微小編地部が邪魔になり難い。
【0021】
上記形態<3>の編成方法によれば、微小編地部の端部編目と、その端部編目が重ねられる第二部分の編目とが共に第二糸によって構成される。その場合、編地において端部編目が目立ち難い。
【0022】
上記形態<4>の編成方法によれば、第二部分の同じ編目に複数の端部編目を重ねる場合に比べて、編地の見栄えを向上させることができる。複数の端部編目のそれぞれは、第二部分における異なる編成コースに重ねられても良い。例えば、2つの端部編目がある場合、一方の端部編目を第二部分の一番目の編成コースに重ね、他方の端部編目を第二部分の二番目の編成コースに重ねることが挙げられる。
【0023】
上記形態<5>の編成方法によれば、ベース編地部が総針状態で編成されていても、ベース編地部の編幅内において微小編地部を編成できる。総針状態で編成されたベース編地部は、詰んだ編目によって構成されるため、品質に優れる。
【0024】
つなぎ目を含む微小編地部は、編地の使用時に邪魔になり難くい。このような微小編地部は切断して除去する必要がなく、切断に伴う糸始末も不要である。従って、本発明の編地は生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る編地の一例であるニットウェアの概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る編地の編成方法の一部を示す第一のイメージ図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る編地の編成方法の一部を示す第二のイメージ図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る編地の編成方法の一部を示す第三のイメージ図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る編地における微小編地部の近傍の拡大写真である。
【
図6】
図6は、実施形態2に記載される微小編地部の編成方法の一部を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る編地の編成方法、及び編地を図面に基づいて説明する。
【0027】
<実施形態1>
実施形態1では、本発明の編地の編成方法によって
図1に示される編地1を編成する例を説明する。本例の編地1は、インターシャ柄を有する身頃を備えるニットウェアである。身頃を構成するベース編地部2は、第一部分21と第二部分22と第三部分23とを備える。第一部分21と第二部分22と第三部分23の色は互いに異なる。ベース編地部2は、身頃の裾の位置から編出されている。第一部分21と第二部分22とは、一つのヤーンフィーダーから給糸される編糸によって編成される。第三部分23は、上記ヤーンフィーダーとは別のヤーンフィーダーから給糸される編糸によって編成される。本例の編地1は微小編地部3(
図4)を備える。微小編地部3の詳細は後述する。
【0028】
本例に編地1の具体的な編成方法を
図2から
図4に基いて説明する。本例において使用される横編機は4枚ベッド横編機である。4枚ベッド横編機は、下部前針床と下部後針床と上部前針床と上部後針床とを備える。以下、下部前針床、下部後針床、上部前針床、及び上部後針床をそれぞれ、FD、BD、FU、及びBUと表記する。FDとBDは互いに対向している。FDの上部に配置されるFUと、BDの上部に配置されるBUとは互いに対向している。本例においては、FD及びFUが第二針床、BD及びBUが第一針床である。
【0029】
図2,3の左欄の『S+数字』は編成工程の番号を示す。右欄には各編成工程における編成状態が示されている。右欄における二点鎖線は針床を示し、黒丸は空針71,72を示し、逆三角マークは横編機に備わるヤーンフィーダー8を示している。ヤーンフィーダー8からは編糸9が給糸される。編糸9は、
図3に示されるように第一糸91と第二糸92とをつなぐことによって構成されている。第一糸91と第二糸92とは性質が異なる。本例では第一糸91と第二糸92の色が異なる。その他、第一糸91と第二糸92とは太さが異なっていても良いし、伸縮性が異なっていても良い。第一糸91と第二糸92とは、例えば横編機に設置されたノッター又はスプライサーなどによってつながれる。第一糸91と第二糸92のつなぎ目90は黒四角マークで示される。第二糸92は、第一糸91よりも太い線で示されている。
【0030】
図2のS1には、
図1に示されるベース編地部2のうち、第一部分21の上端まで編成が終了した状態が示されている。ベース編地部2は、FDとBDにおいて総針状態で編成されている。第一部分21は、ヤーンフィーダー8から延びる編糸9のうち、第一糸91によって構成されている。ヤーンフィーダー8から延びる編糸9は、第一部分21の終端編目21Eにつながっている。終端編目21Eは、第一部分21における最後に編成された編目である。
【0031】
S2では、ベース編地部2の一部の編目28,29をFDからBUに移動させ、ベース編地部2の編幅内に複数の空針71,72を形成する。これらの空針71,72は、後述する工程A及び工程Bに利用される。
【0032】
S3では、編糸9を用いて、ベース編地部2のいずれの編目のウエール方向にも連続しない複数の第一編目31,32を編成する(工程A相当)。第一編目31,32は編糸9を用いて一連に編成される。従って、本例における第一編目31は編糸9を介して終端編目21Eにつながっており、第一編目32は編糸9を介して第一編目31につながっている。本例の第一編目31,32は掛け目である。掛け目からなる第一編目31,32のウエール方向にニット目を編成しても良い。第一編目31と第一編目32との編幅方向の距離は、2目以上10目以下であることが好ましい。2目の距離とは、第一編目31と第一編目32との間にベース編地部2の2つの編目が配置される距離である。
【0033】
本例とは異なり、第一編目31を編成する前に、例えばBUにアンカー編目を編成しても良い。アンカー編目は、後工程において終端編目21Eに重ねれば良い。アンカー編目を編成することで、第一編目31,32が編成し易くなる。また、アンカー編目を終端編目21Eに固定することで、第一編目31,32を含む微小編地部3(
図4)がほつれ難くなる。
【0034】
本例では第一編目31,32の外周に編糸9を巻き付けることで、編糸9が第一糸91から第二糸92に切り替わるまで編糸9を消費する。二つの第一編目31,32の外周に編糸9を巻き付けることで、多くの編糸9を迅速に消費でき、第二糸92への切り替えが円滑に行われる。この編糸9の消費によって、ベース編地部2とは独立した微小編地部3(
図3,4)が編成される(工程B相当)。編糸9の巻き付け方の一例を
図3に示す。
図3には、4つの針床のうち、FDとBUのみが図示されている。編目の移動は上下方向の直線矢印によって示されている。また、ベース編地部2の図示は省略されている。
【0035】
図3のS4では、第一編目32をFDからBUに移動させた後、ヤーンフィーダー8を左方向に移動させる。ヤーンフィーダー8は、第一編目31よりも左側の位置に停止させる。
【0036】
S5では、第一編目31をFDからBUに移動させ、第一編目32をBUからFDに移動させた後、ヤーンフィーダー8を右方向に移動させる。ヤーンフィーダー8は、第一編目32よりも右側の位置に停止させる。本例ではS5において、ヤーンフィーダー8から給糸される編糸9が、つなぎ目90を介して第一糸91から第二糸92に切り替わっている。第一糸91から第二糸92に切り替わるタイミングはS5のタイミングに限定されるわけではなく、S5よりも早いタイミングでも、遅いタイミングでも良い。例えば、
図2の第一編目31,32が編成されるときに、編糸9が第一糸91から第二糸92に切り替わっても良い。
【0037】
S6では、第一編目31をBUからFDに移動させ、第一編目32をFDからBUに移動させた後、ヤーンフィーダー8を左方向に移動させる。ヤーンフィーダー8は第一編目31よりも左側に位置に停止させる。S3からS6によって、針床の上方から見たときに、第一編目31と第一編目32とに編糸9が『8』の字状に巻き付いた状態になる。本例では更に、S5とS6とを繰り返す。
【0038】
S6に続く編成工程は、
図4を参照して説明する。
図4は、ベース編地部2を裏側から見た図である。ベース編地部2の裏側とは、
図1の身頃の内側に相当する。
図4では、微小編地部3をループ図によって、第一部分21と第二部分22とを線画によって示している。第一部分21の上部の三角形状は、第一部分21の終端編目21Eである。第二部分22の下部の逆三角形状は、第二部分22の始端編目22Sである。
図4における第一部分21の上端と第二部分22の下端との間には第三部分23が配置されている。本例とは異なり、第一部分21と第二部分22との間に第三部分23が配置されていなくても良い。
【0039】
図4に示されるように、
図3の二回目のS6が終了した後、第一編目31のウエール方向に続けて端部編目31Eを編成し、更に第一編目32のウエール方向に続けて端部編目32Eを編成する。これらの端部編目31E,32Eは、微小編地部3のウエール方向の終端を構成する編目である。
【0040】
微小編地部3の編成が終了したら、端部編目31E,32Eをベース編地部2の裏側に重ねる(工程C)。本例では、微小編地部3の編成終了後、休止していたベース編地部2の編成を開始し、ベース編地部2の編成途中に端部編目31E,32Eをベース編地部2の裏側に重ねる。具体的には、筒状編成によって第三部分23のみで構成されるベース編地部2を数コース編成した後、第二部分22と第三部分23とで構成されるベース編地部2を編成する。ベース編地部2の第二部分22は、編糸9における第二糸92によって編成される。従って、微小編地部3は、編糸9を介して第二部分22の始端編目22Sにつながる。始端編目22Sは、第二部分22において最初に編成される編目である。
【0041】
端部編目31Eと端部編目32Eとはそれぞれ、ベース編地部2の異なる編目に重ねることが好ましい。ベース編地部2の一つの編目に両端部編目31E,32Eを重ねると、ベース編地部2における端部編目31E,32Eが重ねられる部分の見栄えが損なわれる恐れがある。本例では、端部編目32Eを第二部分22の1番目の編成コースの始端編目22Sに重ね、端部編目31Eを第二部分22の2番目以降の編成コースの編目に重ねている。従って、端部編目31E,32Eが重ねられたことによるベース編地部2の見栄えの低下が抑制される。
【0042】
端部編目31E,32Eと第二部分22とは共に第二糸92によって編成されているため、端部編目31E、32Eと第二部分22とが同色である。従って、ベース編地部2に重ねられた端部編目31E,32Eが目立ち難い。端部編目31E,32Eを目立ち難くするには、第二部分22の輪郭線を構成する編目以外の編目に端部編目31E,32Eを重ねることが好ましい。例えば、端部編目31E,32Eは、第二部分22の2番目以降の編成コースにおける編幅方向の中間部の編目に重ねることが好ましい。この場合、第二部分22を含むベース編地部2を編成する際、端部編目31E,32Eがベース編地部2に編み込まれてしまわないように端部編目31E,32Eを退避させながらベース編地部2を編成しなければならない。ベース編地部2の見栄えの向上と、編成工程の増加とのバランスを考慮し、第二部分22の何番目の編成コースの編目に端部編目31E,32Eを重ねるかを決定すると良い。本例では、第二部分22の1番目の編成コースの編目に端部編目32Eを重ねることで、端部編目32Eを退避させる工程が少なくなっている。従って、本例に示す手順は、見栄えに優れるベース編地部2を効率的に編成できる。
【0043】
ベース編地部2の裏側に重ねられた端部編目31E,32Eは、重ね目を含むベース編地部2の編成コースのウエール方向に連続する新たな編成コースを編成することによって、ベース編地部2に接合される。その結果、微小編地部3のうち、端部編目31E,32Eを除く部分は、ベース編地部2に接合されていない状態になる。この場合、微小編地部3とベース編地部2との接合箇所が少ないので、微小編地部3がベース編地部2の伸縮性を阻害し難い。また、第一編目31,32の外周に『8』の字状に編糸9を巻き付けることで編成された微小編地部3は小さくまとまった状態になる。実際の編地1における微小編地部3の状態を
図5の写真に示す。
【0044】
図5は、ベース編地部2の裏側から見た微小編地部3の近傍の拡大写真である。
図5の白色の三角形状の部分が第一部分21、薄い灰色の逆三角形状の部分が第二部分22であり、濃い灰色の領域が第三部分23である。第一部分21と第二部分22とが付き合わされた箇所にある編糸9の塊が微小編地部3である。
図5に示されるように、微小編地部3は非常に小さくまとまっており、編地1(
図1)の使用時に邪魔となり難い。そのため、微小編地部3を編地1から除去する必要はなく、除去に伴う糸始末も必要ない。微小編地部3の除去に係る手間が必要ない本例の編地1は、きわめて生産性に優れる。
【0045】
本例とは異なり、微小編地部3における端部編目31E,32Eを除く部分の一部がタックなどによってベース編地部2に接合されていても良い。例えば、
図3に示される編糸9の巻き付け工程の途中に、編糸9を用いてベース編地部2にタックを行うことが挙げられる。タックの回数は1回でも良いし、複数回でも良い。この場合、ベース編地部2に対して微小編地部3が動き難くなる。タックを行う場合、タック目の色と、タックされる編目の色とが同系色であることが好ましい。
【0046】
<実施形態2>
微小編地部3の端部編目の数は一つでも良い。例えば、
図4において、第一編目31と第一編目32とを重ねた重ね目を形成し、その重ね目のウエール方向に続けて端部編目を編成することが挙げられる。この場合、端部編目をベース編地部2に重ね易い。その他、
図4の端部編目31Eと端部編目32Eとを重ねた重ね目を形成し、その重ね目のウエール方向に続けて新たな端部編目を編成しても良い、この場合も、端部編目の数は一つである。
【0047】
図4において、第一編目31,32のウエール方向に続く編目を編成することなく、第一編目31,32をベース編地部2に重ねても良い。この場合、第一編目31,32は、微小編地部3の端部編目である。
【0048】
微小編地部3の始端となる第一編目の数は3以上でも良い。例えば、4つの第一編目を編成する例を
図6に基いて簡単に説明する。
図6の左欄の『T+数字』は編成工程の番号を示す。
図6では、FDに係止される第一編目31,32,33,34と、第一編目31,32,33,34に巻き付けられる編糸9のみを図示する。編糸9のつながりは省略する。
【0049】
T1には、FDに4つの第一編目31,32,33,34が係止された状態が示されている。T2では、4つの第一編目31,32,33,34のうち、第一編目33と第一編目34の外周に編糸9を巻き付ける。T3,T4では、編糸9を巻き付ける2つの第一編目の組み合わせを変えて、2つの第一編目の外周に編糸9を巻き付ける。
図6の編成によれば、編糸9の消費量が多いため、編糸9を第一糸から第二糸に確実に切り替えることができる。編糸9を巻き付ける位置を徐々に変えることで、微小編地部3が薄く仕上がるため、微小編地部3が邪魔になり難い。編糸9が巻き付けられる編目の数、及び編糸9の巻き付け順序は、
図6に示される例に限定されるわけではない。例えば、4つの第一編目31,32,33,34のうち、任意に選択された3つの第一編目に編糸9を巻き付けることを繰り返しても良い。
【0050】
<その他の実施形態>
本発明の編地の編成方法に使用される横編機は2枚ベッド横編機でも良い。その場合、ベース編地部2は針抜き状態とすることが好ましい。針抜き状態とは、隣接する二つの編目の間に空針が配置された状態のことである。
【0051】
複数の横縞柄がベース編地部のウエール方向に並んだストライプ柄を備える編地を編成することに本発明の編地の編成方法を利用することもできる。その場合、ベース編地部のウエール方向に隣接する二つの横縞柄を編成する際、二つの横縞柄とをつなぐ微小編地部を編成する。微小編地部の第一編目は割増やしによって編成しても良い。本発明の編地の編成方法を利用すれば、究極的には一つのヤーンフィーダーを用いてストライプ柄を備える編地を編成できる可能性がある。
【符号の説明】
【0052】
1 編地
2 ベース編地部
21 第一部分、22 第二部分、23 第三部分、28,29 編目
21E 終端編目、22S 始端編目
3 微小編地部
31,32、33,34 第一編目
31E,32E 端部編目
8 ヤーンフィーダー
71,72 空針
9 編糸
90 つなぎ目、91 第一糸、92 第二糸